第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、追い求めていくべき不変の基本的価値観である「自然と健康を科学する」という経営理念と、社会から必要とされ存在し続ける目的である「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を基本的な理念と位置づけ、理念に基づく経営を実践すべく、諸施策に取り組んでおります。

 

(2)経営戦略等

当社では2012年に長期経営ビジョン「2021年ビジョン」を掲げ、その実現に向けた取り組みを続けており、2019年5月9日に「第3期中期経営計画(2019年度-2021年度)“漢方”のイノベーションによる新たな価値の創造 -Next Stage-」を公表いたしました。国内事業の戦略を「漢方市場の持続的拡大」、中国事業の戦略を「中国事業の基盤構築」として、本計画で定めた以下の戦略課題に取り組んでおります。

 

① 漢方市場の持続的拡大とプレゼンスの確立

② 中国における成長投資と事業基盤の構築

③ 新技術を活用した生産性の向上 -AI、ロボット化、RPA※1-

④ 理念経営による企業文化の醸成と多様な人財※2 の開発

⑤ 漢方バリューチェーンを通じたSDGsの推進

 

本計画は、2022年以降の国内・中国事業を「飛躍」させるための「成長投資」のステージと位置付けてまいります。上記5つの戦略課題に取り組み、持続的な成長を果たすとともに、企業価値の向上を図ってまいります。

 

健康長寿社会の実現に向け、当社が果たすべき役割は大きいと考えております。これからも当社は、「国内のどの医療機関・診療科においても、患者様が必要に応じて“漢方”を取り入れた治療を受けられる医療現場の実現に貢献」することを目指し、全社一丸となって取り組んでまいります。

 

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

第3期中期経営計画(2019年度-2021年度)における数値目標は以下のとおりです。

 

2021年度

売上高

1,200億円以上

営業利益

190億円以上

ROE

6%以上

前提条件:[薬価改定] 2019年度、2020年度、2021年度

[為替レート]112円/米ドル、16.5円/元

(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用した後の数値目標となっております。

 

第3期中期経営計画(2019年度-2021年度)の概要

 

-事業戦略-

 国内事業「漢方医学の確立」

 中国事業「中国国民の健康への貢献」

 

-戦略課題-

① 漢方市場の持続的拡大とプレゼンスの確立

漢方医学に対する医療関係者のニーズは多様化しており、医師への面談、医療機関説明会、漢方医学セミナーを基本とし、基礎・臨床エビデンス、漢方製剤掲載の診療ガイドライン及び漢方医学的な処方の使い分け等に関する適切な情報提供活動を実施いたします。

・「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)※3」「女性関連領域」を重点3領域と位置付け、集中的に活動する。

・育薬処方※4、Growing 処方※5、重点3領域の関連処方によるネットワークを構築する。

・患者様の治療効果(安全性・有効性)を高めるためエビデンスを構築し、診療ガイドラインへの掲載を目指す。

 

② 中国における成長投資と事業基盤の構築

・中成薬※6事業本格化に向けた基盤構築を進めるため、500~1,000億円規模の投資をする。

・天津工場(津村盛実製薬有限公司)で日本向けエキス粉末の生産を2022年度(予定)から開始する。将来的には中国向け製剤の主要生産拠点とする。

・中薬研究センターを早期に稼働させ、生薬・中成薬の品質標準の確立を目指す。

・健康食品や飲片(刻み生薬)※7など既存製品の販売を通じて、2021年度売上高約40億円(約2.4億元 / 元=16.5 円)を目指す。

(注)2021年度の売上計画約40億円は、2020年度に前倒しで達成いたしました。

 

③ 新技術を活用した生産性の向上 -AI、ロボット化、RPA-

・生薬選別作業の自動化や生産工程のロボット化などにより、効率化を進める。

・高付加価値業務への転換を図るため、RPA導入により定型業務を自動化する。

・需要予測から生薬手配計画までのSCM※8を改革することにより、最適な在庫配置を実現する。

 

④ 理念経営による企業文化の醸成と多様な人財の開発

・社内外講師による体系的な教育プログラムを企画・運営することにより、当社グループの基本理念に基づく経営を実践できる人財を養成し、連綿と輩出する。

・当社グループ社員に理念の浸透を図り、コーチングセミナーや人間力向上を目指したプログラムを実施し、基本基調に則した企業文化を醸成する。

 

⑤ 漢方バリューチェーンを通じたSDGsの推進

価値創造の源泉である漢方・生薬を通じて、持続可能な社会の実現に取り組む。

・漢方の有効性解明をさらに進め、さまざまな疾病構造に対応し、より多くの方の健康と福祉に貢献する。

・再生可能エネルギー等の循環型システムを取り入れ、水をはじめとした資源の有効活用・保全を推進する。

・生薬の栽培・研究を通じて、天然資源の持続的利用や産地の雇用機会創出、農福連携※9等を拡げる。

 

※1 RPA

Robotic Process Automation の略。

※2 人財

当社グループの全役職員が財産という概念から「財」の文字を使用。

※3 がん領域(支持療法)

