第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

当社グループは、究極的に成し遂げようという事業の志である「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を起点とし、基本的な価値観である経営理念「自然と健康を科学する」、社会から必要とされる存在意義である企業使命「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」を基本理念として掲げ、理念に基づく経営を継続的に実践しています。

 

(2) 経営戦略等

当社グループでは、2022年4月1日、TSUMURA Group DNA Pyramidを刷新し、プリンシプル「順天の精神」及び究極的に成し遂げる事業の志であるパーパス「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を新たに制定しました。また、サステナビリティビジョン「自然と生きる力を、未来へ。」と、3つの“P”(PHC:Personalized Health Care 一人ひとりに合ったヘルスケア提案、PDS:Pre-symptomatic Disease and Science “未病”の科学化、PAD:Potential-Abilities Development 潜在能力開発)を通じて、心と身体、個人と社会が「“Cho-WA”(調和)のとれた未来を実現する企業へ」を掲げた、長期経営ビジョン「TSUMURA VISION “Cho-WA” 2031」を策定しました。


 

ツムラグループのサステナビリティビジョンは、長期経営ビジョンの上位に位置づけられるものであり、漢方バリューチェーンを通じてツムラグループだからこそできる、持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、ツムラグループが優先的に取り組む必要のある重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業を通じた社会課題の解決と経営基盤の強化の両面から取り組みを行っています。

 

ツムラグループのマテリアリティ


(3)資本政策の基本方針

当社は、ROEを持続的な株主価値向上に関わる重要な経営指標として捉え、収益力や資産効率を高めることで、資本コストを上回るROEを目指してまいります。また、財務の健全性を確保しながら経営効率を高め、営業活動によるキャッシュ・フローや負債の活用、最適資本構成から許容される資金を、成長投資と株主還元へ適切に分配してまいります。

なお、株主還元においてはDOE(株主資本配当率)を指標として設定し、堅牢なバランスシートに依拠して、長期的な配当拡充を目指してまいります。

 

指標

2031年度に目指す水準

経営効率

ROE

10%

財務基盤の健全性

自己資本比率

50%以上

配当

DOE(株主資本配当率)

5%

 

(上記の業績見通し等の将来に関わる記述は、2031年度に目指すべき方向性のビジョンであり、今後さまざまな要因により上記数値と異なる可能性があります。)

 

(4)中期経営計画

2025年5月12日に公表した、第2期中期経営計画(2025年度-2027年度)は、5 つの戦略課題に取り組み、長期経営ビジョン実現に向けた積極的な設備および事業への投資を推進し、日本事業の安定成長と中国事業の拡大に努めてまいります。また、事業を通じた社会課題解決への貢献により、企業価値を高めてまいります。

第2期中期経営計画 戦略課題

① 漢方の標準治療の拡大と個別化治療の推進による漢方市場のさらなる成長

② KAMPOmicsによる新たな価値の創造、エビデンスに基づいた「未病三防」の市場展開と漢方のグローバル化への挑戦

③ 中国における中成薬事業への参入、飲片の付加価値サービスの展開と中薬研究開発体制の確立

④ 最高の顧客体験価値の創造を目的とした漢方バリューチェーンの DX 化による安定供給・ローコストオペレーション体制の確立と製品価値の向上

⑤ ビジョン実現に資する人的資本の充足と漢方薬的組織の開発推進による組織・人的資本価値の向上

 

 

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

第2期中期経営計画(2027年度)数値目標は以下のとおりです。

 

2027年度

売上高

2,340億円

営業利益

430億円

ROE

8%

 

前提条件:薬価改定(2025年度、2026年度、2027年度)

為替レート 20.1円/元(2025年度-2027年度)

 

-戦略課題達成のための重点施策-

 

① 漢方の標準治療の拡大と個別化治療の推進による漢方市場のさらなる成長

・医療ニーズの高い処方に対するエビデンスとプロモーションの強化により漢方治療の標準化を拡大する。

・診療領域基本処方※1すべてを処方する医師が4人に1人以上となる医療現場を実現し、漢方治療の個別化を推進する。

・情報提供のデジタル化を DX 化へ発展させ、医療従事者一人ひとりがいつでも必要な情報を取得できる体制を実現する

 

② KAMPOmics※2による新たな価値の創造、エビデンスに基づいた「未病三防※3」の市場展開と漢方のグローバル化への挑戦

・漢方治療の標準化をさらに拡大させるため、重点3領域のアンメットメディカルニーズに密接に関与する処方を中心としたエビデンス創出に注力する。

・未病の科学的解明により未病マーカーを創出し、エビデンスに基づいた未病改善サービスの開発に注力する。

・個人に合わせた最適なヘルスケアサービス、漢方治療(個別化医療)を提供するため、KAMPOmics®をベースとした健康状態の可視化とともに、漢方処方のレスポンダーマーカー※4のエビデンス構築をする。

・個人の状態に合わせた最適な漢方治療(個別化医療)の提供のため、アライアンスの強化により、漢方診断サポートシステムの開発をさらに推進し、一般消費者向けサービスへの横展開を図る。

・漢方のグローバル展開を目指し、米国における TU-100(大建中湯)の開発活動を強化する。

・生薬から製剤までの一貫した製造および品質管理手法をグローバルスタンダードにする。

 

③ 中国における中成薬※5事業への参入、飲片※6の付加価値サービスの展開と中薬研究開発体制の確立

・古典処方を保有する中成薬企業との事業展開を図り、ツムラの生薬およびノウハウを活用した中成薬を提供する。

・公立病院チャネルを有する飲片企業との連携、保険適用外の民間病院チャネルの拡大、ならびにオンライン販売の拡大により、付加価値サービス「一人一方※7」を展開し、飲片の外販を拡大する。

・飲片事業の拡大とともに、医療用漢方製剤の原料生薬の価格安定化を図ることも踏まえ、品質や取扱量、価格などにおいて優位性のある生薬の品目数を増やす。

・中国の研究機関との連携により、生薬・製剤の国際標準化を目指し、研究開発・品質評価体制を確立する。

 

④ 最高の顧客体験価値の創造を目的とした漢方バリューチェーンの DX 化による安定供給・ローコストオペレーション体制の確立と製品価値の向上

・安定供給と適正在庫の両立のため、販売・生産・調達計画の高精度化などにより迅速な意思決定体制を構築する。

・最高の顧客体験価値の創造のために製品剤形・包装形態最適化のグランドデザインを描き、ロードマップを策定し推進する。

・ローコストオペレーションや組織間の知識共有・連携を実現するために、データ一元化・標準化と生成 AIの活用を連動させ推進する。

・工場における医薬品製造の生産性および品質の向上のため、スマートファクトリー化を加速する。

・AI を活用した生薬選別自動化の拠点拡大のために、選別可能な品目を増やし、設備コストパフォーマンスを向上させる。

 

⑤ ビジョン実現に資する人的資本の充足と漢方薬的組織※8の開発推進による組織・人的資本価値の向上

・理念浸透・コーチングの継続により理念経営を昇華させるとともに、漢方薬的組織を目指し、組織開発を実施する。

・経営人財養成機能を最適化するとともに、理念経営を支える多様性に富んだグローバル経営人財の輩出を推進する。

・動的な人財ポートフォリオ実現に向けて、スキルマップ(管理職・専門人財)を策定・更新し、それに基づいた人財の採用、配置、育成を実施する。

・ツムラ流“養生”健康経営を実践する。

 

※1 診療領域基本処方

各診療領域において、患者数が多い疾患・症状に対して、適正に使用することができる(適用を有する)処方を当社独自に設定

※2 KAMPOmics®

ツムラの強みである先端技術(メタボローム・遺伝子・腸内細菌・システムバイオロジーなど)の研究を組み合わせ、日本の伝統医学である漢方医学と、多成分で複雑な漢方薬を統合的に理解するためのツムラ独自の研究パッケージ。当社の登録商標。

※3 未病三防

治未病(未病先防)、重症化抑制(既病防変)、再発抑制(癒後防復)

※4 レスポンダーマーカー

治療に対して効果がみられる可能性が高い患者様(レスポンダー)を層別化するための生理学的指標

※5 中成薬

中医学の理論に基づいた処方を顆粒や丸剤等の形にした薬剤。

※6 飲片

原料生薬を切裁したもの。刻み生薬。

※7 一人一方

患者様の代わりに、スマートファクトリー設備で処方箋どおりに飲片を煎じ、煎液、流エキス、エキス顆粒に加工・包装したのものを、直接患者様に郵送するスマートサービス

※8 漢方薬的組織

生薬を「人」「部門」に、漢方薬を「部門」「会社」に例え、成果を創出する調和した組織のこと

 

(6) 経営環境

① 国内市場

超高齢社会において、医療費の増大に伴う各種制度変更、地域医療のあり方や、生活者のセルフメディケーション意識の向上など、製薬会社が直面する課題は少なくありません。

国の施策においては漢方への期待と役割が大きくなっています。2015年に厚生労働省より公表された「医薬品産業強化総合戦略」の中の一つに、漢方薬は「我が国の医療において重要な役割を担っている」と明記されています。また、「がん対策加速化プラン」では、支持療法の開発・普及のために実施すべき具体策として、「漢方薬を用いた支持療法」があげられています。当社は、このような政策に準ずる施策に加え、「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」や総合診療医・在宅医療の推進などを含む「地域包括ケアシステム」の構築などの医療政策、人口動態に伴う疾病構造の変化(高齢者疾患、女性特有の疾患など)を踏まえた取り組みを進めてまいります。

