第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度における世界経済は、米国経済は、堅調に推移しましたが、中国および東南アジアで成長テンポは鈍化傾向となりました。一方、国内経済は、企業において、収益、雇用の回復が見られ、設備投資の持ち直しなど、緩やかな回復基調となりました。
  当社グループを取り巻く経営環境は、海外事業につきましては、欧米を主力市場とするローター社の業績が競合他社との競争により、厳しい状況で推移しましたが、製紙用薬品事業の米国および中国子会社の業績が好調に推移し、収益は増加しました。国内事業につきましては、出荷量の減少に伴い、売上高は減少したものの、原材料費の低減、合理化等により、収益はほぼ前年並みとなりました。

 その結果、当社の当連結会計年度の連結業績につきましては、売上高は809億7千7百万円となり、前連結会計年度に比べ17億1千4百万円(△2.1%)の減収となりました。

  利益面では、営業利益は24億3千7百万円となり、前連結会計年度に比べ14億6千4百万円150.5%)の増益となりました。経常利益は、為替差益6億5千8百万円等により、32億2千5百万円となり、前連結会計年度に比べ29億7千6百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は12億2千2百万円(前連結会計年度は、親会社株主に帰属する当期純損失10億2千5百万円)となりました。

 当社グループのセグメント別経営成績の概況は次の通りであります。

 

①樹脂化成品

 印刷インキ業界は、雑誌やチラシなど出版・商業印刷や新聞の発行部数の落ち込みに伴い、これらの紙媒体向け需要の低下が続いています。当社はその影響を受け、印刷インキ用樹脂の売上高が減少する結果となりました。

 塗料業界は、リフォーム市場の活発化などで建築用が回復傾向にあり、全体では微増となりましたが、当社では、建築用で好調に推移した製品もある反面、全体としては、塗料用樹脂の売上高が減少する結果となりました。

 合成ゴム業界は、国内・輸出の合計で微減となりましたが、当社の自動車タイヤ用合成ゴムの製造に使用される乳化剤の販売は、微増となりました。

 機能性塗工剤の新製品は、タッチパネルに用いられる光学フィルム用表面塗工剤などが順調に推移しています。

 その結果、当部門の売上高は、200億9千2百万円となり、前連結会計年度に比べ19億8千5百万円(△9.0%)の減収となりました。セグメント利益は11億5千5百万円と前連結会計年度に比べ、1千1百万円△1.0%)の減益となりました。

 

②製紙用薬品

 国内の製紙業界は、印刷情報用紙の需要が低迷しましたが、板紙の生産量は前年並みに推移しました。米国においては、紙・板紙生産量は前年を下回りました。中国では、紙・板紙生産の成長率は低下しました。

 当部門におきまして、国内は、製紙用薬品の売上高は前年並みとなりました。米国においては、FDA(米国食品医薬品局)規制要件に準拠した製品の販売が好調に推移しました。中国においても、業績は堅調に推移しました。

 その結果、当部門の売上高は181億3千1百万円で、前連結会計年度に比べ9億8千1百万円(5.7%)の増収となりました。また、セグメント利益は国内外における収益改善が寄与し、17億6千1百万円と前連結会計年度に比べ4億7千5百万円37.0%)の増益となりました。

 

③電子材料

  当部門が主に関連する自動車業界の生産台数は、北米、中国は、前年を上回ったものの、国内は、前年を下回る厳しい状況となりました。

 電子機器業界では民生用電子機器の国内出荷額は、前年比減少となりました。
  当部門においては主要製品であるソルダペーストは鉛フリー化が進んだことから販売量は、前年比で増加しました。自動車用熱交換器用のろう付け材料は販売量を伸ばしたものの、品種構成差により販売額は前年比で減少しました。

 その結果、金属地金の価格下落の影響を受け、販売価格が下落し、当部門の売上高は50億8百万円となり、前連結会計年度に比べ2億7千万円(△5.1%)の減収となりました。セグメント利益は4億2千万円と前連結会計年度に比べ2千1百万円△4.8%)の減益となりました。

 

