当連結会計年度における我が国経済は、政府による経済政策等を背景に緩やかな回復基調にあるものの、米国の新政権の政策動向や中東、南シナ海における紛争、朝鮮半島の情勢、イギリスのEU離脱など、世界の政治、経済情勢は幅広く変革期に入っており、先を見通すことが非常に困難な情勢となってきております。また、個人消費につきましても、回復の兆しが見られた企業収益への期待が、雇用や所得環境の改善を後押ししているものの、中国をはじめとするアジア新興国経済の減速や円安による物価の上昇等、先行き不透明な状況で推移いたしました。
当社グループの主力事業が属するわが国医薬品業界においては、後発医薬品使用促進策の強化など医療費抑制策が推進されており、ジェネリック医薬品は今後一層拡大が見込まれております。その一方で、社会保障費における薬価制度の在り方が政府内で活発に議論されるなど医薬品業界として先行き不透明な状況で推移しております。
このような状況の下、当社グループのセグメント別での業績は、次のとおりであります。
<診断・試薬事業>
当事業は、当社の有する抗体作製技術により生産される研究用試薬や体外診断用医薬品を、国内外のアカデミアの研究者や医薬関連企業等へ販売しております。
当事業の業績は、受託サービスにおいて、ユーザーのニーズをくみ取り、積極的に直接ユーザーへ販売活動を実施することで、前年に比べ売上高が大幅に増加したものの、自社製造の動物用体外診断用医薬品の牛海綿状脳症測定キットの売上高は、検査対象減少等の影響により、大幅に減少しました。一方、マイコプラズマ感染症の診断薬原料やアルツハイマー病の海外向け診断薬原料の販売は、順調に推移しました。
その結果、当セグメントの売上高は556,015千円(前年同期比5.4%増)、営業利益は117,858千円(前年同期比3.2%減)となりました。
<遺伝子組換えカイコ事業>
当事業は、医薬品、体外診断用医薬品及び動物用医薬品等の原料であるタンパク質の作製方法において、従来の微生物や動物細胞等でのタンパク質作製方法とは異なる遺伝子組換えカイコの繭から有用なタンパク質を生産する技術を有しております。その技術は、従来のタンパク質の作製方法に比べ、安全性や安定性さらにコスト面や動物愛護の問題等において卓越した優位性を有しております。
当事業の業績につきましては、研究用タンパク質の受託生産等の売上、共同研究契約先からのマイルストーン契約金の収入や大手体外診断用医薬品企業からの抗体受託サービスの売上が計上されました。また、株式会社ニッピとの共同研究により、iPS細胞等の培養足場材として有用であるラミニン511-E8 フラグメント(ラミニン511-E8)を遺伝子組換えカイコを用いて安価に製造する方法を確立し、研究用試薬原料として販売を開始いたしました。
その結果、当セグメントの売上高は71,809千円(前年同期比6.5%増)となりました。営業損益につきましては、フィブリノゲンやHIV治療薬をはじめ医薬品原料シーズの研究開発項目の増加等により、研究開発拠点としての意味合いが増加したため、当期末において、同施設で資産計上していた設備等を研究開発費として941,704千円一括計上した結果、営業損失は1,239,697千円(前年同期は142,444千円の営業損失)となりました。
なお、当セグメントにおいては、積極的に資金調達を実施し、将来に向けた重点的な研究開発等を進めております。
<検査事業>
当事業においては、主力商品である、高速液体クロマトグラフィーを用いた独自分析技術によるリポタンパク質プロファイル分析業務「LipoSEARCHⓇ」の測定受託サービスを、大手製薬企業、食品関連企業、大学などのアカデミアに対して提供しております。
当事業の業績につきましては、診断・試薬事業部門との営業活動を共有化し、国内外の学会展示を共同で行うなど、双方のマーケット市場において販促活動を強化しております。その結果、海外販売において、大幅に売上高が増加いたしましたが、国内販売においては大型案件終了の影響により売上高が減少し、前年を下回る結果となりました。また、ペットに対するコレステロールと中性脂肪の測定サービス「LipoTESTⓇ」は、他社との競合による影響から売上高が減少いたしました。
その結果、当セグメントの売上高は105,228千円(前年同期比5.8%減)、営業損失は18,309千円(前年同期は20,158千円の営業損失)となりました。
<化粧品関連事業>
当事業は、遺伝子組換えカイコ事業部門が開発したネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ(化粧品原料)及びネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ配合化粧品を化粧品業界や消費者の皆様に広く販売するため、連結完全子会社の株式会社ネオシルク化粧品が事業を展開しております。
当事業の業績につきましては、広告活動により獲得した新規顧客へ継続してダイレクトメールや電話によるアウトバウンド等の活動を実施しておりますが、継続顧客の獲得が出来ず、売上高が減少いたしました。一方、当第3四半期より、大手ドラッグストアの化粧品重要拠点(9店舗)において、ネオシルク・ヒトコラーゲン配合化粧品「フレヴァン」の販売が開始されました。また、展示会出展や営業活動により、ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ(化粧品原料)及びネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ配合化粧品の知名度が向上したことで、国内や欧州、アジア圏からの引き合いも増加してきておりますが、今期においては、売上高の計上までには至りませんでした。
その結果、当セグメントの売上高は13,804千円(前年同期比12.6%減)、営業損失は17,743千円(前年同期は35,447千円の営業損失)となりました。
これらの結果、連結業績は下記の結果となりました。
