第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、追い求めていくべき不変の基本的価値観である「自然と健康を科学する」という経営理念と、社会から必要とされ存在し続ける目的である「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を基本的な理念と位置づけ、理念に基づく経営を実践すべく、諸施策に取り組んでおります。

 

(2)経営戦略等

2016年度-2021年度の中期経営計画は、長期的な経営ビジョン(2021年ビジョン)を実現するための中期経営計画と位置づけ、「“漢方”のイノベーションによる新たな価値の創造」をテーマとして掲げています。

具体的な戦略課題としては、①漢方市場の拡大と安定成長、②収益力の継続強化とキャッシュ・フローの最大化、③中国における新規ビジネスへの挑戦、の3点をあげています。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、2016年5月12日、長期的な経営ビジョン(2021年ビジョン)に基づいた、6カ年(2016年度-2021年度)の中期経営計画を公表しました。本計画においては、目指すべき方向性等を示す数値目標を設定しております。

 

2018年度

2021年度

売上高

1,200億円

1,350億円

営業利益

140億円

190億円

売上高営業利益率

11.5%

14%

親会社株主に帰属する

当期純利益

100億円

130億円

EPS

140円

185円

ROE

6%

8%

※ 上記数値目標は、中期経営計画策定時において入手可能な情報及び一定の条件をもとに設定したものであり、実際の業績と異なる可能性があります。

 

中期経営計画(2016~2021年度)の概要

戦略課題①「漢方市場の拡大と安定成長」

漢方医学に対する医療関係者のニーズが多様化する状況において、エビデンス・ガイドライン・漢方医学的使い分け等の情報に基づく適切な情報提供活動を実施いたします。

・大学病院、臨床研修指定病院等においては、重点領域の専門医等へのエビデンスを中心としたプロモーション活動により市場拡大を図る。

・開業医・診療所等においては、漢方医学的なプロモーション活動によって、既存先を中心として漢方習熟度を高めていただく。

・大学医学部、臨床研修指定病院等における漢方医学教育の充実に向けた支援活動を継続する。

・エビデンス・パッケージ(臨床的EBM・作用機序・副作用発現頻度調査・薬物動態・医療経済学的データ)の充実により、育薬処方とそれに続く戦略処方であるGrowing処方の治療ガイドライン掲載を目指す。

・新技術(IT技術・新分析法・ネットワーク解析等)を活用した漢方研究により、エビデンス構築の新基軸を確立する。

 

戦略課題②「収益力の継続強化とキャッシュ・フローの最大化」

・自社管理圃場の継続拡大等により、生薬の価格安定と品質保証のさらなる強化を図る。

・既設生産基礎能力の向上、新生産技術の継続導入・拡大等により生産能力の向上を図る。

・グループサプライチェーンの最適化等により、収益力・キャッシュ創出力の強化を推進する。

・販管費において中長期的な視点から経営の意思を反映した効率的な資源配分を行う。

 

戦略課題③「中国における新規ビジネスへの挑戦」

・長年にわたって生薬の提供を受けている中国、中国国民の健康への貢献をも意図して、中国市場の新規ビジネスにチャレンジする。

 

(4)経営環境

近年、超高齢社会において、医療費の増大にともなう各種制度変更、地域医療のあり方や、生活者のセルフメディケーション意識の向上など、製薬会社が直面する課題は少なくありません。

国の施策においては“漢方”への期待と役割が大きくなっています。2015年、厚生労働省より公表された「医薬品産業強化総合戦略」の中のひとつに、漢方薬は『わが国の医療において重要な役割を担っている』と明記されました。また、同じく厚生労働省より公表された「がん対策加速化プラン」では、支持療法の開発・普及のために実施すべき具体策として、『術後の合併症・後遺症を軽減する観点から』研究を進めることのひとつに、漢方薬を用いた支持療法があげられています。

当社は、このような政策に準ずる施策はもちろん、「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」や総合診療医・在宅医療の推進などを含む「地域包括ケアシステム」の構築などの医療政策、人口動態にともなう疾病構造の変化(高齢者疾患、女性特有の疾患など)を踏まえた取り組みを進めてまいります。

