第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)当社の経営理念

当社は経営理念「新しい価値の創造」の下、画像の入出力、画像処理を中核とする独自技術でイノベーションを生み出し、世界中のお客様の「みたい」という欲求に応えてきました。顧客企業の業務プロセスに潜むムダやミスのリスク、印刷や製造の現場における熟練した職人の勘やひらめきへの依存、健康な生活や安定した社会を脅かす疾病の微かな兆候や遺伝子変異、社会インフラの老朽化など潜在的なリスク、これらを見える形で示し、当社ならではの価値の提供によって顧客や社会の課題を解決する企業を目指してまいりました。

 

(2)中期経営計画「SHINKA 2019」の振り返り

当社は中期経営計画「SHINKA 2019」において「課題提起型デジタルカンパニー」を目指す姿として、ビジネス社会・人間社会の進化のために新たな価値を創出し続ける企業への変革を推進してきました。現在の収益を支える基盤事業においては、グローバルなコスト構造改革と顧客価値を起点とした差異化を進めてきました。一方で、成長・新規事業は、収益貢献を狙い、立ち上げを加速してまいりました。

①外部環境

デジタルを活用した働き方の改革や行政手続の電子化が進むことにより、欧米の先進国でプリントボリュームの成長が鈍化してきたことは想定どおりでした。中期的には為替の円高傾向の持続など経済環境は厳しくなると想定をしていましたが、2018年度後半からはその想定以上に米中の貿易摩擦が激化し、中国経済の成長が減速したことが欧州経済の停滞を招き、世界的に企業の設備投資に対する意欲が低下しました。これにより、オフィス用複合機、デジタル印刷機、医療機器の販売では商談の長期化などの影響が生じ、特に高価格帯の製品ほどその影響が顕著となりました。

一方、デジタル化やAIの普及は、オフィスにおける働き方、産業界の勢力図や業種・業態のビジネスの現場に大きな変化を及ぼしました。ヘルスケア業界では医療機関における画像診断や患者のケアのワークフローに大きな変化が生じました。印刷産業の現場における業務プロセスにも影響を与え、中国やインド、ASEANなどではデジタル印刷の市場が拡大しました。デジタル化はスマートフォンやタブレットでの情報の入手や業務処理などビジネスシーン、ワークフローを大きく変えていますが、ライフシーンにおいてもディスプレイ製品の多様化や自動車の自動運転や安全運転支援技術の進化などの大きな変化をもたらしました。

当期末には新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、当社の営業活動や受注済製品の設置などが大きな制約を受けました。特に2020年3月には欧米でロックダウンが始まったことで、この期間が最需要期となるオフィス、プロフェッショナルプリント、ヘルスケアの販売に大きな影響を与えました。

 

②事業面の振り返り

オフィス事業では上記のような外部環境の悪化に加えて、米中貿易摩擦に起因する中国生産製品に対する追加関税の影響を受けました。内部要因では、7年ぶりにプラットフォームを刷新した新製品の立上げにあたり、関税対策の意図も込めマレーシアの生産拠点で量産を開始しましたが、量産の初期に設計面での課題や製造工程における問題の解決に時間を要し、検査工程を増やすなどの対策を行なったため、狙いとした製造原価の達成に遅れが生じました。

プロフェッショナルプリント事業では、プロダクションプリント分野は成長国の市場は拡大したものの、先進国の商業印刷領域でのデジタル化は想定より進行が遅れた上、競合企業の新製品の投入も続き、競争環境が厳しくなりました。そうした環境下で当社は独自の差別化で競争優位の確保に努め、ミッド及びライトレンジのカラー市場ではジャンルトップのポジションを維持し、当期末には大量印刷需要の獲得を狙いとした最上位機種を発売しました。成長領域と位置付けている産業印刷分野では先行費用をかけて製品ラインアップと販売体制を強化し、着実に売上げを拡大しました。

産業用材料・機器事業では、ディスプレイの大画面化、多様化が進みました。フラットパネルディスプレイのパネルの生産では韓国から中国メーカーへのシフトが進むとともに、スマートフォンでは中国の新興メーカーが台頭しました。当社は機能材料分野では、ディスプレイの大画面化、パネルメーカーの変化を想定した高付加価値製品へのシフトが奏功し、競争優位を確立しました。また当期後半には新樹脂の顧客認定も進み、顧客ニーズへの対応力向上による更なる高付加価値化の道筋をつけました。計測機器ではモバイル製品及びメーカーの多様化で、ディスプレイの色計測での事業基盤を強化しました。また成長分野と位置付けている外観計測の事業化も進展しました。

新規事業では、バイオヘルスケア分野において2017年度に大型買収を実施、米国を中心として事業を始動させました。買収の決め手となった技術力の高さは想定どおりであった反面、遺伝子診断サービスの保険収載やその審査に関する保険会社との交渉力など課題も顕在化しましたが、当社グループの総合力を生かして支援した結果、当期は遺伝子診断サービスがけん引して大きく売上げを伸ばし、成長軌道に乗りつつあります。一方、オフィス事業で培った顧客基盤を活かして新たなサービスのプラットフォームの確立を目指しているワークプレイスハブでは、狙いとした中堅・中小企業を中心として、その提供価値は想定通りに受け入れられましたが、基本ソフトウェアのバージョンアップと北米での販売体制の構築に遅れが生じ、顧客数の拡大による売上げの伸長は想定に対して大幅に未達となりました。

このように、基盤事業においては、想定どおりに進んだ事業は収益性を向上できたものの、それ以外の事業では狙いとした利益創出を実現するには至っておらず、今後の課題と認識しております。また、成長・新規事業については、顧客価値の検証、ビジネスモデルの構築は進み、戦略の方向性が間違っていないことは確信できました。一方で、顧客数、売上高をスケールアップさせる力が不十分で、全社の収益に貢献できるレベルまでには至っておらず、今後更なるトップライン伸長の加速を進めます。計数面では、当初目標に掲げていた営業利益・ROEの水準から乖離する結果となりました。その結果を真摯に受け止め、個々の事業の推進力を高めるとともに、全社としての事業ポートフォリオ及び経営管理の在り方を抜本的に見直します。

 

③非財務面での振り返り

地球環境問題、特に温暖化など気候変動によるリスクへの意識は、この3年間で世界的な広がりを見せています。当社が掲げてきたカーボンマイナスへの取組みは、顧客企業、サプライヤーのみならず、他業界の企業にも賛同が広がり、日本の産業界全体で環境ノウハウを共有する構想が具現化しました。

人財面においては、多様性の推進に対する社会的な要請が高まる中、当社では女性や外国人の登用に加えて、顧客の業務を理解する力を持つために人的シフトを進めました。外部から専門人財を採用し、画像IoT人財は国内外で500名まで増やし、デジタルトランスフォーメーションを成長に生かす人的基盤の整備が進捗しました。

 

(3)中長期での成長に向けて

①長期視点での持続的な企業価値向上

当社は、2030年、さらにその先を見据えた長期的視点にもとづき、そこからバックキャストする形で「今何を成すべきか」を明確にしております。「人間社会にとっての新しい価値提供(社会価値)」と「事業の成長(経済価値)」を一体化させ、持続的な企業価値向上を実現していきます

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これから2030年に向けては、人と人、人と社会がつながり、相互に支えあうことによって、自律的により良い社会を創っていこうという価値観が広がっていくものと予測しています。さらに、直近の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、その価値観はますます重要なものになってくるものと考えます。そのような社会の中で、当社は、創業以来培ってきた「見えないものを見える化」する技術を活かして、さまざまな業種・業態のビジネスの現場で働く「プロフェッショナル」が直面する課題を解決して、その潜在力や創造力を引き出すことにより、より多くの人々が生きがいを感じる社会づくりに貢献していきます。このような、B (Business) to B (Business) to P (Professional) for P (Person)のアプローチは、今後、中長期での成長に向けて更に強化していく当社の重要な戦略となります。

 

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②デジタルによる顧客価値創出

4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)をベースに、ヒトの目には見えないものを含む様々な物事を感知・入力し、デジタル変換・意味付けすることで、活用できる情報に変えます(見えないものの見える化)。この情報に様々な解析を加えることで判断や行動につながる顧客価値を創出します。

機器、つまりモノを中心に、その機能や性能の価値訴求をしていた時代には値段やコストパフォーマンスなど購買意思決定者を対象とする価値観に応えることが重要でした。しかしながら、機器がネットワークやインターネットにつながり、ワークフローに組み入れられるようになると、様々な業種のビジネスの現場のプロフェッショナルの方々はネットワーク型のサービスを使いこなし、業務において非連続に生産性をあげることにこだわります。生産性を飛躍的に向上することができれば、プロフェッショナルの方々はより本質的で創造的な業務、すなわち人間として働きがいのある業務に時間を使うことが可能になります。顧客企業のユーザーの方々の生活の質も高まりますし、医療や介護業界では高齢者や患者の生活の質が高まり、豊かな生活を楽しむことが可能になります。このような形で、デジタルの力を活用し、人間中心の社会の実現を目指してまいります。

