当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)基本方針
当社グループは、下記の社是、経営信条に則り、収益力・人財(材)力・技術力のレベルを高め、継続的発展を遂げる企業を目指すために、「企業価値」および「企業品質」をより高める企業経営をしていきます。
社是
「限りなき進歩と創造」
経営信条
一. 信用を重んじ確実を旨とする
一. 技術を通じて国家社会に貢献し
一. 社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く
そのために、ニッチな市場のニーズをとらえ、スピード、コスト、クオリティのバランスが高次元で調和している「金メダル製品」の開発を目指し、顧客満足の最大化を目指していきます。
(2)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び対処すべき課題
今後の世界経済は、地政学リスクの顕在化、金融引締めによる景気の後退、インフレの継続等の経済の混乱要因により、引き続き先行きは見通せない状況にあります。
このような状況のもと、当社グループは、既存製品の製品力向上、海外事業展開の推進、新規製品の開発等の販売力の強化、並びに、新規製造設備の着実な立ち上げによる供給力の強化を目指します。
来期の売上高は、半導体市場の回復および円安の影響で増加する見込みですが、営業利益は、原料・エネルギー価格の高止まり、新規設備の稼働開始に伴う減価償却費等の費用増加により、微増に留まる見込みです。経常利益は、当連結会計年度に計上された為替差益の影響がなくなるため、親会社株主に帰属する当期純利益は、遊休生産設備の取壊し工事を予定しているため、それぞれ減益となる見込みです。
〇連結業績計画および当期実績比較
(単位:百万円)
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2023年度実績 |
2024年度計画 |
増減額 |
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売上高 |
58,970 |
65,000 |
+6,029 |
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営業利益 |
11,083 |
11,150 |
+66 |
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経常利益 |
11,883 |
11,250 |
△633 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
8,343 |
7,400 |
△943 |
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償却前営業利益 |
18,244 |
19,500 |
+1,255 |
〇ライフサイエンス事業連結業績計画
(単位:百万円)
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2023年度実績 |
2024年度計画 |
増減額 |
|
売上高 |
34,142 |
36,300 |
+2,157 |
|
営業利益 |
5,637 |
5,350 |
△287 |
|
償却前営業利益 |
7,252 |
7,050 |
△202 |
〇電子材料および機能性化学品事業連結業績計画
(単位:百万円)
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2023年度実績 |
2024年度計画 |
増減額 |
|
売上高 |
24,827 |
28,700 |
+3,872 |
|
営業利益 |
7,533 |
7,900 |
+366 |
|
償却前営業利益 |
12,869 |
14,350 |
+1,480 |
<中期経営計画>
当社は、2021年5月7日に2025年度を最終年度とする中期経営計画 “FUSO VISION 2025”を発表し、各戦略目標達成に向け取り組んでまいりました。また、業績が中期経営計画策定当初の経営目標を大きく上回ったため、2023年5月11日に、足元の業績動向を踏まえ、最終年度(2025年度)の経営目標を変更いたしました。
当連結会計年度は、主として半導体市況低迷の影響を受けたことで、前連結会計年度と比較して売上高、営業利益とも下回りました。しかし、この状況は、短期的な景気サイクルによるものと判断しており、“FUSO VISION 2025”で掲げている中長期の経営方針や施策を変更するものではありません。そのため、2023年5月11日に修正した最終年度の経営目標は変更せず、目標達成に向けて “FUSO VISION 2025”の施策を着実に実行してまいります。
中期経営計画の詳細および、中期経営計画の見直しに関する詳細につきましては、当社ウェブサイト(https://fusokk.co.jp/fusovision2025)をご参照ください。
1.中期経営計画の概要
名称 :中期経営計画“FUSO VISION 2025”
サブテーマ:社会課題の解決に貢献するFUSOであるために
期間 :2021年度~2025年度(5ヶ年の中期計画)
経営目標 :売上高850億円、営業利益190億円、償却前営業利益300億円
経営方針 :①既存事業における拡大する需要の取り込み、着実な対応
②新規事業・分野への投資・挑戦
③持続的成長を支える経営基盤の強化(SDGsへの取組み)
2.目指す企業像
「限りなき進歩と創造」の先にあるもの、当社グループが目指す企業像としては、その特定の分野で輝く数多くの金メダル製品と様々な価値観・アイデアを持つ社員がそれぞれの持ち場で活き活きと働き、社会に貢献し続けられる体力のある企業、そのような未来を思い描き下記の通り設定しました。
・グローバルニッチトップを追求する FUSO
・人々の暮らしの豊かさの向上・持続的な未来に貢献し続ける FUSO
・現状に満足することなくInnovationに挑戦し続ける FUSO
・既存事業に続く成長性ある第3の柱構築で倒れない強い企業である FUSO
<対処すべき課題>
当社グループの事業展開において、以下を重点的テーマとして取り組んでいきます。
(ライフサイエンス事業)
2023年度は、前年度までに伸長していたビジネスの反動が大きい1年となりました。コロナ禍で混乱していた物流が通常に戻り、顧客の在庫確保の勢いは落ち着きました。また幅広い業界で在庫調整局面は長引き、当社の果実酸ビジネスに影響を与えました。2024年度は、国内外販売網を強化し、顧客ニーズを的確に捉え、販売数量の拡大を目指します。また、国際食品安全マネジメントシステム「FSSC22000」の認証取得範囲を広げ、世界基準での品質の高さをアピールし、販売数量の伸長に結び付けていきます。
次世代新製品として取り組んできたコート果実酸(有機酸の油脂コーティング品)は、2023年度は当初想定用途のグミ以外でも新規採用が拡大しました。様々な要望に応えるため、品目拡大を進め、更なる採用を目指します。また新しいコンセプト製品群(酢酸液体の粉末化やグルテンフリー食品用製剤など)は、顧客から高い評価をいただいています。製品ラインナップを充実させつつ、十三工場の機能を大阪工場へ集約し、新設備で効率的に生産し、販売の拡大を実現します。
海外では、青島扶桑精製加工有限公司のテストキッチンや上海食品調味料開発センターを活用することによって、中国国内でのFFAビジネス(※)を更に拡大していきます。またFUSO(THAILAND)CO., LTD.ではタイ国内のみならず、経済成長が著しい周辺国での営業活動を強化しており、各国のローカル食品におけるFFAビジネスを成長させていきます。米国にあるPMP Fermentation Products, Inc.では、2023年度にグルコン酸類の製造能力を2割増しており、北米で拡大する需要を確実に取り込み、シェア拡大に努めます。
当社の強みである顧客のニーズに応えられる営業力、製品開発力を活かし、国内外においての市場の動向をいち早くキャッチすることで、売上および利益の確保に繋げます。
※果実酸の特徴を活用したビジネス
(電子材料および機能性化学品事業)
ウェブ会議やリモートワークが増加するなど、行動や生活様式が変化したことにより、高まる半導体の需要の勢いを受け当社の超高純度コロイダルシリカの販売も2022年度に大きく伸長しましたが、その後、調整局面が長引き、当社の売上は2023年度に前年度を下回りました。もっとも、足元では、半導体の需要は緩やかな回復を見せており、各国・地域が半導体設備増強に動いていることもあり、2024年度後半には2022年度に近いレベルまで回復すると予測しています。また、半導体の微細化や高積層化によるウェハプロセスケミカルの進展も、需要の回復を後押しするものと見込んでいます。
