第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)当連結会計年度の総括

 当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢は、経済活動が前期の新型コロナウイルス感染症拡大期から回復基調でしたが、世界的な物価高と欧米を中心とした各国の金融引き締め政策により回復が鈍化しました。一方で、日本など回復傾向が続く地域もありました。こうした外部環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、1兆1,303億円と、2003年のコニカとミノルタの経営統合以来最高の売上高となりました。デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、インダストリー事業のセンシング分野などの増収により売上総利益を拡大させるとともに、販売費及び一般管理費の抑制や構造改革を行い、業績見通しの達成を目指してまいりました。一方で過去の買収を中心とした投資の精査を行った結果、ヘルスケア事業のプレシジョンメディシン分野に係るのれんなどにおいて1,166億円の減損損失を計上しました。これらの結果、当期の連結営業損失は951億円、税引前損失は1,018億円、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,031億円となりました。但し、減損損失を除いた営業利益は業績見通し150億円を上回る215億円となり、事業の稼ぐ力は着実に回復しております。

 当社は、2020年度より当期まで、中期経営計画「DX2022」の達成に向け取り組んでまいりましたが、達成できた点・達成できなかった点については以下のように認識しております。

 達成できた事項として、オフィス事業の営業利益回復に向けた構造改革を推進し、実現できたことが挙げられます。また、総固定費を2020年度水準で維持する目標に対して、現地通貨ベースで達成することができました。さらに、ポートフォリオ転換に関して、オフィス事業に続く柱となる事業構築を加速することで営業利益を2020年度から2022年度にかけて235億円増額させる目標に対して、262億円の増額を達成することが出来ました。この増額は、センシング・IJコンポーネント・プロダクションプリント・産業印刷・ヘルスケア分野の成長が寄与しております。

 一方で、達成できなかった事項としては、収益性の全社経営目標として2022年度営業利益550億円、営業利益率5.3%を設定していましたが、実績は951億円の営業損失(減損損失を除くと215億円の営業利益)となり、営業利益率は減損損失を除いても1.9%に留まりました。また、財務健全性の目標として、自己資本比率40%以上、ネット・デット/EBITDAを2.0以下(格付け評価用の指標)を目標としていましたが、実績は自己資本比率34.5%、ネット・デット/EBITDA△17.1と未達となりました。事業別にみるとオフィス事業については、営業利益を2018年度レベルに回復させる目標に対して、構造改革は推進できたものの、新型コロナウイルス感染症によるプリントボリューム減少やサプライチェーン混乱の影響に加え、当社グループ会社のトナー工場事故による製品の供給不足等により目標未達となりました。プレシジョンメディシン分野、DW-DXユニット、画像IoTソリューション分野等、新規事業と位置付けた事業について2022年度に黒字化とする目標としていましたが、236億円の営業損失(減損損失を除く)となりました。これは、プレシジョンメディシン分野で新型コロナウイルス感染症拡大時の来院患者数の激減及びそれ以降の医療スタッフ不足等による遺伝子検査数の伸長が減速したこと、製薬会社での治験が遅延したことに加え、遺伝子分野でパートナー企業との協業などの自社戦略の実行遅延などが影響しております。さらに、デジタルワークプレイス事業での高収益サービスの伸長の遅れと販売費及び一般管理費の増加、画像IoTソリューション分野においての半導体部材高騰による利益率悪化が、営業損失拡大の主な要因となりました。

 当社としては、2022年4月からの新経営体制において業績見通しの達成を目指してまいりましたが、3期連続での営業損失、4期連続の当期損失という結果を改めて重く受け止め、これまで当社が展開してきた施策を総合的に評価し、企業価値向上に資するものは継承し、変革すべき部分については速やかに判断することで企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)翌連結会計年度の経営方針

 翌連結会計年度における世界の経済情勢は、欧米を中心とした物価高と地政学的リスクやエネルギーコスト高騰に伴う景気減速のリスクは依然として継続し、経営環境の不確実性は高まると見込んでいます。また、当社が関連する市場の動向は、インダストリー事業においては、センシング分野のスマートフォン用ディスプレイ計測器は設備投資の端境期となりますが、一方で新たなディスプレイ技術の開発が進むと見ており、先行需要の取り込みに注力していきます。材料・コンポーネント分野の機能材料ユニットは、ITデバイス・スマートフォン用薄膜フィルムは市場在庫調整からの回復が2024年度にずれ込む見込みですが、テレビ用ディスプレイは、巣ごもり需要反動の市場在庫調整が一巡し、大型ディスプレイ向けを中心に回復することが期待されます。プロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリント・産業印刷ユニットでは、オフセット印刷からデジタル印刷へシフトする流れは不変であり、中期的には中堅・大手印刷会社を中心に需要をけん引して市場は成長すると見込んでいますが、欧米を中心とした景気減速影響による一部顧客との商談長期化のリスクも見ています。ヘルスケア事業のヘルスケア分野では、医療及びITサービスの質の向上や効率化に向けて、デジタル技術の利活用が進展していくことが想定されます。デジタルワークプレ

 

イス事業のオフィスユニットでは、リモートワークの増加に伴うプリントボリュームの緩やかな減少や、半導体不足に代表されるサプライチェーン影響の緩和による当期の受注残解消及びそれに伴う複合機販売台数減が想定されますが、オフィスソリューションの提供やモノづくり革新による更なるコスト低減、固定費削減等により資産効率を高めキャッシュを創出します。

 こうした市場動向を認識しながらリスクも織り込み、赤字からの力強い脱却と財務基盤の強化を図り、新たな中期経営計画で掲げた経営目標を達成しROE5%の早期達成を実現していきます。また、販売費及び一般管理費の圧縮などコスト削減を徹底するとともに、経営資産を適正化して事業活動の効率化を図り、高収益企業を目指して事業の選択と集中を実行していきます。

 

(3)2025年度に実現する事業構造

2023年度に入り、2025年度を最終年度とする新たな中期経営計画を策定しました。この新中期経営計画においては方針として以下3点を掲げています。

 

1. 事業の選択と集中を実行する。強化事業の中核を担うインダストリー事業では、事業横断的な事業開発を進める組織を立ち上げ、ターゲット領域での既存事業の成長と新規事業開発の加速を推進する。

2. 構造改革や間接機能の仕分け、販売費及び一般管理費の圧縮などコスト削減を徹底するとともに、経営資産を適正化し、事業活動の効率化を進める。

3. 全社横断機能の再編を実施することで、事業ごとのパフォーマンスを明確化し、継続的に事業の選択と集中を加速させる。

 

1.については、各事業を新たに「強化事業」「収益堅守事業」「非重点事業」「方向転換事業」と位置付けました。強化事業と位置付けたインダストリー事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア分野には経営資源を重点的に配分して利益率の向上を図り一層の成長を目指します。特にインダストリー事業ではターゲット領域をディスプレイ、モビリティ、半導体等に定め、強みである材料、光学、微細加工、画像等の「コア技術」をAI活用と事業をまたぐ技術融合により強化し、「顧客との共創」につなげ既存事業の一層の強化と新規事業開発を推進します。デジタルワークプレイス事業のオフィスユニットは、収益堅守事業として、中期的な市場の縮小を見据え、損益分岐点売上高の引き下げなどにより事業価値の最大化に努め、継続的なキャッシュ創出を担う事業とします。当社との戦略適合性を考慮して非重点事業と位置付けたプレシジョンメディシン分野は、社会的価値が大きいことは疑いなく、長期的に潜在的な成長力のある領域です。一方で、今後も継続的に成長投資が必要であるという認識に加え、当社の現状の財務状況を考慮し、現在準備を進めて時機を見計らっている米国株式市場への上場だけではなく、当事業の成長を支えることができる第三者への事業譲渡も含めた戦略的選択肢を早急に検討します。また、DW-DXユニット、画像IoTソリューション分野などの方向転換事業は、これまでの課題を踏まえ事業ごとに戦略の方向性を再設定し、事業構造の転換を図ります。

2.については、研究開発テーマ・人財活用のあり方・拠点の機能や構造等の見直しなどにより販売費及び一般管理費を中心とする費用を削減し、収益性を改善させます。また、棚卸資産や売上債権の管理を強化するとともに、厳選した設備投資と拠点の統廃合などにより資産効率の向上を目指します。これらにより、財務基盤の強化を図ります。

3.については、事業ごとの投下資本に対する成果を見える化するとともに厳格に評価し、継続的に経営資源の選択と集中を判断していきます。総資産回転率を改善させるとともに資本を増強することにより、環境変化に強い事業構造と持続的な利益成長が可能な経営基盤の確立を目指します。これらにより、2025年度をゴールとした財務指標としてROE5%以上を設定し、企業価値向上を実現していきます。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方 ―中長期の成長に向けて

 当社の考えるサステナビリティとは、「事業によって社会・環境の問題/課題を解決することで持続可能な社会の実現に貢献し会社が成長していくこと」です。社会・環境課題の解決を、経済合理性のある事業として実行することで、当社の持続的な成長を遂げることができると考えております。

 この考えに基づき、2020年には、10年後の2030年のあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、取締役会の決議を経て長期経営ビジョンを策定し、当社が向き合うべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

 

①長期経営ビジョン-2030年の社会と当社の存在意義

 当社は2020年に2030年の社会を考察し、世界人口の構造変化、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの産業利用拡大、世界構造の多極化、気候変動・温暖化の潮流から、「組織や個人が、爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会」が訪れると考えました。このような社会においては、組織や個人が求める豊かさが個別化・多様化し、それらの充足ニーズが高まる一方、資源不足や気候変動による影響、社会保障費の増大、雇用や創造への機会格差といった課題の解決が求められます。

 この世界観のもと、当社は独自のイメージング技術をコアに、ニーズと課題のトレードオフを解消し、「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」とを高次に両立することが当社の存在意義であると結論付け、「Imaging to the People」という長期の経営ビジョンステートメントに集約しました。

 当社発足以来不変の「経営理念」の下、価値創造の源泉としての企業文化・風土である「6つのバリュー」を基盤に経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」の実現を目指しております。

 

長期経営ビジョンとフィロソフィー体系(経営理念、経営ビジョン、6つのバリュー)

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②マテリアリティと価値創造プロセス

 当社は自社が向き合うべき重要課題として、「働きがい向上および企業活性化」、「健康で質の高い生活の実現」、「社会における安全・安心確保」、「気候変動への対応」及び「有限な資源の有効活用」の5つをマテリアリティとして特定しました。

 2030年に想定される社会課題からバックキャストして、当社の強みである無形資産(顧客関係、技術の融合、多様な人財)を融合させ、4つの事業群を通して製品やソリューションを提供し、顧客との共創を通じて生み出される顧客価値、結果としての経済価値であるキャッシュ・フローを創出し、環境・社会課題の解決のインパクトを拡大していくプロセス、これを持続的に繰り返していくことで企業の成長を図ってまいります。

 

価値創造プロセス

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③持続的な価値創造を支える無形資産

 次の3つの無形資産は当社が継続的に価値を生み出すための源泉となるものです。

 

●顧客関係

 当社は長年にわたり事業を通じて世界各地で顧客との関係性を築いてきました。デジタルワークプレイス事業では、オフィス事業で培ったグローバルの顧客基盤からの知見を活かすとともに、オフィスや病院、物流、製造、教育といった様々な業種・業態の現場の課題に向き合い、顧客のワークフロー改革や価値創造を支援することで、顧客との関係性をより強固なものとして拡大しております。インダストリー事業では、業界をリードする先進的な顧客との長期的な関係性により、時代の先を行く技術の実用化やバリューチェーンの変革など、当社が社会に大きな価値を提供する機会につながっております。

 

●技術の融合

 当社が根源的に持つ強みは、創業以来150年こだわり続けてきた「画像」にかかわる4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)です。これらにAI技術を組み合わせることに2014年から取り組み、介護支援サービスなどの事業創出や、製造現場の安全安心対策など様々な社会課題の解決に応用できる技術に進化させてきました。また4つのコア技術を事業をまたいで「融合」させることで新たな価値を創造する取組みも始まっております。プロフェッショナルプリント事業のデジタル印刷機に対する自動品質最適化機能「IQ-501」の搭載はその一例で、「光学」、「微細加工」、「画像」を組み合わせ、印刷作業の自動化によるワークフロー改革を実現しております。

 

●多様な人財

 当社の人財における優位性は、グローバルな事業展開や積極的なM&Aなどを通じて獲得してきた多様性にあります。これを活かすため、人事制度の整備とともに、ポテンシャルのある人財が挑戦できる機会の提供を進めており、特に女性活躍推進は、これを経営課題と位置付けて注力しております。同時にグループとしての一体感の醸成に向け、従業員の満足度調査をグローバルで毎年実施し、経営方針の浸透、職場の課題の抽出と解決を行っております。また前述のコア技術とAI、IoTの技術を組み合わせる人財の増強にも目標値を設定して推進しております。

 

(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針

 

①ガバナンス <サステナビリティ関連のリスク・機会を監視及び管理するしくみ(プロセス・統制・手続き)>

 当社では、取締役である代表執行役社長がサステナビリティマネジメント全体についての最高責任と権限を有し、その有効性について責任を担っております。代表執行役社長のもと、サステナビリティを担当する各役員がグループ全体のサステナビリティマネジメントを推進しております。

 

 重要なサステナビリティ課題に関する議論や意思決定は、ほかの重要な経営課題と同様に、社長及び執行役・執行役員が参加する経営審議会その他の会議体の場で行っております。

 サステナビリティ中期経営計画は、担当する各役員が策定し、会社全体の経営計画としてとりまとめ、経営審議会その他会議体での審議・承認を経て、取締役会の承認を得ます。またマテリアリティについても、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いを見直すローリングを行い、必要に応じて見直しを行い、経営審議会その他の会議体での審議・承認のうえ、取締役会の承認を得ております。