また、2016年に発足した「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」(日本東洋医学会・日本漢方生薬製剤協会共催)において、医療関連のオーソリティによって検討された「保険医療の現場における漢方治療の現状と今後の期待や課題」が、提言書として取りまとめられました。当社は、日本漢方生薬製剤協会の活動を通じて、この提言を実現するために、産官学共同の課題として取り組んでおります。

2017年12月開催の漢方の新たな展開と研究の進捗発表を目的とした研究会では、がん支持療法、高齢者医療や多成分系医薬品の承認申請ガイドラインなどのテーマについて講演があり、議論と意見交換が行われました。

当社は、このような“漢方”を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、中長期的な観点から事業計画を立案し、活動していくことにより、国民医療に貢献してまいります。

 

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

① 中期経営計画に基づく取組み

「(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。

 

② 品質の追及・安全性重視体制の更なる強化

当社は、品質と安全性を追求し、さらに向上させていくという品質重視体制の考えを基本として、その仕組みを整えております。以下、その重要な仕組みについて、さらなる運用の改善と強化に取り組んでまいります。

1)「ツムラ品質マネジメントシステム」

当社は、品質方針のもと、品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステム」の体制を整え、品質を重視する取り組みを推進しております。このシステムは、ツムラグループ全体を取り込む包括的なものであり、これによって経営陣の関与をさらに明確にしました。

また、グローバル化(PIC/S※対応を含む)や法改正などにも適正に対応できる仕組みとなっております。

※ PIC/S:

Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Schemeの呼称。

医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み。

 

品質方針

ツムラグループは、価値創造企業を目指し、"KAMPO"で人々の健康に寄与するため、以下の品質方針を定めます。

・高品質かつ安全で信頼される製品を安定的に供給します

・医薬品に関する薬事関連法規を遵守します

・お客様の声を聴き、継続的な品質改善に努めます

・安全な生薬の安定確保を実現します

・全役職員に対し、適切な教育を実施し、高い意識を持つ人財を育成します

・これらを実現するため、経営資源を適正に配分します

2)「ツムラ生薬GACP※」

当社は、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにするため「株式会社ツムラ 生薬生産の管理に関する基準(ツムラ生薬GACP)」を制定し、運用しております。

ツムラ生薬GACPは、「ツムラ生薬GACPガイドライン」「生薬生産標準書」「生薬トレーサビリティ」「教育・監査・認証」で構成されています。

そのひとつである生薬トレーサビリティは、原料生薬の生産地から生薬加工場に納入される各段階で、栽培・加工・流通・保管などの記録を収集・保管し、情報の追跡と遡及を可能とする仕組みであり、漢方製剤の製造工程、流通過程の履歴情報と併せ、医療機関から原料生薬生産地までの全履歴情報の追跡・遡及を可能としています。

今後も、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにし、安全で安心できる生薬の安定確保のために、ツムラ生薬GACPを確実に運用してまいります。

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループにおきましては、これらの事項に対しまして、発生を回避すべく対応してまいります。また、発生した場合におきましても、その悪影響を最小限に留めることができるよう対応に努めてまいります。

 なお、以下に記載する事項については、将来に関する事項が含まれておりますが、これらは有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)医療制度

 医薬品業界においては、医療制度の変更が医薬品市場環境に大きく影響し、その方向性によっては医薬品業界全体及び当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競争

 当社グループの収益の柱である医療用漢方製剤は、国内市場において長く優位性を保っておりますが、国内外の大手製薬会社等が漢方市場に参入した場合、今まで以上に競争が激化し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)製品の供給

 当社グループは、漢方製剤の主要原料である生薬の約80%を中国から輸入しており、また、漢方製剤の生産工程の一部を中国の合弁会社に委託しております。生薬の多くは天然物であることから、将来に備えて主な生薬の栽培化研究を進めております。しかし、予期せぬ法規制の変更、政治や経済状況の変化等が発生した場合、必要な数量の確保や輸入が困難となる可能性があります。また、製品製造において国内外で調達する原資材につきましても、天候や自然災害及び紛争などの不安定な社会情勢を起因とする需要、供給等の流通不安により、市場価格の高騰や原資材不足による製品供給に悪影響を及ぼす可能性があります。日本国内における生産施設につきましては、耐震施工や、定期的な設備の点検等を行っておりますが、大規模な地震等の災害や火災、停電等による機能の低下や喪失を完全に回避できる保証はありません。