この需要の回復に伴う増加と、新たに創出される需要の増加に対応すべく、鹿島事業所内の新設備は、2023年4月に完工し、8月より稼働を始めています。また、これによりBCPの更なる強化が実現しました。2024年9月には京都事業所、2025年7月には鹿島事業所で、さらなる追加設備の完成を予定しています。これらの設備は高度な技術を集結した仕様であり、製造条件を高精度にコントロールすることが可能です。その生産能力は2022年度の1.5倍以上強化される見込みです。
研究開発におきましては、従来どおりケイ素化学を基軸として多方面への事業展開を推進しています。半導体分野では微細化、高集積化が益々進んでおり、それらのニーズに対応すべく、様々な大きさの粒子や硬さの粒子、表面修飾した粒子等の製品開発を続けていきます。
半導体研磨用途以外の新分野への製品開発や今後のグローバルな研究活動への拡大を見据え、2022年7月に神戸研究所を移設開所しました。東京研究所と開発2拠点体制となっています。今後も積極的に経営資源を投下し、当社グループのコア技術である超高純度コロイダルシリカの合成技術を活かし、新規技術の研究開発を行っていきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、将来の成長に向けた設備投資は不可欠であると考えて、設備投資の採算性を慎重に検討した上で「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)を最重要経営指標としています。併せて、総資産回転率等の資産効率、自己資本利益率等の収益性、自己資本比率等の安全性等、複数の指標のバランスを考慮して経営を進めています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社はサステナビリティ基本方針を定め、その推進および管理についてサステナビリティ委員会を設置して取り組んでいます。
サステナビリティ基本方針
当社は、グローバルニッチ企業のフロントランナーとして、その応用性と技術力で人々の暮らしの多様なシーンにおいて活躍し続けています。食品をはじめとする各産業界に貢献する果実酸とその誘導体、これからの社会における半導体産業に不可欠なシリカ関係製品群を提供し、未来に向け発展的な基盤を築いています。
社是「限りなき進歩と創造」により取り組んできた絶え間なき向上心をもとに持続的社会に貢献し、これからも永続的な企業価値の向上を図ってまいります。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティを推進するため、2021年10月にサステナビリティ委員会を社内に設置しました。気候変動をはじめとした社会課題に対して、戦略的な経営を組み立てるため、企画開発室経営企画部が統括部署となり各事業部、事業所が取り組む事象やデータの集約、実行に取り組んでいます。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティ関連のリスクおよび機会、取組み方針および進捗等を取締役会に報告しており、取締役会はサステナビリティへの取組みの進捗を監督する体制となっています。
<推進体制図>
(2)戦略
現在進行中の中期経営計画では、目指すべき企業像とマテリアリティ(重点課題)を特定し、現状に満足することなく社会的課題に取組み、事業環境の変化への対応と新たな企業価値の創造に挑戦し続けることにより、企業として更なる発展を目指していきます。各事業部は、以下の3つの主要戦略に合わせた取組みを行っています。
(気候変動に関するリスクおよび機会への取組み)
世界情勢や将来予測の情報を収集・分析したうえで気候変動がもたらす当社におけるリスクおよび機会を洗い出しました。個々に記載する移行リスクとは、低炭素経済への移行に関するリスクです。また、物理的リスクは、気候変動による物理的変化に関するリスクとして記載しています。
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種類 |
当社で想定されるインパクト |
財務上の 潜在的 影響 |
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物理的 |
機会 |
生産拠点分散によるレジリエンス向上 |
高 |
|
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リスク |
風水害・海面上昇による施設破損/物流の混乱 |
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移行 |
政策・法規制 |
機会 |
半導体需要増/半導体周辺企業への支援/海外半導体メーカー誘致 |
中 |
|
リスク |
炭素課税等の導入/CO2政策決定の遅れ/排出権取引市場の創設 |
|||
|
技術 |
機会 |
追加設備投資の要請/半導体の微細化・多層化/食品加工技術需要 |
高 |
|
|
リスク |
取引先ニーズの高度化と技術革新 |
|||
|
市場・評判 |
機会 |
利益確保によりカーボン対策強化 |
高 |
|
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リスク |
成長重視への低評価/CO2取組み遅延によるサプライチェーンからの排除 |
|||
|
経済安保 |
機会 |
半導体需要の増大/世界的な人口増による飲料・食品加工ニーズ増加 |
中 |
|
|
リスク |
原料調達不安/地政学リスク |
|||
2022年8月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDフレームワークに基づく情報開示をサステナビリティ報告書の中で行いました。現状では、国内会社のみのScope2による排出量の管理にとどまっていますが、今後は海外グループ会社を含めた全社排出量管理による取組みを進めていく方針です。当社の製品群は持続可能な社会の実現に必要なものが多く、現在取引先からの要請に応えるために設備投資を続けています。そのため、当社のCO2排出に対する取組みは、当面、原単位の削減に留まる見込みです。
■CO2排出量と原単位の推移
(人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および社内環境整備の方針)
当社の社是である「限りなき進歩と創造」において、進歩と創造を実現する担い手は、当社で働く人そのものです。また、経営信条の中でも、「社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く」を掲げ、当社の持続的成長と、そこで働く従業員の成長・自己実現と生活の安定は表裏一体であると考えています。
①人材育成
当社では、事業年度を上期と下期に分割し、各期に複数回、「人事ミーティング」を開催しています。その場では、常勤取締役の全員が出席し、全社的な人事考課レベルのすり合わせと併せて、主要なポジションのサクセッションプランや、中核人材の具体的な活用・育成計画について、議論しています。
業務に必要なスキルやノウハウを習得するために、各職場でのOJTに加えて、全社的な研修体系を整備しています。階層別研修のような人材育成計画に基づく選抜・指名制研修だけでなく、従業員一人ひとりが自らのキャリアを自律的に考え、会社としてキャリア形成を支援する選択制の職種別研修も行っています。従業員一人当たりの研修費用は、次のとおり推移しています。
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
従業員一人当たりの研修費 |
18,223円 |
28,267円 |
43,540円 |
また、資格取得に対する奨励手当や受験料補助を支給するとともに、特定の職掌を対象に保有資格を人事考課に反映する制度を運用しています。
さらに、国内・海外への社費留学制度も定めており、今後も自律的なキャリア開発や自己研鑽を支援する仕組みを整備・強化していきます。
②人材の流動性
当社製品に対する需要拡大が続く状況において、人材の採用・確保は、最重要課題の一つです。
新卒採用は研究開発や生産部門を中心に、中途採用は事業戦略に基づいた人材の最適配置の観点で、採用しています。
とりわけ、生産機能を有する事業所では、人材獲得競争が厳しい状況にありますが、採用管理システムで応募状況・選考進捗状況を効率的に管理するとともに、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった採用手法を取り入れ、要員強化に努めています。
直近3年度における採用実績は、次のとおりです。
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
新卒採用人数 |
12人 |
14人 |
15人 |
|
中途採用人数 |
26 |
49 |
39 |
|
合計 |
38 |
63 |
54 |
また、人材の定着状況は、次のとおり推移しています。