また、機器がネットワークにつながりワークフローがデジタル化することで、現場の業務改善から顧客のデータを集積することができます。そうすることにより学習経験による継続的な改善が可能になります。顧客の経費の削減だけではなく、現場の改善により売上や利益を増やし、ブランド力が上がる成果を導くことができれば、当社は顧客にとってなくてはならない存在として認められ、長期的な関係を構築することができます。そうした関係性を継続的に維持、強化するために、フロー型のビジネスモデルから、リカーリング型のビジネスモデルへの転換を進め、顧客の生涯価値の最大化を目指します。

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オフィス領域では、中堅・中小企業のお客様の業務プロセスにおける非効率やリスクを見える化し、働く人の生産性・創造性・意思決定支援に貢献します。デジタル印刷領域では、品質状況・稼働状況及び印刷の価値を見える化し、産業の需要変動で生じるロスや地球環境への負荷を低減します。ヘルスケア領域では、健常に見える人に忍び寄る疾病のリスクを見える化することで、早期発見・早期診断を実現し、個々人の健康な生活と医療費削減に貢献します。産業領域では、お客様の製品や社会インフラにおける不具合や経年劣化の予兆を見える化し、安全・安心で心豊かな社会を創出します。

 

③地球環境への貢献

持続可能な社会の実現に向けて、当社では環境課題の解決に向けた取り組みを強力に推進しています。2009年に発表した長期環境ビジョン「エコビジョン2050(注1)」を進化させ、新たなコミットメントとして「カーボンマイナス(注2)」を設定しました。気候変動問題を単なる脅威として捉えるだけではなく、地球に生きる人々の豊かさを向上させ、新たな事業を創出する機会と捉えます。

顧客に対しては、テキスタイルなどのオンデマンド印刷によるお客様工程の効率化、オフィスでのテレワークなどの働き方改革を支援するソリューション提供によりエネルギー削減や紙の削減につながります。大型のデータセンターを使わないエッジ型IoTソリューションを提供することでデータを効率的に利用することができ、エネルギー負荷を抑えることができます。一方、当社の事業活動においては、生産時に熱や電力を使う事業や、原材料の調達などサプライチェーンにおいて、気候変動による分断やコストアップのリスクもあります。自社生産工程やサプライチェーンでのエネルギー削減と原価低減につながる活動を進めていきます。

当社は全ての事業を通じてCO2排出量の削減、資源の有効活用、エネルギー使用量の削減を行うとともに、お客様・サプライヤー様を含めたサプライチェーン全体でのCO2排出量を加速度的に削減し、カーボンマイナスを実現していきます。

 

(注1)2050年までに自社の製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量を2005年度比で80%削減する(取締役会で承認)。

(注2)社会・お客様とともに、自社の製品ライフサイクルの排出量を上回るCO2排出量削減を生み出す。

 

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④人財力の強化

持続可能な社会の実現に向けては、当社一社のみではなく、当社と当社のお客様、パートナー等のステークホルダーが一丸となった取組みを進め、価値を創出しながら課題解決を進めることが重要と捉えています。そのような取組みを推進するにあたり、最も重要となるのが、個々の「人財」の力です。当社は、様々な価値観、世界観を持った個々の人財が輝き、個々の「違い」を力に変えながらイノベーションを創出していくことを目指しています。働き方改革、ダイバーシティ推進、健康経営の推進といった「個が輝く」人財力強化を進めるとともに、オープンR&Dの推進や、顧客の現場に密接した事業創造を進めるイノベーション創出の「型」といった仕組みを構築することで、社会的価値につながる事業創出に取り組み、社会から必要とされ、支持されながら社会とともに進化し続ける企業を目指してまいります。

 

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(4)翌連結会計年度の重点取組み

当連結会計年度は、2月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、生産・販売活動に大きな制約が加わりました。この影響は翌連結会計年度の第1四半期には更に拡大し、その後も予断を許さない状況が続くと想定されます。企業活動の存続を揺るがす危機として捉える一方で、世の中が変化する大きな転換点としても捉え、自らのあり方を見つめ直す契機とします。すなわち、「環境変化に耐えうる強靭な事業構造の構築(守り)」を進めつつ、「厳選しながらの成長投資(攻め)」を継続することで、持続的な企業価値向上の礎としてまいります。そのような観点で、翌連結会計年度の重点方針として、以下の5点に取り組みます。

 

① 収益改善施策の継続と強化:「当連結会計年度に実施した構造改革の成果の創出」及び「原価低減の継続」によるコスト競争力を強化。「競争力のある新製品投入」及び「新型コロナウイルス感染症がもたらす変化への対応(直近の社会課題解決及び中長期的な機会獲得)」によりアップサイドを目指す。

② 手元流動性の確保:資金面での不安を感じることなく、事業に集中できる態勢の整備にむけ、資金手当を実施。徹底した在庫削減と設備投資抑制。

③ 固定費の削減:デジタル技術を活用した非対面販売やサービス提供へのシフトを加速。顧客起点での業務プロセスのデジタル革新。働き方を抜本的に見直し、そのために最適化された人員の配置。

④ 資本生産性の向上:KM-ROIC及び投下資本収益管理(注3)による事業別資本効率管理強化。設備投資の抑制、M&Aなどの投融資は過去の投資の成果出しを最優先しつつ、将来の成長に対して必要不可欠な案件に絞り込んで実行。

⑤ 組織体制の変革:変化を機会として捉え、自律的、機動的に行動する組織体制を確立。ボトムアップで社会価値創造を実践する風土、人財の育成。

 

(注3)KM-ROIC:投下資本収益率。事業利益を投下資本で除した比率。事業活動のために投下した資本を使って、どれだけ事業利益を生み出したかを示す指標。

投下資本収益:事業利益から投下資本コストを控除した金額。どれだけ投下資本コストを上回る価値を創造したかを示す指標。

KM-ROICと投下資本収益の最大化により、ROE及びROICの向上を図ります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

2【事業等のリスク】

(1)当社のリスクマネジメント体制

 当社は、当社グループの事業活動に関する諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント委員会規則に従い、取締役会で指名された執行役が以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。

 当社グループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーションリスクについては、執行役の職務分掌に基づき各執行役が、それぞれの担当職務ごとに管理することとし、リスクマネジメント委員会はそれを支援しております。また、リスクマネジメント委員会は、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価・見直しの実施、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に行っております。

 

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(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況

 当社は、リスクマネジメント委員会を定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しております。この委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。2019年度は、同委員会を2回開催し、2018年度から引き続き、主に米中貿易摩擦に端を発したグローバルでの保護主義的な潮流に対し、事業に影響度の高い地域・国に適用される制裁や新たな法規制等の定期的なモニタリングを実施しました。

 また、リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告され、特に経営上・事業上重要なリスクに関しては取締役会に報告、協議されております。

 さまざまなリスクによって発生するクライシスに対しては、迅速・適切に対応するためにクライシス発生時の報告ルールを設け、執行役や当社子会社役員等に周知しております。その報告ルールに沿って、世界各地で発生した災害事故、その他のクライシスに関する情報を危機管理担当執行役が集中管理しております。特に、新型コロナウイルス感染症につきましては、2020年1月よりCEOを最高責任者とする危機管理臨時体制を立ち上げ、対応策(BCP)策定と実行推進を行っております。

 

(3)事業等のリスク

 当社グループの財政状態、経営成績績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクとして、以下で記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 また、当社は、リスクを「組織の収益や損失に影響を与える不確実性」と捉えております。リスクを単にマイナスの側面からだけではなく、「機会」としてのプラスの側面からも捉えたうえで、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置づけております。

 記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものであります。また「新型コロナウイルス感染症の影響」に関する事項については、本記載項目の最後にセグメントごとにまとめて記載をしております。なお、当該事項のうち将来に関する記載事項は2020年5月末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①経済環境に関するリスク

1)経済動向・市場環境

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループは、複合機やデジタル印刷システム、ヘルスケア用機器製品、産業用光学システム製品・部材やディスプレイ材料及び関連サービス等を世界中のお客様に向けて提供しております。これらの事業の売上及び損益は各国の景気動向や事業環境に大きく影響を受けます。

 欧州では前連結会計年度後半から引続き経済低迷が継続し、英国のEU離脱は2020年1月に決定したものの英国とEUでの交渉が続くことから先行きの不透明感は継続し、また、米国による保護主義政策の流れ、米中の覇権争いに起因する貿易摩擦による追加関税の実施、ハイテク冷戦の影響、中東を中心とした地政学的要因や中国・新興国の経済成長の停滞などが引き続き懸念されます。

 各国市場の景気後退は顧客の投資抑制や経費削減、消費低迷を引き起こし、結果として当社の予想を超えた在庫増加や競争激化に伴う販売価格下落、新規設置数減少等、将来にわたり当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、2月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、特に欧米でのロックダウンにより機器の設置やサービス提供、新規受注などの販売活動が制約を受け、2019年度の業績に大きな影響が出る結果となりました。なお、同項目については、④「新型コロナウイルス感染症に関するリスク」に詳細を記載しております。