 以上の事態により、製品の供給に停止や遅延が生じた場合、当社グループの社会的信用や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)製品の安全性及び副作用問題

 当社グループは、製品の製造に関し、当該国や地域の品質管理基準を遵守しており、また原料生薬に関しては自社基準を設けていますが、未知の農薬が漢方製剤の原料である生薬に残留する可能性等、何らかの理由により生じる製品の欠陥や安全上の問題を完全に回避できる保証はありません。また、当社グループが販売する医薬品に予期せぬ副作用問題が発生した場合、従来の使用方法が制限されることや、当社グループ及び販売する医薬品の社会的信用の失墜による投薬抑制や服薬拒否等が起こる可能性があります。

 以上の結果、販売数量の減少や多額の損害賠償請求、大規模なリコール等につながるような事態が生じた場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)研究開発

 当社グループは、将来の成長や業績の維持・向上を目的とし、国内及び海外において新製品や新技術に関する研究開発活動を行っております。しかし、このような当社グループの研究開発活動が、すべてにおいて成功する保証はありません。何らかの理由によりこれらの研究開発活動に中止や遅延、大幅なコスト増等が生じた場合、当社グループの将来の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)国際事業

 当社グループは、中国、韓国等、海外の国や地域において、生産及び販売活動を展開しております。このような当社グループの国際事業展開は、予期せぬ法規制の変更や政治的、経済的状況の変化等により悪影響を受ける可能性があります。

 

(7)財政状況

 株価の下落、割引率引き下げによる退職給付債務の増加等は、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産

 当社グループが有する、漢方製剤に関する知的財産を完全に保護できる保証はありません。これらの流出により競争力が低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)為替レートの変動

 当社グループが販売する漢方製剤の主原料である生薬は、主に中国から輸入していることから、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善がみられる等、緩やかな景気回復基調で推移しました。世界経済全体においても、米国では堅調な個人消費が持続し、欧州では失業率の低下や設備投資の拡大、中国でも政府主導の財政政策により、景気は底堅く推移しました。

 一方、国内医薬品業界におきましては、医療費抑制策の基調は変わらず、引き続き厳しい環境下で推移しました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べて716億9千2百万円増加し、2,937億1百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べて325億5千6百万円増加し、971億6千8百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べて391億3千5百万円増加し、1,965億3千3百万円となりました。

 

b.経営成績

売上高は、医療用漢方製剤の販売が引き続き伸長したこと等により、前連結会計年度に比べ2.5%増の1,178億7千9百万円となりました。

売上原価は、前連結会計年度に比べ0.3%増の496億3百万円となり、その結果、売上総利益は前連結会計年度に比べ4.2%増の682億7千5百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ3.5%増の512億2千4百万円となり、その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ6.7%増の170億5千万円となりました。

経常利益は、前連結会計年度に比べ9.2%増の179億1千4百万円となりました。

特別利益は、投資有価証券の売却及び補助金収入等により、前連結会計年度に比べ16億3千2百万円増加し、25億9百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べ4千7百万円増加し、1億4千万円となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ16.1%増の145億4百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と同程度の210億6千6百万円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、233億5千4百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、定期預金の預入による支出等により169億2百万円支出が増加しております。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、503億5百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、第三者割当による新株発行及び自己株式処分、社債の発行による収入があったこと等により598億7千7百万円収入が増加しております。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて484億1千2百万円増加し、783億1千3百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

117,511

+4.1

合計

117,511

+4.1

(注)1 金額は、販売価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

 当社グループは、見込生産を主体としているため記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

117,879

+2.5

合計

117,879

+2.5

(注)1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

当連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサ ホールディングス㈱

28,065

24.4

29,852

25.3

㈱メディパルホールディングス

25,050

21.8

25,806

21.9

㈱スズケン

19,642

17.1

20,016

17.0

東邦ホールディングス㈱

14,478

12.6

13,899

11.8

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 上記の相手先のうち、持株会社制を採用している会社は当該持株会社の名称を付すとともに、属する関係会社の取引高を集計して記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