・過去3年間の新卒採用者の定着率
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
定着率 |
75.0% |
100.0% |
100.0% |
・全従業員の平均勤続年数
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
平均勤続年数 |
13.3年 |
12.8年 |
12.3年 |
③人材の多様性
当社は、ライフサイエンス事業、電子材料事業に続く第三の柱となる新規事業の確立を目指しています。新規事業を管轄する部門は、既存事業との兼務・社内公募による異動・経験者採用による配置など、多様な経験を有する人材で構成しています。
中途採用に引き続き注力していく中で、多様な知・経験・価値観を取り入れることによる「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」を推進するとともに、社内公募など従業員自らの主体的なキャリア開発を支援する仕組みを整備していくことにより、新たなイノベーションの創出に努めます。中途採用の割合は次のとおり推移しています。
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
正規雇用労働者の中途採用比率 |
68.42% |
77.77% |
72.22% |
中期経営計画「FUSO VISION 2025」においては、「ダイバーシティ(多様性)の推進・意識改革」を目標として掲げ、従業員一人ひとりが、安心して長く働くことができる雇用環境の整備に取り組んでいます。
2023年度より3年間を対象期間とした一般事業主行動計画の数値目標と当事業年度終了時点の状況は、次のとおりです。
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指標 |
目標 (2025年度) |
実績 (当事業年度) |
|
正社員に占める女性労働者の割合 |
18%以上 |
18.4% |
|
リーダー階層に占める女性労働者の割合 |
12%以上 |
11.9% |
|
男性の育児休業の取得率 |
10%以上 |
25.0% |
在宅勤務制度、フレックスタイム勤務制度を運用し、多様な働き方の推進に取り組んでいます。
また、社内に育児休業相談窓口を設け、本人や職場に育児休業に関する制度や手続きを理解してもらう機会を増やし、従業員誰もが育児休業を取得しやすい環境を整備しています。
引き続き、従業員からの要望を聞きながら、ワークライフバランス支援に取り組んでいきます。
④従業員エンゲージメント
当社では、従業員エンゲージメントに係る現状および課題の把握を目的とし、毎年度、エンゲージメント調査を実施しています。
調査では、「仕事」「職場」「会社」といった3つのカテゴリで質問を設定し、「トータルエンゲージメント」として、「一人ひとりが、今の仕事や職場・会社で働くことに意味や価値を感じ、自ら貢献する意思をもって働いているか」を測定します。
今年度の調査結果として、「トータルエンゲージメント」は「良好な状態」でありました。特に、「会社の理念や製品・サービスへの共感」が高く、「職場への貢献意欲」が強いことが確認されました。一方で、「仕事を通じた成長・貢献実感」が「やや低」く、社員の成長や貢献の「実感」の更なる向上、といった課題を確認しました。
今後も、定期的な調査を継続し、調査結果に基づいた人事施策の企画をおこなうことで、組織強化や生産性の向上、社員の成長・キャリア開発につなげていきます。
⑤健康・安全
メリハリのある就労環境は、健康で活き活きとした職場づくりの基本であると考えています。労働時間については、毎月実績をモニタリング・報告しています。年次有給休暇については、法定の取得義務を確実に履行するのみならず、義務日数を超えた取得の奨励を行っています。また、ストレスチェックをはじめ、保健師による保健指導、健康相談室の設置等により、従業員一人ひとりが健康に働くことができる環境を整備することに努めています。時間外労働時間、年次有給休暇の取得状況の推移は、次のとおりです。
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項目 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
平均所定外労働時間 |
15.6時間 |
15.6時間 |
13.4時間 |
|
平均年休付与日数 |
19.3日 |
18.6日 |
18.3日 |
|
平均年休取得日数 |
12.5日 |
13.0日 |
13.8日 |
|
平均年休取得率 |
65.1% |
70.1% |
74.6% |
(3)リスク管理
代表取締役を統括管理者としたリスクマネジメント委員会を設置し、緊急事態の対応のみならず、各事業におけるリスクの洗い出し、BCP体制、サイバーセキュリティの確認など、全社におけるリスクについて定期的に確認と見直しを実施しています。取締役会はリスクマネジメント委員会から提出を受けた報告書をもとにリスクの監視と評価を行い、次年度以降の対応計画を確認することにより、リスクマネジメントの取組みの決定と監督を行っています。
(4)指標及び目標
(気候変動に関するリスクおよび機会への取組み)
経済産業省資源エネルギー庁が2016年(2015年度分)よりおこなう、工場等でエネルギーを使用する事業者に対して更なるエネルギーの使用の合理化を促すための「事業者クラス分け評価制度」ではS・A・B・Cの4段階へクラス分けにおいて優良事業者としてSランクの評価を受けています。
当社は2022年8月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDフレームワークに基づく情報開示をサステナビリティ報告書の中で行っています。
当社の製品群は持続可能な社会の実現に必要なものが多く、現在取引先からの要請に応えるために設備投資を続けています。大型設備投資を進めたことにより現段階では総排出量を具体的につかみにくく、設備の安定稼働までは削減目標を出すことが難しいため、排出量の増加を抑える取組みとしては原単位削減への取組みをさらに強化し継続してまいります。
当社のCO2排出量の状況(扶桑化学工業単体におけるエネルギー期限の排出量)および原単位に関する推移並びに環境データは前述の通りです。
詳細はHP(下記)のサステナビリティ報告書に記載しております。
https://fusokk.co.jp/sustainabilitys/energysaving
2023年8月にグループの全CO2排出量への取組みを明確にすることを目的にサステナビリティ実施計画を策定しました。同12月にはCO2算出のためのソフトウェア導入を決定し、グループ全社のCO2排出量Scope1~3の算出および管理体制、カーボンフットプリント算出への取組みを2025年度中までに完了することを目指しています。
(人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および社内環境整備の方針)
当社は、2023年度からの3年間を対象とした女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しています。一般事業主行動計画の数値目標と当事業年度終了時点の状況は、前述の通りです。
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指標 |
目標 ( |
実績 (当事業年度) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)市場動向の影響について
ライフサイエンス事業の製品は、加工食品・飲料等の食品分野が主な用途ですが、金属加工・コンクリート混和剤等の工業分野でも広く使用されています。食品分野では、比較的景気変動の影響は限定的と言われていますが、異常気象・自然災害等により需要が大きく変動する可能性があります。工業分野では、食品分野に比べ、景気変動の影響をより一層受けるリスクが存在します。また、どの用途においても、輸入品等の競合品との価格競争、国内外の市況の変動により販売価格、原価が影響を受ける可能性があります。そのため、ライフサイエンス事業の特定の会計期間の業績に影響を及ぼす可能性があります。
電子材料および機能性化学品事業は、半導体業界を中心に製品および商品を販売しており、その半導体業界の特徴として、好況・不況の景気の波が激しいことが挙げられます。そのため、半導体業界の景気変動の波を受けるリスクが存在し、当社グループの電子材料および機能性化学品事業の特定の会計期間の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
両事業とも、特定の分野・地域・ユーザーの依存度を分散するよう、新規用途を獲得するため積極的に情報収集・製品開発を行っています。特に、半導体業界は、短期的な景気の変動はあるものの、中長期的には成長が続くものと想定しています。その想定に沿って、短期的な不況に耐えうる財務体質の強化を目指しています。
