第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

  (1) 会社の経営の基本方針

  当社グループは、生物の生命維持に不可欠である免疫機構「抗体」について研鑽することによって、人類が病気から安全に免れるような治療用医薬品、診断用医薬品の開発や生活習慣病領域での検査サービスができるよう、独自の研究開発と大学・研究機関などとの共同研究の成果を製品の品質向上に結びつけるべく、研究開発活動を行っております。また、当社グループの成長戦略の柱とするカイコ繭中に、抗体を始めとした様々な安全性の高いタンパク質を発現させる技術を用いた、新しい生産系の確立に向けた研究開発活動を行っております。本技術では高い安全性を有する抗体医薬品等の生産開発など、医療に直接貢献できる事業を目標にしております。

  このように、世界で難病に苦しむ人々が、1日も早く病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念としております。

 

  (2) 目標とする経営指標

  当社グループは、医薬品開発を目標とする創薬系バイオベンチャーであり、研究開発費が先行して発生いたしますが、当社グループの技術力から生産される独創的な製品の販売やサービスを国内外に提供し、安定的に黒字化を継続できる経営を目指してまいります。

 

  (3) 中長期的な会社の経営戦略

  当社グループのセグメント別中長期経営戦略は、次のとおりであります。

・ 試薬・診断事業

  研究用関連においては、積極的に海外プロモーションを実施するとともに、信頼出来る海外パートナーを獲得し、自社ブランドの抗体製品やキット製品の海外での販売ネットワークの拡大を目指してまいります。

  医薬用関連については、牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットの販売が縮小していく中、今後につきましては、自社で創製した抗体を研究用試薬に留めることなく、診断薬や医薬品としての有用性を検証し、有用性が高いシーズについては自社での診断薬開発に着手してまいります。また、グローバルパートナーとの連携を強化し、広く世界で使用される診断薬製品の上市を目指してまいります。また、診断・試薬事業のさらなる基盤強化を図ることを目的に、新規体外診断薬・研究用試薬の開発における臨床研究を実施するための臨床検査場の設立を目指して参ります。

・ 遺伝子組換えカイコ事業

 遺伝子組換えカイコ事業においては、カイコの繭中に目的タンパク質を効率よく大量生産できる技術を改善・改良し、診断薬や化粧品原料への利用を拡大します。さらに医薬品への実用化を目指し、前橋研究所におけるGMP製造技術の開発に注力してまいります。

・ 検査事業

 当事業の主な検査領域は、生活習慣病に特化しており、その技術は、国内にとどまらず、海外においても今後も必要不可欠で同領域の需要は増加するものと予想されます。当事業は、現在、株式会社スカイライト・バイオテックの秋田ラボにおいて検査業務を行っておりますが、海外展開を視野に入れ、検査業務自体の海外導出を図ってまいります。また、当事業は、診断・試薬事業における研究開発の推進及び開発製品の需要拡大を目的とし、臨床検査事業の設立も視野に入れた、設備投資及び人材の育成を実施してまいります。

・ 化粧品関連事業

  当事業は、遺伝子組換えカイコ事業により開発された化粧品原料「ネオシルク-ヒト型コラーゲンI」を使用した化粧品の製品開発、販売が主な事業となっております。製品開発におきましては、動物由来原料を一切使用しない「今までにない安心・安全を提供し、消費者の皆様が満足できる化粧品」をモットーに基礎化粧品をはじめ、消費者の皆様の要望される化粧品の開発を順次進めてまいります。販売におきましては、消費者の皆様へ直接お届けする通信販売により展開しておりますが、さらに、北関東・信州・東北を中心とするドラッグストアへのテスト販売も開始され、海外への展開も視野に入れ、世界中の化粧品業界及び消費者の皆様に向けて展開してまいります。また、今後につきましては、「ネオシルク-ヒト型コラーゲンI」の安全性を周知徹底し、化粧品業界に新風を吹き込み「すべての化粧品にネオシルク-ヒト型コラーゲンI」を実現していく所存です。

 

  (4) 会社の対処すべき課題

   ・ 抗体の市場環境とその対応

  治療用医薬品あるいは診断用医薬品の開発には、多額の研究開発費と長い年月が必要であります。従って、これら医薬品の開発には、当社グループの人的資源と効率を鑑み、自社では製品化するまでの全過程を行うことが可能かどうか注意深く検討してまいります。特に医薬品においては、遺伝子組換えカイコ技術を用いたワクチンタンパク質の生産及び治療用医薬品のシーズ開発に特化する方針であります。このように、当社グループは、医薬品開発への積極的な投資によって、抗体に付加価値を付け、パイプラインを充実させることで企業価値の最大化を追求いたします。

   ・ パイプラインの拡充

 当社グループは、治療用医薬品及び診断用医薬品のさらなるパイプラインの充実のため、現行の共同研究先である大学などに加え、優秀な人材を採用し、研究の推進を行う方針であります。また、海外企業が保有する有用なシーズの発掘も積極的に行ってまいります。

   ・ 遺伝子組換えカイコ事業への取り組み

 カイコの繭中に目的タンパク質を産生する生産技術は、現在の生産方法に比較して製造コストを低減させることが可能です。短期的には、研究用試薬・体外診断用医薬品にて使用する抗体をはじめとした目的タンパク質の置換え利用や化粧品原料等への産業利用を推進し、具体的な生産受注を目指してまいります。中長期的には、動物用医薬品等の原料の実用化や株式会社CUREDとの抗HIV抗体の共同研究等、医薬品原料の研究開発を積極的に進めており、医薬品原料の生産拠点及び付随設備への投資や優秀な人材の採用及び生産体制の構築を進めてまいります。また、今後、研究開発項目の増加や製品化されているラミニン及びネオシルク-ヒト型コラーゲンⅠの生産に必要な遺伝子組換えカイコの飼育頭数が劇的に増加するため、大量飼育による人工飼料のコスト増が予想されます。この課題を解決するため、桑の葉の確保及び人工飼料のコスト低減を図るための事業化に向けた取り組みを進めてまいります。