がんそのものに伴う症状や、がん治療による副作用の症状を軽減させる等の治療。

※4 育薬処方

近年の疾病構造を見据え、医療ニーズの高い領域において新薬治療で難渋している疾患で、医療用漢方製剤が特異的に効果を発揮する疾患に的を絞り、エビデンス(科学的根拠)を確立する処方。

※5 Growing 処方

育薬処方に続く戦略処方として、治療満足度や薬剤貢献度の低い領域でのエビデンス構築(安全性・有効性データなど)により診療ガイドライン掲載を目指す処方。

※6 中成薬

中薬(中国の伝統医学である中医学で用いる薬剤)を工業的方法で製剤化した薬物。

(日本漢方生薬製剤協会の表記を参照)

※7 飲片(刻み生薬)

全形生薬を小片または小塊に切断または粉砕したもの、あるいは粗切、中切または細切したもの。

(日本漢方生薬製剤協会の表記を参照)

※8 SCM

サプライチェーンマネジメント。当社が目指すSCMの目的は、販売計画、生産計画、原料生薬の栽培・手配・調達・加工・移動及び在庫計画について、需要を起点として連携させ、自動化・迅速化を実現すること。

※9 農福連携

障がい者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み。

 

(4)経営環境

① 国内市場

近年、超高齢社会において、医療費の増大にともなう各種制度変更、地域医療のあり方や、生活者のセルフメディケーション意識の向上など、製薬会社が直面する課題は少なくありません。

国の施策においては漢方への期待と役割が大きくなっております。2015年、厚生労働省より公表された「医薬品産業強化総合戦略」の中のひとつに、漢方薬は『我が国の医療において重要な役割を担っている』と明記されました。また、同じく厚生労働省より公表された「がん対策加速化プラン」では、支持療法の開発・普及のために実施すべき具体策として、『術後の合併症・後遺症を軽減する観点から』進める研究のひとつに、漢方薬を用いた支持療法があげられています。

当社は、このような政策に準ずる施策はもちろん「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」や総合診療医・在宅医療の推進などを含む「地域包括ケアシステム」の構築などの医療政策、人口動態にともなう疾病構造の変化(高齢者疾患、女性特有の疾患など)を踏まえた取り組みを進めてまいります。

また、「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」(日本東洋医学会・日本漢方生薬製剤協会共催、2016年発足)において、医療関連のオーソリティによって、漢方医療を取り巻く課題と対応策が「提言書」として2017年に取りまとめられました。当社は、日本漢方生薬製剤協会の活動を通じて、この提言を実現するために、産官学共同の課題として取り組んでおります。

研究会提言は、2021年2月に更新されました。今回の更新では、漢方が国民の健康と医療にさらに貢献するための6つの提言の中に、フレイルに対する全身状態の改善、漢方製剤等に関する「リポジショニングや新剤型等のための品質保証及び承認申請に資するガイドライン」の整備、安定供給に向けた薬価の適正化(基礎的医薬品としての位置づけ)、漢方に係る国内外の諸課題に対応する行政担当官の配置(ICD-11「日中韓の伝統医学(漢方医学)」等)などが追記されました。

当社は、漢方を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、中長期的な観点から計画を立案し、活動していくことが必要と考えております。

 

② 中国市場

中国における高齢化は、今後日本と同じ速度で進むことが予測され、中国国民の健康意識は高まっています。また、2016年に国務院が発表した「健康中国2030 計画綱要」では、医療に関して、現代医学と中国医学の双方を重視し、中薬生産の規範化、規模化を推進するとともに、理論研究と薬品開発に取り組むという方針が発表されました。このような環境の変化を踏まえると、現在約10.2兆円の中国中薬市場はさらに拡大すると見られています。

当社は、これまで積み上げてきた技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中国国民の健康に貢献する企業を目指し、中国における事業基盤の構築に取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 第3期中期経営計画に基づく取組み

「(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。

 

② 品質重視体制のさらなる強化

1)品質保証

 -漢方バリューチェーンにおける品質保証の役割-

当社は、製商品の品質と安全性の追求を最も重要なテーマであると考えております。この品質重視の考え方「ツムラクオリティカルチャー」を漢方バリューチェーンの基盤とし、品質保証における継続的な改善と強化に取り組んでおります。

 「ツムラ品質マネジメントシステム」

当社は、「品質方針」のもと品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」を制定し、法令の改正やグローバル化(PIC/S※対応を含む)などにも適正に対応できる仕組みを構築し、品質を重視する取り組みを推進しております。このシステムは、当社グループ全体を取り込んだ包括的なものであり、これによって経営陣の責務をさらに明確にいたしました。

 

品質方針

 当社及びグループ会社は、価値創造企業を目指し、“KAMPO”で人々の健康に寄与するため、以下の品質方針を定めております。

・高品質かつ安全で信頼される製品を安定的に供給します

・医薬品に関する薬事関連法規を遵守します

・お客様の声を聴き、継続的な品質改善に努めます

・安全な生薬の安定確保を実現します

・研究の信頼性を確保し、研究成果を適切に提供します

・全役職員に対し、適切な教育を実施し、高い意識を持つ人財を育成します

・これらを実現するため、経営資源を適正に配分します

 

 ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程のもと、生薬栽培から最終製品のデリバリーまでのサプライチェーン全般を対象として法令遵守や当社として守るべき基準を明記した文書をそれぞれ社規として体系的に構築いたしました。

 これは当社独自の「品質システム」であり、当社及びグループ会社のすべての事業における品質重視体制を構築し、高品質な漢方製剤を患者様に提供するための活動となっております。

 

※ PIC/S:

Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Cooperation Schemeの略称。医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み。

 

2)「ツムラ生薬GACP※」

 当社は、「ツムラ生薬GACPポリシーに関する規程」を制定し、運用しております。この規程は、「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」に基づき、当社及びグループ会社による生薬生産の管理において、生薬の安全及び品質を保証するために遵守すべき基本的要求事項を定めることを目的としております。

 ツムラ生薬GACPは、「ツムラ生薬GACPガイドライン」「生薬生産標準書」「生薬トレーサビリティ」「教育・監査・認証」で構成されています。

 そのひとつである生薬トレーサビリティは、生薬の生産地から生薬製造所に納入される各段階で、生産団体・生産者の情報や栽培・加工などの記録を収集・保管し、情報の追跡と遡及を可能とする仕組みであり、漢方製剤の製造工程、流通過程の履歴情報と併せ、医療機関から生薬生産地までの全履歴情報の追跡・遡及を可能としています。

 今後も、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにし、安全で安心できる生薬の安定確保のために、ツムラ生薬GACPを継続的に強化し運用してまいります。

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice(生薬生産の管理に関する基準)

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業等に関するリスクについて、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループにおきましては、これらの事項に対しまして、発生を回避すべく対応してまいります。また、発生した場合におきましても、その悪影響を最小限に留めることができるよう対応に努めてまいります。

 当社は、リスク管理主管部門による業務担当部門、グループ会社のトップへのリスクヒアリングを通じ、「リスク管理委員会」及び「リスク管理推進会議」をそれぞれ開催し、経営リスクに対する取組み状況の確認及び今後発生し得るリスクについて、必要な対処方法を確認しております。また、企業活動に重大な影響を及ぼす恐れがある緊急事態が発生した場合には、「リスク管理規程」に則って対応しております。

 なお、以下に記載する事項については、将来に関する事項が含まれておりますが、これらは有価証券報告書提出日

現在において判断したものであります。

 

(1)医療制度

 国内においては、超高齢社会や医療の高度化に伴う医療費高騰等による財政圧迫を背景として薬剤費引き下げ政策の強化が進められております。経済財政諮問会議の工程表には「給付と負担の見直し」が示されているなど医療費抑制について引き続き検討されております。

 このような環境変化に対応するため、当社グループでは薬剤費引き下げ政策強化への対策や漢方製剤の価値に対する理解の醸成に努めるなど、企業努力を重ねてまいりました。また、国民医療において重要な役割を担う医療用漢方製剤を持続的に供給するため、業界団体と連携しながら関係省庁などへの提言も行っております。

 当社グループでは原価率低減や流通効率化に取り組んでおりますが、さらなる薬価制度改革などの医療費抑制策が実施された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の厳格化により、追加的な費用が生じる場合や製品が規制に適合しなくなる場合、あるいは今後、予測できない大規模な医療行政の方針転換が行われた場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 引き続き、当社グループは、医療用漢方製剤のエビデンス構築や一般生活者への漢方啓発活動を通じ、医療用漢方製剤が国民医療に必要不可欠な医薬品として広く認知いただける活動を継続してまいります。

 

(2)製品の供給

 当社グループは、以下の要因により製品の供給に停止や遅延が生じた場合、当社グループの社会的信用、並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。

① 原料生薬、副原料及び資材の調達に関するリスク

 当社グループの事業は、生薬を主要原料とした漢方・生薬事業であります。その原料生薬の多くは天然物であることから、安全な生薬を安定確保するために、漢方製剤の長期的な需要予測に基づき、充分な在庫量の確保や国内外での生薬調達先の拡大、自社管理圃場※の継続拡大等に取り組んでおります。しかしながら、予期せぬ天候不順や自然災害等が発生した場合、必要な数量の確保が困難となる可能性、並びに栽培中の生薬の減損損失を計上する可能性があります。

 当社は、原料生薬の約80%を中国から輸入しており、漢方製剤の安定供給に向け、日本国内における原料生薬生産量拡大にも取り組んでおります。また、中国にも漢方エキス粉末の製造拠点を構えることで、輸出入等の法規制の変更、政治や経済状況の変化による原料生薬の輸入規制に対応できる体制をとっております。しかしながら、輸出入等の法規制の対象範囲の変更や想定を超える政治的・経済的状況の変化が発生した場合、製品供給に影響を及ぼす可能性があります。