(2)自然災害・事故災害の発生について
大規模地震等の自然災害、製造および研究設備等における事故が発生した場合には、生産および物流設備、情報機器(システムサーバー)、研究機器等への被害により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
上記リスクは、当社グループだけでなく、重要な取引先でも発生する可能性があり、サプライチェーンへの影響により、当社グループの業績に影響を与える可能性もあります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
当社グループの生産および物流設備、情報機器(システムサーバー)、研究設備等が自然災害・事故災害に被災した場合は、当社グループで策定しているBCPの手続きにより、適切な情報収集・対応策を実施することで、最短での復旧を目指します。情報機器(システムサーバー)は、クラウド化による外部委託を推進しています。なお、感染症対策として、従業員の健康管理、テレワーク・時差出勤の推進、通勤手段の多様化への対応、勤務中の感染予防策の徹底等を周知し、実施しています。
また、重要な取引先で被害が発生した場合に備えて、仕入の複数購買等の施策をできる限り実施し、サプライチェーンの維持に努めています。
(3)技術革新の影響について
電子材料および機能性化学品事業の主要な納入先である半導体業界は技術革新の激しい業界であり、新規技術の開発・応用がなされた場合、市場が大きく変化する可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
常に半導体業界の最先端の動向・情報を収集し、最先端の技術に対応した製品開発を行い、供給体制を構築しています。また、半導体研磨分野で培った技術を活かし、中空ナノシリカ、トナー市場向けナノパウダー等の製品で半導体以外の市場の開拓を進め、依存度を下げます。
(4)海外事業について
当社グループの事業は世界的に広がっており、当連結会計年度における海外売上高の連結売上高に占める比率は47.0%(北米16.9%、アジア28.9%、ヨーロッパ0.9%、その他0.3%)と海外向けの売上高の重要性が高くなっています。
また、在外の連結子会社は、中国、米国およびタイに合わせて5社あり、子会社を通じて海外においても事業を行っています。海外市場で事業を行う際には、社会的・経済的なカントリーリスク、人事・労務問題の環境の相違、法令等の規制強化等、特有のリスクがあり、それらが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
各国固有のカントリーリスクがあり、それを全て無くすことは困難ですが、各子会社へ駐在員を派遣し、専門家、業界団体等を活用し、各種リスクが顕在化する前段階での情報収集を実施し、早期対応に努めます。
(5)原材料の調達について
当社グループの原材料の調達活動において、中国からの調達のウエイトが大きなものとなっています。このため、中国の社会経済情勢の影響を受けた際には、調達が困難となる可能性や調達価格が上昇する可能性があり、特定の会計期間における業績が影響を受ける可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
中国以外の国からの調達も検討する等、分散化によりリスクの軽減を図っています。さらに、当社および現地法人を通じて、仕入れ先との協力関係を強化し、情報収集、早期の対応が可能な体制を構築しています。また、調達価格が上昇した場合は、各種コスト削減や収益構造の見直しに加え、販売価格の改定による対応も図っていきます。
(6)為替変動の影響について
(4)海外事業について(5)原材料の調達について、で記載のとおり、海外向けの売上高、海外からの仕入高、在外子会社の財務諸表の換算、また、在外子会社も現地通貨と取引通貨が違う場合、それぞれ為替相場の変動リスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
海外向けの売上高、海外からの仕入高のバランスをとることで、為替リスクの軽減を図っています。また、長期の販売契約を締結する際には、為替予約を利用して、仕入価格の固定化を図るなど、為替リスク軽減に努めています。
在外子会社の財務諸表を換算する際の為替リスクの回避は困難であり、海外子会社については、現地通貨での業績管理を行い、現地通貨ベースでの業績の向上を目指します。在外子会社が現地通貨以外の通貨で取引する場合は、基軸通貨である米ドルで取引を行い、為替の変動幅を最小限に抑えます。
(7)化学品に対する法規制について
世界的に環境問題に対する関心が高まる中、化学品への規制が強まる傾向にあります。このような状況下、当社グループの製品の製造・販売についても法律等により規制される可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
国内外の化学品への規制について、当社・子会社において、常に動向を注視し、情報収集を行い、必要な場合、担当部門において専門家や業界団体の助言等を得て、早期の対応に努めています。
(8)知的財産権について
知的財産権の取得および利用については、常に当社グループのスケジュール通りとなる保証はなく、市場競争力に影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ訴訟等の当事者になる可能性があり、その際には費用の発生や人的資源の投入を強いられる可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
知的財産権やノウハウ等は、今後の事業展開や競争力に直結するため、非常に重要であると認識しています。これまで自社権利の取得、活用、保護、ならびに他社権利の尊重について各事業部で対応していましたが、その重要性を鑑み、2023年4月1日付で管理本部内に「法務知財室」を設置しました。法務知財室の主導のもと、各事業部と協力して対応しています。また、発明審査委員会を開催し、社内で知的財産権について情報共有を図り、適正な管理運用を行う体制を構築しています。
(9)製造物責任について
当社グループでは、製品が顧客であるユーザーで原料として使用される、BtoBと呼ばれる商流が大部分を占めており、当社グループの製品に問題等が発生した場合には、ユーザーから一般消費者向けの製品へも影響を与えるなど、影響の範囲が大きく広がる可能性があります。その結果、当社グループの業績に対して影響を与えるとともに、企業への信頼についても影響を受ける可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
経営信条の一つに「信用を重んじ確実を旨とする」とあるとおり、メーカーとして品質・信頼の確保が重要であると認識し、行動規範に品質の維持、コンプライアンス活動の推進等必要な事項を定め、社内に周知徹底しています。
また、両事業とも品質保証部門に対する体制の強化を図り、当社グループの製商品に対する品質管理を行うとともに、国内外の関係部門、調達先等に関与し、工程管理による不良の低減等の品質保証活動を推進しています。
(10)設備投資計画について
当社グループは既存設備の更新だけでなく、新規設備投資等により事業の拡大を図っています。しかしながら、当社グループの製品に対する需要が期待どおりに推移しなかった場合は、生産設備の稼働率低下により、収益性が低下し、減損損失の計上・固定費の負担等、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
新規製造設備への投資決定の際に、ユーザーからの要望・市場調査を念入りに行う等、十分な検討を重ねて決定しています。
新規製造設備や設備更新の際は、省人化、省エネルギー化等、コストの最小化、効率化を推進した設備の導入を進め、稼働率の低下にも耐えうる企業体質を目指しています。
(11)棚卸資産について
(1)市場動向の影響について、で記載したとおり、景気変動の影響を受けた際に棚卸資産が大きく増加し、陳腐化することで、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、原料価格・為替の変動により棚卸資産の簿価が市場価格より高くなり、低価法が適用されると、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
適時、販売状況・販売計画を確認し、生産・購買と販売のバランスをとり、タイムリーに生産計画・購買計画を立案・修正し、実行しています。
また、原料価格を販売価格へ転嫁し、適切な利幅を維持出来るよう、契約の見直しを実施しています。
(12)情報セキュリティについて
