第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針、経営環境

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 当社グループは、コア事業であった写真フィルムの需要が激減した2000年以降、事業構造の転換を積極的に進め、安定的に利益を創出できる経営基盤を構築し、新たな成長フェーズに入りました。2017年8月に2030年度を目標とした新CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030」(以下、「SVP2030」)を策定。革新的技術・製品・サービスの提供等、事業活動を通じた社会課題の解決により一層取り組み、サステナブル社会の実現に貢献する企業を目指します。また、SVP2030で示した目指す姿を実現するための具体的なアクションプランとして、中期経営計画「VISION2019」を策定。それぞれの事業を「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つのステージに位置づけ、成長過程に合わせた施策を適切に展開することにより、個々の事業の収益力のさらなる強化を図ることで、事業ポートフォリオをより強固なものにし、戦略的飛躍へとつなげていきます。2018年度は、米国と中国の貿易摩擦、欧州における英国のEU離脱や移民問題、中国をはじめとした新興国経済の動向、北朝鮮やシリア情勢等の地政学的リスク等、先行きの見えない不安定な状況が続くことが予想されますが、当社は各事業のさらなる収益力の向上で安定的にキャッシュを創出するとともに、特に「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長の強化」と「ドキュメント事業の抜本的強化」を実現することで、事業ポートフォリオをより強固なものとし、企業価値を向上していきます。

 

(2)対処すべき課題

「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長の強化」

 ヘルスケア領域では、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業が売上成長を牽引し、増収・増益を確保します。医薬品事業と再生医療事業は損益をコントロールしつつ、研究開発を加速することで事業を育成していきます。

 メディカルシステム事業では、画像処理技術をベースにしたX線画像診断機器、医療IT、内視鏡、超音波、IVDと幅広いラインアップを活かし、競争優位性の高い医療ITを核とした総合的なソリューション提案を強化します。また、成長著しい新興国等海外において、現地ニーズにあった製品・サービスを提供することにより事業を拡大します。さらに、医用画像データ等の情報を最大限活用した医療ICTビジネスも推進していきます。

 高い市場成長が見込めるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業では、2018年1月に米国テキサス拠点に生産棟を新設し培養タンク2基の稼働を開始しました。設備投資・技術開発により生産能力をさらに拡大し、スケールメリットによる収益力強化で事業成長を加速します。

 医薬品事業では、開発中の抗がん剤「FF-10501」をはじめ、アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」等アンメットメディカルニーズが高い領域をターゲットとし、効率的な研究開発を推進します。また、薬を必要な場所に的確に届けるドラッグデリバリーシステム領域において、マイクロニードルやリポソーム等当社独自技術を活用した製剤化技術の実用化に向けた取り組みを加速。リポソーム製剤については2020年2月に富山化学工業㈱の医薬品生産拠点に新工場を稼働させる予定です。

 再生医療事業では、2018年3月に培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company, Inc. (以下、「ISUS」と記載します。)および㈱アイエスジャパン(以下、「ISJ」と記載します。)の買収を発表しました。iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるCellular Dynamics International, Inc.(現 FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc. 以下、「FCDI」と記載します。)や自家培養軟骨や皮膚を提供する㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、「J-TEC」と記載します。)、「培地・サイトカイン」に高い技術を持つ和光純薬工業㈱(現 富士フイルム和光純薬㈱)、そして「足場材」で強みを持つ富士フイルム㈱とあわせ、再生医療の重要な三要素である「細胞」「培地」「足場材」をグループ内で一体開発できる体制をさらに強化しました。再生医療分野の研究開発の加速、バイオ医薬品の開発・製造受託事業の拡大等のシナジーを最大化させるとともに官・学との連携も強化し、再生医療の産業化に貢献していきます。

 高機能材料領域の各事業では、現在の競争優位性を維持し、さらに独自の技術力を生かし、市場のニーズにあった高収益の製品をタイムリーに投入していくことで売上・利益ともに拡大していきます。

 電子材料事業では、先端フォトリソ周辺材料等の既存製品の拡販に加えて、新規の周辺材料等で製品ラインアップを拡大し、事業を拡大します。

 ディスプレイ材料事業では、既存製品におけるマーケットポジションの維持に加え、薄膜・積層塗布技術を活用し、有機ELやタッチパネル用部材等、新規材料の拡販を進めます。

 産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や優れた微細孔構造とろ過特性をもつ「ミクロフィルター」等、当社独自技術を活用した新規用途の高機能製品を拡販していきます。また、トンネルや橋梁等の社会インフラに対して、当社画像診断技術を活用した点検サービスに参入し、事業を拡大します。

 ファインケミカル事業では、2018年4月に和光純薬工業㈱と富士フイルムファインケミカルズ㈱を統合するとともに社名を富士フイルム和光純薬㈱とし、さらなるシナジー創出を実現するための体制を整備しました。両社の技術の融合や化合物ライブラリーを活用することで競争力のある化成品・試薬等を開発・拡充し、事業を拡大します。

 

「ドキュメント事業の抜本的強化」

 ドキュメント事業は、日本及びアジア・オセアニア地域で獲得したトップポジションを維持しつつ、ソリューション・サービスの提供価値の強化、中国をはじめとする成長市場の事業拡大を加速するとともに、2018年1月に発表した構造改革を完遂することにより、収益・生産性を改善し、強靭な体質へと変革を果たすことで、今後の事業成長を力強く確実なものとします。

 オフィスプロダクト&プリンター事業では、「Smart Work Innovation」による新たな価値提案を通して、顧客の経営課題の解決に貢献します。クラウド対応した複合機の販売に加え、AIや自然言語処理等、富士ゼロックス㈱のユニークな技術の活用により、複雑化、多様化する顧客の経営課題に対しソリューションを提供します。また、市場ニーズにマッチしたコスト競争力のある製品開発、ローエンドモデルから上位機種への製品Mixのシフトによる収益モデルの見直し等を進め、高い収益性を確保します。

 プロダクションサービス事業では、有力な顧客基盤を梃子に、印刷ワークフロー全般をサービス化することで顧客価値を高めるとともに、印刷アプリケーションの拡張も進めます。また、インクジェットの領域で富士フイルム㈱と富士ゼロックス㈱、米国Xerox Corporationのネットワークをフル活用したグローバルなビジネス展開により、事業成長を図っていきます。