 製品製造工程で使用する副原料及び資材においても国内外で調達しておりますが、可能な限り複数の取引先からの購買体制を構築しており、需要予測に基づき、柔軟な調達を行っております。しかしながら、自然災害及び不安定な社会情勢を起因とする需要、供給等の急激な流通不安により、副原料及び資材不足による製品供給への影響、並びに市場価格の高騰による業績及び財政状態への影響を及ぼす可能性があります。

※ 自社管理圃場:

当社が直接的に栽培指導をすることができ、栽培にかかるコストの把握と原料生薬の購入価格設定が可能な圃場。

 

② 生産及び物流に関するリスク

 当社グループは、製造拠点を日本国内では茨城工場と静岡工場の2拠点、中国では上海津村製薬有限公司の1拠点と分散体制をとっており、製造品目の切り替えを可能とした体制の構築を図っております。また、日本国内の生産施設につきましては免震・耐震構造の導入をしております。製品の供給拠点である物流センターにつきましても、東西2拠点としており、安定供給に向けた体制を構築しております。

 しかしながら、大規模な地震や火災等の災害、停電等による機能の低下や喪失により、製品供給に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復やたな卸資産の被害に備え災害保険等の加入をしておりますが、想定を超える災害が発生した場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)製品の安全性及び副作用問題

 当社グループは、品質と安全性を追求し、信頼性を向上させるための品質重視の考え方である「ツムラクオリティカルチャー※」を経営理念に通じる価値観とし、その醸成に取り組んでおります。この考え方を基盤として、製品の製造に関しては、当該国や地域の品質管理基準を遵守し、品質方針のもとさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」を制定し、自社製造品のみならず委託製造品を含む全ての製品について品質を重視する取り組みを推進しております。また、この考え方は改正薬機法※が求める法令遵守の考え方に通じるものです。

 さらに原料生薬に関しては、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにするため、「ツムラ生薬GACP※ポリシーに関する規程」を制定し、管理を徹底して運用しております。これらの取り組みにより、原料である生薬の調達に始まり、製剤の製造に適した製造方法・製造設備の確立、製造管理、品質管理の実施及び出荷に至るまでをすべて自社の管理下で行う一貫体制を構築し、徹底した品質管理を実施することで最終製品の品質を確保しております。

 しかしながら、当社が管理を行っていない農薬及び化学物質が原料生薬に残留する可能性等、何らかの理由により生じる製品の欠陥や安全上の問題を完全に回避できる保証はありません。また、当社グループが販売する医薬品に予期せぬ副作用問題が発生した場合、及び医薬品以外の製品に健康被害等が発生した場合、従来の使用方法が制限されることや、当社グループ及び当社グループが販売する製品の社会的信用の失墜による投薬抑制や服薬拒否及び使用拒否等が起こる可能性があります。

 以上の結果、販売数量の減少や多額の損害賠償請求、大規模なリコール等につながるような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

※ ツムラクオリティカルチャー:

社員一人ひとりが理念を理解し、価値観・判断・行動の基準になっており、当社グループ製商品の品質と安全性を追求し、信頼性を向上させるための品質重視の考え方

※ 改正薬機法:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(2019年12月4日法律第63号)

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice

 

(4)国際事業

 当社グループは中国等、海外の国や地域において、生産及び販売活動を展開しております。

 中国事業においては、経営管理機能を強化するため、津村(中国)有限公司を設立し、当社グループの持つ技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中国国民の健康に広く貢献できる企業を目指しております。

 中国事業への参入にあたり、製造販売に関するライセンス等を有する企業の買収・提携を検討しております。買収先の選定・実行にあたっては当社グループの企業理念に十分に共感いただける企業を選定対象とし、対象企業・対象事業の財務内容や取引等についての詳細な事前調査を行うなど、買収・提携リスクを極力回避するよう努めております。しかしながら、買収・提携後に偶発債務の発生や未認識債務が判明する可能性、並びに、期待し得る事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮されず、結果として得られる将来の収益力が当初の見込みに達しない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、予期せぬ法規制の変更や政治的・経済的状況の変化等により影響を受ける可能性があります。

 

 

(5)研究開発

 当社グループは、将来の成長や業績の維持・向上を目的とし、国内及び海外においてエビデンスの構築や新製品・新技術に関する研究開発活動を行っております。しかしながら、このような当社グループの研究開発活動が、すべてにおいて成功する保証はありません。これらの研究開発活動が何らかの理由により中止や遅延、大幅なコスト増等が生じた場合、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 米国においては大建中湯の医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しておりますが、何らかの理由により想定しているスケジュールに遅延が生じる、あるいは想定した費用を大幅に上回る等の可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)知的財産

 当社グループが保有する漢方製剤に関する知的財産を完全に保護できる保証はありません。当社グループでは、知的財産、技術ノウハウ等につき、重要情報保管場所の施錠管理やアクセス可能人員の制限、重要ノウハウを把握する人員の限定等、社規に基づく情報管理の徹底により適正に保護するとともに、新開発技術や新製品等に関する特許権や商標権等の産業財産権の取得により知的財産を適切に管理し、第三者からの侵害に注意を払っておりますが、第三者から侵害を受けた場合には、競争力が低下し、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。また、事業運営にあたっては、先行商標確認や新規導入技術等に関する先行特許確認など他社の知的財産権を事前に調査し、これらに抵触して問題が発生することのないように努めておりますが、知的財産権に係る争訟により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)人財

