当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)基本方針
当社グループは、下記の社是、経営信条に則り、収益力・人財(材)力・技術力のレベルを高め、継続的発展を遂げる企業を目指すために、「企業価値」および「企業品質」をより高める企業経営をしていきます。
社是
「限りなき進歩と創造」
経営信条
一. 信用を重んじ確実を旨とする
一. 技術を通じて国家社会に貢献し
一. 社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く
そのために、ニッチな市場のニーズをとらえ、スピード、コスト、クオリティのバランスが高次元で調和している「金メダル製品」の開発を目指し、顧客満足の最大化を目指していきます。
(2)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び対処すべき課題
今後の世界経済および日本経済は、米国の関税政策による影響、地政学リスクの顕在化、為替動向、継続的なインフレの余波など、景気の先行きが一層不透明になると見ています。
このような状況のもと、当社グループは、海外事業展開を推進するとともに、安全操業、安定生産を継続し、研究開発、品質保証、販売の体制強化、新規製造設備の着実な立ち上げによる供給力の強化に取り組みます。
2025年度の売上高は、半導体市場の成長に伴う当社製品の需要増加を見込み、増収の計画です。営業利益は、円高の進行、原料・エネルギー価格の高止まり、新規設備の稼働開始に伴う減価償却費等の費用増加により、減益を見込んでいます。経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の減少に加え、円高の進行に伴う為替差損の計上を見込み、それぞれ減益となる見込みです。
〇連結業績計画および当期実績比較
(単位:百万円)
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2024年度実績 |
2025年度計画 |
増減額 |
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売上高 |
69,501 |
72,700 |
3,198 |
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営業利益 |
16,230 |
14,000 |
△2,230 |
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経常利益 |
16,561 |
13,800 |
△2,761 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
11,622 |
9,400 |
△2,222 |
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償却前営業利益 |
24,539 |
25,500 |
960 |
〇ライフサイエンス事業連結業績計画
(単位:百万円)
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2024年度実績 |
2025年度計画 |
増減額 |
|
売上高 |
36,287 |
35,850 |
△437 |
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営業利益 |
5,289 |
5,400 |
110 |
|
償却前営業利益 |
6,859 |
7,100 |
240 |
〇電子材料および機能性化学品事業連結業績計画
(単位:百万円)
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2024年度実績 |
2025年度計画 |
増減額 |
|
売上高 |
33,213 |
36,850 |
3,636 |
|
営業利益 |
13,171 |
11,100 |
△2,071 |
|
償却前営業利益 |
19,692 |
20,700 |
1,007 |
<中期経営計画>
当社は、2021年5月7日に2025年度を最終年度とする中期経営計画 “FUSO VISION 2025”を発表し、2023年5月11日に、最終年度(2025年度)の経営目標を変更いたしました。
当連結会計年度においては、ライフサイエンス事業で販売数量が増加し、電子材料事業で半導体市況の回復の影響を受けたことで、前連結会計年度と比較して売上高が17.9%増加、営業利益が46.4%増加するなど、大きな成長を遂げました。
中期経営計画の最終年度である2025年度の計画は、前述のとおり、当連結会計年度(2024年度)と比較して、売上高の増加は見込まれるものの、大型設備投資による償却費の増加が予想されるため、営業利益は減益となる見込みです。2025年度の計画と中期計画最終年度の比較は下記のとおりです。
(単位:百万円)
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|
FUSO VISION 2025年度目標 |
2025年度計画 |