売上高は741,525千円(前年同期比3.3%増)となり、営業損失が1,156,931千円(前年同期は75,353千円の営業損失)となりました。経常損益においては、新株発行費用や為替差損等が計上され、経常損失は1,170,355千円(前年同期は81,797千円の経常損失)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損益におきましては、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、グループ各社における固定資産の回収可能性を検討した結果、完全子会社である株式会社スカイライト・バイオテックにおける、のれん一括償却や固定資産の減損損失の計上及び当社における固定資産の減損損失の計上、さらに当社の保有する固定資産の除却による固定資産除却損の計上等により親会社株主に帰属する当期純損失は2,094,467千円(前年同期は31,898千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度に比べ1,630,186千円増加し2,522,102千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により支出した資金は55,886千円(前年同期比38,901千円の支出増加)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純損失を2,088,800千円計上していますが、非資金項目である減価償却費の計上が182,734千円、減損損失の計上が735,395千円及び有形固定資産の減少額の計上が941,704千円等となったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は458,490千円(前年同期比149,219千円の支出の減少)となりました。この主な要因は、前橋研究所建設等に伴う有形固定資産の取得による支出が398,628千円及び投資有価証券の取得による支出が79,800千円等の支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は2,145,528千円(前年同期比1,858,857千円の収入の増加)となりました。この主な要因は、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,381,395千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が574,716千円、銀行からの長期借入れによる収入が330,000千円あったこと等によるものであります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
||
|
診断・試薬事業 |
182,752 |
15.5 |
||
|
遺伝子組換えカイコ事業 |
97,149 |
55.3 |
||
|
検査事業 |
46,356 |
△14.7 |
||
|
化粧品関連事業 |
― |
― |
||
|
合計 |
326,258 |
18.6 |
||
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、製造原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
仕入高(千円) |
前年同期比(%) |
||
|
診断・試薬事業 |
17,068 |
△13.4 |
||
|
遺伝子組換えカイコ事業 |
― |
― |
||
|
検査事業 |
― |
△100 |
||
|
化粧品関連事業 |
5,690 |
38.8 |
||
|
合計 |
22,759 |
△7.6 |
||
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、仕入価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
||
|
診断・試薬事業 |
552,368 |
5.3 |
||
|
遺伝子組換えカイコ事業 |
71,763 |
6.5 |
||
|
検査事業 |
103,589 |
△5.6 |
||
|
化粧品関連事業 |
13,804 |
△12.6 |
||
|
合計 |
741,525 |
3.3 |
||
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
(自 平成27年4月1日 |
(自 平成28年4月1日 |
|||
|
至 平成28年3月31日) |
至 平成29年3月31日) |
|||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
岩井化学薬品㈱ |
52,174 |
7.3 |
91,847 |
12.4 |
|
㈱ニッピ |
78,554 |
10.9 |
54,598 |
7.4 |
|
タカラバイオ㈱ |
110,897 |
15.4 |
53,545 |
7.2 |
(注) 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、生物の生命維持に不可欠である免疫機構「抗体」について研鑽することによって、人類が病気から安全に免れるような治療用医薬品、診断用医薬品の開発や生活習慣病領域での検査サービスができるよう、独自の研究開発と大学・研究機関などとの共同研究の成果を製品の品質向上に結びつけるべく、研究開発活動を行っております。また、当社グループの成長戦略の柱とするカイコ繭中に、抗体を始めとした様々な安全性の高いタンパク質を発現させる技術を用いた、新しい生産系の確立に向けた研究開発活動を行っております。本技術では高い安全性を有する止血剤原料や抗体医薬品等の生産開発など、医療に直接貢献できる事業を目標にしております。
このように、世界で難病に苦しむ人々が、1日も早く病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、医薬品開発を目標とする創薬系バイオベンチャーであり、研究開発費が先行して発生いたしますが、当社グループの技術力から生産される独創的な製品の販売やサービスを国内外に提供し、安定的に黒字化を継続できる経営を目指してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループのセグメント別中長期経営戦略は、次のとおりであります。
・ 試薬・診断事業
研究用関連においては、積極的に海外プロモーションを実施するとともに、信頼出来る海外パートナーを獲得し、自社ブランドの抗体製品やキット製品の海外での販売ネットワークの拡大を目指してまいります。
医薬用関連については、牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットの販売が縮小していく中、今後につきましては、自社で創製した抗体を研究用試薬に留めることなく、診断薬や医薬品としての有用性を検証し、有用性が高いシーズについては自社での診断薬開発に着手してまいります。また、グローバルパートナーとの連携を強化し、広く世界で使用される診断薬製品の上市を目指してまいります。
・ 遺伝子組換えカイコ事業