 サステナビリティを担当する各役員は、サステナビリティに関する中期計画を検討・推進する機関として、必要に応じて「推進会議」を設定しております。例えば、環境に関する中期計画を検討・推進する機関として「環境推進会議」を設定しております。環境を担当する役員が議長となり、各事業部門やコーポレート部門などの各組織長に任命された推進責任者が参加し、環境に関する中期計画、年度計画の審議、四半期ごとの進捗状況の確認やグループの環境課題に関する検討を行っております。

 

② リスク管理 <サステナビリティ関連のリスク・機会を識別・評価・管理するプロセス>

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。

 サステナビリティ関連の中長期のリスクは、マテリアリティをマネジメントするプロセスの一環として継続的に監視し、必要に応じてマテリアリティの改訂に反映させます。具体的には、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いに基づいて、必要に応じて見直すことで、その妥当性を継続的に担保しております。

 短期・中期のリスクを含む全リスクはリスクマネジメント委員会において管理しております。

 執行役及び執行役員の職務分掌に基づき、それぞれの担当職務ごとにリスク管理体制の構築と運用にあたっております。リスクマネジメント委員会は定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しており、抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(3)サステナビリティ課題に関する重要性の評価と優先順位付け <サステナビリティ課題を特定するプロセス>

 当社では2020年に、10年後の2030年にあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、社会・環境課題が当社に与える影響を機会とリスクの観点から評価し、そこからのバックキャスティングによって「今なすべきこと」を「5つのマテリアリティ」として特定しました。その際のプロセスは次のとおりです。

 

STEP1:課題のリストアップ

 GRIスタンダードやSDGsなどの国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンドなどを参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。ストックホルム・レジリエンス・センターの「SDGsウェディングケーキモデル」をベースとし、「ECONOMY(経済)」「SOCIETY(社会)」「BIOSPHERE(環境)」の関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。抽出にあたっては、当社が関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項などを考慮して進めております。

 

STEP2:課題の抽出と重要度評価

 リストアップした課題の中から、特に当社に関連性の高い分野を抽出したうえで、マテリアリティ分析(重要度評価)を行いました。当社のマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しております。マテリアリティ分析は、それぞれ「ステークホルダーにとっての重要度(顧客、取引先、株主・投資家、従業員など)」と「事業にとっての重要度(財務的な影響度)」の2軸で5段階評価し、優先順位を付けました。

 

STEP3:妥当性確認、特定

 経営企画を担当する役員は、これらのマテリアリティの評価プロセス及び評価結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定しております。特定したマテリアリティは、経営層による審議のうえ、取締役会による承認を受けております。またマテリアリティを定期的にレビューし、必要に応じて見直すことにより、その妥当性を担保してまいります。

 

(4)重要なサステナビリティ課題と、関連する機会及びリスク<特定したサステナビリティ課題の詳細と関連するリスクや機会>

 2022年時点でのマテリアリティと関連する機会とリスクは次の表のとおりです。

 当社の各事業はマテリアリティを意識した価値創造に取り組んでおります。例えば、インダストリー事業では、製造現場で熟練工の経験値に基づくスキルに依存していた検査工程を自動化・省人化することで熟練工の技術継承問題を解決すると同時に、最終製品の高品質化に貢献することで「働きがい向上及び企業活性化」に寄与しております。また、プロフェッショナルプリント事業では、適時・適量・適所での生産による輸送・保管・廃棄・中間材の低減といった顧客のサプライチェーンの変革を通じて「気候変動への対応」と「有限な資源の有効利用」に寄与しております。さらに、ヘルスケア事業では個別化医療の実現と早期発見・早期診断による「健康で質の高い生活の実現」に寄与しております。

 なお、サステナビリティに関するリスクは、マテリアリティのマネジメントやリスクマネジメントのプロセスに落とし込んで対応しております。

 

 

 

社会・環境課題

(2030年想定)

機会

リスク

働きがい向上

および

企業活性化

デジタル格差

人手不足の解消

雇用や創造への機会格差

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客の生産性の向上と創造的な業務へのシフトを支援

ダイバーシティを重視した環境づくりの停滞による、従業員の自律性、イノベーション力の低下

健康で質の高い生活の実現

医療や介護の持続性が低下

医療アクセスの制限

社会保障費抑制

イメージングと医療ITサービスによる早期診断、医療費抑制、QOLの向上への貢献

 

社会における安全・安心

確保

設備老朽化などによる労働災害発生のリスク

画像監視による企業や社会の安全・安心の確保

高度な計測・検査による顧客の品質確保

製品・サービスに起因する重大事故による企業や社会における損害の発生

気候変動への対応

脱炭素社会への移行による変化への適応

気候変動による社会・経済・生態系への影響

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会におけるエネルギー/CO2負荷低減

持続可能なエネルギーへの転換遅れによる競争力低下

ペーパーレスの進行に対応する事業転換の遅れ

異常気象によるサプライチェーンの寸断

有限な資源の有効利用

循環型社会への移行による変化への適応

資源枯渇による社会・経済・生態系への影響

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会における資源抑制・資源有効利用

持続可能な原料への転換遅れによる競争力低下

資源不足による部材コストアップと供給不安定化

 

 

各事業の取組みと関連するマテリアリティ(主要なもののみ)

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(5)重要なサステナビリティ課題への取組み及び指標

 

① 気候変動

 当社の環境経営は、「環境課題を解決していくことで、事業を成長させていくこと」をコンセプトとし、世の中から必要とされる会社になることを目指しております。地球規模での気候変動問題を解決するには、自社だけの取組みでは限りがあります。そのため、当社は、取引先、顧客を中心とするステークホルダーとの連携によって地球上のCO2削減に積極的に関わっていく「カーボンマイナス」の実現を目指しております。カーボンマイナスとは“自社責任範囲と定められるCO2排出量(スコープ1,2,3排出量)に比べて、責任範囲外でのCO2削減貢献量(スコープ1,2,3以外での削減)を多くすること”と当社では定義しております。

 また、近年の社会の要請を鑑み、自社責任範囲のCO2排出量において「ネットゼロ」を目指すことといたしました。ステークホルダーが社会的責任を果たす活動の支援をするだけでなく、自社の社会的責任を果たすことで、脱炭素化の効果を加速するとともに、当社とステークホルダーの結びつきを広げ、ともに事業成長していくことを目指しております。

〔ガバナンス〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス

 当社では、気候変動への対応をサステナビリティマネジメントの管理対象の一つと位置付けており、主要な目標値の設定や変更などの意思決定は、最終的には取締役会の承認を得て実施しております。具体的には、2008年、20017年、2020年、2023年に取締役会で目標値の設定や変更の承認を実施しております。

 サステナビリティマネジメント体制については、「(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針 ①ガバナンス」に記載しております 。

 

〔戦略〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響

 当社は気候変動リスクに対処するため、2023年5月に2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出ネットゼロを目指すビジョンを設定しました。気候変動に起因するリスクを事業リスクに融合し、気候変動対策にかかわる中期目標及び年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売などの事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じて目標の達成を目指しております。

 また機会の観点では、顧客企業や社会におけるエネルギー/CO2削減の貢献度を高め事業成長を図る「カーボンマイナス」の達成時期を2025年にさらに前倒ししました。創業以来150年かけて各事業が育ててきたコア技術を、AI活用(データ駆動型開発・生産)と事業領域を跨ぐ技術融合で“進化したコア技術群”として強化し、ワークフロー、サプライチェーンの変革によるエネルギー/CO2削減の貢献度を高め、インダストリー事業の成長と、社会に必要とされる企業となるための事業創出を進めてまいります。

 

<気候変動シナリオ分析の実施と結果>

 当社では、気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合と、気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合の2つのシナリオを想定し、2030年の視点で当社グループの業績に影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しております。

 シナリオ分析を行う際の枠組みとして、気候変動シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な気候関連リスク及び機会の特定、気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討、シナリオに対するリスク及び機会とその財務影響の検討と明確化、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しております。

 

●気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

調達・製造コストの上昇

ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

市場

評判

短期

生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入

化石資源・化石燃料の代替化

インダストリー事業

政策・法律

中~長期

CO2フリー燃料の導入検討、ICP(注1)の導入検討、調達戦略の最適化

新たな排出規制・税制への対応

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

政策・法律

短~中期

省エネ生産技術開発

製品開発コストの上昇

新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策・法律
市場

短期

環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応

製品サービスの需要変化による売上減少

オフィスにおける紙への出力機会の減少

デジタルワークプレイス事業

市場

短~中期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

(注1)インターナル・カーボンプライシング

 

気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

印刷産業及びアパレル産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

製品カーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献するハイパースペクトルイメージング(注2)インクジェット技術による生産プロセスの変革

インダストリー事業

製品/サービス

短~中期

(注2)可視光~非可視光領域の多波長計測技術。この技術により、物体の表面の色や外観の検査だけでなく、内部成分の検査まで可能となる。

 

●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

生産能力減少による収益減

気候パターンの変化に伴う自然資源の供給量不足・供給停止

インダストリー事業

慢性物理

長期

特定の自然資源に依存しない製品設計と開発

大規模気候災害の発生に伴うサプライチェーン分断

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

急性物理

中期

事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産及び供給

製品サービスの需要変化による売上減少

異常気象及び森林火災の発生に伴う森林資源へのアクセス制限

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

慢性物理

長期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 

気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献する画像IoT・センシングソリューション

インダストリー事業

製品/サービス

中期

 

「リスクと機会の分類」

移行リスク

政策・法律、技術、市場、評判

物理的リスク

急性物理、慢性物理

機会

資源効率、エネルギー、製品/サービス、市場、レジリエンス

 

「財務影響」の定義と評価基準

追加コスト又は利益減少 10億円以上

追加コスト又は利益減少 1~10億円

追加コスト又は利益減少 1億円未満

「財務効果」の定義と評価基準

利益創出 100億円以上

利益創出 10~100億円

利益創出 10億円未満

「時間軸」の定義と評価基準

長期

10年以上

中期

3~10年以内

短期

1~3年以内

 

 

〔リスク管理〕 気候関連のリスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。気候変動を含む環境リスクは、中長期的な観点から、「気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、低炭素社会へ移行した場合」と「気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合」の2つのシナリオで気候変動リスクの影響度と不確実性を評価し、管理しております。またこの環境リスクをグループ全体の経営リスクの一つとして位置付け、リスクマネジメント委員会において管理しております。

 気候変動への対応に関する計画や施策について、四半期ごとにグループ環境推進会議において審議するほか、リスクの変化度合いを見直すローリング作業を同会議にて毎年2回行い、リスクを再評価しております。計画の進捗状況については、グループ環境責任者から代表執行役社長に毎月報告されております。また重要な環境課題についても、グループ環境責任者から経営審議会その他の会議体、リスクマネジメント委員会等に報告されております。取締役会では、気候変動への対応に関する経営計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

〔指標と目標〕気候関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

 当社では、気候変動のリスクと機会を管理する指標として前述の「カーボンマイナス目標」、「製品ライフサイクルCO2排出量」に加え、「再生可能エネルギー由来電力比率」を定めております。

 「カーボンマイナス目標」においては、当社の製品ライフサイクルの範囲外において、私たちが排出するCO2よりも多くの排出削減貢献を社会・顧客で創出する「カーボンマイナス」の状態を2025年までを期限として実現することを目標としております。

 また、「製品ライフサイクルCO2排出量」には、スコープ1,2の全て(生産段階、販売・サービス段階のCO2排出量)と、主要なスコープ3(調達段階、物流段階、製品使用段階のCO2排出量)が含まれております。中期的には2025年までに2005年度比で61%削減、2030年までに70%削減することを目標として設定しております。2022年度は、約85万トン(スコープ1は15万トン、スコープ2は15万トン、主要なスコープ3は55万トン)で58%削減となりました。長期的には、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出をネットゼロにする目標を設定しております。

 さらに、「再生可能エネルギー由来電力比率」では、化石燃料を利用できなくなる将来予測を踏まえ、当社の事業活動で使用する電力における再生可能エネルギー由来の割合を、中期的には2030年までに50%以上に高め、2050年までに100%にする目標を設定しており、スコープ2の削減に寄与します。

 

② 人的資本

〔人財育成方針及び社内環境整備方針〕

 当社は、グローバルレベルで加速しているデジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりの中、社会から必要とされる会社として持続的な成長を続けるために、プロダクト主体のビジネスから、画像やデータを活かしたサービス主体のビジネスへと業容転換を図ってきました。

 デジタルの力を活かしてサービス主体のビジネスを展開するには、従業員一人ひとりが優れた知識や知見、独自のスキルを持ち、顧客の個々の課題を捉え、前例がない中で課題解決のために自律的な考えに基づく行動をとること、すなわち、プロフェッショナル人財であることが必要になります。

 そのために、ポテンシャルある人財を見つけ、タフミッションや育成プログラムを効果的に与えることで、育成スピードを加速するとともに、これらの人財の力を最大限引き出せる組織風土、すなわち、エンパワー力の高いマネジメントのもとで、誰もが安心して発言できる心理的安全性が担保された組織を創ることが重要です。これらを通して、「プロフェッショナル人財個々の持つ違い」が有機的につながり、違いが“力”になることで、グローバルでの熾烈な競争に打ち勝てると考えております。

 

 

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〔指標と目標〕

●女性活躍推進

 当社を取り巻く環境変化は過去と比較にならないほどダイナミックであり、複雑性が増しております。このような非連続な変化の中では、過去の前例が通用しない中で、スピード感をもって、そして質の高い決定を行うことが求められます。

 この決定の質を高める上で重要なことは、多様な人財が意思決定の場に入り、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の健全な議論を行ってこそ、多面的な視点で考え抜かれた決定につながると考えております。そのために、まずはグローバル共通の課題でもある女性の活躍推進を中心に据え、管理職に占める女性比率をKPIに据えて、長期的に取り組んでおります。

 とりわけ日本においては、世界の中でも女性活躍の取組みが遅れている状況を踏まえ、2016年以降は経営課題に位置付け、専門組織を創るとともに、女性が活躍できる組織風土醸成、教育研修の実施、ポテンシャルある女性社員の個別育成強化等、力強く推進しております。これらの活動により、活動開始当初は当社では3%前後の管理職に占める女性比率が直近では約10%となりました。

