第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

(1) 当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

(2) 継続企業の前提に関する重要事象等

当社は、創薬事業においてはがん、免疫・炎症疾患を重点領域とした画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、創薬支援事業においては新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供しています。創薬支援事業では安定的な営業キャッシュ・フローを獲得している一方で、創薬事業においては研究開発への先行投資を積極的に行っております。

当社は、BTK阻害剤AS-1763およびCDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)のフェーズ1臨床試験を実施しておりますが、当連結会計年度の下半期以降(2024年7月1日以降)に必要となるフェーズ1試験実施のための費用と今後の資金計画を検討した結果、当連結会計年度の下半期以降(2024年7月1日以降)に先行投資として実施する研究開発に必要な資金が当中間連結会計期間の末日時点の手許資金では十分でない可能性があることから、当中間連結会計期間の末日において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象が存在していると判断しております。

このような状況を改善するため、今後当社は、導出済みの創薬パイプラインからのマイルストーン収入および新たなライセンス契約締結による導出一時金の獲得や、創薬支援事業からの営業キャッシュ・フローによる資金確保に努めるとともに、必要に応じて、新たな資金調達を検討してまいります。そのうえで、先行投資として実施する研究開発はこれらの資金調達の状況をみながら実施することから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  文中における将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 業績の状況

当社は、創薬事業においては、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては、新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため、営業活動に取り組んでおります。

創薬事業においては、がん領域でベストインクラスの可能性を有する次世代非共有結合型BTK阻害剤AS-1763に注力し、現在、患者様を対象とした臨床試験を米国で実施しています。またファーストインクラスを目指して、CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の開発も進めており、患者様を対象とした臨床試験を日本で実施しています。免疫・炎症疾患領域では、当社が創出した、もう1つの非共有結合型BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の開発を進め、健康成人を対象としたフェーズ1試験が2023年第4四半期に完了し、sofnobrutinibの導出活動を本格的に開始しております。また、当社は、米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)に、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤のプログラムを導出しており、ギリアド社は現在、本プログラムから見出された開発中のDGKα阻害剤GS-9911について、固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中です。さらに、住友ファーマ株式会社とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。

臨床試験段階にある3つの医薬品候補化合物の開発の進捗状況は以下の通りです。

 

BTK阻害剤AS-1763(対象疾患:血液がん)

AS-1763は、フェーズ1試験として健康成人を対象とした単回投与用量漸増(SAD)パートおよび新製剤を用いたバイオアベイラビリティ(BA)パートをオランダで実施し、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されましたので、2023年8月に、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験の投与を開始しました。当該フェーズ1b試験は2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、用量漸増パートと拡大パートから構成されています。現時点で、9つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。すでに、用量漸増パートの最初の4用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、5用量目(500 mg BID)に移行しております。

また、2024年6月に開催された欧州血液学会(European Hematology Association 2024 Hybrid Congress)において、治験主導医師であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病科教授 Nitin Jain医師が、本フェーズ1b試験に関する初期データを発表しました。この初期データは、AS-1763の良好な安全性、薬物動態プロファイル、並びに共有結合型BTK阻害剤およびBCL2阻害剤を含む複数の標準的な全身療法による前治療歴を有する慢性リンパ性白血病に対する有効性を示唆しました。

2024年においては、フェーズ1b試験用量漸増パートを迅速に進め、拡大パートへの移行を前倒しで達成することを目指しております。

 

BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)

sofnobrutinibのフェーズ1試験は、オランダで健康成人を対象として2021年中に完了したSAD試験および2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験として実施しました。2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化され、これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。sofnobrutinibについては、フェーズ2以降をライセンスアウトもしくは共同開発により実施することを目指しており、フェーズ1試験の結果を受けて、フェーズ2試験以降に必要な非臨床試験を実施しながら、パートナリング活動を本格的に開始しています。

 

CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん)

monzosertibは日本国内で切除不能進行・再発または遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を2021年から実施しています。当該フェーズ1試験は用量漸増パートおよび拡大パートの2段階に分かれており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性を確認いたしました。さらに、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更して用量漸増パートを開始し、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。すでに、最初の用量群(50 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されたため、2用量目(80 mg BID)に移行しています。更に、成功確度をより高めるため、非臨床試験の結果から有効性が期待される血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、安全性、忍容性並びに探索的な有効性を確認する予定です。また、血液がんへの展開をサポートするため、ヒトAML(急性骨髄性白血病)細胞株に対するmonzosertib単剤の抗腫瘍効果および、monzosertibと既存のAML治療薬との組み合わせによる併用効果に関する非臨床研究結果をアメリカ癌学会年次総会(AACR2024)において発表いたしました(2024年4月)。