遺伝子組換えカイコ事業においては、カイコの繭中に目的タンパク質を効率よく大量生産できる技術を改善・改良し、診断薬、化粧品原料、さらに医薬品への実用化を目指してまいります。
・ 検査事業
当事業の主な検査領域は、生活習慣病に特化しており、その技術は、国内にとどまらず、海外においても今後も必要不可欠で同領域の需要は増加するものと予想されます。当事業は、現在、株式会社スカイライト・バイオテックの秋田ラボにおいて検査業務を行っておりますが、海外展開を視野に入れた海外代理店の獲得を図っております。また、当事業は、診断・試薬事業における研究開発の推進及び開発製品の需要拡大を目的とした、臨床検査事業の設立も視野に入れた、設備投資及び人材の育成を実施してまいります。
・ 化粧品関連事業
当事業は、遺伝子組換えカイコ事業により開発された化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンI」を使用した化粧品の製品開発、販売が主な事業となっております。製品開発におきましては、動物由来原料を一切使用しない「今までにない安心・安全を提供し、消費者の皆様が満足できる化粧品」をモットーに基礎化粧品をはじめ、消費者の皆様の要望される化粧品の開発を順次進めてまいります。販売におきましては、消費者の皆様へ直接お届けする通信販売により展開しておりますが、さらに、北関東・信州・東北を中心とするドラッグストアへのテスト販売も開始され、海外への展開も視野に入れ、海外代理店を模索し、世界中の化粧品業界及び消費者の皆様に向けて展開してまいります。また、今後につきましては、「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンI」の安全性を周知徹底し、化粧品業界に新風を吹き込み「すべての化粧品にネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンI」を実現していく所存です。
(4) 会社の対処すべき課題
・ 抗体の市場環境とその対応
治療用医薬品あるいは診断用医薬品の開発には、多額の研究開発費と長い年月が必要であります。従って、これら医薬品の開発には、当社グループの人的資源と効率を鑑み、自社では製品化するまでの全過程を行うことが可能かどうか注意深く検討してまいります。特に医薬品においては、遺伝子組換えカイコ技術を用いたワクチンタンパク質の生産及び治療用医薬品のシーズ開発に特化する方針であります。このように、当社グループは、医薬品開発への積極的な投資によって、抗体に付加価値を付け、パイプラインを充実させることで企業価値の最大化を追求いたします。
・ パイプラインの拡充
当社グループは、治療用医薬品及び診断用医薬品のさらなるパイプラインの充実のため、現行の共同研究先である大学などに加え、優秀な人材を採用し、研究の推進を行う方針であります。また、海外企業が保有する有用なシーズの発掘も積極的に行ってまいります。
・ 遺伝子組換えカイコ事業への取り組み
カイコの繭中に目的タンパク質を産生する生産技術は、現在の生産方法に比較して製造コストを低減させることが可能です。短期的には、研究用試薬・体外診断用医薬品にて使用する抗体をはじめとした目的タンパク質の置換え利用や化粧品原料等への産業利用を推進し、具体的な生産受注を目指してまいります。中長期的には、動物用医薬品等の原料の実用化やアステラス製薬株式会社とのヒト型フィブリノゲンの共同研究及び株式会社CUREDとの抗HIV抗体の共同研究等、医薬品原料の研究開発を積極的に進めており、医薬品原料の生産拠点及び付随設備への投資や優秀な人材の採用及び生産体制の構築を進めてまいります。また、今後、研究開発項目の増加や製品化されているラミニン及びネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠの生産に必要な遺伝子組換えカイコの飼育頭数が劇的に増加するため、大量飼育による人工飼料のコスト増が予想されます。この課題を解決するため、桑の葉の確保及び人工飼料のコスト低減を図るための事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
・ 新規事業への取り組み
当社グループは、遺伝子組換えカイコ事業により開発された新規化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ」及び同原料配合化粧品「フレヴァン」シリーズを完全子会社の株式会社ネオシルク化粧品で販売しております。同原料及び同原料配合化粧品を広く化粧品業界へ浸透させるべく、製造コストの低減を行い、大手化粧品原料取扱企業をはじめOEM製造や大手ドラッグストア等へ販路拡大を図ってまいります。
・ 人材の確保及び教育
当社グループは、各事業に精通した研究員及びプロジェクトを推進できる人材の確保が必要不可欠と考えており、研究開発の効率を上げるため、ハード面とソフト面の両面から研究開発に適した環境作りを行い、企業価値の最大化を目指してまいります。
研究開発型企業である当社グループにおいては、自由な発想が生み出される柔軟な組織がふさわしいと考えております。組織が硬直化し、研究開発活動が滞ることがないように、常に問題意識をもって物事に対処する集団として組織を維持運営いたします。
・ 財務安定性の確保
当社グループは、研究開発型企業として、積極的かつ継続的に研究開発に投資していく方針であります。投資の源泉は事業からの収益をもって行われることが望ましいと考えておりますが、研究開発テーマにより多額の先行投資が見込まれる場合には、株式の発行等により資金を調達してまいります。当社グループは、引き続き、収益確保のため、現製品の見直しや間接部門コストの削減に努めてまいります。また、研究テーマの選択を行い、経営資源を集中して効率的な経営を行うことが重要であると認識しております。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループの事業活動において、リスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示いたします。
当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの経営状況及び将来の事業についての判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。
(1) 会社の事業戦略に関するリスク
① 新規事業の立ち上げについて