 但し、海外ではどんどん女性活躍が進んでおり、当社グループにおいても海外拠点を含むグループ全体の管理職に占める女性比率は20%となっております。この点は真摯に受け止め、活動をもう一段進めるため、2026年度に13%以上、2030年度に18%以上となるよう目標を掲げ、女性活躍推進に対する取組みを強化しております。

 

●画像IoT人財の増強

 現在の社会は、デジタル化の進展によって第4次産業革命といわれる大変革期にあり、AI・IoT・ロボットなどの技術が社会システムや働く人々の現場ワークフローを大きく変えようとしております。

 このような急速な変化の中、当社が世の中に必要とされる企業であり続けるためには、保有するコア技術を最大限に活かし、それをさらに進化させていくことができるDX人財、すなわち当社における画像IoT人財の強化がますます重要になっていくと認識しております。

 そのために、当社では従業員が計画的にITやデジタル技術のスキルアップを図れるように、9つのロール(人財タイプ)を定義し、それぞれのロールに対する育成体系を明確にするとともに、一定レベルのスキルを保有している人財のスキル認定を行っております。

 これらを通し、人財を可視化したうえで、画像IoT人財が自身の能力・スキルを実際に発揮できるよう、強化領域へのシフトや効果的なプロジェクトへの参画等、具体的な活躍の場の提供を進めております。

 これをさらに進めるために、KPIとして画像IoT人財を2023年度末には1,000人とし、2025年には各事業の技術者の半分以上を画像IoT人財とすることを設定し、活動を強化してまいります。

 

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●従業員エンゲージメントの向上

 経営の実行力を高めるためには、戦略を実行する現場(個人・組織)の課題を把握し、スピード感をもって改善していくことが必要です。

 そのために当社では、Global Employee Survey(グローバル従業員意識調査)を2021年に大きく見直し、単なるスコアの収集に留まらず、サーベイを通して従業員一人ひとりの声に耳を傾け、強みや課題を理解して改善策を実行すべく、“Your Voice”と名付けた調査をグローバルに実施しております。この調査では、回答者の匿名化されたコメントに対し、上司が回答するなど、双方向のやり取りを可能とするとともに、各職場のエンゲージメント向上に向けた優先課題をAIにより抽出し、即座に確認できる仕組みを取り入れております。

 これにより、各職場でのクイックなアクションが可能となっており、職場単位でのワークショップの実施や、経営からの情報発信機会の増加など、各現場の課題に即した解決策を打ち出しております。

 昨年の調査では、グローバルで3.5万人(85%)が調査に参加し、ベンチマークにはまだ届かないものの、その差は縮まりつつあり、各地域で改善が確認できております。

 今後、この活動をさらに進めるため、2025年に業界(同じプラットフォームを利用して従業員満足度調査を実施したグローバル企業におけるテクノロジー業界)平均への到達、さらに2030年には業界上位25%となることを目標に掲げ、グループ一体となって取り組んでまいります。

 

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③人権

〔人権に関する基本的な考え方と取組み〕

 人権は、全ての人間が持って生まれた権利であり、普遍的な価値の一つです。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」が採択されたことにより、人権尊重に関する企業の責任が明確になりました。 各国で人権に関連した法規制化が進み、UNGPsに沿った人権取組みの重要性が益々高まっております。

 これらの背景を踏まえて、当社グループは、UNGPsに基づき、コニカミノルタグループ人権方針を2021年9月に制定しました。本方針に基づき、当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者に対しても、人権の尊重を求めております。また2022年4月に改訂したコニカミノルタグループ行動憲章においても、事業活動における最も基本的な要件の一つとして人権尊重を規定し、グローバルの従業員を対象に毎年実施するコンプライアンス研修に組み込んで周知を行いました。

 当社は、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの事業活動や取引の結果、潜在的又は顕在的に負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題を抽出し、抽出した負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題に対して影響度を評価し、特に優先度が高いと思われる人権課題(当社グループ従業員の人権、サプライチェーンにおける人権、顧客の人権)を特定しております。評価は定期的に見直すとともに、特に優先度が高いと思われる人権課題に関しては、人事/法務/調達/品質/IT/サステナビリティを担当する各部門がそれぞれ目標設定、施策の検討・実施を行っております。

 また、人権に関する懸念を通報できる制度を活用して、人権侵害の申し立てがあった場合には、速やかに調査し、当社が人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはこれに関与したことが明確である場合、社内外のしかるべき手続きを通して是正策を講じてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

(1)当社のリスクマネジメント体制

 当社は、当社グループの事業活動に関する諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント委員会規則に従い、取締役会で任命された執行役及び執行役員が以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。

 当社グループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーショナルリスクについては、執行役及び執行役員の職務分掌に基づき各執行役及び執行役員が、それぞれの担当職務ごとに管理しており、リスクマネジメント委員会はそれを支援しております。また、リスクマネジメント委員会は、グループ経営上重要なリスクに関する抽出・評価・見直しの実施、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に行っております。

 

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当連結会計年度(以下「当期」)はグループ重要リスクとして、以下の2つのリスク項目を選定しました。

・サプライチェーンにおけるリスクマネジメント

・情報セキュリティにおけるリスクマネジメント

 

(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況

 当社は、リスクマネジメント委員会を定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しております。この委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。当期は、同委員会を2回開催し、主に米中対立や新型コロナウイルス感染症に起因するグローバルサプライチェーンの停滞及び半導体を中心とした米中ハイテク冷戦に対し、事業への影響度の高い国・地域に適用される制裁や新たな法規制等の定期的なモニタリングを実施しました。

 また、リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しております。

 なお、取締役会への報告は必要に応じて実施し、取締役会を構成するメンバーに月次の報告が行われております。

 地震・台風などの自然災害や火災・爆発などの災害が発生した場合、あるいは、事件・事故などの不祥事案件が発生した場合の対応を誤ると、企業価値の毀損につながる可能性があります。また、インターネットやSNS上の書き込みなどで、企業が批判を受けるリスクが高まっており、ウイルス感染などは一企業のみならず、社会への影響が懸念され、また伝播する速度も速いため、一刻も早い情報収集と、速やかな対応が必要です。さらに、当社の事業領域が製品の販売からITサービスへも広がる中、上記リスクは高まる傾向にあります。

 当社では、リスクが顕在化し企業価値に大きな影響を及ぼす状況を「危機(クライシス)」と定義し、クライシス発生時には上長経由で担当役員と危機管理担当役員へ報告し、さらに担当役員と危機管理担当役員は、代表執行役へ報告を行います。様々なリスクによって発生するクライシスに対し、当社は迅速・適切に対応するためにクライシス発生時の報告ルールを設け、執行役及び執行役員や当社子会社役員等に周知しております。その報告ルールに沿って、世界各地で発生した災害事故、その他のクライシスに関する情報を危機管理担当役員が集中管理しております。

 

(3)事業等のリスク

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクを以下に記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられるほかのリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 また、当社は、リスクを「組織の収益や損失に影響を与える不確実性」と捉えております。リスクを単にマイナスの側面からだけではなく、「機会」としてのプラスの側面からも捉えたうえで、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付けております。

 リスクへの対応と機会の考え方は、以降、個々のリスクの項目の中に記載しております。

 記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものであります。

 

 最初に、各リスク項目をリスクマップ上にプロットした図を掲載いたします。

 なお、「発生可能性」については、3年以内に発生する頻度・確率より評価し、「影響度」については、発生した際に営業利益へ与える影響より評価しております。

 また、「発生可能性」と「影響度」について、前連結会計年度(以下「前期」)より評価が変更されているリスクは、評価欄に矢印を用い、前期と当期の評価を記載しております。

 

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①経済環境に関するリスク

1)経済動向・市場環境

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループは、複合機やデジタル印刷システム、ヘルスケア用機器製品や遺伝子診断・創薬支援等、計測機器や光学部材、ディスプレイ材料及び関連サービス等を世界中の顧客に向けて提供しております。これらの事業の売上及び損益は各国の景気動向や事業環境に大きく影響を受けます。

 当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな回復基調が続きました。その一方で、世界的なエネルギーや食料価格の高騰、欧米各国の金融引き締め等による世界的な景気後退懸念など、経済を取り巻く環境は厳しさを増しております。

 米国経済は、個人消費や輸出が底堅く推移し、回復基調を維持しました。雇用情勢は堅調で、労働需給が引き締まり、人手不足と高い賃金上昇が続く中、金融引き締めによる経済への影響が懸念されております。

欧州連合(EU)の経済は、ウクライナ情勢による原油や天然ガスを中心としたエネルギー供給の制約や価格高騰、またそれ以外の物価も高止まりしていることから成長は鈍化しており、金融引き締めによる景気後退リスクが懸念されます。

 中国経済は、ゼロコロナ政策の解除を機に回復局面に入りました。また、厳しい移動制限が緩和されたことから国内の人流も回復、サービス消費が拡大し景気回復の原動力になりました。しかし、サービス以外の需要を見ると、不動産市場の低迷など脆弱さが残り、今後、景気回復の勢いを削ぐ可能性があります。

 今後の世界経済は、ウクライナ情勢や米中対立などの地政学リスクへの警戒感や世界主要国をはじめとする金融引き締めによる悪影響が想定されます。特に、米国やEUの金融不安が拡大した場合、経済活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、米国における経済安全保障の強化は、自国の半導体を中心とした技術力強化に大規模な予算を投じるほか、対外的な先端技術の流出を阻止する動きに拍車がかかる可能性があります。このような動きは、先端技術や重要物資を中心に既存のサプライチェーンに大きな影響を及ぼす懸念があります。

 こうしたリスクが発生し、各国の経済活動が停滞した場合、顧客の投資抑制や消費行動の変化を引き起こし、結果として当社の予想を超えた新規機器購入の減少、競争激化に伴う販売価格下落、在庫増加等、将来にわたり当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

2)為替レートの変動

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、高い海外売上高比率が示すようにグローバルに事業活動を展開しており、為替レート変動の影響を大きく受ける状況にあります。また、外貨建ての取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する在外営業活動体の換算差額も変動するおそれがあります。ユーロにつきましては、為替レートが1円円安に変動した場合、欧州での利益増により、営業利益に約6億円のプラスの影響を与えます。人民元も同様に、1円円安に変動した場合、中国での利益増により、営業利益に約12億円のプラスの影響を与えます。一方、米ドルについては、1円円安に変動した場合、調達・製造コスト増等により、営業利益に約3億円のマイナスの影響を与えます。

 ●対応策

 為替レート変動の影響を軽減するため、米ドル・ユーロ等の主要通貨では為替予約を中心としたヘッジを行っております。米ドルにつきましては、米ドル建ての調達と米ドル建ての売上を相殺することにより影響を軽減しております。また、多通貨建てのグローバルでのグループ間決済を、金融機関が提供するネッティングシステムを利用し行っており、子会社が持つ為替変動リスクを当社へ集約することにより為替リスクの集中管理及び効率的なヘッジを行っております。

 

 

②事業活動に関するリスク

1)デジタルワークプレイス事業 プリント環境の変化に関連するリスク

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 ●リスク

 先進国を中心に、情報共有の媒体としての役割が紙からタブレット端末やスマートフォン等のデジタル機器に急速に移行していることに加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に急速に拡大した新たなワークスタイルの定着により、企業におけるオフィスへの出社率が新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準に戻ることはないと考えられ、プリント出力機会は継続的に減少するリスクがあると考えております。こうした顧客動向に迅速に対応ができない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 先進国を中心に紙文書のデジタル化が進み、複合機のスキャン需要やプリント出力のセキュリティ対応や管理強化等のオフィスソリューションのニーズが高まっております。プリント出力とオフィスソリューションを組み合わせた定額課金の導入など、新たな発想によるサービスや課金スキームを提供できる可能性が広がると考えております。

 ●対応策

 当社グループでは、複合機を活用したスキャンサービス、ドキュメントマネジメントサービスの拡大を中心に、多様化する顧客のニーズと、オフィスにおけるプリント出力機会の減少リスクへの対応を進めております。プリント出力契約につきましても、顧客における請求管理、支払い業務や予算管理の簡素化のため、米国を中心に当社独自のワンレート・サービス契約(注)を展開しており、顧客より好評を博しております。また、プリント管理サービスにおいても、従来のオンプレミス型からクラウド型の対応を行うことにより、システム構築のコストを抑えることが可能となり、中小の顧客に対してもサービス導入が容易になりました。

 また、中国・インドをはじめとするプリント出力機会に成長余力のある国や地域においては、引き続きカラー複合機の設置拡大に取り組んでおります。

 以上のようなオフィスにおける出力減少のリスクに対するデジタルワークプレイス事業としての対応に加えて、当社グループとしてオフィスユニットと並ぶ収益の柱を構築していくために、インダストリー事業への積極的な投資を展開しております。

 

 (注)複合機のハードウェア・消耗品・プリント管理・セキュリティ対策を含むサービスを一括提供し、定額の月額課金サブスクリプションモデルにすることで、顧客の運用管理及び導入コストの削減を図る契約形態

 

 

 

2)各国・各地域の規制

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:中

 ●リスク

 当社グループの事業活動の多くの部分は、北米、欧州及びアジア諸国といった日本国外で行われており、その国や地域固有の法制、規制や承認手続きの影響を受けております。米国と中国の貿易摩擦に端を発する相互関税の引き上げ、技術輸出規制などの経済措置の動向には常に十分な注意を払っておりますが、将来、各国の政府や国際的枠組による規制、例えば税制、輸出入規制、通貨規制、個人情報保護規制、デジタル関税、その他各種規則等が新規に導入される、又は変更された場合には、これらに対応するための費用が発生し、事業活動に支障をきたす可能性があります。特に、個人情報保護規制については、巨大IT企業でのターゲティング広告への規制法案や欧州GDPRなど、各国で法制化、罰則が強化され、当社で推進しているDX関連事業への影響が高くなります。

 さらに、主要国における予期せぬ戦争状態等の発生により、それに対する各国の制裁措置が発動された場合、当社グループが予期しない法制、規制や承認手続きなどの変更に直面するリスクがあります。

