文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、グローバルに事業展開を推進する荒川化学グループ全体で、共有すべきグループ経営理念である「個性を伸ばし 技術とサービスで みんなの夢を実現する」のもと、「つなぐを化学する SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」をビジョンとして掲げております。「つなぐを化学する」とは、当社の事業領域を表しており、当社の製品は材料の表面や隙間に存在し、機能を付与しています。私たちは、このような製品を通して、取引先はもとより、グループ社員、社会とのつながりを大切にする「SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」を目指すことを基本方針としております。
この基本方針を具体的に実現するため、安全を最優先に、国内外の生産・販売拠点および関係会社の整備と拡充を図り、全社をあげて経営基盤の充実と企業体質の強化に取り組み、同時に法令遵守、環境保護、社会貢献などの社会的責任を果たし、グループの発展に努めてまいります。
なお、当社は、グループ経営理念とビジョンの実現に向け、当社が大切にしている価値観・行動指針を明確化した「ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA」を荒川化学グループ全社員で共有することで、根幹の部分は変わることのない経営を貫き、適切な判断と迅速な行動を積み重ねてまいります。
(2) 目標とする経営指標ならびに中長期的な会社の経営戦略
当社は、2021年4月より第5次中期5ヵ年経営実行計画「V-ACTION for sustainability」(2021~2025年度)を推進してまいりましたが、進捗状況および当社グループを取り巻く事業環境などを踏まえ、2024年度に見直しをおこないました。第5次中計の基本方針「KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標(※1)の達成」に変更はなく、当社が掲げた「ありたい姿」の実現に向け、グループの価値観・行動指針(ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA)に基づいた経営(=KIZUNA経営)のもと、2030年のビジョン(※2)と目指す未来像(※3)を設定し、既存事業の収益力の回復、事業ポートフォリオ改革の加速による収益性の向上など、SHIFTの継続による人と事業の新陳代謝を深化させ、事業基盤の持続性を確保いたします。また、持続可能な地球環境と社会を実現するための課題に取り組み、付加価値・新規事業の創出に挑戦いたします。そして、来年に迎える創業150周年、さらにその先を見据え、歴史と伝統をしっかりと受け継ぎながらも、安全文化の醸成、および働きがいと生産性の向上により成長し続け、KIZUNA指標の達成を通じて「ありたい姿」を目指します。
最終年度にあたる2026年3月期の業績予想については、売上高は850億円、営業利益28億円、経常利益24億円、親会社株主に帰属する当期純利益18億円、営業利益率3.3%以上、EBITDA 83億円以上、ROE3.0%以上としております。
(※1) 5つのKIZUNAとリンクした優先的な重要課題から設定した指標
(※2) ロジンをはじめとする環境に配慮した素材を活かし、「つなぐ」技術の深化と新たな付加価値の創造に挑戦し続けることで、地球環境と社会の持続可能な未来に貢献する
(※3) 地球環境と社会の持続的な未来に貢献するエコシステムにしっかり入り込み、ライフサイエンス関連などの素材をも手掛け、REALとDIGITALを下支えするケミカル・パートナーへの変革を目指す

(3) 会社の経営環境と優先的に対処すべき課題
当社は、2021年4月より持続可能な成長の実現に向け、コーポレートガバナンス機能を強化するため、サスティナビリティ委員会を設置し、事業ポートフォリオ改革とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などサスティナビリティ関連の情報開示に取り組んでおります。
2021年度には、日本の化学業界では初となるサステナビリティ・リンク・ボンド(社債)を発行し、当社グループのサスティナビリティ経営のリスクと機会の重要な指標として、CO2排出量の削減率とサスティナビリティ製品の連結売上高指数を設定しています。それぞれの進捗状況については第三者による検証を実施しました。引き続き、両目標達成に向けて、施策を進めてまいります。
第5次中期5ヵ年経営実行計画では、コア技術・素材の強化に努めるとともに、環境に配慮した持続可能な開発にも注力しております。さらに、経営環境の急速な変化に対応するため、事業評価機能を強化することによる事業ポートフォリオ改革を推し進めております。事業戦略部主導のもと、各ビジネスユニットの事業評価を実施し、事業ミッションのSHIFTによる選択と集中を迅速に決定することで経営資源の効率的な活用を図り、収益性の向上と新規事業の創出につなげてまいります。2025年度は第5次中期5ヵ年経営実行計画の最終年度であり、更に次期中期経営実行計画へ繋がる重要な年でもあります。収益性の向上による計数目標達成と、ライフサイエンス事業の創出に向けた取り組みに注力してまいります。