「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」において、医療関連のオーソリティによって、漢方医療を取り巻く課題と対応策が「提言書」として2017年に取りまとめられました。その後、健康寿命の延伸に資する観点から個別化医療が重要視され、漢方薬の必要性がより一層見直されてきている現状を踏まえ、2021年に提言書が更新されています。当社は、日本漢方生薬製剤協会の活動を通じて、この提言を実現するために、産官学共同の課題として取り組んでいます。

外部環境としては、インフレに伴う物価上昇等の影響による原資材価格の高止まりや為替変動など、厳しい事業環境が継続しています。また、少子高齢化に伴う生産年齢人口減少が予測されており、少ない労働量でも成果を生み出せる企業体質への転換を図るべく、デジタル・ロボット技術を用いた自働化投資や従業員のエンゲージメントの向上に継続的に取り組んでいます。

 

② 中国市場

中医学の理論に基づき製剤化された中成薬や飲片(刻み生薬)などの中薬は中国において長年使われている薬ですが、近年は中薬の発展を促進する政策が発表されています。2016年に国務院が発表した「健康中国2030計画綱要」では、現代医学と中国医学の双方を重視し、中薬生産の規範化、規模化を推進するとともに、理論研究と薬品開発に取り組むという方針が発表されています。また、2022年1月に「第14次五カ年医薬工業発展計画」が発表され、中薬の研究開発、技術と品質、製造レベルなど多方面から計画を行っていく方針が示されています。

また、中国では急速な高齢化が進行しており、高齢者人口は2022年現在で2.1億人を超え、2035年には4億人を超えると予測されています。

中国における中薬の市場規模は、中成薬、飲片(刻み生薬)を合わせて2023年時点で約15.9兆円と日本の漢方市場と比較して約60倍と大きな規模ですが、このような環境の変化を踏まえると、さらに拡大するとみられています。

当社は、これまで国内事業で積み上げてきた技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中薬業界の発展と中国国民の健康に貢献する企業を目指しています。

 

(7) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 第2期中期経営計画に基づく取り組み

「(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しています。

 

② 製商品の品質と安全性の追求
1) 品質保証

当社は、製商品の品質と安全性の追求を最も重要なテーマであると考えています。この品質重視の考え方「ツムラクオリティカルチャー」を漢方バリューチェーンの基盤とし、品質保証における継続的な改善と強化に取り組んでいます。

「ツムラ品質マネジメントシステム」

当社は、「品質方針」のもと品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステム」の体制を整え、品質を重視する取り組みを推進しています。このシステムは、当社グループ全体を取り込む包括的なものであり、これによって経営陣の責務をさらに明確にしました。また、グローバル化(PIC/S※対応を含む)や法改正などにも適正に対応できる仕組みとなっています。

 

品質方針

当社およびグループ会社は、価値創造企業を目指し、“KAMPO”で人々の健康に寄与するため、以下の品質方針を定めています。

・高品質かつ安全で信頼される製品を安定的に供給します

・医薬品に関する薬事関連法規を遵守します

・お客様の声を聴き、継続的な品質改善に努めます

・安全な生薬の安定確保を実現します

・研究の信頼性を確保し、研究成果を適切に提供します

・全役職員に対し、適切な教育を実施し、高い意識を持つ人財を育成します

・これらを実現するため、経営資源を適正に配分します

 

ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程のもと、生薬栽培から最終製品のデリバリーまでのサプライチェーン全般を対象として法令遵守や当社として守るべき基準を明記した文書をそれぞれ社規として体系的に構築しています。

これは当社独自の「品質システム」であり、当社及びグループ会社のすべての事業における品質重視体制を構築し、高品質な漢方製剤を患者様に提供するための活動となっています。

 

※ PIC/S:

Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Schemeの略称。医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み。

 

2) 「ツムラ生薬GACP※」

当社は、「ツムラ生薬GACPポリシーに関する規程」を制定し、運用しています。この規程は、「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」に基づき、当社およびグループ会社による生薬生産の管理において、生薬の安全及び品質を保証するために遵守すべき基本的要求事項を定めることを目的としています。

ツムラ生薬GACPは、「ツムラ生薬GACPガイドライン」「生薬生産標準書」「生薬トレーサビリティ」「教育・監査・認証」で構成されています。

その一つである生薬トレーサビリティは、生薬の生産地から生薬製造所に納入される各段階で、生産団体・生産者の情報や栽培・加工などの記録を収集・保管し、情報の追跡と遡及を可能とする仕組みであり、漢方製剤の製造工程、流通過程の履歴情報と併せ、医療機関から生薬生産地までの全履歴情報の追跡・遡及を可能としています。

今後も、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにし、安全で安心できる生薬の安定確保のために、ツムラ生薬GACPを継続的に強化し運用していきます。

 

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice(生薬生産の管理に関する基準)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

ツムラグループのマテリアリティ(重要課題)は、パーパス「一人ひとりの、生きるに、活きる。」、経営理念「自然と健康を科学する」の体現に向けた事業への取り組みそのものを指します。ツムラグループの事業から創出される「自然」と「健康」に関わるすべての価値は、社会との共通価値の創造につながります。

ツムラグループの事業は、原料生薬の栽培からはじまる“漢方バリューチェーン”によって構成され、自然環境と深い関わりがあります。

私たちは、事業の根幹を成す豊かな自然環境を未来へつなげていくために「自然環境の変化や危機に最も敏感な企業」であり続けます。また、持続可能な社会の創造に向けたさまざまな課題の解決に事業を通じて取り組んでいきます。この決意を、「自然と生きる力を、未来へ。」というサステナビリティビジョンのメッセージとし、人間・社会・地球環境のサステナビリティを推進しています。

また、「サステナビリティ憲章」においては、ツムラグループおよびその役職員が「サステナビリティビジョン」実現のために取るべき行動、姿勢を規定しています。本憲章をツムラグループおよびその役職員が遵守し、各ステークホルダーの皆様との価値観の共有とより良い関係の構築を図り、サステナビリティビジョンの実現を目指していきます。

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

自然資本および気候変動を含むリスクと機会や、ツムラグループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るための重要な意思決定は、取締役会が担っています。また取締役会で戦略の決定、投資判断等を行うに際しては、自然資本および気候変動に係る影響を踏まえて意思決定を行っています。

サステナビリティ委員会(2021年10月設置)は自然資本および気候変動を含むサステナビリティに関する議題を扱っています。2023年度には「委員長報告会」も設置し、サステナビリティに関する各分科会の進捗報告とそれに対する経営の指示が迅速に行われる体制を構築しています。

サステナビリティ委員会の委員長はサステナビリティに関する業務の担当役員である取締役Co-COOが担っており、サステナビリティ委員会で審議された全てのテーマは委員長(取締役Co-COO)が取締役会に報告します。

取締役会は、サステナビリティ委員会から報告された全ての案件について、パーパス、経営理念およびサステナビリティビジョンの体現に資するかも含め、内容を確認し、方針の提示や監督を行っています。

また、自然資本および気候変動を含む長期経営ビジョンの実現を通じて当社の企業価値を持続的に向上するため、2022年度より当社の取締役(監査等委員である取締役および非業務執行取締役を除く)および当社と委任契約を締結している執行役員の中長期業績連動株式報酬(長期インセンティブ)の評価の一部として、自然資本および気候変動に関連するサステナビリティ課題の進捗目標の達成度に応じた評価指標を組み入れており、この配分割合は25%です。

人的資本に関しては、取締役会からの諮問を受けて、TSUMURA VISION “Cho-WA” 2031の実現に必要な施策について当社グループにおける組織・人的資本政策基本方針にもとづき議論し、業務担当部門等へ方針提示するため、2022年10月に「組織・人的資本政策委員会」を設立しました。ツムラ独自の7つの資本※を構成する組織資本・人的資本による価値創造プロセスを可視化し、企業価値の向上につなげてまいります。

 

 

<自然資本および気候変動関連のガバナンス体制図>


 

<自然資本および気候変動関連のガバナンス体制>

取締役会

・自然資本・気候変動対応の方針提示、監督

・サステナビリティ・ターゲットの決定・評価

サステナビリティ
委員会

・自然資本・気候変動リスク・機会の検討

・自然資本・気候変動リスク・機会に関する活動計画の策定、推進

・自然資本・気候変動に関する対応状況およびサステナビリティ・ターゲットの進捗状況のモニタリング

・自然資本・気候変動リスクに関する事項の取締役会への報告

リスクマネジメント委員会

・自然資本・気候変動に関わる経営リスク等の検討、計画立案、進捗確認と
取締役会への報告

 

 

② リスク管理

自然資本および気候変動関連のリスクに関しては、主にサステナビリティに関するテーマを扱うサステナビリティ委員会と、経営リスクに関するテーマを取り扱うリスクマネジメント委員会において審議され、両委員会が情報を共有しながら、リスクを評価・管理しています。