当社グループは、企業価値の最大化を追求するため、基盤技術である抗体作製技術からなる従来の診断・試薬事業はもとより、遺伝子組換えカイコ事業及び検査事業を積極的に展開していく方針であります。遺伝子組換えカイコ事業を軌道に乗せるためには相応の事業開発のノウハウが必要でありますが、現状当社にはこのようなノウハウが十分存在するとは言えません。当該事業及び販売先の業界に精通した営業を推進できる人材の確保や他社との提携を含め、ノウハウの蓄積が重要になります。また、当該事業においては、遺伝子組換えカイコによる医薬品原料の製造を目指しておりますが、GMP等の高度な規制への対応に関し、当社が十分な設備やノウハウを保有しているとは言えない状況です。そのため、設備ならびに人材への先行投資が必要となりますが、この分野においては、研究開発の成否リスクが高い反面、短期間での収益が保障されるものではないため、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。さらに、新設事業では研究開発費が先行することが想定されますので、当該事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。また、検査事業においては、基盤技術である高速液体クロマトグラフィーを用いたリポタンパク質プロファイリング技術によって開拓したR&Dに従事する顧客群に向けて「Lipid」(=脂質)をキーワードとした新たな分析サービスを積極的に展開し、取引単価の大幅な向上を目指す方針であります。新たなサービスを投入するためには、設備ならびに人材への先行投資が必要となるため、本事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。
② 基礎研究の強化に伴う収益構造及びキャッシュ・フローの変化について
当社グループは、診断・試薬事業及び遺伝子組換えカイコ事業の両事業を主軸としております。当該事業における基礎研究は、研究開発費の負担が大きく、研究開発の成否リスクが高いことに加えて、直ちに収益を生むものではないため、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。
また、このような収益構造の変化に加え、新設事業が順調に立ち上がらない場合には、営業損失や営業キャッシュ・フローのマイナスが常態化するおそれもあります。
③ リポタンパク質プロファイリング技術への依存度について
当該事業の基盤技術は、知的財産とノウハウによって守られたリポタンパク質プロファイリング技術であり、これが当該事業の最大の強みであります。しかしながら分析技術の発達によって、より進歩した技術が出現する可能性は否定できません。新たな技術が台頭した場合、当該事業のリポタンパク質プロファイリング技術を基盤とする競争優位性のほとんどが、短期間に失われるおそれがあります。
(2) 各事業に関するリスク
① 研究用試薬市場の特性と収益の伸び悩みについて
研究用試薬の市場は、研究の多様化に対応する必要があるため、製品は多種類かつ一製品当たりの売上は限定的であるという特徴があります。さらに、近年は競合他社との販売競争が激化し、価格低下に拍車がかかってきており、急激な市場の拡大は考えにくい状況にあるものと思われます。
当社グループにおいて、新製品の開発が計画通りに進まなかったり、あるいは新製品の販売動向が期待通りに推移しなかったり、既存製品の製造販売が何らかの要因で縮小又は中止となった場合には、売上が伸び悩み、且つ利益率の低下が生じて、業績に大きな影響を与える可能性があります。
② 医薬用関連に関するリスクとパイプラインの概況について
当社グループは、医薬用関連において、治療用医薬品及び診断用医薬品のシーズを探索し、その使用権や製造販売権等の権利を製薬企業に譲渡又は許諾する事業を行っております。すなわち、権利譲渡又は権利許諾の対価として契約金を、また、特許の使用料としてロイヤリティーを譲渡先又は許諾先の企業から受領するビジネスモデルであります。しかしながら、有望なシーズを想定どおりに探索できない場合、探索できたが譲渡又は許諾する企業が見つからない場合、当社グループが想定した契約金やロイヤリティーを確保できない場合、あるいは、譲渡先又は許諾先の企業において候補品の開発の遅滞又は中止となった場合には、マイルストーン契約金やロイヤリティーが計上できず、将来、当社グループの業績及び経営計画に大きな影響を与える可能性があります。なお、「第1 企業の概況 3 事業の内容」及び「6 研究開発活動」に主要なパイプラインの概況を記載しておりますが、その推進には常に上述のようなリスクが伴い、開発中のパイプラインの成否によって、将来当社グループの業績及び財政状態は大きな影響を受けることとなります。
③ 遺伝子組換えカイコ事業における環境の変化について
遺伝子組換えカイコ事業の元になっている養蚕技術に関しては、わが国における養蚕業の衰退と養蚕農家の高齢化が重なり、その承継が難しくなってきています。さらに、そのような状況下でカイコの飼料も含めた養蚕に係る物資などの供給体制が、将来にわたって安定的に継続されていくものかどうか不安が残ります。これらが途絶えた場合、事業の継続が困難になります。
(3) 事業遂行上のリスク
① 知的財産権に係る訴訟リスクについて
当社グループの事業を遂行していく中で、他者の知的財産権を使用することも多々あります。当社グループでは適法な手続のもとに他者の知的財産権を使用することとしておりますが、当社グループの認識外で他者の知的財産権を侵害している可能性もあります。当社グループでは、他者の知的財産権への抵触が判明した時点で遅滞なくライセンス契約を締結してきたため、今までに知的財産権の侵害を理由とする訴訟を提起されたことはありませんが、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われます。当社グループは、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針でありますが、訴訟が提起された場合、当社グループの事業戦略や業績に重大な影響を与える可能性があります。
② 第三者等の侵入について
当社グループの研究所においては、実験動物及び遺伝子組換えカイコが飼育されております。当社グループは、十分なセキュリティー体制の下にこれらの管理を行っておりますが、第三者等の侵入・危害を完全に防ぐことができない場合には、無菌施設内の動物やカイコヘの雑菌の感染等によって、当社グループの事業活動に大きな影響を与える可能性があります。また、第三者等によって誤解を与えるような風評を流布された場合には、当社グループの企業イメージが損なわれる可能性があります。
③ 当社と同一商号を有する海外販売代理店について