なお、連結財務諸表作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

総資産は、現預金の増加等により前連結会計年度末に比べて716億9千2百万円増加し、2,937億1百万円となりました。

負債は、社債発行等により前連結会計年度末に比べて325億5千6百万円増加し、971億6千8百万円となりました。

純資産は、第三者割当による新株発行及び自己株式処分等により、前連結会計年度末に比べて391億3千5百万円増加し、1,965億3千3百万円となりました。

 

b.経営成績

売上高は、医療用漢方製剤の販売が引き続き伸長したこと等により、前連結会計年度に比べ2.5%増の1,178億7千9百万円となりました。

売上原価は、前連結会計年度に比べ0.3%増の496億3百万円となり、その結果、売上総利益は前連結会計年度に比べ4.2%増の682億7千5百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ3.5%増の512億2千4百万円となり、その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ6.7%増の170億5千万円となりました。

経常利益は、前連結会計年度に比べ9.2%増の179億1千4百万円となりました。

特別利益は、投資有価証券の売却及び補助金収入等により、前連結会計年度に比べ16億3千2百万円増加し、25億9百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べ4千7百万円増加し、1億4千万円となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ16.1%増の145億4百万円となりました。

また、生薬関連コストの減少等により売上原価率が前年同期に比べ0.9ポイント低下しました。

これらの結果として、営業利益率は前連結会計年度に比べ0.6ポイント上昇し14.5%となりました。

医療用漢方製剤全体の売上高は、前連結会計年度に比べ2.4%伸長しました。営業施策としては、「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として活動を集中させてまいりました。従来からの育薬5処方と、それに続く戦略処方であるGrowing5処方を中心に、重点領域において多くの患者様の健康に貢献できるよう、医療関係者の多様なニーズに対応し、基礎・臨床エビデンス、漢方掲載の診療ガイドライン、漢方医学的な処方の使い分け等に関する適切な情報提供活動を実施しております。

引き続き、医師面談、医療機関説明会、漢方医学セミナーを活動の基本とし、漢方医学・漢方製剤に関する情報提供及び情報収集の拡充を図ってまいります。

※Growing5処方

育薬5処方に続く戦略処方として、治療満足度や薬剤貢献度の低い領域でのエビデンス構築(安全性・有効性データ等)により診療ガイドライン掲載を目指す成長ドライバー。

 

c.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

当社は、リスク管理主管部門による業務担当部門、グループ会社のトップへのリスクヒアリングを通じ、「リスク管理委員会」及び「リスク管理推進会議」をそれぞれ年2回開催し、経営リスクに対する取組み状況の確認及び今後発生し得るリスクについて、必要な対処方法を確認しております。また、企業活動に重大な影響を及ぼす恐れがある緊急事態が発生した場合には、「リスク管理規程」に則って対応しております。

 

e.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、自己資金、社債、金融機関からの借入金により資金調達を行っております。運転資金は自己資金及び短期借入金を基本としており、設備投資資金は社債及び長期借入金を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は648億7千6百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は783億1千3百万円となっております。

 

f.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、中期経営計画において「売上高」「営業利益」「売上高営業利益率」「親会社株主に帰属する当期純利益」「EPS」「ROE」を、目指すべき方向性等を示す数値目標と設定しております。

売上高は1,178億7千9百万円(計画比2.3%減)、営業利益は170億5千万円(計画比3.1%減)、売上営業利益率は14.5%(計画比0.1ポイント減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は145億4百万円(計画比14.2%増)となりました。

EPSは200.55円(計画比25.55円増)となり、ROEは8.3%(計画比0.9ポイント増)となりました。

 

g.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは医薬品事業の単一セグメントであります。

(医薬品事業)

 売上高は、前連結会計年度に比べ2.5%増の1,178億7千9百万円となりました。

 セグメント利益は、前連結会計年度に比べ6.7%増の170億5千万円となりました。

 セグメント資産は、前連結会計年度に比べ716億9千2百万円増加の2,937億1百万円となりました。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(中国平安保険(集団)股份有限公司との資本業務提携)

