以下の記載のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社経営の基本方針
当社グループは、経営の基本理念である「人々の生命を守り、健康に貢献することを目指します。」を基に、人々の生命を守り、そして人々の健康に資する「創薬」に貢献することを経営の基本方針としております。
また、「創薬」に貢献することにより、ステークホルダーとの深い信頼関係のもと、企業価値向上に努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
創薬支援事業については、安定的に収益を獲得する基盤事業として、継続的な事業成長と収益基盤の拡大を図るため、売上高伸び率、売上総利益率及び営業利益を重要な経営指標としております。
創薬事業については、医薬品候補化合物の導出後の安定的な収益を獲得するまでに相応の期間を要するため、短期的な経営指標で業績評価を行うことは適切でありません。当社が導出した創薬パイプラインの医薬品候補化合物が規制当局により承認を受け患者のもとに届けられるまでの今後の見通しが公表できる段階で、株主資本の効率的活用を重視する観点から、ROE(株主資本利益率)などを経営指標として用いて、事業計画、経営成績ならびに企業価値の周知に努めてまいります。
(3)中長期の経営戦略及び財務戦略について
当社グループは、創薬事業において創製した医薬品候補化合物が、導出先の製薬企業等による製造販売承認を経て医薬品として上市(*)され、その売上に係るロイヤリティ収入により安定的な財務基盤を構築し、画期的な医薬品を永続的に世に送り出すことを通して人々の健康に貢献することを目指しております。
そのために当社は、現在前臨床段階にあるパイプラインを早期に臨床試験段階へステージアップを図り、自社臨床試験を実施することにより当社創薬パイプラインの価値を最大化し、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとなることで、当社の企業価値を高めてまいります。当社は、自社で臨床試験を実施し創薬パイプラインの価値を最大限に高めたうえで導出することを中期的な経営の基本方針として掲げています。それと並行して、医薬品開発の競合状況や導出先製薬企業とのタイミングを見計らいながら、当社にとって最大価値を生み出せるよう戦略的かつ臨機応変に導出交渉に取り組んでまいります。
当社の財務戦略は、長期にわたる研究開発を行うための強固な財務基盤を保つために、手元資金については高い流動性と厚めの資金量を確保及び維持することを基本方針としております。先行投資が必要な創薬事業の研究開発資金に、創薬支援事業で獲得したキャッシュ・フローおよび創薬事業で獲得した契約一時金、マイルストーン収入およびロイヤリティ収入を充当し、当社創薬パイプラインの拡充および着実な進展を図り、事業価値を高めていくという経営方針に基づいて財務戦略を策定しております。また、現在実施している新株予約権を用いた資金調達を行使期限までに完了させるとともに、必要に応じて新たな資金調達や金融機関等からの借入を実施し、当社の企業価値を高めるための先行投資として実施する研究開発の資金確保に努めてまいります。
(4)経営環境及び対処すべき課題
当社は創薬ベンチャーとして、画期的な新薬を一日も早く世に送り出すことを目指して事業を行っております。中長期的に研究開発費を先行投資するビジネスモデルとなっており、迅速かつ効率的に研究開発を進めるためには、必要な資金を計画的に確保することが必要です。当社の創薬パイプラインを早期に臨床試験段階へステージアップを図り、自社臨床試験を実施して、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとなることで、当社の企業価値を高めてまいります。
創薬事業においては、BTK阻害剤AS-0871(炎症性免疫疾患)の欧州におけるCTA(臨床試験許認可申請)が完了し、臨床試験を準備中であり、BTK阻害剤AS-1763(血液がん)は米国での治験開始を目指して、前臨床試験を実施中です。これらは、当社として行う初めての海外臨床試験であることから、実績と信頼のある外部委託先及び治験実施医療機関を慎重に選定し、早期の臨床試験開始を目指します。また、2018年7月に新設した臨床開発部を中心に、自社臨床試験を確実に実施する体制の強化に取り組んでまいります。
さらに、創薬パイプラインの拡充に向けて、創薬基盤技術のさらなる強化に取り組むなかで、次世代の研究ターゲットを確立してまいります。導出活動については、各創薬パイプラインごとに最適な戦略を立てたうえで、当社創薬パイプラインの価値を最大化できるよう取り組んでまいります。
創薬支援事業においては、キナーゼタンパク質(*)ならびにキナーゼ阻害薬(*)の創製研究に関する創薬基盤技術から生み出した製品・サービスを、国内外の製薬企業等に提供しております。今後、売上シェアや顧客層のさらなる拡大を図るためには、顧客ニーズに基づいた独自性の高い製品・サービスメニューの拡充が重要であると認識しております。そのために、当社グループがこれまで蓄積してきたキナーゼタンパク質の製造方法やキナーゼ活性の測定方法(アッセイ(*)条件)などの技術的ノウハウを活用して、オンリーワンの新規キナーゼ製品の開発ならびに新たな評価系の確立に取り組んでまいります。さらに、キナーゼに関する専門知識に基づく学術営業を通じた顧客ニーズの的確な把握に努め、顧客特注案件への対応を強化してまいります。加えて、作業工程の改善を図り生産性の向上に努め、収益力を強化してまいります。
また、売上拡大のための販売戦略として、地域的には北米の市場規模が大きいことから、米国子会社であるCarnaBio USAにおける販売体制の強化を図り、売上拡大に注力します。さらに当社グループの顧客はがん疾患の研究グループの比重が高く、免疫炎症、中枢神経等、他の疾患領域の研究者に対しても拡販を図ることが課題です。当社グループのオンリーワン製品を中心に、積極的に顧客への提案を行い、売上拡大に取り組むことで、安定的な売上確保を目指してまいります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