 当社グループは、「世界に手本のない漢方ビジネスにおいて、自らが新しい道を開拓でき、誰からも信頼される人の企業集団へ」を揚げており、人財※は持続的に企業を発展させるうえで、最も重要な資本の一つであると考えており、人財の採用・育成に努めております。

 採用においては、当社グループでは経営戦略と連動した戦略的採用を実施しており、中国事業の発展に向けたグローバル人財の確保にも努めております。育成においては、当社グループでは「ツムラ人財育成ポリシー」を制定するとともに、当社グループの理念に基づく経営を実践できる人財の養成を目的に、「ツムラアカデミー」を設置し、多様な人財の開発を推進しております。また、「ツムラクオリティカルチャー」を私たちの経営理念に通じる価値観とし、その醸成に取り組んでいます。しかしながら、必要な人財の確保・育成が計画的に推進できない場合は、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、各種法令の遵守に努めておりますが、今後、予測される生産年齢人口の減少や、労働環境の多様化・複雑化への対応も含め、労働安全衛生やハラスメント等の対策が不十分な場合、当社グループの社会的信用、並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。

※ 当社グループでは全役職員が財産という観点から「財」の文字を使用しております。

 

(8)競争

 当社グループの収益の柱である医療用漢方製剤は、安心安全な生薬の安定確保及び均質性の高い医療用漢方製剤の安定供給、安全性・有効性に関するエビデンス集積等により、国内市場において長く優位性を保っており、様々な施策を更に推し進めております。また、MRによる情報提供に加え、インターネットを介した情報提供により医療関係者からの期待にお応えしております。しかしながら、国内外の製薬企業等が医療用漢方市場に参入した場合、今まで以上に競争が激化し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)為替レートの変動

 当社グループが販売する漢方製剤の主原料である生薬は主に中国から輸入していることから、生薬及び漢方エキス粉末の輸入時には、為替動向を考慮しながら為替予約等によるリスクの軽減を図っておりますが、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、連結財務諸表作成時に海外の連結子会社の現地通貨建財務諸表を円換算していることから、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)財務

 当社グループの業績及び財政状態は主として、以下の財務的要因の影響を受ける可能性があります。

① 退職給付債務に関するリスク

 当社グループの従業員退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。株価の下落や割引率の変更等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 資金調達リスク

 当社グループは漢方事業の持続的拡大のための設備投資計画や中国における成長投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しておりますが、金利等の市場環境の悪化、当社の信用格付の変動等により当社グループが望む条件での資金調達が困難となる可能性があります。

③ 債務保証リスク

 当社グループは関係会社の債務の一部について債務保証契約を金融機関と締結しております。将来、債務の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 有価証券の価格変動リスク

 当社グループは価格変動リスクのある有価証券を保有しており、事前にリスクの軽減に努めておりますが、金融市場における価格変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)税務

 当社グループを構成する各事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適切に納税を行っておりますが、各国における税制の改正、税務申告における税務当局との見解の相違等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは適用される移転価格税制の遵守に努めておりますが、各国の税務当局と見解の相違が生じ、追徴課税や二重課税により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)環境

 当社グループは、環境に関する法規制の遵守を前提とし、「ツムラグループは、漢方バリューチェーンを通じた価値創造と持続可能な社会の実現に貢献します。」というサステナビリティビジョンのもと、環境負荷の低い容器資材への切り替え、野生生薬の栽培化、水の使用量の削減・再利用促進等の自然環境の保全に努めております。しかしながら、万が一、企業活動上において土壌汚染や水質汚染等を惹起し、法令違反等の問題が発生した場合には、行政処分による課徴金、刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等の支払いが生じる可能性があります。その場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)訴訟

 当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟は現在提起されておりません。しかしながら、当社グループは、企業活動上、漢方薬を含む医薬品の副作用、健康被害、製造物責任、労務問題、知的財産権の侵害、契約の不履行、環境汚染等様々な訴訟を提起される可能性があり、その動向ないし結果によっては、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)IT情報管理

 当社グループは、企業活動上、大規模な生産システムを含む各種ITシステムを活用しており、システムトラブル等への備えとして、データ保護を徹底する等ITシステムの強化への適切な投資を行っております。大規模な地震や火災等の災害、停電等によるITシステムの機能不全によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、事業継続計画(BCP)の整備、非常時を想定した訓練等を実施しておりますが、想定規模を超える災害等によるシステム不全が発生した際には、事業を適切に遂行できない可能性があります。

 また、情報資産の適正管理をより実効的なものとするため、「情報管理基本規程」をはじめとする、情報管理に関する社規の内容を全社に周知徹底し、情報管理の強化を推進しております。しかしながら、悪意を持つ第三者によるサイバー攻撃ないし、従業員等の不注意または過失によるシステムの停止や機密情報の漏洩等を完全に回避できる保証はありません。