 

2)為替レートの変動

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、高い海外売上高比率が示すようにグローバルに事業活動を展開しており、為替レート変動の影響を大きく受ける状況にあります。ユーロにつきましては、為替レートの1円の変動が営業利益に与える影響は約6億円になり、直接損益に影響を与える状況となっております。他の主要通貨においても、円高の状況は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を与えることになります。また、外貨建ての取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する在外営業活動体の換算差額も変動する恐れがあります。

 ●対応

 為替レート変動の影響を軽減するため、米ドル、ユーロ等の主要通貨では為替予約を中心としたヘッジを行っております。また、米ドルにつきましては、米ドル建ての調達と米ドル建ての販売地域における売上を相殺することにより影響を軽減しております。

 

②事業活動に関するリスク

)オフィス事業 プリント環境の変化に関連するリスク

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 ●リスク

 先進国を中心としたオフィスにおいては、紙に代わる情報共有の手段としてタブレット端末やスマートフォン等のデジタル機器の普及加速に加えて、ワークスタイルの変化により、オフィスにおける紙への出力機会が徐々に減少するリスクがあります。それに加えて、新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークの普及が、このリスクの顕在化を加速させることも懸念されます。こうしたお客様の変化に対応ができない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループでは先進国オフィスでの出力機会の減少リスクに対処するために、以前より、オフィス事業のお客様に対して出力以外にもマネージドITサービスや、情報の管理・編集を支援するコンテンツマネジメントサービスを提供することで、お客様のワークフロー改善に資する価値の提供に取り組んでおります。また、中国・インドをはじめとするまだ成長余力のある国・地域においては、引き続きカラー複合機の設置拡大に取り組んでおります。これらの活動を通じてオフィスでの出力減少による収益減少を最小化する取組みを展開しております。

 さらに、中堅・中小規模のオフィス事業のお客様を主なターゲットとして、新プラットフォームとなる「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」や種々のアプリケーションソフトを通じて、お客様の業務の効率化や意思決定を支援する新たな価値の提供にも取り組んでおります。この新プラットフォームを通じた価値提供は当社独自のものであり、オフィス顧客の拡大にもつながります。

 以上のようなオフィスにおける出力減少のリスクに対するオフィス事業としての対応に加えて、当社グループとしてオフィス事業と並ぶ収益の柱を構築していくために、バイオヘルスケア、産業用光学システム、産業印刷、画像IoT分野への積極的な投資を展開しております。

 

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期での成長に向けて ②デジタルによる顧客価値創出」にも関連事項を記載しております。

 

2)各国・各地域の規制

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:中

 ●リスク

 当社グループの事業活動の多くの部分は、北米、欧州及びアジア諸国といった日本の国外で行われており、その国や地域固有の法制、規制や承認手続きの影響を受けております。米国と中国の貿易摩擦に端を発する相互関税の引き上げ、技術輸出規制などの経済措置の動向には常に十分な注意を払っておりますが、将来、各国の政府や国際的枠組による規制、例えば税制、輸出入規制、通貨規制、個人情報保護規制、デジタル関税、その他各種規則等が新規に導入されたり、変更されたりした場合には、これらに対応するための費用が発生したり、事業活動に支障をきたす可能性があります。また、このような予期しない事態に対応できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 特に、当社グループのヘルスケア事業、バイオヘルスケア分野では、事業活動を行っている各国の様々な医療制度や許認可の手続きの影響を受けております。医療制度改革等によって、予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、その環境変化に速やかに対応できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ●対応・機会

 各国・地域の法律・規制の動向には、常に十分な注意を払い、情報の収集に努めております。各エリアの法務担当者と連携し、海外各地域の実情を把握し、必要に応じ外部の弁護士、コンサルタント等、専門機関の協力を得て対応を行っております。また、新制度導入や制度改定による市場参入要件の新設・変更に迅速に対応することで、当社にとって販売機会創出の可能性があります。特に、環境法規制への対応、セキュリティに関する規制への対応は、当社が強みとする環境経営やITサービス・ソリューションに追い風になるものと認識し、対応を進めております。

 ヘルスケア事業・バイオヘルスケア分野では、各国医療政策の情報収集、専門学会等との連携により対応を行なっております。プラス面では、医療政策による先端技術の導入は新たな市場創出につながり、近年では、AIを用いた画像診断、遠隔医療、遺伝子検査等への期待が高まっております。

 

 

 

3)次世代技術変化

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:中

 ●リスク

 今後、当社グループが展開すべき新たな事業分野においては、他社に先んじた技術革新が重要な競争優位の源泉となっており、常に革新的な技術開発に挑戦し、そのための研究開発投資及び設備投資も積極的に行っておりますが、競合他社が先行して類似技術や代替技術を出してくる可能性もあります。

 また、IoT、AIに代表されるデジタル技術の普及に伴いデータの活用領域が拡大することで、様々な産業分野、ビジネスモデルに変化がもたらされることが想定されます。これらの変化に対応できない場合、将来にわたり市場でのポジションを喪失する等、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループの材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術を高度化・融合化するとともにIoT、AI技術と組み合わせることで、当社独自のデータの源泉となる「見えないものを見える化する技術」をさらに発展させ、オフィス、ヘルスケア、産業用材料・機器事業のデジタルトランスフォーメーションを顧客と連携して進めてまいります。例えばオフィス事業においては、顧客とともに販売と開発が一体となって顕在化していない顧客ニーズを抽出し、デジタル技術を駆使して短期間での開発、検証を繰り返すことで、働き方改革、テレワーク等を支援するサービスを提供する体制を構築してまいります。

 また、自前主義に陥らず、当社の技術戦略やコア技術資産を外部に積極的に発信し、大学、研究機関、スタートアップ等の幅広いパートナーとのオープンイノベーションを推進することでエコシステムをリードする、あるいは一員として協力するなど様々な形で社会に貢献する技術開発を加速してまいります。

 

4)新製品への移行

発生可能性:低

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループが事業展開する分野は、ハードウエア・ソフトウエアの急速な技術的進歩による製品・サービスに求められる機能の汎用化が早く、製品ライフサイクル期間内であっても性能・サービスの内容・機能の改善が求められる事業分野です。このため、顧客・市場ニーズに対応するため常に革新的な技術開発に挑戦し、多くのリソースを投入し研究開発を行っておりますが、新製品・新サービスへの移行は多くのリスクが内在しております。開発または生産の遅延、量産初期段階での品質問題、製造原価の変動、新製品導入に伴う現行製品への販売影響等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、競合他社から当社新製品・新サービスと類似製品・サービスが先行投入されるなど競合他社の新製品・新サービス市場導入時期により当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループでは、新製品・新サービスへの移行・展開において、開発初期段階から量産に至るまでの各ステップで、試作品、量産前製品、量産品それぞれに対する製品仕様、要求品質、製造コスト、環境対応を中心とした検証とゲート管理を徹底し、最大限の取組みを行っております。特に新製品への切り替え時期におきましては、開発・生産・品質保証の各部門が一体となった管理体制を敷き、お客様に不利益が生じないことを第一に、その後のサービスを含め顧客価値を高める活動を行っております。

 また、各事業分野において顧客価値を継続的に高め、競合に対して競争力のある新製品・新サービスの計画的な市場導入を進めております。市場変化の激しい状況下を考え、常に市場動向を観察・分析しタイムリーな計画変更を実施してまいります。例えば、オフィス事業では、複合機を中心に顧客のワークフローの改善につながるソリューションを、プロフェッショナルプリント事業では、ジャンルトップとなる競争力の高い商材・サービスを提供してまいります。

 

 

5)他社との協業、企業買収等について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、事業競争力の強化あるいは効率化の観点から、資本提携・企業買収等、他社との協業を進めております。

 企業買収等に伴い、のれん及び無形資産を計上しており、定期的に減損テストを実施しております。事業環境の変化に伴い、買収対象会社に係る将来キャッシュ・フローの低下が見込まれた場合等には、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応

 企業買収に際しては、投資評価の審議を行い当社との戦略的適合性、計画の蓋然性、投資額の妥当性、リスク対応等の観点から投資評価を行った上で、投資の可否を見極めております。また、投資実施後においては、定期的な投資レビューにより、投資時点の計画からの変化に対しても、迅速に対策を講じるようにしております。

 

6)調達・生産等

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、特定の製品、部品や材料、及びエネルギーを世界中の複数のサプライヤーから調達する方針を取っております。それらのサプライヤーに不測の事態が発生した場合、当社グループの生産及び供給能力に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの生産活動において使用する鉄やアルミニウム等の金属製品、原油を原料とする石油化学製品、レアアース等の希少天然資源等の原材料価格、及びエネルギー価格の高騰が業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの主力事業であるオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業及び産業用材料・機器事業では、コスト競争力強化と市場への迅速な製品供給のために海外での生産活動を継続しており、重要な活動拠点のひとつに中国があります。中国におきましては経済発展とともに法制面改革やインフラ整備等も進んでおりますが、法的な変化、労務政策の難しさ、人件費の上昇、人民元の切上げ、輸出入規制や税制、環境規制の変更等予測困難な事態が発生する可能性があります。主力事業の生産活動の一部を中国で行っている当社グループにとって、これらのリスクに対処できない場合は、当社グループの業績及び成長戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応