以下において、当社グループの事業展開その他に関して、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。当社グループとして必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から記載しています。なお当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスク及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
(1)当社グループの事業に関するリスクについて
①創薬事業
a.キナーゼ阻害薬の医薬品候補化合物の導出に関するリスク
予定よりも早い段階でキナーゼ阻害薬(*)の医薬品候補化合物を製薬企業等へ導出する場合(例えば前期第2相臨床試験(フェーズⅡa)での導出を計画していたが、前臨床段階や第1相臨床試験(フェーズⅠ)での導出を行った場合等)は、契約締結時に当社グループが受領する契約一時金の金額やマイルストーン収入総額が比較的小さくなることが考えられます。また、このような医薬品候補化合物の導出には、導出先の製薬企業等と諸条件について詳細に取り決めた上で契約を締結する必要があるため、双方の条件に隔たりがあり、当社グループの想定どおりに契約が締結できない場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
b.創薬事業の導出スケジュール等に関するリスク
製薬企業等に対する当社グループが創製した医薬品候補化合物の導出交渉において、交渉相手先企業等における経営方針、研究開発方針の変更等により導出スケジュールが遅れたり、中止を含め変更される可能性があります。また、導出交渉を行っている医薬品候補化合物に対する相手先の評価が想定を下回る場合は、導出スケジュール及び導出交渉の成否に影響を及ぼす可能性があります。
c.創薬支援事業と創薬事業を同時に手掛ける事業展開に関するリスク
当社グループは創薬支援事業と創薬事業を同時に手がける事業展開により、創薬支援事業で売上による収入を計上しながら、研究開発投資の先行する創薬事業を同時に推進しておりますが、創薬支援事業における収益の確保が計画通りに行えない場合は、創薬事業に関する事業方針の変更を余儀なくされ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
d.導出した創薬パイプラインの開発に関するリスク
当社が製薬企業等に導出した創薬パイプラインは、主に導出先企業において導出後の医薬品開発を実施し、その開発(*)の進捗に応じて、導出先企業よりマイルストーンを受領することで売上を計上するとともに、上市後は当該医薬品の売上高に応じたロイヤリティ収入を計上します。しかしながら、導出先企業における開発スケジュールが変更になった場合、また、当該医薬品開発が中断された場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②創薬支援事業
a.キナーゼ阻害薬に係る製品・サービスに特化するリスク
当社グループの創薬支援事業は、主としてキナーゼタンパク質(*)に関する製品、サービスを提供しているため、キナーゼ阻害薬(*)の研究開発を進める製薬企業等の減少により、当社グループの事業方針の変更を余儀なくされる可能性、又は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの予想どおり製薬企業等によるキナーゼ阻害薬の研究開発に関連したアウトソースの市場が拡大しない場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
b.競合リスク
競合他社が提供するキナーゼタンパク質(*)の種類の増加により、当社グループのみが販売している製品の数が減少またはなくなる可能性があります。また、同業他社の参入等に伴い価格競争が激しくなる可能性があります。さらに、競合他社が画期的な技術で先行した場合、当社グループの優位性が低下する可能性があります。これらの競争により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
c.パートナー及びサプライヤー等に影響されるリスク
当社グループの提携先とのシナジー効果を創出するには、技術面での補完関係を前提としますが、双方の技術開発の進捗に大きな差が生じた場合、当社グループの製品・サービスの開発が遅れ、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。また、パーキンエルマー社の経営方針の変更等により、当社グループがプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスを提供するにあたり使用する同社製造の測定機器であるLabChip® EZ Readerの安定稼動ならびに使用するチップの購入に支障が生じる場合、さらにプロメガ社の経営方針の変更等により、当社がNanoBRET™テクノロジーを用いた細胞内でのキナーゼ阻害剤の作用を評価する受託試験サービスを提供するにあたり使用する同社製造のアッセイキットの購入に支障が生じる場合などは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
d.製薬企業の研究部門を顧客とするリスク
当社グループは製薬企業の研究部門を主要な顧客としております。製薬企業の創薬研究(*)は、秘匿性が高く、その進捗により研究テーマ自体の変更が起こり得るなど不確定要素が多いため、当該進捗状況により、予定通り当社グループに対しての発注が行われない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特に欧米の製薬企業は、日本の製薬企業と比較して研究テーマが多いことから、市場規模が大きい反面、個々の製薬企業において大きな変化が生じる可能性があり、その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