コンピューターウイルスによる感染や外部からの不正アクセス等によって、営業機密や個人情報の漏洩が発生した場合には、取引先からの損害賠償請求や社会的信用の失墜により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
ファイアウォールの強化や監視ソフトの導入など、情報セキュリティの強化に日々努めています。
また、クラウド化による外部委託を推進するほか、社員に対してe-ラーニングを活用した情報セキュリティ教育を進めています。
(13)気候変動について
気候変動の直接的な影響として、自然災害の増加、甚大化が想定されます。このリスクに対しては、(2)自然災害・事故災害の発生について、で記載しています。その他に間接的な影響として、気候変動緩和策へ対応した結果、調達先および販売先が限定される可能性や、温暖化対策の施策によるコスト増加により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
環境規制や関連法規等を遵守した上で、気候変動などの環境問題への対応を課題として捉えています。省エネの推進、温暖化ガスの排出量の削減に努めるとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が提言しております4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿って、気候変動が当社グループに与える影響を分析し、対策を実施しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ問題の長期化や緊迫した中東情勢の影響によるエネルギー価格上昇、世界的な金融引き締め、中国経済の減速継続等の景気下振れリスクがあるものの、大幅な金利引き上げにも堅調な米国経済に牽引され、総じて底堅く推移しました。日本経済においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行により社会活動の制限が解除され、インバウンド需要の高まりもあり、景気持ち直しの動きが見られます。しかしながら、エネルギー価格上昇に加えて急激な円安による消費者物価上昇により実質賃金がマイナスの状況が継続しており、日銀の金利引き上げも影響して、依然として先行きは不透明な状況が継続しています。
当社グループの事業環境としましては、国内の果実酸市場では用途によりばらつきはあるものの、落ち込み幅は限定的でしたが、海外において需要が大きく落ち込みました。半導体市場においては、中長期的には成長が継続すると予測されており、当連結会計年度では落ち込みが顕在化したものの、足元では在庫調整が一巡し、AI用途を中心に持ち直しの動きが見られます。
このような情勢の下、当社グループは成長を維持するため、新規顧客の開拓・既存顧客との関係強化・価格改定などの営業活動を強化しました。また、原料資材の安定確保、既存設備の安定稼働による供給体制の強化を進めると共に、鹿島事業所に完成した新規製造設備の立ち上げを進めたほか、製造拠点を集約して生産体制の効率化を図るなど、新たな施策も着実に推し進めています。加えて、本社移転をはじめとした就業環境や社内体制の整備、ガバナンスの強化を推進し、ソフト面での経営基盤の強化にも取り組みました。
a. 財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ12,789百万円増加し、68,133百万円となりました。これは主に、長期借入れにより現金及び預金が増加したためです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ7,421百万円増加し、65,606百万円となりました。これは主に、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備建設工事に係る建物及び構築物、機械装置及び運搬具、無形固定資産が増加したためです。
以上の結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ20,211百万円増加し、133,740百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ7,451百万円減少し、16,457百万円となりました。これは主に、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備建設工事に係る設備関係未払金、未払法人税等が減少したためです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ20,140百万円増加し、22,258百万円となりました。これは主に、長期借入金が増加したためです。
以上の結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ12,689百万円増加し、38,715百万円となりました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,522百万円増加し、95,025百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。
b. 経営成績
当連結会計年度の売上高は58,970百万円(前連結会計年度比13.9%減、9,489百万円減)となりました。営業利益は11,083百万円(同41.4%減、7,846百万円減)、経常利益は11,883百万円(同39.8%減、7,857百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,343百万円(同41.0%減、5,786百万円減)となりました。
売上高、営業利益は、後述の各セグメントの要因により減収減益となりました。経常利益は、営業利益の減少に加え、支払利息の計上により減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減少に加え、投資有価証券売却益の減少、固定資産除却損の増加により、減益となりました。
当社グループの報告セグメントの業績は、次のとおりです。
(ライフサイエンス事業)
ライフサイエンス事業の業績は、外部顧客に対する売上高が34,142百万円(前連結会計年度比9.7%減、3,660百万円減)、営業利益は5,637百万円(同23.9%減、1,766百万円減)となりました。
国内市場では、食品用途は底堅く推移しましたが、工業用途や日用品用途で需要が減少したため、果実酸の販売が落ち込みました。海外市場では、中国では堅調であったものの、欧州・米国で大きく落ち込み、リンゴ酸の販売数量が減少しました。円安による在外子会社の売上高増加の効果はあるものの、世界的な在庫増加の反動の影響もあり、売上高は前連結会計年度を下回りました。営業利益は、継続して取り組んでいる販売価格の改定効果はあるものの、売上高減少の影響に加え生産調整や新設備の稼働による減価償却費の増加、円安による輸入価格やエネルギー価格の上昇等のコストアップ要因もあり、前連結会計年度を下回り、減収減益となりました。
(電子材料および機能性化学品事業)
電子材料および機能性化学品事業全体の業績は、外部顧客に対する売上高が24,827百万円(前連結会計年度比19.0%減、5,828百万円減)、営業利益は7,533百万円(同43.8%減、5,861百万円減)となりました。
半導体市場は、在庫調整は一巡し需要の減少は底を打った感があり、足元の状況は回復の兆しが見えています。主力製品である超高純度コロイダルシリカでは、コストアップ要因に対する販売価格改定や円安効果等の増加要因はありますが、半導体市場低迷の影響を受け販売数量が減少し、売上高は前連結会計年度を下回りました。営業利益は、円安効果はあるものの、売上高の減少に加え、鹿島事業所の新規製造設備の本稼働に伴う減価償却費や立ち上げに係る費用の増加、エネルギー価格の上昇、生産調整による稼働率低下によるコストアップの影響もあり、前連結会計年度を下回り減収減益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、長期借入れによる収入、税金等調整前当期純利益および減価償却費の発生により取得した資金を有形固定資産の取得、法人税等の支払、配当金の支払に充てた結果、前連結会計年度末に比べ7,132百万円増加し、29,483百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果取得した資金は、7,061百万円(前連結会計年度は13,925百万円の取得)となりました。これは主に、法人税等の支払に対して、税金等調整前当期純利益による収入および減価償却費の発生による収入があったためです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、18,576百万円(前連結会計年度は13,417百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が発生したためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果取得した資金は、17,663百万円(前連結会計年度は2,124百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入があったためです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比 |