2017年12月1日に発生しました富士工場での爆発・火災事故を風化させないため、2021年度からサスティナビリティ委員会の下部組織として安全文化醸成専門委員会を設置し、安全に対する体制を強化しました。コミュニケーション、人財育成、リスクアセスメントの3つの課題の解決に向けて富士工場に設置した荒川安全伝承館ならびに小名浜工場の保安道場にて、全社員対象に安全教育を実施し、加えて安全操業に係る高度専門人財である安全技術者の育成人数も増加しております。引き続き、工場の保安力向上に向けた取り組みも進めております。
詳細については、当社ウェブサイトに掲載しておりますのでご参照ください。
・第5次中期5ヵ年経営実行計画 https://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/strategy.html
・サスティナビリティ https://www.arakawachem.co.jp/jp/csr/
・KIZUNA指標 https://www.arakawachem.co.jp/jp/csr/sdgs.html#KIZUNAindex
・サステナビリティ・リンク・ボンド https://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/slb.html
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、経営理念に基づいた持続可能な成長の実現に向けて、コーポレートガバナンス機能を強化することを目的としてサスティナビリティ委員会を設置しています。本委員会が中心となり、ESG、SDGs、Society5.0、気候変動などの環境問題やダイバーシティ&インクルージョンなどを含む社会的課題に対して、重要課題や関連目標の設定や見直し、進捗状況のモニタリング・評価、事業ポートフォリオの見直しや中長期的な経営計画、方向性を決定しています。気候変動や自然資本への対応も重要な経営課題の一つとして認識しており、社内の各委員会の議論、活動報告や施策の提言を踏まえて、取締役会のなかで随時開催し、総合的に審議・決定をおこなっています。
当社グループの第5次中期5ヵ年経営実行計画は2030年のありたい姿をビジョンとして設定しており、気候変動への対応(TCFD提言への取組)、自然資本への対応(TNFD提言への取組)および人財の育成及び社内環境整備に関する方針については、以下のとおり定めております。
気候変動および自然資本への対応
2030年時点における気温上昇2℃以下および4℃のシナリオを想定し、気候変動および自然資本に関する重要な物理的リスク・移行リスク・機会として整理しています。IPCC第5次および第6次評価報告書による地球温暖化シナリオ(RCP2.6-8.5、SSP1-8.5)、1.5℃特別報告書、IEA World Energy Outlook、TNFD最終提言を参考にしました。気候変動関連リスクと機会については、重要性評価をおこない、緊急度(顕在化時期)および事業への影響度の観点から「重要リスク」として特定しました。自然資本関連のリスクと機会については、LEAPアプローチにより事業活動における自然資本への「依存」と「影響」を確認しました。
シナリオ分析
特定した重要リスクのうち優先度の高いリスクの事象が2030年時点において発生した際の収益への影響額を算定し、影響度を示しています。

シナリオ分析の結果、気候変動リスクに対してCO2排出量の削減や持続可能な調達率の向上、自然資本に対してはロジンソースの多様化などすでに着手している取り組みを再確認し、サーキュラーエコノミーへの取り組みやKIZUNA指標の目標達成に向けて適切に対応していくことで当社事業およびサプライチェーンに与える影響を低減できることが可能であると再認識しました。中長期的な視点で予測されるリスクと機会の認識を高め、時間軸を含め戦略の立案と実行につなげてまいります。
人的資本
<人財育成方針>
「人財」は、当社グループの成長の源泉であり、最も重要な経営資源と位置づけております。
社員一人ひとりが個性を発揮し、それぞれが自律しながらも関わりあい、挑戦し続けることで新たな価値を生み出し、持続可能な社会の実現と、個人と会社の成長に繋がると考えています。この方針のもと、多様な経験・知識・技能を有する人財の確保を強化すると共に、学びと実践の機会を提供し、自ら考え行動できる自律型人財へのキャリア形成を支援しています。
<社内環境整備方針>
当社グループの経営理念「個性を伸ばし 技術とサービスで みんなの夢を実現する」の「個性を伸ばし」の部分には社員一人ひとりの個性が当社グループで育まれ、開花させてほしいという思いを込めています。その上で個性の異なる多様な人財が尊重され、すべての社員が個性を最大限に発揮できる企業として、時代に求められる課題に真正面から取り組み、個人と会社が共に成長できる環境づくりと組織風土の醸成を目指しております。
これまで取り組んできた生産性の向上に主眼を置いた業務プロセス改革に加えて、社員一人ひとりの自律した協働が今まで以上に求められると認識しております。それに対応すべく、全社員が幸せにイキイキワクワク働き、生産性の最大化を目指し、育児・介護休暇や短時間勤務制度等のワークライフバランスを考慮した施策、テレワークや副業可能な環境の整備、オフィスカジュアル等の施策も実施しております。