 また、特に、当社グループのヘルスケア事業では、事業活動を行っている各国の様々な医療制度や許認可の手続きの影響を受けております。医療制度改革等によって、予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、その環境変化に速やかに対応できない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 新制度導入や制度改定による市場参入要件の新設・変更に迅速に対応することで、当社にとって販売機会創出あるいは事業継続強化の可能性があります。特に、環境法規制への対応、個人情報保護や情報セキュリティに関する規制への対応は、当社が強みとする環境経営やITサービス・ソリューションに追い風になるものと認識し、対応を進めております。

 また、ヘルスケア事業では、各国医療政策の情報収集、専門学会等との連携により対応を行なっております。医療政策による先端技術の導入は新たな市場創出につながります。

 ●対応策

 各国・各地域の法律・規制の動向、及び地政学リスクの変化には、常に十分な注意を払い、情報の収集に努めております。各地域の法務担当者と連携し、海外各地域の実情を把握し、必要に応じ、弁護士、コンサルタント等、専門機関の協力を得て、国あるいは地域ごとにリスクを判断し、対策を講じております。

 ヘルスケア事業は、近年では、診断向上や医師の負担軽減に役立つAIを用いた画像診断の利用が、新型コロナウイルス感染症をきっかけに増大し、かつ、医師偏在の課題解決につながる遠隔医療、未病・個別化医療のニーズを背景にした遺伝子検査等への期待が高まっております。また、がん領域、アルツハイマー病などの新薬開発においては画像診断の活用が重要であり、高度な創薬支援技術(イメージングCRO)が必要とされております。

 当社のグローバルな顧客基盤を活用し、先進国・新興国の各国の医療事情に応じた対応を進め、最先端の医療サービス実装に向けた取組みを進めてまいります。

 

 

 

3)次世代技術変化

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:中

 ●リスク

 温暖化による気候変動・デジタル革命といったグローバル規模での中長期トレンドの進行に伴い事業環境が大きく変貌する中で、革新的な技術は企業間の競争優位性に大きな影響を持つことが予想されます。当社グループにとって他社に先んじた技術革新は重要な競争優位の源泉ですが、競合他社が先行して類似技術や代替技術を開発し事業活用する可能性があります。グローバルかつ広範な視点で競争優位になり得る革新的技術を開発対象として見定め、迅速・柔軟に市場に提供できなければ、長期にわたり市場でのポジションを喪失する等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 はじめに、グローバルかつ広範な技術理解に基づいて、競争優位を確立し得るコア技術を的確に見定める能力が重要と考えられます。次に、対象となるコア技術にデジタル技術を駆使して迅速に開発する能力が、開発競争に先んじるためには必要です。さらに、事業に必要な技術を全て自社で用意するのではなく、社外と連携しエコシステムを自ら迅速に再編し柔軟に対応する能力が欠かせないと認識しております。

 当社グループの技術開発力と、各事業において優れた技術を持った企業との連携により、多様化する顧客課題に対応し解決策を導き出す機会を通して、社会に価値を提供できる企業への変革に取り組んでおります。

 ●対応策

 当社グループは、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術とIoT・AIに代表されるデジタル技術というユニークで幅広い技術ポートフォリオを有しております。研究開発拠点が相互に連携して、幅広い技術横断視点で競争優位を確立するためのコア技術を見定め、マテリアルズ・インフォマティクス等データ駆動型の開発手法を駆使して迅速にコア技術を開発してまいります。コア技術とIoT・AIを融合した「見えないものを見える化する技術」をプロダクトとして具現化、デジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、ヘルスケア、インダストリー各事業を通じて顧客に提供します。また、当社の技術戦略やコア技術資産を外部に積極的に発信し、環境デジタルプラットフォームや画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」を介して大学、研究機関、スタートアップ等の幅広いパートナーとエコシステムを構築してまいります。

 これらの対応によって当社グループは気候変動・新型コロナウイルス感染症の拡大・デジタル革命に伴う社会課題の解決に向けたイノベーションを起こし、次世代技術変化のもたらすリスクに対応してまいります。

 

 

 

 

4)新製品への移行

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループが事業展開する分野は、ハードウェア・ソフトウェアの急速な技術的進歩による製品・サービスに求められる機能の汎用化が早く、製品ライフサイクル期間内であっても性能・サービスの内容・機能の改善が求められる事業分野です。このため、顧客・市場ニーズに対応するため常に革新的な技術開発に挑戦し、多くのリソースを投入し研究開発を行っておりますが、新製品・新サービスへの移行には多くのリスクが内在しております。開発又は生産の遅延、量産初期段階での品質問題、製造原価の変動、新製品導入に伴う現行製品への販売影響、半導体・部品・材料の調達影響等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、競合他社から当社新製品・新サービスと類似する製品・サービスが先行投入される等、競合他社の新製品・新サービス市場導入時期により当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 新製品への移行に捉われず、取り組んだ技術開発の成果を順次、バージョンアップという形式でリリースするプロセス実行比率が増加しております。単に機能の向上や重要問題の対策に留まらず、バージョンアップを起点に製品のコストダウン、製造中止を含めた調達困難な部品・材料の切り替え、メンテナンス性の改善を積極的に進め、既存製品であっても常に競争力を失わない取組みを実施しております。

 ●対応策

 当社グループは、新製品・新サービスへの移行・展開において、開発初期の段階から量産に至る各ステップで、試作品・量産前製品・量産品、それぞれに対する製品仕様・要求品質・製造コスト、及び各種規制への準拠(安全・環境・セキュリティ等)を中心とした検証とゲート管理を徹底し、最大限の取組みを行っております。特に新製品への切替時期におきましては、開発・生産・品質保証の各部門が一体となった管理体制を敷き、顧客に不利益が生じないことを第一に、販売後のサービスを含め顧客価値を高める活動を行っております。

 また、各事業分野において顧客満足度を継続的に高め、顧客ロイヤリティを向上させる一方、市場変化の激しい状況下を考え、競合に対して競争力のある新製品・新サービスを計画的に市場へ導入し市場動向の観察・分析とタイムリーな計画変更を実施しております。例えば、プロフェッショナルプリント事業では、デジタル印刷をけん引し、ジャンルトップとなる競争力の高い商材・サービスを提供してまいります。また、ヘルスケア事業では、X線動画像を撮影し高度な画像解析処理をすることで、従来のX線静止画では得られなかった生体内の組織の動きの情報を診断情報として得ることができるX線動画解析システムを始めとした高付加価値イメージングにより、簡便に高度な診療を可能とする製品・サービスを提供してまいります。

 

5)他社との協業、企業買収等について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、事業競争力の強化あるいは効率化の観点から、他社との協業、資本提携・企業買収等を進めております。

 企業買収等に伴い、のれん及び無形資産を計上しており、定期的に減損テストを実施しております。事業環境の変化に伴い、買収対象会社に係る将来キャッシュ・フローの低下が見込まれた場合などでは、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 当社グループが実施する他社との協業や企業買収等は、事業競争力強化や効率化を目的とするものであり、事業ポートフォリオ強化にとって有効な手段であると考えております。双方が有する技術・製品・顧客基盤・人財等の経営資源を有効活用していくことにより、持続的な事業成長の機会が得られると認識しております。

 ●対応策

 当社グループは、他社との協業や企業買収等に際して、当社との戦略的適合性、計画の蓋然性、投資額の妥当性、リスク対応等の観点から投資評価を行ったうえで、投資の可否を見極めております。具体的には、投資回収期間及び投資額等の妥当性判断のため、投下資本に対する期待収益指標として事業別のハードルレート及び中期経営計画ごとの全社加重平均資本コストを基準の一つとして設定しております。

 また、投資実施後のモニタリングとして定期的に投資レビューを実施し、上記の加重平均資本コスト及びハードルレートの達成状況に加え、収益性、市場成長等の観点から投資案件ごとの当社企業価値への貢献状況を見極め、投資時点の計画からの変化に対しても迅速に対策を講じられるようにしております。

 

 

 

 

6)生産・調達等

発生可能性:高 → 中

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大 → 中

 ●リスク

 当社グループの主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業及びインダストリー事業では、コスト競争力強化と市場への迅速な製品供給のために海外での生産活動を継続しており、重要な活動拠点の一つに中国があります。中国におきましては、経済発展とともに法制面改革やインフラ整備等も進んでおりますが、法的な変化、労務政策の難しさ、人件費の上昇、輸出入規制や税制、環境規制の変更、台湾にかかわる問題等、予測困難な事態が発生する可能性があります。主力事業の生産活動の一部を中国で行っている当社グループにとって、これらのリスクに対処できない場合は、当社グループの経営成績及び成長戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、特定の製品、部品や材料、及びエネルギーを世界中の複数のサプライヤーから調達する方針を取っております。それらのサプライヤーに不測の事態が発生した場合、当社グループの生産及び供給能力に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの生産活動において使用する鉄やアルミニウム等の金属製品、原油を原料とする石油化学製品、レアアース等の希少天然資源等の原材料価格、及びエネルギー価格の高騰により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特にウクライナ情勢によって、原材料価格・エネルギー価格の高騰が長期化しており、影響がさらに続く可能性があります。

 さらに、世界的なインフレによる生活費上昇等の影響により、各国における最低賃金切上げによる労働者の賃金上昇リスクが高まっており、生産コストの上昇につながる可能性があります。

 なお、「発生可能性」は、半導体を中心とした部品や材料の調達が安定したこと及び中国におけるゼロコロナ政策の終了により当社グループの生産体制が安定したことから、評価を「高」から「中」に変更しております。同様に、「影響度」は、中国主要都市におけるロックダウンの発生リスクが低減されたこと及び感染症等の緊急事態が起きた際の複線型調達による対応や安全在庫を確保する体制を整えることができたことから、評価を「大」から「中」に変更しております。

 ●対応策

 当社グループは、生産に関するリスクへの対応及び事業環境の変化に対する柔軟性を向上させるため、日本、中国、マレーシアにおいて製品組立の生産拠点を展開しており、特に近年様々な面で高まりを見せる中国のカントリーリスクへの対応として、生産規模の大きい主力製品を中心に中国外生産の比率を高めております。

 主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業の消耗品における部品生産及び印刷用トナーの充填を行う拠点として、欧州・北米に当社生産拠点を展開し、消費地生産による需要変動への柔軟性を確保しております。

 主力調達地域である日本・中国・ベトナム・マレーシアにその活動に特化した部門を設置し、調達にかかわる各地域の規制・制限・変化等の情報を収集することで、対応の迅速化を図っております。

 また、サプライヤーでの品質・生産性向上を含めたコストの競争力を高めるためのコラボレーション活動を推進しております。具体的には、品質改善活動をサプライヤーと協業して推進すること、当社が保有する生産工程の自動化などの生産技術をサプライヤーに導入することで、生産性の向上と品質・コストの競争力を高めております。

 さらに、主要な原材料・電子部品について集中的な調達を行い、市況・市場・業界変動の中でも品質・供給・コスト競争力を維持する活動を行っております。ウクライナ情勢に起因する原材料価格・エネルギー価格高騰に対しては、商社・サプライヤーとの連携を密にした先読み対応を行い、調達リスクを回避するとともに価格高騰影響を最小化するよう取り組んでまいります。

 BCP管理体制を開発・品質保証・調達・生産で連携して構築し、2023年度からは新たな組織体制への変更により活動を強化してまいります。

 サプライヤーの材料調達状況、生産稼働状況、出荷等の物流状況を迅速に把握し、早期の意思決定による課題対応を推進しております。

 部品のエリア調達へのシフト加速と代替品の評価・検証から生産投入に至る一連の活動を、開発・生産・品質保証における最優先課題として対応を行い、リスク回避を継続しており、これらによる事業活動への影響を抑制しております。

 

 

 

 

7)グローバルサプライチェーン

発生可能性:高 → 中

発生する可能性のある時期:1年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループの生産、販売活動の多くの部分は日本国外で行われており、サプライチェーンもグローバルに展

開しております。各国・各地域の物流上の問題が当社グループのグローバルサプライチェーン全体に波及し、供給遅延により当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)における生産が多く、その拠点からグローバルに供給を行っております。中国・ASEAN各国で新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる活動制限が再び発生した場合、港湾・空港での荷役作業の停滞・混雑により物流が滞り、販売拠点への供給に大きなリスクを及ぼす可能性があります。

 一方、製品の輸出先である欧米主要国では、主要各港での港湾労使交渉の長期化・決裂によるストライキの発生や、内陸鉄道輸送の停滞・混雑、スエズ運河通行障害やライン川の水位低下によるバージ輸送停滞等が発生した場合、販売拠点の主要倉庫への供給・入庫リードタイムが長期化し、結果、販売拠点における在庫不足の発生によって顧客への納品遅延による売上機会損失等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、ウクライナ情勢が悪化した場合、欧州向け航空輸送サービス減少により、航空便を利用した緊急出荷に影響するリスクがあります。

 なお、「発生可能性」は、新型コロナウイルス感染症の収束と中国におけるゼロコロナ政策の終了等により、中国及びASEAN発の国際海上・航空輸送が安定してきたことから、評価を「高」から「中」に変更しております。

 ●対応策

 当社グループの主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業では、物流実態に応じた販売拠点の在庫見通しシミュレーションを適宜実施しております。将来の在庫見通しに応じて、各地域への供給量の振り分け、物流ルートを柔軟に変更するなど、販売への影響を回避しております。

 中国・ASEAN港湾課題については、新規フォワーディング会社のサービス利用・通常輸出港以外の代替港利用によりフレキシビリティを確保し、課題発生時には、生産拠点からの貨物の優先付けを行うことで、出港地側の供給リスク回避・低減に努めております。

 海上輸送については、従来取引があるフォワーダーに加えて、各地域のフォワーディング会社との新規取引を増やし、船のスペース・輸送用コンテナの確保に柔軟性を持たせるよう努めております。特に、北米ではカナダ・メキシコの港を荷揚げ地として新規に設定し、東海岸ルートとあわせて供給網のフレキシビリティを確保することにより、米国西海岸労使交渉決裂によるストライキリスクを最小化しております。

