(1)経営方針、経営環境
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループは、コア事業であった写真フィルムの需要が激減した2000年以降、事業構造の転換を積極的に進め、安定的に利益を創出できる経営基盤を構築し、新たな成長フェーズに入りました。2017年8月に2030年度を目標とした新CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030」(以下、「SVP2030」)を策定しました。革新的技術・製品・サービスの提供等、事業活動を通じた社会課題の解決により一層取り組み、サステナブル社会の実現に貢献する企業を目指します。また、SVP2030で示した目指す姿を実現するための具体的なアクションプランとして、中期経営計画「VISION2019」を策定しました。それぞれの事業を「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つのステージに位置づけ、成長過程に合わせた施策を適切に展開することにより、個々の事業の収益力のさらなる強化を図ることで、事業ポートフォリオをより強固なものにし、一層の飛躍へとつなげていきます。2019年度は、米中貿易摩擦、欧州における英国のEU離脱や移民問題、中国をはじめとした新興国経済の動向、北朝鮮やシリア情勢等の地政学的リスク、国内においては消費増税による駆け込み需要及びその反動等、先行きの見えない不安定な状況が続くことが予想されますが、当社は各事業のさらなる収益力の向上で安定的にキャッシュを創出するとともに、特に「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長の強化」と「ドキュメント事業の抜本的強化」を実現することで、事業ポートフォリオをより強固なものにしていきます。2019年度の見通しでは、営業利益を中期経営計画に対して100億円上乗せし、ROEについても7.3%から7.5%へ変更しています。
(単位:億円)
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2018年度 |
2019年度 (中期経営計画) |
2019年度 (次期の見通し) |
対前年度 |
対中期経営計画 |
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売上高 |
24,315 |
26,000 |
24,800 |
485 |
△1,200 |
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営業利益 |
2,098 |
2,300 |
2,400 |
302 |
100 |
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当社株主帰属当期純利益 |
1,381 |
1,500 |
1,550 |
169 |
50 |
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ROE |
6.7% |
7.3% |
7.5% |
0.8ポイント増 |
0.2ポイント増 |
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(2)対処すべき課題
「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長の強化」
ヘルスケア領域では、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業が売上成長を牽引し、増収・増益を確保します。医薬品事業と再生医療事業は損益をコントロールしつつ、研究開発を加速することで事業を育成していきます。
メディカルシステム事業では、画像処理技術をベースにしたⅩ線画像診断機器、医療IT、内視鏡、超音波、体外診断(IVD)と幅広いラインアップを生かし、競争優位性の高い医療ITを核とした総合的なソリューション提案を強化します。医療IT事業では、AIを活用した画像診断支援技術の開発を推進し、医療現場のさまざまなニーズに応えるソリューションを提供するため、自社での技術開発に加えて、優れた技術をもつ国内外のAIベンダーとパートナーシップを組み、画像診断における医師の診断支援やワークフローの効率化を目指した開発をスピーディに進めていきます。
高い市場成長が見込めるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業では、2019年3月にBiogen (Denmark) Manufacturing ApSの買収を発表しました。また、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies U.S.A.,Inc.の米国拠点には2019年1月から2年間で総額約100億円の設備投資を行う等、設備投資・技術開発により生産能力をさらに拡大し、スケールメリットによる収益力強化で事業成長を加速します。
医薬品事業では、アンメットメディカルニーズが高い領域をターゲットとし、抗がん剤「FF-10501
」やアルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」等の研究開発を効率的に推進します。また、薬を必要な場所に的確に届けるドラッグデリバリーシステム領域において、マイクロニードルやリポソーム等、当社独自技術を活用した製剤化技術の実用化に向けた取り組みを推進します。
再生医療事業では、2018年6月に培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company,Inc.(現FUJIFILM Irvine Scientific,Inc.)を連結子会社化し、再生医療の重要な三要素である「細胞」「培地」「足場材」をグループ内で開発できる体制をさらに強化しました。再生医療分野の研究開発の加速、バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大等のシナジーを最大化させるとともに、官・学との連携も強化し、再生医療の産業化に貢献していきます。
高機能材料領域の各事業では、現在の競争優位性を維持し、さらに独自の技術力を生かし、市場のニーズにあった高収益の製品をタイムリーに投入していくことで売上・利益ともに拡大していきます。
電子材料事業では、先端フォトリソ周辺材料等既存製品の拡販、及び製品ラインアップの拡大により事業成長を加速します。AI・IoT(Internet of Things)や次世代通信規格「5G」の普及、自動運転技術の進化等により、半導体の需要拡大と高性能化が見込まれており、それに対応するため、2018年12月から3年間で100億円の設備投資を決定、さらなる需要拡大に対応していきます。
ディスプレイ材料事業では、既存製品におけるマーケットポジションの維持に加え、薄膜・積層塗布技術を活用し、有機ELやタッチパネル用部材、車載ディスプレイ用途等新規材料の拡販を進めます。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や優れた微細孔構造とろ過特性をもつ「ミクロフィルター」等、当社独自技術を活用した新規用途の高機能製品を拡販していきます。また、AIを活用した画像解析による橋梁やトンネル等のひび割れの検出、検出結果のデータ化等を行うクラウドサービスの展開を推進し、事業を拡大します。