   ・ 新規事業への取り組み

 当社グループは、遺伝子組換えカイコ事業により開発された新規化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ」及び同原料配合化粧品「フレヴァン」シリーズを完全子会社の株式会社ネオシルク化粧品で販売しております。同原料及び同原料配合化粧品を広く化粧品業界へ浸透させるべく、製造コストの低減を行い、大手化粧品原料取扱企業をはじめOEM製造や大手ドラッグストア等へ販路拡大を図ってまいります。

 

   ・ 人材の確保及び教育

  当社グループは、各事業に精通した研究員及びプロジェクトを推進できる人材の確保が必要不可欠と考えており、研究開発の効率を上げるため、ハード面とソフト面の両面から研究開発に適した環境作りを行い、企業価値の最大化を目指してまいります。

  研究開発型企業である当社グループにおいては、自由な発想が生み出される柔軟な組織がふさわしいと考えております。組織が硬直化し、研究開発活動が滞ることがないように、常に問題意識をもって物事に対処する集団として組織を維持運営いたします。

   ・ 財務安定性の確保

  当社グループは、研究開発型企業として、積極的かつ継続的に研究開発に投資していく方針であります。投資の源泉は事業からの収益をもって行われることが望ましいと考えておりますが、研究開発テーマにより多額の先行投資が見込まれる場合には、株式の発行等により資金を調達してまいります。当社グループは、引き続き、収益確保のため、現製品の見直しや間接部門コストの削減に努めてまいります。また、研究テーマの選択を行い、経営資源を集中して効率的な経営を行うことが重要であると認識しております。

 

  (注) 用語解説については、「第4提出会社の状況  6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。

 

2 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

  当社グループの事業活動において、リスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示いたします。

  当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの経営状況及び将来の事業についての判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。

 

(1) 会社の事業戦略に関するリスク

  ①  新規事業の立ち上げについて

 当社グループは、企業価値の最大化を追求するため、基盤技術である抗体作製技術からなる従来の診断・試薬事業はもとより、遺伝子組換えカイコ事業及び検査事業を積極的に展開していく方針であります。遺伝子組換えカイコ事業を軌道に乗せるためには相応の事業開発のノウハウが必要でありますが、現状当社にはこのようなノウハウが十分存在するとは言えません。当該事業及び販売先の業界に精通した営業を推進できる人材の確保や他社との提携を含め、ノウハウの蓄積が重要になります。また、当該事業においては、遺伝子組換えカイコによる医薬品原料の製造を目指しておりますが、GMP等の高度な規制への対応に関し、当社が十分な設備やノウハウを保有しているとは言えない状況です。そのため、設備ならびに人材への先行投資が必要となりますが、この分野においては、研究開発の成否リスクが高い反面、短期間での収益が保障されるものではないため、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。さらに、新設事業では研究開発費が先行することが想定されますので、当該事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。また、検査事業においては、基盤技術である高速液体クロマトグラフィーを用いたリポタンパク質プロファイリング技術によって開拓したR&Dに従事する顧客群に向けて「Lipid」(=脂質)をキーワードとした新たな分析サービスを積極的に展開し、取引単価の大幅な向上を目指す方針であります。新たなサービスを投入するためには、設備ならびに人材への先行投資が必要となるため、本事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。

  ②  基礎研究の強化に伴う収益構造及びキャッシュ・フローの変化について

  当社グループは、診断・試薬事業及び遺伝子組換えカイコ事業の両事業を主軸としております。当該事業における基礎研究は、研究開発費の負担が大きく、研究開発の成否リスクが高いことに加えて、直ちに収益を生むものではないため、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。

  また、このような収益構造の変化に加え、新設事業が順調に立ち上がらない場合には、営業損失や営業キャッシュ・フローのマイナスが常態化するおそれもあります。

  ③  リポタンパク質プロファイリング技術への依存度について

  当該事業の基盤技術は、知的財産とノウハウによって守られたリポタンパク質プロファイリング技術であり、これが当該事業の最大の強みであります。しかしながら分析技術の発達によって、より進歩した技術が出現する可能性は否定できません。新たな技術が台頭した場合、当該事業のリポタンパク質プロファイリング技術を基盤とする競争優位性のほとんどが、短期間に失われるおそれがあります。

 

(2) 各事業に関するリスク

  ①  研究用試薬市場の特性と収益の伸び悩みについて

 研究用試薬の市場は、研究の多様化に対応する必要があるため、製品は多種類かつ一製品当たりの売上は限定的であるという特徴があります。さらに、近年は競合他社との販売競争が激化し、価格低下に拍車がかかってきており、急激な市場の拡大は考えにくい状況にあるものと思われます。

  当社グループにおいて、新製品の開発が計画通りに進まなかったり、あるいは新製品の販売動向が期待通りに推移しなかったり、既存製品の製造販売が何らかの要因で縮小又は中止となった場合には、売上が伸び悩み、且つ利益率の低下が生じて、業績に大きな影響を与える可能性があります。

  ②  医薬用関連に関するリスクとパイプラインの概況について

  当社グループは、医薬用関連において、治療用医薬品及び診断用医薬品のシーズを探索し、その使用権や製造販売権等の権利を製薬企業に譲渡又は許諾する事業を行っております。すなわち、権利譲渡又は権利許諾の対価として契約金を、また、特許の使用料としてロイヤリティーを譲渡先又は許諾先の企業から受領するビジネスモデルであります。しかしながら、有望なシーズを想定どおりに探索できない場合、探索できたが譲渡又は許諾する企業が見つからない場合、当社グループが想定した契約金やロイヤリティーを確保できない場合、あるいは、譲渡先又は許諾先の企業において候補品の開発の遅滞又は中止となった場合には、マイルストーン契約金やロイヤリティーが計上できず、将来、当社グループの業績及び経営計画に大きな影響を与える可能性があります。なお、「第1企業の概況  3 事業の内容」及び「6研究開発活動」に主要なパイプラインの概況を記載しておりますが、その推進には常に上述のようなリスクが伴い、開発中のパイプラインの成否によって、将来当社グループの業績及び財政状態は大きな影響を受けることとなります。