 これらの事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)内部統制

 当社グループは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制を含めた内部統制システムを整備・運用し、法令遵守の徹底並びにリスクマネジメントの強化に努めております。また、業務における人為的なミスや、内部関係者等による違法行為、不正行為等の不祥事が発生することのないよう、内部管理の基準を策定・運用する等の対策を実施しております。

 しかしながら、内部統制システムが有効に機能せず、業務の有効性や効率性、財務報告の信頼性等を確保できない事態あるいは違法行為・不正行為等が生じた場合には、かかる信頼を回復するための運営費用の増加や、各部門の業務工数が増大する可能性を含め、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)その他のリスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大に伴い、当社グループでは、日本政府の「緊急事態宣言」以前から社長を本部長とする緊急対策本部を設置し、従業員及びその家族、並びに医療関係者や取引先の安全を最優先に守りつつ、漢方製剤等の医薬品の安定供給を継続する基本方針を定めました。その方針のもと、事業継続計画(BCP)対応に基づき当社グループの生産関連部門は通常稼働する一方で、他の部門は原則在宅勤務とし、説明会やイベントの中止または延期、不要不急の訪問やミーティング等を禁止するなど、感染予防と拡大防止対策を実施しました。

 また、「緊急事態宣言」解除後の対応としては、職場のソーシャルディスタンス確保や在宅勤務、時差通勤等段階的に感染予防策を講じたうえで出勤する体制を整え、長期化にむけたニューノーマルへの対応を積極的に進めております。今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 f 今後の見通し」に記載しております。しかしながら、想定を超える感染拡大が発生した際には、事業を適切に遂行できない可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の制限を受ける等、依然として厳しい状況となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a 財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べて7,073百万円増加し、319,063百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べて12,098百万円減少し、85,894百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べて19,171百万円増加し、233,169百万円となりました。

なお、2020年3月30日に行われた平安津村薬業有限公司及びその子会社5社との企業結合について前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

 

b 経営成績

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べ、6.2%増加の130,883百万円となりました。

利益につきましては、営業利益19,382百万円(前連結会計年度比2.7%増)、経常利益20,866百万円(前連結会計年度比6.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益15,332百万円(前連結会計年度比11.4%増)となりました。

売上原価率は、薬価改定による上昇分を生薬価格の低減により吸収しました。一方で、当連結会計年度から損益計算書を連結している平安津村薬業有限公司の現在の主力品目である「原料生薬」においては、「製剤」や「飲片」とは異なりコストに占める原価の比率が高いこと等から前連結会計年度に比べ1.5ポイント上昇しました。また、販管費率は、活動の変化に伴う経費の減少等により、1.1ポイント低下し、これらの結果として、営業利益率は前連結会計年度に比べ0.5ポイント低下し、14.8%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが16,102百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが7,352百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが10,425百万円の支出となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、16,102百万円の収入となりました。主な内訳は、収入項目では税金等調整前当期純利益20,456百万円、支出項目では法人税等の支払額5,775百万円であります。前連結会計年度との比較では、2,088百万円収入が減少しております。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、7,352百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出8,949百万円であります。前連結会計年度との比較では16,136百万円支出が減少しております。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、10,425百万円の支出となりました。主な内訳は、短期借入金の返済による支出14,086百万円であります。前連結会計年度との比較では、17,537百万円支出が増加しております。

 以上の結果、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて1,543百万円減少し、新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額3,519百万円と合わせ、59,668百万円となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

133,031

11.3

合計

133,031

11.3

(注)1 金額は、販売価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b 受注実績

 当社グループは、見込生産を主体としているため記載を省略しております。

 

c 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

130,883

+6.2

合計

130,883

+6.2

(注)1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサ ホールディングス㈱

31,386

25.5

31,426

24.0

㈱メディパルホールディングス

26,480

21.5

28,732

22.0

㈱スズケン

21,077

17.1

20,361

15.6

東邦ホールディングス㈱

14,681

11.9

14,516

11.1

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 上記の相手先のうち、持株会社制を採用している会社は当該持株会社の名称を付すとともに、属する関係会社の取引高を集計して記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は319,063百万円で、前連結会計年度末に比べて7,073百万円の増加となりました。流動資産は、現金及び預金が減少した一方で、たな卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ7,300百万円の増加となりました。固定資産は、機械装置及び運搬具が増加した一方で、当期より津村盛実製薬有限公司を新規連結したこと等に伴う投資その他の資産におけるその他の減少等により、前連結会計年度末に比べて227百万円の減少となりました。

負債合計は85,894百万円で、前連結会計年度末に比べて12,098百万円の減少となりました。流動負債は、長期借入金からの振替により1年内返済予定の長期借入金が増加した一方で、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ95百万円の減少となりました。固定負債は、長期借入金の流動負債への振替等により、前連結会計年度末に比べて12,003百万円の減少となりました。

純資産合計233,169百万円で、前連結会計年度末に比べて19,171百万円の増加となりました。株主資本は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べて10,124百万円の増加となりました。その他の包括利益累計額は、繰延ヘッジ損益の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,283百万円の増加となりました。また、非支配株主持分は、前連結会計年度末に比べて6,763百万円の増加となりました。