 当社は、2017年9月22日開催の取締役会において、中国平安保険(集団)股份有限公司(本社:中国広東省、以下、中国平安保険)との強固で長期戦略的なパートナーシップの構築に向け、資本業務提携(以下「本資本業務提携」という。)を行うことを決議いたしました。また、当社は中国平安保険の子会社である中国平安人寿保険股份有限公司(本社:中国広東省、以下、平安人寿)を割当予定先とする第三者割当による新株式発行及び自己株式の処分(以下、併せて「本第三者割当」という。)を行うことについても決議をしており、同日付で中国平安保険との間で本資本業務提携に係る資本業務提携契約を締結いたしました。

 

1. 本資本業務提携の目的及び理由

(1) 本資本業務提携の目的

① 中国における中薬産業の更なる発展及び中国国民の医療と健康への貢献

② 中薬(*)の品質標準及び生薬栽培から最終製品までを網羅するビジネスモデルの構築

③ 当社の生薬原料の安定確保

(*)中薬:中医学(中国の伝統医学)で用いる薬剤

 

(2) 本資本業務提携の理由

当社は、2016年5月に公表した「新中期経営計画(2016年度-2021年度)“漢方”のイノベーションによる新たな価値の創造」において、「中国における新規ビジネスへの挑戦」を戦略課題の一つとして定めております。当社は新中期経営計画の達成とともに、原料生薬の主要調達国である中国及び中国国民の健康にも貢献していくという思いから、今後も新規事業を通じて、中国との更なる良好な関係を構築・維持していきたいと考えております。

その取り組みの一環として、中国における日本の医療用漢方製剤向け原料生薬の調達・加工・保管基地である深セン津村薬業有限公司において、2016年度より中国市場向け刻み生薬事業を開始しております。また、それと同時期に、上海市薬材有限公司との合弁公司である上海上薬津村製薬有限公司を設立し、中国市場向け中薬配合顆粒の生産に向けて、研究開発等を進めております。

一方、中国平安保険は、中国の四大保険会社の一つで、中国A株市場に上場しており、主要業務である保険・銀行・投資に加えて、インターネット金融サービスを展開している総合金融企業集団です。同社は、「国際社会をリードする個人金融・生活のサービスプロバイダー」になるという戦略目標を掲げ、金融及び医療・ヘルスケア事業を戦略的注力分野と位置づけており、中国最大の民間健康保険会社である平安健康保険、中国最大のインターネット医療健康管理プラットフォームである平安Good Doctor、中国最大の診療所標準化管理サービスプラットフォームである平安万家医療等を傘下に持ち、医療健康科学分野での優位性を確立しつつあります。同社は、医療・ヘルスケア分野を更に発展させ、お客様への医療・ヘルスケアサービスをより一層向上させるため、中薬企業との協業機会を模索するとともに、ひいては中薬産業全体の発展への貢献を企図する中で、中国平安保険グループにおいて、海外投資を担当する中国平安保険海外(控股)有限公司(所在地:香港)及び平安ジャパン・インベストメント株式会社(所在地:東京)を中心に、日本企業との協業を検討した結果、高品質な漢方製剤を日本市場に供給している当社に対し協業の提案をするに至りました。

当社と中国平安保険が取り組もうとしている案件において、当社が有する生薬・漢方事業におけるノウハウと中国平安保険の有する経営資産や顧客基盤、医療・ヘルスケア事業の特徴及び強みを組み合わせることで、シナジー効果が発揮され、両社の企業価値の更なる向上を実現できると考えられます。当社及び中国平安保険は、中国における中薬産業の更なる発展を推進して中国国民の医療と健康に貢献するとともに、中薬の品質標準及び生薬栽培から最終製品までを網羅するビジネスモデルを構築することができ、また、それと同時に、中国国内の生薬の品質向上や生薬資源保護に寄与しながら、当社の生薬原料の安定確保にもつながると考え、業務提携を行うことといたしました。

さらに、当社及び中国平安保険は、業務提携に関わる協議の過程で、長期的かつ強固な戦略的パートナーシップを構築するためには、中国平安保険グループが当社の一定数の株式を保有することが重要であると判断し、業務提携と合わせて、第三者割当による資本提携を行うことといたしました。なお、本資本業務提携先である中国平安保険は金融持株会社であり、金融以外の事業を行う一般事業会社への直接の出資は実施していないため、本資本業務提携の趣旨や内容、出資規模等を勘案し協議した結果、出資機能を有する中国平安保険の主要子会社の一つである平安人寿を本第三者割当の割当予定先といたしました。