当社と同一商号を有する会社が米国及びドイツに存在し、これらの会社は現在、当社の海外販売代理店となっております。しかしながら、当該各社と当社との資本関係及び役員の兼任関係は全くなく、当社が各社の経営について責任を負う必要はありませんが、商号が同一であるため、同一グループであると誤認される可能性があります。当社では、このような誤認が生じないようホームページ上で注意を喚起しておりますが、各社の会社イメージが悪化した場合など、何らかの影響を当社が蒙る可能性がないとは言えません。
④ 為替レートの変動について
当社グループは、診断・試薬事業において、海外企業から研究用試薬等を輸入しているほか、海外販売代理店に対して研究用試薬等を輸出しております。現状、当社グループは、為替予約等による為替リスクのヘッジを行っていないため、為替レートの動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 機密情報の流出について
当社グループの事業を遂行する上で、社外の研究者や研究機関との情報交換は有益であると考えております。今後も積極的に情報交換を行っていく方針であり、商品・サービスの提供や営業活動に必要となる顧客氏名・性別・住所・電話番号等の個人情報、その他業務上、必要となる各種情報をシステム上で管理しております。第三者に当該機密情報を窃取された場合、企業にとって致命傷となりかねません。このため、当社グループでは、基幹システムやサーバーのセキュリティー強化に加え、情報を外部に開示する際の手続を明確化して組織の末端まで周知徹底させておりますが、万が一機密情報が流出した場合には、多大な損害を被るおそれがあります。
⑥ 自然災害について
地震等大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊あるいは事業活動の停滞によって、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
(4) 組織に関するリスク
① 小規模組織であることについて
当社グループは、当連結会計年度末現在、役職員計66名(臨時従業員を除く。)の小規模な組織となっております。当社グループは、内部統制などの組織的対応の強化を図っておりますが、現状は小規模組織であり、人的資源に限りがあるため、個々の役職員の働きに依存している面もあり、役職員に業務遂行上の支障が生じた場合又は役職員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。一方で、組織規模の急激な拡大は固定費の増加につながり、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
② 人材の確保と研究開発力の維持について
当社グループでは、事業の変化に伴って、人材の確保と育成が重要な課題となっており、内部での人材育成及び外部からの人材登用に努めております。しかしながら、適正な人材の確保、育成及び維持が計画どおりに進捗しなかった場合又は人材が社外に流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
特に、研究開発での人材不足は、当社グループの生命線である研究開発力の低下につながるおそれがあります。また、会社規模の変動とともに組織が硬直化し、モラルハザードが発生した場合にも、研究開発力が低下するおそれがあります。研究開発力は当社グループの強みであるため、これが失われた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。
(5) 規制に関するリスク
① 法的規制について
イ 薬事法
当社グループが株式会社ニッピより受託製造する牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットは、薬事法の規制を受けております。本製品は、当社グループの主力製品の一つであり、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、大きな売上減少要因となる可能性があります。
ロ 遺伝子組換え生物等規制法
遺伝子組換え生物等の使用による生物多様性への悪影響を阻止する目的で、平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社グループが保有する藤岡研究所及び三笠研究所は当該法律が適用される施設であるため、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、研究開発の遅延等によって業績に重大な影響を与える可能性があります。
ハ 廃棄物処理法
当社グループが事業で使用する実験動物に由来する排出物などは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。
ニ 毒劇物取締法
当社グループが事業で使用する研究用試薬は、「毒物及び劇物取締法」(毒劇物取締法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。
② 公的研究機関及び大学との関係について
当社グループは、公的研究機関や大学との連携を通じて、研究開発業務や事業基盤の強化を行っております。これまでにも、公的研究機関の職員や大学教員から技術指導を受け、あるいは公的研究機関や大学との共同研究を行うなどして事業を推進してまいりましたが、企業と公的研究機関等との関係は、法令や公的研究機関等の内部規程の影響を受ける可能性があります。また、公的研究機関や国立大学の法人化等によって、公的研究機関や大学の知的財産権に関する意識も変化しつつあります。したがって、当社グループの想定どおりに共同研究や権利の取得を行うことができない可能性があり、そのような場合には、当社の事業戦略や業績に大きな影響を与える可能性があります。
(6) その他のリスク
株主還元政策について
当社は、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。また、内部留保については、企業価値を高めるべく研究開発に再投資し、自己資本利益率を高めていく考えであります。
このような方針に基づき、当社は、配当と内部留保のバランスを勘案しながら株主還元を図っていく予定でありますが、研究開発型企業であるため、研究開発費負担の増大等によって、安定した配当可能利益を確保できない可能性があります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
|
契約 |
契約書名 |
相手先名 |
契約 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱免疫生物研究所 |