 当社グループでは、主力調達地域である日本、中国、ベトナム、マレーシアにその活動に特化した部門を設置し、調達に関わる各地域の規制、制限、変化などの情報を収集することで、その対応の迅速化を図っております。また、サプライヤーでの品質、生産性向上を含めたコストの競争力を高めるためのコラボレーション活動を推進しております。具体的には、品質改善活動をサプライヤーと協業して行うこと、また、当社が保有する生産工程の自動化などの生産技術をサプライヤーに導入することで、生産性の向上と品質、コストの競争力を高めております。さらに主要原材料、電子部品に対し集中的な調達を行い、市況、市場、業界変動の中でも品質、供給、コスト競争力を維持する活動を行っております。

 また、生産に関するリスク対応及び事業環境の変化に対する柔軟性を向上させるため、日本、中国、マレーシアにおいて製品組立の生産拠点を展開しており、特に近年様々な面で高まりを見せる中国のカントリーリスクへの対応として、生産規模の大きい主力製品を中心に中国外生産の比率を高めている状況にあります。また主力事業であるオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業の消耗品における部品生産及び印刷用トナーの充填を行う拠点として、欧州、北米にも自社生産拠点を展開し消費地生産による需要変動への柔軟性を確保しております。

 これら活動に加え、不測の事態による部品供給難に対応するため、BCP管理体制を開発・品質保証・調達・生産連携で整えております。サプライヤーの材料調達状況、生産稼働状況、出荷などの物流状況を迅速に把握するため各サプライヤー間の連絡網を整備し、部品供給課題が顕在化した場合は代替品の評価、検証から生産投入に至る一連の活動を、開発、生産、品質保証で最優先に対応しております。これらにより事業への影響の抑制を図っております。

 

 

7)製造物・品質責任

発生可能性:低

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、国内外のグループ会社や生産委託先にて厳格な品質保証体制を構築し、お客様に対して高い性能と信頼性を備えた製品及びサービスを提供しております。万が一、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が発生した場合、その欠陥に起因した損害に対して当社グループは賠償責任を負う可能性があり、またその欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性があります。さらに当該問題により、企業ブランドや製品ブランドが毀損され経営成績に悪影響が及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 重大品質問題を起こさない仕組み・取組みとして、グループ全体の品質に関する責任と権限を担う執行役を議長とする「品質保証責任者会議」を設置し、品質マネジメントを統括しております。同会議は、原則として四半期ごとに開催され、品質計画の推進、進捗確認とともに、品質保証に関する情報共有、検討を行います。さらに各事業では、品質課題についてPDCAサイクルを徹底することで継続的な品質向上に取り組んでおります。

 製品品質に関わる問題が発生した場合、24時間以内に全世界グループ統一の「市場品質速報データベース」に情報を登録することが義務づけられており、登録された情報は即座に品質担当執行役と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、過去に発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映を行い、再発防止に努めております。その結果、過去5年間、重大事故の発生はありません。また、法的基準よりも厳しい独自の製品安全基準を設けて、製品のさまざまな箇所について詳細に規定し確認を行っております。これらの施策をより確実に実施するために、設計・開発、生産技術、調達、品質保証などに携わる技術系従業員を対象とした「製品安全教育」をグループ全体で展開し、品質マインドの定着に努めております。

 また、デジタル社会の進展や当社IoTサービス関連事業の拡大に伴い、セキュリティ事故のリスクも増大してくると考えております。製品セキュリティ事故発生時の対応と脆弱性への対策・予防として、製品の脆弱性に関する情報を全社で一元管理し必要な対応を推進するとともに、社外の公的機関等と連携するための全社共通組織として「KONICA MINOLTA PSIRT(注1)」を2017年12月に立ち上げ、活動を開始しました。2019年5月には、92か国約500のCSIRT(注2)・PSIRTチームが所属する国際フォーラムである“FIRST”(注3)に加盟し、企業間での情報連携やセキュリティ貢献が可能な体制を整えております。

 

 (注1)KONICA MINOLTA PSIRT (Product Security Incident Response Team)、当社の製品脆弱性対応チーム

 (注2)CSIRT(Computer Security Incident Response Team)セキュリティ事故対応チーム

 (注3)FIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)

 

 

③その他のリスク

1)大地震・自然災害・感染症等

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

 ●リスク

 当社グループは、研究開発・調達・生産・販売等の拠点を世界各国に置き、グローバルに事業活動を展開しております。地震、火災、気候変動に伴う大規模な台風、洪水、森林火災等の災害、新型コロナウイルスや新型インフルエンザのような大規模な感染症の発生、また戦争、テロ行為、サイバー攻撃等が起こった場合、当社グループの設備等が被害を受け、一時的に操業が停止し生産及び出荷の遅れにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 特に、首都直下、南海トラフ等における巨大地震の発生においては、その影響度を検討して策定した「コンティンジェンシープラン」においても、被害想定を超えた規模で発生する可能性があり得ると考えられます。当社グループは、防災対策や事業継続マネジメントを今後も継続して推進してまいりますが、このような事態が発生した場合、機能停止、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害等により、お客様へのサービスの提供や製品出荷等の停止など、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応

 当社グループは災害や、感染症の発生また戦争、テロ行為、サイバー攻撃等があった場合の情報を危機管理担当執行役が集中管理し、従業員の安全を最優先として適切な対応をとる体制を構築しております。その中でも巨大地震をはじめとした災害に対しては防災中期計画に基づき、予防・減災対策、応急対策・初動対応、復旧・復興対策の観点でハード・ソフト両面からの対応実践力の向上を図っております。具体的には建物の耐震対策、通信・データ関連の主要サーバーの海外設置、安否確認システム・緊急時情報データベース等ITによる被災時情報共有基盤の整備等を進めています。大規模災害時には国内に有する約300のグループ拠点について緊急時の情報ネットワークを構築し、必要な支援や対策を実施できる体制を構築しております。さらに、事業拠点で従業員が災害時に自律的行動をとれるよう、定期的に実践的な防災訓練を実施しております。

 また、当社グループでは、事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するとともに、お客様が必要とする製品やサービスを安定的に供給するために「コンティンジェンシープラン」を策定し、主要消耗品の生産拠点の分散化によるリスクの低減、調達リスクの高い品目については代替手段の検討、在庫の確保等、対応策の有効性の確認と改善を図っております。地域においては、各拠点の自治体と連携し、自然災害時の避難場所の提供等、地域貢献にも努めております。

 

 

 

2)環境規制・気候変動

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質の除去、廃棄物処理、製品リサイクル、土壌・地下水汚染等に関する様々な環境法及び規制の適用を受けており、それらの遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や賠償責任が発生する可能性があります。加えて、温室効果ガス排出規制、エネルギー効率規制、欧州サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関する規制、炭素税等新規・追加の環境関連の法規制が将来さらに厳格化した場合には、遵法のための追加的義務及び費用が発生する恐れがあり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、気候変動をはじめとした地球環境問題の進行は、その緩和及び適応の局面において将来にわたり当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、その課題の解決に貢献できれば好影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループでは、2050年までに自社の製品ライフサイクルにおけるCO2排出量を80%削減するとともに、その排出量を上回る社会・お客様でのCO2排出量削減を生み出し、「カーボンマイナス」を実現することを目指しております。2019年度には、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量は約99万トンで52%削減まで到達しております。

 また、気候関連の機会については、多様な働き方を支えるコネクテッドワークプレイス、デジタルトランスフォーメーション(DX)による介護現場ソリューション、印刷工程のオンデマンド生産プロセスなどを通じ、本格的なペーパーレス、オフィスレス(ユビキタス)社会への働き方変革、エネルギー使用やCO2排出量が少ない製造プロセス変革を提供してまいります。また異常気象等への備えとしての画像IoT・センシングソリューション、遺伝子・画像診断等の技術を活用したヘルスケアソリューションなど、社会課題の解決に直結した事業を強化しております。人為的なCO2排出の主要因となる化石燃料に依存しない再生可能エネルギー社会へいち早く適合し事業運営することが、持続的に成長できる企業の必須要件であるとの考えから、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際リーダーイニシアチブ「RE100」に加盟しております。2050年までに自社の事業活動で使用する電力の調達を100%再生可能エネルギーにする目標を設定しております。2019年度には再生可能エネルギー比率を5.3%まで高めました。

 当社グループは、気候変動をリスクとしてだけではなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決していくことを目指します。また、気候変動による事業影響、機会及びその影響の評価に取り組んでいく姿勢を明確にするため、金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しており、継続的に気候変動の影響の評価及びその情報の開示に取り組んでまいります。

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期での成長に向けて ③地球環境への貢献」に関連事項を記載しております。

 

 