増減額 |
|
売上高 |
85,000 |
72,700 |
△12,300 |
|
営業利益 |
19,000 |
14,000 |
△5,000 |
|
償却前営業利益 |
30,000 |
25,500 |
△4,500 |
2025年度の計画は、市況の影響もあり、中期経営計画を下回る見込みですが、当社は経営方針として掲げた「既存事業における拡大する需要の取り込みと着実な対応」「新規事業・分野への投資・挑戦」「持続的成長を支える経営基盤の強化(SDGsへの取り組み)」に沿って、引き続き施策を実行してまいります。
中期経営計画の詳細および、中期経営計画の見直しに関する詳細につきましては、当社ウェブサイト(https://fusokk.co.jp/fusovision2025)をご参照ください。
1.中期経営計画の概要
名称 :中期経営計画“FUSO VISION 2025”
サブテーマ:社会課題の解決に貢献するFUSOであるために
期間 :2021年度~2025年度(5ヶ年の中期計画)
経営目標 :売上高850億円、営業利益190億円、償却前営業利益300億円
経営方針 :①既存事業における拡大する需要の取り込み、着実な対応
②新規事業・分野への投資・挑戦
③持続的成長を支える経営基盤の強化(SDGsへの取組み)
2.目指す企業像
「限りなき進歩と創造」の先にあるもの、当社グループが目指す企業像としては、その特定の分野で輝く数多くの金メダル製品と様々な価値観・アイデアを持つ社員がそれぞれの持ち場で活き活きと働き、社会に貢献し続けられる体力のある企業、そのような未来を思い描き下記の通り設定しました。
・グローバルニッチトップを追求する FUSO
・人々の暮らしの豊かさの向上・持続的な未来に貢献し続ける FUSO
・現状に満足することなくInnovationに挑戦し続ける FUSO
・既存事業に続く成長性ある第3の柱構築で倒れない強い企業である FUSO
<対処すべき課題>
当社グループの事業展開において、以下を重点的テーマとして取り組んでいきます。
(ライフサイエンス事業)
国内市場では、食品用途の販売は引き続き堅調であり、工業用途や日用品用途での販売も回復傾向にあります。海外市場では、欧州向けのリンゴ酸や米国での有機酸でシェアが回復したほか、中国を始めとするアジア地域を含め総じて堅調に推移しましたが、海外メーカーとの競争は一層の厳しさを増しています。
2025年度はライフサイエンス事業部に国際部を新設して海外子会社5社を管轄することになりました。これにより販売管理や製品の一括管理を実現させ、ライフサイエンス事業利益を最大化できるよう各社との連携を図ります。新規開発品につきましても現地製造、技術サポートを進め、海外での拡販を目指すとともに、既存品についても国内外で生産体制の見直しを図り、効率的な事業運営を進めます。また鹿島事業所内に完成した高純度有機酸“アプリシャス”の拡販に努め、早期の安定生産、新規顧客の獲得に努めてまいります。
販売面では、営業担当者を増員するとともに、重点推進分野を絞り込んだチーム編成をおこないます。製品開発や海外業務の経験者をバランスよく配置し、それぞれの専門性や国際的な視点を最大限に活用できるよう営業体制を充実させ、これまで取り組んできたFFA(※)の販売数量拡大をグローバル市場で取り組みます。オンラインデジタルマーケティングにも力を入れ、商品開発に携わる方々に当社製品の認知を広げるとともに、タイムリーな情報発信・フォローを行うことで、売上増加を図ります。
今後も、果実酸総合メーカーとしてこれまで蓄積してきた販売チャネル、製造・開発ノウハウ、およびグローバルなネットワークを最大限に活用し、市場のニーズにいち早く応えることで、さらなる売上および利益の拡大に尽力します。
※果実酸の特徴を活用したビジネス
(電子材料および機能性化学品事業)
半導体市場は、在庫調整が一巡し、AI用途を中心に需要が回復しました。半導体の高性能化は、トランジスタ素子を形成する前工程を中心に進展していましたが、近年ではアドバンストパッケージ(※)に代表される後工程が主流となっています。さらに、中国市場では旺盛な設備投資に牽引される形で半導体市場の拡大が進みました。このような背景を踏まえ、各社の需要に応えることで、2024年度の出荷数量は大幅に増加しました。
この需要回復と新たに創出される需要の増加に対応するため、2023年4月に完成した鹿島事業所の新設備は、2024年度末にはフル稼働状態となりました。また、2024年10月に完成した京都事業所の新設備も稼働を開始しました。さらに、2025年7月には鹿島事業所でさらなる追加設備の完成を予定しています。これにより、生産能力は2022年度比で1.5倍以上に強化される見込みです。設備増設による生産能力増強に加えて、高濃度・高効率生産品目の拡充を進め、設備面および製品面の両側面から供給能力を強化しました。
サプライチェーンリスクへの対応としては、主要原材料の調達国の分散化や複数購買化を検討・実施しており、原材料調達リスクの低減を継続的に進めています。一方で、米中半導体摩擦やトランプ政権の相互関税の影響など、半導体産業を取り巻く世界情勢には依然として先行き不透明感があります。これらの課題に対しては、情報収集を続けながら必要な対策を講じていく方針です。