「ドキュメント事業の抜本的強化」
ドキュメント事業は、「Smart Work Innovation」コンセプトのもと、独自のAI技術とIoT・IoH(Internet of Humans)技術を活用し、多様化する働き方を支援する新しいソリューションやサービスを順次提供するとともに、事業成長をリードします。また、RPA(Robotic Process Automation)を活用した生産性改善、及び2017年度から実施した構造改革を実行することにより、収益・生産性を改善し、強靭な体質へと変革を果たすことで、今後の事業成長を力強く確実なものとします。
オフィスプロダクト&プリンター事業では、セキュリティ機能を強化したカラー複合機「Apeos
Port」新シリーズを核として、日本・中国をはじめとするアジア・オセアニア地域でさらにシェア拡大を目指すとともに、販売網拡大による売上成長を目指します。また、商品開発期間の短縮により、コスト競争力のある製品を提供し、より高い収益性を確保します。
プロダクションサービス事業では、有力な顧客基盤を梃子に、印刷ワークフロー全般をサービス化することで顧客価値を高めるとともに、印刷アプリケーションの拡張も進めます。また、インクジェット領域で、富士フイルム㈱と富士ゼロックス㈱、米国Xerox Corporationのネットワークを活用したグローバルなビジネス展開により、事業成長を図っていきます。
ソリューション&サービス事業では、成長領域の拡大に向けた投資を積極的に行うとともに、市場で評価が高いクラウドサービスとの戦略提携を拡大し、リージョンワイドで収益性を改善し、事業成長を加速します。
当社は、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでおります。2018年6月には企業経営・国際経験の豊富な江田麻季子氏を社外取締役に迎えることで、取締役会における多様性を一層向上させるとともに、社外取締役の比率を40%に引き上げました。また、同月に社外取締役を委員長とする任意の指名報酬委員会を設置し、CEOのサクセッションプラン及び取締役報酬に係る基本方針・手続き等に関する討議を行い、プロセス上の透明性強化を図っています。さらに、グループガバナンスの強化を徹底するため、当社グループ各社の経営状況をモニタリング可能にするIT環境の整備や、全グループ会社を対象とした当社監査部門による内部監査の実施、当社グループ全役員・従業員が当社コンプライアンス専任部門に直接通報できる内部通報制度の導入等を推進してまいりました。今後もコーポレート・ガバナンス、及びコンプライアンス・リスクマネジメントを強化します。
当社グループは、2019年度の基本方針として「変化を創り出す。社会にイノベーティブな価値を生み出すために」を掲げました。2019年度は、「VISION2019」の最終年度であり、現中期計画「VISION
2019」を総括し、次の中期経営計画への種まきを行う年でもあります。「強い意志・オーナーシップ」と「必ずやり遂げる実行力」を梃子に事業課題を遂行し、「明晰な洞察力と構想力」により、中長期を見据えたアクションを強化することで、全事業における収益性向上と、社会にイノベーティブな価値をもたらす製品・サービスの導入に努めてまいります。
(3)会社の支配に関する基本方針について
当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。
株主の皆様から経営を負託された当社取締役会は、その負託にお応えすべく、平素から当社グループの財務及び事業の方針を決定するにあたり、中長期的な視点に基づく持続的な成長を通じて、企業価値・株主共同の利益の確保及び向上を図ることがその責務であると考えております。この考え方に基づき、当社グループの企業理念のもと、「先進・独自の多様な技術力」と「グローバルネットワーク」、これらを下支えする「人材」と「企業風土」という当社グループの企業価値の源泉を伸張させること等により、企業価値の向上に努めてまいりました。
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの企業価値の源泉を理解し、中長期的な視点から当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。当社は、当社の支配権の獲得を目的とした買収提案がなされた場合、それを受け入れるか否かは最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきものと考えております。
株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を検討するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社に買収者との十分な交渉機会を提供しないもの等、対象会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものがあります。
当社は、当社株式の大量買付を行おうとする者が現れた場合は、株主の皆様のご判断に資するべく積極的な情報収集と適時開示に努めるとともに、当社の企業価値・株主共同の利益の確保及び向上を図るために、会社法及び金融商品取引法等の関係諸法令の範囲内で可能な措置を適切に講じてまいります。
当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経済情勢・為替変動による業績への影響
当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品及びサービスを提供しており、連結ベースでの海外売上高比率は当連結会計年度において約59%です。世界各地の経済情勢、とりわけ為替レートの変動は業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
為替変動による業績への影響を軽減するため、米ドル、ユーロにおいて先物予約を中心としたヘッジを行っていますが、為替の変動の程度によって業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)市場競合状況
当社グループが関連する事業分野において、競合会社との競争激化による製品販売単価の下落、製品のライフサイクルの短縮化、代替製品の出現等が考えられます。これらは、売上高に影響を与え、また研究開発コストが増加する、営業権ほか無形固定資産の評価見直しを行う等、結果的に利益の減少に結びついていく可能性があります。今後も、新たな技術に裏付された製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては業績に影響を及ぼす可能性が考えられます。
(3)特許及びその他の知的財産権
当社グループは、さまざまな特許、ノウハウ等の知的財産権を保有し、競争上の優位性を確保していますが、将来、特許の権利存続期間の満了や代替技術等の出現に伴って、優位性の確保が困難となることが起こり得ます。
当社グループが関連する幅広い事業分野においては、多数の企業が高度かつ複雑な技術を保有しており、また、かかる技術は著しい勢いで進歩しています。事業を展開する上で、他社の保有する特許やノウハウ等の知的財産権の使用が必要となるケースがありますが、このような知的財産権の使用に関する交渉が成立しないことで業績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社の権利を侵害することがないよう常に注意を払って事業展開をしておりますが、訴訟に巻き込まれるリスクを完全に回避することは難しいのが実情です。このような場合、係争費用や敗訴した場合の賠償金等の負担により、業績に影響を及ぼす可能性も考えられます。