以上の結果、自己資本比率は2.5ポイント増加して、68.3%となりました。

なお、2020年3月30日に行われた平安津村薬業有限公司及びその子会社5社との企業結合について前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

 

b 経営成績

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べ、6.2%増加の130,883百万円となりました。

 利益につきましては、営業利益19,382百万円(前連結会計年度比2.7%増)、経常利益20,866百万円(前連結会計年度比6.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益15,332百万円(前連結会計年度比11.4%増)となりました。

 売上原価率は、薬価改定による上昇分を生薬価格の低減により吸収しました。一方で、当連結会計年度から損益計算書を連結している平安津村薬業有限公司の現在の主力品目である「原料生薬」においては、「製剤」や「飲片」とは異なりコストに占める原価の比率が高いこと等から前連結会計年度に比べ1.5ポイント上昇しました。また、販管費率は、活動の変化に伴う経費の減少等により、1.1ポイント低下し、これらの結果として、営業利益率は前連結会計年度に比べ0.5ポイント低下し、14.8%となりました。

 国内の売上高は、124,516百万円となりました。そのうち、医療用漢方製剤129処方の売上高は、新型コロナウイルス感染症の拡大による受診控え等の影響を受けながらも、前期比で1.1%増加しました。処方別では、感染予防対策の励行による上気道炎等の感染症が減少し、風邪関連処方が大きく落ち込むも、生活環境の変化により、精神疾患や皮膚疾患等の処方が伸長しました。主力品目である育薬処方では大建中湯が、前連結会計年度に比べ0.4%増加しました。Growing処方では、補中益気湯、加味逍遙散、五苓散が好調に推移しました。

営業活動につきましては、訪問型情報提供活動に加え、e-プロモーションを拡充させるとともに、医療関係者の要請に応じた情報提供活動を推進してまいります。

海外の売上高は、前連結会計年度末より連結した平安津村薬業有限公司の売上高が、当連結会計年度より計上されることで大きく寄与し、6,367百万円となりました。原料生薬と飲片(刻み生薬)の販売を中心に、平安津村薬業有限公司、深セン津村薬業有限公司による生薬プラットフォームの機能を強化し、事業の拡大を図ってまいります。

長期経営ビジョン2021の実現に向け、中期経営計画の5つの戦略課題である「漢方市場の持続的拡大とプレゼンスの確立」「中国における成長投資と事業基盤の構築」「新技術を活用した生産性の向上」「理念経営による企業文化の醸成と多様な人財の開発」「漢方バリューチェーンを通じたSDGsの推進」に引き続き取り組んでまいります。

 

[ 新型コロナウイルス感染症への取り組み及び業績への影響について ]

 新型コロナウイルス感染症への対応として、当社は年間を通し従業員及び事業関係者への感染防止対策を徹底するとともに、製薬企業の使命である製品の安定供給に取り組んでまいりました。国内及び海外ともに製品供給への影響は出ておりません。

 当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の業績への影響については、訪問型情報提供活動の制限や研究開発の遅延等、一部事業活動への影響を受け、第3四半期決算において、売上高の下方修正及び活動変化に伴う経費の減少等による利益の上方修正を行いました。

 不透明な事業環境が続きますが、引き続き状況の変化を注視するとともに、感染防止対策と製品の安定供給に取り組んでまいります。

 

c 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

なお、当連結会計年度において、経営成績に重要な影響を与える要因はございません。

 

d 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「売上高」「営業利益」「売上高営業利益率」「親会社株主に帰属する当期純利益」「EPS」「ROE」を、目指すべき方向性等を示す数値目標として設定しております。

当社は、当連結会計年度の通期業績予想について、業績動向等を踏まえ、2020年5月11日に公表した予想値を修正し、2021年2月5日に改めて公表しました。

2020年度修正業績予想との比較では、売上高は130,883百万円(計画比0.3%増)、営業利益は19,382百万円(計画比0.4%増)、売上高営業利益率は14.8%(計画比0.0ポイント増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は15,332百万円(計画比2.2%増)となりました。

EPSは200.4円(計画比4.3円増)となり、ROEは7.2%(計画比0.1ポイント増)となりました。

 

e セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは医薬品事業の単一セグメントであります。

(医薬品事業)

 売上高は、前連結会計年度に比べ6.2%増の130,883百万円となりました。

 セグメント利益は、前連結会計年度に比べ2.7%増の19,382百万円となりました。

 セグメント資産は、前連結会計年度に比べ7,073百万円増加の319,063百万円となりました。

 なお、2020年3月30日に行われた平安津村薬業有限公司及びその子会社5社との企業結合について前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

 

f 今後の見通し

2022年3月期の業績予想につきましては、売上高は国内医療用漢方製剤ならびに中国事業の伸長傾向をふまえ122,500百万円を見込んでおります。このうち海外事業売上高は8,800百万円の見込みであります。利益につきましては、営業利益19,500百万円(0.6%増)、経常利益20,000百万円(4.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益14,200百万円(7.4%減)を見込んでおります。