e.海外での事業展開に関するリスク
当社グループは、海外での事業展開において、北米では米国の子会社による販売を行っておりますが、その他の地域においては主に代理店契約および販売代理人契約に基づく販売体制を構築しております。しかしながら、海外での代理店等による販売体制が機能しない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
f.提携先の製品・サービスに依存するリスク
当社グループは、提携先である海外のACD社、CAI社、NTRC社、SARomics社、IniXium社及びAssayQuant社の製品・サービスを代理店として特定地域に提供しておりますが、提携先の事情及び当社グループとの関係の変化等により取り扱うことができなくなった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)研究開発活動について
研究開発の進捗リスク及び大学、公的研究機関、企業等との共同研究リスク
当社グループの創薬事業及び創薬支援事業における研究開発が予定通り進捗しない場合、また、当社グループが大学、公的研究機関及び製薬企業等と実施している共同研究開発において、共同研究先の研究及び開発の進捗が想定通りに進捗しない場合、または共同研究開発契約が何らかの事情により中断もしくは終了した場合は、当社グループの事業方針、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)社内体制について
①小規模であることの人材リスク
限られた人材により業務執行を行っておりますが、取締役及び従業員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分があることから、当該者の退職等により当社グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。
②事業拡大に伴う人材確保のリスク
今後、当社グループが事業を積極的に展開する上で、優秀な人材を確保することが重要でありますが、人材の採用が順調に進まない場合、計画している事業拡大に支障をきたす恐れがあります。
(4)為替変動リスクについて
当社グループの総売上高に対する海外売上高の割合は2018年12月期で55.1%、2019年12月期で91.9%と高くなっております。当社グループは、国内だけではなく北米及び欧州等の製薬企業等を顧客とするグローバルな販売及び導出活動を展開しております。これに伴い、米ドルやユーロ等の外貨で売上が計上されることになりますが、大幅な為替相場の変動があった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)知的財産権について
①創薬事業における知財リスク
当社グループが創製した医薬品候補化合物について、第三者によってすでに特許出願されている等の理由により当社グループの想定どおりに特許が取得できない場合、又は第三者より特許侵害があるとして訴訟を提起された場合は、当社グループの事業方針及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②創薬支援事業における知財リスク
当社グループの保有する多くの技術的ノウハウが、技術革新等により陳腐化した場合、また、第三者によって技術的ノウハウが先行的に特許出願され、権利化された場合は、当社グループが保有する技術の優位性が損なわれ、創薬支援事業の業績に影響が生じる可能性があります。
③特許に関わる訴訟リスク
創薬支援事業に関し、当社グループが販売したキナーゼタンパク質(*)、アッセイ(*)用キット等の製品、もしくは、当社グループが提供したプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービス及びセルベースアッセイ(*)サービス等の中に、第三者が特許を保有するキナーゼ(*)や技術等があった場合、特許侵害訴訟を提起され、当該製品の販売差止や当該サービスの提供禁止のほか、多額の賠償金の支払いを求められる可能性があります。
(6)業界(バイオテクノロジー)
技術革新リスクについて
急激な技術革新等により、新技術への対応に遅れが生じた場合は、当社グループが保有する技術・ノウハウが陳腐化する可能性があります。また、必要な技術進歩を常に追求するためには、多額の研究開発費用と時間を要すること等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(7)法的規制について
遺伝子組換え生物等規制法について
2004年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されています。当社グループのキナーゼタンパク質(*)は遺伝子組み換え(リコンビナント)タンパク質(*)であり、当社グループの施設の一部は当該法律が適用されています。今後、法改正等により規制が強化された場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8)資金調達について
①損失計上の見通しと資金の確保について
当社はこれまでにない画期的な新薬を創製する創薬ベンチャーとして、非臨床・臨床試験費用をはじめとする多額の研究開発資金を、中長期的に先行投資するビジネスモデルとなっております。そのため、当面、損失の計上が継続する可能性があり、資金の確保が課題であります。当社は各事業におけるキャッシュ・フロー獲得のみならず、公募増資、新株および新株予約権の第三者割当等によって資金調達を行ってまいりました。今後も、資金調達についてその最適な方法やタイミング等を適宜検討してまいりますが、必要な資金調達を円滑に実施できない場合には、当社グループの事業が計画通りに進捗しない、あるいは事業継続が困難となる可能性があります。