(4)公的規制
当社グループが事業を展開している地域においては、事業・投資等の許認可、輸出入に関する制限や規制等、さまざまな政府規制を受けています。また、通商、公正取引、特許、消費者保護、租税、為替管理、環境関連、薬事関連等の法規制も受けています。
万一、規制に抵触した場合、制裁金等が課される可能性があり、さらに、今後規制が強化されたり、大幅な変更がされたりすることが考えられ、その場合、当社グループの活動の制限や、規制遵守のため、あるいは規制内容の改廃に対応するためのコストが発生する可能性も否定できません。従って、これらの規制は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)生産活動
当社グループの生産活動において、自然災害又は人災、原材料・部品等の供給元の製造中止、その他要因による混乱等により当社グループ製品の供給が妨げられたり、重大な設備故障が発生したりする可能性があります。また、原材料・部品等の価格高騰により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、厳しい品質管理基準に従い各種製品を生産しておりますが、将来にわたり製品に欠陥が発生する可能性がないとは言えず、万一、リコール等の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)情報システム
当社グループは、さまざまな情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やセキュリティ対策を行っておりますが、停電、災害、不正アクセス等の要因により、情報システムの障害や個人情報の漏えい、改ざん等の事態が起こる可能性があります。これらにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)大規模災害
当社グループは、世界各地で生産・販売等の事業活動を行っております。このため、地震、台風、洪水といった大規模な自然災害に見舞われた場合や、火災、テロ、戦争、新型インフルエンザ等の感染症の蔓延といった要因により、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)構造改革
当社グループは、当社子会社である富士ゼロックス㈱を取り巻く市場環境が厳しさを増す中で、今後の競争を勝ち抜き、事業成長を力強く確実なものとするため、2017年度より構造改革を実施しております。また、今後も引き続き経営効率の向上に向けて、コスト削減や資産圧縮を図る等の諸施策を講じていく方針です。この進展状況によって組織や事業・業務の見直しにより一時的に多額の経費が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
2018年度の世界経済を概観すると、中国及び欧州の一部に弱さが見られるものの、全体として緩やかな回復基調が継続しました。米国の景気は、個人消費や設備投資が増加し、着実な回復が継続しました。欧州の景気は、一部に弱さが見られるものの、緩やかに回復しています。中国では、消費の伸びが低下する等、景気は緩やかに減速しています。その他アジア地域の景気は、一部に弱い動きも見られるものの、緩やかに回復しています。日本では、雇用・所得環境の改善により個人消費が持ち直しており、緩やかな回復基調が続きました。
当社グループの2018年度における連結売上高は、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、再生医療事業、電子材料事業等で売上を伸ばしましたが、ドキュメント事業の売上減少等により2,431,489百万円(前年度比0.1%減)となりました。営業利益は、ドキュメント事業における収益性の改善や構造改革効果等により、209,827百万円(前年度比70.1%増)と大幅増となりました。税金等調整前当期純利益は212,762百万円(前年度比7.6%増)、当社株主帰属当期純利益は138,106百万円(前年度比1.8%減)となりました。
当連結会計年度末では、総資産は現金及び現金同等物の減少等により、78,248百万円減少し3,414,692百万円(前年度比2.2%減)となりました。負債は社債を新規発行したものの、未払費用、支払債務等の減少等により24,383百万円減少し、1,169,851百万円(前年度比2.0%減)となりました。純資産は自己株式の取得等により53,865百万円減少し、2,244,841百万円(前年度比2.3%減)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
「イメージング ソリューション部門」
フォトイメージング事業では、インスタントカメラ“チェキ”シリーズやチェキ用フィルム等、撮影したその場で写真プリントが楽しめるインスタントフォトシステムの販売を中心に売上が増加しました。インスタントフォトシステムでは、instaxグローバルパートナー契約を締結した「テイラー・スウィフト」さんを起用したグローバルプロモーションが奏功し、欧米を中心に世界各地で売上が増加しました。付加価値プリントビジネスでは、写真をスタイリッシュなインテリアとして壁に飾って楽しめる「WALL DECOR(ウォールデコ)」の販売が好調に推移しました。また、写真クラウドサービス「FUJIFILM PhotoBank(フォトバンク)」を、2019年春よりスタートすることを発表しました。写真の共有やプリント注文に加え、2020年初頭には、保存した写真からAIがユーザーの嗜好性を推測し、興味に合った製品等が購入できるサービスを開始し、写真を活用した新しいライフスタイルを提案していきます。
光学・電子映像事業の電子映像分野では、高速・高精度のオートフォーカス機能と、高い動画性能を搭載した「FUJIFILM X-T3」や、2019年3月に発売した小型軽量・高性能「FUJIFILM X-T30」の販売が好調に推移しました。中判ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX 50R」は、大型センサーによる超高画質と、レンジファインダースタイルの採用が好評で販売が好調に推移し、2018年度はデジタルカメラ市場が縮小する中、ミラーレスカメラ全体の売上が対前年で増加しました。また、好調なミラーレスカメラの販売により、交換レンズの売上も増加しました。
光学デバイス分野では、車載用など各種産業用レンズを中心に販売が堅調に推移しました。2019年2月に「FUJINON レンズ」の光学技術を結集した「FUJIFILM PROJECTOR Z5000」を発表し、プロジェクター市場へ新たに参入しました。ビジネス領域を拡大し、さらなる事業成長を図っていきます。
本部門の連結売上高は、全ての事業の売上が堅調に推移し、386,914百万円(前年度比1.0%増)となりました。営業利益は、販促・宣伝費や研究開発の投資等により、51,128百万円(前年度比8.4%減)となりました。
「ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門」