サステナビリティ委員会は、外部専門家の助言も踏まえ、自然資本および気候変動が中長期的にツムラグループの経営戦略に与えるリスクと機会の分析、対策の検討を行います。その結果については取締役会に報告し、取締役会は必要な指示を行い、対応状況を監督します。

リスクマネジメント委員会は、あらゆる要因による工場の操業停止等のリスクを、財務上の影響の多寡、発生確率の高さを勘案し、優先順位を決定のうえBCP対応を含む対策の検討を行い、その結果を取締役会に報告します。サステナビリティ委員会とリスクマネジメント委員会で検討するリスクは、事業リスクとして統合・管理しています。

 

※ ツムラ独自の7つの資本

IIRC(国際統合報告評議会)が発行した「国際統合報告フレームワーク」の中では、組織固有の価値創造のあり方を検討する概念として「6つの資本」が提示されています。一方、当社グループでは7つ目の資本として「組織資本」を加えています。この資本は、私たち独自の考え方で、「複数の生薬の組み合わせで構成されている漢方薬のように、固有の能力と個性を持った人々が多く集まり、目指すべき社会価値を創出するために調和している組織」を指しています。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

① 自然資本・気候変動(TNFD・TCFD)の統合

私たちは、社会との共通価値を創造するために、7つの資本を源泉として、理念に基づく経営を実施しています。その中でも、事業の柱となる漢方事業に不可欠な生薬は自然資本そのものです。そのため、生物多様性をはじめとした自然資本の保全・回復や、脱炭素等の気候変動対応は必要不可欠であると認識しており、関連する取り組みを積極的かつ継続的に進めています。開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言のフレームワークに基づき、それぞれ2021年度および2024年度に開始しました。

自然資本と気候変動は密接で不可分な関係であり、TNFDの最終提言書においても、自然関連開示と気候関連開示の統合の重要性について明記されています。こうした背景から、2025年度は、「ガバナンス」、「リスクと影響の管理」、「戦略」の一部および「指標と目標」に関し、自然関連課題・気候関連課題の統合的な分析・開示を進めました。

 

a 戦略

昨年度までの分析結果を基に、自然関連・気候関連を統合する形でリスク・機会の特定・評価の更新を行いました。リスク・機会の評価においては、社内の関連部門とのヒアリングやワークショップを実施し、外部専門家の助言も参考にしながら進めました。

自然資本・気候変動等に関し不確実な将来を的確に見据えることは難しい状況ですが、私たちは、起こりうる世界における自社事業のレジリエンスや対応戦略を確認・検討するために、3種類の異なる将来シナリオの下でリスク・機会がどのように発現するかを分析しました。3つのシナリオそれぞれにおいて、2030年および2050年における各リスク・機会項目の重要性を評価しました。

なお、各リスク・機会項目の重要性評価においては、影響度(小:10億円未満、中:10億円以上100億円以下、大:100億円超)と、発生可能性(低:10年に1回程度以下、中:数年に1回程度、高:年に1回以上)を勘案し、対応策の影響を考慮しない場合を想定して評価を進めました。

 

なお、リスク・機会項目の分析等、TCFD・TNFD統合開示の詳細は以下をご覧ください。

 ●TNFD/TCFD提言に基づく統合的な情報開示
   https://www.tsumura.co.jp/sustainability/environment/tnfd-tcfd/
 

 

 

<重要性の評価方法>

<ワークショップの様子>



 

 

<選定したシナリオ>


<シナリオ#1~4の世界観>

 

#1

#2

#3

#4

①生態系サービスの劣化

緩やか

進んでいる

激しい

緩やか

②政策・法規制

強化される

強化される

後手に回る

後手に回る

③技術

大きく進展する

進展する

進展は限定的

進展は限定的

④市場・社会の関心

高い

高い

低い

低い

⑤気候変動の状況

2100年までの気温上昇は
 1.4~1.5℃程度の経路で進捗
(1.5℃シナリオに相当)

2100年までの気温上昇は
 1.7~1.8℃程度の経路で進捗
(2℃シナリオに相当)

2100年までの気温上昇は
 2.4~4.4℃程度の経路で進捗
(4℃シナリオに相当)

2100年までの気温上昇は
 1.4~1.5℃程度の経路で進捗
(1.5℃シナリオに相当)

 

 

 

シナリオ#1から#3において重要度「大」と評価されたリスク・機会(以下、重要なリスク・機会)を整理した結果、生態系サービスの劣化が深刻化する#2や#3のシナリオでは、重要なリスクが比較的多く認められました。

一方、シナリオ#1では「低環境負荷・高効率の生産プロセスへの移行(栽培技術・農法)」が、シナリオ#2および#3では「気候変動に伴うニーズの変化」がツムラグループの事業機会として重要であると評価されました。

なお、評価したリスク・機会項目は全体で13件(リスク8件、機会5件)であり、全てのリスク・機会に対して対応策を講じていることも確認しました。

 

<各シナリオにおける重要なリスク・機会>


 

 

b 指標及び目標

イ 指標

当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1、2、3のGHG排出量を定めています。

また、第2期中期経営計画より、4つの観点からサステナビリティ活動をとらえ、その活動全体において、ガバナンス・評価を向上させることを戦略としています。気候、自然資本は密接で不可分であるとの考え方のもと、後述するサステナビリティ・ターゲット2027では、サステナビリティ区分とマテリアリティを紐づけ、自然資本への依存・影響を考慮し、気候変動やネイチャーポジティブに対する直接的な目標を設定したほか、前述のリスク・機会に関する目標も部分的に包含させ、管理していきます。

 

<サステナビリティ区分>


 

 

 

ロ 実績

2023年度のScope1、2、3のGHG排出量実績は、以下のとおり(第三者検証済み)です。

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

42,744t

(前年度比0.5%減)※

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

45,483t

(前年度比30.6%減)※

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

293,849t

(前年度比15.6%増)※

 

※2022年度から天津津村製薬有限公司、盛実百草薬業有限公司の排出量を算出対象に含めています。

※Scope3の排出量増加の主な要因は、原料生薬調達量の増加によるものです。

  ●環境データ:https://www.tsumura.co.jp/sustainability/environment-data/ 

 

 

ハ 目標

サステナビリティ・ターゲット2027では、カーボンニュートラルの実現に向けて、GHG排出量(Scope1、2)の削減に加え、サプライチェーンエンゲージメントを通じたScope3への対応に着手します。

自然資本に関わる目標として、新たに野生生薬の栽培化や生物多様性保全活動、自然共生サイトの登録を推進するとともに、プラスチックの新素材化、産業廃棄物(生薬残渣)の利活用および水の再利用を推進します。自然資本に関わる目標は、気候変動の緩和や適応にも資すると考えています。

 

サステナビリティ・ターゲット2027

基準年:2020年度

 

マテリアリティ

サステナビリティ区分

大項目(課題)

LTI-Ⅱ

指標

目標

※1

 

 

※2

 

2027年度

2031年度

自然①

カーボンニュートラル

の実現

GHG

GHG排出量削減 (Scope1,2)

15%削減

50%削減

 

サプライチェーンエンゲージメント
 (Scope3)件数

生薬・原資材等
 :51件

自然②

自然③

ネイチャーポジティブ

の実現

生薬の栽培化研究

野生生薬の栽培化 (品目数)

7品目※3

23品目

森林・土壌・水源の涵養

 

生物多様性保全活動 (地域数)

4件

 

自然共生サイト登録

2件

自然④

ツムラサーキュラー

エコノミーの構築

プラスチック

新素材化率 (%)

30%

50%

産業廃棄物

 

生薬残渣の利活用推進
   (有価物化、%)

30%

 

水の再利用率 (%)※4

60%

健康①

地域・社会

リレーション構築

生薬産地・生産拠点等の

 ・自然環境保全
 ・地域振興(教育・雇用)
 ・社員教育

 

生薬栽培地や地域との協働
 (次世代育成)

6件

 

役職員向けサステナビリティ教育
 e-learning(件)

5件

 

※1 マテリアリティの略号は、自然①:気候変動対策(カーボンニュートラルの実現)、自然②:生物多様性の保全(森林・土壌・水源の涵養)、自然③:持続可能な原料調達(生薬の栽培化研究等)、

自然④:資源の循環利用(水・生薬残渣の再資源化)、健康①:天然物由来の高品質な医薬品・製商品へのアクセス拡大、を意味します。

※2 〇を付したものは、中長期業績連動株式報酬(LTI-Ⅱ)の指標の一部として管理されています。

※3 当社で使用する生薬119品目のうち、野生生薬を使用する品目数は基準年(2020年度)において34品目です。

※4 対象は、静岡・茨城・上海・天津の4工場です。ツムラグループ全体の排水量のうち、およそ96%(2023年度実績)はこれらの4工場が占めています。工場では、取水時よりも清浄な水を排水しています。

 

サステナビリティ・ターゲット2027:https://www.tsumura.co.jp/sustainability/environment/manegement/

 

 

② 人的資本・多様性への対応
a 戦略

「組織・人的資本」こそが企業・事業価値を創造する源泉であるとして、「目指すべき人財像」、「目指すべき組織像」、「目指すべき企業文化」を明確にしています。長期的な視点から、パーパスを掲げた理念経営を支える漢方薬的組織※を目指し、人財の潜在能力開発を促し養成し続けます。