 ソリューション&サービス事業では、お客様の業種業務に基づいた付加価値の高い提案を実施し、さらなる成長を狙います。また、オフィスの膨大なビックデータとAIやIoT等の技術活用による、働き方/生産性改革を実現する新たな価値創出に向けた投資を積極的に行い、事業成長をリードします。

 

 当社は、グループガバナンスの強化を徹底するため、2017年8月に包括的なプロジェクト運営体制を整えました。具体的には、当社の社長を委員長とし、経営企画・経理・法務・CSR・監査・IR・ドキュメント事業を管掌する当社の各執行役員を委員とするガバナンス強化委員会を設置するとともに、同委員会の下、5つのプロジェクト(「グループ会社管理強化」「経理強化」「監査強化」「コンプライアンス強化」「ITガバナンス強化」)を発足させ、今後の改善方針を決定し、諸施策を推進してまいりました。また、2017年11月以降、内部通報制度の実効性をより一層高めるために、当社グループ全役員・従業員が当社コンプライアンス専任部門に直接通報できる内部通報制度の導入を進めています。さらに、2018年2月に「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を改訂する等、多面的な施策によりコーポレートガバナンスをさらに充実させるとともに、コンプライアンス・リスクマネジメントの強化を図ってまいります。

 

 当社グループは、2018年度の基本方針として「創造力と決断力を研ぎ澄まし、大胆に、フェアに、スピーディーに、イノベーティブに考え、行動する」を掲げました。「オープン、フェア、クリア」の精神のもと、AIやIoT、デジタルマーケティング、デジタルマニュファクチャリングで本格化するデジタル社会等の動きを先読みしてイノベーティブに行動するとともに、決断力とスピード感を持って課題をやり抜くことで、全事業における収益性向上に向けた取り組みを加速します。

 

(3)会社の支配に関する基本方針について

 当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。

 株主の皆様から経営を負託された当社取締役会は、その負託にお応えすべく、平素から当社グループの財務及び事業の方針を決定するにあたり、中長期的な視点に基づく持続的な成長を通じて、企業価値・株主共同の利益の確保及び向上を図ることがその責務であると考えております。この考え方に基づき、当社グループの企業理念のもと、「先進・独自の多様な技術力」と「グローバルネットワーク」、これらを下支えする「人材」と「企業風土」という当社グループの企業価値の源泉を伸張させること等により、企業価値の向上に努めてまいりました。

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの企業価値の源泉を理解し、中長期的な視点から当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。当社は、当社の支配権の獲得を目的とした買収提案がなされた場合、それを受け入れるか否かは最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきものと考えております。

 株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を検討するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社に買収者との十分な交渉機会を提供しないもの等、対象会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものがあります。

 当社は、当社株式の大量買付を行おうとする者が現れた場合は、株主の皆様のご判断に資するべく積極的な情報収集と適時開示に努めるとともに、当社の企業価値・株主共同の利益の確保及び向上を図るために、会社法及び金融商品取引法等の関係諸法令の範囲内で可能な措置を適切に講じてまいります。

2 【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)経済情勢・為替変動による業績への影響

 当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品及びサービスを提供しており、連結ベースでの海外売上高比率は当連結会計年度において約59%です。世界各地の経済情勢、とりわけ為替レートの変動は業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 為替変動による業績への影響を軽減するため、米ドル、ユーロにおいて先物予約を中心としたヘッジを行っていますが、為替の変動の程度によって業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)市場競合状況

 当社グループが関連する事業分野において、競合会社との競争激化による製品販売単価の下落、製品のライフサイクルの短縮化、代替製品の出現等が考えられます。これらは、売上高に影響を与え、また研究開発コストが増加する、営業権ほか無形固定資産の評価見直しを行う等、結果的に利益の減少に結びついていく可能性があります。今後も、新たな技術に裏付された製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては業績に影響を及ぼす可能性が考えられます。

(3)特許及びその他の知的財産権

 当社グループは、さまざまな特許、ノウハウ等の知的財産権を保有し、競争上の優位性を確保していますが、将来、特許の権利存続期間の満了や代替技術等の出現に伴って、優位性の確保が困難となることが起こり得ます。

 当社グループが関連する幅広い事業分野においては、多数の企業が高度かつ複雑な技術を保有しており、また、かかる技術は著しい勢いで進歩しています。事業を展開する上で、他社の保有する特許やノウハウ等の知的財産権の使用が必要となるケースがありますが、このような知的財産権の使用に関する交渉が成立しないことで業績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社の権利を侵害することがないよう常に注意を払って事業展開をしておりますが、訴訟に巻き込まれるリスクを完全に回避することは難しいのが実情です。このような場合、係争費用や敗訴した場合の賠償金等の負担により、業績に影響を及ぼす可能性も考えられます。

(4)公的規制

 当社グループが事業を展開している地域においては、事業・投資等の許認可、輸出入に関する制限や規制等、さまざまな政府規制を受けています。また、通商、公正取引、特許、消費者保護、租税、為替管理、環境関連、薬事関連等の法規制も受けています。

 万一、規制に抵触した場合、制裁金等が課される可能性があり、さらに、今後規制が強化されたり、大幅な変更がされたりすることが考えられ、その場合、当社グループの活動の制限や、規制遵守のため、あるいは規制内容の改廃に対応するためのコストが発生する可能性も否定できません。従って、これらの規制は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)生産活動

 当社グループの生産活動において、自然災害又は人災、原材料・部品等の供給元の製造中止、その他要因による混乱等により当社グループ製品の供給が妨げられたり、重大な設備故障が発生したりする可能性があります。また、原材料・部品等の価格高騰により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、厳しい品質管理基準に従い各種製品を生産しておりますが、将来にわたり製品に欠陥が発生する可能性がないとは言えず、万一、リコール等の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)情報システム

 当社グループは、さまざまな情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やセキュリティ対策を行っておりますが、停電、災害、不正アクセス等の要因により、情報システムの障害や個人情報の漏えい、改ざん等の事態が起こる可能性があります。これらにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7)大規模災害