②新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、当社グループの役員、従業員等に対して、業績向上に対する意欲や士気を高めるため、そして、当社グループの中長期的な企業価値の向上を図るために、新株予約権を付与しております。さらに、資金調達のため、メリルリンチ日本証券株式会社に対して行使価額修正条項付き第18回新株予約権を第三者割当てしており、今後、既存の新株予約権や将来付与する新株予約権が権利行使された場合には、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、2019年12月31日現在、発行済みの新株予約権の目的である株式数は1,236,200株であり、同日現在の発行済株式総数11,654,500株の10.61%に相当します。
(9)その他のリスク
①特定の仕入先への依存について
当社は協力会社であるACD社、CAI社、NTRC社等の代理店として特定地域でこれら企業からの仕入商品として各種サービス等を提供しております。これらの企業とは、取引開始以来、良好な関係を継続しており、今後も仕入取引を継続していく方針でありますが、自然災害や不測の事態、又は当該企業の経営方針が変更となった場合等により、安定的な商品供給が受けられなくなり、かつ、速やかに代替先を確保することができなかった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②事業所の一極集中について
当社グループは、本社機能及び研究開発機能を神戸市のポートアイランドにある神戸バイオメディカルセンター(BMA)内に構えております。BMAは1995年の阪神淡路大震災の教訓をもとに2004年に建設された十分な耐震性、防火体制、自家発電機能を備えたビルディングで、24時間の警備体制が取られています。当社グループのビジネスの鍵になるキナーゼ(*)遺伝子すべてについては、それらが失われることがないよう、BMA内の異なる部屋で二重に保管されているとともに、一部の重要な生物資源については別地方の保管サービスを利用し、バックアップ体制を整えております。また、ビジネスに必要な機器及び装置等については、損害保険がかけられております。さらに、緊急時に被害を最小限にすべく対応できるように緊急時の社内連絡体制を整えています。しかしながら、大規模な地震、台風や風水害その他の自然災害等の発生により、本社機能及び研究開発機能が同時に災害等の甚大な被害を受けた場合は、当社グループの研究開発設備等の損壊あるいは事業活動の停滞によって、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③当社グループの設備に関わる長時間の停電等による業務遅滞及び製品への影響について
当社グループが創薬支援事業の営業・物流拠点及び研究開発機能を有する神戸市において、長時間の停電等によりキナーゼタンパク質(*)の製造及び保管ならびに化合物(*)の評価設備の稼動等を中断する事象が発生した場合は、キナーゼタンパク質を保管している冷凍庫が停止し、これに伴うキナーゼタンパク質の失活(活性を失う)等により製品として出荷できないことが考えられます。さらに長時間の停電は、化合物の評価設備(測定機器、分注機器等)の稼動を止めることから、顧客へのサービス提供の遅延を招く恐れがあります。このような事態が発生した場合は、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
④当社グループの技術の情報漏洩について
当社グループが保有するキナーゼタンパク質(*)の製造技術やアッセイ(*)開発に関する技術等は、何らかの理由により人材の流出が起こった場合は技術情報等が流出する可能性があり、製品開発や製造に影響を及ぼす可能性があります。また、人材の流出により、社外へノウハウが流出した場合は、当社グループの製品等の模倣製品が出現する可能性も考えられます。これらのことにより、万一当社グループの技術的な優位性が維持できなくなった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤営業機密の漏洩について
当社グループが行う創薬支援事業におけるプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスおよびセルベースアッセイ(*)サービスは、顧客である製薬企業等から化合物(*)の情報をお預かりする立場にあります。従って、当社グループは、すべての従業員との間において顧客情報を含む機密情報に係る秘密保持契約を締結しており、さらに退職後も個別に同契約を締結して、顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報等が外部に漏洩した場合は、信用低下を招き、当社グループの経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥創薬研究と創薬支援事業を同時に行うことで制約を受ける可能性について
当社グループのプロファイリング(*)・スクリーニング(*)サービスおよびセルベースアッセイ(*)サービスの提供を望む顧客(製薬企業等)が当該サービスに係る契約を締結する際、当社グループが自ら創薬研究(*)を行っていることが、顧客にとって顧客情報の秘匿性確保についての懸念材料となる可能性があります。その場合、顧客との契約条件に制約事項が増え、その結果、当該サービスの採算性の悪化、又は事業別に分社せざるを得ない等の影響を受ける可能性が考えられます。その場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績