 

第2期中期経営計画では、ビジョン実現に資する人的資本の充足と漢方薬的組織の開発を通じて、組織・人的資本価値の向上を目指します。理念経営の昇華を図り、理念浸透とコーチングによる漢方薬的組織の構築を進めるとともに、経営人財養成機能を最適化して多様なグローバル人財を輩出します。また、動的な人財ポートフォリオの実現に向けてスキルマップを策定・更新し、それに基づいた人財の採用、配置、育成を実施します。さらに、ツムラ流“養生”健康経営を実践し、組織の健康と活力を高める取り組みを進めます。

 

※漢方薬的組織:私たちは組織のあり方を、生薬=部門・人、漢方薬=会社・部門とみなし、調和の保たれた組織こそが当社グループの目指すべき人財像・組織像であると定義しています。すなわち、「会社という漢方薬は、それぞれの独立機能を有する部門という生薬で構成され、その調和・協業を図る中でベクトルを合わせ、大きな成果を生み出す。また、部門という漢方薬は、一人ひとり異なる力を有する人という生薬で構成され、協調・協働しながら部門の目標を達成する」というのが、当社グループの組織のあり方であると考えています。


[経営人財養成]

社内人財養成機関である「ツムラアカデミー部」を中心に、グループ経営人財の養成と企業文化の醸成に取り組んでいます。

パーパスを掲げた理念経営・ビジョン経営を実践し、ツムラグループを牽引する経営人財を連綿と輩出するために、若手・中堅社員を対象とした「ベーシックプログラム」、次世代経営人財養成プログラムである「経営人財養成講座」といった養成プログラムを実施しています。

2024年度末時点での3年間の経営人財養成講座プログラム修了者は100名となっており、修了者から執行役員等が複数人選任されています。

さらに、長期ビジョンの実現を牽引する次期・次々期経営人財輩出の仕組み「T-Next」について、人財養成プログラムだけでなく、選抜・育成計画・配置・評価を含めて計画的に実施することで経営人財候補者を輩出しています。

 

 

 

 

 

(単体)

 

2020

2021

2022

2023

2024

女性取締役比率(%)

11.1

11.1

11.1

11.1

11.1

女性執行役員比率(%)

7.1

7.1

7.1

 

 

[組織・人的資本政策]

イ 目指すべき人財の採用

事業戦略実現とのための人財ポートフォリオにおける現状の課題解決と将来あるべき姿に向けて、新卒採用とキャリア採用をバランスよく実施しています。また、「女性の新卒採用比率50%の維持・継続」を掲げ取り組んでいます。

 

<人財ポートフォリオ>

「長期経営ビジョン TSUMURA VISION “Cho-WA”2031」を実現するために、どのような人財の量・質が必要か人財ポートフォリオを策定することで、現状のギャップ及び課題を抽出・整理した上で、短期的・長期的の両観点から、必要な人事戦略・施策を実施していきます。

 

 

 

 

 

 

 

(単体)

 

 

2020

2021

2022

2023

2024

 新卒採用社員数(人)

男性

22

21

21

35

29

 

女性

26

28

24

30

39

 

 

 

 

 

 

 

 キャリア採用社員数(人)

男性

25

40

124

121

109

 

女性

14

24

42

46

41

 

 

 

 

 

 

 

 平均勤続年数(年)

 

19.1

18.9

18.1

17.2

16.5

 新卒3年定着率(%)

 

92

100

86.3

97.9

92.3

 離職率(%)

 

1.8

1.44

2.67

2.78

3.05

 

 

ロ 目指すべき人財の育成・配置

「自ら育つ人を育む企業文化を創造する」を人財開発ポリシーとして掲げ、[人][組織][経営]の観点から各層に対応したさまざまな教育機会を設けています。社員のリスキル教育や若手社員のベーススキル習得支援にも注力し、潜在能力開発のため「キャリアチャレンジ(社内公募)制度」を導入するなど、自立的なキャリア形成を支援しています。

また、タレントマネジメントシステムにより、社員の基本情報や能力・保有スキル等のデータを一元化し、戦略的な人財育成や人員配置を進めています。

 

[人]自ら学び、自ら成長しようとする人財に実践的な教育機会を提供します。あるべき姿、能力要件を明示し、教育機会の充実と自ら学ぶ仕組みをつくります。

■理念経営を担う人財の早期育成

■入社3年間を「ツムラ人の基盤づくり」として育成強化

■上位等級に必要な能力を昇格前に習得

■自立的な学び、成長を支援

 

[組織]自ら成長しようとする人財づくりのため管理職を中心に育成マインドを育みます。部下育成を管理職の最も重要な役割の一つと位置づけ、業務を通して部下を動機づけし、育成する意識を強化します。

■部下育成マインドの強化

■コーチング文化の醸成

■1on1コーチングの実施

■育成計画の共有(上司-本人-人事部)

 

[経営]ビジョンの実現を牽引する次期・次々期の経営人財を養成する仕組み(T-Next)により継続的に育成される体制を整えます。若手教育でツムラ人としての基盤を固め、各層において次世代の経営人財が育成される仕組みをつくります。

■T-Nextによる計画的な育成

■各層のプログラムにより実践を通じた育成

 

 

 

 

 

 

(単体)

 

2020

2021

2022

2023

2024

社員一人当たりの教育費(千円)

93

124

126

120

115

年間教育時間(人事部、ツムラアカデミー部における実施)

1,372

1,702

1,575

1,334

1,324

 

 

ハ ダイバーシティ&インクルージョン推進

当社グループでは、「多様な従業員のさらなる活躍に向けた環境整備と企業文化の醸成」、「多様性を重視した公平・公正な採用と登用の継続」、「女性従業員・キャリア採用入社従業員のキャリア形成支援」を掲げ、多様な視点・発想や価値観を持つすべての社員の活躍と成長を実現するため、「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みを推進していきます。

具体的には、性別、年齢、国籍、障がいの有無などに関わらず、多様な人財を迎え入れ、個性を尊重し合い、組織(チーム)メンバーで目的・価値を求心力とした“対話”により、社員一人ひとりの潜在能力を引き出すことで、イノベーションの創出、企業価値の向上を図っています。

働きがい・生きがいを持って活躍できる職場環境づくりのために、女性管理職育成セミナーの開催や育児・介護等と仕事の両立支援制度のさらなる拡充に取り組んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

(単体)

 

 

2020

2021

2022

2023

2024

 従業員数(人)

 

2,556

2,564

2,631

2,711

2,765

 従業員の女性比率(%)

 

21.7

23.0

24.3

25.3

26.2

 女性管理職比率(%)

 

5.9

6.3

7.4

8.4

10.1

 

 

 

 

 

 

 

 育児休業取得比率(%)

男性

19.0

37.0

52.0

57.3

74.7

 

女性

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

 

 

 

 

 

 

 

 育児休業平均取得日数(日)

男性

24.1

12.3

24.6

26.5

55.0

 

女性

125.4

121.4

119.3

232.2

189.8

 育児休業取得者復職率(%)

 

97.5

100.0

100.0

100.0

100.0

 

 

 

 

 

 

 

 障がい者雇用率(%)

 

2.83

2.91

2.58

2.50

2.23

(注)女性管理職比率については、各年度における4月1日時点の割合を記載しています。

 

 

ニ 従業員エンゲージメント向上

「長期経営ビジョン TSUMURA VISION “Cho-WA”2031」を実現するためには、従業員一人ひとりのエンゲージメント向上が不可欠です。組織に対して自発的に貢献する意欲が高まるよう、理念の浸透、従業員の成長を支援する能力開発やキャリア構築、働き方や健康管理の環境整備に取り組んでいます。

また、目的・価値を求心力とした対話により主体的に行動することで、自身の潜在能力を引き出す企業文化の醸成を進めています。TSUMURA GROUP DNA Pyramidの考え方などを参加者同士で対話する「理念浸透・コーチミーティング」を継続し、「ツムラ“対話”セオリー」として確立するとともに、漢方薬的組織づくりを目指した取り組みとして「チームビルディング」「個別組織サポート」を実施しています。

理念浸透サーベイ結果は4.04点/5点満点と高い水準を維持しています。自業務を高い品質で実行することや職場の改善など、より実践的な内容に焦点が移り、立場や役割にとらわれず、各人が自分なりにパーパスや基本理念を理解し、咀嚼して行動していることが、コメントから読み取れました。


<従業員株式交付制度>

2022年4月に成長性としての「長期経営ビジョン」を10年単位で策定し、持続性としての「サステナビリティビジョン」は2050年のカーボンニュートラルの実現をゴールに見据えて10年ごとのマイルストーンを策定しています。この2つのビジョン実現に向けて、社員の意識向上と能力の発揮、大きな貢献を成す意欲をより一層醸成していくことを目的として、2023年4月に全従業員を対象とした従業員株式交付制度を導入しました。

 

<リスキル「デジタルリテラシー教育」>

全従業員がデジタルリテラシーを習得し、社内のDX化による生産性向上を円滑に進める目的で、2023年度よりデジタルリテラシーを高めるリスキル教育の取り組みをスタートしました。2024年度管理職のMOSExcel取得率は85%、ITパスポートは60%を越えました。