(3) リスク管理/リスクと影響の管理
当社グループは、ESG経営を通じ、長期的な視点で企業活動をおこなっています。地球環境や社会を含むすべてのステークホルダーにとっての関心・影響と当社グループの重要度の観点からマテリアリティ(重要課題)を策定し、さらに優先的に取り組むべき課題を特定した上で、KIZUNA指標を設定し、活動を推進しています。気候変動については、事業活動を通じたCO2排出量削減や環境への配慮および社会的課題解決への貢献などは重要性が高いと捉え、「指標と目標」に掲げる数値目標を設定しています。気候変動や自然資本に係るリスクを含む全社的なリスクに関しては、リスク・コンプライアンス委員会の下、リスク管理専門委員会が中心となり、定期的なリスクマネジメント(優先対応リスクのリスト化と対策の進捗管理)およびリスクアセスメントの強化に取り組んでいます。
詳細については、当社ウェブサイトに掲載しておりますのでご参照ください。
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気候変動への対応
気候変動への対応に関するKIZUNA指標として、「CO2排出量の削減」「サスティナビリティ製品の連結売上高指数」を選定し、進捗管理をおこなっています。この指標は当社グループの環境・保安中期目標やサステナビリティ・リンク・ボンド(以下、SLBと省略)のKPIと連動しています。
CO2排出量の削減
2050年CO2排出量実質ゼロに向けたマイルストーンの位置づけで2025年度の削減目標を設定しています。単体および国内の主要なグループ会社(ペルノックス㈱、高圧化学工業㈱、山口精研工業㈱)におけるScope1、2についての2025年度の削減目標は、2015年度比30%削減(SLB目標)から昨年50%削減に引き上げました。2024年度のCO2排出量は26.7千トンとなり、2015年度対比55.2%減(※)となりました。なお、カーボンオフセット都市ガスによるオフセット9.6千トン含んでおります。
サスティナビリティ製品の連結売上高指数
当社グループ内でサスティナビリティ製品を認定し、連結売上高指数の目標を設定しています。2025年度のサスティナビリティ製品の連結売上高指数の目標は、2019年度比25%以上アップ(SLB目標)から30%以上アップに昨年見直しております。2024年度実績は2019年度比23%アップ(※)となりました。
(※)いずれも第三者機関による保証審査を経て確定値に修正する可能性があります。
詳細については、当社ウェブサイトに掲載しておりますのでご参照ください。
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自然資本への対応
TNFDは生物多様性をテーマとし、気候変動より広範囲が対象で、あらゆる要素が絡み合いますが、当社グループの事業は持続可能な再生原料であるロジンへの依存度も大きく、自然資本への負の影響の低減と正の影響につながるような取り組みとして、KIZUNA指標「マツタロウの森の植林活動およびCO2吸収量評価実施」「バイオマス度換算販売量指数」を管理指標として設定しています。
人的資本
当社グループでは、「(2) 戦略」において記載した、人財育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。なお、人的資本に対する取り組みを深化させていく中で、設定した指標および目標は外部環境の変化や人的資本施策の進捗に応じて見直しをおこなっております。
当社グループの持続的成長には、変革や新たな付加価値の創造をリードしていく中核人財を育成していくことも重要課題の1つです。次世代を担う多様な中核人財を計画的に育成していくために、キャリアステージの早い段階から見出し、選抜研修を実施しております。加えて、グループ内出向を含む異動も人財育成の効果的な手段と位置づけており、スキルとリーダーシップを養う実践的な機会として、部門長や拠点長などの重要ポジションへの配置転換も積極的におこなっております。次世代中核人財の候補者が常にプールされている状態を目指し、毎年開催する人財戦略会議にて人財ポートフォリオの質および量の観点でモニタリングし、中期的な育成戦略を検討しております。
また、当社グループの経営戦略推進を加速していく上で、多様な専門性の結集も非常に重要であると考えており、安全操業に係る高度専門人財である安全技術者と、研究開発分野におけるデジタル高度専門人財であるデータ解析専門者の各開発部門への設置・育成も取り組んでいます。安全技術者については、リスクアセスメントの主導、設備安全化に適切な助言ができる保安管理のエキスパートを養成しています。1年間の育成プログラムで専門知識を習得した後、各工場・研究所で実践経験を積むことで当社グループの保安管理レベル向上および安全・安定操業への寄与が期待されます。データ解析専門者については、統計、データ解析、モデル構築およびプログラミング基礎の専門知識を身に付ける1年間の育成プログラムを通じてデータ解析・応用のエキスパートを養成しています。専門知識習得後は各研究開発業務で実務適用を試行しながら、データ解析の観点で適切な助言を行い、MIを駆使した研究開発の効率化・高度化の加速への貢献が期待されます。