 また、ウクライナ情勢による影響回避策として欧州向けの航空貨物用スペースの一部をチャーターしており、定期的に航空輸送できる体制を構築しております。

 当社グループでは、必要なものを必要な時に必要なだけ必要なところへ供給できる、柔軟な物流体制を構築し、引き続き、顧客の満足度向上に努めてまいります。

 

 

 

 

8)製造物・品質責任

発生可能性:低

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 当社グループは、国内外のグループ会社や生産委託先にて厳格な品質保証体制を構築し、顧客に対して高い性能と信頼性を備えた製品及びサービスを提供しております。万が一、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が発生した場合、その欠陥に起因した損害に対して当社グループは賠償責任を負う可能性があり、また、その欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性があります。さらに、当該問題により、企業ブランドや製品ブランドが毀損され経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応策

 重大品質問題を起こさない仕組み・取組みとして、品質に関する責任と権限を担う執行役又は執行役員を議長とする「品質保証責任者会議」を設置し、グループ全体の品質マネジメントを統括しております。品質に起因するリスク極小化と顧客満足度向上に向けた方針・計画の推進・進捗確認、情報共有及び是正・改善に取り組んでおります。さらに、各事業では、品質課題についてPDCAサイクルを徹底することで継続的な品質向上に取り組んでおります。

製品品質にかかわる問題が発生した場合は、当社グループ内世界統一の「市場品質速報データベース」に情報を登録することが義務づけられており、登録された情報は即座に品質担当役員と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、過去に発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映を行い、再発防止に努めております。また、法的基準よりも厳しい独自の製品安全基準を設け、製品の様々な箇所について詳細に規定し確認を行っております。これらの施策をより確実に実施するため、「製品安全教育」をグループ内に展開し、品質マインドの定着に努めております。

 さらに、品質不正を起こさない仕組みとして、当社グループでは「品質不正予防ガイドライン」の策定・運用と定期的診断・監査を実施しております。継続的に、ガイドラインの内容や運用の見直し・強化、グループ本社としての指示や教育・啓蒙、各所における好事例共有などを実施し、運用の徹底を図っております。

 また、デジタル社会の進展や当社IoTサービス関連事業の拡大に伴い、セキュリティ事故のリスクも高まっております。当社グループでは、リスクの極小化に向け、サービス事業及びセキュリティ対応に関連する社内規程の運用を強化しております。製品セキュリティ事故発生時の対応と脆弱性への対策・予防として、製品の脆弱性に関する情報を全社で一元管理し必要な対応を推進するとともに、公的機関等とも連携するための全社共通組織として「KONICA MINOLTA PSIRT(注)」活動を展開しております。加えて、AIを活用した製品・サービスの販売も増えており、AI利活用における倫理的・法的な問題発生リスクにも備えた対応を展開しております。

 

 (注)KONICA MINOLTA PSIRT (Product Security Incident Response Team)、当社グループの製品脆弱性対応チーム

 

 

③その他のリスク

1)人権

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 2011年に国連人権理事会において「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」が採択されたことにより、各国で人権尊重に関する国別計画(ビジネスと人権に関する国別行動計画)の策定が進められ、例えば英国では現代奴隷法、ドイツではサプライチェーンにおける企業のデュー・デリジェンスに関する法律などが制定されています。グローバルで事業を行う当社グループとしては、このような各国の法規制が制定・強化された場合には、これらに対応するための費用が発生する、法規制に対応する社内整備に工数がかかるなどの可能性があります。また、このような予期しない事態に対応できない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに中国及びASEANに生産拠点、取引先を持つ当社グループでは、サプライチェーンにおいて児童や移民労働者が強制労働、長時間労働等の人権に関する負の影響を受けていることが確認された場合は、生産活動の停滞や企業ブランドや製品ブランドが毀損され、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 世界各国で人権デュー・デリジェンスを実施することが政府調達要件や製品ラベル取得要件として検討されており、これに対応することは当社グループにとって販売機会の創出につながる可能性があります。

 ●対応策

 当社は、グローバルに事業を展開する企業として、コニカミノルタグループ行動憲章、コニカミノルタグループ人権方針、コニカミノルタサプライチェーン行動規範において、事業活動における最も基本的な要件の一つとして人権尊重を規定しています。また、これらの方針に基づき人権デュー・デリジェンスを実施し、人権尊重に努めるとともに当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者に対しても、人権の尊重を求めています。こうした活動では国連グローバル・コンパクト(UNGC)、レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)行動規範等、グローバルに認知された団体の活動理念を反映させております。

 人権デュー・デリジェンスにおいては、UNGPsに基づき当社グループの事業活動や取引の結果、潜在的又は顕在的に負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題を抽出し、抽出した負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題に対して影響度を評価し、特に優先度が高いと思われる人権課題を特定しております。例えばサプライチェーン(地域住民、先住民を含む)に関しては、サプライチェーン上の強制労働、児童労働、安全衛生等の人権課題に対して当社ではCSR調達の展開をはじめ、責任ある鉱物調達問題への対応をグループ全体で推進する体制を構築することで、負の影響の防止又は軽減に取り組んでおります。

 CSR調達の展開においては、RBAのフレームワークに基づいて、自己診断アンケートを使ったCSR診断、CSR監査によるリスク評価と是正を行っております。自己診断アンケートを使用したCSR診断ではアンケートの採点結果により、A~Cの3段階にランク分けし、グループ生産拠点は総合ランクA、取引先は総合ランクB以上を目標として設定しております。目標ランクに達していても、労働(人権)を含め評価が低い項目があった場合は自主的な改善をお願いしております。2022年度において、コニカミノルタグループの生産拠点4拠点、取引先28社で診断を実施し、生産拠点は全て総合ランクA、取引先は全て総合ランクB以上となり、総合ランクB未満と診断されたハイリスクな取引先はありませんでした。

 また万が一、人権侵害の申し立てがあった場合には速やかに調査し、人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはこれに関与したことが明確である場合は、社内外のしかるべき手続きを通じて是正策を講じてまいります。

 

 

 

2)大地震・自然災害・感染症等

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

 ●リスク

 当社グループは、研究開発・調達・生産・販売等の拠点を世界各国に置き、グローバルに事業活動を展開しております。地震・火災・気候変動に伴う大規模な台風・洪水・森林火災等の災害、大規模な感染症の発生、また戦争・テロ行為・サイバー攻撃等が起こった場合、当社グループの設備等が被害を受け、一時的に操業が停止し生産及び出荷の遅れにより、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 特に、首都直下、南海トラフ等における巨大地震の発生においては、その影響度を検討して策定した「コンティンジェンシープラン」においても、被害想定を超えた規模で発生する可能性があり得ると考えられます。

 当社グループは、防災対策や事業継続マネジメントを今後も継続して推進してまいりますが、このような事態が発生した場合、機能停止、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害等による顧客へのサービスの提供や製品出荷等の停止等、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。

 ●対応策

 当社グループは、災害や、感染症の発生、戦争・テロ行為・サイバー攻撃等が起こった場合の情報を、危機管理担当役員が集中管理し、従業員の安全を最優先として適切な対応をとる体制を構築しております。

 巨大地震をはじめとした日本国内での災害に対しては防災中期計画に基づき、予防・減災対策、応急対策・初動対応、復旧・復興対策の観点でハード・ソフト両面からの対応実践力の強化を図っております。具体的には建物の耐震対策、通信・データ関連の主要サーバーの海外設置、安否確認システム・緊急時情報データベースなどのITによる被災時情報共有基盤の整備等の対策を講じております。大規模災害時には国内に有する約220のグループ拠点について緊急時の情報ネットワークを構築し、被害情報の迅速な収集と、必要な支援や対策を実施できる体制を構築しております。さらに、各拠点で従業員が災害時に命を守るための自律的行動をとれるよう、定期的に実践的な防災訓練や教育を実施するとともに、働き方の変化に対応すべく、ITツールを活用し、テレワーク時においても防災体制が機能するよう整備しております。

 また、当社グループでは、事業を継続し企業としての社会的責任を遂行するとともに、顧客が必要とする製品やサービスを安定的に供給するために「コンティンジェンシープラン」を策定し、主要消耗品の生産拠点の分散化によるリスクの低減、調達リスクの高い品目については代替手段の検討、在庫の確保等、対応策の有効性の確認と改善を図っております。各拠点においては、地域の自治体と連携し、自然災害発生時の避難場所や飲料水及び物資の提供等、地域貢献にも努めております。

 

 

 

 

3)気候変動・環境規制

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

 ●リスク

 世界全体が低炭素社会へ移行した場合、環境関連の法規制が厳格化するおそれがあり、追加的義務及び費用が発生する可能性があります。ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求が高まることにより、投融資を受ける機会及び販売機会の逸失、企業ブランドの低下につながる可能性があります。また、オフィスにおける紙への出力の減少、化石燃料や化石資源の代替化による製造・調達コストの増加なども当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 一方、世界各地で気候変動による物理的影響が顕在化した場合、気候災害による森林資源の被災等により、紙原材料の調達が不安定になり事業機会の損失につながる可能性があります。また、気候パターンの変化など気候変動の慢性的な影響が発現すると、原材料等の供給量が制限又は一時停止することで、当社拠点及びサプライヤーで一時的に操業が停止し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。

 加えて、大気汚染、水質汚染、有害物質の除去、廃棄物処理、製品含有化学物質、製品リサイクル、容器包装、土壌・地下水汚染等に関する様々な環境法及び規則の適用を受けており、それらの遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動、及び開発・販売活動にかかわる環境責任に伴う費用負担や賠償責任が発生する可能性があります。

 

 気候変動に関するリスクの詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 ●機会

 低炭素社会への移行が加速した社会では、顧客の気候変動に関する課題の解決に貢献することで、事業機会につながる可能性があります。当社グループが培ってきた画像技術とIT技術を融合させ、社会・顧客の移行計画の実現へ貢献する新たなサービスやソリューションを提供することで、売上増大を図ることが期待できます。

 中期的には、印刷産業やアパレル産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション、製品のカーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献するハイパースペクトルイメージング、インクジェット技術による生産プロセスの変革、企業の環境・サステナビリティ経営を支援するエコシステムを提供してまいります。

 短期的には、継続的な省エネルギー活動により自社工場での原価低減に寄与するとともに、環境・エネルギー視点で取引先やビジネスパートナーと連携することで新たなビジネス機会を創出できる可能性があると考えております。

 一方で、気候変動の影響が発現する場合においても、事業機会を生み出す可能性があると考えております。

 中期的には、異常気象・自然災害による影響を未然に防止し予防保全型インフラメンテナンスを実現する画像IoT・センシングソリューション、災害医療現場で活用できるヘルスケアソリューションなど、社会の新たな需要を取り込むことができると考えております。当社グループでは、こうした社会課題の解決に直結した事業を強化しております。

 ●対応策

 リスク低減策としては、当社グループでは生産工程の効率化を徹底して追求するとともに、生産技術の開発・改善を進め、CO2排出削減とコストダウンを同時に実現する「サステナブルファクトリー活動」を推進しております。また、自ら培った省エネ技術・ノウハウをデジタル化して提供し、サプライヤーと一体となりエネルギー削減に取り組む「カーボンニュートラルパートナー活動」を通じて、サプライチェーン全体でのエネルギーコスト削減とCO2排出削減の最大化を目指しております。また、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指し、国際リーダーイニシアチブ「RE100」に加盟しております。

 気候変動による物理的影響が顕在化した場合への適応策として、原材料の供給ルートを粗原料まで遡り把握し、安定供給リスクが高い原材料は、調達先の複数確保や代替材料の検討に取り組んでおります。また、デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業では、消耗品として供給する部品生産並びに印刷用トナーの生産及び充填を行う当社生産拠点を、日本、欧州、北米に複数展開し、消費地で供給できるレジリエンスの高いサプライチェーン体制を確保するよう努めております。

 機会最大化の仕組みとして、サステナブルソリューションを創出し、事業企画や商品企画の段階で気候変動の課題解決への貢献を最大化してまいります。

 

「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に関連事項を記載しております。

 

 

 

4)知的財産権

発生可能性:低

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

 ●リスク

 当社グループは、製品やサービスの開発の中で多くの技術あるいはノウハウを蓄積し、それらを保護するための知的財産権の取得に努めております。しかしながら、一部の地域・国では、知的財産権を保護する制度やその適正な運用が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産権を使用して類似製品を製造、販売することを防止できない可能性があります。

 また、当社グループでは他社の権利を侵害しないように製品等の開発を進めておりますが、見解の相違等により他社の知的財産権を侵害しているとされ、製品等の開発や販売に支障をきたす可能性や多額の損害賠償責任を負う可能性があります。さらに、現在当社グループがライセンスを受けている第三者の知的財産権の使用が将来差し止められる、あるいは不当な条件に変更される可能性があります。

 ●機会

 当社グループの事業、製品、サービス等により提供される顧客価値の源泉となる当社独自のビジネスモデル、技術、データ等の知的財産について、特許権等の知的財産権の取得、不正競争防止法によるノウハウ・データの保護要件を満たす管理等、その特性に応じた適切な保護・活用を行うことにより、知的財産を当社グループの持続的な競争優位性の維持、成長のドライバーとしております。なお、各国の産業構造や事業ライフサイクルに鑑み、当社で事業継続するよりも他社で事業化又は事業強化した方がよい場合については、当該事業に関連する特許権等の知的財産権を他社に譲渡又はライセンス供与することにより、産業界全体への貢献及び当社の収益向上を図っております。

 さらに、知的財産による社会貢献にも積極的に取り組み、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する持続可能な社会の実現を目指す技術移転のための国際的なプラットフォーム「WIPO GREEN」にパートナー企業として参画し、環境技術関連特許群をWIPO GREENに登録することでSDGsの推進に知的財産面から貢献しております。