3)知的財産権

発生可能性:低

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

 ●リスク

 当社グループは、製品開発の中で多くの技術あるいはノウハウを蓄積し、それらを保護するための知的財産権の取得に努めております。しかしながら、一部の地域・国では、知的財産権を保護する制度が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産権を使用して類似製品を製造、販売することを防止できない可能性があります。

 また、当社グループでは他社の権利を侵害しないように製品の開発を進めておりますが、見解の相違等により他社の知的財産権を侵害しているとされ、当社グループが技術を使用できない可能性や多額の損害賠償責任を負う可能性があります。さらに、現在当社グループがライセンスを受けている第三者の知的財産権の使用が将来差し止められる、あるいは不当な条件に変更される可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループは、技術等を保護する知的財産権(例えば特許権)を適切に取得・執行することが困難な国・地域において、商標権等に基づいて、行政機関と協力し模倣品の押収や輸入差し止めを行う、運営業者と連携し電子商取引(EC)サイトからの出店差し止めを行うなど、様々な方法により類似製品の流通阻止に努めております。

 また、他社の知的財産権に関しては、製品開発の各フェーズにおいて入念な調査・確認を実施し、他社の知的財産権を侵害していないことを商品化の要件としております。また、万一見解の相違等により他社から知的財産権の侵害を指摘された場合やライセンス条件の変更等に備え、非侵害の主張やライセンス条件等の交渉・訴訟対応を行うための専門人財を社内知的財産部門に配置するとともに、経験豊富な国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応する体制を整えております。

 これらのリスク管理に加え、当社グループの事業、製品、サービス等により提供される顧客価値の源泉となる独自のビジネスモデル、技術、データ等の知的財産について、特許権等の知的財産権の取得、不正競争防止法によるノウハウ・データの保護要件を満たす管理等、その特性に応じた適切な保護・活用を行うことにより、当社グループの持続的な競争優位性の維持、成長のドライバーとしております。

 

4)人財確保

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:中

 ●リスク

 当社グループの新規事業を中心とした将来的な成長には、優秀な人財の継続的な獲得が欠かせないと認識しております。特に、IoT、AIに代表されるデジタル技術の普及に伴うデータの活用領域が拡大することによる様々なビジネスモデルの変化に対応するためには、IoT人財の強化が必要となります。計画どおりに人財の強化が進まない場合は、当社グループの目指すソリューションビジネスへの転換に影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 当社グループでは、IoT人財の育成・獲得を重要戦略と位置づけ重点的に施策を進めております。人財育成では、スキル認定の仕組みにより技術系人財のジョブ・スキルマッチングを進めるとともに海外開発拠点や共同研究機関との連携での育成プログラムによるグローバルレベルで計画的な育成を行っております。人財獲得では、長期インターンシップや大学との連携強化を行い、IoT分野の優秀な学生を当社に惹きつけております。2019年には大阪梅田に「Innovation Garden OSAKA Front」を新設し、2020年10月には高槻に「Innovation Garden OSAKA Center」の新設を予定しており、画像IoT開発の本格的な拠点展開をはかり関西地区での人財獲得強化を進めております。

 また、New Normal(新常態)における働き方としてテレワークを積極的に展開するなど、ワークライフバランスを支える各種制度を整備し、多様な働き方に対応できる仕組みを強化しております。

 

 

5)情報セキュリティ

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

 ●リスク

 当社グループは、様々な事業活動を通じて、お客様や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。これらの情報管理につきましては、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生する可能性があります。また、技術、契約、人事等に関する当社グループの機密情報が第三者に漏えい、不正使用された場合も、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応・機会

 情報管理について、適切な技術対策や社内管理体制の整備、従業員への教育等の対策を講じております。

 また、サイバーインシデントに対応する組織としてCSIRTを全グループで運用し、セキュリティインシデントを想定した訓練を実施しております。さらに、製品・サービスに関して開発・設計・製造・販売・保守の全てのフェーズにおいて委託先を含めてサプライチェーン全体を一貫したセキュリティポリシーにてリスク管理を行うための包括的セキュリティマネジメント体制を2020年度より発足いたします。これらを通してセキュリティの強化に努めてまいります。

 新型コロナウイルスの影響によるテレワーク者増加に合わせて、よりセキュリティに配慮した勤務環境を提供する必要があり、外部からの不正アクセス防止のため、暗号化通信によるセキュアなネットワーク環境の提供と、会社指定デバイス以外からのネットワーク接続を制限しております。

 また、当社グループはお客様のセキュリティ対策強化の支援にも注力しております。IT管理サービスとしてネットワークやアプリケーションの脆弱性の監視・管理サービス、リスクアセスメントを行うとともに、複合機からの情報漏洩を防止するためのデータの暗号化、パスワード設定やログ管理の機能、設定状況の監視と通知サービスを行う「bizhub(ビズハブ)SECURE」をグローバルに展開しております。新製品の「bizhub i-SERIES」には、社内ネットワークへのウイルス拡散を防止するため、すべての文書・FAXデータのウイルスをチェックする機能を搭載しております。オフィス内のITシステムを統合管理する「Workplace Hub」には、Sophos社のファイアウォール機能が搭載されており、ネットワークのリスクや脅威の検知と排除、情報漏洩に対応しております。

 

 

④新型コロナウイルス感染症に関するリスク

1)新型コロナウイルス感染拡大の影響

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 当社グループは、グローバルな事業を展開しており、売上高における日本以外の地域の構成比は、80%以上を占めます。そうした事業環境下において、2020年1月下旬から顕在化した新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、各国政府によるロックダウン(都市封鎖)や活動自粛要請などにより、中国・アジア地域ではサプライチェーンや生産活動に混乱をきたし、当社グループにおいても一部の工場で一時的に操業停止や減産などの対応を、欧米地域では当社の顧客企業の事業活動が停滞し大きく需要が減少したため、当社の販売活動の停滞を余儀なくされました。新型コロナウイルスによる感染症の影響は、感染の規模や収束の時期について、5月末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断し一定の想定をしておりますが、その想定は不確実性があるため、業績に与える影響を具体的に予想することが困難であります。

 一方、新型コロナウイルス感染症と闘いながら経済活動を再開していく過程においては、医療従事者への一層の支援が必要とされるとともに人々の価値観や働き方にも変化が生じると想定されます。胸部X線のAI診断支援、遠隔診断支援や「Workplace Hub」を活用した多拠点連携による働き方改革支援、自社実践から得られたテレワークのノウハウ提供等は、これらの社会課題の解決を通じ事業機会拡大も想定されます。

 以下、セグメントごとに、リスク(マイナス側面)と機会(プラス側面)の両面からご説明します。

 ●リスク・機会

(オフィス事業・プロフェッショナルプリント事業)

顧客企業のテレワークや事業活動の制限により、製品購入判断や設置の遅延、商談機会の制約や長期化、印刷量の減少が想定され、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

一方、テレワークなどの新しい働き方を支援する当社のITサービス・ソリューションや「Workplace Hub」は、主要顧客である中堅・中小企業や官公庁に強固な情報セキュリティを確立しながら、遠隔での協働を実現するソリューションとして販売機会の拡大の可能性が想定されます。

(ヘルスケア事業・バイオヘルスケア分野)

病院における一般患者や被検者の減少、当社グループからの病院や製薬企業への訪問が制約されることなどにより、販売の一時的な減少が想定されます。

一方、新型コロナウイルス感染症の収束後には、これらの需要は戻ってくるものと見ており、加えて感染症対応も含めた持続可能な医療環境を支援する遠隔画像診断システム、X線動態解析とAI読影支援システム、医療画像管理と施設間連携をサポートする「infomity(インフォミティ)」、遠隔診療やカウンセリングシステム、従業員健康管理プログラムなどの販売機会の拡大可能性が想定されます。

なお、2020年4月に、米国政府からの要請を受け、検査ラボとRNA検査技術を活用し、企業・医療関係者からのPCR・抗体検査を受託しました。創薬支援においては新型コロナウイルス治療薬の研究を支援するべく取り組んでおります。

(産業用材料・機器事業)

顧客企業のFPD(フラットパネルディスプレイ)製造ライン増設の遅延や最終製品の需要増減の影響が想定されます。

一方、新しい働き方の広がりに伴って、需要の拡大が期待されるノートPCやタブレット、スマートフォンなどの中小型ディスプレイ用の部材販売や、顧客製造ラインの検査工程の自動化による省人化を支援する当社グループ独自のソリューションなどの販売機会の拡大可能性が想定されます。

画像IoTの分野においては、AI解析によるサーマルカメラの体表温度測定ソリューションの需要が高まり、販売機会が拡大しております。

(調達・生産)

新型コロナウイルス感染拡大は、当社のサプライヤーの企業活動にも影響を与えており、サプライヤーの事業継続コストによる調達品目の価格高騰、もしくは事業継続が困難と判断された場合の代替品調達に伴う追加費用の発生などが生じる可能性があります。