特許権等実施契約書 |
科学技術振興機構 |
平成18年3月8日 |
「ヒト体液中テネイシンC測定臨床診断薬の開発」に関する新技術の概念を具現化する試作品を製作する条項に基づき、「抗テネイシンCモノクローナル抗体」を当社が事業化することを目的とする契約 |
平成18年3月8日から特許権の存続期間満了日まで |
|
㈱免疫生物研究所 |
売買取引基本契約書 |
㈱ニッピ |
平成18年9月1日 |
当社が製造するプリオン病診断キット「ニッピブルBSE検査キット」に関する売買取引基本契約 |
平成18年9月1日から平成21年8月31日まで(1年毎の自動更新) |
|
㈱免疫生物研究所 |
SUPPLY AND |
BG Medicine,Inc. |
平成23年6月22日 |
抗ヒトGalectin-3(87B5)抗体のライセンス譲渡および原料供給 |
平成23年6月22日から平成33年6月21日まで(1年毎の自動更新) |
|
㈱免疫生物研究所 |
COLLABOLATION AND LICENSE |
IBL International GmbH |
平成25年11月8日 |
アルツハイマー型認知症診断用のアミロイドβタンパク質に対する測定キットの共同開発とライセンスについての契約 |
平成25年11月8日から平成35年11月7日まで(1年毎の自動更新) |
|
㈱免疫生物研究所 |
共同研究契約書 |
アステラス製薬㈱ |
平成27年3月31日 |
カイコ由来リコンビナントヒトフィブリノゲンの大量製造にかかる最適化検討及びその機能評価、並びに医薬品としての開発可能性評価に関する共同研究契約 |
平成27年3月31日から3年間+90日 |
|
㈱免疫生物研究所 |
賃貸借契約書 |
マニハ食品㈱ |
平成26年12月19 |
GMP対応の本格的な遺伝子組換えカイコの生産工場建設を視野に入れたパイロットプラント用土地・建物 |
平成27年1月9日から平成47年1月8日まで |
|
㈱免疫生物研究所 |
Agreement for Monoclonal Antibody (Clone 82E1) |
Intellect |
平成28年3月31日 |
ヒト化82E1抗体をAMD(加齢性黄斑変性)治療薬として開発するプラットフォーム(CONJUMAB)のマイルストーン契約 |
平成28年3月31日から10年間もしくは特許満了日まで |
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
新たに締結した重要な契約は次のとおりです。
・共同研究契約
|
契約 |
契約書名 |
相手先名 |
契約 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱免疫生物研究所 |
共同研究契約書 |
㈱CURED |
平成28年5月16日 |
遺伝子組換えカイコを用いた治療用抗HIV抗体に関する共同研究契約 |
平成28年6月1日から平成30年3月31日まで |
|
㈱免疫生物研究所 |
共同研究契約書 |
国立大学法人京都大学、国立大学法人千葉大学、京都府公立大学法人 |
平成28年12月9日 |
アミロイドβの毒性オリゴマー特異的抗体の開発と診断及び治療への応用を共同で行うための研究契約 |
平成28年12月9日から平成32年3月31日まで |
当社グループは、製品開発型のバイオベンチャー企業として経営資源を医薬品研究開発へ積極的に投資しております。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は1,239,563千円であり、各事業の研究開発費については、診断・試薬事業は56,058千円、遺伝子組換えカイコ事業は1,175,612千円、検査事業は7,892千円となりました。なお、当連結会計年度において、前橋研究所は研究開発拠点としての意味合いが増加したため、同施設で計上していた設備等を研究開発費として941,704千円一括計上しております。各事業における内容等は次のとおりであります。
事業別の研究開発活動
① 遺伝子組換えカイコ事業
当社は、遺伝子組換えカイコの繭から抗体等のタンパク質を発現させる技術を用いて、種々のタンパク質の産業利用に向けた研究を進めており、研究用試薬から診断薬原料、化粧品原料、さらに、ヒト及び動物向け医薬品としての開発を推進してまいります。
イ ヒトフィブリノゲン
当社は、血液凝固活性を有する組換えヒトフィブリノゲンを遺伝子組換えカイコの繭中に生産させることに成功し、血液に代わって、ウイルス等の混入の可能性が無い、安全な製剤原料を提供できる可能性を見出してきました。現在、ヒトフィブリノゲンの医薬品原料としての製品化を目指し、アステラス製薬株式会社と共同研究を精力的に進めております。
ロ 動物用医薬品原料の生産
当社は、動物用医薬品メーカーと共同で、遺伝子組換えカイコによって動物用医薬品原料となるタンパク質の生産を進めております。遺伝子組換えカイコ生産技術の利点を最大限に生かし、高い安全性および有効性が要求される動物用医薬品の原料として活用することを目指すものであります。
ハ 研究用試薬および体外診断用医薬品原料としての抗体
当社は、研究用試薬や体外診断用医薬品に使用する抗体を、遺伝子組換えカイコにより生産する技術を開発してまいりました。この技術を活用して、当社の製品であるアミロイドβ測定キットに用いている抗体を、遺伝子組換えカイコ生産抗体に切り替えたほか、大手体外診断用医薬品メーカーへも、抗体の供給を行っております。
ニ ヒト型コラーゲン
当社は、遺伝子組換えカイコにより、アレルギーを起こす危険性が低い安心・安全なヒト型コラーゲンを開発することに成功しました。このコラーゲンを「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ」と命名し、化粧品原料として販売しております。また、ネオシルク化粧品のフレヴァンシリーズへも配合しております。
ホ ラミニン511-E8
iPS細胞等の培養足場材として有効であるラミニン511-E8を遺伝子組換えカイコを用いて安価に製造する方法を確立しました。2016年9月より、㈱マトリクソームが研究用試薬(商品名:iMatrix-511 silk)の販売を開始しました。
へ 抗HIV抗体
当社は、遺伝子組換えカイコにより生産した抗体の糖鎖には「フコース」が含まれないことを発見し、その技術により、高いADCC活性を有する抗体医薬品が製造できる可能性を示してきました。その技術を用い、フコースを含まない抗HIV抗体を開発し、ADCC活性を飛躍的に増強させ、遺伝子組換えカイコを用いた抗体医薬品の実用化を目指して、共同研究開発を進めており、順調に推移しております。