当社グループの持続的な成長を実現していくために、多様な人財が活躍できる組織風土づくりへの取組みも重要な要素の1つであります。しかしながら、人財確保の面では、化学メーカーとして採用数が多い技術系学生に占める女性の割合が低かった背景や、出産・育児をきっかけに退職するなど勤続年数が短い背景もあり、女性管理職比率および人数の向上には時間を要します。そのため、将来的な女性活躍・登用を見据えて、計画的に採用を実行しており、管理職候補育成のためのワーキンググループ活動や外部研修などを実施し、スキルアップや意識向上を目指しております。

(注) 1 重要ポジション後継者準備率=重要ポジションに対する後継者候補者数÷重要ポジション数×100
2 2019年度の海外関係会社あたり平均邦人人数を基準としたときの指数であります。
3 2019年度の総労働時間あたり付加価値額を基準としたときの指数であります。
4 当社および連結国内子会社における2019年度の女性管理職人数を基準とした増減数であります。
5 高ストレス者比率の製造業平均比については、外部機関から製造業平均を入手する必要があるため、現在集計および算出中であります。算出結果については当社ウェブサイトをご参照ください。なお、当該サイトは2025年9月に更新予定です。(参考)高ストレス者比率の当社実績は8.1%(前連結会計年度は8.5%)であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 政治・経済状況および需要の動向について
当社グループは、日本、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。したがいまして、当社グループにおける生産・販売等の事業活動は、これらの国や地域における政治・経済状況や政策の影響を受けます。また、当社グループ製品の主な販売先である製紙、印刷インキ、塗料、粘着・接着剤および電子工業等の各業界が受ける景気後退等による需要減少は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、特定の政治動向によるリスクを分散させるとともに、需要動向などの影響を受け難い収益構造とするため、事業の新陳代謝を促し、いかなる環境変化にも迅速かつ柔軟に対応しつつ、長期的な視野を持って、集中的、効率的に経営資源を投入していくことでリスクの最小化を図っております。
当社グループは、事業活動を展開している国内外の地域において各種許認可や規制等の様々な法令の適用を受けております。したがいまして、炭素税の導入など法規制の大幅な変更や強化、ならびに海外の進出地域における予期せぬ法令の変更等により事業活動が制限される場合や、規制遵守のための費用の増大、また、環境問題や製造物責任、知的財産侵害等による訴訟や紛争による費用の増大で経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、取締役会の下部組織であるリスク・コンプライアンス委員会が、事業目的を阻害するさまざまなリスクの発生を未然に防止するとともに、リスクが顕在化した場合、損害の拡大防止や当社グループの社会的信用の維持を図るため、適切な対応をおこなう体制を整備・構築しております。
当社グループは、国内外の拠点において生産活動を行っております。したがいまして、万一、気候変動などによる大規模な自然災害や火災事故、感染症の大流行等が発生した場合には、当社グループを含めたサプライチェーンにおける生産活動の停止等により当社グループの経営成績等に悪影響を与えることがあります。当社グループではこうした状況に対して、災害・事故等による事業活動への悪影響を最小限に留めるために、リスク発生の可能性や結果の重大性に応じた製造設備の定期点検や従業員の教育・訓練等の保安活動、災害防止策の強化に努めるとともに、BCP(事業継続計画)を策定し、定期的な訓練をおこなうことによりリスクの最小化を図っております。また、感染症による事業活動全体への悪影響を最小限に留めるべく、感染防止策を徹底するとともに、テレワークや時差出勤、Web会議の積極活用や生産拠点での入場前チェックなどの対策を必要に応じて実施いたします。
当社グループの主要原材料は、石油化学製品およびガムロジンであります。ガムロジンは、松の木に溝を切りつけて滲み出てくる生松脂を蒸留して製造したもので、当社グループは、ガムロジンの調達の多くを最大の生産国である中国に依存しておりますが、中国におけるガムロジンの生産量は年々減少しております。したがいまして、ガムロジンの需給バランスの変動により購入価格が高騰した場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、石油化学製品におきましても、グローバルな環境規制や安全規制による需給バランスの変動により購入価格が高騰した場合は、同様に当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、購入価格の変動に見合った販売価格の見直しをおこなうとともに、主要原材料の調達地域の多様化を進めることによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。したがいまして、外貨建ての取引におきましては、為替レートの変動は当社グループの経営成績等に影響を与えることがあります。