 ●対応

 当社では、2020年1月よりCEOを最高責任者とする危機管理臨時体制を立上げ、対応策(BCP)策定と実行推進を行いました。新型コロナウイルス感染拡大に対し、各国政府・地域の法令・指導に従い、グループで働く人々とその家族、お客様、お取引先様を始めとする全てのステークホルダーの皆様の健康と安全確保を最優先に考え、感染拡大を防止するとともに、社会やお客様への製品・サービスの提供に支障が生じないよう、生産・物流を含めたサプライチェーン網の維持等にも最大限の努力を続けております。特に、生産では以前より自社生産のデジタル化(DX化)に取組み、その効果をサプライヤーにも展開することで生産性の向上と品質、コストの競争力強化を進めております。

 日本国内では、従業員に対し以前から推進している在宅のテレワークを引き続き推進し、従業員の高いパフォーマンス発揮のため、きめ細かなITサポートを拡充しております。

 また、従業員が新型コロナウイルスに「感染しない・うつさない」ための行動ガイドラインを作成し、オフィスにおける具体的な取組み(30分単位の室内換気、少人数定員の座席配置、小まめな手洗いや勤務中のマスク着用等)を徹底しました。さらには、在宅のテレワークを続けることで生じる従業員間の意思疎通や生活リズムの変化などの従業員のメンタルリスクに対して、相談窓口の設置などのメンタルケアを行っております。グローバル各拠点でも、上記のとおり各国政府など行政の要請に基づき、適切に対応しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びにこれらの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

重要な会計方針及び見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3 重要な会計方針及び「同 注記4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断に記載のとおりであります。

 

(2)経営成績の状況

当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢を振り返りますと、欧州では前期後半から引き続き経済低迷が継続し、英国のEU離脱は1月に決定したものの英国とEUでの交渉が続くことから先行きの不透明感は継続しました。米国と中国においては、貿易摩擦を起因とした追加関税の実施などにより経済成長が減速し、製造業を中心に顧客企業の投資意欲が減退しました。日本経済は不透明感が継続する世界経済の影響も受け、輸出や設備投資が伸び悩みましたが、全体としては緩やかな成長を持続しました。また、これらの経済情勢を受けて、前期比で円高傾向が継続しました。2020年に入り、新型コロナウイルス感染症の各地域への拡大に伴い、2月以降、中国や欧米でのロックダウンなどにより経済活動が大きく減速しはじめました。

 

こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、9,961億円(前期比6.0%減)となりました。前期比での円高影響は△329億円でした。事業セグメント別では、オフィス事業は、欧州がけん引して回復の兆しを見せていましたが、中国や北米での販売減の影響を受けて減収、プロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニットは、北米がけん引して為替を除く実質での増収に転じていましたが、ASEANを除く全地域で販売減となり減収となった一方、成長事業と位置付ける産業印刷では実質増収を維持しました。ヘルスケア事業は中国を除く地域で販売が伸長したものの、中国での減収が影響し、減収となりました。産業用材料・機器事業は、機能材料ユニットでは顧客の在庫調整による影響、IJコンポーネントユニットや計測機器ユニットでは主要顧客が中国に多く、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことなどにより、減収となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の連結売上高への影響額は、230億円程度と見積もっております。

 

中長期での持続的な成長を目指す取組みとして将来の収益の柱にすべく投資を継続している新規分野では、当社の提供するエッジIoTプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の販売地域を当期を通じて9カ国から26カ国に拡大させ、販売活動を強化し顧客数を増加させています。バイオヘルスケア分野では、遺伝子診断の精度を飛躍的に向上させるために世界で初めて商用化した生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査が医療機関から高い評価を受け、遺伝子検査の受託数を大幅に増加させています。また、更なる事業拡大を目指して、検診機関向けのサービスを本格展開するための準備を進めました。これらの進展により、新規分野は大幅な増収となりました。

営業利益は82億円(前期比86.8%減)となりました。前期比での円高影響は△71億円でした。前期に資産流動化による収益202億円を計上していたことや、米中貿易摩擦に起因した追加関税24億円を負担したこと、構造改革費用として74億円を計上したことも影響しました。新型コロナウイルス感染症の営業利益への影響額は110億円程度と見積もっております。

前期からは大幅な減益となりましたが、当期前半におけるオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業での収益性低下を改善するために、翌期での年間寄与を見込んで追加した構造改革や製造原価低減などの施策、並びに商品の高付加価値化による販売の競争力強化を狙いとして投入した新製品への切り替えは、計画通りに進捗しました。構造改革につきましては、当期に投じた費用を上回る利益押し上げ効果が翌期に発現すると見込んでおります。

税引前利益は2億円(前期比99.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期損失は30億円(前期は親会社の所有者に帰属する当期利益417億円)となりました。

 

セグメント別の状況は以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

 

(自 2018.4.1

(自 2019.4.1

 

 

 

 

至 2019.3.31)

至 2020.3.31)

 

 

 

 

億円

億円

億円

オフィス事業

売上高

5,878

5,464

△414

△7.0

 

営業利益

471

238

△233

△49.4

プロフェッショナル

売上高

2,277

2,100

△176

△7.8

プリント事業

営業利益

138

43

△94

△68.5

ヘルスケア事業

売上高

909

878

△30

△3.4

 

営業利益

23

6

△17

△73.1

産業用材料・機器事業

売上高

1,167

1,096

△70

△6.1

 

営業利益

209

192

△17

△8.3

小計

売上高

10,232

9,540

△692

△6.8

 

営業利益

843

480

△362

△43.0

「その他」及び調整額

売上高

358

420

62

17.3

(注2)

営業利益

△219

△398

△179

連結損益計算書計上額

売上高

10,591

9,961

△630

△6.0

 

営業利益

624

82

△542

△86.8

(注1)売上高は外部顧客への売上高であります。

(注2)売上高は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 事業セグメント」に記載の「その他」の外部顧客への売上高、営業利益は同記載の「その他」と調整額の合計であります。

 

①オフィス事業

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オフィスユニットでは、当第3四半期連結会計期間に新製品効果でカラー機の販売台数が増加に転じましたが、販売活動が最も活発になる2月から3月にかけて、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に中国においてA3複合機の販売台数が大きく減少しました。日本や欧州では新型コロナウイルス感染症の影響が出始めましたが、ロックダウン前までの新製品効果などによりカラー機の販売台数は前年並みとなった一方、カラー高速機の主力市場である北米では、期末に向けて2月に新製品を投入したタイミングでのロックダウンが大きく影響し、直販を中心に販売台数が減少しました。これらにより当期のカラー機の販売台数は前期比で減少に転じ、モノクロ機は前期比での減少幅が拡大しました。

ITサービスユニットでは、採算向上のため一部のITサービスのメニューを絞り込み、サービスサポートの標準化・自動化により更なる収益性向上を図っておりましたが、3月に売上が減少し、当期としても減収となりました。

これらの結果、当事業の売上高は5,464億円(前期比7.0%減)、営業利益は米中貿易摩擦による関税19億円や構造改革費用58億円を計上したことも影響し、238億円(同49.4%減)となりました。

 

②プロフェッショナルプリント事業

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プロダクションプリントユニットでは、当第3四半期連結会計期間に品質最適化ユニット「IQ-501」による価値訴求などの施策効果もあり北米での復調が見られ、2月に発売した当社初の高速機「AccurioPress(アキュリオプレス)C14000シリーズ」の受注も順調で大量印刷領域への進出を果たしましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による顧客への設置遅延や投資抑制、投資判断の延期により、ASEANを除く全地域で販売台数が減少しました。

産業印刷ユニットでは、インクジェットデジタル印刷機の「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」の販売は直販で大きく伸長しました。ラベル印刷機とデジタル加飾印刷機の販売は新製品や販売能力増強の効果で伸長し、ターゲットとする市場でトップクラスのシェアを継続しました。

マーケティングサービスユニットでは、高付加価値サービスへのシフトを継続し、米国やアジアがけん引して販売は伸長しましたが、2月後半からの顧客企業のマーケティング活動減退や、オンデマンド印刷を展開するキンコーズでの店舗来客の減少により減収となりました。

これらの結果、当事業の売上高は2,100億円(前期比7.8%減)、営業利益は米中貿易摩擦による関税5億円やマーケティングサービスユニットにおける子会社ののれんの減損損失16億円の計上をしたことも影響し、43億円(同68.5%減)となりました。

 

③ヘルスケア事業

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ヘルスケアユニットでは、DR(デジタルラジオグラフィー)は、日本、欧州、アジアは年間を通じて販売数量を伸ばし、米州は南米の販売が好調に推移したことで、全体として販売数量は前期比で増加しました。超音波診断装置は日本では産科向け新製品の効果と透析・麻酔等の新領域向け販売数量の増加により当期を通じて販売を順調に伸ばし、海外でも欧米、アジアを中心に販売が伸長しました。ヘルスケアユニット全体では、新型コロナウイルス感染症の影響により中国での売上が減少したこともあり、減収となりました。

医療ITユニットでは、北米でPACS(医用画像保管・管理システム)の大型案件を受注し、日本でもPACSの販売が堅調に推移しました。また、アジアにおいてもPACSの販売を開始し、当期後半の厳しい経済環境の中で増収を維持しました。