|
ライフサイエンス |
25,811,620千円 |
△18.9% |
|
電子材料および機能性化学品 |
28,730,988 |
△20.7 |
|
合計 |
54,542,608 |
△19.8 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
b.受注実績
当社グループは、見込み生産を行っているため、受注高および受注残高を把握していません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比 |
|
ライフサイエンス |
34,142,983千円 |
△9.7% |
|
電子材料および機能性化学品 |
24,827,289 |
△19.0 |
|
合計 |
58,970,273 |
△13.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
FUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd. |
9,006,874 |
13.2 |
- |
- |
3.当連結会計年度のFUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd.に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額および収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断および仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断および仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っています。しかしながら、これらの見積り、判断および仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
② 連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりです。
a. 経営成績等の状況
経営成績の分析
(ライフサイエンス事業)
「Ⅰ.果実酸コンビナート構想の実現 次の段階へ」、「Ⅱ.生産体制再構築による効率化」、「Ⅲ.FFAビジネスの拡大加速」の各テーマに取り組みました。
Ⅰ. 果実酸コンビナート構想の実現 次の段階へ
2017年11月に鹿島事業所の承継を完了し、リンゴ酸、フマル酸の原料である無水マレイン酸から製品までの一貫生産体制が確立され、国内№1のフマル酸メーカーとなりました。2019年7月には、鹿島事業所にリンゴ酸新製造設備が竣工し、鹿島事業所と大阪工場の2拠点での供給体制が確立し、日本唯一のリンゴ酸メーカーとして体制が強化されました。2023年度においても引き続き工程のボトルネックの改善による増産およびコスト低減、機能性果実酸としてのコート果実酸の販売強化に取り組みました。
リンゴ酸においては、強化された供給力を背景に各国子会社、販売店と連携、関係を強化して海外での拡販に努めました。2023年度は、国内市場においては、食品用途は底堅く推移したものの、工業用途(メッキ等)の需要減少の影響を受けました。海外市場においては、サプライチェーンの混乱からの回復に伴う顧客の在庫適正化、欧州市場の低迷、市場価格の低下の影響を受け、販売は低調に推移しました。コスト面では販売数量の減少に伴い生産調整を実施したためコストアップ要因となりました。2024年度においては、戦略的価格対応による拡販により海外市場の販売数量の増加を行い収益の拡大を目指します。
クエン酸類は、中国クエン酸価格が激しく変動し市場価格は混乱して推移しました。飲料、食品用途は底堅く推移しましたが、工業用途の需要は半導体市況の低迷の影響もあり減少しました。このような状況下、市場価格の動向を注視し、適切な価格設定による拡販に注力しましたが、需要減少の影響が大きく販売数量は低調に推移しました。調達リスクの低減のため、新たに取り扱いを開始したタイ産クエン酸の販売を開始しました。また、高純度クエン酸の内製化のための設備投資を鹿島事業所で実施することを決定し、建設を開始しました。引き続き、市場価格の動向を的確に把握し、既存製商品のシェアの拡大に注力するとともに、新商品の拡販を目指します。
グルコン酸類は米国子会社PMP Fermentation Products, Inc.において設備の増強が2023年12月に完成し、懸案であった供給力が増強されました。米国市場では原料価格上昇に伴う価格改定や供給懸念から一部顧客のシェアを落とし、顧客の在庫調整の影響もあり販売数量は減少しました。国内市場においても、原料価格や仕入価格の上昇に伴う価格改定の実施、グルコン酸カリウム等の既存製品の拡販に取り組みましたが、主要市場の建設用途が低調に推移しました。引き続き、拡大した生産能力を活用し、柔軟な価格対応によりシェアを拡大し、販売数量の増加を目指します。
鹿島事業所で生産するフマル酸は、主用途の入浴剤市場が低調に推移し販売数量は減少しました。無水マレイン酸も不飽和ポリエステル等の主用途が低調で他社との価格差の影響もあり低調に推移しました。大手顧客のシェアを維持するとともに適切に製造と販売のバランスを取り利益の最大化を目指します。新大阪事業所で生産する医薬品用ビタミンCは大きく販売を伸ばしました。供給体制を増強、整備し、着実に需要を取り込むとともに、その他の顧客への提案を促進します。
Ⅱ. 生産体制再構築による効率化
生産性向上、衛生環境強化を目的に製剤類の製造を行う十三工場の機能を大阪工場へ移転する新プラントは、稼働を開始し、大阪工場の強化、集約は進みました。西日本の供給拠点として大阪工場で主要製品のリンゴ酸を中心に、コート果実酸(有機酸の油脂コーティング品)、各種食品添加物製剤の供給体制が確立されました。鹿島事業所においては、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸の製造拠点として、設備の最適化による安定、増産体制の整備を進めました。また、高純度クエン酸(工業用洗浄アプリシャス)の製造設備の投資を決定し建設を進めています。国内一大生産拠点としての体制を固め、増加する人員へ対応するため、新たに厚生棟の建設を進め、両事業にまたがる生産拠点としての体制構築を推進します。引き続き安全、安心な生産体制を継続し、効率化、供給力の強化、コストダウンに取り組みます。
Ⅲ. FFAビジネスの拡大加速
食品添加物製剤(Formulation of Food Additives) 、食品素材・食品添加物製剤(Formulation of Food Materials and Food Additives)、機能性食品素材・食品添加物(Functional Food Material and Food Additive)、 機能性果実酸(Functional Fruits Acid)の商品群をFFAと総称しています。Food Tech等の新技術の台頭、食の多様化、フードロス意識の高まり等、食品業界を取り巻く環境は変革期に突入しています。この変革をチャンスととらえ、当社の製品、設備、販売チャネル、技術等のリソースを有効活用してこの領域でのビジネス拡大を進めています。
次世代の主力製品として、優れたコート性能をもち、様々な顧客ニーズへ対応したコート果実酸の開発および生産体制の確立を進めました。製造プラントは2021年度に完成し、クエン酸、リンゴ酸、ビタミンC等のコート果実酸を上市し、採用、評価が進みました。顧客ニーズに合わせて、製品ラインナップも拡大し、拡販を進めました。
その他の新商品も日持ち向上剤であるランチフレッシュR(S)、ランチフレッシュCT等、酸化・褐変防止剤であるキプカロンFR・T、オキシナジー等の新製品も上市し、新規採用が進みました。バイオスティミュラント(ストレスフリー製剤)は開発、拡販を進めるとともに、大学との共同研究を開始し、詳細メカニズムを解明し、商品開発の促進、拡販につなげていきます。海外拠点においては、各国の研究開発拠点を活かして開発を進めるとともに、グループ間の連携を深めて各国の食品事情に適した製品開発を進めた結果、各国で新規採用が進み成果を上げています。引き続き、扶桑グループの連携により、各地域のニーズをキャッチした製品のラインナップを積み重ね、中長期で着実な成長につなげます。