研究開発では、従来どおりケイ素化学を基軸として多方面への事業展開を推進しています。半導体分野では、微細化や高集積化が一層進展しており、それらのニーズに対応すべく、様々な大きさや硬さ、表面修飾を施した粒子などの製品開発を続けています。また、半導体研磨用途以外にも、高速通信社会や化粧品用途などに貢献できる特徴的な材料の研究開発を進めています。
※複数のICチップを効率的に組み合わせることで、通信速度や電力効率を向上させる技術
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、将来の成長に向けた設備投資は不可欠であると考えて、設備投資の採算性を慎重に検討した上で「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)を最重要経営指標としています。併せて、総資産回転率等の資産効率、自己資本利益率等の収益性、自己資本比率等の安全性等、複数の指標のバランスを考慮して経営を進めています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社はサステナビリティ基本方針を定め、その推進および管理についてサステナビリティ委員会を設置して取り組んでいます。
サステナビリティ基本方針
当社は、グローバルニッチ企業のフロントランナーとして、その応用性と技術力で人々の暮らしの多様なシーンにおいて活躍し続けています。食品をはじめとする各産業界に貢献する果実酸とその誘導体、これからの社会における半導体産業に不可欠なシリカ関係製品群を提供し、未来に向け発展的な基盤を築いています。
社是「限りなき進歩と創造」により取り組んできた絶え間なき向上心をもとに持続的社会に貢献し、これからも永続的な企業価値の向上を図ってまいります。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティを推進するため、2021年10月に常勤取締役で構成するサステナビリティ委員会を社内に設置しました。気候変動をはじめとした社会課題に対して、戦略的な経営を組み立てるため、経営企画部が統括部署となり各事業部、事業所が取り組む事象やデータの集約、実行に取り組んでいます。
サステナビリティ委員会は4月と10月の年2回開催し、サステナビリティ関連のリスクおよび機会、取組み方針および進捗等を取締役会に報告しており、取締役会はサステナビリティへの取組みの進捗を監督する体制となっています。
(2)戦略
現在進行中の中期経営計画では、目指すべき企業像とマテリアリティ(重点課題)を特定し、現状に満足することなく社会的課題に取組み、事業環境の変化への対応と新たな企業価値の創造に挑戦し続けることにより、企業として更なる発展を目指していきます。各事業部は、以下の3つの主要戦略に合わせた取組みを行っています。
(気候変動に関するリスクおよび機会への取組み)
世界情勢や将来予測の情報を収集・分析したうえで気候変動がもたらす当社におけるリスクおよび機会を洗い出しました。個々に記載する移行リスクとは、低炭素経済への移行に関するリスクです。また、物理的リスクは、気候変動による物理的変化に関するリスクとして記載しています。
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種類 |
当社で想定されるインパクト |
財務上の 潜在的 影響 |
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|
物理的 |
機会 |
生産拠点分散によるレジリエンス向上 |
高 |
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リスク |
風水害・海面上昇による施設破損/物流の混乱 |
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移行 |
政策・法規制 |
機会 |
半導体需要増/半導体周辺企業への支援/海外半導体メーカー誘致 |
中 |
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リスク |
炭素課税等の導入/CO2政策決定の遅れ/排出権取引市場の創設 |
|||
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技術 |
機会 |
追加設備投資の要請/半導体の微細化・多層化/食品加工技術需要 |
高 |
|
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リスク |
取引先ニーズの高度化と技術革新 |
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市場・評判 |
機会 |
利益確保によりカーボン対策強化 |
高 |
|
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リスク |
成長重視への低評価/CO2取組み遅延によるサプライチェーンからの排除 |
|||
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経済安保・関税 |