④ローター

 当部門の主要製品である粘接着剤用樹脂は、景気減速の影響もあり、中国や欧州では、前年に比べ低調に推移いたしましたが、北米を中心にその他の地域では堅調に推移し、全体としては、前年に比べ販売数量が増加しました。

 一方、印刷インキ用樹脂は、全体として、引き続き情報のデジタル化を背景として需要が低迷する中、主力である欧州、北米、アジア市場において販売量減となりました。世界的な販売価格競争が継続しておりますが、採算面では合理化、コスト削減に努めた結果、前年同期比で改善しました。

 その結果、当部門の売上高は361億2千3百万円で、前連結会計年度に比べ6億7百万円△1.7%)の減収となりました。収益面では採算性の改善により、セグメント損失は3億3百万円と前連結会計年度に比べ8億9千9百万円の改善となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度における、連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、主に営業活動によるキャッシュ・フローの収入が増加したことにより前連結会計年度に比べ4億4千5百万円8.2%)の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によって得られた資金は、仕入債務の減少額が20億3千2百万円あったものの、たな卸資産の減少額が18億7千1百万円、税金等調整前当期純利益が29億3千1百万円、減価償却費21億2千6百万円等、資金の収入が支出を上回ったことにより、42億9百万円の収入となり、前年同期と比べ38億5千9百万円の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は、投資有価証券の売却による収入が1億円あったものの、有形固定資産の取得による支出が25億2千8百万円、投資有価証券取得による支出が2億2千9百万円等、資金の支出が収入を上回ったことにより、27億1千8百万円の支出となり、前年同期と比べ9億8千8百万円(△26.7%)の減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は、長期借入金による収入が83億8千1百万円あったものの、短期借入金の返済による減少が7億2千2百万円、長期借入金の返済による支出が79億8千3百万円等、資金の支出が収入を上回ったことにより、8億9千5百万円の支出(前年同期は16億8千6百万円の収入)となりました。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

樹脂化成品

16,595,390

91.0

製紙用薬品

16,423,245

104.5

電子材料

4,758,189

103.4

ローター

51,184,362

100.9

その他

127,668

98.8

合計

89,088,857

99.7

 

(注) 1. 金額は、販売価格によっております。

   2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注状況

当社グループは見込生産を行っており、該当事項はありません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

樹脂化成品

20,092,023

91.0

製紙用薬品

18,131,239

105.7

電子材料

5,008,413

94.9

ローター

36,123,069

98.3

その他

1,640,025

107.5

合計

80,994,771

97.9

 

  (注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

       2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

       3. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3 【対処すべき課題】

   中期経営計画 NEW HARIMA 2018では、当社基盤事業の収益力向上を目指すと共に市場開拓、新製品構築を優先し
  実施する項目として位置づけ、新規事業の創出に繋げていきます。
   ①市場開拓は当社製品の競争力を活かし、成長が期待できる国内外市場を積極的に開拓します。
   ②新製品構築は基盤事業で培ったコア技術を基に顧客ニーズに合致した新製品を構築します。
   ③新規事業は当社に不足している技術、製品及び市場に関してM&A投資も含め成長市場での事業展開を目指します。
 

 

 

 

4 【事業等のリスク】

  当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済状況

当社グループの全世界における製品の需要は当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。従いまして、日本、北米、南米、アジア、欧州等の主要市場における景気後退、およびそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。

競合他社が低廉な人件費の労働力を雇用した場合、当社グループと同種の製品を低価格で提供できることになり、その結果、当社グループの売上が悪影響を受ける可能性があります。また、原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、当社グループのみならず他のメーカーでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料価格の上昇

当社グループは、石油化学関連原料及びロジン等の諸原材料を購入して製品を製造・販売しております。

そのため国際市況及び国内市況による原材料購入価格の変動リスクがあり、その変動により製品価格への修正が遅れることなどで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれております。各国における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のため円換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。円安は当社グループにおいて輸入原料の調達コストを押し上げる可能性があり、製品価格の修正が遅れると業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