ライフサイエンス事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は、前連結会計年度に比べ3,660百万円減少し34,142百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に比べ1,766百万円減少し、5,637百万円となりました。
販売数量面では、果実酸全般では、国内食品用途は底堅く推移したものの、メッキ等の工業用途、日用品用途の需要減退の影響を受けました。リンゴ酸は、国内食品用途では堅調に推移しましたが、工業用途での需要減少、海外市場は欧州市場の停滞や世界的なサプライチェーンの混乱からの回復に伴う在庫調整の影響もあり、販売数量は低調に推移しました。
販売価格面では、国内市場では市場価格が前期の高騰から急速に低下する等、混乱して推移し、困難な局面が継続しました。顧客や調達先とのコミュニケーションを密に取り、適切な価格設定に努めましたが、シェアの低下につながりました。海外市場では、中国経済、欧州経済の影響により競争が激化し、在庫調整による需要減少の影響もあり、市場価格は低下しました。適切な価格設定によりシェアの確保に努めたものの、厳しい市場環境もあり、売上高は前連結会計年度比で減少しました。
営業利益は、価格改定による効果やビタミンC等の販売増加の効果はあったものの、売上高の減少、販売数量の減少に伴う生産調整によるコストアップ、エネルギーコスト等の高止まりの影響もあり、前連結会計年度比で減少しました。
既存商品では特に海外市場での販売力の強化、拡大を図り、シェアの維持、拡大に努めるとともに、新商品の開発、拡販を進め、業績の拡大を目指します。
(電子材料および機能性化学品事業)
「Ⅰ.成長を続ける半導体市場への対応」、「Ⅱ.新生産体制の確立」、「Ⅲ.外部環境変化への対応」「Ⅳ.新規ビジネスの開発」の各テーマに取り組みました。
Ⅰ.成長を続ける半導体市場への対応
半導体市況は、2022年度下期より調整局面に入り、2023年度中も継続しました。2023年度後半よりAI用途向け等を中心に回復傾向の製品もありましたが、スマートフォンやPC等のボリュームゾーンでの回復は鈍く、緩やかな回復に留まり、当社の売上も影響を受けました。しかし、この停滞は一時的なものと予測されており、今後の半導体市場は成長していくと予測され、半導体メーカー各社は設備投資を行っています。CMPスラリー市場も半導体市場の成長に合わせ、年平均成長率10%以上を予測しています。そのため当社も増加が予測される需要に対応するため、供給力の強化に取り組んできました。2023年度に鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカの製造設備(1期)の建設が完成し、稼働を開始しました。2024年度には京都事業所の増設設備が完成する予定で、2025年度には鹿島事業所の2期工事が完成する予定です。全ての設備投資が完成すると2022年度比1.5倍の生産能力となる予定です。また、半導体の微細化に対応した製品の開発のため、研究開発体制の強化を進めました。今後も顧客と綿密に連携し、開発、供給体制の強化を図ります。
Ⅱ. 新生産体制の確立
拡大する半導体市場へ対応するため生産体制の強化を継続して進めています。鹿島事業所の新設備は2023年4月に完工し、試作を開始し、2023年8月より量産を開始しました。これにより京都事業所と鹿島事業所の2拠点生産体制が確立し、BCPの面でも生産体制が強化されました。鹿島事業所においては、ライフサイエンス事業と合わせて当社最大級の生産拠点として運営が行われています。残念ながら2023年度は半導体市況の低迷の影響により稼働率は低下しましたが、市況の回復に向けた対応の準備を進めました。既存設備においても最適な生産体制の構築に取り組み、生産量の増加への対応等の効率化、コストダウン、品質の安定に取り組みました。
引き続き、設備増強による供給能力の強化に取り組み、成長する半導体市場に対応していきます。
Ⅲ.外部環境変化への対応
2023年度はコロナ禍から回復し、経済社会活動が正常化する中で、経済は緩やかに回復しましたが、円安等の外部環境や労働市場の逼迫によりインフレが進行しました。このような環境下で、各部門で課題に取り組みました。エネルギーコストが高止まりする中で、価格転嫁を進めるとともに、高効率、省エネ投資を進め、コスト低減を図りました。鹿島事業所の稼働に伴う2拠点、3工場生産体制に対応した物流、調達体制の整備を進めるとともに、原料サプライチェーンの強靭化のため調達ルートの複数化を進めました。さらに、2030年を見据えた中長期の需要の予測に基づく投資計画の検討を進めました。
変化する外部環境に的確に対応して、増加する物量に対応した安定供給体制の構築を引き続き進めるとともに、新規市場開拓を行い、安定した事業体制の構築、業績の拡大を目指します。
Ⅳ.新規ビジネスの開発
神戸研究所、東京研究所の2つの研究拠点を最大限活用して開発を加速させました。産学連携、学会、特許活動を通じて技術力の強化を図りました。当社の主力製品である超高純度コロイダルシリカに対して、半導体の微細化に要求される製品の開発を進めるとともに、SiC等の新製品に関する製品コンセプトの策定を行う等の半導体用途の深掘りを行い、開発を推進しました。機能性材料用途では、ナノパウダー、中空シリカ等の新商品の開発を行い、新規市場開拓を進めました。また、自社リソースを重点的に投入し、特許の出願、権利化を推進しました。
継続的に人員、開発環境への投資を継続し、製品開発をさらに加速させます。
電子材料および機能性化学品事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は前連結会計年度に比べ5,828百万円減少し、24,827百万円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ5,861百万円減少し、7,533百万円となりました。
販売数量面では、超高純度コロイダルシリカの需要は、半導体市況の低迷の影響を受けました。スマートフォン、PC等の最終製品の需要が低迷の影響に加え、サプライチェーンの混乱で積み上がった在庫調整も想定以上に長期化し、市況の減速は2023年度中継続しました。下期からはAI用途等で市況の回復が見られる製品もありましたが、全般的には需要は停滞して推移し、販売数量は低調に推移しました。
販売価格面では、エネルギーコスト等のコストアップ要因に対する価格転嫁、円安の効果はありましたが、販売数量の減少により、売上高は前連結会計年度比で減少しました。
営業利益は、売上高減少に加え、販売数量減少に伴う生産調整によるコストアップ、新設備稼働に伴う人件費、減価償却費等の費用増加、エネルギー、資材コストの上昇により、前連結会計年度比で減少しました。
2023年度は半導体の需要は調整局面にありましたが、中長期的な成長が予測され、微細化の進展、需要の増加に対応した体制を構築する必要があります。引き続き、最先端分野へ対応した製品開発、供給能力の強化等、課題への対応を継続し、業績の拡大を目指します。
(売上高)
前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに減少したため、9,489百万円減少し、58,970百万円となりました。
(営業利益)
前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに減少したため、7,846百万円減少し、11,083百万円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べ130百万円増加し、952百万円となりました。これは主に、ドル金利の上昇による受取利息の増加および円安が進行したことによる為替差益の増加によるものです。営業外費用は、前連結会計年度に比べ140百万円増加し、153百万円となりました。これは主に、設備投資資金を長期借入で調達したことによる支払利息の計上および投資事業組合運用損が増加したためです。
経常利益は、営業利益の減少に加え、上記要因により前連結会計年度に比べ7,857百万円減少し、11,883百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比べ196百万円減少し、192百万円となりました。これは主に、本社移転に伴う移転補償金の収入があったものの、投資有価証券売却益が減少したためです。特別損失は、前連結会計年度に比べ22百万円増加し、69百万円となりました。これは主に、固定資産除却損が増加したためです。法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額は、利益の減少により法人税等合計で前連結会計年度に比べ2,289百万円減少し、3,662百万円となりました。
経常利益および特別利益の減少に加え、特別損失が増加したため、税金等調整前当期純利益は減少しました。法人税等は減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて5,786百万円減少し、8,343百万円となりました。