機会 |
半導体需要の増大/世界的な人口増による飲料・食品加工ニーズ増加 |
高 |
|
|
リスク |
原料調達不安/地政学リスク/米国関税政策 |
|||
2022年8月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDフレームワークに基づく情報開示をサステナビリティ報告書の中で行いました。温室効果ガス(以下、CO2相当量に換算のため「CO2」という。)の排出量の算定を進め、国内の過去3期(2021年度~2023年度)のScope1~3の算出を完了しました。今後は海外グループ会社を含めた全社排出量管理による取組みを進めていく方針です。当社の製品群は持続可能な社会の実現に必要なものが多く、現在取引先からの要請に応えるために設備投資を続けています。そのため、当社のCO2排出に対する取組みは、当面、原単位の削減に留まる見込みです。
(人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および社内環境整備の方針)
当社の社是である「限りなき進歩と創造」において、進歩と創造を実現する担い手は、当社で働く人そのものです。また、経営信条の中でも、「社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く」を掲げ、当社の持続的成長と、そこで働く従業員の成長・自己実現と生活の安定は表裏一体であると考えています。
①人材育成
当社では、事業年度を上期と下期に分割し、各期に複数回、「人事ミーティング」を開催しています。常勤取締役の全員が出席し、全社的な人事考課レベルのすり合わせと併せて、主要なポジションのサクセッションプランや、中核人材の具体的な活用・育成計画について、議論しています。
業務に必要なスキルやノウハウを習得するために、各職場でのOJTに加えて、全社的な研修体系を整備しています。階層別研修のような人材育成計画に基づく選抜・指名制研修だけでなく、従業員一人ひとりが自らの成長を自律的に考えて自己研鑽を進めることができる選択制研修(語学やEラーニングなど)も行っています。従業員一人当たりの研修費用は、次のとおり推移しています。
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項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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従業員一人当たりの研修費 |
28,267円 |
43,540円 |
37,920円 |
また、資格取得に対する奨励手当や受験料補助を支給するとともに、特定の職掌を対象に保有資格を人事考課に反映する制度を運用しています。
さらに、国内・海外への社費留学制度も定めており、今後は、自己研鑽に留まらず、自律的なキャリア開発を支援する仕組みを構築・整備していきます。
②人材の流動性
当社製品に対する需要拡大が続く状況において、人材の採用・確保は、最重要課題の一つです。中長期事業計画を見据えて採用計画を立案した上で、新卒採用は研究開発や生産部門を中心に、中途採用は事業戦略に基づいた人材の最適配置の観点で、採用しています。
とりわけ、生産機能を有する事業所では、人材獲得競争が厳しい状況にありますが、採用管理システムで応募状況・選考進捗状況を効率的に管理するとともに、転職エージェント会社との連携(求人部門からの直接的なニーズのヒアリング機会の用意など)およびダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった採用手法を取り入れ、要員強化に努めています。また、生産拠点の近隣での企業説明会の開催なども始めています。
直近3年度における採用実績(入社日ベース)は、次のとおりです。
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項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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新卒採用人数 |
14人 |
15人 |
11人 |
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中途採用人数 |
49 |
39 |
38 |
|
合計 |
63 |
54 |
49 |
また、人材の定着状況は、次のとおり推移しています。
・過去3年間の新卒採用者の定着率
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項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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定着率 |
100.0% |
100.0% |
92.9% |
・全従業員の平均勤続年数
|
項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