 

<キャリアチャレンジ(社内公募)制度>

2022年度より、やりたい仕事、働きたい組織や場所を選択できる機会を提供することで自発的にキャリアプランを描いて行動できる自主自立した社員を育成するため、キャリアチャレンジ(社内公募)制度を導入しました。社員の働きがい、モチベーションの向上につなげるとともに優秀な社員の発掘や社外流出の抑制を図ること、適切な人員配置により、組織力を強化することを目指しています。

 

<セルフ・キャリアドック制度>

社員一人ひとりが自律的・主体的なキャリア形成を築き、自身の目指す姿に向かって充実した働き方を実現するために、2024年4月にセルフ・キャリアドック制度を制定しました。従来実施してきた年代別のキャリアセミナーやセミナー後のキャリア面談に加え、いつでも気軽に相談できるキャリア相談窓口(キャリア テラス)を設置しました。

2024年度キャリア相談窓口(キャリアテラス)の利用者数は、キャリアセミナー後の相談者が42名、セミナー参加者以外の利用者も42名で、合計84名でした。利用者は、年代(20代~60代)、雇用区分(管理職、一般職、嘱託社員、契約社員)など隔たりなく多様な人財が利用しています。

 

<在宅勤務制度>

2023年4月より業務の適正管理、コミュニケーション確保の内容を規定した「在宅勤務規則」に基づく本格的な運用を開始しています。具体的には、業務及び目標管理の進捗等について、デジタルツールを活用した毎日の業務報告の実施、定期的な1on1による個別面談、課単位の打合せや情報交換により、職場での業務と同様にコミュニケーションを図ることで、円滑に業務を遂行できるような運用を目指しています。

 

 

<副業に関するガイドライン>

新たに「ツムラ副業に関するガイドライン」を制定し2024年4月より運用を開始しました。従業員一人ひとりが、自主・自立的に活躍できる場を社外に広げることでさまざまな分野の人とのつながりが広がり、自らの能力を向上させ、副業で得た経験やスキルを自身の業務へ活用することを支援するとともに、企業経営の基盤である人的資本価値の向上に向けた環境づくりを目指しています。

 

<健康経営の推進>

「ツムラ健康宣言」のもと、養生を中心とした健康経営を推進しています。製品やサービスを通じてステークホルダーの皆様に価値を提供する役職員が、養生を実践し健康に留意していることが、社会の信頼にもつながると考えています。また、健康経営の取り組みが認められ、経済産業省と日本健康会議から「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門に認定されました。

 

ツムラ健康宣言

養生人財育成システム



 

 

b 指標及び目標

イ 方針

多様性の確保に向けて、3つの方針を掲げ取り組んでいます。

「多様な従業員のさらなる活躍に向けた環境整備と企業文化の醸成」

・目的や価値を求心力とした「組織横断的な対話」の推進

・多様な価値観を受け入れ、尊重し合う職場環境づくり

・育児・介護等と仕事の両立支援制度のさらなる拡充

・「働きがい向上」活動の継続実施と柔軟な働き方の環境整備

 

「多様性を重視した公平・公正な採用と登用の継続」

・新卒・キャリアを両輪とする採用活動の継続

・女性の新卒採用比率50%の維持・継続

・個々の能力に応じ、経営に関わる重要課題、知見・経験の蓄積につながる職位等に登用

 

「女性従業員・キャリア採用入社従業員のキャリア形成支援」

・経営人財養成講座、次世代育成研修等プログラムへの積極的な女性参加と早期のキャリア開発

・女性リーダー養成プログラムの実施

・キャリア採用入社従業員の入社時導入研修の充実

 

 

ロ 目標及び実績

■数値目標

指標

2023年度

(実績)

2024年度

(実績)

2025年度

2026年度

女性管理職比率(注2)

8.4%

10.1

11.8

12.5%

育児休業取得率

男性

57.3%

74.7

100

100%

女性

100%

100

100

100%

育休平均取得期間

男性

26.5日

55

60

60日

女性

232.2日

189.8

120

120日

 

(注) 1 指標に関する数値は、連結グループにおける記載が困難であるため、具体的な取り組みが行われている提出会社のものを記載しています。

2 女性管理職比率については、各年度における4月1日時点の割合を記載しています。

なお、2025年度の女性管理職比率11.8%は実績となります。

 

■取り組み

・「女性管理職育成プログラム」による女性管理職育成推進

・「育MEN推進プロジェクト」による男性育休取得推進

・「働きがいを考えるオフサイトミーティング」による従業員エンゲージメント

・「コーチング文化の醸成」による個々の潜在能力発揮

・「チームビルディングサポートチーム」による組織開発推進

・「#OneMoreChoice ※1 推進チーム」による女性社員健康増進

・「人ツムナレッジCafe ※2 」による社員交流と自己啓発推進

 

※1 #OneMoreChoice

「隠れ我慢」を減らし、誰もがもっと心地よく生きられる健やかな社会を目指した取り組み。

※2 人ツムナレッジCafe

社員一人ひとりのキャリアビジョン実現に向け、部門や年代を超えて交流し、自発的に学び合うWEB上の場。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しています。当社グループにおいては、これらの事項に対して、発生を回避すべく対応していきます。また、発生した場合においても、その悪影響を最小限に留めることができるよう対応に努めていきます。

当社は、リスク管理主管部門が執行役員、業務担当部門、グループ会社のトップ等へのリスクヒアリングを行い、その結果も踏まえて「リスクマネジメント委員会」を開催し、経営リスクに対する取り組み状況の確認及び今後発生し得るリスクについて、必要な対処方法を確認しています。「リスクマネジメント委員会」における審議・調整、決定事項は定期的に取締役会に報告されています。また、企業活動に重大な影響を及ぼす恐れがある緊急事態が発生した場合には、「リスク管理規程」に則って対応しています。さらに、気候変動・自然資本(生物多様性等)に関するリスクについては、取締役Co-COOを委員長とする「サステナビリティ委員会」において確認・検討を行い、「リスクマネジメント委員会」と情報を共有しながら、適切に評価・管理しています。

なお、以下に記載する事項については、将来に関する事項が含まれていますが、これらは有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1) 医療制度

国内においては、超高齢社会や医療の高度化に伴う医療費高騰等による財政圧迫を背景として薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。経済財政諮問会議の工程表には「給付と負担の見直し」が示されているなど医療費抑制について引き続き検討されています。

このような環境変化に対応するため、当社グループでは薬剤費引き下げ政策強化への対策や漢方製剤の価値に対する理解の醸成に努めるなど、企業努力を重ねてきました。また、国民医療において重要な役割を担う医療用漢方製剤を持続的に供給するため、業界団体と連携しながら関係省庁などへの提言も行っています。

当社グループでは原価率低減や流通効率化に取り組んでいますが、さらなる薬価制度改革などの医療費抑制策が実施された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の厳格化により、追加的な費用が生じる場合や製品が規制に適合しなくなる場合、あるいは今後、予測できない大規模な医療行政の方針転換が行われた場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

引き続き、当社グループは、医療用漢方製剤のエビデンス構築や一般生活者への漢方啓発活動を通じ、医療用漢方製剤が国民医療に必要不可欠な医薬品として広く認知いただける活動を継続していきます

 

(2) 製品の供給

当社グループは、以下の要因により製品の供給に停止や遅延が生じた場合、当社グループの社会的信用、並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、原資材の市場価格高騰、エネルギーコストや原油価格の高騰、予想し得ない事象等が発生することにより業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

① 原料生薬の調達に関するリスク

当社グループの事業は、生薬を主要原料とした漢方・生薬事業です。その原料生薬の多くは天然物であることから、安全な生薬を安定確保するために、漢方製剤の長期的な需要予測に基づき、充分な在庫量の確保や国内外での生薬調達先の拡大、自社管理圃場※の継続拡大等に取り組んでいます。しかしながら、予期せぬ天候不順や自然災害等が発生した場合、必要な数量の確保が困難となる可能性、生薬価格が高騰する可能性、並びに栽培中の生薬の減損損失を計上する可能性があります。

当社は漢方製剤に供する原料生薬の約90%を中国から、残りの約10%を日本・ラオスその他の国から調達しています。漢方製剤の安定供給に向け、日本国内における原料生薬生産量拡大にも取り組んでいます。また、中国にも漢方エキス粉末の製造拠点を構えることで、輸出入等の法規制の変更、政治や経済状況の変化による原料生薬の輸入規制に対応できる体制をとっています。しかしながら、輸出入等の法規制の対象範囲の変更や想定を超える政治的・経済的状況の変化が発生した場合、製品供給への影響、並びに業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

※ 自社管理圃場:

当社が直接的に栽培指導をすることができ、栽培にかかるコストの把握と原料生薬の購入価格設定が可能な圃場。

② 副原料及び資材の調達、生産及び物流に関するリスク

当社グループは、製品製造工程で使用する副原料及び資材においても国内外で調達していますが、可能な限り複数の取引先からの購買体制を構築しており、需要予測に基づき、柔軟な調達を行っています。しかしながら、自然災害及び不安定な社会情勢を起因とする需要、供給等の急激な流通不安により、副原料・資材不足が発生した場合、製品供給への影響、並びに業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