② 診断・試薬事業(医薬用関連)
当社では、抗体作製技術を基盤として、治療用医薬品あるいは診断用医薬品に適した抗体の創製に取り組んでおります。治療用医薬品開発においては、製薬企業各社がパイプラインを充実させるために医薬シーズに係る権利の譲渡又は許諾を受ける活動を積極的に展開していることを受けて、当社の人的資源と効率を鑑み、創薬ターゲットの探索及びそのターゲットに対する各種抗体の作製とそれらの抗体の薬効評価に特化しております。
また、診断用医薬品開発においては、当社研究用試薬として製品化してまいりました、アルツハイマー病、及び糖・脂質代謝関連疾患の領域での研究開発を進めております。
主な研究開発の進捗状況は以下の通りであります。
イ がん領域における抗体医薬品シーズ探索
当社グループは、大学との共同研究から、がん領域等における新たな抗体医薬品、及び体外診断用医薬品シーズの開発を行っております。
某大学との共同研究では、ヒト成人T細胞白血病(ATL)の診断に有効と考えられる関連タンパク質に対する抗体や測定系の開発を進めております。
ロ アルツハイマー病領域における治療用医薬品候補抗体の研究開発
当社は、京都大学、千葉大学との共同研究から、神経細胞に毒性を有するとされているアミロイドβの毒性コンフォマーに対する抗体を創出しております。モデル動物を使った薬効試験によるアルツハイマー型認知症治療薬シーズとしての評価、さらに診断における臨床的意義の検証を行ってまいりました。その結果、一定の認知機能障害の抑制効果、及び診断的意義が認められたことから論文発表を行いました。また、その成果として、以下にも記すように、アミロイドβ毒性コンフォマーに対する抗体を用いたELISA測定キットを開発し、研究用試薬として販売を開始しました。引き続き、本抗体の機能評価などを実施し、治療薬シーズとしての導出を進めてまいります。
ハ アルツハイマー病に対する体外診断用医薬品
当社は、海外他社とアルツハイマー病の診断を目的とした原因タンパク質の測定キットの共同開発を行い、欧州において体外診断用医薬品としての販売に至りました。今後は、安定的な製造を進めてまいります。
ニ 耳鼻科領域における、めまい・難聴にかかわる疾患の体外診断用医薬品
当社は、大学のシーズを元に、めまい・難聴の原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(Cochlin-tomoprotein)」に関して体外診断用医薬品としての開発を行っております。この度、体外診断薬申請 の経験豊富な体外診断薬メーカー、㈱コスミックコーポレーションと再実施許諾契約を締結し、日本国内での薬事申請・販売の権利を譲渡いたしました。現在、㈱コスミックコーポレーションが主体となって、体外診断用医薬品の承認申請に向けてデータ採取、資料作成を進行中です。承認された時は、当社は販売金額に応じたロイヤリティーを受領することになります。さらに、本製品の製造は当社において行うことで、将来、売上の拡大が期待されます。
ホ 筋ジストロフィー患者の診断マーカーの測定系開発
某大学及び研究機関との共同研究によって、筋ジストロフィー患者の診断のためのバイオマーカーとして、尿中のタイチンというタンパク質に対する測定系の開発を進めてまいりましたが、平成28年11月に研究用試薬として販売を開始いたしました。筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患です。患者尿中の解析において、このタイチンという巨大なタンパク質の断片が存在することが報告されており、本測定キットはこのタンパク質を特異的に検出することができます。また、このタンパク質は筋肉に存在することから、運動負荷による筋肉障害のバイオマーカーとしても有用であると考えています。病気の診断・病態のモニタリングマーカー、あるいは、運動のモニタリングマーカーとして、さらなる研究、開発を進めてまいります。
③ 診断・試薬事業(研究用関連)
研究用関連では、将来、診断に役立つ事を目指した抗体開発、及びそれを用いた測定キットの新製品の開発に取り組んでおります。分野として、当社の強みであるアルツハイマー病、がん・炎症及び糖・脂質代謝関連疾患の領域に特化した開発を行っております。
イ 老化関連分子に対する抗体・測定系の開発
この領域においては、既に可溶性α-Klotho測定キットを製品化し、国内外を問わず広く使用されております。平成28年7月にはマウス版を製品化し、研究用試薬として販売を開始いたしました。マウス動物モデルでの使用ユーザーに対して販売を促進してまいります。本分子以外にも老化に関連する分子に対する抗体・測定系の開発を進めております。
ロ アルツハイマー型認知症関連タンパク質に対する抗体・測定系の開発
アミロイドβを中心とした種々のタンパク質に対する抗体・測定系の開発を進めています。これまでもアミロイドβ、及びその前駆体蛋白であるAPPなどに対する製品を広くラインアップしておりますが、新規の分子に対する開発も継続しております。先述したように、アミロイドβ毒性オリゴマー測定キットを平成28年11月に発売いたしました。また、アミロイドβと並び重要なターゲット分子であるタウタンパク質の測定系開発も進めております。今後もユニークな製品を開発してまいります。
ハ メタボリックシンドローム・生活習慣病関連分子に対する抗体・測定系の開発
これまでにも糖代謝、脂質代謝、及び血圧調節などに関連する分子に対して特異的な測定系を開発、製品化しておりますが、既存製品の高感度化、あるいは新規ターゲットに対する測定系の開発等、継続して特徴のある新規製品を開発しております。その中で、糖代謝に関連する分子に対して特異的な測定系を開発、製品化してまいりましたが、特に、血糖値をコントロールするインスリンの分泌を促進するインクレチンというホルモンの測定系開発に注力しており、既存の製品に加えて、高感度化した新製品の開発、上市を進めてまいりました。その結果、平成28年5~7月にかけて、GIP、GLP-1各High sensitivityキットの販売を開始いたしました。さらに、インスリン自体に対しても、マウスやラットなどを用いた動物実験に使用可能な高感度の測定系を開発し同年9月に上市いたしました。
脂質代謝関連分子に関しては、脂肪の分解をつかさどる各種リパーゼ測定系の開発を進めております。その中で、リポプロテインリパーゼの酵素活性の新規測定系の開発を進めておりましたが、試作品が出来上がり、海外検査会社での評価を実施、平成29年度第2四半期には販売開始の予定です。さらに、既に発売を開始していた内皮性リパーゼ(EL)、肝性リパーゼ(HTGL)などの測定系を改良し高感度化した製品で、平成29年度第1四半期には販売開始の予定です。