当社グループの収入の増加は新規商品が大半を占めております。今後の成長には主に新製品の開発と販売に依存すると予想しております。当社グループは継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えておりますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

 ①新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

 ②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品または新技術の創造へつながる保証はありません。当社グループは需要予測に対応するため、生産拠点など重要な資源を投下し事業を拡大しておりますが、この実需が需要予測と乖離する可能性があります。

 ③当社グループが市場からの支持を獲得できる新製品または新技術を正確に予想できるとは限らず、また、これらの製品の販売が成功する保証はありません。

 ④新たに開発した製品または技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

 ⑤技術の急速な進歩とニーズの変化により、当社グループ製品が陳腐化する可能性があります。

 ⑥現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性がありますので、この製品の市場における大きなシェアの確保ができないおそれがあります。

     上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 国際的活動および海外進出に潜在するリスク

当社グループの生産および販売活動は適地生産のグローバル化により、北米、南米、アジア及び欧州等の日本国外で行われております。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しております。これらの事象は、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

  ①予期しない法律または規制の変更

  ②不利な政治または経済要因 

  ③人材の採用と確保の難しさ

  ④未整備の技術インフラが、製造等の当社グループの活動に悪影響を及ぼす、または当社グループの製品やサービスに対する顧客の支持を低下させる可能性

  ⑤潜在的に不利な税の影響

  ⑥テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱

 

(6) 特定のグループへの供給依存

当社グループは一部重要原料の供給を特定のグループに依存しております。当社グループは供給元と通常、更新可能な中期契約を結んでおります。当社グループは必要に応じてその他の措置で供給を確保しておりますが、不足が生じないという保証はありません。もし、当社グループが供給元と契約を変更しなければならなくなった場合、重要原料の供給状況の悪化あるいは当社グループの原価上昇という結果をもたらす可能性があります。また、当社グループが必要とする製品を予定通りに生産できない可能性があります。重要原料が不足すると、価格高騰、供給不足、品質管理などの問題が発生し、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 製品の欠陥

当社グループは各国の工場で各種の製品を製造しております。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き当社グループがこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なクレ―ムや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(8) 他社との提携等の成否

当社グループは技術開発の一環として、経営資源を最適化し、技術の集約による相乗効果を利用するために、コラボレーション、技術提携や合弁の形で多くの他社と共同での活動を行っております。当社グループは引き続きこのような機会を前向きに活用する予定であります。しかし、経営、財務またはその他の理由により当事者間で不一致が生じた場合、効果的な開発による結果を享受できず、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(9) 公的規制

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管制、環境・リサイクル関連の法規制の適用も受けております。これらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があります。また、規制を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)災害や停電等による影響

当社グループは製造停止による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っております。しかし、生産施設で発生する災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。従いまして、当社グル―プが展開している地域で大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合、生産能力が著しく低下することで、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)資金調達

当社グループの事業に係る事業買収資金、設備投資資金等は、主として個別案件毎に金融機関からの借入金によって調達しているため、総資産に占める有利子負債の比率が常に一定程度あることから、将来において、金利が上昇した場合には、資金調達コストが増加することにより当社グループの経営成績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)固定資産の減損会計適用による影響

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。この基準の適用に伴い、今後の土地等の時価や事業環境の大幅な変動によって、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)需要業界の動向

当社グループの製品は中間原材料であり、デジタル化の進展による出版物の減少等、最終製品の市場の変化により当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは松から得られる植物資源であるトールロジンとガムロジンの2種類のロジンを、日本国内をはじめブラジル、アルゼンチン、ニュージーランドにおいてグローバルに生産する唯一のメーカーとして、原料基盤を強化するなかで再生可能なバイオマス原料の機能を追求し、さらに創業以来培ってきた高分子合成・評価、乳化・分散などの界面制御、接着・接合などコア技術の融合により先進的な研究開発を進めています。

主力のパインケミカル関連事業は国内市場が縮小傾向の中、当会計年度におきましては当社独自製品の開発、及び海外市場展開を見据えた製品開発に注力しました。特に環境や安全性に配慮した製品、また当社が強みを持つ原料を生かした低コスト製品により国内市場シェアの維持、海外における販売の増加に寄与しました。