財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりです。
キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b. 資本の財源および資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、棚卸資産の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。運転資金の財源は、自己資金および金融機関からの短期借入等を基本としています。当連結会計年度は、新たな短期借入は行っておらず、当連結会計年度末に短期借入金の残高はありません。
投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収等によるものです。投資資金の財源は主に、自己資金および金融機関からの長期借入等によります。当連結会計年度は、2025年度に完成を目指す鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の投資資金200億円に対し、銀行より200億円を長期借入金で調達しました。上昇が予想される金利に対して、確実に設備投資を行うため一括で調達を行いました。当連結会計年度末の長期借入金の残高は当該長期借入金の200億円です。当連結会計年度に実施した設備投資に係る資金の財源は、前述の長期借入金と自己資金を充当しています。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における当社の最重要指標である「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)は、前連結会計年度に比べ5,024百万円減少し、18,244百万円となりました。減価償却費は、両事業において前連結会計年度に比べ増加しました。ライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに新規製造設備の本稼働が要因です。営業利益は、減価償却費の増加以上に両事業とも減少したため、全体で償却前営業利益が前連結会計年度比で減少しました。
総資産回転率は0.48回で前連結会計年度に比べ低下しました。売上高が減少し、設備投資の決済資金の調達による現金及び預金、設備投資に伴う固定資産の増加により総資産が増加したためです。
ROE(自己資本利益率)は9.1%で、前連結会計年度に比べて低下しました(前連結会計年度は17.4%)。分母である純資産が利益の計上、円安による為替換算調整勘定の増加により増加し、分子である親会社株主に帰属する当期純利益が減少したためです。今後、新規製造設備の本稼働に伴い、減価償却費の増加による利益の低下が想定されるものの、償却前営業利益の最大化を目指し、純資産は安全性とのバランスを考慮して、自己資本利益率の向上を目指します。
自己資本比率は71.1%で前連結会計年度より低下しましたが、水準以上の安全性は確保できています。利益の増加により純資産は増加しましたが、長期借入金の増加により負債が増加したため、自己資本比率は低下しました。
今後も、増加が見込まれる需要に対応するため、継続的な設備投資や研究開発投資が成長の源泉であり、投資を継続するためにも、一定水準以上の純資産の厚みが必要であると考えています。今後も、最適なバランスを維持し、資本コストを意識し、最適な資金調達の検討を行います。
投資計画、還元政策を考慮し、効率性、収益性のより一層の向上を目指します。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、ライフサイエンス事業については新大阪事業所および東京研究所、電子材料および機能性化学品事業については神戸研究所および東京研究所を拠点としています。各拠点において、販売戦略ターゲットに対応し、海外子会社を含む営業関連部門や品質保証部門等との相互連携、ユーザーとの相互協力を図りながら、新規事業・製品の開発、技術開発情報の収集等を行いました。また、当社では各セグメントに配分できない研究開発活動を行っています。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は、次のとおりです。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)ライフサイエンス事業
環境への問題意識の高まりによる持続可能な食品の需要増加、特定の健康目的を食品に期待するといった健康志向の高まりなど、食品業界はどんどん変化しており、これらのトレンドは食品業界の将来に大きな影響を与えていくと考えています。当社として、主力製品である各種有機酸を活用しながらこれらの変化に対応するべく、コート果実酸や食品添加物製剤といった付加価値を有する商品の開発に注力しました。
既存の有機酸粒子の表面を油脂で均一にコーティングしたコート果実酸については、積極的に外部での評価を進め、市場増大が見込まれるグミ・キャンディー向けを中心に、大阪工場に導入した生産設備を活用しながら本格的に供給を開始しました。そして、酸のダメージを受けやすい他成分への影響を軽減できる特徴を活かし、菓子はもとより麺やパンなどの加工食品からサプリメントや粉末プロテインといった健康を目的とする食品まで、幅広くお使いいただけるよう取り組みを行い、引き合いを多数いただいています。
また、有機酸とその塩類を複数組み合わせることによって、これまでにない形態にできることを見出せており、それら技術に関する特許出願を行いながら検討を進めました。通常液体である酢酸を、他の有機酸やその塩類と組み合わせて加工することにより、酢酸を比較的高濃度で粉末化したものについては、食品の保存性向上はもとより健康目的のサプリメントなどへ利用いただくことを想定して、引き続き研究開発を行っていきます。
そして、グルコノデルタラクトンを米飯加工品の保存性向上に、アスコルビン酸(ビタミンC)を食品の褐変・変色防止に、グルコン酸ナトリウムを大豆等の植物性原料特有の不快風味改善にと、その対象となる課題に対し有機酸類の効果がより発揮できるような食品添加物製剤の開発を行いました。そして、積極的に拡販活動を進め、それぞれの得意とする分野においてそれら開発商品が採用されるに至りました。食品ロスの低減という問題解決に有機酸類がますます貢献できるよう、今後とも取り組みを継続していきます。
その一方で、電子材料業界向けに有機酸中の不純物を極力排除して超高純度化する技術の確立など、新たな分野に対する取り組みも鋭意行っています。こういった技術をベースにしながら有機酸に新たな機能を付与することを引き続き追求し、お客様に満足いただけるような商品づくりに努めます。
なお、当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は、
(2)電子材料および機能性化学品事業
シリコンウエハ研磨および半導体CMP研磨スラリー向けの超高純度コロイダルシリカ製品および新規用途向け応用製品の開発は、神戸研究所および東京研究所の2拠点での人員配置の最適化や継続的な研究設備の導入・整備により順調に進んでいます。
テクノロジーノード2nm以降の次世代半導体の研磨スラリー向け超高純度コロイダルシリカ製品分野では、粒子のサイズや形状、表面状態、粗大粒子数等をより精密にコントロールする技術の発展に引き続き注力しており、顧客ニーズにマッチした新製品の開発が進み採用に結びついています。また、新たなコンセプトを導入した超高純度コロイダルシリカの開発については、顧客へのサンプル提出や評価結果のフィードバックを受けて改良を進めています。さらに、2023年度に導入した最新鋭分析装置による分析技術の高度化により半導体のさらなる微細化に向けたシリカ粒子の開発取り組みは順調に進んでいます。
製造技術については、半導体配線幅の微細化に対応した製造工程品質管理体制を継続的にブラッシュアップ、および最新鋭の機器を含む既設製造ラインを高い水準で稼働しています。また、2023年4月に完成した鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備は顧客認定が進められており、さらに京都第二工場への超高純度コロイダルシリカ製造設備の新規増設についても計画通り進行しています。これにより2025年度には、2022年度比約1.5倍の生産能力増強を達成し、旺盛な半導体業界の需要に迅速に対応する計画は変更なく進んでいます。
情報産業向けに上市しましたナノシリカ粉末製品の販売や顧客へのワーク継続と共に、新規用途向け応用開発品について、ビジネス獲得に向け技術要求に合わせた開発を東京研究所にて進めています。加えて神戸研究所においてコア技術をベースとした新規分野向け製品の拡充に向け、開発活動を継続しています。
なお、当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は、