当社グループではこうした状況に対して、収入と費用の通貨を一致させる施策を進めること等によりリスクの最小化を図っております。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や事業資産の収益性が著しく悪化し、回復の可能性が見込めない場合には、減損会計の適用により固定資産の減損処理をおこないます。これらの減損損失の発生は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、各事業の事業採算を的確に把握し、採算悪化の兆候がみられる場合には、速やかに対策を講じて事業採算を改善させることによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。当社グループにおける事業活動のグローバル化には、進出地域における政治・経済情勢の悪化、治安の悪化、予期せぬ法律または規制、戦争・テロ・感染症等のリスクが潜在しておりますが、当社グループが進出している地域でこれら事象が顕在化した場合には、当該地域での事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、現地における優秀な人財の確保と育成を進め、いち早く正確な情報を入手し、的確に対応することによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、事業活動において顧客情報、個人情報、技術情報などの秘密情報を保有・管理しております。当社グループ内においては、規定や情報インフラ(基盤)などを整備し、加えて情報漏洩防止に関する研修や訓練などの対策を講じ、情報セキュリティ強化に努めております。しかしながら、第三者による不正アクセスやコンピューターウィルスの感染などにより、情報の漏洩や改ざんなどが発生した場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の国内経済は、一部に足踏みが残るものの、雇用・所得環境が徐々に改善し、緩やかに回復しています。世界経済は、景気が持ち直しているものの、米国の通商政策等による影響や、中国における不動産市場の停滞に伴う景気の足踏み、地政学リスクの高まりなど、先行きの不透明感が強まっております。
このような環境のもと、当社グループにおきましては、2021年度よりスタートしました第5次中期5ヵ年経営実行計画の方針(KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標の達成)に沿った重点施策を進め、コア技術・素材を中核とした事業ポートフォリオ改革や新事業の創出などによる持続可能な地球環境と社会を実現するための取り組みに注力しております。特に、事業ポートフォリオ改革においては、既存事業の収益力の回復にも努めており、ロジン誘導体・サイズ剤事業等における製造拠点の統廃合は2025年3月末をもって完了いたしました。また、ライフサイエンス分野(ヘルスケア、アグリ、コスメ)での事業創出に向け、松や微細藻類などの天然素材を活かした新規事業の展開を加速しております。
業績面では、スマートフォンの出荷台数の回復やデータセンターへの積極的投資などにより、機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂やハードディスク用精密研磨剤などの販売は前年同期を上回りました。また、海外において板紙向け紙力増強剤や粘着・接着剤用樹脂の販売が堅調に推移したことも業績に寄与いたしました。
その結果、当連結会計年度の売上高は802億36百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益は10億57百万円(前年同期は営業損失26億17百万円)、経常利益は8億54百万円(前年同期は経常損失24億12百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益12億68百万円、固定資産売却益9億84百万円や当該売却益に伴う課税所得の増加による法人税等調整額3億86百万円の計上などにより26億44百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失10億42百万円)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメント区分の売上高はセグメント間の内部売上高を含んでおりません。また、報告セグメントに含まれないその他事業は、売上高は93百万円(前年同期比15.9%増)、セグメント利益は56百万円(同46.1%増)となりました。
電機・精密機器関連業界は、電子部品などの需要が回復基調で推移しています。このような環境のもと、当事業におきましては、今後の需要拡大に向けて人的・設備的な経営資源を積極的に投入している機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂は、スマートフォンやディスプレイ関連分野での需要回復が進み、販売が増加しました。
その結果、売上高は168億42百万円(前年同期比12.8%増)、セグメント利益は12億19百万円(同134.2%増)となりました。
製紙・環境事業