これらの結果、当事業の売上高は878億円(前期比3.4%減)、営業利益は子会社の拠点売却に係る固定資産評価減5億円を計上したことも影響して、6億円(同73.1%減)となりました。

 

④産業用材料・機器事業

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材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットで高付加価値製品の販売へのシフトが堅調に推移しましたが、当期後半に顧客の一時的な在庫調整などの影響を受け、通期ではやや減収となりました。前期まで仕込んできた新樹脂フィルムは顧客認定が進み販売を開始しており、商品ポートフォリオの転換・顧客層の広がりは計画どおり進捗しています。光学コンポーネントユニットは、プロジェクタ用レンズの販売が当期を通じて堅調に推移しましたが、その他の光学部品の販売が減少し減収となりました。IJコンポーネントユニットは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で販売が急減速し減収となりました。これらにより、材料・コンポーネント分野全体として減収となりました。

産業用光学システム分野では、計測機器ユニットで、物体色向け計測器の需要の停滞傾向が新型コロナウイルス感染症による事業活動の制限によってさらに強まり、光源色向け計測器は前期に見られたディスプレイ製品の多様化に伴う大口需要が当期に減少した影響を当期後半で持ち直しつつあったところ、新型コロナウイルス感染症により事業活動が制限されたり、中国での通関に通常より時間を要した結果、顧客への納品が翌期に持ち越され、ユニット全体で減収となりました。中国や韓国の顧客からの引き合いは継続しており、当期末から商談が再開しつつあります。

これらの結果、当事業の売上高は、1,096億円(前期比6.1%減)、営業利益は192億円(同8.3%減)となりました。

 

(3)財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

資産合計             (億円)

12,189

12,767

577

負債合計             (億円)

6,530

7,430

899

資本合計             (億円)

5,659

5,337

△322

親会社の所有者に帰属する持分合計(億円)

5,556

5,237

△319

1株当たり親会社所有者帰属持分    (円)

1,123.39

1,058.29

△65.10

親会社所有者帰属持分比率     (%)

45.6

41.0

△4.6

 

 当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比577億円(4.7%)増加し1兆2,767億円となりました。これは主に、IFRS第16号「リース」(以下「IFRS第16号」)適用等による有形固定資産の増加1,023億円、棚卸資産の増加178億円、現金及び現金同等物の減少349億円、営業債権及びその他の債権の減少147億円、のれん及び無形資産の減少83億円、その他の金融資産の減少56億円によるものであります。

 負債合計については、前期末比899億円(13.8%)増加し7,430億円となりました。これは主に、IFRS第16号適用によるリース負債の増加1,142億円、社債及び借入金の増加155億円、営業債務及びその他の債務の減少123億円、その他の金融負債の減少94億円、未払法人所得税の減少75億円によるものであります。

 資本合計については、前期末比322億円(5.7%)減少し5,337億円となりました。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比319億円(5.7%)減少し5,237億円となりました。これは主に、その他の資本構成要素(主に在外営業活動体の換算差額)の減少224億円、剰余金の配当による減少148億円によるものであります。

 これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,058.29円となり、親会社所有者帰属持分比率は4.6ポイント減少の41.0%となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

571

301

△270

投資活動によるキャッシュ・フロー

△414

△500

△85

(フリー・キャッシュ・フロー)

156

△198

△355

財務活動によるキャッシュ・フロー

△402

△119

283

 

 当期の連結キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー301億円の収入と、投資活動によるキャッシュ・フロー500億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは198億円のマイナスとなりました

 また、財務活動によるキャッシュ・フローは119億円の支出となりました。

 そのほかに、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比349億円減少の899億円となりました。

 

 当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税引前利益2億円、減価償却費及び償却費771億円等によるキャッシュ・フローの増加と、棚卸資産の増加による減少231億円、営業債務及びその他の債務の減少による減少48億円、法人所得税の支払157億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは301億円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得による支出366億円、無形資産の取得による支出129億円、子会社株式の取得による支出63億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは500億円の支出となりました。

 

 この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは198億円のマイナス(前期は156億円のプラス)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 短期借入金の純増加額116億円、社債の発行及び長期借入309億円等の収入と、社債の償還及び長期借入金の返済208億円、リース負債の返済187億円、配当金の支払148億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは119億円の支出(前期は402億円の支出)となりました。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

前期比

 

百万円

オフィス事業

 294,434

90.6

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

 21,462

105.7

産業用材料・機器事業

 102,096

94.2

 報告セグメント計

 417,993

92.1

その他

 6,640

82.6

合計

 424,633

91.9

(注1)金額は、売価換算値で表示しております。

(注2)上記金額には、消費税等は含んでおりません。

(注3)オフィス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。

 

②受注実績

 当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。

 

③販売実績

 販売状況については、「(2)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

①資本政策の基本的な方針

当社は課題提起型デジタルカンパニーを目指してビジネスモデルの変革に取り組み、中長期的な企業価値向上に向けた持続的な成長を支えるための最適な資本政策を実施していきます。

特にキャッシュ・フロー創出力の強化と資本効率(ROE・ROIC)の向上を重視し、その実現に向けて、「成長投資の実施」「株主還元の充実」及び「財務基盤の強化」について、これらの最適バランスを目指した資本政策を推進し、資金効率の向上と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。

1)資本効率の向上

資本コストを重視し、資本コストを安定的に上回るROE・ROICの向上を目指します。このために、KM-ROIC及び投下資本収益(注)を経営管理指標とし、事業ポートフォリオマネージメントの強化を通じて企業価値の最大化を図ります。

2)株主還元の充実

連結業績や成長分野への戦略投資の推進等を総合的に勘案しつつ、積極的に利益還元することを基本とし、配当額の向上と機動的な自己株式の取得を通じて、株主還元の充実に努めます。

3)財務健全性の担保

財務ガバナンスの強化、財務リスクの最小化、資金効率の向上、株主資本の充実により積極的な成長投資を支える財務基盤の強化を図ります。

(注)KM-ROIC:投下資本収益率。事業利益を投下資本で除した比率。事業活動のために投下した資本を使って、どれだけ事業利益を生み出したかを示す指標。

投下資本収益:事業利益から投下資本コストを控除した金額。どれだけ投下資本コストを上回る価値を創造したかを示す指標。

投下資本収益の最大化によりROE及びROICの向上を図ります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。

 

②資金需要

当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。

 

③資金の源泉

当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。

 

④資金調達についての方針

当社グループは、円滑な事業活動に必要な流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針とし、主に金融機関からの短期借入及び長期借入や社債の発行により資金調達を行っております。長期資金の調達に際しては、償還や返済の時期を分散することにより借り換えリスクの低減を図っております。また、資金調達は主に当社が行っており、必要資金を関係会社に主にキャッシュ・マネジメント・システムを通じて供給することで資金調達の一元化や効率化を図っております。

 

⑤流動性

当社グループは、従来から営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き重要な資金源になると見込んでおります。また、複数の金融機関との間で2024年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントライン契約を締結し、効率的な資金の調達を行っている他、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠を有しています。当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しています。

なお、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な経済活動の停滞が当社の営業キャッシュ・フローに悪影響を与えるリスクに備え更なる手元流動性の確保のため、2020年4月にアンコミットメントベースの融資枠の一部を利用し約850億円の短期借入を実行したことに加え、2020年5月に複数の金融機関との間で2021年5月21日を期限とする2,000億円のコミットメントライン契約を締結しました。これにより、アンコミットメントベースの融資枠を利用した借入による資金約850億円を含む手元現金及び現金同等物の残高、2つのコミットメントラインの未使用残高計3,000億円、アンコミットメントベースの融資枠の未使用残高の合計は2020年5月末現在で約5,000億円となり、当社グループの6ヶ月分の売上規模に相当する十分な手元流動性を確保していることになります。

また、当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、経営理念である「新しい価値の創造」及び「Giving Shape to Ideas」というお客様への約束を掲げ、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術に関わる研究開発はもとより、コア技術を高度化・融合化するとともにICT、AI技術と組み合わせることで見えないものを見える化する技術をさらに発展させ、各事業セグメントにおいてお客様本位の新製品・サービスの開発を進めております。

当連結会計年度においては、中期経営計画「SHINKA 2019」に基づいた中期経営戦略基本方針に対応して、「技術競争力の実践的強化」、「継続的なイノベーション創出」を技術戦略の基本方針と定め推進してまいりました。

「技術競争力の実践的強化」の1つとして、AIを活用したIoT技術強化による、社内外のデジタルトランスフォーメーションを推進してまいりました。これを推進する担い手である専門技術人財を補強し、2017年3月比で、国内外で2倍となる500人体制にいたしました。注力分野として、データ分析から課題解決策を導く「データサイエンティスト」、短期間での開発、検証を繰り返すスピードを重視した「アジャイル開発リーダー」、ITサービス全体を設計できる「アーキテクト人財」を補強してまいりました。さらに、これらの人財を活用しお客様のデジタルトランスフォーメーションを支援するとともに、データを活用したマテリアルズインフォマティクス、プロセスインフォマティクスを研究開発、生産技術開発に適用し、社内のデジタルトランスフォーメーションも推進してまいりました。