 また、2020年4月には、新型コロナウイルス感染症の対策支援に向けた企業及び大学間の知的財産面でのプロジェクト「COVID対策支援宣言」に発起人として参画し、新型コロナウイルス感染症の診断、予防、治療等を目的とする行為について、特許権等の権利行使を一定期間行わないことを宣言しました。かかるプロジェクトを通じて新型コロナウイルス感染症のまん延終結へ向けた社会全体の取組みを知的財産面から支援しております。

 ●対応策

 当社グループは、技術等を保護する知的財産権(例えば特許権)を適切に取得・執行することが困難な国・地域においては、商標権等に基づいて、行政機関と協力し模倣品の押収や輸入差し止めを行う、運営業者と連携し模倣品取扱業者の電子商取引(EC)サイトへの出店差し止めを行うなど、様々な方法により類似製品の流通阻止に努めております。

 また、他社の知的財産権に関しては、製品開発の各フェーズにおいて入念な調査・確認を実施し、他社の知的財産権を侵害していないことを商品化の要件としております。万が一、見解の相違等により他社から知的財産権の侵害を指摘された場合やライセンス条件の変更等に備え、非侵害の主張やライセンス条件等の交渉・訴訟対応を行うための専門人財を当社知的財産部門に配置するとともに、経験豊富な国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応する体制を整えております。

 これらのリスク対応に加え、知的財産が他社参入障壁の有効なツールであるとの認識に基づき、当社グループの事業成長及び事業ポートフォリオ転換を知的財産面から推進するため、各事業の特性や事業ポートフォリオ上の位置付けに対応して事業ごとに知財戦略を構築し、戦略に沿った知財投資及び知財活動を実行しております。また、これらの知財戦略構築や知財活動の実効性を高めるため、知財人財育成のための戦略と施策を策定・実行し、専門知識・スキルとビジネスセンスを兼ね備えた知財プロ人財の育成に努めております。

 

 

 

5)人財確保

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:3年以内

影響度:大

 ●リスク

 当社グループの新規事業を中心とした将来的な成長には、優秀な人財の継続的な獲得が欠かせないと認識しております。特に、今後の当社グループの成長を担うインダストリー事業については、新たなサービス創出を構想し実行するマーケティング人財やプロダクトマネジャーの増強が必要となります。

 また、インダストリー事業の根幹を支える材料エンジニア、メカトロニクスエンジニアに加え、データを活用するサービスビジネスに欠かせないITエンジニアの増強が必要となります。計画どおりに人財の強化が進まない場合、インダストリー事業の成長が遅れ、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 当社グループは、様々な製品を創り出しており、多様な技術領域を有しています。こうした多様な技術は多くの技術系人財をひきつける強みになっております。今後、当社グループが成長していくためには、数多くの顧客やサプライヤーとの「win-win」の関係をさらに強固にし、データビジネス等の新規サービスビジネスを拡大していく必要があります。これらのビジネス拡大にはIT人財の獲得が必須ですが、製品とサービスとの組合せ、材料技術とIT技術の組合せに魅力を感じるIT人財は人財マーケットに多く存在していると考えております。

 また、当社グループが有する豊富な顧客は、その存在そのものが、当社グループのデータビジネス展開を有利に進める基盤となっており、データ分析に魅力を感じる優秀なIT人財を獲得できる機会につながると考えております。

 さらに、副業やテレワーク、コア時間のない裁量労働等、従業員に柔軟な働き方を認めている点も、当社グループの魅力として訴求できる点になります。

 ●対応策

 IT人財の獲得にあたり、データサイエンスやAI開発、アーキテクチャ開発等、多くの長期インターンシップを実施しております。この中で、社内研究開発テーマに取り組みジョブマッチングを向上させるとともに、当社の持つ魅力を対象者に感じ取っていただくことにより、人財獲得に成功しております。

 画像IoT開発にあたっては、比較的手薄であった関西地区に2020年10月、高槻サイトに「Innovation Garden OSAKA Center」を新設し、本格的な拠点展開を図っております。

 さらに、海外の大学から専門性の高い外国籍IT人財を10年以上にわたり継続採用しており、インド工科大学へのリクルート活動に加え、2022年度からはベトナムのハノイ工科大学、ベトナム大学等にも活動を開始しております。これらの活動は、優秀なエンジニアの獲得につながるとともに、日本人の技術者にも大きな刺激となっております。

 IT人財の育成では、社外からの採用のみに頼ることなく、社内育成にも力を入れております。社内におけるIT人財の認定制度を設け、各人財が目指すべきハードルを明確にしたうえで、それに対して必要となるスキル教育プログラムを用意しております。2024年度までに1,000名のIT技術者を育成する計画になります。

 さらに、人事制度を見直し、管理職制度の中に「エキスパート」職を新設しました。これにより、ITを含めた専門人財のキャリアアップの道筋を明確化しております。

 

 

 

6)情報セキュリティ

発生可能性:高

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

 ●リスク

 昨今、企業を狙ったサイバー攻撃の攻撃手法が高度化、巧妙化しており、中でも、ユーザーアカウントのログオン認証を窃盗し、集中管理されている社内ネットワークに侵入し管理者権限を奪取、不正操作を行うといった被害事例が、国内外で多数発生しております。

 当社グループにおいても、サイバー攻撃により管理者権限が奪取された場合、不正操作等により、技術、営業秘密、人事等にかかわる当社グループの秘密情報が第三者に漏えい、不正に使用される等の重大な情報セキュリティインシデントが発生する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ●機会

 当社グループは顧客のセキュリティ対策強化の支援にも注力しております。IT管理のサービスとしてネットワークやアプリケーションの脆弱性の監視・管理サービス、リスクアセスメントを行うとともに、複合機からの情報漏えいを防止するためのデータの暗号化、パスワード設定やログ管理の機能、設定状況の監視と通知サービスを行う「bizhub(ビズハブ)SECURE」をグローバルに展開しております。

 「bizhub iシリーズ」には、社内ネットワークへのウイルス拡散を防止するため、全ての文書・FAXデータのウイルスをチェックする機能を搭載しております。

 また、米国のIT管理サービスにおいては、顧客のファイヤーウォールに対して専門家が疑似ハッキングをすることにより脆弱性を診断するサービスも行っております。

 ●対応策

 情報セキュリティについて、ネットワークの監視を行い、多様化する攻撃によるサービス停止の早期発見に努めるとともに、定期的にネットワーク侵入テストを実施し、悪用される脆弱性を早期確認する対応を行っております。また、攻撃への備えとして、サイバー保険に加入し、事故発生時の対応フローを整備、当社グループ全体を網羅したセキュリティ推進体制において速やかに対処できるようにしております。

 新型コロナウイルス感染症の収束以降も在宅勤務を継続する従業員向けに、セキュリティに配慮した物理的な勤務環境を提供するために、外部からの不正アクセス防止のため暗号化通信によるセキュアなネットワーク環境と会社支給パソコン以外の会社のネットワーク接続制限を実現しております。情報漏えい等の注意喚起のため、在宅勤務における情報セキュリティの徹底について、従業員への教育等の対策を講じております。

 さらなる対応強化のため、包括的セキュリティマネジメント体制(Security Management Office)のもとグループ各社に対しグローバルセキュリティ基準を制定し、個社ごとのセキュリティ対応レベルの向上を通じグループ全体のセキュリティレベル向上を実現してまいります。

 

(4)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、当連結会計年度において、多額の減損損失を計上した結果、3期連続での営業損失となり、当連結会計年度末において、複数の金融機関と締結している一部のシンジケートローン契約等に付されている「2期連続して営業損失を計上しないことを確約する」とする財務制限条項に抵触しましたが、期末日後において、当該抵触を理由とする期限の利益喪失請求を行わないことについて該当する全ての金融機関より承諾を得ており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びにこれらの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

 重要な会計方針及び見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3 重要な会計方針」及び「同 注記4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

(2)経営成績の状況

 当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢は、経済活動が前期の新型コロナウイルス感染症拡大期から回復基調でしたが、世界的な物価高と欧米を中心とした各国の金融引き締め政策により回復が鈍化しました。欧州ではウクライナ情勢の影響によるエネルギー価格の高騰も加わり景気低迷が顕在化し、米国では底堅い個人消費や雇用環境により堅調を維持していましたが、3月には一部金融機関が破綻するなど不透明感が増して景気後退の懸念が継続しました。中国ではゼロコロナ政策に伴う活動制限により経済成長が鈍化しましたが、同政策解除に伴う活動制限の緩和により経済活動が再開しています。日本では、消費者物価は上昇していますが、経済活動の正常化を背景に、抑制されていた需要の回復が続き、景気は緩やかに持ち直し傾向にあります。

 こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、1兆1,303億円(前期比24.0%増)と、2003年のコニカとミノルタの経営統合以来最高の売上高となりました。地域別では、前期比で北米は約44%、欧州は約27%、中国は約13%、日本は約1%と全地域で増収となっています。事業別では、デジタルワークプレイス事業とプロフェッショナルプリント事業では、受注残高の解消が進み販売数量が増加した結果、ハード、ノンハードともに前期比で増収となりました。ヘルスケア事業では、ヘルスケア分野の日本と米国への販売が好調を維持し、プレシジョンメディシン分野は遺伝子検査数が増加したことにより前期比で83.1%の増収となりました。インダストリー事業は、機能材料ユニットは市場在庫調整の影響により減収となりましたが、センシング分野は過去最高の売上高となり、インダストリー事業全体では若干のマイナスとなりました。増収により売上総利益を拡大させながらも販売費及び一般管理費の抑制を継続し、主にデジタルワークプレイスとプロフェッショナルプリント事業で構造改革を行うなど、当期において等身大の経営を掲げ、業績見通しの達成を目指してまいりました。

 事業の選択と集中を加速していく中期経営計画を念頭に、過去の買収を中心とした投資の精査を行い、国際会計基準(IFRS)に基づく減損テストを実施した結果、主にヘルスケア事業のプレシジョンメディシン分野に係るのれんや、インダストリー事業の画像IoTソリューションユニットに係るのれんなど、当第4四半期連結会計期間(以下「当第4四半期」)において1,166億円の減損損失を計上しました。一方、デジタルワークプレイス事業のオフィスユニット、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業のヘルスケア分野、インダストリー事業のIJコンポーネントユニット、光学コンポーネントユニットは前期比で増益となりました。減損損失を除いた営業利益は業績見通し150億円を上回る215億円となり、事業の稼ぐ力は着実に回復しております。

 これらの結果、当期の連結営業損失は951億円(前期は222億円の営業損失)となりました。税引前損失は1,018億円(前期は236億円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,031億円(前期は261億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

セグメント別の状況は以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

 

(自 2021.4.1

(自 2022.4.1

 

 

 

 

至 2022.3.31)

至 2023.3.31)

 

 

 

 

億円

億円

億円

デジタルワークプレイス

売上高

4,654

6,002

1,348

29.0

事業

営業利益

△62

92

154

プロフェッショナル

売上高

1,947

2,526

578

29.7

プリント事業

営業利益

10

166

156

ヘルスケア事業

売上高

1,099

1,378

279

25.4

 

営業利益

△203

△1,122

△919

インダストリー事業

売上高

1,392

1,375

△16

△1.2

 

営業利益

185

108

△77

△41.7

小計

売上高

9,093

11,282

2,189

24.1

 

営業利益

△69

△755

△685

「その他」及び調整額

売上高

21

21

0

1.0

(注2)

営業利益

△153

△196

△42

連結損益計算書計上額

売上高

9,114

11,303

2,189

24.0

 

営業利益

△222

△951

△728

(注1)売上高は外部顧客への売上高であります。

(注2)売上高は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 事業セグメント」に記載の「その他」の外部顧客への売上高、営業利益は同記載の「その他」と調整額の合計であります。

 

①デジタルワークプレイス事業

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 オフィスユニットでは、当期の第1四半期連結会計期間(以下「当第1四半期」)において中国のゼロコロナ政策に伴う活動制限の影響を受けて工場の稼働率が低下していましたが、制限解除後の6月以降、生産能力を増強し回復に努めました。また、長期化していた製品輸送期間も改善しました。A3複合機の販売台数は、欧州、米国、日本など主要地域で増加し、前期比でカラー機は138%、モノクロ機は99%、全体では122%となりました。また、受注残高は、前期末の537億円、当期第3四半期連結会計期間末の364億円から減少し、当期末には158億円となりました(実勢レート換算)。消耗品やサービスなどのノンハード売上高は、地域に差はあるものの顧客企業での出社再開によるプリントボリュームの回復により、全体では増収となりました。これらの結果、オフィスユニットとしては前期比で増収となりました。

 ITサービスなどの提供を中心とするDW-DXユニットでは、顧客のIT基盤を一括受託するマネージドITサービスの販売が欧米での受注伸長により拡大するとともにリカーリング売上も増加し、前期比で増収となりました。

 これらの結果、当事業の売上高は6,002億円(前期比29.0%増)、オフィスユニットの複合機ハード販売数量及び生産数量増加に伴う売上総利益の増加が寄与し、営業利益は92億円(前期は62億円の営業損失)と増収増益となりました。

 

②プロフェッショナルプリント事業

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 プロダクションプリントユニットでは、デジタル印刷機の需要は引き続き堅調で、オフィスユニットと同様、中国のゼロコロナ政策に伴う活動制限解除後には生産及び出荷が回復し、当期の機器本体の販売台数は、前期比で、カラー機は130%、モノクロ機は115%、全体では125%となりました。また、受注残高は、前期末の87億円、当期第3四半期連結会計期間末の90億円から減少し、当期末には34億円となりました(実勢レート換算)。消耗品やサービスなどのノンハード売上高は、商業印刷会社でのプリントボリュームが欧米を中心に回復し、インド、アジア地域での需要も増加しました。

 産業印刷ユニットでは、欧州、日本でインクジェット印刷機「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1e」の販売台数が増加しました。ノンハード売上高は、印刷会社への短納期、多品種、小ロット需要の高まりを背景に、一般商業印刷(インクジェット印刷)、ラベル印刷、加飾印刷、テキスタイル印刷の全ての領域で伸長しました。 