  ③  遺伝子組換えカイコ事業における環境の変化について

 遺伝子組換えカイコ事業の元になっている養蚕技術に関しては、わが国における養蚕業の衰退と養蚕農家の高齢化が重なり、その承継が難しくなってきています。さらに、そのような状況下でカイコの飼料も含めた養蚕に係る物資などの供給体制が、将来にわたって安定的に継続されていくものかどうか不安が残ります。これらが途絶えた場合、事業の継続が困難になります。

 

(3) 事業遂行上のリスク

  ①  知的財産権に係る訴訟リスクについて

  当社グループの事業を遂行していく中で、他者の知的財産権を使用することも多々あります。当社グループでは適法な手続のもとに他者の知的財産権を使用することとしておりますが、当社グループの認識外で他者の知的財産権を侵害している可能性もあります。当社グループでは、他者の知的財産権への抵触が判明した時点で遅滞なくライセンス契約を締結してきたため、今までに知的財産権の侵害を理由とする訴訟を提起されたことはありませんが、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われます。当社グループは、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針でありますが、訴訟が提起された場合、当社グループの事業戦略や業績に重大な影響を与える可能性があります。

  ②  第三者等の侵入について

  当社グループの研究所においては、実験動物及び遺伝子組換えカイコが飼育されております。当社グループは、十分なセキュリティー体制の下にこれらの管理を行っておりますが、第三者等の侵入・危害を完全に防ぐことができない場合には、無菌施設内の動物やカイコヘの雑菌の感染等によって、当社グループの事業活動に大きな影響を与える可能性があります。また、第三者等によって誤解を与えるような風評を流布された場合には、当社グループの企業イメージが損なわれる可能性があります。

  ③  当社と同一商号を有する海外販売代理店について

  当社と同一商号を有する会社が米国及びドイツに存在し、これらの会社は現在、当社の海外販売代理店となっております。しかしながら、当該各社と当社との資本関係及び役員の兼任関係は全くなく、当社が各社の経営について責任を負う必要はありませんが、商号が同一であるため、同一グループであると誤認される可能性があります。当社では、このような誤認が生じないようホームページ上で注意を喚起しておりますが、各社の会社イメージが悪化した場合など、何らかの影響を当社が蒙る可能性がないとは言えません。

  ④  為替レートの変動について

  当社グループは、診断・試薬事業において、海外企業から研究用試薬等を輸入しているほか、海外販売代理店に対して研究用試薬等を輸出しております。現状、当社グループは、為替予約等による為替リスクのヘッジを行っていないため、為替レートの動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

  ⑤  機密情報の流出について

  当社グループの事業を遂行する上で、社外の研究者や研究機関との情報交換は有益であると考えております。今後も積極的に情報交換を行っていく方針であり、商品・サービスの提供や営業活動に必要となる顧客氏名・性別・住所・電話番号等の個人情報、その他業務上、必要となる各種情報をシステム上で管理しております。第三者に当該機密情報を窃取された場合、企業にとって致命傷となりかねません。このため、当社グループでは、基幹システムやサーバーのセキュリティー強化に加え、情報を外部に開示する際の手続を明確化して組織の末端まで周知徹底させておりますが、万が一機密情報が流出した場合には、多大な損害を被るおそれがあります。

  ⑥  自然災害について

  地震等大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊あるいは事業活動の停滞によって、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

 

(4) 組織に関するリスク

  ①  小規模組織であることについて

 当社グループは、小規模な組織となっております。当社グループは、内部統制などの組織的対応の強化を図っておりますが、現状は小規模組織であり、人的資源に限りがあるため、個々の役職員の働きに依存している面もあり、役職員に業務遂行上の支障が生じた場合又は役職員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。一方で、組織規模の急激な拡大は固定費の増加につながり、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

  ②  人材の確保と研究開発力の維持について

  当社グループでは、事業の変化に伴って、人材の確保と育成が重要な課題となっており、内部での人材育成及び外部からの人材登用に努めております。しかしながら、適正な人材の確保、育成及び維持が計画どおりに進捗しなかった場合又は人材が社外に流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

  特に、研究開発での人材不足は、当社グループの生命線である研究開発力の低下につながるおそれがあります。また、会社規模の変動とともに組織が硬直化し、モラルハザードが発生した場合にも、研究開発力が低下するおそれがあります。研究開発力は当社グループの強みであるため、これが失われた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(5) 規制に関するリスク

  ①  法的規制について

    イ  薬事法

  当社グループが株式会社ニッピより受託製造する牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットは、薬事法の規制を受けております。本製品は、当社グループの主力製品の一つであり、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、大きな売上減少要因となる可能性があります。

    ロ  遺伝子組換え生物等規制法

  遺伝子組換え生物等の使用による生物多様性への悪影響を阻止する目的で、平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社グループが保有する藤岡研究所、前橋研究所及び三笠研究所は当該法律が適用される施設であるため、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、研究開発の遅延等によって業績に重大な影響を与える可能性があります。

    ハ  廃棄物処理法

  当社グループが事業で使用する実験動物に由来する排出物などは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。

    ニ  毒劇物取締法

  当社グループが事業で使用する研究用試薬は、「毒物及び劇物取締法」(毒劇物取締法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。

  ②  公的研究機関及び大学との関係について

  当社グループは、公的研究機関や大学との連携を通じて、研究開発業務や事業基盤の強化を行っております。これまでにも、公的研究機関の職員や大学教員から技術指導を受け、あるいは公的研究機関や大学との共同研究を行うなどして事業を推進してまいりましたが、企業と公的研究機関等との関係は、法令や公的研究機関等の内部規程の影響を受ける可能性があります。また、公的研究機関や国立大学の法人化等によって、公的研究機関や大学の知的財産権に関する意識も変化しつつあります。したがって、当社グループの想定どおりに共同研究や権利の取得を行うことができない可能性があり、そのような場合には、当社の事業戦略や業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(6) その他のリスク

    株主還元政策について

  当社は、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。また、内部留保については、企業価値を高めるべく研究開発に再投資し、自己資本利益率を高めていく考えであります。

  このような方針に基づき、当社は、配当と内部留保のバランスを勘案しながら株主還元を図っていく予定でありますが、研究開発型企業であるため、研究開発費負担の増大等によって、安定した配当可能利益を確保できない可能性があります。