新規分野におきましては、「イノベーションを支える産業素材」をキーワードに環境・エネルギー分野、自動車・エレクトロニクス分野において当社独自の製品開発を進めており、導電性ペーストや機能性コート剤などでは新たな市場を獲得しつつあります。

中長期的観点より産業素材のみならず、メディカルバイオ分野においても研究者の配置を始めております。現在は大学等社外研究機関との連携を主体に取り進めておりますが、早期に事業化への道筋を定めて参ります。新規分野においては今後更に筑波研究所を拡充していくとともに、開発当初から海外研究開発部門と共同でグローバル市場を見据えた展開を図っていきます。

当連結会計年度の研究開発費は、23億7千万円、特許の登録件数は国内10件、海外が19件、国内の出願件数は24件でした。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1)樹脂化成品

当事業においては、印刷インキ用樹脂、塗料用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム乳化剤及び脂肪酸誘導体の研究開発を行っています。関連市場の生産量は、合成ゴム190万トン、塗料164万トン、印刷インキ35万トン、粘接着剤87万トンで、何れも成熟産業であり市場は低調に推移しています。このような状況下当社は、お客様や社会、環境に貢献できる新製品開発を進めており、今年度は次のような成果が出ています。
 塗料用樹脂においては、比較的堅調な建築外装用途向けに、環境に配慮した弱溶剤型樹脂新製品の開発を進めるとともに、重防食塗料用の弱溶剤型新製品を開発しました。印刷インキにおいては、縮小傾向が続く平版インキ市場でのシェアを確保するために、当社独自の原料であるトール油製品を応用した樹脂の開発を進め、一部販売を開始しています。また、インキの中でも市場が拡大しているUV硬化型インキ向けの新製品開発を進めています。粘接着剤用樹脂に関しては、粘着力を向上させたタッキファイヤーの開発を進めました。海外においてはアジア市場向けに印刷インキ用樹脂の新製品開発を進めました。またローター社との協業を進めており、特にインキ用新製品及び粘接着剤用樹脂の開発において成果を出しつつあります。今後はさらに世界市場に投入できる製品の開発を進めて行きます。

また、機能性樹脂分野では、タッチパネル用のコーティング剤や、光学フィルム用のハードコート等、可視光の透過率に影響なく機能を付与することができる製品の開発に注力し、顧客評価が進んでいると共に、一部は量産化しました。タッチパネル分野だけではなく、新たに、保護フィルムに求められる耐擦傷性などを付与させるコート剤を開発、顧客で良好な評価をいただいています。

当セグメントに係る研究開発費の金額は4億8千9百万円でありました。

 

(2)製紙用薬品

当事業においては、水性インクのにじみを防止するサイズ剤や、紙の強度を高める紙力増強剤、紙の表面を改質する塗工剤といった基盤製品の機能制御をコア技術とする研究開発を行っています。
 日本国内における2015年の紙・板紙の内需量は、昨年比2.1%減の2,687万トンとなりました。前年の消費税増税前の駆け込み需要の反動から、1~3月では紙・板紙ともに減少。通年では、紙は減少し、板紙は微減となりました。全体では減少となり、5年連続のマイナスとなっています。
 国内の製紙メーカー各社は、紙・板紙の国内需要の大幅な増加が望めない状況において、省資源化(省エネ・省人・省原材料など)、工場の統廃合、紙・板紙の価格修正により収益改善を進め、同時に、木材・ケミカル事業やエネルギー事業への取組みや、海外(中国・東南アジア・オーストラリアなど)への事業展開を進めています。
 当社では、このような環境変化の中で製紙業界のニーズに応えるため、板紙の中性化(硫酸バンド低減によるトータルコスト削減)と軽量化(商品力向上による販売数量確保)に対応した高機能商品を開発しています。 

また、紙・板紙の国際的な物流環境に対応するために、間接食品添加物として海外安全基準の規制要件を満たした商品開発を進めています。今年度はFDA認証を取得したアニオン性ロジンエマルションサイズ剤及びポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤をプラズミン・テクノロジー,Inc.と共同開発し、販売を開始しています。