 

創薬支援事業では、収益の柱の一つに成長したビオチン化タンパク質の更なる品揃えを積極的に推し進めるとともに、ビオチン化タンパク質と親和性の高い測定機器メーカーとのコラボレーションを進めるなど、拡販に取り組んでいます。また、プロファイリングサービスにおいては、Sciex社のBioPhase 8800を活用して新規のプロファイリングシステムの開発に成功し、予定通り5月にサービスを開始しました。これにより、当社は信頼性の高いMobility Shift Assay System を使用したキナーゼのアッセイサービスを提供できる唯一の企業となり、今後も信頼性の高いデータの継続的な提供を行ってまいります。現在、当該新システムの周知に注力しており、多くの顧客の獲得を目指しています。さらに、各地域において、技術営業を中心としたきめ細やかな営業により、既存顧客のフォローを行うとともに新規顧客の獲得を目指しています。

当中間連結会計期間においては、国内は前年と同水準で推移したものの、米国及び欧州の大口顧客の研究テーマやプロジェクトの進展に伴い、キナーゼタンパク質やプロファイリングサービスの需要が減少しました。さらに、中国においては、経済低迷や米国による中国バイオ企業との取引制限の可能性の影響を受けCRO向けの売上が低調に推移しました。

以上の結果、当中間連結会計期間の売上高は315,642千円(前中間連結会計期間比36.9%減)、営業損失は1,095,000千円(前中間連結会計期間は863,696千円の営業損失)、経常損失は1,087,156千円(前中間連結会計期間は868,405千円の経常損失)、親会社株主に帰属する中間純損失は1,094,118千円(前中間連結会計期間は885,608千円の親会社株主に帰属する中間純損失)となりました。

 

セグメント別の業績は次の通りです。

①    創薬事業

当中間連結会計期間の創薬事業の売上はなく(前中間連結会計期間は売上の計上なし)、臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、営業損失は1,070,639千円(前中間連結会計期間は1,033,017千円の損失)となりました。

②    創薬支援事業

キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス及びセルベースアッセイサービスの提供等により、創薬支援事業の売上高は315,642千円(前中間連結会計期間比36.9%減)となりました。売上高の内訳は、国内売上が100,527千円(前中間連結会計期間比0.2%減)、北米地域は129,309千円(前中間連結会計期間比49.1%減)、欧州地域は33,320千円(前中間連結会計期間比48.6%減)、その他地域は52,484千円(前中間連結会計期間比35.3%減)であります。損益面については、売上高の減少に伴い、24,361千円の営業損失(前中間連結会計期間は169,321千円の営業利益)となりました。

 

 

(2) 財政状態の分析

  当中間連結会計期間末における総資産は3,685,650千円となり、前連結会計年度末と比べて664,241千円減少しました。その内訳は、売掛金の減少689,201千円等であります。
  負債は470,333千円となり、前連結会計年度末と比べて2,022千円減少しました。その内訳は、1年内返済予定の長期借入金の減少49,998千円、未払金の増加67,564千円、長期借入金の減少9,996千円等であります。
  純資産は3,215,316千円となり、前連結会計年度末と比べて662,219千円減少しました。その内訳は、株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加364,250千円、親会社株主に帰属する中間純損失1,094,118千円の計上等であります。
  また、自己資本比率は87.2%(前連結会計年度末は89.1%)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

  当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により222,059千円、投資活動により7,108千円それぞれ減少し、財務活動により279,068千円増加した結果、当中間連結会計期間末においては3,026,030千円(前連結会計年度末比136,929千円増)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動により減少した資金は222,059千円(前中間連結会計期間は938,544千円の減少)となりました。これは主に税金等調整前中間純損失1,091,384千円の計上、売上債権の減少692,991千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動により減少した資金は7,108千円(前中間連結会計期間は6,854千円の減少)となりました。これは有形固定資産の取得による支出7,108千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動により増加した資金は279,068千円(前中間連結会計期間は1,222,158千円の増加)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出59,994千円、第三者割当増資による収入342,699千円によるものであります。

 

(4) 研究開発活動

  当中間連結会計期間の研究開発費の総額は992,443千円であります。

また、当中間連結会計期間におけるセグメント別の研究開発費は以下のとおりであります。

創薬事業

923,684

千円

創薬支援事業

68,759

千円

 

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、当社とFresh Tracks Therapeutics, Inc.との間で締結していた、当社が創製した新規STINGアンタゴニストに関する全世界における開発・商業化の独占的な権利を供与するライセンス契約が終了しました。