 

  (注) 用語解説については、「第4提出会社の状況  6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 (1) 経営成績等の状況の概要

  ① 経営成績の状況 

  当連結会計年度における我が国経済は、政府による経済政策、日銀の金融緩和策及び米国での景気回復の継続を背景とした企業収益の改善ならびに設備投資の緩やかな増加や雇用・所得環境の改善もあり、総じて緩やかな回復基調で推移いたしました。

  当社グループの主力事業が属するわが国医薬品業界においては、ジェネリック医薬品使用促進策の強化や薬価制度の抜本改革といった医療費抑制策の流れが加速するなど、引き続き厳しい環境下で推移いたしました。

  このような状況の下、当社グループのセグメント別での業績は、次のとおりとなりました。

  <診断・試薬事業>

  当事業においては、研究用試薬関連では、海外取引先との関係構築に力を入れ、積極的に海外での学会等の出展や海外代理店とのコミュニケーションに重点をおいて活動を行ってまいりました。また、国内においても、自社の営業資源が少ないことから代理店との関係強化を行ってまいりました。その結果、当社の主力製品であるアルツハイマー病関連や腎臓病疾患関連のEIA測定キットを中心とした抗体製品が、特に海外において順調に売上を伸ばしております。また、試薬関連受託サービスにおいても、高い技術力及び顧客からの信頼により、順調に売上を伸ばしました。

  医薬用関連においては、主力製品は動物用体外診断用医薬品の牛海綿状脳症測定キット(BSEキット)であり、国内において当社が独占状態で販売しております。そのほか、マイコプラズマ感染症診断薬原料やアルツハイマー病(AD)の体外診断薬原料などを販売しております。また、販売品目の充実にむけ、諸々の研究テーマで研究開発を行っております。当期の売上につきましては、マイコプラズマ感染症診断薬原料の販売が、製造方法・ロットサイズの変更等の影響により前期と比べ減少、海外へ販売しているアルツハイマー病(AD)の体外診断薬原料においても、前期末に纏まった売上が計上されたこと等により、前年と比べ減少いたしました。一方、主力製品のBSEキットの売上が大幅に増加した結果、前年に比べ医薬品関連の売上高は増加いたしました。

  その結果、当セグメントの売上高は、605,745千円(前年同期比8.9%増)となり、営業利益は127,506千円(前年同期比8.2%増)となりました。

なお、当事業においては、新規治療薬シーズの開発や体外診断用医薬品の製品開発を積極的に行っております。

  当事業は当社グループの基幹事業であり、今後においても増収・増益を目指して参ります。

  <遺伝子組換えカイコ事業>

  当事業は目的タンパク質を繭中に産出させる遺伝子を組み込んだ遺伝子組換えカイコの繭からタンパク質を抽出し、診断薬原料等の抗体や化粧品原料となるヒト型コラーゲンを産出しております。一方、遺伝子組換えカイコを用いた医薬品製造を実現させるべく、抗HIV抗体をはじめとするバイオ医薬品開発、ならびに、その製造技術の開発を進めているところであり、事業の重点を研究開発に置いております。そのような状況から、限りある人的資源をかなりの部分研究に振り向けており、製品の製造や受託サービスに振り向ける人的資源は限定的となっており、取引先からの多くの引き合い等には応じきれていないのが現状です。当期の売上につきましては大手体外診断用医薬品企業へ診断薬原料抗体の売上が計上されましたが、共同研究契約先からの契約金収入などの計上がなかったこと等により、前年同期に比べ大幅に減少しております。また、前述のとおり積極的に研究開発を進めており、研究開発先行という状況から研究開発費を積極的に投じております。その結果、当セグメントの売上高は21,844千円(前年同期比69.6%減)、営業損失は179,240千円(前年同期は1,239,697千円の営業損失)となりました。

  なお、当事業においては、継続して積極的に研究開発費を投じ、中長期的に企業価値の向上を目指します。

  <検査事業>

  当事業の主力事業は、血中リポタンパク質プロファイリングサービス「LipoSEARCH」であり、国内外にサービスを展開しております。この「LipoSEARCH」の分析サービスは血中のリポタンパク質のサイズを多角的に測定できるほか、粒子数についても測定ができるサービスであります。

 一方、コレステロールの測定需要が高い海外、特に米国への技術導出として、「LipoSEARCH」サービスよりもサービス内容を限定し、簡易にかつ迅速、大量の検体を測定できるサービスを構築できるよう、準備を進めている段階であります。

 当期の業績につきましては、大手製薬企業のパイプラインを俯瞰すると、脂質代謝に関わるものが多くない中にあって、食品企業などへと販路を広げていったこと等も寄与し、また大口案件の受注増等もあり、売上高は前年に比べ増加いたしました。その結果、当セグメントの売上高は115,988千円(前年同期比10.2%増)、営業利益は10,634千円(前年同期は18,309千円の営業損失)となり、利益を計上することができました。

  なお、当事業においては、継続して安定した黒字化を目指して参ります。

  <化粧品関連事業>

  当事業では、遺伝子組換えカイコの繭から産出されたヒト型コラーゲン「ネオシルク-ヒト型コラーゲンⅠ」配合化粧品「フレヴァン」シリーズを販売しております。国内においては、インターネットを用いた通信販売や大手薬局チェーン店の売上が主なものでありますが、想定より展開が遅れております。一方、当期より東南アジア向けの販売を開始し、売上が増加いたしました。また、中国向けの販売開始を目指し、販売許可申請を行っております。さらに、化粧品原料「ネオシルク-ヒト型コラーゲンⅠ」につきましては、欧州を中心に世界に向けて販売するために、欧州の代理店と共同で販売準備を進めております。

その結果、当セグメントの売上高は21,267千円(前年同期比54.1%増)、営業損失は8,651千円(前年同期は17,743千円の営業損失)となりました。

  なお、当事業においては、当期において利益創出を目指しておりましたが、中国向けの販売申請が来期にずれ込むこととなり、来期の黒字化を見込んでおります。

 