メディカルシステム事業では、X線画像診断、医療IT、内視鏡、超音波、体外診断(IVD)等全ての分野で販売が好調に推移し、売上が増加しました。X線画像診断分野では、軽量・小型で、在宅医療等、スペースが限られた場所での簡便なX線検査をサポートする携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair(カルネオ エックスエアー)」の販売を2018年10月より日本国内で開始しました。本商品を含むDR機器の販売が好調に推移し、売上が増加しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」を中心としたシステムの販売が日本・米国を中心に好調に推移しました。内視鏡分野では、当社独自の特殊光観察が可能な7000システム等の販売が好調に推移しました。超音波診断分野では、フルフラット型超音波画像診断装置「SonoSite SⅡ」や携帯型超音波画像診断装置「SonoSite EdgeⅡ」等の販売が、米国をはじめ、欧州、日本、中国等の主要市場で好調に推移しました。体外診断(IVD)分野は、血液検査システム「ドライケムシリーズ」の販売が、海外を中心に好調に推移しました。
医薬品事業では、低分子医薬品における後発医薬品の影響等を受け、売上は減少しました。関連会社である協和キリン富士フイルムバイオロジクス㈱が、2018年9月に欧州委員会からヒト型TNF-αモノクローナル抗体製剤「アダリムマブ」のバイオシミラー医薬品「Hulio®」の医薬品販売承認を取得し、販売提携先であるMylan社を通じて欧州での販売を開始しました。また、一包化された薬剤の名称と数量を自動的に判定し、調剤薬局等での薬剤師の監査業務をサポートする一包化監査支援システム「PROOFIT 1D」の販売を2019年1月より開始いたしました。2019年3月には、国立研究開発法人国立がん研究センターと、ドラッグ・デリバリー・システム技術の一つであるリポソームを用いた新たながん免疫療法の共同研究を開始しました。今後、革新的かつ高付加価値の医薬品を開発し提供することで、社会課題の解決に貢献していきます。
バイオCDMO事業では、バイオ医薬品のプロセス開発受託、及び製造受託が好調に推移しました。2019年3月に、米バイオ医薬品大手Biogen Inc.の製造子会社であるBiogen(Denmark)Manufacturing ApS社の買収を発表。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業の成長スピードを一段と加速し、さらなる事業拡大を図っていきます。
再生医療事業では、2018年6月に連結子会社化した、培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company,Inc.(現FUJIFILM Irvine Scientific,Inc.)が展開するバイオ医薬品向けの培地販売が好調に推移し、売上が増加しました。また、米国子会社FUJIFILM Cellular Dynamics,Inc.は、2019年1月より、アルツハイマー型認知症等の神経疾患領域において、ヒト生体に近い環境で新薬の評価が可能な創薬支援用iPS細胞由来分化細胞「iCell® Microglia(アイセル ミクログリア)」の販売を開始しました。富士フイルムグループ各社の技術・ノウハウを活用し、再生医療の早期産業化に貢献していきます。
ライフサイエンス事業では、2019年3月に、アスタリフトシリーズで最も高い紫外線カット効果を持つ「アスタリフト D-UVクリア ホワイトソリューション」、美容効果をさらに強化しリニューアルした「アスタリフト ホワイト エッセンス インフィルト」の販売を開始しました。また、サプリメントではメタバリアシリーズを中心に販売が堅調に推移し、売上が増加しました。
ディスプレイ材料事業では、TAC製品に加えて、有機EL、及びタッチパネル分野の製品販売が堅調に推移し、売上が増加しました。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」の販売好調に加えて、圧力測定フィルム「プレスケール」の販売も堅調に推移しました。
電子材料事業では、先端フォトリソ周辺材料、CMPスラリー、イメージセンサー用カラーモザイク、先端パッケージ用ポリイミド等の販売が引き続き好調に推移し、売上が増加しました。
ファインケミカル事業では、ライフサイエンス分野における研究機関向け試薬販売や、検査・分析等の受託サービスが堅調に推移し、売上は前年並みとなりました。
記録メディア事業では、高容量データストレージ用磁気テープの在庫調整等の影響で売上が減少しました。「BaFe(バリウムフェライト)磁性体」等の独自技術を使用したデータストレージ用磁気テープの拡販や、データアーカイブサービスの提供等、ビッグデータ時代の顧客ニーズに確実に対応していきます。
グラフィックシステム事業では、製版・刷版材料の総需要減等の影響を受け、売上が減少しました。2019年3月に商業印刷向けインクジェットデジタルプレス「Jet Press」シリーズの新ラインアップとして「Jet Press 750S」の販売を開始しました。デジタル化が加速する商業印刷市場に対して、今後も画期的な製品を開発・提供し、事業成長を図っていきます。
インクジェット事業では、産業用インクジェットヘッドの販売が顧客の在庫調整等の影響で売上が減少しました。これまで注力してきた商業印刷分野、サインディスプレー分野に加え、テキスタイルやパッケージ等、新たな領域へ独自の製品を展開し、事業を拡大していきます。
本部門の連結売上高は、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、再生医療事業、電子材料事業等で売上を伸ばし、1,038,966百万円(前年度比3.6%増)となりました。営業利益は、収益性の改善等により、97,579百万円(前年度比6.8%増)となりました。
「ドキュメント ソリューション部門」
オフィスプロダクト&プリンター事業のオフィスプロダクト分野では、全体の販売台数は対前年で減少しましたが、2018年12月にセキュリティ機能を強化したカラー複合機「ApeosPort-Ⅶ C / DocuCentre-Ⅶ C」シリーズの販売が堅調に推移しました。オフィスプリンター分野では低採算のローエンドプリンタービジネスの縮小により、販売台数が減少しました。
プロダクションサービス事業は、全体の販売台数は対前年で減少しましたが、カラー・オンデマンド・パブリッシング機「IridesseTM Production Press」の販売が欧米を中心に引続き好調に推移しました。また、2019年1月にオフセット印刷の画質に迫る商業印刷向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「11000 Inkjet Press」を発表しました。2019年2月より国内で販売を開始し、商業印刷市場のデジタル化を拡大することで、さらなる成長を目指します。
ソリューション&サービス事業は、国内のBPO(Business Process Outsourcing)契約の新規獲得や業種業務別ソリューションの販売等が堅調に推移し、売上が増加しました。2019年2月にはEsker社(フランス)と提携し、クラウド型買掛金管理業務サービスの提供を開始。仕入先ごとに異なる請求書のデータをAIの活用により自動で抽出することで、煩雑な請求書処理業務を大幅に改善します。今後も新しい価値戦略「Smart Work Innovation」のもと、お客様の多様化する働き方を支援するサービスを順次提供し、サービス領域でのさらなる成長を目指します。
