(1) 当第1四半期連結累計期間において、当四半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
(2) 継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、創薬事業においてはがん、免疫・炎症疾患を重点領域とした画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、創薬支援事業においては新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供しています。創薬支援事業では安定的な営業キャッシュ・フローを獲得している一方で、創薬事業においては研究開発への先行投資を積極的に行っております。
当社は、BTK阻害剤AS-1763およびCDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)のフェーズ1臨床試験を実施しておりますが、翌四半期連結会計期間以降に必要となるフェーズ1試験実施のための費用と今後の資金計画を検討した結果、翌四半期連結会計期間以降に先行投資として実施する研究開発に必要な資金が当第1四半期連結会計期間の末日時点の手許資金では十分でない可能性があることから、当第1四半期連結会計期間の末日において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象が存在していると判断しております。
このような状況を改善するため、今後当社は、導出済みの創薬パイプラインからのマイルストーン収入および新たなライセンス契約締結による導出一時金の獲得や、創薬支援事業からの営業キャッシュ・フローによる資金確保に努めるとともに、必要に応じて、新たな資金調達を検討してまいります。そのうえで、先行投資として実施する研究開発はこれらの資金調達の状況をみながら実施することから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、創薬事業においては、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては、新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため、営業活動に取り組んでおります。
創薬事業においては、がん領域でベストインクラスの可能性を有する次世代非共有結合型BTK阻害剤AS-1763に注力し、現在、患者様を対象とした臨床試験を米国で実施しています。またファーストインクラスを目指して、CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の開発も進めており、患者様を対象とした臨床試験を日本で実施しています。免疫・炎症疾患領域では、当社が創出した、もう1つの非共有結合型BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の開発を進め、健康成人を対象としたフェーズ1試験が2023年第4四半期に完了し、sofnobrutinibの導出活動を本格的に開始しております。また、当社は、米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)に、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤のプログラムを導出しており、ギリアド社は現在、本プログラムから見出された開発中のDGKα阻害剤GS-9911について、固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中です。さらに、住友ファーマ株式会社とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。また、キナーゼ以外を標的としたパイプラインとして当社が創製したSTING(Stimulator of Interferon Genes)アンタゴニストを米国フレッシュ・トラックス・セラピューティクス社に導出しておりましたが、同社取締役会は2023年9月に清算・解散計画を承認したことから、2024年3月に当該ライセンス契約を終了いたしました。
臨床試験段階にある3つの医薬品候補化合物の開発の進捗状況は以下の通りです。
BTK阻害剤AS-1763(対象疾患:血液がん)
AS-1763は、フェーズ1試験として健康成人を対象とした単回投与用量漸増(SAD)パートおよび新製剤を用いたバイオアベイラビリティ(BA)パートをオランダで実施し、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されましたので、2023年8月に、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験の投与を開始しました。当該フェーズ1b試験は2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、用量漸増パートと拡大パートから構成されています。現時点で、9つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。すでに、用量漸増パートの最初の3用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、4用量目に移行しております。
BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)
sofnobrutinibのフェーズ1試験は、オランダで健康成人を対象として2021年中に完了したSAD試験および2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験として実施しました。2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化され、これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。sofnobrutinibについては、フェーズ2以降をライセンスアウトもしくは共同開発により実施することを目指しており、フェーズ1試験の結果を受けて、パートナリング活動を本格的に開始しています。
CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん)
monzosertibは日本国内で切除不能進行・再発または遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を2021年から実施しています。当該フェーズ1試験は用量漸増パートおよび拡大パートの2段階に分かれており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、加速漸増デザイン (accelerated titration design)を採用し、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート6(300 mg BID)まで用量漸増しましたが、Grade 2以上の有害事象(AE)が発現したため、試験計画に基づき、加速漸増デザインから3+3デザインに移行しました。その後、同用量において用量制限毒性が3名中2名で発現したため用量を下げて症例を追加しておりました。その結果、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されました。現在、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更して用量漸増パートを開始し、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。すでに、最初の用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、2用量目に移行しています。更に、成功確度をより高めるため、非臨床試験の結果から有効性が期待される血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、安全性、忍容性並びに探索的な有効性を確認する予定です。また、2024年4月に開催されたアメリカ癌学会(AACR)年次総会において、非臨床研究の結果として、ヒトAML(急性骨髄性白血病)細胞株に対するmonzosertib単剤の抗腫瘍効果およびmonzosertibと既存のAML治療薬との組み合わせによる併用効果について発表いたしました。
創薬支援事業では、収益の柱の一つに成長したビオチン化タンパク質の更なる品揃えを積極的に推し進めるとともに、売上が順調に拡大しているNanoBRETサービスの市場への浸透に取り組んでいます。また、プロファイリングサービスにおいては、Sciex社のBioPhase 8800を活用して開発に成功したプロファイリングシステムによるサービスを、予定通り5月に開始の予定です。さらに、各地域において、技術営業を中心としたきめ細やかな営業により、既存顧客のフォローを行うとともに新規顧客の獲得を目指しています。
当第1四半期連結会計期間においては、国内は前年と同水準で推移したものの、米国及び欧州の大口顧客の研究テーマやプロジェクトの進展に伴い、キナーゼタンパク質やプロファイリングサービスの需要が減少しました。さらに、中国においては、経済低迷や米国による中国バイオ企業との取引制限の可能性の影響を受けCRO向けの売上が低調に推移しました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は180,870千円(前年同四半期比20.3%減)、営業損失は416,240千円(前年同四半期は505,792千円の営業損失)、経常損失は394,494千円(前年同四半期は513,368千円の経常損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は398,890千円(前年同四半期は519,210千円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。
セグメント別の業績は次の通りです。
① 創薬事業
当第1四半期連結累計期間の創薬事業の売上はなく(前年同四半期は売上の計上なし)、臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、営業損失は417,719千円(前年同四半期は570,136千円の損失)となりました。
② 創薬支援事業
キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス及びセルベースアッセイサービスの提供等により、創薬支援事業の売上高は180,870千円(前年同四半期比20.3%減)、営業利益は1,478千円(前年同四半期比97.7%減)となりました。売上高の内訳は、国内売上が60,958千円(前年同四半期比3.0%減)、北米地域は71,960千円(前年同四半期比23.1%減)、欧州地域は19,803千円(前年同四半期比38.1%減)、その他地域は28,147千円(前年同四半期比26.9%減)であります。
当第1四半期連結会計期間末における総資産は3,894,220千円となり、前連結会計年度末と比べて455,670千円減少しました。その内訳は、現金及び預金の増加270,132千円、売掛金の減少703,093千円等であります。
負債は376,249千円となり、前連結会計年度末と比べて96,107千円減少しました。その内訳は、1年内返済予定の長期借入金の減少24,999千円、未払金の減少52,690千円、未払法人税等の減少16,539千円等であります。
純資産は3,517,971千円となり、前連結会計年度末と比べて359,563千円減少しました。その内訳は、親会社株主に帰属する四半期純損失398,890千円の計上等であります。
また、自己資本比率は90.3%(前連結会計年度末は89.1%)となりました。
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は377,417千円であります。
また、当第1四半期連結累計期間におけるセグメント別の研究開発費は以下のとおりであります。
当第1四半期連結会計期間において、当社とFresh Tracks Therapeutics, Inc.との間で締結していた、当社が創製した新規STINGアンタゴニストに関する全世界における開発・商業化の独占的な権利を供与するライセンス契約が終了しました。