 

2. 本資本業務提携の内容

(1) 業務提携の内容

当社と中国平安保険との間で現時点において合意している業務提携の概要は、以下のとおりです。

① 合弁会社の設立

中国平安保険との間で中国にて合弁会社を設立し、当該合弁会社が主として下記②~④の事業を展開する予定です。

 

② 生薬調達体制の強化に関する事業

現在、日本国内の漢方製剤及び中国国内における中薬等の市場が拡大していることから、原料生薬の需要が高まり、一部の原料生薬の価格に著しい変動が生じております。安定した価格で、かつ、ツムラの品質要求を満たす原料生薬を安定確保するためには、原料生薬を栽培・加工調製する産地会社の供給能力を高める必要があると考えております。その施策として、栽培用地の確保や栽培技術の開発(野生生薬の栽培化、機械化による効率化等)、生薬の加工場の建設・整備、加工技術の開発(乾燥方法の改善、機械化による効率化等)等を行います。

 

③ 中薬を主とした分析研究に関する事業

下記④における中薬等の製造販売事業に参入するにあたり、高品質な製品の提供を図るためには、生薬栽培から最終製品までの品質管理を行い、品質標準を確立することが必要となります。その実現のために、中薬を主とした分析研究センターを設立し、分析研究技術の開発及び分析試験の受託等を実施いたします。

 

④ 中薬、健康食品、ヘルスケア関連日用品及びその他業務分野に関する事業

中国では中医学が広く浸透しており、そこで使用される中薬の需要も高まっております。今後も拡大していくことが見込まれる中薬産業の更なる発展及び中国国民の医療と健康に貢献するために、当社の漢方製剤の製造ノウハウを活用し、中薬等の製造販売事業を展開することを計画しております。

 

(2) 資本提携の内容

当社は、本第三者割当により、平安人寿に当社普通株式7,675,900株(本第三者割当後の総議決権に対する所有議決権割合10.04%、本第三者割当後の発行済株式総数に対する株式所有割合10.00%)を割り当てます。

 

(中国における合弁会社設立の合弁契約の締結)

 当社は、2017年11月30日開催の当社取締役会において、連結子会社である津村(中国)有限公司(以下、津村中国)と、天津盛実百草中薬科技股份有限公司(以下、盛実百草)の2社による合弁会社設立に関する契約及び、津村中国と中国平安保険(集団)股份有限公司(本社:中国広東省、以下、中国平安保険)の子会社である上海平浦投資有限公司(本社:中国上海市、以下、上海平浦)の2社の出資による合弁会社設立に関する契約の締結について決議し、締結いたしました。

 

1. 津村盛実製薬有限公司

(1) 合弁会社設立の目的

盛実百草は、当社漢方製剤用原料生薬の中国における主要調達先として、2011年の開業当初から当社グループと取引をしております。同社とは2016年5月11日に包括的な業務提携契約を締結し、原料生薬の供給・調達、生薬栽培・加工に関する研究、生薬品質管理、生薬産地の統括管理及び中国刻み生薬(飲片)事業を協力して推進してまいりました。

日本国内における当社漢方製剤の使用量増加に対応するため、今後の増産体制を検討する中で、原料生薬の調達等の機能を有し、当社との取引実績及び信頼関係のある盛実百草と連携することが合理的であると判断し、このたび、盛実百草と漢方製剤の中間体である漢方エキス粉末の製造を担当する合弁会社を中国天津市に設立することについて、合意いたしました。

なお、2017年12月20日に合弁契約を締結し、2018年3月1日に合弁会社を設立いたしました。

 

(2) 合弁会社の概要

(1)

名称

津村盛実製薬有限公司

(英文社名:TSUMURA SHENGSHI PHARMACEUTICALS CO., LTD.)