 当社グループは、世界各地で生産・販売等の事業活動を行っております。このため、地震、台風、洪水といった大規模な自然災害に見舞われた場合や、火災、テロ、戦争、新型インフルエンザ等の感染症の蔓延といった要因により、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)構造改革

 当社グループは、当社子会社である富士ゼロックス㈱を取り巻く市場環境が厳しさを増す中で、今後の競争を勝ち抜き、事業成長を力強く確実なものとするため、2017年度より構造改革を実施しております。また、今後も引き続き経営効率の向上に向けて、コスト削減や資産圧縮を図る等の諸施策を講じていく方針です。この進展状況によって組織や事業・業務の見直しにより一時的に多額の経費が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 2017年度の世界経済を概観すると、全体として緩やかな回復基調が継続しました。米国の景気は、個人消費や設備投資が増加し、着実な回復が継続しました。欧州の景気は、消費や設備投資の増加により、緩やかな回復基調が継続しました。中国や他のアジア地域の景気は持ち直しの動きが続きました。日本では、雇用・所得環境の改善により、緩やかな回復基調が続きました。

 当社グループは、事業構造の転換で確立した強靭な経営基盤から生み出す利益を効率的に活用して安定成長できる事業ポートフォリオを構築して参りました。これらをさらに深化させ、持続的な成長を実現するために2017年8月に中期経営計画「VISION2019」(2017年度~2019年度)を策定しました。本中期経営計画では、イメージング・ヘルスケア&マテリアルズ・ドキュメントソリューションに属する各事業を、その成長段階に応じて「収益力の向上」、「さらなる成長の加速」、「未来を創る投資」の3つのステージに置き、現在の各事業の位置付けを明確化し、「各事業の収益力の向上によるキャッシュの安定的創出」、「主要事業の成長加速による売上・利益の拡大」、「未来の柱となる収益貢献事業の育成」を推進することで、戦略的飛躍へと繋げていきます。また、既存事業で築いた海外販売基盤の強化を進めつつ、ヘルスケア製品や新規高機能製品等の海外展開を加速させて、さらなる成長を図ります。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの名称を変更しており、従来の「インフォメーション ソリューション」を「ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション」に変更しております。当該変更は名称変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

 当社グループの2017年度における連結売上高は、電子映像事業、メディカルシステム事業、電子材料事業等で売上を伸ばし、2,433,365百万円(前年度比4.8%増)となりました。営業利益は、ドキュメントソリューションで実施した構造改革等の一時費用が発生したことにより、130,679百万円(前年度比24.1%減)となりました。これに加えて、有価証券売却益や和光純薬工業㈱(現 富士フイルム和光純薬㈱)の連結子会社化による評価益により、税金等調整前当期純利益は197,807百万円(前年度比1.6%増)、当社株主帰属当期純利益は140,694百万円(前年度比7.0%増)となりました。

 当連結会計年度末では、総資産は社債の償還、営業債権の減少等により40,249百万円減少し、3,492,940百万円(前年度比1.1%減)となりました。負債は社債の償還等により70,897百万円減少し、1,194,234百万円(前年度比5.6%減)となりました。純資産は自己株式取得や配当金の支払い等で減少した一方、当期純利益で増加したことにより30,648百万円増加し、2,298,706百万円(前年度比1.4%増)となりました。

 セグメントの業績は次のとおりであります。

 

「イメージング ソリューション部門」
 フォトイメージング事業では、インスタントカメラ“チェキ”シリーズやチェキ用フィルム等、撮影したその場で写真プリントが楽しめるインスタントフォトシステムを中心に売上が増加しました。2017年5月に発売したハイブリッドインスタントカメラ「instax SQUARE SQ10」及びスクエアフォーマットフィルム「instax SQUARE Film」、2017年11月に発売したスクエアフォーマット採用のスマートフォン用プリンター「instax SHARE SP-3」の販売が好調に推移しました。また、2017年12月からスマートフォン向けプリント注文アプリ「超簡単プリントアプリケーション」の提供を開始。スマートフォンに保存されている画像を簡単にプリントすることができ、新たなプリント需要を開拓しています。付加価値プリントビジネスでは、写真をパネル加工や額装し、部屋のインテリアとして楽しめる「WALL DECOR(ウォールデコ)プリントサービス」や、AIを活用した独自技術で写真を自動的にレイアウトするフォトブック「Year Album(イヤーアルバム)」、店頭での即時仕上げが可能なフォトブック「PhotoZINE」等の各種サービスが成長を続けており、売上の拡大に貢献しています。

 光学・電子映像事業の電子映像分野では、2018年3月に発売した、新開発の高剛性・高耐久ボディ、究極の高画質、快適な操作性を実現したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H1」、2018年2月に発売した、小型軽量ボディに新開発のセンサーと画像処理エンジンを搭載した「FUJIFILM X-A5」を中心としたXシリーズ、大型サイズ(43.8mm×32.9mm)のイメージセンサーを搭載した中判ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX 50S」、及び各種交換レンズの販売が好調に推移したことにより、売上が増加しました。光学デバイス分野では、車載用やプロジェクター用等各種産業用レンズや、市場が拡大しているWeb映像等の動画撮影向けの新シリーズであるシネマカメラ用レンズ「MKレンズ」シリーズの販売が好調に推移し、売上が増加しました。また、2018年1月に24倍の高倍率ズームを備え小型軽量と4K高画質を両立した放送用レンズ「UA24×7.8BE」を発売。4K対応放送用レンズのラインアップは8機種となり、4K分野をリードしていきます。

 本部門の連結売上高は、電子映像事業が大幅に売上を伸ばし、382,961百万円(前年度比12.1%増)となりました。営業利益は、各事業の収益性改善等により、56,025百万円(前年度比52.0%増)となりました。

 

「ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門」
 メディカルシステム事業では、X線画像診断、医療IT、内視鏡、超音波、体外診断(IVD)システム等全ての分野で販売が好調に推移し、売上が増加しました。X線画像診断分野では、小型化と従来機比約1/5の軽量化を実現した超軽量移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO(カルネオ アクロ)」の販売が好調に推移。また2018年2月に発売した、前方視認性に優れる支柱昇降タイプのX線DR回診車 「FUJIFILM DR CALNEO Go PLUS version」も医療現場で高い評価を得ています。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」を中心としたシステムの販売が好調に推移しました。内視鏡分野では、当社独自の特殊光観察が可能な「LASEREO」シリーズの国内外での販売が好調に推移しました。超音波診断分野では、プレミアム機種「SonoSite X-Porte」、携帯型超音波画像診断装置「SonoSite EdgeⅡ」、フルフラット型超音波画像診断装置「SonoSite SⅡ」等臨床処置現場における操作性・堅牢性等のニーズに応えた製品群の販売が、日米欧をはじめアジアや中東地域等で伸長しました。体外診断(IVD)分野は、血液検査システム「ドライケムシリーズ」の販売が欧州及びアジアで好調に推移しました。2017年4月に和光純薬工業㈱(現 富士フイルム和光純薬
)の臨床検査薬事業を連結対象に加えたことで、前年に対して売上が大きく伸長。2018年2月にインフルエンザやマイコプラズマ肺炎等の感染症を引き起こすウイルスや細菌の有無を自動判定する感染症検査装置「富士ドライケム IMMUNO AG2」を発売しました。

 医薬品事業では、低分子医薬品における後発医薬品の影響等を受け、売上は減少しました。研究開発においては、2017年8月に再発・難治性の急性骨髄性白血病を適応症とする抗がん剤「FF-10101」の臨床第Ⅰ相試験を米国で開始。また、進行性の固形がんを適応症とする抗がん剤「ゲムシタビン」をリポソームに内包したリポソーム製剤「FF-10832」の臨床第Ⅰ相試験を2018年5月に米国で開始する等パイプラインの開発を着実に推進しています。また、当社グループの富山化学工業㈱の医薬品生産拠点に約40億円を投資し新工場を建設することを2018年2月に発表。新工場では、「FF-10832」等独自技術を活かしたリポソーム製剤の治験薬製造や商業生産を行う計画です。

 バイオCDMO事業では、医薬品のプロセス開発・製造受託が好調に推移しました。顧客からの増産要請や今後のさらなる需要拡大に迅速に応えるため、米国テキサス拠点に新たに建設した生産棟を2018年1月に稼働しました。さらに、米国拠点のバイオ医薬品の生産能力増強や、英国の生産プロセス開発拠点の追加設備投資の前倒しを決定する等、今後も生産能力増強を継続するとともに、高効率・高生産技術の開発により、バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業を拡大していきます。

 再生医療事業では、J-TECの自家培養表皮「ジェイス」が、2016年12月より先天性巨大色素性母斑に適応対象を拡大した効果もあり、受注が好調に推移し、売上に貢献しました。また、再生医療で重要な役割を果たす「培地・サイトカイン」に高い技術を持つ和光純薬工業㈱(現 富士フイルム和光純薬)を2017年4月に連結子会社化。iPS細胞の開発・製造の世界的なリーディングカンパニーであるFCDIやJ-TEC、そして「足場材(リコンビナントペプチド)」で強みを持つ富士フイルム㈱と合わせ、グループ内のシナジーを発揮し、再生医療事業の拡大をさらに加速します。また、2018年3月には、培地のリーディングカンパニーであるISUSおよびISJの買収を発表。培地事業を拡大すると共に、再生医療分野の研究開発を加速、医薬品の開発・製造受託事業の拡大への貢献等シナジーを最大化させていきます。

 ライフサイエンス事業では、2017年3月に販売を開始した美白化粧水「アスタリフト ホワイトブライトローション」等の美白シリーズ、「糖の吸収を抑える」と「腸内環境を整える」の2つの機能を持つ機能性表示食品「メタバリアS」等の販売が好調に推移し、売上が増加しました。また、2018年3月に発売した美白クリーム「アスタリフト ホワイト クリーム」、ベースメイクシリーズの新たなラインアップとして発売した「アスタリフト BB クリーム」の販売も堅調に推移しています。

 ディスプレイ材料事業では、タッチパネル、有機EL関連など新規分野の製品販売が伸長しましたが、既存タック製品の在庫調整の影響を受け、売上はほぼ横這いとなりました。

 産業機材事業では、当社グループ会社の洋紙事業とプリンターシステム事業の譲渡等により売上が減少しましたが、タッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」、工業用X線フィルムや圧力測定フィルム「プレスケール」の販売が好調に推移しました。

 電子材料事業では、先端フォトレジストやフォトリソ周辺材料、CMPスラリー、イメージセンサー用カラーモザイク等の販売が通期にわたり好調を維持し、売上が大幅に増加しました。

 ファインケミカル事業では、紙おむつ等日用品に使用される高吸水性樹脂の原料となる重合開始剤等の高機能化成品の売上が増加しました。事業基盤をさらに強化するため、2018年4月1日付で和光純薬工業㈱と富士フイルムファインケミカルズ㈱を統合。社名を富士フイルム和光純薬㈱として、研究開発・生産・品質保証・営業等の全ての機能を一体化することで体制を強化し、さらなるビジネス拡大を図っていきます。

 記録メディア事業では、高容量データストレージ用磁気テープ製品の在庫調整等の影響で売上が減少しました。「BaFe(バリウムフェライト)磁性体」等の独自技術を使用したデータストレージ用磁気テープの拡販を進めるとともに、「dternity(ディターニティ)」等のアーカイブサービスを提供することで、ビッグデータ時代の顧客ニーズに確実に対応していきます。

 グラフィックシステム事業では、製版・刷版材料の総需要減による販売減等により、売上が減少しました。2017年10月から米国Xerox Corporationと北米地域におけるデジタル印刷機「Jet Press720S」の販売協業を開始。また、富士フイルム㈱と富士ゼロックス㈱のインクジェットデジタルプレスの国内の販売機能を、富士フイルムデジタルプレス㈱に統合する等販売体制を再編。デジタル化が進む印刷市場において、最適な製品・ソリューションを提供するとともに、「Jet Press」の拡販を図ります。

 インクジェット事業では、インク及び産業用インクジェットヘッドの販売が好調に推移しました。これまで注力してきた商業印刷分野、サインディスプレー分野やセラミック分野に加え、テキスタイル等、新たな領域へ独自の製品を展開し、事業を拡大していきます。