  これらの結果、連結業績は下記のとおりとなりました。

  売上高は758,286千円(前年同期比2.3%増)となりました。販管費につきましては遺伝子組換えカイコ事業の研究開発等への積極的な投資を行っている一方、前期に資産の減損や一括償却を行い多額の減価償却費を計上し、今期の減価償却費負担が軽減したことや営業キャッシュ・フローの黒字化を目指し設備投資を極力控えたこと、さらに一般管理費の経費節減等により525,769千円(前年同期は1,571,714千円)となり、その結果、営業損失は48,791千円(前年同期は1,156,931千円の営業損失)となりました。経常損失につきましては、収益項目として、当社所有の特許等の使用からの収入である受取ロイヤリティを計上した一方、昨今の円高傾向を反映し外貨建資産負債の為替換算の結果為替差損を計上したことなどから49,013千円(前年同期は1,170,355千円の経常損失)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は投資有価証券の減損処理等により52,637千円(前年同期は2,094,467千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

  ② 財政状態

     ・ 流動資産

  当連結会計年度における流動資産の残高は、前連結会計年度と比較して4.2%減の2,998,213千円となりました。減少した主な要因は、「現金及び預金」及び流動資産「その他」の減少等によるものであります。「現金及び預金」の減少は、「親会社株主に帰属する当期純損失」であることや借入金の返済等によるものであり、流動資産「その他」の減少は、前期の税額(消費税)の還付等によるものであります。

     ・ 固定資産

  当連結会計年度における固定資産の残高は、前連結会計年度と比較してほぼ同等(0.0%減)の296,801千円となりました。当期において、投資先の資産価値減少により投資有価証券の評価損を計上しております。

     ・ 流動負債

  当連結会計年度における流動負債の残高は、前連結会計年度と比較して28.9%増の302,154千円となりました。増加した主な要因は、期末に集中して資産を購入したことによる支払債務の増加によるもの、税金債務(消費税)が増加したこと等による流動負債の「その他」が増加したこと等によるものであります。

     ・ 固定負債

  当連結会計年度における固定負債の残高は、前連結会計年度と比較して47.3%減の975,083千円となりました。減少した主な要因は、新株予約権の行使により転換社債型新株予約権付社債が728,973千円減少したこと、借入金の返済により長期借入金が146,088千円減少したこと等によるものであります。

     ・ 純資産

  当連結会計年度における純資産の残高は、前連結会計年度と比較して50.4%増の2,017,777千円となりました。当期は「親会社株主に帰属する当期純損失」52,637千円を計上しましたが、新株予約権の行使により資本金、資本準備金がそれぞれ364,486千円増加したこと等によるものです。

 

  ③ キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度に比べ71,226千円減少し2,450,875千円となりました。

  当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

   (営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動により獲得した資金は73,847千円(前年は55,886千円の支出)となりました。

この主な要因は、税金等調整前当期純損失51,940千円を計上しましたが、前期の決算に基づく消費税の還付金の入金が82,014千円あったこと等によるものであります。また、経費節減や設備投資行動を抑制したことが奏功し、支出の抑制につながりました。

   (投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動により支出した資金は6,278千円(前年は458,490千円の支出)となりました。

  当社グループでは現状、購入した有形固定資産及び無形固定資産として計上すべき資産を同勘定科目で計上せず、即時費用処理を行っており、キャッシュ・フロー上もその購入に係る支出は営業キャッシュ・フローとして計上しております。そのため、当期におけるキャッシュ・フローは、ほぼ3ヶ月を超える定期預金等の預入、解約に係るものとなっております。

   (財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動により支出した資金は138,300千円(前年は2,145,528千円の獲得)となりました。この主な要因は、長期借入金の返済による支出146,088千円によるものであります。

 

  (注) 用語解説については、「第4提出会社の状況  6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。

 

 

  ④ 生産、受注及び販売の実績

  a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

診断・試薬事業

159,420

△12.8

遺伝子組換えカイコ事業

65,719

△32.4

検査事業

40,416

△12.8

化粧品関連事業

合計

265,556

△18.6

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、製造原価によっております。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

  b. 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

診断・試薬事業

22,467

31.6

遺伝子組換えカイコ事業

検査事業

化粧品関連事業

16,749

194.4

合計

39,216

72.3

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、仕入価格によっております。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

  c. 受注実績

当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 

  d. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

診断・試薬事業

601,156

8.8

遺伝子組換えカイコ事業

21,744

△69.7

検査事業

114,118

10.2

化粧品関連事業

21,267

54.1

合計

758,286

2.3

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

(自  平成28年4月1日

(自  平成29年4月1日

至  平成29年3月31日)

至  平成30年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

岩井化学薬品㈱

91,847

12.4

81,593

10.8

㈱ニッピ

54,598

7.4

80,770

10.7

 

(注) 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

  

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討の内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  ① 経営成績の分析

  当社グループは診断・試薬事業、遺伝子組換えカイコ事業、検査事業及び化粧品関連事業により構成されており、当連結会計年度の当社グループの業績の分析につきましては、次のとおりであります。

  診断・試薬事業は、当社の創業以来の基幹事業であり、製薬企業や医療関係の大学研究所等に対し、研究用試薬や体外診断用医薬品等の製造販売や抗体関連の受託サービス、さらに、医薬品原料のシーズ開発を行っており、その技術力については顧客からの信頼をいただいております。しかしながら、当社の事業基盤である研究用試薬や受託サービスを展開している国内市場は、その規模に比して競合他社が多数存在し、将来的な収益の伸張に限界があり、また、体外診断用医薬品や医薬品原料シーズの開発は、資金と時間が、膨大にかかる場合があります。そのような状況の中、国内外の市場ニーズを捉え、製品開発力の強化を図り、ユニークな製品を開発し、国内市場のシェアを拡大しております。また、海外においては、海外で実施されている学会に積極的に出展し、その際に研究者や代理店等と直にコンタクトを取り、コミュニケーションを深め、より広範囲に関係構築を図り、当社製品の販売活動に注力し、現在、その効果は取引社数、取引地域の増加とともに売上高の増加といった形ではっきり表れており、売上高は605,745千円と前年同期に比べ8.9%増加し、営業利益は127,506千円と前年同期に比べ8.2%増加し、増収増益といった形で成果が現れております。