本部門の連結売上高は、低採算のローエンドプリンタービジネスの縮小による影響等により、1,005,609百万円(前年度比4.0%減)となりました。営業利益は、収益性の改善や構造改革効果等により、96,366百万円(前年度比11.5倍)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」と記載します。)は、為替変動による影響等を合わせて、前連結会計年度末より113,499百万円減少し、当連結会計年度末におきまして654,747百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により得られた資金は249,343百万円となり、前連結会計年度と比較して11,809百万円(4.5%)減少しておりますが、これは未払法人税等及びその他負債の支払額が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に使用した資金は208,585百万円となり、前連結会計年度と比較して96,799百万円(86.6%)増加しておりますが、これは事業買収による支出や固定資産の購入等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に使用した資金は153,522百万円となり、前連結会計年度と比較して105,439百万円(40.7%)減少しておりますが、これは長期債務の返済額が減少したこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態は基本的にとっておらず、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。
販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
・連結キャッシュ・フロー指標
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
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株主資本比率(%) |
59.5 |
59.7 |
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時価ベースの株主資本比率(%) |
52.3 |
60.3 |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.7 |
2.1 |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
57.1 |
75.2 |
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(注)株主資本比率 |
:株主資本/総資産 |
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時価ベースの株主資本比率 |
:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産 *自己株式を除く |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ |
:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息) |
ⅱ)財務政策
当社グループの資金調達の手段は、社債の発行、銀行借入金等であり、2019年3月31日現在の残高の内訳は、短期の社債及び借入金170,579百万円、長期の社債及び借入金353,533百万円となっております。
これらの資金調達は設備投資資金、投融資資金、運転資金等の資金需要に対応しております。
② 経営成績
ⅰ)売上高
当連結会計年度の売上高は、前年度の2兆4,334億円に対し、19億円減少し、2兆4,315億円(前年度比0.1%減)となりました。国内売上高は1兆65億円(前年度比増減なし)、海外売上高は1兆4,250億円(前年度比0.1%減)となりました。実績為替レートは111円/米ドル(前年度比増減なし)、128円/ユーロ(前年度比2円高)となりました。
イメージング ソリューション部門は、為替の円高影響を受けたものの、全ての事業の売上が堅調に推移したこと等により、対前年増収となりました。ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門は、為替の円高影響を受けたものの、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、再生医療事業、電子材料事業等が好調で対前年増収となりました。ドキュメント ソリューション部門は、為替の円高影響や低採算のローエンドプリンタービジネスの縮小による影響等により、対前年で売上は減少しました。
ⅱ)営業費用及び営業利益
販売費及び一般管理費は、前年度の6,778億円に対し462億円減少し、6,316億円(前年度比6.8%減)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は26.0%でした。
研究開発費は、前年度の1,679億円に対し118億円減少し、1,561億円(前年度比7.0%減)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は6.4%でした。
営業利益は、前年度の1,233億円に対し、ドキュメント ソリューション部門における収益性の改善や構造改革効果等により865億円増加し、2,098億円(前年度比70.1%増)となりました。
イメージング ソリューション部門の営業利益は、前年度の558億円に対し47億円減少し、511億円となりました。これは、販促・宣伝費や研究開発の投資の増加等によるものです。ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門の営業利益は、前年度の914億円に対し62億円増加し、976億円となりました。これは、収益性の改善等によるものです。また、ドキュメント ソリューション部門の営業利益は、前年度の84億円に対し880億円増加し、964億円となりました。これは、収益性の改善や構造改革効果によるものです。
ⅲ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益
営業外収益及び費用は、前年度投資有価証券売却益を計上したこと等により、前年度745億円の営業外収益に対し716億円減少し、29億円の営業外収益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年度の1,978億円に対し150億円増加し、2,128億円となりました。
ⅳ)法人税等
法人税等は、前年度の544億円に対し17億円増加し、561億円となりました。
ⅴ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益
持分法による投資損益は、前年度9億円の利益に対して5億円減少し、4億円の利益となりました。
非支配持分帰属損益は、主として富士ゼロックス㈱及びその子会社の非支配持分に帰属する利益です。前年度の36億円に対し154億円増加し、190億円となりました。