当社は、創薬事業においては、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては、新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため、営業活動に取り組んでおります。
2019年12月期の成果といたしましては、2019年6月に米国のギリアド・サイエンシズ社(以下、ギリアド社)と、当社が研究開発した新規がん免疫療法の創薬プログラムの開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契約を締結し、その対価である契約一時金20百万ドルを第2四半期連結会計期間に売上計上いたしました。当社は今後、開発状況や上市などの進捗に応じて追加的に最大で450百万ドルを受け取ることになり、さらに、本プログラムにより開発された医薬品の上市後の売上高に応じたロイヤリティを受け取ります。また、当社は、上記ライセンス契約とは別に、ギリアド社による当該プログラムの開発をサポートするために、当社が開発した脂質キナーゼ阻害剤に関する創薬基盤技術を有償で、ギリアド社に一定期間、独占的に供与します。
当社が開発し、シエラ・オンコロジー社(以下、シエラ社)に導出した、がんを標的とするCDC7阻害剤AS-141 (シエラ社の開発コード:SRA141)につきましては、米国においてIND申請(新薬臨床試験開始届)が完了しており、シエラ社は大腸がんを対象とした治験開始(フェーズ1/2)に向けた準備を進めています。当該フェーズ1試験においてSRA141が最初の患者に投与されたときに、マイルストーンとして4百万ドルが当社に支払われる契約となっています。シエラ社は、SRA141の開発を引き続き前進させるため、様々な選択肢を戦略的に検討中と発表しており、当社はSRA141の治験が早期に開始されることを期待しております。
当社の2つのBTK阻害剤ポートフォリオのうち、炎症性免疫疾患を対象として開発を進めているBTK阻害剤AS-0871については、2019年12月にオランダ当局にCTA(Clinical Trial Application, 臨床試験許認可申請)を提出いたしました。2020年2月にオランダ当局及び倫理委員会による承認を受けており、欧州での臨床試験の開始が可能となりました。本試験は当社初の自社臨床試験であり、現地での試験準備が整い次第、健康成人を対象として臨床試験(フェーズ1試験)を開始する予定です。一方、イブルチニブ耐性の血液がんを治療標的とした次世代BTK阻害剤AS-1763についても、前臨床試験を実施中であり、2020年中のIND申請、その後の自社臨床試験開始に向けて、鋭意準備を進めております。
当社のもう一つの事業の柱である創薬支援事業においては、2019年12月期の売上高は1,079,423千円となり、年間売上高を10億円以上とする目標を達成いたしました。米国では新興バイオベンチャー向けを中心に、キナーゼタンパク質、アッセイキット、プロファイリング受託など自社開発製品・サービスの売上が拡大し、また、中国でもキナーゼタンパク質の販売が好調に推移しました。さらに、創薬事業における上記ギリアド社とのライセンス契約に関連し、同社による当該プログラムの開発をサポートするため、当社の脂質キナーゼ阻害剤に関する創薬基盤技術を一定期間、独占的に同社に供与することとなり、2019年12月期の売上には、これに関連した売上も含まれています。
以上の結果、2019年12月期の売上高は3,207,423千円(前連結会計年度比325.0%増)となりました。地域別の売上は、連結ベースで国内売上高が259,249千円(前連結会計年度比23.4%減)、海外売上高は2,948,174千円(前連結会計年度比608.5%増)となりました。損益面につきましては、営業利益が977,778千円(前連結会計年度は1,144,519千円の営業損失)、経常利益は957,161千円(前連結会計年度は1,159,223千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は828,289千円(前連結会計年度は1,210,573千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
各セグメントの状況は次の通りです。
1) 創薬事業
当社独自の研究開発から見出された化合物を含む新規がん免疫療法の創薬プログラムに関して、ギリアド社と、当該プログラムの開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契約を締結し、その対価として契約一時金20百万ドル(2,128,000千円)を第2四半期連結会計期間に売上計上しております。また、前臨床研究段階にある創薬プログラムを中心に研究開発に積極的に先行投資を行い、当事業の研究開発費は1,187,160千円(前連結会計年度は1,084,685千円)となりました。その結果、売上高は2,128,000千円(前連結会計年度は50,000千円)、営業利益は577,230千円(前連結会計年度は1,261,987千円の営業損失)となりました。
2) 創薬支援事業
キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス及びセルベースアッセイサービスの提供等により、創薬支援事業の売上高は、1,079,423千円(前連結会計年度比53.2%増)と過去最高の売上高を達成し、営業利益は400,547千円(前連結会計年度比241.0%増)となりました。売上高の内訳は、国内が259,249千円(前連結会計年度比10.2%減)、北米地域は634,205千円(前連結会計年度比154.0%増)、欧州地域は86,898千円(前連結会計年度比8.3%減)、その他地域が99,070千円(前連結会計年度比38.3%増)であります。
「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標」に記載のとおり、創薬支援事業については、安定的に収益を獲得する基盤事業として、継続的な事業成長と収益基盤の拡大を図るため、売上高伸び率、売上総利益率及び営業利益を重要な経営指標としております。