製紙業界は、中国の段ボール原紙工場の稼働が低い状況にあり、また国内においても市況の低迷が続いており、厳しい需要環境となりました。このような環境のもと、当事業におきましては、競争環境は一層厳しさを増しているものの、アジアでの需要の創出に注力している板紙向け紙力増強剤が堅調に推移したことなどにより、増益となりました。
その結果、売上高は220億41百万円(前年同期比4.4%増)、セグメント利益は18億49百万円(同38.1%増)となりました。
粘着・接着剤業界は、国内の自動車関連分野では一部で生産停止の影響があり、テープやシート類用途などの需要も弱含みとなりました。このような環境のもと、当事業におきましては、千葉アルコン製造株式会社の稼働率は改善傾向にありましたが、想定より機器の不具合等や修繕費も増加したことから水素化石油樹脂の収益を押し下げました。一方、ロジン系の粘着・接着剤用樹脂はアジア地域を中心に販売が堅調に推移しました。
その結果、売上高は278億円(前年同期比10.6%増)、セグメント損失は22億41百万円(前年同期はセグメント損失40億48百万円)となりました。
電子工業業界は、電子部品などの需要の回復や生成AIの需要増加に伴うデータセンターへの積極的投資が進んでおります。このような環境のもと、当事業におきましては、将来に向けて生産能力増強を進めている半導体関連先端材料のファインケミカル製品やハードディスク用精密研磨剤が大幅な増収となりました。
その結果、売上高は134億59百万円(前年同期比22.9%増)、セグメント利益は8億47百万円(前年同期はセグメント損失3億93百万円)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ31億21百万円減少し、1,222億97百万円となりました。主な要因は、受取手形及び売掛金が2億1百万円、棚卸資産が5億24百万円増加した一方で、現金及び預金が21億46百万円、有形固定資産が9億12百万円減少したことによります。
負債は、支払手形及び買掛金が2億77百万円、短期借入金が1億92百万円、長期借入金が28億14百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ34億40百万円減少し、650億60百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ3億18百万円増加し、572億37百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ27億30百万円減少し、64億34百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、51億19百万円の増加となりました。これは税金等調整前当期純利益(28億67百万円)、減価償却費(57億20百万円)などによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、32億43百万円の減少となりました。これは、投資有価証券の売却による収入(15億78百万円)などにより資金が増加した一方、固定資産の取得による支出(45億17百万円)などにより資金が減少した結果であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、47億4百万円の減少となりました。これは、借入金の純減少(31億75百万円)や配当金の支払額(9億52百万円)などにより資金が減少した結果であります。
a 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) その他事業においては、生産をおこなっておりません。
b 受注実績
当社グループは過去の販売実績と将来の予測に基づいて見込生産方式をとっております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の売上高は802億36百万円、営業利益は10億57百万円、経常利益は8億54百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は26億44百万円となりました。業績につきましては、スマートフォンの出荷台数の回復やデータセンターへの積極的投資などにより、機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂やハードディスク用精密研磨剤などの販売は前年同期を上回りました。また、海外において板紙向け紙力増強剤や粘着・接着剤用樹脂の販売が堅調に推移したことも業績に寄与いたしました。
今後の見通しにつきましては、米国トランプ政権による主要政策見直しの影響、中国経済の先行き懸念、地政学リスクの高まりや各国の金融政策に伴う影響など国内外の経済の先行きは見通しがたい状況にあります。
当社グループにおきましては、千葉アルコン製造株式会社の状況について重要な全社課題と認識しておりますが、水素化石油樹脂「アルコン」は中長期的な成長を期待できる製品であり、社長執行役員を責任者とする「アルコン特別委員会」のもとで、販売面では高付加価値用途での拡販に向けたグローバル販売戦略の再構築を進め、生産面では短期的には稼働率の向上、中長期的には石油化学コンビナート再編を見据えた取り組みを強化していきます。