 本部門の連結売上高は、メディカルシステム事業、電子材料事業等で大きく売上を伸ばし、1,002,602百万円(前年度比11.5%増)となりました。営業利益は、収益性の改善等により、92,796百万円(前年度比11.8%増)となりました。

 

「ドキュメント ソリューション部門」
 オフィスプロダクト&プリンター事業のオフィスプロダクト分野では、国内やオセアニア地域で複合機の販売台数が減少しましたが、中国での販売が引続き堅調だったことや、欧米向けの新商品が好調で輸出が増加したことから、全体の販売台数は対前年でやや増加しました。オフィスプリンター分野では低採算のローエンドプリンタービジネスの縮小により、販売台数が減少しました。

 プロダクションサービス事業は、年間の販売台数は減少しましたが、2017年11月に発売したカラー・オンデマンド・パブリッシング機「IridesseTM Production Press」の販売が好調に推移しました。2018年2月にはモノクロ高速プロダクションプリンターのラインアップを一新、オフィス市場、グラフィックアーツ市場から基幹出力業務まで幅広い業務を支援し、売上拡大を目指します。

 ソリューション&サービス事業は、図面管理ソリューション等の業種業務別ソリューションの販売が好調に推移したことに加え、既存のBPO(Business Process Outsourcing)契約に対する売上も堅調に推移しましたが、仕入れ商品に対する売上の計上方法を変更した影響により、全体の売上は対前年で減少しました。今後は、AI(人工知能)及びIoT(Internet of Things)・IoH(Internet of Humans)技術を活用した新たなソリューション・サービスの提供により、創造的な働き方への変革及び企業競争力の強化を支援することで、事業を拡大していきます。

 なお、構造改革費用等の一時費用については、主に国内の人員削減等により37,987百万円の構造改革費用を計上しました。また、一時費用の一部として、富士ゼロックス㈱のアジア販売子会社等において以下の事項にかかわる費用を計上しております。

 当社は前年度に公表したFuji Xerox New Zealand Limited及びFuji Xerox Australia Pty. Limitedの会計問題を踏まえ、当社社長を委員長とするガバナンス強化委員会の下、全世界のグループ会社を対象にガバナンス強化策を実施してきました。特に、経理分野では、当社、富士フイルム㈱及び富士ゼロックス㈱の経理部門を統合し、売上計上プロセスや債権管理プロセスの改善を徹底、リース取引基準の厳格化、全グループ会社のCEO及びCFOを対象にした会計コンプライアンス教育等を実施いたしました。さらに、各社の経理状況を徹底的にチェックし、営業債権に対する貸倒引当金処理の厳格化等を各グループ会社に徹底しています。その結果、2017年度における貸倒引当金処理の厳格化や事業戦略見直しによる費用計上等、当施策の実施により明らかになった過年度分を含む会計処理の修正を実施いたしました。

 当社は、本修正が当社連結決算に重要な影響を及ぼすものではないと判断し、2016年度までの累積的影響額を2017年度に一括して処理しています。本修正が2017年度における当社株主帰属当期純利益に与える影響額は、10,073百万円となります。

 主な会計処理の修正等として、富士ゼロックス㈱のアジア販売子会社における営業債権に対する貸倒引当金の修正、及び小型プリンター事業における実質的な預託販売と判断される取引の修正をしております。これらの修正が2017年度における当社株主帰属当期純利益に与える影響額はそれぞれ3,567百万円及び2,858百万円となります。

 本部門の連結売上高は、低採算のローエンドプリンタービジネスの縮小やオセアニア地域での販売減少等により、1,047,802百万円(前年度比3.1%減)となりました。営業利益は、構造改革費用等の一時費用(約700億円)が発生したことにより、13,980百万円(前年度比83.1%減)となりました。

 

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」と記載します。)は、為替変動による影響等を合わせて、前連結会計年度末より107,712百万円減少し、当連結会計年度末におきまして768,246百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動により得られた資金は261,152百万円となり、前連結会計年度と比較して27,467百万円(9.5%)減少しておりますが、これは営業債務の支払額が増加したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動に使用した資金は111,786百万円となり、前連結会計年度と比較して4,653百万円(4.0%)減少しておりますが、これは和光純薬工業㈱(現 富士フイルム和光純薬㈱)の買収による支出があったものの、定期預金が減少したこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動に使用した資金は258,961百万円となり、前連結会計年度と比較して370,251百万円(前連結会計年度は111,290百万円の収入)増加しておりますが、これは長期債務による調達額が減少したことや長期債務の返済額が増加したこと等によるものです。

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態は基本的にとっておらず、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。

 販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 ① 資本の財源及び資金の流動性

ⅰ)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

・連結キャッシュ・フロー指標

 

前連結会計年度

当連結会計年度

株主資本比率(%)

57.8

59.5

時価ベースの株主資本比率(%)

53.9

52.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.9

1.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

60.2

57.1

 

(注)株主資本比率

:株主資本/総資産

時価ベースの株主資本比率

:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産

*自己株式を除く

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ

:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息)

 

ⅱ)財務政策

 当社グループの資金調達の手段は、社債の発行、銀行借入金等であり、2018年3月31日現在の残高の内訳は、短期の社債及び借入金41,676百万円、長期の社債及び借入金412,502百万円となっております。

 これらの資金調達は設備投資資金、投融資資金、運転資金等の資金需要に対応しております。

 

 ② 経営成績

 ⅰ)売上高

 当連結会計年度の売上高は、前年度の2兆3,222億円に対し、1,112億円増加し、2兆4,334億円(前年度比4.8%増)となりました。国内売上高は1兆65億円(前年度比4.5%増)、海外売上高は1兆4,269億円(前年度比5.0%増)となりました。実績為替レートは111円/米ドル(前年度比3円安)、130円/ユーロ(前年度比11円安)となりました。

 イメージング ソリューション部門は、為替の円安によるプラス影響、電子映像事業が大幅に売上を伸ばしたこと等により、対前年増収となりました。ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門は、為替の円安によるプラス影響に加え、メディカルシステム事業、電子材料事業等が好調で対前年で売上は増加しました。ドキュメント ソリューション部門は、ローエンドプリンタービジネスの縮小やオセアニア地域での販売減少等により、対前年で売上は減少しました。