当連結会計年度の創薬支援事業は、売上高が前連結会計年度比53.2%と大幅に伸長いたしました。売上総利益率も、自社開発製品・サービスの販売が好調だったため、前連結会計年度比で改善しております。また、営業利益は400,547千円となり、前連結会計年度から241.0%増、283,079千円増加いたしました。
当社グループは、キナーゼ阻害薬(*)等を創製するための研究開発ならびにその基盤となる技術である「創薬基盤技術」を強化するための研究開発へ積極的に先行投資し、将来の飛躍的な成長を目指しております。そのための研究開発に係る費用は、創薬支援事業が生み出すキャッシュ・フロー及び創薬事業における導出契約やマイルストーン達成に基づく一時金収入、ならびに資本市場等から調達した資金等により充当しております。
創薬支援事業の業績は黒字を継続し安定的に推移しているものの、創薬事業からの収益は、導出契約の成否、導出先製薬企業等における開発(*)の進捗、導出活動の進捗及び当社の研究開発の進捗等により影響を受け安定的でないことから、当社グループの短期的な損益については赤字となる傾向があります。
しかしながら、当社グループは、中長期的な経営方針に基づき、さらなる成長軌道に乗せ、当社の企業価値を高めるために、積極的に当社創薬事業に先行投資を行い、研究開発を推し進めてまいります。そのための資金を獲得するために、創薬支援事業からの収益力をさらに高めるとともに、当社にとって最適な資金調達方法を検討し、研究開発資金の確保に努めてまいります。
第14期、第15期、第16期及び第17期のセグメントごとの売上、研究開発費及び営業損益は、以下の通りです。
(単位:千円)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.創薬事業については、生産を行っていないため記載しておりません。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.創薬事業については、商品仕入を行っていないため記載しておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注) 1. 当連結会計年度における小野薬品工業株式会社の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため、記載を省略しております。
2. 前連結会計年度におけるA社の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため、記載を省略しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当社顧客との各種契約においては秘密保持条項が存在するため、一部の社名の公表は控えさせて頂きます。
(3) 財政状態
当社グループの連結の財政状態の概要につきましては、以下のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は、5,376,610千円となり、前連結会計年度末に比べて3,606,520千円増加となりました。その内訳は、現金及び預金の増加3,559,801千円等であります。
負債は1,523,088千円となり、前連結会計年度末と比べて640,451千円増加となりました。その内訳は、未払金の増加141,131千円、前受収益の増加310,706千円、未払法人税等の増加101,423千円等であります。
純資産は3,853,522千円となり、前連結会計年度末と比べて2,966,069千円増加となりました。その内訳は、株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加2,131,795千円、親会社株主に帰属する当期純利益828,289千円の計上による利益剰余金の増加等によるものであります。
また、自己資本比率は71.5%(前連結会計年度49.7%)となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ3,559,801千円増加し、4,915,056千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は1,477,773千円(前年は1,128,026千円の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益913,059千円、未払金の増加125,437千円、前受収益の増加310,706千円、減価償却費9,394千円及び減損損失44,101千円の計上の差し引きによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は40,945千円(前年は58,314千円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出41,881千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は2,121,748千円(前年は687,522千円の増加)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入2,071,741千円によるものであります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
当社は、主にキナーゼタンパク質(*)を標的とした低分子の分子標的薬(*)であるキナーゼ阻害薬(*)の創製研究(*)及び医薬品候補化合物の開発(*)を行うため、研究開発へ積極的に先行投資を行っております。さらに、キナーゼ阻害薬等を創製するための基盤となる技術である「創薬基盤技術」をさらに強化するための研究開発を行うとともに、長年培ってきたこの創薬基盤技術を駆使し、他の製薬企業やアカデミア等からのニーズが高いキナーゼ関連製品・サービスを開発するための研究開発も行っております。