 マーケティングサービスユニットでは、欧米での主要顧客の販売促進活動が活発化したことに加え、日本と韓国でのオンデマンドプリントの拡大により売上が伸長しました。

 これらの結果、当事業の売上高は2,526億円(前期比29.7%増)、プロダクションプリントユニットと産業印刷ユニットの売上増加に伴う売上総利益の増加が寄与し、営業利益は166億円(前期は10億円の営業利益)と増収増益となりました。

 

③ヘルスケア事業

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 ヘルスケア分野では、X線診断に用いられるDR(デジタルラジオグラフィー)の販売台数は、日本の開業医市場で拡大したほか、米国ではX線システム向けを中心に病院市場で増加しました。動態解析システムの販売台数は、日米の大学病院を中心に順調に進捗しました。超音波診断装置の販売台数は、日本の透析治療向けが増加し、整形外科・産科向けは堅調に推移しました。医療ITでは、医療画像管理や遠隔医療、病院と開業医の連携をサポートするITサービス「infomity(インフォミティ)」の販売が日本で拡大し、PACS(医用画像保管・管理システム)の販売が日本と米国で伸長しました。これらの結果、ヘルスケア分野は、前期比で増収となりました。

 プレシジョンメディシン分野では、遺伝子検査は、重点施策である生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査を中心に遺伝子検査の検査数が増加しました。創薬支援サービスは、米国の新型コロナウイルス感染症拡大時とそれ以降の医療スタッフ不足などの影響により、製薬会社による臨床試験の実施に一部で遅れが生じていますが、緩やかな回復傾向にあります。遺伝子検査、創薬支援サービスともに新型コロナウイルス感染症拡大前の売上高を上回りました。これらにより、プレシジョンメディシン分野は、前期比で増収となりました。また、当期においては、期初に当事業の事業方針を収益性重視に転換し、当第1四半期を中心に人員の適正化や経費削減などに努め、当第4四半期にはAmbry Genetics CorporationとInvicro, LLCの個社で四半期利益が黒字となりました。しかしながら、2017年の買収以降、競合環境の変化、米国での新型コロナウイルス感染症拡大時における予防的な遺伝子診断のための来院者の激減とそれ以降の医療スタッフの不足などにより、病院での診断や健康診断での遺伝子検査の需要成長が想定より大幅に鈍化していること、同じく製薬会社での治験が大幅に遅延したこと、加えて、他社との協業などの自社戦略の実行遅延など足元の市場変化を踏まえ、事業計画を見直しました。また、直近の金利上昇により減損テストに使用する割引率が上昇したことからも回収可能価額が大幅に低下しました。これらにより、今回、

 

当第4四半期においてのれん等の減損損失1,035億円を計上しました。

 これらの結果、当事業の売上高は1,378億円(前期比25.4%増)、ヘルスケア分野では堅調に利益を確保し、プレシジョンメディシン分野では売掛金の回収率の向上、人員最適化や経費削減により赤字幅の縮小に成果がありましたが、上述の減損損失計上により営業損失1,122億円(前期は203億円の営業損失)と増収減益となりました。

 

④インダストリー事業

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 センシング分野では、光源色向け計測器は、当第4四半期にディスプレイ投資が端境期に入った影響を受けたものの、年間では需要を着実に捉えて、前期比で増収となりました。物体色向け計測器は北米及びアジアでの需要がけん引し好調を維持しました。外観計測及びハイパースペクトルイメージング技術を活用した検査機器でも受注が順調に拡大し、販売が伸長しました。これらの結果、前期比で増収となりました。

 材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットは、前期における新型コロナウイルス感染症拡大による巣ごもり需要の反動で、当期に入りサプライチェーン下流の在庫調整が継続しているものの、当社の主力製品であるTVのVAパネル用位相差フィルムの販売は堅調に推移しました。一方でIPSパネル用位相差フィルム及びITデバイス、スマートフォン用薄膜フィルム販売は先に述べた市場在庫調整の影響を引き続き受け、全体としてフィルムの販売数量が減少し前期比で減収となりました。IJコンポーネントユニットは、主要市場である中国でのゼロコロナ政策解除に伴う活動制限緩和により経済活動が再開し、今後の市場回復への期待を含めた需要を取り込みました。また欧米では高精細プリンタ向けヘッドの販売が好調であったことで、前期比で増収となりました。光学コンポーネントユニットは、産業用途向けレンズの販売において、半導体不足による自動車産業での生産減少の影響を受けたものの、半導体検査装置用レンズの販売が伸長し、プロジェクタレンズ、交換レンズにおける市況回復により販売が堅調に推移し、前期比で増収となりました。これらの結果、材料・コンポーネント分野全体では前期比で減収となりました。

 画像IoTソリューション分野では、画像IoTソリューションユニットにおいて、前期から影響を受けていた半導体等部材の供給制約が当第4四半期に改善しました。またMOBOTIX AG(以下「MOBOTIX社」)と、当社の欧米販売会社が連携した販売推進体制を構築し、監視カメラ・アプリケーション・サービスのパッケージ化による大型案件を獲得しました。また、当第1四半期に買収したVAXTOR Technologies,S.L.において、車番認証ソフトウェア販売が好調に推移し、前期比で増収となりました。映像ソリューションユニットは、2021年10月及び2022年3月にそれぞれオープンした名古屋と横浜の直営プラネタリウム館での集客が寄与するなどにより売上が伸長し、前期比で増収となりました。これらにより、画像IoTソリューション分野全体として前期比で増収となりました。

 半導体等部材の供給制約及び主要市場である欧州の景気低迷に伴う影響等により、回収可能性を考慮し帳簿価額を回収可能価額まで減額した結果、MOBOTIX社の買収により生じたのれんの減損損失71億円(MOBOTIX社及びその子会社により構成される資金生成単位グループに配分したのれんの減損損失37億円、画像IoTソリューション分野に配分したのれんの減損損失22億円、QOLソリューションに係る事業に配分したのれんの減損損失11億円)を当第4四半期に計上しました。また、画像IoTソリューション分野では有形固定資産及び無形資産の減損損失として9億円を計上しました。映像ソリューションユニットでは、プラネタリウムの有形固定資産で減損損失4億円を計上しました。

 これらの結果、当事業の売上高は1,375億円(前期比1.2%減)、主に機能材料ユニットでの売上減少による売上総利益の減少、原材料やエネルギーコストの高騰及び為替によるコスト増加の影響などにより、営業利益は108億円(同41.7%減)と減収減益となりました。

 

(3)財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

資産合計             (億円)

13,381

14,137

756

負債合計             (億円)

7,766

9,138

1,372

資本合計             (億円)

5,615

4,998

△616

親会社の所有者に帰属する持分合計(億円)

5,498

4,874

△623

1株当たり親会社所有者帰属持分    (円)

1,113.71

986.87

△126.84

親会社所有者帰属持分比率     (%)

41.1

34.5

△6.6

 

 当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比756億円(5.7%)増加し1兆4,137億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物の増加629億円、棚卸資産の増加564億円、営業債権及びその他の債権の増加332億円、その他の非流動資産の増加141億円、のれん及び無形資産の減少952億円、その他の金融資産の減少53億円によるものであります。

 負債合計については、前期末比1,372億円(17.7%)増加し9,138億円となりました。これは主に、社債及び借入金の増加1,147億円、営業債務及びその他の債務の増加184億円、その他の金融負債の減少85億円によるものであります。

 資本合計については、前期末比616億円(11.0%)減少し4,998億円となりました。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比623億円(11.3%)減少し4,874億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上1,031億円、剰余金の配当による減少123億円、その他の資本の構成要素(主に在外営業活動体の換算差額)の増加321億円、資本剰余金の増加100億円によるものであります。

 これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は986.87円となり、親会社所有者帰属持分比率は6.6ポイント減少の34.5%となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

374

133

△241

投資活動によるキャッシュ・フロー

△509

△374

135

(フリー・キャッシュ・フロー)

△135

△241

△106

財務活動によるキャッシュ・フロー

21

843

821

 

 当期の連結キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー133億円の収入と、投資活動によるキャッシュ・フロー374億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは241億円のマイナスとなりました。

 また、財務活動によるキャッシュ・フローは843億円の収入となりました。

 そのほかに、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比629億円増加の1,805億円となりました。

 

 当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税引前損失1,018億円に、減損損失及びその戻入益1,166億円、減価償却費及び償却費752億円等によるキャッシュ・フローの増加と、棚卸資産の増加による減少468億円、営業債権及びその他の債権の増加による減少140億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは133億円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得による支出217億円、無形資産の取得による支出190億円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは374億円の支出となりました。

 

 この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは241億円のマイナス(前期は135億円のマイナス)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 社債の発行及び長期借入れ1,338億円、短期借入金の純増加額1,141億円等の収入と社債の償還及び長期借入金の返済1,315億円、リース負債の返済202億円、配当金の支払124億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは843億円の収入(前期は21億円の収入)となりました。

 なお、社債の発行及び長期借入れ1,338億円及び社債の償還及び長期借入金の返済1,315億円は、主に2017年10月31日に実行したハイブリッドローン(劣後特約付ローン)1,000億円について、2022年10月31日をもって全額を期限前弁済するとともに、同日に新たなハイブリッドローン(劣後特約付ローン)による資金の借入を実行したことによるものです。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

前期比

 

百万円

デジタルワークプレイス事業

345,860

137.5

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

14,647

88.6

インダストリー事業

125,368

96.8

 報告セグメント計

485,876

122.2

その他

0

合計

485,876

122.2

(注1)金額は、売価換算値で表示しております。

(注2)デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。

 

②受注実績

 当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。

 

③販売実績

 販売状況については、「(2)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

①資本政策の基本的な方針

当社は事業ポートフォリオ転換とDX as a Serviceビジネスモデルの変革に取組み、中長期的な企業価値向上に向けた持続的な成長を支えるための最適な資本政策を実施していきます。

特にキャッシュ・フロー創出力の強化と資本効率(ROIC)の向上を重視し、その実現に向けて、「成長投資の実施」「株主還元の充実」及び「財務基盤の強化」について、これらの最適バランスを目指した資本政策を推進し、資金効率の向上と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。

1)資本効率の向上

資本コストを重視し、資本コストを安定的に上回るROICの向上を目指します。このために、KM-ROIC及び投下資本収益(注)を全社資本効率向上のための両輪と位置付けており、両指標の最大化を通して、継続的な資本効率と企業価値の向上を実現していきます。

2)株主還元の充実

連結業績や成長分野への投資、キャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、配当を基本として利益還元の充実に努めます。自己株式の取得については、当社の財務状況や株価の推移等も勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断していきます。

3)財務健全性の担保

当社は、オフィス事業をその顧客基盤を活用したうえで「デジタルワークプレイス事業」へ転換することと、「計測・検査・診断」領域を新たな事業の柱として確立することの『二つの事業転換』を2025年までに完遂させることを最優先課題としておりますが、財務ガバナンスの強化、財務リスクの最小化、資金効率の向上、株主資本の充実により、財務基盤をより強固なものとし、積極的な成長投資を後ろ支えするという考え方そのものに変更はありません。

(注)KM-ROIC:投下資本収益率。事業利益を投下資本で除した比率。事業活動のために投下した資本を使って、どれだけ事業利益を生み出したかを示す指標。

   投下資本収益:事業収益から投下資本コストを控除した収益。どれだけ投下資本コストを上回る価値を創造したかを示す指標。

   投下資本収益の最大化によりROICの向上を図ります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。

②資金需要

当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。

③資金の源泉

当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。

④資金調達についての方針

当社グループは、円滑な事業活動に必要な流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針とし、主に金融機関からの短期借入及び長期借入や社債の発行により資金調達を行っております。社債については、国内社債発行登録枠を有しており、当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しております。長期資金の調達に際しては、償還や返済の時期を分散することにより借り換えリスクの低減を図っております。また、資金調達は主に当社が行っており、必要資金を関係会社に主にキャッシュ・マネジメント・システムを通じて供給することで資金調達の一元化や効率化を図っております。

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(注)2018年3月31日以降の残高には、ハイブリッドローンが含まれております。格付機関の評価により、資金調達額1,000億円の50%に対して資本性の認定をうけております。

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(注)ハイブリッドローンは、2027年10月以降の各利払日に元本の全部又は一部を返済期限(2057年10月)前に返済することが可能となっております。

 

⑤流動性

当社は営業活動によるキャッシュ・フローに加え、複数の金融機関との間で2026年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントライン及び一つの金融機関との間で2023年10月末を期限とする50億円のコミットメントラインを締結するほか、アンコミットメントベースの融資枠も有しております。

また、当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、経営理念である「新しい価値の創造」及び経営ビジョンとして「Imaging to the People」を掲げ、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術を高度化・融合化するとともに、ICT・AI技術を組み合わせることで“見えないものをみえる化する”技術として発展させました。そして、この独自技術を活用することで顧客の課題を解決する新たな製品・サービスを各事業セグメントで開発しております。

当連結会計年度においては、中期経営計画「DX2022」に基づいた基本方針に対応して、「画像IoT技術の強化」、「技術人財のトランスフォーメーション」を技術戦略の基本方針と定め推進してまいりました。

「画像IoT技術の強化」においては、エッジデバイス、画像AI技術、IoTプラットフォームからなる三位一体の技術群で構成される画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」を開発・整備し、人行動、検査、先端医療の重点3領域を中心に技術力強化を進めております。「FORXAI」を介してパートナー企業各社が保有するアセットを持ち寄り、お互いのエッジデバイスやAI技術をオープンにつなぎ、かつ素早く顧客にソリューションを提供する取組みに対し多くのパートナー企業から賛同をいただき共創(企業間連携による事業創出)が加速しております。

エッジデバイスの開発では、光学技術に材料、微細加工、画像技術も組み合わせ、目には見えないガス、物体の内部構造、従来の計測手法では測れない液体の状態変化などを“見える化”する独自のセンサーや、5G通信によるリアルタイム画像伝送を実現する低遅延カメラなどを開発してまいりました。また、技術パートナーが保有するデバイスが「FORXAI」に接続・連携することを認定する「FORXAIデバイス認定プログラム」を開始し、高速・高精度なAI画像処理技術を容易に体感できる開発キット「FORXAI Experience Kit」のラインアップを拡充しました。