海外に於ける事業展開も積極的に進めており、北南米、中国、東南アジアへの製紙用薬品の市場拡大に力を入れています。紙・板紙の年産量が世界第一位(1億1775万t/2015年)の中国では、杭州杭化哈利瑪造紙化学品有限公司(浙江省)において、また、紙・板紙の年産量が世界第二位(7319万t/2014年)の米国では、プラズミン・テクノロジー,Inc.において、研究開発活動並びに販売活動を強化しています。さらに、2012年にタイに駐在員事務所を開設しており、東南アジア新興国への事業展開を推進しています。諸外国では、それぞれの顧客からの要求項目が異なっており、適合化技術を確立させながら製紙用薬品のラインナップを充実させて、個別顧客の要求に応えています。

当セグメントに係る研究開発費の金額は5億5千6百万円でありました。

 

(3)電子材料

当事業においては、主として自動車業界と電子機器・情報産業向けのはんだ付け材料、及び車載用熱交換器等の組み立てに用いるろう付け材料の事業を展開しており、「クリーン&ハイリライアビリティ」をコンセプトに、環境との調和を重視した高い信頼性を有する電子材料の提供を行っています。

自動車業界の2015年の国内新車販売数は、軽自動車税の増税の影響のため前年比9.3%減の約505万台となり、東日本大震災があった2011年以来4年ぶりに前年を下回りました。車種別ではトヨタ自動車株式会社の「アクア」が首位となり、また、普通自動車販売台数上位もハイブリッドカーが占め、日本において環境に配慮した低燃費の次世代型自動車の普及が確実に進んでいます。
 こうした環境の中、当事業では自動車用新規材料として大手自動車部品メーカーと共同で開発した次期鉛フリーソルダペーストの販売が増加し、自動車用ソルダペースト全体の販売促進に寄与しております。今後も適用製品を広げ、グローバル拠点への展開を通して販売量増加の計画を立てています。また、多くの自動車部品装置メーカーでは低燃費化を達成する新型装置の開発が重要となっており、はんだ接合部の信頼性が非常に高い高耐久はんだを要望する声が高まっています。従って、当社もこのような市場の要求に応えるため高耐久性鉛フリーソルダペーストの開発を加速しています。

 もう一つの主力製品である自動車用熱交換器に使用されるろう付け材料の売上も堅調に推移しています。軽量高機能を目的とした熱交換器の小型化にも追従可能な塗布性、熱分解性に優れるろう付け材料の製品群を拡充しています。また、アルミニウム以外の母材を使用する熱交換器用のろう付け材料も展開しており、さらにクリーンな技術が望まれる世界で環境負荷物質である有機溶剤成分を含まないノンVOC型ろう付け材料の開発に引き続き注力しています。今後も益々これらのろう付け材料を適用する熱交換器が拡大すると予想しています。

また、銅の粉末を特殊な樹脂に分散させたハリマ化成の銅ペーストはプリント配線板の表裏を電気的に接合できる製品であり、既存の工法である銅めっきによる電気的な接合に比べ大幅にコストを下げられる技術として注目を集めております。本用途に関する当社の銅ペーストは現在、世界トップシェアの販売量となっております。
 金属のナノ粒子を溶媒に分散した“ナノペースト”は低温で加熱する事により金属粒子同士が融着し、極めて低い電気抵抗で、かつ熱を伝えやすい硬化物になります。この特性を活かし、スマートフォンやタブレット端末の高輝度LEDなどの接合材に加え、金型の補修材の様な新規用途にも採用されています。また、現在注目を浴びているプリンテッドエレクトロニクス(印刷による電気配線の形成技術)分野においては、ディスプレイ用配線等への適用について顧客評価が進んでおります。

当セグメントに係る研究開発費の金額は7億2千8百万円でありました。

 

(4)ローター 

当事業においては、印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤及びアロマケミカルの研究開発を行っています。