成長市場での需要増加が期待される「のばす」ミッションに位置づけた事業においては、今中計期間中に新たに生産能力増強投資をおこなっております。ハードディスク用精密研磨剤については、すでに顧客認証を取得し、量産化を進めており、電子部品の工程部材用途およびディスプレイ向け光硬化型樹脂や半導体関連市場などで使用される先端材料用のファインケミカル製品については、生産設備が完工し、今後、顧客認証取得と量産化に注力いたします。
2026年3月期の業績につきましては、売上高850億円、営業利益28億円、経常利益24億円、親会社株主に帰属する当期純利益は18億円を見込んでおります。
(単位:百万円)
*EBITDA:償却前営業利益=営業利益+減価償却費+のれん償却額
(単位:百万円)
(参考)千葉アルコン製造㈱の減価償却費 (単位:百万円)
資本の財源および資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等の長期的な資金需要に関しては、金融機関からの長期借入や社債の発行により調達しております。
また、グループ会社の資金調達につきましては、当社において一元管理しております。
なお、当社は格付を取得しており、本報告書提出日時点において、日本格付研究所「BBB+」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持・拡大、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因および対応策につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループにおいて研究開発活動は、当社、ペルノックス㈱、高圧化学工業㈱および山口精研工業㈱がおこなっております。顧客ニーズに対し提案型の製品開発をおこなうとともに、「つなぐを化学するSPECIALITY CHEMICAL
PARTNER」というビジョンに基づき鋭意研究開発活動を展開しております。2016年度に研究開発本部を設置して研究開発資源を一元化し、第5次中期5ヵ年経営実行計画がスタートした2021年度より技術面を軸に再編して機能性コーティング開発部、水系ポリマー開発部、フォレストケミカル開発部、ファイン・エレクトロニクス開発部、コーポレート開発部に開発推進部を加えた体制としております。あらためて当社グループのコア技術・素材を事業ポートフォリオの中核に据え、長期的に経営資源を投入し、顧客ニーズに対して研究開発部門の自律性を高め、多面的に対応できる形へと組み替えました。事業分野は機能性コーティング事業、製紙・環境事業、粘接着・バイオマス事業、ファイン・エレクトロニクス事業であり、その研究テーマは多岐にわたっております。
当連結会計年度の研究開発費は
当事業では、光学フィルム用途、電子材料用途を中心に光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」や熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」の研究開発に注力しております。また、印刷インキや塗料用途において、環境負荷低減に向けた製品の研究開発をおこなうとともに、剥離紙・フィルム用離型剤としてシリコーン樹脂の開発もおこなっております。また、ポリマー合成技術を活かした機能性材料の新規用途開発にも積極的に取り組んでおります。
光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」では、5G関連分野での量産に向け、市場からの高品質要求への対応に注力しております。ディスプレイ用途において、難密着素材への密着性付与、耐傷つき性、光学特性調整技術およびフレキシブル性のレベルアップを達成し、多くの採用が得られております。また、無溶剤光硬化型粘着剤の開発にも取り組んでおり、こちらもディスプレイ用途での実績が拡大しております。水系化による環境に配慮した製品の開発にも継続的に取り組んでおり、水系では塗料用やフィルムコーティング用にて顧客での高評価が得られつつあります。
熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」は、非シリコーン系剥離コーティング剤の開発に取り組み、着実に電子材料用途で実績拡大が進んでおります。また、環境負荷低減のための水系化製品もラインアップしサンプルワークを開始しております。
印刷インキ用樹脂では、各種原料ソースを使いこなす技術開発を進め、顧客での使用形態に応じたワニス製品の開発も進めることで、持続可能な製品供給を目指しています。バイオマス素材としてロジン系樹脂の開発にも取り組んでおり、バイオマス度の向上と機能性を付与したバイオマスインキ用に実績化の目途が得られております。
剥離紙・フィルム用離型剤「シリコリース」は、硬化方式別に熱硬化型および光硬化型、形態別には溶剤系に加えて、環境に配慮した無溶剤系を取り揃えており、さらなる軽剥離化やミスト低減に優れた製品開発を進めております。また、従来からの剥離紙用途に加え、電子部材用途での検討が進み、実績が拡大しております。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、紙の強度を向上させる紙力増強剤や紙へのにじみ止め性を付与するサイズ剤など、紙の機能を向上させる薬品開発に加え、環境視点に基づいた水系ポリマーの技術と用途開発をおこなっております。顧客ニーズや年々悪化する古紙原料や抄紙条件に適応させ、紙のさらなる高機能化ならびに薬品の低コスト化、紙の生産性向上や合理化に寄与する技術の検討をおこなっており、中国、台湾、ASEAN等の海外市場向け製品の開発も積極的に進めております。また、水系ポリマー技術を活かした地球環境と社会に貢献できる新規の開発テーマにも取り組んでおります。