「FORXAI」技術を活用し重点的に取り組んでいる人行動領域では、人の姿勢推定と物体検知の同時認識技術で当社評価における世界最速クラスのAIアルゴリズムを開発しており、当社の人行動認識に関するAI技術は高い評価をいただいております。

検査領域では、製造業における製品検査や働く人々の安心安全を実現する技術開発に取り組んでおります。画像AI技術を使ったセンシングとして、検査に使う波長領域を可視光領域からX線や近赤外領域まで拡張することで、物体表面だけでなく内部構造や成分まで検査することを可能にしました。そして、これらの技術を活用し、製造業における製品外観検査の高度化・自動化に加え、労働安全、在庫管理などにおける人手不足が起因の様々な現場課題の解決に貢献する技術開発にも取り組んでおります。

医療領域では、デジタルX線動画撮影システム(DDR:Dynamic Digital Radiography)によって得られた動画像に独自の画像処理技術によって「識別能の向上」、「動きの定量化」、「肺機能情報の可視化」を実現しました。造影剤を使用せず肺の血流動態を可視化する技術を開発し、低被爆な診断手法となる可能性を世界で初めて証明しました。

 

「技術人財のトランスフォーメーション」の取組みでは、画像AI専門のエンジニアとデータサイエンティスト、それらの技術を理解し最適なソリューションを開発できるソリューションディベロッパー、これら3つのスキル人財を画像IoT人財と定義し、その育成と採用強化を継続しております。2020年に500人程度だった画像IoT人財を2023年度末までに1,000人に増員する計画が予定どおり進捗し、現在800人を超えました。画像IoT人財は、既に各事業のDX推進や新規事業創出の場で活躍しており、今後の事業成長に必須の人財として継続的な育成強化と各事業における画像IoT人財の活用推進を進めてまいります。

 

研究開発により創出される技術(発明、アイデア、ノウハウ等)については、特許権の取得に加え、著作権法・不正競争防止法等の各種法制度や契約を利用することにより、知的財産として適切な保護・活用を行い、当社グループの競争優位性の維持、成長のドライバーとしております。

また、中期経営計画「DX2022」に沿った事業ごとの事業戦略と密接に連関した知的財産戦略を策定・実行し、事業の成長、収益力向上を知財面から強力に支援してまいりました。具体的には、各事業の成長戦略を実現するためのキーとなる技術、商品、サービスについて集中的に知財投資を行い、事業シナリオと連動した知的財産の形成、活用を行っております。

例えば、計測・検査・診断領域での事業成長の一角を担うヘルスケア事業においては、デジタルX線動画撮影システム・動態解析技術(以下「X線動態」)を、“新しい動きの診断”を提供するソリューションとして、その成長戦略の核としています。このX線動態については、その開発当初から、当社の独自領域である動態解析技術を中心に集中的な特許出願を行ってまいりました。その結果、下図に示されるように、現在では質、量ともに圧倒的なポジションを確立し、X線動態における当社の競争優位を持続的に維持する特許障壁を構築しております。

 

「X線動態領域」に関する日本特許(公開特許+登録特許) 2017年12月時点(左)と2023年4月時点(右)のスコアマップ

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(注)株式会社パテント・リザルトの特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて当社にて作成いたしました。円の大きさが各社の特許件数を、横軸が最も評価の高い特許の評価値を、縦軸が特許群全体の評価値を示しております。

 

持続可能な社会の実現をめざして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発、使用済み製品の廃材を高機能材料として再活用する技術、バイオマス由来材料を活用する技術の研究開発を進めております。複合機の本体や消耗品(トナーなど)に使う石油由来材料を再生材料へ転換し、プラスチック由来CO2排出量の削減を進めてまいります。バイオマス由来材料や廃材を複合機などの高機能材料として活用するためには、一般的に石油からのバージン材に比べて性能が低下するとともに製品品質が安定しにくいという課題があります。当社グループが長年使ってきたコア技術の1つである材料技術、成形加工技術を発展させ、材料開発、材料選択、加工技術の組み合わせにより、新しい樹脂開発を進めます。複合機への展開だけでなく、様々な企業と本技術を共有し実用化することで、連携の輪をグローバルに広げ、環境価値の効果を飛躍的に大きくしてまいります。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は638億円となりました。そのうち、デジタルワークプレイス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が278億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が113億円、インダストリー事業に係る研究開発費が140億円、その他事業及び基礎研究費用が106億円であります。各事業部門別の研究の目的及び研究成果は以下のとおりであります。

 

(1)デジタルワークプレイス事業

デジタルワークプレイス事業においては、複合機、ITサービス・ソリューション、「Workplace Hub(ワークプレイスハブ)」を組み合わせた、各種ハードウェア、ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施しております。

新世代カラー複合機では、いつでも、どこでも、だれでも働ける環境づくりに貢献する、「bizhub(ビズハブ)i Sシリーズ」を提供しております。「bizhub i Sシリーズ」は、場所に縛られないテレワーク中心の働き方と安心安全なオフィス出社中心の働き方、それぞれの働く場所に合わせた環境づくりをサポートします。複合機のパネルからアプリケーションダウンロードサイト「Konica Minolta MarketPlace」に接続し、アプリケーションをインストールすることで、操作性向上やクラウドとのスキャン連携などの機能を複合機に追加することができます。さらに、リモートメンテナンスによる常時監視・保守や自動アップデートにより複合機が最適な状態に維持されるほか、災害時の早期復旧が可能になるなど、将来にわたって顧客の事業継続をサポートするサステナブルな高品質サービスの提供とあわせて企業のDXを促進しオフィスのITサービスとのタッチポイントとなり、効率的なIT活用を支援しております。

さらに当社は、「Intelligent Connected Workplace」のプラットフォーマーとして顧客のDXを支援する技術を開発しております。

2020年に商用稼働した「COCOMITE(ココミテ)」はクラウドで提供する自社開発オンラインマニュアル作成・運用サービスです。人材育成・技能伝承の課題解決に着眼し、既知の業務マニュアルの作成・運用の非効率さの解消を切り口に新たに開発されました。 マニュアルの効率的な作成、管理を基本機能としてリリースして以降、顧客の声・アクセスログ解析から新機能開発や改善を重ね、オンラインマニュアルコラボレーションツールに進化、成長を続けております。

 

また、AI技術によって、教育分野における教員の働く教育現場の課題解決に貢献するべく、2019年から文部科学省の学校における先端技術の活用に関する実証事業に取り組んでおります。学習支援サービスや学びの分析サービスを搭載した教育機関向けのトータルソリューション「tomoLinks(トモリンクス)」によって、教育のDXを広く展開し、多様な子どもたちが誰一人取り残されることなく社会とつながる個別最適化された協働的・探究的な学びに貢献しております。

 

(2)プロフェッショナルプリント事業

プロフェッショナルプリント事業においては、プロダクションプリント/産業印刷の生産性と印刷品質、自動化・省人化・スキルレスを訴求し各種印刷機やサービスソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、顧客のDX支援によるプロセス改善・リモート化・分散印刷を実現してまいります。

クラス最高レベルの印刷速度の140ppmを実現したデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)C14000/12000」と、コンパクト設計ながら多彩な印刷業務の獲得を支援する110ppmの印刷速度の「AccurioPress C7100」」を提供しております。全てのプロダクションプリント製品に装着できバリアブル印刷の自動検査機能を可能にする自動品質最適化・検品ユニット「IQ-501」や、多様な後加工を自動化する多機能トリマーユニット「TU-510」をインラインオプションとして提供しご好評をいただいています。さらに、複数のプロダクションプリント機の情報を一括で可視化し管理効率化と工程の継続的な改善を支援するソリューション「AccurioPro(アキュリオプロ)Dashboard」を発売いたしました。これにより「あたらしい生産時間」の創出が可能となり印刷事業者のビジネス拡大に貢献いたします。

産業印刷ユニットにおいては、多様なメディアへの印刷と高い生産性、優れた画質と信頼性で新たな印刷ビジネス領域を切り開く「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1e」を提供し、様々なアプリケーション(出力用途)や市場からのニーズに対応しております。また、ラベル印刷では使いやすさと導入コストでご好評をいただいた「AccurioLabel(アキュリオ ラベル)230」の後継機として、「AccurioLabel 400」を発売開始いたしました。当社初の白トナーを搭載し、自動品質最適化ユニット「IQ-520」を導入することで常に安定した画像品質を保ちます。

 

(3)ヘルスケア事業

ヘルスケア事業においては、デジタル診断にフォーカスし、データサイエンスの力をフル活用して「早期診断」と「個別化医療」を実現することで、患者様個々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を追求するとともに医療費の削減に貢献するべく研究開発を推進しております。

ヘルスケア分野では、“見えないものをみえる化する”高度なイメージング技術を重要な柱に据え、IoTプラットフォームにAI技術を活用した診断支援機能や患者ポータル等様々な高付加価値サービスを搭載・展開するための研究開発を推進しております。

プレシジョンメディシン分野では、遺伝子、タンパク質、細胞、臓器に至る全身をデジタル化し、AIを駆使してバイオマーカーを抽出し適切な診断と創薬支援に貢献し、プライマリケア・個別化医療の領域でデータ解析による疾病メカニズム解明のサービスビジネスを展開するための研究開発を推進しております。

当連結会計年度においては、ヘルスケア分野では、X線画像診断に“動き”の情報を付加した「X線動態解析」を「診断学」へ進化させるため、デジタル症例集「DDR (Dynamic Digital Radiography) Atlas」の第一弾として、正常例を収録した「DDRAtlas Ver. 1.0」を会員制Webサイトにて公開しました。また、九州大学大学院医学研究院により、当社のデジタルX線動画撮影を利用して造影剤を使用せずに肺の血流動態を可視化する技術が開発され、その研究成果が学術雑誌「Radiology」に掲載されました。世界中の医師や放射線技師、医学研究者の方々と新たな価値の共創を進め、動態画像に『こういう活用ができる』という意味づけをしていただき、医療界の課題解決と進歩・発展に貢献してまいります。カセッテ型デジタルX線撮影装置では、軽量化、低線量・高画質、把持性を向上した「AeroDR swift(エアロディーアール スウィフト)」にラインアップを追加し、17×17インチサイズを開発・発売しました。17×17インチサイズでも片手でハンドリングしやすく、回診撮影の持ち運びによる疲労低減に寄与してまいります。

プレシジョンメディシン分野では、子会社のコニカミノルタREALM(株)が、DNA及びRNAの2類の遺伝子情報を解析する機能を併せ持つがんゲノムプロファイリング検査用システムとして、厚生労働省より「GenMineTOP がんゲノムプロファイリングシステム」の製造販売承認を取得しました。本システムを用いて精緻ながん診断を推進することで、患者様一人ひとりの特性を鑑みた適切な治療の実現等を通じて、患者様のQOL向上に寄与してまいります。

 

(4)インダストリー事業

インダストリー事業においては、センシング技術、材料コンポーネント技術、画像IoT技術を活かしたソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、産業界のバリューチェーン変革推進で顧客と社会に貢献するため、産業のモノづくり最適化と安全・安心を提供してまいります。

センシング分野においては、強みである光・色・外観の計測技術を基盤として、ICT領域や自動車領域に向け、高品質な製品・ソリューションを提供しております。

今後市場の成長が見込まれるAR/VR分野においては、研究開発を支えるソリューションの提供を拡大しております。

ICT端末のディスプレイの高精細化に伴う高解像度での計測需要や、顔認証などで用いられるVCSEL等レーザー技術における計測需要に対して引き続き応えてまいります。

自動車の外観計測においてはトンネル型の塗装欠陥検査やすき間・段差計測の装置に、キズ・へこみ等の検査機能を追加できるようにしました。

これにより、それぞれの検査工程にてフレキシブルに顧客需要に応えることができます。

また、AIを用いた塗装欠陥分類については、光学シミュレーションをベースにしたデータ拡張技術により、発生頻度の低い欠陥でも短期間で学習モデルの作成が可能となりました。

ハイパースペクトルイメージング(HSI)技術においては、リサイクル分野において中赤外線(MWIR)分光カメラで、識別と分類が困難とされる黒色プラスチックの仕分けを実現しております。

材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットにおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルム向けに、従来のTAC製品に加え、新樹脂フィルム「SANUQI」(COP系)、「SAZMA」(アクリル系)等を新プラットフォームとする2.5mの超広幅品等の高付加価値商品の販売及び開発を行っております。また原材料の使用量を減らすことができる薄型フィルムや、サプライチェーンの環境負荷やロスの低減が可能な長尺フィルム商品など、環境に配慮した商品の準備を進めております。

光学コンポーネントユニットにおいては、成長領域である半導体検査用レンズに欠かせない超高精度加工技術開発や移動体に搭載するセンサーデバイス用レンズ及び観測観察用レンズ等の小型レンズ開発・製品化に取り組んでおります。光学技術・コンポーネント技術に材料技術を掛け合わせた高機能レンズの開発に注力し事業化推進を図ってまいります。

IJコンポーネントユニットにおいては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、サイングラフィック領域からプリントオンデマンドの商業印刷領域、そしてプリント基板などの工業用途への拡大に向けて、さらなる製品ラインアップの拡充に取り組んでおります。

画像IoTソリューション分野では、製造業・防災・セキュリティ等の領域を中心に、AIによる予知保全、安全安心確保に向けたモニタリング・ソリューションを展開しております。

当連結会計年度においては、ガス漏えい検知技術にAI解析を掛け合わせ、従来捉えられなかった煙の発生を、いち早く、正確に検知可能なアプリケーションを開発し、AIカメラとの組み合わせによる「火災予防ソリューション」として展開しております。

さらに、米国では脱炭素/境負荷低減の機運の高まる中、米国環境保護庁(EPA)による規制強化の一環であるメタンガス排出量報告フレームワーク「OGMP2.0」等への対応をガス事業者に求められており、ガス漏えいを定量化する「流量推定技術」を搭載した「ガス漏えい検査システム」を提供することにより、顧客の課題解決に取り組んでおります。