製造拠点を日本国内では茨城工場と静岡工場の2拠点、中国では上海津村製薬有限公司と天津津村製薬有限公司の2拠点と分散体制をとっており、製造品目の切り替えを可能とした体制の構築を図っています。また、日本国内の生産施設については地震災害時の供給能力への影響を軽減すべく、免震・耐震構造の導入をしています。製品の供給拠点である物流センターについても、東西2拠点としており、安定供給に向けた体制を構築しています。

しかしながら、大規模な地震や火災等の災害、停電等による機能の低下や喪失、輸出入等の法規制の対象範囲の変更や想定を超える政治的・経済的状況の変化が発生した場合、製品供給に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復や棚卸資産の被害に備え災害保険等の加入をしていますが、想定を超える災害やその他予想し得ない事象等が発生した場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 製品の安全性及び副作用問題

当社グループは、品質と安全性を追求し、信頼性を向上させるための品質重視の考え方である「ツムラクオリティカルチャー」を経営理念に通じる価値観とし、その醸成に取り組んでいます。この考え方を基盤として、製品の製造に関しては、当該国や地域の品質管理基準を遵守し、品質方針のもとさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」を制定し、自社製造品のみならず委託製造品を含む全ての製品について品質を重視する取り組みを推進しています。また、この考え方は改正薬機法※1が求める法令遵守の考え方に通じるものです。

さらに原料生薬に関しては、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにするため、「生薬GACP※2ポリシーに関する規程」を制定し、管理を徹底して運用しています。これらの取り組みにより、原料である生薬の調達に始まり、製剤の製造に適した製造方法・製造設備の確立、製造管理、品質管理の実施及び出荷に至るまでをすべて自社の管理下で行う一貫体制を構築し、徹底した品質管理を実施することで最終製品の品質を確保しています。

しかしながら、当社が管理を行っていない農薬及び化学物質が原料生薬に残留する可能性等、何らかの理由により生じる製品の欠陥や安全上の問題を完全に回避できる保証はありません。また、当社グループが販売する医薬品に予期せぬ副作用問題が発生した場合、並びに医薬品以外の製品に健康被害等が発生した場合、従来の使用方法が制限されることや、当社グループ及び当社グループが販売する製品の社会的信用の失墜による投薬抑制や服薬拒否、使用拒否等が起こる可能性があります。

以上の結果、販売数量の減少や多額の損害賠償請求、大規模なリコール等につながるような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

※1 改正薬機法:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(2019年12月4日法律第63号)

※2 GACP:Good Agricultural and Collection Practice

 

(4) 国際事業

当社グループは、中国等、海外の国や地域において、生産及び販売活動を展開しています。

中国事業においては、経営管理機能を強化するため、津村(中国)有限公司を設立し、当社グループの持つ技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中国国民の健康に広く貢献できる企業を目指しています。

中国事業への参入にあたり、製造販売に関するライセンス等を有する企業との提携を検討及び実施しています。提携先の選定・実行にあたっては当社グループの企業理念に十分に共感いただける企業を選定対象とし、対象企業・対象事業の財務内容や取引等についての詳細な事前調査を行うなど、提携リスクを極力回避するよう努めています。しかしながら、提携後に偶発債務の発生や未認識債務が判明する可能性、並びに期待し得る事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮されず、結果として得られる将来の収益力が当初の見込みに達しない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、予期せぬ法規制の変更や政治的・経済的状況の変化・天候不順を含めた自然災害や生薬価格高騰等により影響を受ける可能性があります。

 

(5) 研究開発

当社グループは、将来の成長や業績の維持・向上を目的とし、国内及び海外においてエビデンスの構築や新製品・新技術に関する研究開発活動を行っています。しかしながら、このような当社グループの研究開発活動が、すべてにおいて成功する保証はありません。これらの研究開発活動が何らかの理由により中止や遅延、大幅なコスト増等が生じた場合、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

米国においては大建中湯の医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動していますが、何らかの理由により想定しているスケジュールに遅延が生じる、あるいは想定した費用を大幅に上回る等の可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 知的財産

当社グループは「ツムラグループ知的財産基本方針」を定め、知的財産の価値最大化を図り、社会へより良い価値を提供していくために、知的財産の創出や権利化、有効活用、厳格な管理、他社知的財産の尊重などにより、社会から信頼いただけるよう努めています。具体的に当社グループでは、特許権や商標権等の産業財産権を適正に取得するとともに、重要情報保管場所の施錠管理やアクセス可能人員の制限等ノウハウ・技術情報管理の徹底等により知的財産を適正に保護しています。しかしながら、当社グループの知的財産権の消滅や技術ノウハウ漏洩等が発生した場合には競争力が低下し、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。また、事業運営にあたっては、新製品やネーミング等において他社商標侵害を未然防止するための先行商標確認や新開発・導入技術に関する他社特許侵害防止等の事前対応を実施し、他社知財侵害係争が発生しないように努めていますが、完全に未然防止することは難しく、知的財産権に係る争訟により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 人財

当社グループは、「世界に手本のない漢方ビジネスにおいて、自らが新しい道を開拓でき、誰からも信頼される人の企業集団へ」を揚げており、人財※は持続的に企業を発展させるうえで、最も重要な資本の一つであると考えており、人財の採用・育成に努めています。

採用においては、当社グループでは経営戦略と連動した戦略的採用を実施しており、中国事業の発展に向けたグローバル人財の確保にも努めています。育成については、「自ら育つ人を育む企業文化を創造する」を人財開発ポリシーとして掲げ、[人][組織][経営]の観点から各層に対応したさまざまな教育機会を設けています。[人]の観点からは、自ら学び、自ら成長しようとする人財に実践的な教育機会を提供し、あるべき姿、能力要件を明示し、教育機会の充実と自ら学ぶ仕組みとしています。[組織]の観点からは、自ら成長しようとする人財づくりのため管理職を中心に育成マインドを育んでいます。部下育成を管理職の最も重要な役割の一つと位置づけ、業務を通して部下を動機づけし、育成する意識を強化しています。また、[経営]の観点からは、ビジョンの実現を牽引する次期・次々期の経営人財を養成する仕組みにより継続的に育成される体制を整えています。若手教育でツムラ人としての基盤を固め、各層において次世代の経営人財が育成される仕組みとしています。それらの取組みにより、多様な人財の開発を推進しています。

「ツムラクオリティカルチャー」を私たちの経営理念に通じる価値観とし、その醸成に取り組んでいます。しかしながら、必要な人財の確保・育成が計画的に推進できない場合は、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、各種法令の遵守に努めていますが、今後、予測される生産年齢人口の減少や、労働環境の多様化・複雑化への対応も含め、労働安全衛生やハラスメント等の対策が不十分な場合、当社グループの社会的信用、並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。

※ 当社グループでは全役職員が財産という観点から「財」の文字を使用しています。

 

(8) 競争

当社グループの収益の柱である医療用漢方製剤は、安心安全な生薬の安定確保及び均質性の高い医療用漢方製剤の安定供給、安全性・有効性に関するエビデンス集積等により、国内市場において長く優位性を保っており、様々な施策をさらに推し進めています。また、MRによる情報提供に加え、インターネットを介した情報提供により医療関係者からの期待にお応えしています。しかしながら、国内外の製薬企業等が医療用漢方市場に参入した場合や競合他社が新たな臨床エビデンスを構築した場合、今まで以上に競争が激化し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 為替レートの変動

当社グループが販売する漢方製剤の主原料である生薬は主に中国から輸入していることから、生薬及び漢方エキス粉末の輸入時には、為替動向を考慮しながら為替予約等によるリスクの軽減を図っていますが、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、連結財務諸表作成時に海外の連結子会社の現地通貨建財務諸表を円換算していることから、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 財務

当社グループの業績及び財政状態は主として、以下の財務的要因の影響を受ける可能性があります。

① 退職給付債務に関するリスク

当社グループの従業員退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されています。株価の下落や割引率の変更等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 資金調達リスク

当社グループは漢方事業の持続的拡大のための設備投資計画や中国における成長投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達していますが、金利等の市場環境の悪化、当社の信用格付の変動等により当社グループが望む条件での資金調達が困難となる可能性があります。

③ 有価証券の価格変動リスク

当社グループは価格変動リスクのある有価証券を保有しており、事前にリスクの軽減に努めていますが、金融市場における価格変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 税務

当社グループを構成する各事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適切に納税を行っていますが、各国における税制の改正、税務申告における税務当局との見解の相違等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは適用される移転価格税制の遵守に努めていますが、各国の税務当局と見解の相違が生じ、追徴課税や二重課税により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは税務関連法を遵守するため「ツムラ税務ポリシー」を制定し、適切な納税の実施に取り組んでいます。詳細については当社WEBサイトをご覧ください。

 

(12) 環境

当社グループは、環境に関する法規制の遵守を前提とし、省エネルギーや太陽光発電の導入などによる温室効果ガス排出量の削減、環境負荷の低い容器包装資材への切り替え、野生生薬の栽培化、水の使用量の削減・再利用促進等の自然環境の保全に努めています。しかしながら、万が一、企業活動上において土壌汚染や水質汚染等を惹起し、法令違反等の問題が発生した場合には、行政処分による課徴金、刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等の支払いが生じる可能性があります。その場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、気候変動及び自然資本(生物多様性等)に関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)及び自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に基づきリスクと対応策等について統合的な情報開示を行っています。気候変動に伴うリスクと対応策等についての詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」において記載していますのでご参照ください。