ⅵ)当社株主帰属当期純利益
当社株主帰属当期純利益は、前年度の1,407億円に対し26億円減少し、1,381億円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の322.62円に対し、326.81円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の321.55円に対し、325.82円となりました。
③ 次期の見通し
(単位:億円)
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2019年度 (次期の見通し) |
2018年度 (実績) |
増減率 (%) |
|
売上高 |
24,800 |
24,315 |
2.0% |
|
営業利益 |
2,400 |
2,098 |
14.4% |
|
当社株主帰属当期純利益 |
1,550 |
1,381 |
12.2% |
|
ROE(%) |
7.5 |
6.7 |
0.8ポイント増 |
|
為替レート(円/米$) |
110円 125円 |
111円 128円 |
△1円 △3円 |
|
為替レート(円/Euro) |
2019年度業績は、当社グループの重点事業である「ヘルスケア・高機能材料の成長加速」「ドキュメント事業の抜本的強化」に加え、各事業における収益性の改善などにより、連結売上高は2兆4,800億円(前年度比2.0%増)、営業利益は2,400億円(前年度比14.4%増)、税金等調整前当期純利益は2,450億円(前年度比15.2%増)、当社株主帰属当期純利益は1,550億円(前年度比12.2%増)を予想しております。
なお、ドキュメント事業において、構造改革等の一時費用として100億円、構造改革の効果として180億円を見込んでおります。
通期での対米ドル円為替レートを110円、対ユーロ円為替レートを125円で想定しております。
(1)相互に技術を供与している契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
|
富士ゼロックス㈱(連結子会社) |
Xerox Corporation(米国) |
ゼログラフィー製品及びその他の製品に関する技術・商標等のクロスライセンス |
2016年4月1日から 2021年3月31日まで |
(2)外国会社への技術輸出契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
|
富士フイルム富山化学㈱(連結子会社) |
Merck Sharp & Dohme Corp.(注)(米国) |
ニュータイプのキノロン系抗菌薬「T-3811」の特許及びノウハウについての実施契約並びにバルク供給契約 |
2004年6月22日から 対象特許の満了日まで |
|
MSD International Holdings GmbH (注)(スイス) |
(注)Schering Corporation(米国)はMerck Sharp & Dohme Corp. との合併(2012年5月)により、社名がMerck Sharp & Dohme Corp. となっております。
Schering-Plough Limited(スイス)は組織変更により、社名をMSD International Holdings GmbH に変更しております。
(3)国内会社との取引契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
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富士フイルム富山化学㈱(連結子会社) |
アステラス製薬㈱ |
ニュータイプの経口用キノロン系抗菌薬「T-3811」の特許及びノウハウについて国内における実施権供与、共同開発、並びに販売権の供与 |
2006年3月31日から 対象特許の満了日まで |
(4)株式取得に関する契約
当社の完全子会社である富士フイルム㈱は、2019年3月11日に、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、米バイオ医薬品大手Biogen Inc.の製造子会社であるBiogen (Denmark) Manufacturing ApSの全持分取得に関する契約を締結しました。
当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2018年11月に、富士フイルム㈱において、「ビジネス開発・創出部」を設立し、方向性の見えてきた新規ビジネステーマの事業化を加速しています。同社では、独自開発の電気音響変換フィルムをスピーカーの振動板に採用し、クリアな音質と自然な音場感を生み出す画期的なスピーカー技術「Φ(ファイ)」を新開発しました。また、2019年4月には、「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所」を設立し、バイオ・ヘルスケア領域全体のエンジニアリング力の強化、最先端の遺伝子治療研究開発機能の強化、臨床開発の一元化による対応力強化と効率化を進めていきます。
当社グループは、理化学研究所革新知能統合研究センター(理研AIPセンター)内への「理研AIP-富士フイルム連携センター」の開設や、東京大学大学院情報理工学系研究科内への「社会連携講座」の開設など、アカデミアとも連携し、次世代AI技術を開発してきました。2018年10月にはアカデミアとの共創により次世代AI技術を開発する拠点FUJIFILM Creative AI Center「Brain(s)」(ブレインズ)を東京・丸の内に開設し、ディープラーニング用スーパーコンピュータを導入、2019年3月には長崎県長崎市に「Brain(s)九州」を開設しました。今後、幅広い分野において活用できるAI技術の開発をより強力に推進し、社会課題を解決する革新的な製品・ソリューションを提供していきます。
富士フイルム㈱は、2019年3月に、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、米バイオ医薬品大手Biogen Inc.の製造子会社であるBiogen (Denmark) Manufacturing ApSの発行済全株式を取得する株式売買契約を締結しました。今後、写真フィルムで培った高度な生産及び品質管理技術、当社グループ子会社の培地や細胞関連技術を活用し、グループシナジーを最大化させて、バイオ医療分野の事業をさらに拡大させていきます。
このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。
(1)イメージング ソリューション部門
フォトイメージング事業では、AIを活用し、ユーザーが撮りためた画像の撮影傾向を分析し、その分析結果にもとづいて個人の好みに合った画像を自動選択する技術「Personalized Select」及びフォトブックなどの過去の注文情報をもとに、そのユーザーの好みに合ったレイアウトのフォトブックに仕上げる技術「Personalized Layout」を開発しました。また、ユーザーが保有するあらゆる写真を一元的に管理・整理して、それらの写真からAIがユーザーの嗜好性を推測し、ユーザーの嗜好に合わせたさまざまな製品・サービスを提案する写真クラウドサービス「FUJIFILM PhotoBank」を開始しました。