印刷インキ用樹脂においては、これまでに様々な産地のトールロジンやガムロジンを柔軟に使用することができる商品の開発体制を構築してきました。特に欧州オフセットインキ市場では、デジタル化の進展により年率5-10%の割合で市場規模が縮小しており、競争が激化、収益改善が喫緊の課題となっておりました。このような状況の中、2012年に粗トール油からバイオディーゼルの原料を製造、販売するスウェーデンのサンパイン社に出資することにより、欧州で安定的にトールロジンを確保することを進めて参りました。本年度は、サンパイン社から調達するトールロジンが、ほぼすべての製品に使用できるようになりました。2016年1月よりサンパイン社のロジン製造設備が稼働を開始したことに伴い、本ロジンを使用した製品の製造、販売を開始しております。これまでは、収益面でロジンの市場価格に大きく影響されましたが、サンパイン社のロジンを使用することで、品質面、価格面でも優位性を持たせ、収益改善に大きく寄与することが期待されます。また、ロジン変性技術に石油樹脂重合技術を組み合わせた、ハイブリット樹脂では、ノンフェノールタイプの新製品を開発する等、ラインアップ拡充に取り組みました。また、顧客との連携をより密にすることでワニス化の製造工程を最適化し、製造コストを最小限に抑える取り組みも実施しました。さらに、ロジン以外の再生可能資源にも注目し、産学共同のコンソーシアムに積極的に参画し、中長期的な視点でも製品開発を進めております。

粘接着剤用樹脂においては、強みである連続乳化技術(ROBUST)を駆使した水系粘着付与剤市場において高いシェアを維持しつつ、汎用紙ラベル用だけでなく、高軟化点樹脂を使用した水系粘接着付与剤も開発中で、テクニカルテープ市場への参入を目指しております。また、現在は比較的シェアの低いホットメルト接着剤市場において、ロジンエステルの淡色化技術とサンパイン社ロジンを駆使し、新たな市場獲得を目指し取り組んでおります。

既存の印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂中心の製品から今後市場伸長が見込める新規事業の開発を推し進めるため、研究、マーケティングが一体となったイノベーションチームを発足させておりますが、研究開発カンパニーとの連携をさらに強化するため、研究開発カンパニーの管理下に置き、戦略的な研究、マーケティングを進めております。

当セグメントに係る研究開発費の金額は5億9千6百万円であります。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に従って作成されております。特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

①貸倒引当金

当社グループは、顧客の支払不能時に発生する債権の貸倒による損失見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化しその支払能力が低下した場合、追加計上が必要になる可能性があります。

②投資の減損

当社グループは、長期的な取引関係維持のために、特定の顧客及び金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、公開会社株式と非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、投資に対する減損額を計上しております。公開会社株式への投資の場合、通常決算期末時点で株価が取得価額に対して50%以上下落した場合に減損額を計上しております。また、取得価額に対して30%以上50%未満の範囲で下落した場合には、過去における時価の推移等を勘案し、回復可能性がないと判断した銘柄については、減損額を計上しております。非公開会社株式への投資の場合、その会社の純資産額が、投資額に対して50%以下に下落した場合に減損額を計上しております。将来、市況悪化または投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要になる可能性があります。

 

③繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、実現可能性が高いと考えられる金額を計上しております。繰延税金資産を評価するにあたっては、将来の課税所得及び過去の業績等を基準に検討しております。しかし、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、及び計上された繰延税金資産を上回る金額を今後実現できると判断した場合、当該判断を行った各々の期間に繰延税金資産の調整額を費用および収益として計上させることになります。

 

(2)当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

①財政状態

当社グループは、債権の流動化、借入金の圧縮等をはかり、総資産のスリム化及び財務指標の改善を方針としております。

 

(資産)

当連結会計年度末の資産合計は707億7千2百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億8千3百万円減少しております。これは主として、原材料仕入の減少に伴い原材料及び貯蔵品が11億4千1百万円等減少したためであります。

 

(負債)