 

(13) 訴訟

当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟は現在提起されていません。しかしながら、当社グループは、企業活動上、漢方・生薬製剤等医薬品の副作用、健康被害、製造物責任、労務問題、知的財産権の侵害、契約の不履行、環境問題等様々な訴訟を提起される可能性があり、その動向ないし結果によっては、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 情報システム及び情報管理

当社グループは、企業活動上、大規模な生産システムを含む各種情報システムを活用しており、システムトラブル等への備えとして、データ保護を徹底する等情報システムの強化への適切な投資を行っています。大規模な地震や火災等の災害、停電等による情報システムの機能不全によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、事業継続計画(BCP)の整備等を実施していますが、想定規模を超える災害等によるシステム不全が発生した際には、事業を適切に遂行できない可能性があります。

また、情報資産の適正管理をより実効的なものとするため、「情報管理基本規程」をはじめとする、情報管理に関する社規の内容を全社に周知徹底し、情報管理の強化を推進しています。サイバー攻撃への備えとしてネットワーク・端末の監視等、セキュリティ対策と不審・不正メールの対処訓練も実施しています。しかしながら、悪意を持つ第三者によるサイバー攻撃ないし、従業員等の不注意または過失によるシステムの停止や機密情報の漏洩等を完全に回避できる保証はありません。

これらの事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 内部統制

当社グループは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制を含めた内部統制システムを整備・運用し、法令遵守の徹底並びにリスクマネジメントの強化に努めています。また、業務における人為的なミスや、内部関係者等による違法行為、不正行為等の不祥事が発生することのないよう、内部管理の基準を策定・運用する等の対策を実施しています。

しかしながら、内部統制システムが有効に機能せず、業務の有効性や効率性、財務報告の信頼性等を確保できない事態あるいは違法行為・不正行為等が生じた場合には、かかる信頼を回復するための運営費用の増加や、各部門の業務工数が増大する可能性を含め、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。

 

a 財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べて36,126百万円増加し、464,380百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べて1,381百万円増加し、134,270百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べて34,745百万円増加し、330,110百万円となりました。

 

b 経営成績

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べ、20.1%増加181,093百万円となりました。

利益につきましては、営業利益40,125百万円(前連結会計年度比100.5%増)、経常利益42,446百万円(前連結会計年度比80.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益32,428百万円(前連結会計年度比94.1%増)となりました。

売上原価率は、50.0%(前連結会計年度比4.4ポイント低下)となりました。また、販管費率は、27.9%(前連結会計年度比4.5ポイント低下)となりました。これらの結果として、営業利益率は、22.2%(前連結会計年度比8.9ポイント上昇)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、73,135百万円となり、前連結会計年度末と比べて4,899百万円減少しました。当連結会計期間のキャッシュ・フローの状況と、前年同期に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、33,823百万円となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益45,559百万円、売上債権の減少額434百万円、棚卸資産の増加額9,646百万円であります。前年同期との比較では、28,215百万円収入が増加しております。

投資活動によるキャッシュ・フローは、24,974百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出27,591百万円、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入8,414百万円であります。前年同期との比較では、5,622百万円支出が増加しております。

財務活動によるキャッシュ・フローは、19,871百万円の支出となりました。主な内訳は、短期借入れによる収入26,610百万円、短期借入金の返済による支出31,638百万円、配当金の支払額9,021百万円であります。前年同期との比較では、15,453百万円支出が増加しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

180,897

+23.1

合計

180,897

+23.1

 

(注) 金額は、販売価格によっています。

 

 

b 受注実績

当社グループは、見込生産を主体としているため記載を省略しています。

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

181,093

+20.1

合計

181,093

+20.1

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサ ホールディングス㈱

34,327

22.8

42,178

23.3

㈱メディパルホールディングス

29,287

19.4

35,556

19.6

㈱スズケン

22,041

14.6

26,889

14.8

東邦ホールディングス㈱

16,603

11.0

19,501

10.8

 

2 上記の相手先のうち、持株会社制を採用している会社は当該持株会社の名称を付すとともに、属する関係会社の取引高を集計して記載しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 財政状態

当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりであります。

当連結会計年度末における資産合計は464,380百万円で、前連結会計年度末に比べ36,126百万円の増加となりました。流動資産は、原材料及び貯蔵品の増加等により、前連結会計年度末に比べて14,417百万円の増加となりました。固定資産は、有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて21,709百万円の増加となりました。

負債合計は134,270百万円で、前連結会計年度末に比べて1,381百万円の増加となりました。流動負債は、短期借入金の減少、1年内償還予定の社債の減少等により前連結会計年度末に比べて6,643百万円の減少となりました。固定負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて8,025百万円の増加となりました。

純資産合計は330,110百万円で、前連結会計年度末に比べて34,745百万円の増加となりました。株主資本は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べて22,545百万円の増加となりました。その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて7,182百万円の増加となりました。また、非支配株主持分は、前連結会計年度末に比べて5,017百万円の増加となりました。

以上の結果、自己資本比率は1.5ポイント増加して、64.7%となりました。

 

b 経営成績

売上高は、前連結会計年度と比べ20.1%増加し、181,093百万円となりました。

国内事業の売上高は、前連結会計年度と比べ21.5%増加し、160,459百万円となりました。医療用漢方製剤129処方の売上高は、2024年4月の薬価改定において66処方が不採算品再算定の適用を受け、薬価が上昇したことにより、前連結会計年度と比べ21.9%増加し、154,072百万円となりました。大建中湯、抑肝散、牛車腎気丸の売上高は、不採算品再算定の適用を受け薬価が上昇した影響もあり、大きく増加しました。五苓散の売上高は、頭痛・めまいなどのニーズに沿った情報提供活動により増加しました。六君子湯、補中益気湯、加味逍遙散、加味帰脾湯、人参養栄湯の売上高については、薬価改定にともない2024年3月に発生した前倒し注文の影響が残り、前連結会計年度と比べ減少しました。

 

[育薬・Growing処方の売上高]                                                   (単位:百万円)

 

売上

順位

製品No./処方名

2023年度

2024年度

前年同期比

育薬処方

 

100

大建中湯

 

9,851

14,769

+4,918

+49.9

54

抑肝散

 

7,447

11,147

+3,699

+49.7

43

六君子湯

 

7,454

7,199

△254

△3.4

107

牛車腎気丸

 

3,698

5,583

+1,885

+51.0

25

14

半夏瀉心湯

 

1,448

1,464

+15

+1.1

育薬処方合計

29,899

40,163

+10,263

+34.3

Growing処方

 

41

補中益気湯

 

7,956

7,597

△358

△4.5

17

五苓散

 

6,869

7,376

+506

+7.4

10

24

加味逍遙散

 

5,117

4,917

△200

△3.9

18

137

加味帰脾湯

 

2,290

2,238

△51

△2.3

19

108

人参養栄湯

 

2,305

2,234

△71

△3.1

Growing処方合計

24,539

24,364

△175

△0.7

育薬・Growing処方以外の119処方合計

 

71,918

89,545

+17,626

+24.5

医療用漢方製剤129処方合計

126,357

154,072

+27,715

+21.9

 

 

また、国内事業の一般用漢方製剤等の売上高は、取り扱い店舗数が拡大したことにより、前連結会計年度と比べ18.8%増加し、5,284百万円となりました。

中国事業の売上高は20,633百万円となりました。原料生薬と飲片(刻み生薬)の販売を中心とする生薬プラットフォーム(平安津村薬業有限公司、深セン津村薬業有限公司等)において、前連結会計年度と比べ、原料生薬の売上高は8.4%増加し、飲片(刻み生薬)の売上高は37.4%増加しました。

売上原価は、売上高の伸長と加工費および為替影響を含む生薬調達コストの上昇等により前連結会計年度と比べ10.3%増加し、90,509百万円となりました。売上原価率は、加工費および生薬調達コスト等の上昇はあったものの、医療用漢方製剤66処方が不採算品再算定の適用を受け薬価が上昇したこと等により、前連結会計年度と比べ、4.4ポイント低下し、50.0%となりました。

販売費及び一般管理費は、主に統合基幹システムの稼働にともなう費用の増加および円安の影響により、前連結会計年度と比べ3.4%増加し、50,458百万円となりました。販管費率は売上高の増加により、前連結会計年度と比べ4.5ポイント低下し、27.9%となりました。

以上の結果、営業利益は、前連結会計年度と比べ100.5%増加し40,125百万円となり、営業利益率は、前連結会計年度と比べ8.9ポイント上昇し、22.2%となりました。経常利益は、前連結会計年度と比べ80.7%増加し、42,446百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却にともなう特別利益を計上したこともあり、前連結会計年度と比べ94.1%増加し、32,428百万円となりました。

 

c 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

なお、当連結会計年度において、経営成績に重要な影響を与える要因はございません。

 

d 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「売上高」「営業利益」「売上高営業利益率」「親会社株主に帰属する当期純利益」「EPS」「ROE」を、目指すべき方向性等を示す数値目標として設定しています。