光学・電子映像事業の電子映像分野では、高速・高精度のオートフォーカス機能と高い動画性能を搭載した「FUJIFILM X-T3」や、小型軽量ボディに最新のイメージセンサー・高速画像処理エンジンを搭載した「FUJIFILM X-T30」を発売しました。また、中判ミラーレスデジタルカメラ「GFXシリーズ」の最新モデルとして、大型イメージセンサーによる高画質と、レンジファインダースタイルを採用した「FUJIFILM GFX 50R」を2018年11月に発売しました。光学デバイス分野では、「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載し、本体を動かさずにレンズの回転だけでさまざまな方向へ投写できる超短焦点プロジェクター「FUJIFILM PROJECTOR Z5000」を発売し、プロジェクター市場に新規参入しました。また、長年培ってきた光学技術と最先端の画像処理技術を結集して、焦点距離20mm~800mmをカバーする高性能「FUJINON レンズ」を搭載した、レンズ一体型の遠望監視用カメラ「FUJIFILM SX800」を新たに開発し、監視カメラ市場に新規参入します。
本部門の研究開発費は、
(2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門
メディカルシステム事業では、総重量3.5kgの軽量・小型で携帯性に優れており、在宅医療での撮影など、スペースが限られた場所での簡便なX線検査と画像確認が可能な携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair(カルネオ エックスエアー)」を発売しました。本製品は、撮影時に、当社の画像読取技術であるISS方式とノイズ低減回路を搭載したX線画像診断装置を利用することで、低線量でも高画質な画像が得られます。また、LED光源搭載内視鏡システム「6000システム」などに対応したスコープのラインアップとして、気管支内視鏡「EB-580S」を発売しました。本製品では、臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI(Blue Light Imaging)」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI(Linked Color Imaging)」などの画像強調機能を用いた観察が可能です。医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE(シナプス)」の分野では、CT画像からの臓器自動抽出や骨の経時変化表示など、AI技術を活用した画像診断ワークフロー支援を実現するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer(シナプス サイ ビューワ)」を開発しました。また、米インディアナ大学医学部とのAI技術を活用した医療画像診断支援システムの開発に関する共同研究契約の締結や、京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学と間質性肺炎の病変を高精度に自動で分類および定量化する技術の共同開発に成功するなど、産学連携も進めております。今後もAI技術を活用することで、画像診断における医師の診断支援やワークフローの改善に取り組んでいきます。
医薬品事業では、診断薬・治療薬の新薬開発を加速させるため、低分子医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富山化学工業㈱と、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富士フイルムRIファーマ㈱を統合し、富士フイルム富山化学㈱へ社名変更いたしました。今後、診断薬と組み合わせた、治療薬の効率的な臨床開発を進め、新薬上市の確度とスピードの向上を図ります。また、服用するタイミングごとにまとめて一包化された薬剤の名称と数量を自動的に判定し、調剤薬局などでの薬剤師の監査業務をサポートする一包化監査支援システム「PROOFIT 1D(プルーフィット ワンドース)」を発売しました。医薬品の開発においては、米国で臨床第I相試験を実施している抗がん剤「FF-10832」について、患部で薬剤が放出され、がん細胞に持続的に作用するメカニズムを解明し、免疫チェックポイント阻害剤との併用投与では、単剤投与の場合と比べて生存期間が延びるなど、さらに高い薬効を発揮することをマウス実験で確認しました。また、新規抗菌薬「T-4288」(一般名:ソリスロマイシン)について、国内の臨床第Ⅲ相試験にて、耳鼻咽喉科領域の感染症患者に対する有効性および安全性を確認できたことから、中耳炎や副鼻腔炎など耳鼻咽喉科感染症の治療薬として厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。
CDMO事業では、抗体の次世代高生産性技術を開発し、医薬品開発の初期段階から臨床試験、商用生産に至るすべての段階に使用できる高品質な動物細胞株の作製期間を大幅に短縮することが可能となりました。
再生医療事業では、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.において、創薬支援用iPS細胞由来分化細胞「iCell® Microglia(アイセル ミクログリア)」を発売しました。「iCell® Microglia」は、ヒトiPS細胞を、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経疾患の発症に関与することが知られているミクログリア細胞に分化誘導した創薬支援用iPS細胞由来分化細胞です。この細胞を用いることで、ヒト生体における中枢神経系に近い環境で新たな評価方法を構築できるため、新薬の研究開発の効率化に大きく貢献します。また、㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングでは、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした、自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)の製造販売承認申請を厚生労働省に行いました。「EYE-01M」は、患者自身の角膜組織の輪部から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させ、視力、その他臨床症状(眼痛、異物感、流涙、乾燥感など)を改善させることを目的としています。
ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT」ブランドで最も高い紫外線カット効果を持つ「アスタリフト D-UVクリア ホワイトソリューション」を発売しました。「アスタリフト D-UVクリア ホワイトソリューション」は最新の紫外線研究を活かして開発した紫外線防御剤「D-UVガード+」を新たに配合しており、顔の動きに合わせて伸縮する新処方を採用したことで、肌に塗った日焼け止めに亀裂が生じるのを防ぎ、肌の奥まで入り込む最長波紫外線「Deep紫外線」までしっかりカットします。また、米ぬか脂質に含有される成分「オリザノール」が、シミの原因となるメラノソームの形成に関わる酵素「BACE2」の働きを阻害することを発見しました。さらに、当社の独自技術により、「オリザノール」を安定的にナノ乳化し、高い浸透性を実現した「ナノオリザノール乳化物」を新たに開発しました。加えて、機能性表示食品の分野では「糖の吸収を抑える」、「腸内環境を整える」、「高めのBMIを改善する」の3つの機能を持つ機能性表示食品「メタバリアEX(イーエックス)」を発売しました。今回、機能性関与成分として「サラシノール」、「難消化性デキストリン(食物繊維)」、「エピガロカテキンガレート」、「モノグルコシルルチン」について「継続摂取によりBMIが高めの方のおなかの脂肪(体脂肪・内臓脂肪)・体重を減らすことで高めのBMIを改善する」機能があることを新たに明らかにしており、当社は、今後も科学的根拠に基づいた製品の開発を進め、機能性表示食品のラインアップを拡充していきます。