また、平成29年4月6日群馬大学において研究発表がありましたタンパク質GPIHBP1につきましても測定キットを開発しております。このタンパク質は血管内部でLPLと結合して脂質異常症に関連する血管内皮細胞アンカータンパク質です。これらの脂質代謝関連タンパク質における体外診断薬への展開も視野に入れ、本共同研究を推進して参ります。
これらの脂質代謝関連タンパク質は、いわゆるメタボリックシンドロームといわれる疾患の中でも、特に脂質異常症に関連する因子であり、これらの測定キットはこの領域での基礎的な研究、及び治療薬の開発研究などに有効なものになると考えます。今後の研究成果によっては、研究用試薬に終わることなく、体外診断薬への展開も期待できます。また、検査事業においても、脂質に係るタンパク質であるリポタンパク質の詳細なプロファイリング測定サービスであるLipoSEARCH、あるいはコレステロールの吸収/合成マーカー測定サービスの提供を推進しており、これらの測定キットの販売、及び受託測定サービスなどを並行してプロモーションしていくことで、相乗効果を上げることが期待できます。これらの測定キット、測定サービスなどにより、この領域における当社の製品ラインアップを充実させ、存在意義を確立し、販売促進に努めてまいります。
二 Muse細胞に関する開発
株式会社生命科学インスティテュート(旧株式会社Clio、以下「LSII」という)とMuse細胞を用いた再生医療事業に関して共同研究を実施しています。Muse細胞は多能性幹細胞であり、損傷部位に集積・生着し、組織特異的な細胞に分化することで、損傷を受けた組織の構造や機能を修復します。当社は、Muse細胞の分離・精製等に関わる研究を進めております。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
① 流動資産
当連結会計年度における流動資産の残高は、前連結会計年度と比較して110.7%増の3,129,030千円となりました。増加した主な要因は、現金及び預金の増加等によるものであります。現金及び預金の増加は、社債の発行による収入1,388,520千円、銀行からの新規借入による収入330,000千円、新株予約権の行使による収入581,516千円等により資金が増加し、前橋研究所建設等固定資産の取得に係る支出390,785千円、長期借入金の返済による支出138,088千円等により資金が減少しております。
② 固定資産
当連結会計年度における固定資産の残高は、前連結会計年度と比較して84.1%減の296,869千円と大幅な減少となりました。この主な要因は、有形固定資産において当期に新設した前橋研究所の有形固定資産を一括で研究開発費に計上したこと及びそれ以外の資産を減損損失に計上したこと、無形固定資産においてのれんを全額償却したこと及びその他の無形固定資産を減損損失に計上したことによるものであります。
③ 流動負債
当連結会計年度における流動負債の残高は、前連結会計年度と比較して42.2%増の234,486千円となりました。増加した主な要因は、新規の長期借入れに伴う一年内返済予定の長期借入金が66,000千円増加したこと等によるものであります。
④ 固定負債
当連結会計年度における固定負債の残高は、前連結会計年度と比較して356.7%増の1,849,972千円となりました。増加した主な要因は、社債を1,388,520千円発行したこと及び銀行より330,000千円新規に借り入れたこと等によるものであります。
⑤ 純資産
当連結会計年度における純資産の残高は、前連結会計年度と比較して51.9%減の1,341,441千円となりました。この主な要因は、新株予約権の行使により資本金、資本準備金がそれぞれ325,471千円増加しましたが、一方親会社株主に帰属する当期純損失2,094,467千円の計上等によるものであります。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度につきましては、遺伝子組換えカイコ事業の拠点として、パイロットプラントを群馬県前橋市に開設し、前橋研究所として活動を開始いたしました。それに伴い、遺伝子組換えカイコ事業における研究開発への注力により人員の増強も行っております。
一方、同事業においての研究開発項目の増加等により研究開発拠点としての意味合いが益々大きくなったこと等により、同施設で固定資産として資産計上しておりました設備等を研究開発費として一括して費用計上することといたしました。
また、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき回収可能性を検討した結果、全社的なグルーピングにおいて有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することといたしました。さらに連結子会社である株式会社スカイライト・バイオテックの株式取得時に発生したのれんにつきまして、同社の事業の業績が経営環境の変化等により、策定した計画を下回って推移していることから、今後の計画の見直しを行った結果、のれんを減損損失として計上することといたしました。これらにより、当連結会計年度につきましては、2,094,467千円の親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなりました。
なお、今回の減損処理により、当社グループは、将来における減価償却の負担が大幅に軽減することとなります。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローが55,886千円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローが458,490千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが2,145,528千円の獲得となり、当連結会計年度期首から増加した現金及び現金同等物は1,630,186千円であります。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,522,102千円となっております。
当連結会計年度においては、遺伝子組換えカイコ事業での設備投資等のため、新株予約権の行使及び転換社債型新株予約権付社債の発行等により、資金を調達しております。また、研究開発や運転資金等に関わる所要資金は主に自己資金でまかなっており、手元流動性は必要十分な状況であると認識しております。