  遺伝子組換えカイコ事業につきましては、前期に医薬品原料の開発を目的として前橋研究所を新設し、藤岡研究所から移転いたしました。前橋研究所では、以前からアステラス製薬株式会社と進めていた共同研究で、目的のタンパク質(フィブリノゲン)の産生が薬剤として使用するための目標コストを満たす生産量に到達することができず、残念ながら商業生産への取り組みを断念することとなりましたが、現在、株式会社CUREDとの共同研究(抗HIV抗体)をはじめ様々な共同研究を実施しております。今後もこれまで培ってきたノウハウを基に、遺伝子組換えカイコによる有用タンパク質の特徴を最大限に活かし、コストパフォーマンスの秀でた製品で、社会に貢献し得るターゲットについて研究開発を進めてまいります。当事業は現在の収益を見込むことではなく、次世代の当社グループの新たな根幹を担う事業に成長させることを目標として活動しているため、当連結会計年度においては売上という形での成果は現れておらず、売上高は21,844千円と前年同期に比べ69.6%減少し、営業損失は前年同期に1,239,697千円でしたが当連結会計年度は179,240千円となりました。

  検査事業につきましては、先に触れておりますが、現状では主要取引先である国内大手製薬企業のパイプラインにおいて、当事業の主要領域業務である脂質代謝関連品目の開発に減少傾向がみられるため、より脂質異常関連疾患が深刻な海外への積極的な展開や現代の健康ダイエット志向をターゲットとした食品群の開発を行っている食品業界などへの販路拡大を進めております。当社グループは人的な営業資源が少ない中にあって、診断・試薬事業部門と相乗効果を発揮すべく、国内外の学会等の共同出展や営業展開を積極的に行っており、その効果が出始めているところであり、売上高は115,988千円と前年同期に比べ10.2%増加し、営業利益につきましては前年同期は18,309千円の営業損失でありましたが、当連結会計年度は10,634千円の利益を計上することができ、診断・試薬部門といともに成果が現れているものと考えております。

  化粧品関連事業につきましては、化粧品業界の経験がない中、国内において、通信販売や群馬県を中心とした地道な活動を行ってまいりましたが、アジアを中心とする海外に目を向け、販売を開始したことが一つの転機となり、売上増に繋がっており、売上高は21,267千円と前年同期に比べ54.1%増加し、営業損失は前年同期が17,743千円の営業損失のところ、8,651千円の損失と、損失幅が減少しております。また、準備段階ではありますが、来期には中国向けに販売を開始する予定であり、サンプル提供による反響が大きいことから、かなりの需要が見込まれるため、同事業の飛躍的な発展に繋がるものと予想しております。

  当社グループは、診断・試薬事業、検査事業及び化粧品関連事業で創出する利益により遺伝子組換えカイコ事業の研究開発を支え、2020年3月期の連結業績において黒字化を目指してまいります。

  一方、原価、経費等の面におきましては、前連結会計年度に有形固定資産及び無形固定資産の全額について、即時減価償却の実施や減損損失を計上したことにより、当連結会計年度においては、減価償却費負担がなくなっております。さらに、当連結会計年度に取得した設備等の固定資産につきましても即時全額費用計上を行っております。また、当連結会計年度においては営業キャッシュ・フローの黒字化を大命題に取り組み、経費節減及び設備投資の抑制を行ってまいりました。連結業績では残念ながら利益を計上することができませんでしたが、診断・試薬事業及び検査事業については計画通り利益を計上することができました。

  

   ② 資本の財源、資金の流動性について

 資本の財源については、自己資金で賄うことを基本としておりますが、状況に応じて金融機関からの借入や新株発行による増資(新株予約権の行使によるものも含む)等によるものも考慮に入れております。現在当社では新株予約権や転換社債型新株予約権付社債を発行しており、当連結会計年度においても行使による増資が行われております。当連結会計年度につきましては設備投資を抑制したことから資金の支出は原材料の調達や販売費及び一般管理費といった運転資金が主なものでありました。

 資金の流動性につきましては、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローが73,847千円の獲得、投資活動によるキャッシュ・フローが6,278千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが138,300千円の支出でありますが、現金及び現金同等物の期末残高は2,450,875千円であり、各キャッシュ・フローの規模等を勘案し、十分な手元流動性を確保しているものと考えております。

 翌連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、運転資金での支出が主なものであり、重要な設備投資は予定しておりませんので、先に述べましたとおり、現金及び現金同等物で十分賄える見込みであります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

契約
会社名

契約書名

相手先名

契約
締結日

契約内容

契約期間

㈱免疫生物研究所

特許権等実施契約書

科学技術振興機構

平成18年3月8日

「ヒト体液中テネイシンC測定臨床診断薬の開発」に関する新技術の概念を具現化する試作品を製作する条項に基づき、「抗テネイシンCモノクローナル抗体」を当社が事業化することを目的とする契約

平成18年3月8日から特許権の存続期間満了日まで
 

㈱免疫生物研究所

売買取引基本契約書

㈱ニッピ

平成18年9月1日

当社が製造するプリオン病診断キット「ニッピブルBSE検査キット」に関する売買取引基本契約

平成18年9月1日から平成21年8月31日まで(1年毎の自動更新)

㈱免疫生物研究所

SUPPLY AND
PURCHASE AGREEMENT

BG Medi-cine,Inc.