当連結会計年度末の負債合計は394億1千万円となり、前連結会計年度末に比べ27億6千6百万円減少しております。これは主として、支払手形及び買掛金が20億9千1百万円減少し、短期借入金が7億4千6百万円減少し、長期借入金(1年内返済予定含む)が4億2百万円増加しております。これは、原材料仕入の減少や借入の一部を返済したこと、短期借入金から長期借入金への借換を実施したためであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産合計は313億6千2百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億1千6百万円減少しております。これは主として、為替換算調整勘定が減少したためであります。

 

(自己資本比率)

自己資本比率は前連結会計年度末の41.3%と変動がありませんでした。連結会計年度末の発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は前連結会計年度末1,196.97円から1,126.65円と70.32円の減少となりました。

 

②経営成績

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、809億7千7百万円となり前連結会計年度に比べ17億1千4百万円の減収となりました。これは主として、国内事業の出荷量の減少に伴うもの等によるものであります。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の売上原価は、原材料費の低減、合理化等により売上原価率が3.0ポイント減少し79.3%となりました。

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、研究費等の増加により6億5千8百万円増加しております。売上高比率は前連結会計年度に比べ1.2ポイント増加の17.7%となりました。

この結果、当連結会計年度の営業利益は、24億3千7百万円となり、前連結会計年度に比べ14億6千4百万円増益となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は12億5千2百万円、営業外費用は4億6千4百万円で、営業外利益は7億8千8百万円となりました。(前連結会計年度は営業外損失7億2千4百万円)これは主に、為替差益の計上によるものであります。

この結果、当連結会計年度の経常利益は、32億2千5百万円となり前連結会計年度に比べ29億7千6百万円の増益となりました。

 

(特別利益、特別損失)

当連結会計年度は、特別損失として2億9千3百万円計上しております。これは主として減損損失2億3千4百万円等を計上しております。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

上記の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は12億2千2百万円(前連結会計年度は、親会社株主に帰属する当期純損失10億2千5百万円)となりました。

 

(3)戦略的現状と見通し

21世紀の科学技術のキーワードは「環境」「ナノ」「エネルギー」と言われております。天産物であるロジンの環境対応商品としての機能を追求し独創的な発想と先進的な技術で開発に取り組んでおります。今後もグループ全体で高収益・高成長分野への事業の選択と集中を促進し頑強な企業体質を作り、グローバル企業としての事業基盤の確立を目指しております。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金状況は、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より4億4千5百万円多い58億8千万円となりました。

 

①営業活動によるキャッシュ・フローでは、42億9百万円の収入となりました。これは主として、仕入債務の減少額が20億3千2百万円あったものの、たな卸資産の減少額が18億7千1百万円、税金等調整前当期純利益が29億3千1百万円、減価償却費が21億2千6百万円等、資金の収入が支出を上回ったことによるものであります。 

 

②投資活動によるキャッシュ・フローでは、27億1千8百万円の支出となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出が25億2千8百万円、投資有価証券の取得による支出2億2千9百万円等により資金の支出が収入を上回ったことによるものであります。

 

③財務活動によるキャッシュ・フローでは、8億9千5百万円の支出となりました。これは主として、長期借入金による収入が83億8千1百万円あったものの、短期借入金の返済による減少が7億2千2百万円、長期借入金の返済による支出が79億8千3百万円等、資金の支出が収入を上回ったことによるものであります。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針

当社グループの経営陣は、「人と自然、そしてテクノロジーの調和を願い、自然の恵みを暮らしに活かす」を企業理念とし、研究開発に重きをおいた経営を進めております。また、当社グループは、パインケミカル分野における世界有数の企業であることから、その規模を活かして既存事業における競争力を一層強化していきます。また、グローバルに展開するグループネットワークを最大限に活用することで、新規事業創出に全力をあげております。

今後の世界経済は緩やかながらも上昇すると見込まれますが、原油価格の動向、一部新興・途上国の成長鈍化、中東情勢などを巡る地政学的リスクなど不透明な状況が続いております。日本においては、企業業績は回復トレンドにあるものの、当社グループにおきましては為替変動など不透明な事業環境が続くことが見込まれます。このような状況下でも安定的な収益を確保していくことが当社グループにおける課題と考えております。