記録メディア事業では、「ビッグデータ・IoT時代を支えるバリウムフェライト磁性体を用いた大容量データテープの開発」で、第7回技術経営・イノベーション賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。「技術経営・イノベーション賞」は、世の中を変革する優れたイノベーション事例を表彰しており、磁気特性・長期保存性に優れる「バリウムフェライト磁性体」を世界で初めてデータ記録用磁気テープの材料に採用し、データを保管する際のトータルコストを削減することで、「活用が進むビッグデータを安全・安価に長期保管したい」という社会のニーズに応えた点や、データ破損・消失のリスクが低く、HDDと比べて消費電力が少なく環境負荷が小さい磁気テープの、さらなる大容量化の道を切り拓いた点が高く評価されました。
グラフィックシステム事業では、インクジェットデジタルプレス「Jet Press」シリーズの新ラインアップとして「Jet Press 750S」を発売しました。「Jet Press 750S」は、商業印刷分野および紙器パッケージ印刷分野向けに、オフセット印刷を凌駕する高画質を実現し、国内外で高い評価を得ている「Jet Press 720S」の特長はそのままに、最新のプリントヘッドやインクの採用により毎時3,600枚という高速出力を可能としました。また、従来比1.5倍の高い耐刷性・UV印刷適性を実現した、SUPERIA完全無処理サーマルCTPプレート『SUPERIA ZD-II』を発売しました。本製品は、2017年に発売した高耐刷タイプの完全無処理サーマルCTPプレート『SUPERIA ZD』をさらに進化させ、耐刷性・品質安定性・視認性を高めているのが特長です。これにより、昨今導入が増えているUV印刷や、オフセット輪転機でのロングラン印刷などにおいてもより安定した印刷が可能になります。
本部門の研究開発費は、
当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(2019年6月現在)
|
開発番号 |
薬効・適応症 |
剤形 |
地域 |
開発段階 |
|
T-705 |
抗インフルエンザウィルス薬 |
経口 |
米国 |
PhⅢ |
|
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬 |
経口 |
日本 |
PhⅢ |
|
|
T-3811 |
キノロン系合成抗菌薬 |
経口 |
中国 |
承認申請中 |
|
T-2307 |
抗真菌薬 |
注射 |
米国 |
PhⅠ |
|
開発番号 |
薬効・適応症 |
剤形 |
地域 |
開発段階 |
|
T-817MA |
アルツハイマー型認知症治療薬 |
経口 |
米国 日本 |
PhⅡ PhⅡ |
|
T-4288 |
新規フルオロケトライド系抗菌薬 |
経口 |
日本 |
承認申請中 |
|
FF-10501 |
骨髄異形成症候群治療薬 |
経口 |
日本 米国 |
PhⅠ PhⅡ |
|
FF-10502 |
進行・再発固形がん治療薬 |
注射 |
米国 |
PhⅡ |
|
FF-21101 |
進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体) |
注射 |
米国 |
PhⅡ |
|
F-1311 |
前立腺がん診断薬(放射性医薬品) |
注射 |
日本 |
PhⅡ |
|
FF-10101 |
急性骨髄性白血病治療薬 |
経口 |
米国 |
PhⅠ |
|
F-1515 |
神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品) |
注射 |
日本 |
PhⅠ/Ⅱ |
|
FF-10832 |
進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム) |
注射 |
米国 |
PhⅠ |
|
F-1614 |
難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品) |
注射 |
日本 |
PhⅡ |
(3)ドキュメント ソリューション部門
ドキュメント事業領域では新たな価値提供戦略「Smart Work Innovation(スマートワーク・イノベーション)」を具現化する商品・サービスを提供しました。
データ・プライバシー・デバイス保護の国際基準に準拠するようセキュリティー機能を強化し、「やさしい、かんたん・あんしん、つながる」をコンセプトに基本機能とデザインを刷新したデジタルカラー複合機「ApeosPort-Ⅶ C / DocuCentre-Ⅶ C」シリーズ16機種を、日本およびアジア・パシフィック地域で発売しました。またA3デスクトップモノクロプリンターの商品ラインアップを8年ぶりに一新、クラス最小サイズでデスクサイドや窓口業務の生産性を支える「DocuPrint 3200 d」、「DocuPrint 3500 d」と、高速・高耐久で、基幹業務向け「DocuPrint 4400 d」の3機種を発売しました。
ソリューション・サービスについては、富士ゼロックス独自の人工知能技術である「Document AI」を活用し、大量の帳票データ処理を効率化・人手によるミスを低減する「高精度データエントリーサービス」、図面の検図業務などのプロセスを改善して設計者の作業負荷を軽減する「図面情報抽出サービス」、知識や経験に基づいて実施する問い合わせ対応や申請書の作成などの専門的な業務を支援する「専門知識体系化サービス」の提供を開始しました。また、オフィスとクラウドを統合したセキュアなネットワーク環境を実現する閉域網サービス「Smart Cyber Security」の提供を開始しました。さらに、買掛金管理業務領域ではEsker社(仏)と提携し、買掛金管理の業務プロセスを効率化する「買掛金管理自動化支援ソリューション」の提供を開始しました。
印刷領域では、印刷業務における生産性向上や働き方変革を実証するオープンイノベーション拠点「Future Edge(フューチャー・エッジ)」を、神奈川県の海老名事業所内に開設しました。また、富士ゼロックスの高画質データ生成技術や高速ロール紙印刷技術と、富士フイルムの枚葉型インクジェットデジタルプレスの技術を結集させ、オフセット印刷に匹敵する高品位プリントと高速印刷を両立する自社初の商業印刷向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「11000 Inkjet Press」を開発し、国内で発売しました。
さらに「働き方改革」の推進で東京メトロ(東京地下鉄株式会社)と協業、駅構内でビジネスパーソンが情報漏えいの心配をせずに電話や資料作成の仕事に集中できるオフィス空間を提供する「サテライトオフィスサービス」の実証実験を開始しました。
本部門の研究開発費は、