(2)

所在地

中国天津市

(3)

代表者の役職・氏名

董事長 李剛

(4)

事業内容

漢方製剤の中間体である漢方エキス粉末、中成薬、中薬エキス粉末の製造

(5)

資本金

400百万人民元

(6)

決算期

毎年12月31日

(7)

出資比率

津村中国70% 盛実百草30%

 

2. 平安津村有限公司

(1) 合弁会社設立の目的

当社と中国平安保険は、生薬調達体制の強化に関する事業、中薬(*)を主とした分析研究に関する事業、中薬、健康食品、ヘルスケア関連日用品及びその他業務分野に関する事業の展開を目的とした合弁会社の設立について合意し、津村中国が56%、中国平安保険の子会社である上海平浦が44%出資することによって、投資性公司(持株会社)である平安津村有限公司を設立することについて、合意いたしました。

なお、2017年12月22日に合弁契約を締結し、2018年6月8日に合弁会社を設立いたしました。

 

(*)中薬:中医学(中国の伝統医学)で用いる薬剤

 

(2) 合弁会社の概要

(1)

名称

平安津村有限公司(英文社名:Ping An Tsumura Inc.)

(2)

所在地

中国広東省深セン市

(3)

代表者の役職・氏名

董事長 トン・ホイ(Tung Hoi)

(4)

事業内容

生薬調達体制の強化に関する事業、中薬を主とした分析研究に関する事業、中薬、健康食品、ヘルスケア関連日用品及びその他業務分野に関する事業

(5)

資本金

1,000百万人民元

(6)

決算期

毎年12月31日

(7)

出資比率

津村中国56% 上海平浦44%

 

 

 

 

5【研究開発活動】

漢方・生薬研究への更なる重点化と集中化を推し進めることで、当社グループの課題を解決すべく研究開発活動を実施しております。

2016年度から漢方市場の拡大と安定成長のための基本戦略として、「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として定め活動を行ってきました。高齢者関連疾患においては、認知症の行動・心理症状(BPSD)、加齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態であるフレイルなどを重点に活動しております。がん領域の支持療法においては、抗がん剤や化学療法などの治療による食欲不振・末梢神経のしびれ・下痢・口内炎などの副作用の軽減や、痛みや精神的なケア、生活の質の維持・改善のケアなどを重点に活動しております。女性関連疾患においては、冷え症、めまい、片頭痛、便秘、更年期障害、月経困難症などを重点に活動しております。

従来の育薬5処方においては、臨床的エビデンス、作用機序、副作用発現頻度調査、薬物動態、医療経済学的データを揃える活動を推進しており、データ集積が着実に進んでおります。そして、2016年度から育薬処方に続く戦略処方であるGrowing5処方を定め、治療ガイドラインに掲載を目指して、エビデンスの構築に取り組んでおります。

漢方製剤の生産量増加に対応するため、引き続き原料生薬の栽培及び加工技術の改良研究、野生生薬の栽培化研究に取り組んでおります。国内栽培生薬の拡大を目指す中、北海道の株式会社夕張ツムラにおいては、生産量拡大に向けた栽培研究、技術改良、及び機械化研究などを進めております。また、ラオス人民民主共和国のLAO TSUMURA CO.,LTD.においても生薬における生産性の向上及び品質の安定化に向けた研究を進めております。

当社では、生薬の品質と安全性を担保するために、生薬の残留農薬、重金属及び微生物汚染対策研究を推進しております。

漢方の国際化の推進にあたっては、漢方・生薬事業を通じて培った技術・ノウハウと、日本国内の「育薬」研究による基礎・臨床の最新データを米国開発に連携させる体制を整え、大建中湯の米国における医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しております。

臨床試験につきましては、IBS(過敏性腸症候群)、POI(術後腸管機能障害)、クローン病を対象に、探索試験を進めてまいりました。2017年度、これら3つの領域に対するPhaseⅡ前期臨床試験及び、それらの医療ニーズに対する調査は終了しました。

その結果、POIでの開発可能性を見いだすとともに、腹腔鏡手術が広く普及している現在の米国においても、医療ニーズがあることが、再確認されました。

2018年度より、対象領域をPOIに集約し、新たな開発方針・スケジュールの検討を進めてまいります。

当連結会計年度における研究開発費は、60億4千8百万円であります。なお、当社グループは単一セグメントであるため、研究開発費は全て医薬品事業に関するものであります。