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は
<当社グループの研究開発体制について>
当社グループの研究開発活動は、研究開発本部ならびに創薬支援事業本部(製造部、受託試験部)が中心となって行っております。2019年12月末現在、研究開発本部(含むCarnaBio USA)には32名、創薬支援事業本部(除く営業部門)には15名が在籍しており、そのうち15名が博士号を取得しております。また、ドラッグデザイン、有機合成、薬理、基質(*)探索、遺伝子クローニング(*)、細胞培養、タンパク質精製、アッセイ(*)開発等の専門家を有し、先端技術の蓄積を行っております。さらに、2018年に研究開発本部内に臨床開発部を新設し、2019年2月には米国に臨床開発オフィスを開設するなど、自社臨床試験の実施に向けて基盤整備に取り組んでおります。当社は、今後も研究開発へ積極的に投資を行い、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとなることで、当社の企業価値を高めてまいります。
<創薬研究について>
当社の創薬研究(*)は、当社グループの強力なキナーゼ(*)に関する創薬基盤技術を最大限に活用し、がん及び免疫炎症疾患を重点領域として、効率的な創薬研究を行っております。がん領域においては、自社研究に加えて国立研究開発法人国立がん研究センター、広島大学、愛媛大学及び慶應義塾大学等と共同研究を行っております。また、重点領域以外の疾患についても、大日本住友製薬株式会社との精神神経疾患領域の共同研究に加えて、自社独自研究や岐阜薬科大学ならびに北里大学等との共同研究を実施し、パイプラインの拡充を図っています。
<外部との連携について>
創薬には、アッセイ(*)開発、有機合成、薬理研究、薬物動態試験、毒性試験等に関する様々な技術が必要です。優れた技術を保有する企業を積極的に活用することで、創薬の効率化を図っています。
また、新規創薬ターゲットの同定、新規創薬技術の開発などの基礎的な研究については、国立がん研究センターや大阪府立大学、愛媛大学、慶應義塾大学、大阪大学などのアカデミアとの共同研究も活用しながら推進しております。
このようななか、2018年3月には、大日本住友製薬株式会社と、精神神経疾患における画期的な治療薬の創製に向けた共同研究を開始し、契約一時金を受領するとともに、同社が臨床開発・販売への移行を決定した場合、当社に対して、開発段階、販売額目標達成に応じた開発・販売マイルストンとして総額で最大約106億円を支払う可能性があります。さらに、販売後、大日本住友製薬は本剤の販売額に応じた一定のロイヤリティを当社に支払う契約となっています。
<開発研究について>
医薬品の研究開発プロセスにおいて、前臨床試験以降を開発段階といいます。当社の創薬プログラムにおいて、すでに製薬企業等に導出済のものを除き、2019年12月末現在で2つのBTK阻害薬(炎症性免疫疾患及び血液がん)が前臨床試験段階にあります。前臨床試験では、レギュラトリーサイエンス(*)に基づき、様々な試験を外部委託先と連携を図りながら進めており、開発品目について早期の臨床試験開始を目指しております。なお、当社の開発研究は、臨床試験の前期第2相(フェーズⅡa)までの開発投資が比較的少額の段階までを対象としており、それ以降の開発は医薬品候補化合物の導出先である製薬企業等において実施することを想定しています。
<導出後の開発について>
当社は、2019年12月末現在で、がんを適応疾患としたCDC7キナーゼ阻害薬AS-141をカナダのシエラ・オンコロジー社へ、また、がん免疫療法の創薬プログラムを米国のギリアド・サイエンシズ社に導出しております。導出後の開発は、導出先企業によって行われており、当社はそれぞれのプログラムの開発(*)等の進展に伴い、導出契約時に合意したマイルストーン達成時に一時金を獲得できる契約となっております。
<当社グループの特許に係る方針について>
創薬事業において、特許による権利確保は製薬企業等との導出交渉時の重要な要素となるため、特許出願時期に加えて、国際出願(指定国及び国内移行)も考慮しながら、知的財産権を確保していく方針です。
他方、創薬支援事業においては、当社グループの高品質かつ網羅的なキナーゼタンパク質(*)の製造方法やキナーゼ活性の測定方法(アッセイ(*)条件)などは、他社が容易に模倣しがたい技術的ノウハウであることから、特許出願等はせず、社内に技術力を着実に蓄積することで、効率的な製品の生産と製品レベルの向上などを図っていく方針です。
<キナーゼ阻害薬を創製するための基盤となる技術「創薬基盤技術」について>
ノバルティスファーマ社のグリベック®を始めとする多くのキナーゼ阻害剤(*)の成功例により、製薬企業はキナーゼ阻害薬の研究開発を活発に進めており、近年ではそれらの成果として、がん疾患のみならず、ファイザー社のゼルヤンツ®やイーライリリー社のオルミエント®のように、自己免疫疾患領域においてもキナーゼ阻害剤が承認され上市(*)されております。これらキナーゼ阻害薬の研究活動においては、高品質かつ網羅的に製品・サービスを揃える当社グループの創薬支援事業で提供する製品・サービスへのニーズが依然高いものと考えております。当社グループのキナーゼ阻害薬を創製するための技術(創薬基盤技術)を駆使して、競合他社とのさらなる差別化を図るべく、積極的な研究開発活動により、顧客要望に応じた製品・サービスの品揃えを拡充してまいります。