 ⅱ)営業費用及び営業利益

 販売費及び一般管理費は、前年度の5,981億円に対し749億円増加し、6,730億円(前年度比12.5%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は27.7%でした。

 研究開発費は、前年度の1,602億円に対し61億円増加し、1,663億円(前年度比3.8%増)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は6.8%でした。

 営業利益は、前年度の1,723億円に対し、ドキュメント ソリューションで実施した構造改革等の一時費用が発生したこと等により416億円減少し、1,307億円(前年度比24.1%減)となりました。

 イメージング ソリューション部門の営業利益は、前年度の368億円に対し192億円増加し、560億円となりました。これは、為替の円安による売上増加の影響を受けたことに加え、各事業の収益性が改善したことによるものです。ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門の営業利益は、前年度の830億円に対し98億円増加し、928億円となりました。これは、為替の円安による売上増加の影響を受けたことに加え、収益性が改善したことによるものです。また、ドキュメント ソリューション部門の営業利益は、前年度の827億円に対し687億円減少し、140億円となりました。これは、構造改革費用等の一時費用が発生したことによるものです。

 ⅲ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益

 営業外収益及び費用は、投資有価証券売却益を計上したこと等により、前年度225億円の営業外収益に対し446億円増加し、671億円の営業外収益となりました。

 税金等調整前当期純利益は、前年度の1,948億円に対し30億円増加し、1,978億円となりました。

 ⅳ)法人税等

 法人税等は、前年度の441億円に対し103億円増加し、544億円となりました。

 ⅴ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益

 持分法による投資損益は、前年度35億円の損失に対して43億円増益し、9億円の利益となりました。

 非支配持分帰属損益は、主として富士ゼロックス㈱及びその子会社の非支配持分に帰属する利益です。前年度の157億円に対し121億円減少し、36億円となりました。

 ⅵ)当社株主帰属当期純利益

 当社株主帰属当期純利益は、前年度の1,315億円に対し92億円増加し、1,407億円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の296.27円に対し、322.62円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の295.22円に対し、321.55円となりました。

4 【経営上の重要な契約等】

(1)相互に技術を供与している契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

富士ゼロックス㈱(連結子会社)

Xerox Corporation(米国)

ゼログラフィー製品及びその他の製品に関する技術・商標等のクロスライセンス

2016年4月1日から

2021年3月31日まで

(2)外国会社への技術輸出契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

富山化学工業㈱(連結子会社)

Merck Sharp & Dohme Corp(注)(米国)

ニュータイプのキノロン系抗菌薬「T-3811」の特許及びノウハウについての実施契約並びにバルク供給契約

2004年6月22日から

対象特許の満了日まで

MSD International Holdings GmbH (注)(スイス)

(注)Schering Corporation(米国)はMerck Sharp & Dohme Corp との合併(2012年5月)により、社名がMerck Sharp & Dohme Corp となっております。
Schering-Plough Limited(スイス)は組織変更により、社名をMSD International Holdings GmbH に変更しております。

(3)国内会社との取引契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

富山化学工業㈱(連結子会社)

アステラス製薬㈱

ニュータイプの経口用キノロン系抗菌薬「T-3811」の特許及びノウハウについて国内における実施権供与、共同開発、並びに販売権の供与

2006年3月31日から

対象特許の満了日まで

(4)株式取得に関する契約

①当社は、2018年1月31日開催の取締役会において、当社子会社である富士ゼロックス㈱とXerox Corporation(米国ニューヨーク証券取引所に上場する米国法人。以下「ゼロックス」と記載します。)との間で、ゼロックスが富士ゼロックス㈱を完全子会社化すること、及び、富士ゼロックス㈱を完全子会社化した後にゼロックスの第三者割当増資を当社が引き受けることによりゼロックス株式の50.1%を取得する旨の契約を締結することについて決議し、当該契約を締結しました。

 

②当社の完全子会社である富士フイルム㈱は、JXTGホールディングス株式会社のグループ会社で、細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるISUSおよびISJの発行済全株式を取得する株式売買契約を、2018年3月29日に締結しました。

 

③当社は、2018年5月10日開催の取締役会において、診断薬・治療薬の新薬開発を加速させるため、低分子医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富山化学工業㈱と、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富士フイルムRIファーマ㈱を2018年10月1日付で統合し、富士フイルム富山化学㈱としてスタートさせることを決定いたしました。

また、新会社発足に向けて、大正製薬ホールディングス㈱と、同社が保有する富山化学工業㈱の全株式を取得し、2018年7月31日に富山化学工業㈱を完全子会社化することを、2018年5月14日に合意しました。

 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2018年3月には、富士フイルム㈱において、「バイオサイエンス&テクノロジー開発センター」と「精密プロセス技術センター」を設立しました。生産プロセス技術の応用展開の強化によるバイオ医療の研究開発の加速、革新的なモノづくり基盤技術や新規事業創出を支える生産プロセス技術の開発を目指します。

 富士フイルム㈱は、2018年3月に、細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるISUSおよびISJの発行済全株式を取得する株式売買契約を締結し、2018年6月に買収手続きを完了しました。今後、写真フィルムで培った高度な化学合成力・設計力、富士フイルムグループの細胞の作製・培養技術などを活かして、培地事業のさらなる成長を図り、なおかつ培地事業以外でもシナジーを最大化させていきます。

 また、富士フイルム㈱は、写真フィルムで培った粒子形成技術やナノフォトニクス技術などを活かし、非標識・無染色で組織の代謝物を大面積で高精度に分析できるSERSイメージング技術を開発し、2018年4月に研究成果を発表しました。本技術を応用した慶應義塾大学との共同研究において、マウス生体切片中のがん組織の分布を、自動的に可視化することに世界で初めて成功しており、これはがんの自動病理診断に繋がる画期的な成果です。