平成23年6月22日

抗ヒトGalectin-3(87B5)抗体のライセンス譲渡および原料供給

平成23年6月22日から平成33年6月21日まで(1年毎の自動更新)

㈱免疫生物研究所

COLLABOLATION AND LICENSE
AGREEMENT
 

IBL Interna-tional GmbH

平成25年11月8日

アルツハイマー型認知症診断用のアミロイドβタンパク質に対する測定キットの共同開発とライセンスについての契約

平成25年11月8日から平成35年11月7日まで(1年毎の自動更新)

㈱免疫生物研究所

賃貸借契約書

マニハ食品㈱

平成26年12月19

GMP対応の本格的な遺伝子組換えカイコの生産工場建設を視野に入れたパイロットプラント用土地・建物

平成27年1月9日から平成47年1月8日まで

㈱免疫生物研究所

共同研究契約書

㈱CURED

平成28年5月16日

遺伝子組換えカイコを用いた治療用抗HIV抗体に関する共同研究契約

平成28年6月1日から平成30年3月31日まで
(協議の上延長可)

㈱免疫生物研究所

共同研究契約書

国立大学法人京都大学、国立大学法人千葉大学、京都府公立大学法人

平成28年12月9日

アミロイドβの毒性オリゴマー特異的抗体の開発と診断及び治療への応用を共同で行うための研究契約

平成28年12月9日から平成32年3月31日まで

 

  (注) 用語解説については、「第4提出会社の状況  6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。

 

  新たに締結した重要な契約は次のとおりです。

製造販売許諾契約

契約
会社名

契約書名

相手先名

契約
締結日

契約内容

契約期間

㈱免疫生物研究所

研究成果有体物製造販売許諾契約書

㈱生命科学インスティテュート

平成30年2月20日

㈱生命科学インスティテュートとの共同開発の成果であるSSEA-3に対する特異的なIgGクラス新規抗体を大学や製薬企業等の研究機関へ販売するための販売許諾契約

平成30年2月20日から平成35年2月19日まで(自動延長)

 

 

 

 

  当連結会計年度で終了した契約は次のとおりです。

契約
会社名

契約書名

相手先名

契約
終了日

契約内容

㈱免疫生物研究所

Agreement for Monoclonal Antibody (Clone 82E1)

Intellect
Neuro-sciences, Inc.

平成29年9月6日

ヒト化82E1抗体をAMD(加齢性黄斑変性)治療薬として開発するプラットフォーム(CONJUMAB)のマイルストーン契約

㈱免疫生物研究所

共同研究契約書

アステラス製薬㈱

平成30年3月16日

カイコ由来リコンビナントヒトフィブリノゲンの大量製造にかかる最適化検討及びその機能評価、並びに医薬品としての開発可能性評価に関する共同研究契約

 

 

5 【研究開発活動】

  当社グループは、製品開発型のバイオベンチャー企業として経営資源を医薬品研究開発へ積極的に投資しております。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は173,030千円であり、各事業の研究開発費については、診断・試薬事業は59,807千円、遺伝子組換えカイコ事業は109,637千円、検査事業は3,585千円となりました。各事業における研究開発活動の内容等は次のとおりであります。

 

  事業別の研究開発活動

 ①  遺伝子組換えカイコ事業

  当社は、遺伝子組換えカイコの繭から抗体等のタンパク質を発現させる技術を用いて、種々のタンパク質の産業利用に向けた研究を進めており、研究用試薬から診断薬原料、化粧品原料、さらに、ヒト及び動物向け医薬品としての開発を推進してまいります。

    イ 抗HIV抗体

  当社は、遺伝子組換えカイコにより生産した抗体の糖鎖には「フコース」が含まれないことを発見し、その技術により、高いADCC活性を有する抗体医薬品が製造できることを示してきました。その技術を用い、フコースを含まない抗HIV抗体を開発し、ADCC活性を飛躍的に増強させ、遺伝子組換えカイコを用いた抗体医薬品の実用化を目指しております。本研究開発をテーマとする株式会社CUREDとの共同研究は順調に推移したため、2018年3月には、両者が共同で事業化を推進することを前提とした発展的な共同開発契約を締結しております。

    ロ  動物用医薬品原料の生産

 当社は、動物用医薬品メーカーと共同で、遺伝子組換えカイコによって動物用医薬品原料となるタンパク質の生産を進めております。遺伝子組換えカイコ生産技術の利点を最大限に生かし、高い安全性および有効性が要求される動物用医薬品の原料として活用することを目指すものであります。

    ハ 研究用試薬および体外診断用医薬品原料としての抗体

  当社は、研究用試薬や体外診断用医薬品に使用する抗体を、遺伝子組換えカイコにより生産する技術を開発してまいりました。この技術を活用して、当社の製品であるアミロイドβ測定キットに用いている抗体を、遺伝子組換えカイコ生産抗体に切り替えたほか、大手体外診断用医薬品メーカーへも、抗体の供給を行っております。

    ニ ヒト型コラーゲン

  当社は、遺伝子組換えカイコにより、アレルギーを起こす危険性が低い安心・安全なヒト型コラーゲンを開発することに成功しました。このコラーゲンを「ネオシルク-ヒト型コラーゲンⅠ」と命名し、化粧品原料として販売しております。また、ネオシルク化粧品のフレヴァンシリーズへも配合しております。

    ホ ラミニン511-E8

 iPS細胞等の培養足場材として有効であるラミニン511-E8を遺伝子組換えカイコを用いて安価に製造する方法を確立しました。2016年9月より、㈱マトリクソームが研究用試薬(商品名:iMatrix-511 silk)の販売を開始しました。

 

  ②  診断・試薬事業(医薬用関連)

  当社では、抗体作製技術を基盤として、治療用医薬品あるいは診断用医薬品に適した抗体の創製に取り組んでおります。治療用医薬品開発においては、製薬企業各社がパイプラインを充実させるために医薬シーズに係る権利の譲渡又は許諾を受ける活動を積極的に展開していることを受けて、当社の人的資源と効率を鑑み、創薬ターゲットの探索及びそのターゲットに対する各種抗体の作製とそれらの抗体の薬効評価に特化しております。