国内においては訪問型情報提供活動に加え、昨年度より整備を進めていますe-プロモーションを拡充させ、より充実した情報提供活動を行ってまいります。海外事業においては、生薬プラットフォームにおける原料生薬、飲片(刻み生薬)の販売拡大とともに、中成薬事業展開の基盤づくりを進めてまいります。なお、現時点で新型コロナウイルス感染症の収束時期を正確に見通すことが困難な状況でありますが、状況に変化が発生した場合には適時・適切な開示を実施いたします。

当社は、今後も、社員やお得意先、お取引先の皆様等の安全を最優先に感染拡大防止に努め、政府の方針や行動計画に基づき対応方針を決定すると共に、適切な事業継続を図ってまいります。

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する

当期純利益

翌連結会計年度

2022年3月期

(調整後増減率)

122,500

 

(5.2%)

19,500

 

(0.6%)

20,000

 

(△4.2%)

14,200

 

(△7.4%)

(注)調整後増減率は、当社グループの当連結会計年度(2021年3月期)を「収益認識に関する会計基準」等を適用したと仮定して算出した数値に合わせて2022年3月期の業績予測と比較した増減率であります。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、自己資金、社債、金融機関からの借入金により資金調達を行っております。運転資金は自己資金及び短期借入金を基本としており、設備投資資金は社債及び長期借入金を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は53,096百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は59,668百万円となっております。

 

c 資金使途

当社グループは2019年度にスタートした第3期中期経営計画にそって、国内事業については「漢方市場の持続的拡大」を、中国事業については「中国事業の基盤構築」をテーマに掲げ、適切なリスクをとりながら将来のために必要な投資を行ってまいります。特に中国事業においては、津村盛実製薬有限公司の天津工場建設、深センの中薬研究センター設立及び中成薬企業の提携・買収等を実施し、中国国民の健康に広く貢献できる企業となるべく事業基盤の構築を進めてまいります。

また、当社グループの2021年度設備投資金額は14,000百万円、研究開発費は7,300百万円を計画しております。

今後もさらなる事業基盤の構築に向けて、適切な資金調達及び中長期的な視点から経営の意思を反映した資源配分を行ってまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

5【研究開発活動】

漢方・生薬研究への更なる重点化と集中化を推し進めることで、当社グループの課題を解決すべく研究開発活動を実施しております。

2016年度から漢方市場の拡大と安定成長のための基本戦略として、「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として定め活動を行ってきました。高齢者関連疾患においては、認知症の行動・心理症状(BPSD)、加齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態であるフレイルなどを重点に活動しております。がん領域の支持療法においては、抗がん剤や化学療法などの治療による食欲不振、末梢神経のしびれ、下痢、口内炎などの副作用の軽減や痛み、精神的なケア、生活の質の維持・改善のケアなどを重点に活動しております。女性関連疾患においては、冷え症、めまい、片頭痛、便秘、更年期障害、月経困難症などを重点に活動しております。

従来の育薬処方においては、臨床エビデンス、作用機序、副作用発現頻度調査、薬物動態、医療経済学的データを揃える活動を推進しており、データ集積が着実に進んでおります。そして、2016年度から育薬処方に続く戦略処方であるGrowing処方を定め、治療ガイドラインに掲載を目指して、エビデンスの構築に取り組んでおります。

漢方製剤の生産量増加に対応するため、引き続き原料生薬の栽培及び加工技術の改良研究、野生生薬の栽培化研究に取り組んでおります。国内栽培生薬の拡大を目指す中、北海道の株式会社夕張ツムラにおいては、生産量拡大に向けた栽培研究、技術改良、及び機械化研究などを進めております。また、ラオス人民民主共和国のLAO TSUMURA CO.,LTD.においても生薬における生産性の向上及び品質の安定化に向けた研究を進めております。

当社では、生薬の品質と安全性を担保するために、生薬の残留農薬、重金属及び微生物汚染対策研究を推進しております。

漢方の国際化の推進にあたっては、漢方・生薬事業を通じて培った技術・ノウハウと、日本国内の「育薬」研究による基礎・臨床の最新データを米国開発に連携させる体制を整え、大建中湯の米国における医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しております。

2018年度に、対象領域をPOI*1に集約し、その開発を進めていくための日本、米国におけるアドバイザリー・チームを編成しました。POIは、腹腔鏡手術が広く普及している米国においても、重要な医療ニーズがある領域であり、大建中湯はその治療薬として有望であるとの評価が得られております。

2019年度は、FDA*2とのミーティングやマスタースケジュールの策定に取り組みました。

2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により後期第Ⅱ相臨床試験が計画通りに進捗しておりませんが、2021年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を考慮しながら、臨床試験を進めております。

当連結会計年度における研究開発費は、6,631百万円であります。なお、当社グループは単一セグメントであるため、研究開発費は全て医薬品事業に関するものであります。

 

*1 POI:

Post-operative Ileus(術後イレウス)

*2 FDA:

Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)