 当社グループでは、これまで開発してきた優れた材料・製品を支える基盤技術やコア技術、開発中の新しい技術・材料・製品を直接触れていただきながら、ビジネスパートナーにソリューションを提案する施設「Open Innovation Hub」を日・米・欧3拠点で展開しています。「Open Innovation Hub」では、ビジネスパートナーが持つ課題やアイデア、潜在的なニーズと自社の技術を結びつけ、画期的な新しい製品・技術・サービスを生み出す「共創」活動が日々活発に行なわれており、花王㈱との共同研究により非反応型染毛染料「レインボー染料」の開発に成功するなど、「共創」活動が新しい技術へ結実しています。

 このように、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及び富山化学工業㈱等のグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は166,331百万円(前年度比3.8%増)、売上高比6.8%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は25,267百万円です。

 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。

(1)イメージング ソリューション部門

 フォトイメージング事業では、新開発した当社独自の4色インク「ViViDiA D-photo」や1200×1200dpiの高解像度を実現するインクジェットヘッド、専用インクジェットペーパー、画像処理技術「Image Intelligence™」の組み合わせにより、4色インクながら従来のコンパクトタイプのインクジェットプリンターを凌駕する高画質を実現した小型インクジェットプリンター「Frontier DE100」を発売しました。

 光学・電子映像事業では、新開発の高剛性・高耐久ボディ、究極の高画質、快適な操作性を実現したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H1」と、「Xシリーズ」用交換レンズとして高い光学性能を実現したシネマレンズ2本を発売し、静止画のみならず動画撮影にも最適なミラーレスデジタルカメラのラインアップを拡大しました。「FUJIFILM X-H1」は、新開発の高剛性・高耐久ボディに、ボディ内5軸・最大5.5段手ブレ補正機能を「Xシリーズ」で初めて搭載しており、また不安定な光源下でも安定した露出を実現する「フリッカー低減撮影機能」も搭載しています。さらに、多彩な色調を実現する「フィルムシミュレーション」には当社映画用フィルムの色・階調を再現した「ETERNA(エテルナ)」モードを新たに備えました。「Xシリーズ」用交換レンズである「フジノンレンズ MKX18-55mmT2.9」と「フジノンレンズ MKX50-135mmT2.9」は、約1kgの軽量設計ながら、世界中の映画制作などで採用されている「FUJINON シネレンズ」の高い描写力を実現しています。4K対応放送用レンズでは、コンパクトボディながら、広角7.8mmから187mmの焦点距離をカバーする24倍高倍率ズームを備え、高い機動力と運用性を発揮するポータブルズームレンズ「FUJINON UA24×7.8BERD」を発売しました。

 本部門の研究開発費は、8,994百万円となりました。

 

(2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門
 メディカルシステム事業では、特性の異なる2種類のX線検出部を積層した「デュアル構造」のデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual」を新たに開発しました。「CALNEO Dual」は、一度のX線照射で、高精細な一般X線画像に加え骨密度測定用の骨強調画像を同時に取得できるため、撮影時間の短縮と被検者の身体的負荷軽減に貢献し、また一般X線画像の撮影とDXA法による骨密度測定が1台でできるため、省スペース化にも貢献します。さらに、当社のX線動画技術と、X線動画全体のコントラストを最適化する画像処理技術「Dynamic Visualization2」で構成されるX線動画処理エンジン「Dynamic Core Engine」を搭載した、外科用Cアーム型デジタル透視システム「COREVISION
3D」を新たに開発しました。「COREVISION 3D」は、2D動画だけでなく、術中に対象部位を180°相当スキャンして3D画像を描出することで、医師の正確な手技をサポートします。内視鏡分野では、臓器の粘膜表層の微細な血管や、粘膜の微細な構造などを強調して表示する機能「BLI」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI」などの画像強調機能により、微小な病変の発見をサポートするLED光源搭載内視鏡システム「6000システム」を発売しました。そして「6000システム」にも装着可能なキセノン光源搭載の内視鏡システム「Advancia(アドバンシア)」用スコープのラインアップとして、スコープ先端の軟性部に弾発性が高い素材を採用した「高追従挿入部」を搭載した十二指腸用処置スコープ「ED-580T」も発売しました。

 医薬品事業では、米国において進行性の固形がんを対象とする抗がん剤「FF-10832」の臨床第Ⅰ相試験を開始しました。「FF-10832」は、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活かして、既存の水溶性薬剤である抗がん剤「ゲムシタビン」をリポソームに内包したリポソーム製剤です。リポソームとは、体内で必要な量の薬剤を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム技術の一種で、薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して薬効を高めることができると期待されています。さらに、抗がん剤「FF-10101」では、米国において、再発・難治性の急性骨髄性白血病の患者を対象とした臨床第Ⅰ相試験を開始しました。「FF-10101」は、富士フイルム㈱が写真フィルムなどで培った、化合物の高い合成力、設計力を活かして自社で創製したFLT3阻害剤で、FLT3に含まれるアミノ酸と不可逆的に結合してその働きを阻害し、白血病細胞の異常増殖を抑制します。細胞実験では、「FF-10101」が、他のFLT3阻害剤に耐性を示すTKD変異が発現している白血病細胞の増殖に対し強力な阻害作用を示しており、さらに白血病の患者細胞を用いたマウス実験でも高い効果を発揮していることから、ヒトでの有効性が期待されています。また、富山化学工業㈱は、横浜市立大学、産業技術総合研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究により、富山化学工業㈱が創製した化合物「edonerpic maleate」が脳損傷後の機能回復のメカニズムである脳の可塑性を向上させることを明らかにし、脳損傷後の「edonerpic maleate」投与で、リハビリテーションによる運動機能回復効果が改善することをモデルで示すことに成功しました。富山化学工業㈱は承認取得に向けて脳卒中後の回復期リハビリテーションを行っている患者を対象とした治験を実施します。

 再生医療事業では、武田薬品工業㈱に対して、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療製品の全世界での共同事業化に関する優先交渉権を付与する契約を締結しました。今後、複数のiPS細胞由来心筋細胞の薬効・安全性評価、実用化に向けたプロセス開発などについて共同研究を実施します。また、富士フイルム㈱の子会社であるセルトラスト・アニマル・セラピューティクス㈱では、犬の眼疾患である難治性の乾性角結膜炎を対象に細胞を用いた治療法の有効性を確認しました。本治療法は、動物医療分野では初めて、人の再生医療と同等の品質管理基準に基づき培養された他家細胞を用いる画期的なものです。

 ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT」のプレステージシリーズ「ASTALIFT IN-FOCUS」を新たに展開し、総合エイジングケア美容液「アスタリフト イン・フォーカス セルアクティブセラム」を発売しました。「アスタリフト イン・フォーカス セルアクティブセラム」は、「アスタキサンチン」と「ニコチン酸トコフェロール」を組み合わせて独自技術でナノ分散した美容成分「ナノアスタキサンチンCP+」のほかに、「ナノボスウェリン酸」を含む成分「ナノセルアクティブ」を配合しています。また、美容成分を含んだオイルを微細な粒子にして高密度に配合する処方技術「イオンセンシング技術」を開発し、肌に載せると、肌と一体化するように溶けて浸透します。さらに、近年の動物の健康に対する関心の高まりを受け、馬の腸内環境を整える作用を持つサプリメント「ピュア サラシア」を発売しました。馬に本製品を継続摂取させた結果、馬の腸内で善玉菌に分類される乳酸菌の比率が顕著に増加することが明らかになり、また、エネルギー吸収を向上させる腸内細菌の比率が増加する一方、エネルギー吸収の低下を招く腸内細菌の比率が減少することも分かっています。

 産業機材事業では、ひび割れ点検業務を大幅に効率化する社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」の提供を開始しました。「ひびみっけ」は、富士フイルム㈱が医療用画像診断システムで培った高精度な画像解析技術を用いて開発したサービスで、AIを活用した画像解析などにより、人手による従来の点検業務に比べて作業時間を半減することができます。

 ファインケミカル事業では、原料を連続的に供給し混合・反応させる化学合成法である「フロー合成法」を活用した新たな化成品の製造受託サービスを開始しました。富士フイルムが持つ、合成処方設計から高精度な反応制御、生産プロセス開発を一貫して行える多様な技術と、富士フイルム和光純薬㈱が保有する生産設備を組み合わせて、多品種少量生産から大量生産まで対応可能な受託体制を構築しており、化成品の高純度化ニーズに応えます。

 記録メディア事業では、「バリウムフェライト(BaFe)磁性体」を世界で初めて採用した大容量磁気テープの開発に携わった7名が、第7回ものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」(製品・技術開発部門)を受賞しました。「ものづくり日本大賞」は、ものづくりの現場で活躍し新たな付加価値を提供できる人材を顕彰する内閣総理大臣表彰であり、「活用が進むビッグデータを安全・安価・長期に保管したい」という社会のニーズに応えたこと、また、磁気テープの今後のさらなる大容量化の道を拓いた点が高く評価されました。

 本部門の研究開発費は、69,737百万円となりました。

 

 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(2018年6月現在)

開発番号

薬効・適応症

剤形

地域

開発段階

T-705

抗インフルエンザウィルス薬

経口

米国

PhⅢ

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬

経口

日本

PhⅢ

T-3811

キノロン系合成抗菌薬

経口

中国

承認申請中

T-2307

抗真菌薬

注射

米国

PhⅠ

T-817MA

アルツハイマー型認知症治療薬

経口

米国

日本

PhⅡ

PhⅡ

T-4288

新規フルオロケトライド系抗菌薬

経口

日本

PhⅢ

ITK-1

去勢抵抗性前立腺がん治療薬

注射

日本

PhⅢ

FF-10501

骨髄異形成症候群治療薬

経口

日本

米国

PhⅠ

PhⅡ

FF-10502

進行・再発固形がん治療薬

注射

米国

PhⅡ

FF-21101

進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体)

注射

米国

PhⅠ

F-1311

前立腺がん診断薬(放射性医薬品)

注射

日本

PhⅡ

FF-10101

急性骨髄性白血病治療薬

経口

米国

PhⅠ

F-1515

神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品)

注射

日本

PhⅠ

FF-10832

進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)

注射

米国

PhⅠ

F-1614

難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品)

注射

日本

PhⅡ

 

(3)ドキュメント ソリューション部門

 ドキュメント事業領域では多様な働き方をサポートする商品・サービスを提供しており、クラウドサービス「Working Folder」と連携するなどモバイルワーク向け機能を強化したドキュメントハンドリング・ソフトウェアの新バージョン「DocuWorks 9」の発売を開始しました。DocuWorksシリーズは国内販売累計500万ライセンスを突破し有効なツールとして認知されています。また小規模企業向けには「直観的でシンプルな操作」「モバイル・クラウド連携」機能を強化し多様な働き方を支援するフルカラー複合機「DocuCentre C2000」を発売しました。その他、セブン-イレブン店舗の「マルチコピー機」で、ユーザー情報の登録無しで「ネットプリント」が利用可能なサービスを開始しました。

 カラープロダクション市場向けには、業界初1パス6色のプリントエンジンで複数の特殊色を一度に印刷可能な「IridesseTM Production Press」を発売開始し、新たなデジタルプリンティング市場を創出していきます。また「Xerox iGen 5 150 Press」のオプショントナーとしてホワイトトナーを発売、濃色用紙や透明紙への印刷を可能とし訴求効果の高い印刷アプリケーションで印刷業のお客様のビジネス拡大に貢献していきます。

 また複写技術を進化させた独自のアルゴリズムにより工業製品など物体表面に偶然生成された固有のランダムパターンを識別する「Yoctrace®」技術を開発しました。特に印刷業で有価証券の偽造防止などの目的に本技術をセキュリティー媒体として活用し、高い真贋判定や認証サービスの実現に向けて支援します。

 さらに知的財産交流を通して、自社の特許を開放し新たな事業創出を支援する特許ライセンスビジネスを本格展開しました。この第1号案件として、自己修復性能を有する樹脂材料の特許技術に関する契約を神奈川県内の企業と締結しました。

 2018年3月には、社会課題である働き方改革の実現に向けて、より創造的な働き方への変革を促す新たな価値提供戦略「Smart Work Innovation」を発表しました。この戦略実現に向けてAI(人工知能)およびIoT(Internet of Things)・IoH(Internet of Humans)技術を活用した新たなサービスを順次提供します。

 本部門の研究開発費は、62,333百万円となりました。