2024年度修正計画との比較では、売上高は181,093百万円(計画比0.7%減)、営業利益は40,125百万円(計画比0.3%増)、売上高営業利益率は22.2%(計画比0.3ポイント増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は32,428百万円(計画比4.6%減)となりました。

EPSは427.15円(計画比20.64円減)となり、ROEは11.4%(計画比0.6ポイント減)となりました。

 

e セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは医薬品事業の単一セグメントです。

(医薬品事業)

売上高は、前連結会計年度に比べ20.1%増181,093百万円となりました。

セグメント利益は、前連結会計年度に比べ100.5%増40,125百万円となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度に比べ36,126百万円増加464,380百万円となりました。

 

f 今後の見通し

2026年3月期の業績予想につきましては、売上高は主に国内医療用漢方製剤の販売数量増加に加え、中国事業の伸長により188,000百万円を見込んでおります。このうち中国事業の売上高は20,100百万円の見込みです。利益につきましては、主に償却費負担の大きい中国生産拠点における製造加工費の増加や生薬費の増加、人件費の増加などの影響で営業利益34,200百万円14.8%減)、経常利益34,000百万円19.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益23,000百万円29.1%減)を見込んでおります。

国内事業においては、製品の安定供給体制の強化や将来の漢方市場の持続的拡大を目指し、今期においても設備投資、研究開発、情報提供活動に対して重点的に資金を投入いたします。設備投資に関しては、生産能力増強や生産性向上を目的とした積極的な投資を実施いたします。研究開発に関しては、漢方治療の標準化拡大のためのエビデンス構築、最先端技術による漢方の個別化治療への取り組み、一人ひとりのライフステージにあった健康への貢献(治療・未病・養生(予防))に関する研究を強化してまいります。情報提供活動については、医療ニーズの高い処方に対するプロモーションの強化により漢方治療の標準化を推進するとともに、診療領域ごとの基本的な医療用漢方製剤を処方する医師の増加を目指した個別化治療を推進いたします。また、情報提供のDX化により、医療従事者一人ひとりがいつでも必要な情報を取得できる体制づくりに取り組んでまいります。

中国事業においては、生薬プラットフォームにおける原料生薬、飲片(刻み生薬)の販売を拡大するとともに、製剤プラットフォームにおける中成薬事業展開を目的とした古典処方の研究開発や中成薬企業との協業を含む市場開拓活動等に取り組んでまいります。

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する

当期純利益

翌連結会計年度

2026年3月期

(増減率)

188,000

(3.8%)

34,200

(△14.8%)

34,000

(△19.9%)

23,000

(△29.1%)

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、自己資金、社債、金融機関からの借入金により資金調達を行っています。運転資金は自己資金及び短期借入金を基本としており、設備投資資金は社債及び長期借入金を基本としています。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は70,795百万円となっています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は73,135百万円となっています。

 

c 資金使途

当社グループは2025年度からスタートしている第2期中期経営計画を長期経営ビジョン実現のための成長戦略、投資推進のステージとして位置づけ、成長(事業規模の拡大)と収益力(利益率の向上)による企業価値の向上を目指し、適切なリスクをとりながら将来のために必要な投資を行ってまいります。

国内事業関連投資において、国内でのエキス末製造工程、顆粒製造工程、包装表示工程及び天津工場でのエキス末製造工程への投資を計画しており、中国事業関連投資においては、中薬研究やIT基盤構築への投資を計画しています。また、中薬企業との提携等を実施し、中国国民の健康に広く貢献できる企業になるべく事業の拡大を進めてまいります。

なお、当社グループの2025年度設備投資金額は41,000百万円、研究開発費は8,800百万円を計画しています。

今後もさらなる安定成長と事業拡大に向けて、適切な資金調達及び中長期的な視点から経営の意思を反映した資源配分を行ってまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っています。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

 

5 【重要な契約等】

(第三者割当による新株式発行、自己株式の処分および資本業務提携に係る資本業務提携契約)

当社は、2017年9月22日開催の取締役会において、中国平安保険(集団)股份有限公司(本社:中国広東省、以下「中国平安保険」といいます。)との強固で長期戦略的なパートナーシップの構築に向け、資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)を行うこと、並びに中国平安保険の子会社である中国平安人寿保険股份有限公司(本社:中国広東省、以下「平安人寿」といいます。)を割当予定先とする第三者割当による新株式発行及び自己株式の処分(以下、併せて「本第三者割当」といいます。)を行うことについて決議し、同日付で中国平安保険との間で本資本業務提携に係る資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といいます。)を締結しております。

 

(1)本資本業務提携の目的、意思決定に至る過程

当社及び中国平安保険は、中国における中薬産業の更なる発展を推進して中国国民の医療と健康に貢献するとともに、中薬の品質標準及び生薬栽培から最終製品までを網羅するビジネスモデルを構築することができ、また、それと同時に、中国国内の生薬の品質向上や生薬資源保護に寄与しながら、当社の生薬原料の安定確保にもつながると考え、業務提携を行うことといたしました。

当社が有する生薬・漢方事業におけるノウハウと中国平安保険の有する経営資産や顧客基盤、医療・ヘルスケア事業の特徴及び強みを組み合わせることで、シナジー効果が発揮され、両社の企業価値の更なる向上を実現できると考えられます。

さらに、当社及び中国平安保険は、業務提携に関わる協議の過程で、長期的かつ強固な戦略的パートナーシップを構築するためには、中国平安保険グループが当社の一定数の株式を保有することが重要であると判断し、業務提携と合わせて、第三者割当による資本提携を行うことといたしました。なお、本資本業務提携先である中国平安保険は金融持株会社であり、金融以外の事業を行う一般事業会社への直接の出資は実施していないため、本資本業務提携の趣旨や内容、出資規模等を勘案し協議した結果、出資機能を有する中国平安保険の主要子会社の一つである平安人寿を本第三者割当の割当予定先といたしました。

 

(2)資本提携の内容

当社は、本第三者割当により、平安人寿に当社普通株式7,675,900株(本第三者割当後の総議決権に対する所有議決権割合10.04%、本第三者割当後の発行済株式総数に対する株式所有割合10.00%)を割り当てております。

当社は、本第三者割当により取得する株式について、中国平安保険並びに中国平安保険が現在及び将来において実質的に支配する会社(割当予定先も含まれます。)は、本資本業務提携契約の有効期間中、当社の事前の書面による同意なくして、当社の株式の追加取得又はその他取引を行ってはならないことを合意しております。

 

 

6 【研究開発活動】

TSUMURA VISION“Cho-WA”2031においては、一人ひとりのライフステージ・症状・遺伝体質・生活環境等に合わせて、漢方薬・中薬をはじめとした製商品・サービスとエビデンスベースで提供することにより、人々のwell-beingに貢献している状態を目指し、研究開発活動を実施しています。

国内事業においては、漢方治療の標準化の更なる拡大と漢方治療の個別化、未病の科学化、養生領域での製品開発に取り組んでいます。

漢方治療の標準化においては、「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として定め、臨床エビデンス、作用機序、副作用発現頻度調査、薬物動態、医療経済学的データを揃える活動を推進しており、データ集積および診療ガイドラインへの新規収載、推奨度の向上が着実に進んでいます。

漢方治療の個別化においては、漢方薬が顕著な効果を示す患者様に共通する特徴の解明につながる研究や、漢方診断における「証」の科学的解明によるAI漢方診断サポートシステムの開発などに取り組んでいます。

未病の科学化においては、サイエンスベースでの未病の漢方治療を目指し、未病状態を科学的に解明し、漢方薬による治未病・重症化抑制・再発抑制などの効果を客観的に把握できる指標(バイオマーカー)の研究に注力しています。

養生領域においては、養生(予防)での健康維持・増進に貢献を目指し、薬食同源の生薬を原料とした製商品の開発に取り組んでいます。

漢方製剤の生産量増加への対応および原価低減のため、原料生薬の栽培および加工技術の改良研究、野生生薬の栽培化研究に取り組んでいます。国内栽培生薬の拡大を目指す中、北海道の株式会社夕張ツムラにおいては、生産量拡大に向けた栽培研究、技術改良および機械化研究などを進めています。また、ラオス人民民主共和国のLAO TSUMURA CO.,LTD.においても生薬における生産性の向上および品質の安定化に向けた研究を進めています。

製造工程においては、生薬の選別工程の自働化・省人化を目的とした生薬AI自動選別機の開発をはじめ、スマートファクトリー化を目指し、ロボットやAI等を活用した自働化範囲の拡大に向けた研究を進めています。

また、生薬の品質と安全性を担保するために、外来性不純物である残留農薬、重金属および微生物汚染の分析手法や品質改善のための研究を推進しています。

米国におけるTU-100(大建中湯)上市に向けた開発においては、漢方・生薬事業を通じて培った技術・ノウハウと、日本国内の「育薬」研究による基礎・臨床の最新データを米国開発に連携させる体制を整え、米国における医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しています。

中国事業においては、主に古典処方の上市に向けた研究開発および大健康製品の開発に取り組んでいます。

当連結会計年度における研究開発費は、8,355百万円です。

 

※POI:

Post-operative Ileus(術後イレウス)