紙力増強剤では、内添紙力増強剤「ポリストロンシリーズ」で高分子量化技術を駆使した、高い紙力増強効果を発現する製品が国内外で販売拡大しております。表面紙力増強剤「ポリマセットシリーズ」では、紙や塗工機の種類に応じた製品設計を行い、顧客での評価が進んでおります。また、地球環境に配慮した新規製品として、バイオマス由来の機能性成分の配合および高濃度化による輸送頻度の低減を通じて、CO2排出量削減に寄与する製品の実績化が進み、更なる拡大に向けて注力しております。
また、環境に配慮した独自の水系ポリマー技術による紙用機能性コーティング剤の製品開発も進めております。ガスバリア性や耐水耐油性などを紙に付与する機能性コーティング剤の開発を進め、脱プラスチックやPFAS代替に向けて、顧客での評価が進んでおります。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、多様化する粘着・接着剤用樹脂に対する顧客ニーズに対応した高機能性製品の開発に取り組み、グローバルに展開しております。環境に配慮した製品の開発も推進しており、脱溶剤化やCO2削減に貢献する水系エマルジョン型粘着付与樹脂製品の高機能化や光硬化型粘着剤向け粘着付与樹脂の提案も積極的に進めております。2024年度は、「エマルジョン型タッキファイヤーの開発」について日本接着学会「技術賞」を受賞しました。また、バイオマス素材としての利点を活かしたロジン誘導体事業の拡大と持続性確保に向けてロジン変性技術の深化やロジンの有効活用を目指した開発にも取り組んでおります。
ロジンエステル、超淡色ロジンなどのロジン誘導体や水素化石油樹脂は粘着付与樹脂として多く使用されております。一方で、これまで培ってきた素材に関するノウハウや変性技術を活用し、バイオマス複合材用途など最近の技術トレンドや社会のニーズに対応したプラスチック添加剤「PLAFIT™」の市場浸透やゴム用途への提案を進めております。また、ライフサイエンス分野での新規用途開拓を目指し、抗菌・抗バイオフィルム剤としての用途開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、半導体・電子部品およびデジタルデバイス関連用途を中心として、精密部品洗浄剤や洗浄システム、はんだ関連材料、熱可塑性ポリイミド樹脂、機能性ファインケミカル材料、リチウムイオン二次電池向け材料の研究開発をおこなっております。ペルノックス㈱においては、エポキシ、ウレタン、シリコーン系の絶縁封止材料、コーティング材料、接着剤、導電ペースト材料を、主として電子部品、他に自動車関連部品、産業機器部品、各種センサー部品向けに開発、製造、販売しております。また、山口精研工業㈱においてはハードディスク用基板やSAWフィルター用基板、パワー半導体用SiC基板向け等の精密研磨剤の研究開発をおこなっております。
精密部品洗浄剤「パインアルファ」では、AI半導体向けに水溶性フラックス洗浄剤を開発し、良好な顧客評価を得ており、環境対応としては、廃水レス洗浄システムを実績化しました。はんだ関連材料であるフラックスでは、新たに当社ロジン技術を活かした半導体パッケージ用途で電極材質に対応した製品を開発、実績化しました。
溶剤可溶型低誘電ポリイミド樹脂「PIAD」では、5Gスマートフォンや5G基地局等に使用される高周波対応フレキシブルプリント回路基板用途、主にAI向け半導体パッケージ基板用途を中心に開発を進め、実績化が進みました。また、低誘電、柔軟性という特徴を持った感光性ポリイミド組成物を開発、エレクトロニクス実装学会主催の実装フェスタ関西2024にて「インパクトポスター賞」を受賞しました。AI等で発展著しいハイパフォーマンスコンピューティングに対応するべく、チップの高集積化に貢献していきます。
リチウムイオン二次電池向け材料では、当社のコア技術である水系ポリマーの技術を活用し、負極用バインダーやセラミックコーティングセパレータ用バインダーを市場に提案しており、徐々に採用が進んでおります。
ファインケミカル材料では、半導体向け材料をはじめ各種機能材料の開発を行っています。また当社グループの高圧化学工業㈱が保有する耐腐食性に優れ、高温・高圧・水素化反応にも対応できる設備での新規受託案件の実績化も着実に進んでおり、今後さらなる伸長が期待される状況です。
半導体モジュール樹脂では、新たにUV硬化樹脂の開発に成功、基板封止保護材として実績化が進展、深部や影部硬化可能といった特徴ある製品開発を進めております。また低熱膨張と流動性を両立した高耐熱性液状注型樹脂の開発を推進、より一層の高性能化を追求し各種電子部品への展開を進めております。
精密研磨剤製品では、データセンター用ハードディスクの高容量化に合わせて、研磨剤の品質向上、生産性向上に注力しております。
当事業に係る研究開発費は
なお、当連結会計年度末における研究開発スタッフは225名であり、取得済特許権保有件数は、国内501件、海外423件、出願中のものは国内154件、海外211件であります。