  また、診断用医薬品開発においては、当社研究用試薬として製品化してまいりました、アルツハイマー病、及び糖・脂質代謝関連疾患の領域での研究開発を進めております。

      主な研究開発の進捗状況は以下の通りであります。

    イ  がん領域における抗体医薬品シーズ探索

  当社グループは、大学との共同研究から、がん領域等における新たな抗体医薬品、及び体外診断用医薬品シーズの開発を行っております。

  某大学との共同研究では、ヒト成人T細胞白血病(ATL)の診断に有効と考えられる関連タンパク質に対する抗体や測定系の開発を進めております。

    ロ  アルツハイマー病(AD)領域における治療用医薬品候補抗体の研究開発

  当社は、京都大学、千葉大学との共同研究から、神経細胞に毒性を有するとされているアミロイドβの毒性コンフォマーに対する抗体を創出しております。モデル動物を使った薬効試験によるアルツハイマー型認知症治療薬シーズとしての評価、さらに診断における臨床的意義の検証を行い、特許出願、論文発表に至っています。その成果として、以下にも記すように、アミロイドβ毒性コンフォマーに対する抗体を用いたELISA測定キットを開発し、研究用試薬として販売を開始しました。引き続き、本抗体の機能評価などを実施し、治療薬シーズとしての導出を進めてまいります。

    ハ  AD領域における体外診断用医薬品

  当社は、ADの診断を目的とした関連タンパク質であるタウ、およびリン酸化タウタンパク質測定キットの開発を行い、海外向けに研究用試薬として販売を開始いたしました。さらに、国内において、体外診断薬としての開発を進めてまいります。

    ニ 耳鼻科領域における、めまい・難聴にかかわる疾患の体外診断用医薬品

  当社は、大学のシーズを元に、めまい・難聴の原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(Cochlin-tomoprotein)」に関して体外診断用医薬品としての開発を行ってきましたが、㈱コスミックコーポレーションと再実施許諾契約を締結し、日本国内での薬事申請・販売の権利を譲渡いたしました。現在、㈱コスミックコーポレーションが主体となって、体外診断用医薬品の承認申請に向けてデータ採取、資料作成を進行中です。承認された時は、当社は販売金額に応じたロイヤリティーを受領することになります。さらに、本製品の製造は当社において行うことで、将来、売上の拡大が期待されます。

    ホ 筋ジストロフィー患者の診断マーカーの測定系開発

  某大学及び研究機関との共同研究によって、筋ジストロフィー患者の診断のためのバイオマーカーとして、尿中のタイチンというタンパク質に対する測定系の開発を進めてまいりましたが、平成28年11月に研究用試薬として販売を開始いたしました。筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患です。患者尿中の解析において、このタイチンという巨大なタンパク質の断片が存在することが報告されており、本測定キットはこのタンパク質を特異的に検出することで、病気の診断・病態のモニタリングマーカー、あるいは、運動のモニタリングマーカーとして有用であると考えられ、診断薬としてさらなる研究、開発を進めてまいります。

 

  ③  診断・試薬事業(研究用関連)

  研究用関連では、将来、診断に役立つ事を目指した抗体開発、及びそれを用いた測定キットの新製品の開発に取り組んでおります。分野として、当社の強みであるアルツハイマー病、がん・炎症及び糖・脂質代謝関連疾患の領域に特化した開発を行っております。

    イ 老化関連分子に対する抗体・測定系の開発

  この領域においては、既に可溶性α-Klotho測定キットを製品化し、国内外を問わず広く使用されております。平成28年7月にはマウス版を製品化し、研究用試薬として販売を開始いたしました。マウス動物モデルでの使用ユーザーに対して販売を促進してまいります。本分子以外にも老化に関連する分子に対する抗体・測定系の開発を進めております。

    ロ アルツハイマー型認知症(AD)関連タンパク質に対する抗体・測定系の開発

  アミロイドβを中心とした種々のタンパク質に対する抗体・測定系の開発を進めています。これまでもアミロイドβ、及びその前駆体蛋白であるAPPなどに対する製品を広くラインアップしておりますが、新規の分子に対する開発も継続しております。その中で、アミロイドβと並び重要なターゲット分子であるタウタンパク質の測定系開発も進めており、海外向けに研究用試薬として販売を開始いたしました。

    ハ メタボリックシンドローム・生活習慣病関連分子に対する抗体・測定系の開発

  これまでにも糖代謝、脂質代謝、及び血圧調節などに関連する分子に対して特異的な測定系を開発、製品化しておりますが、その中で、血糖値をコントロールするインスリンに対する高感度測定系を開発し上市いたしました。さらに、本領域においては新規の加発を進めてまいります。

  脂質代謝関連分子に関しては、脂肪の分解をつかさどる各種リパーゼ測定系の開発を進めており、既に発売を開始していた内皮性リパーゼ(EL)、肝性リパーゼ(HTGL)などの測定系を改良し高感度化した製品を開発、販売を開始いたしました。

  また、平成29年4月6日群馬大学において研究発表がありましたタンパク質GPIHBP1につきましても測定キットを開発し、販売を開始いたしました。これらの脂質代謝関連タンパク質における体外診断薬への展開も視野に入れ、本共同研究を推進して参ります。

  これらの脂質代謝関連タンパク質は、いわゆるメタボリックシンドロームといわれる疾患の中でも、特に脂質異常症に関連する因子であり、これらの測定キットはこの領域での基礎的な研究、及び治療薬の開発研究などに有効なものになると考えます。今後の研究成果によっては、研究用試薬に終わることなく、体外診断薬への展開も期待できます。また、検査事業におけるLipoSEARCH、あるいはコレステロールの吸収/合成マーカーなどの測定サービスの提供と、並行してプロモーションしていくことで、相乗効果を上げることが期待しています。これらの測定キット、測定サービスなどにより、この領域における当社の製品ラインアップを充実させ、当社の存在意義を確立し、販売促進に努めてまいります。

    二 Muse細胞に関する開発

  株式会社生命科学インスティテュート(旧株式会社Clio、以下「LSII」という)とMuse細胞を用いた再生医療事業に関して共同研究を実施しています。Muse細胞は多能性幹細胞であり、損傷部位に集積・生着し、組織特異的な細胞に分化することで、損傷を受けた組織の構造や機能を修復します。当社は、Muse細胞の分離・精製等に関わる研究を進めておりましたが、Muse細胞のマーカーであるSSEA-3という物質に対する抗体の作製に成功し、研究用試薬として販売を開始いたしました。本抗体は世界で初めてのIgGクラスのモノクローナル抗体であり、本抗体を用いた再生医療研究が飛躍的に進歩することが期待されます。

 

  (注) 用語解説については、「第4提出会社の状況  6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。