当連結会計年度末において、提供可能なキナーゼタンパク質(*)の種類は360種類、また製品数は442種類であり、当社グループは世界でトップクラスの品揃えを有し、キナーゼタンパク質を製造販売しております。また、プロファイリング(*)可能なキナーゼ(*)の種類は332製品あり、阻害すべきキナーゼと阻害すべきでないキナーゼに対する効果を網羅的に検証可能な信頼性の高いキナーゼアッセイをサービスとして提供しております。また、表面プラズモン共鳴 (SPR)(*)やバイオレイヤー干渉法 (BLI)(*)といった物質間の相互作用を評価する系(解析機器)で利用可能なビオチン化キナーゼタンパク質(*)の製品数は107種類となりました。さらに、次世代の創薬ターゲットとして期待される脂質キナーゼ(*)の品揃え拡充に取り組んでおり、すでにPIPK等の製品・サービスの開発に成功しております。また、細胞を用いて化合物を評価するセルベースアッセイ(*)では、2つの製品・サービスを提供しています。1つ目はプロメガ社のNanoBRET™テクノロジーを用いて細胞内でのキナーゼ阻害剤の作用を評価する受託試験サービスで、化合物の細胞内におけるキナーゼに対する結合阻害の強さを測定するとともに、化合物の特徴づけの指標として最近注目されているレジデンスタイムの測定が可能です。もう一つは、細胞内のタンパク質間相互作用(*)を可視化できる相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術(*)を用いたタンパク質間相互作用(*)を測定することが可能なセルベースアッセイで、安定発現細胞株として27製品を有しております。それらに加えて、ACD社、CAI社及びNTRC社等の協力会社の提供するセルベースアッセイサービスの代理店として国内外の顧客へ提供しており、より高度化する顧客ニーズに対応することにより、顧客満足度の向上を図ってまいります。
今後もキナーゼ阻害薬(*)の創薬研究(*)に有用な最新の技術開発を行い、自社研究及び他機関との共同研究を通じて、研究期間の短縮に寄与する創薬基盤技術の強化を図ってまいります。
当連結会計年度における研究開発活動をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
1.創薬事業
当社は、がん、免疫炎症疾患を重点領域としてキナーゼ阻害薬を中心に創薬研究開発を行なっています。2019年12月末現在で、がん領域においては4つの創薬プログラムおよび2つの導出済みプログラムがあり、免疫炎症疾患領域では2つの創薬プログラムの研究開発を実施しております。また、重点領域以外にも2つの創薬プログラムの研究を実施しております。
次世代がん免疫療法として自社研究しておりました創薬プログラムにつきましては、2019年6月にギリアド社に開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契約を締結し、契約一時金20百万ドル(2,128,000千円)を受領しております。今後、同プログラムの研究開発の進展に伴い、最大で450百万ドル(約472億円、1ドル105円換算)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。また2016年5月に導出いたしましたCDC7キナーゼ阻害剤AS-141(SRA141)については、導出先であるシエラ社が2018年12月期第3四半期に米国FDAに対しIND申請(新薬臨床試験開始届)を完了しております。同社は、同社が保有する別のパイプライン(momelotinib)のフェーズ3試験にリソースを集中させるために、SRA141の開発方針について様々な選択肢を戦略的に検討中と発表しておりますが、当社は今後、開発の進展に伴い、最大で270百万ドル(約283億円、1ドル105円換算)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。イブルチニブ耐性の血液がんを治療標的とした次世代BTK阻害剤AS-1763は、2020年中のIND申請、その後の臨床試験開始を目指し、前臨床試験を進めております。また、wntシグナル経路やTGFβシグナル経路を標的とした創薬研究も順調に進んでおり、早期のステージアップを目指しております。
また自社臨床試験の第1号として開発を進めております、もう一つのBTK阻害剤(AS-0871)について、各種前臨床試験が終了し、2019年12月にオランダ当局にCTA(欧州における臨床試験許認可申請)を提出いたしました。オランダ当局および倫理委員会による審査が完了したことから、炎症性免疫疾患を標的とした臨床試験の開始が可能となりました。現地での試験準備が整い次第、2020年上期中に健康成人を対象とした臨床試験(フェーズ1試験)を開始する予定です。
その他の領域では、2018年3月に大日本住友製薬株式会社と精神神経疾患を標的とした共同研究契約を締結しており、今後、研究開発の進展に伴い、契約に基づくマイルストーンの達成(最大約106億円)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。
また、北里大学北里生命科学研究所との新規マラリア治療薬プログラムについても、早期のステージアップを目指して共同研究を継続してまいります。
上記に加え、将来のパイプラインを継続的に生み出せるよう次世代の研究テーマの準備を進め、有望な研究テーマが同定された場合は、限られたリソースで効率的に研究開発が行なえるよう、テーマの選択と集中も随時行なっていく予定です。当事業に係る研究開発費は、
2.創薬支援事業
創薬支援事業の研究開発では、新たなキナーゼタンパク質製品の開発ならびにキナーゼタンパク質およびプロファイリング・スクリーニングサービスの品質および作業効率の向上が主要なテーマとなっております。当社製キナーゼタンパク質およびそれを用いた受託試験サービスは顧客から高品質との評価を得ており、今後さらなる信頼を獲得し売上拡大を図るため、一層の品質の向上に取り組むとともに、顧客ニーズに基づく新製品の開発にも取り組んでまいります。また、収益力の強化を目指した作業工程の改善にも取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は、
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。