「継続的なイノベーション創出」としては、コア技術とICT、AI技術を融合した新規ビジネスを展開してまいりました。オフィス領域では、中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する複合機と高性能サーバーとITサービスを一体化した新サービス「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」を日米欧にて展開し、業種別ソリューションなどでの拡大を推進しております。バイオヘルスケア領域では、コニカミノルタ、米国のAmbry社、Invicro社というグループ3社が保有するタンパク質精密定量化技術や遺伝子診断技術、画像解析技術を駆使し、人体の分子レベルでの診断や疾病・薬効の解析を可能にすることで患者様への適切な投薬・治療を支援するとともに、製薬会社にはバイオマーカーの特定や治験の効率化による創薬成功率向上を支援するサービスを提供いたします。当連結会計年度にはAmbry社でDNA検査に加えて生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査を世界で初めて商用化し、遺伝子診断精度の向上に貢献してまいりました。また、乳がんなどの定期健診の受診者向け遺伝子診断サービス「CAREプログラム」を本格展開するための準備を進めました。乳がんは遺伝学的リスクが高いため、定期健診時に遺伝子診断を行うことで、早期発見や予防に大きく貢献できます。

また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当社グループの保有技術や製品の活用による迅速な社会貢献を検討してまいります。ウイルス感染の初動対策として、ドイツのMOBOTIX社のネットワークサーマルカメラを用いた非接触・顔部分のリアルタイム検知により体表温度の測定が可能なアプリケーションを開発し、2020年5月より提供を開始いたします。また、Ambry社では社会が求める喫緊の要請に応じ、CAREプログラムを通じたPCR検査を含む新型コロナウイルス検査サービスを米国で提供すべく準備を進めております。Invicro社ではグローバルな研究コミュニティをサポートするために、X線とCTイメージングに焦点を当てたCOVID-19関連の安全なデータレポジトリである「COVID-19iPACSプラットフォーム」を開発し、2020年5月から無料で公開いたします。

 

また、持続可能な地球・社会の実現をめざし、「環境」をメインテーマとして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発、使用済み製品の廃材を高機能材料として再活用する技術、バイオマス由来材料を活用する技術の構築と社会実装を進めております。具体的には、複合機の本体や消耗品(トナーなど)に使う石油由来材料を再生材料へ転換し、プラスチック由来CO2排出量の削減を進めます。バイオマス由来材料や廃材を複合機などの高機能材料として活用するためには、一般的に石油からのバージン材に比べて性能が低下するとともに製品品質が安定しにくいという課題があります。当社グループが長年使ってきたコア技術の1つである材料技術、成形加工技術を発展させ、材料開発、材料選択、加工技術の組み合わせにより、新しい樹脂開発を進めます。複合機への展開だけでなく、様々な企業と本技術を共有し実用化することで、連携の輪をグローバルに広げ、環境価値の効果を飛躍的に大きくしていきます。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は740億円となりました。そのうち、オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が369億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が45億円、産業用材料・機器事業に係る研究開発費が121億円、バイオヘルスケア分野を含むその他事業及び基礎研究費用が204億円であります。各事業部門別の研究の目的及び研究成果は以下のとおりであります。

 

(1)オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業

オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業においては、主に複合機やデジタル印刷システムの情報機器から資材、各種ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、個々のお客様の働き方に合わせたクラウド利用サービス、ワークフローソリューションのご提案を合わせて行っております。

 

当連結会計年度においては、オフィスユニットでは、A3/A4複合機のラインアップを刷新し「bizhub(ビズハブ) iシリーズ」を発売いたしました。当製品では、強固なセキュリティー機能により、ウイルスやマルウェアを複合機で検知しオフィス内部の感染拡大を防ぐなど、オフィスのセキュリティー強化を支援します。さらに、リモートメンテナンスによる常時監視・保守や自動アップデートにより複合機が最適な状態に維持されるほか、災害時の早期復旧が可能になるなど、将来にわたって顧客の事業継続をサポートするサステナブルな高品質サービスを提供いたします。

プロダクションプリントユニットでは、クラス最高レベルの140ppmの印刷速度で生産性を向上させたデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)C14000/12000」」を欧米より順次発売を開始いたしました。新たにヘビープロダクションプリント領域でのお客様に向けて、従来機種の印字画質で出力速度を140ppmまで向上させ、好評をいただいている自動品質最適化・検品ユニット「IQ-501」を搭載可能として、オペレーターのスキルレベルに依らず検品作業の負荷を低減したワークフローで、AccurioPro(アキュリオプロ)シリーズのワークフローソフトウェアなどとともに、さらに高い生産性を提供いたします。

産業印刷ユニットにおいては、プリントヘッドとインクジェット出力に最適なインク、さらにプリンターの“三位一体”の開発・展開を最大の特長として、拡大し続ける様々なアプリケーション(出力用途)への対応や、各市場からの高画質・高生産性ニーズに対応する研究開発を強化・推進しております。さらに、デジタル箔押し機により、高い信頼性に加え、高い付加価値と生産性を実現するソリューションの提案を行っております。

 

(2)ヘルスケア事業

ヘルスケア事業においては、デジタルX線撮影装置を基盤とした付加価値サービス拡充や電子カルテ・情報システムと連携した医療機関のIT化を図るシステムソリューションビジネスの強化に加え、超音波診断装置のシリーズ拡充等により、大規模病院と地域の診療所等との医療連携の実現やヘルスケア事業の中長期的拡大を図る研究開発を実施しております。

当連結会計年度においては、一般X線撮影装置を用いて“動画撮影”という新たな診断方法を実現したX線動画撮影システム(構成:X線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」と可搬型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine(エアロディーアール ファイン)」)を多くの実臨床の現場に導入頂き、胸部における換気や血流などの新たな解析方法の開発や整形診断領域への拡張を進めています。本システムはその汎用性からアジア地域など新興国への展開も期待されています。付加価値アプリケーションとしては、病気のおそれがある部分を検出する診断支援AIの開発を進めており、医療機器としての申請とあわせて海外での事業の可能性も探究してまいります。

超音波診断装置では、高精細画像と直感的な操作性で国内整形外科市場において高シェアを獲得している「SONIMAGE(ソニマージュ) HS1」「SNiBLE(スナイブル)」の後継機種として、画質・ユーザビリティを向上させた「SONIMAGE HS2」と「SNiBLE2」を2020年2月に発売いたしました。高パフォーマンスCPUの採用などにより操作レスポンスを大幅に改善するとともに、血流計測を簡便に行える「Vascular NAVI機能」を搭載し、ベッドサイドで検査や処置を行うPoint of Care領域に新たな価値を提供いたします。

医療ITソリューションでは、医療被ばくの線量管理システム「FINO.XManage(フィノエクスマネージ)」に、新たな機能として、一般撮影の多様なデータを可視化・分析できるマネジメント機能「RADInsight」を搭載し、再撮影の管理や撮影技術の教育支援ツールを備えました。

ヘルスケア事業は、課題提起型デジタルカンパニーを目指し、ヘルスケア分野の「診断価値向上」・「早期診断」の実現により人々のQOL向上と医療費削減の両立に貢献するべく研究開発を強化・推進してまいります。

 

(3)産業用材料・機器事業

材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットにおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルム向けに、従来のTAC製品に加え、新樹脂「SANUQI」(COP系)、「SAZMA」(アクリル系)等を新プラットフォームとする高付加価値商品の開発展開を開始し、さらに2.5mの広幅生産への対応も進めております。SANUQIに関しては既に販売を開始しており、これら新樹脂を用いて偏光板保護フィルム以外の市場へも展開できる商品の準備も進めております。

光学コンポーネントにおいては、成長が期待されるドローン用レンズや内視鏡用レンズ等の小型レンズ開発・試作に取り組むとともに、新規開発のイベント用プロジェクタレンズユニットの販売を開始いたしました。今後は光学技術・コンポーネント技術に加え材料開発との連携強化で小型レンズユニットの開発に注力し事業化推進を図ってまいります。

 

IJコンポーネントユニットにおいては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、パナソニックインクジェットヘッド事業買収での技術の獲得により、さらなる製品ラインナップの拡充に取り組んでおります。

産業用光学システム分野における計測機器ユニットにおいては、トップメーカーとしてディスプレイ・光源色測定及び自動車メーカーなど幅広いアプリケーションで使用される物体色測定の分野で高品質な製品を提供しております。当連結会計年度においては、成長戦略の一環として、自動車生産工程の品質検査ソリューションを提供するスペインのEines Systems社を買収し、外観計測事業の立ち上げを加速しております。また、物体色測定用に色と光沢を同時測定し生産性向上に貢献する新世代の分光測色計「CM-26dG」を、ディスプレイやLED生産ライン向けにドイツのInstrument Systems社から高速分光測定器「CAS 125」を発売し、製品ラインの拡充を図りました。