平均勤続年数 |
12.8年 |
12.3年 |
12.3年 |
③人材の多様性
当社は、ライフサイエンス事業、電子材料事業に続く第三の柱となる新規事業の確立を目指しています。新規事業を管轄する部門は、既存事業との兼務・経験者採用による配置など、多様な経験を有する人材で構成しています。なお、中途採用の割合(入社日ベース)は次のとおり推移しています。
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項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
正規雇用労働者の中途採用比率 |
77.8% |
72.2% |
77.6% |
引き続き、中途採用に注力していく中で、多様な知・経験・価値観を取り入れることによる「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」を推進し、新たなイノベーションの創出に努めます。最近では、自己申告制度として、期首の目標設定のタイミングにあわせて、自身の中長期的な成長課題や配置希望を考えるためのシートを用意して社員のニーズ把握とその実現にも努めていくことを始めており、今後はさらに社内公募など従業員自らの主体的なキャリア開発を支援する仕組みを整備していくことにより、社員個人と組織全体が更に活性化するよう進めていきます。
中期経営計画「FUSO VISION 2025」においては、「ダイバーシティ(多様性)の推進・意識改革」を目標として掲げ、従業員一人ひとりが、安心して長く働くことができる雇用環境の整備に取り組んでいます。
当社では在宅勤務制度、フレックスタイム勤務制度を運用し、多様な働き方の推進に取り組んでいます。また、社内に育児休業相談窓口を設け、本人や職場に育児休業に関する制度や手続きを理解してもらう機会を増やし、従業員誰もが育児休業を取得しやすい環境を整備しています。特に、男性の育児休業に関しては、取得を奨励する経営者からのメッセージの発信、取得事例の社内公表、制度や手続きに係る解説資料の配布および説明会の実施などにより取得の促進を図っています。これらの取組みを進めるなかで、2024年度の男性の育児休業取得率の実績は前事業年度より45ポイント上昇し70%となりました。
引き続き、従業員からの要望を聞きながら、ワークライフバランス支援に取り組んでいきます。
④従業員エンゲージメント
当社では、従業員エンゲージメントに係る現状および課題の把握を目的とし、毎年度、エンゲージメント調査を実施しています。
調査では、「仕事」「職場」「会社」といった3つのカテゴリで質問を設定し、「トータルエンゲージメント」として、「一人ひとりが、今の仕事や職場・会社で働くことに意味や価値を感じ、自ら貢献する意思をもって働いているか」を測定します。
2023年度と2024年度の調査結果として、「トータルエンゲージメント」は「良好な状態」でありました。特に、「会社の理念や製品・サービスへの共感」が高く、「職場への貢献意欲」が強いことが確認されました。一方で、「仕事を通じた成長・貢献実感」が「やや低い」状態にあり、社員の成長や貢献の「実感」の更なる向上、といった課題を確認しました。また、社内制度・運用に対する見直しの声も受け取っており、検討を進めております。
今後も、定期的な調査を継続し、調査結果に基づいた人事施策の企画をおこなうことで、組織強化や生産性の向上、社員の成長・キャリア開発につなげていきます。
⑤健康・安全
メリハリのある就労環境は、健康で活き活きとした職場づくりの基本であると考えています。労働時間については、毎月実績をモニタリング・報告しています。年次有給休暇については、法定の取得義務を確実に履行するのみならず、義務日数を超えた取得の奨励を行っています。また、ストレスチェックをはじめ、保健師による保健指導、健康相談室の設置等により、従業員一人ひとりが健康に働くことができる環境を整備することに努めています。時間外労働時間、年次有給休暇の取得状況の推移は、次のとおりです。
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項目 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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平均所定外労働時間 |
15.6時間 |
13.4時間 |
14.5時間 |
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平均年休付与日数 |
18.6日 |
18.3日 |
18.3日 |
|
平均年休取得日数 |
13.0日 |
13.8日 |
13.4日 |
|
平均年休取得率 |
70.1% |
74.6% |
73.3% |
(3)リスク管理
代表取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、8月と3月の計2回開催しました。緊急事態の対応のみならず、各事業におけるリスクの洗い出し、BCP体制、サイバーセキュリティの確認並びにインシデント発生時の訓練など、全社におけるリスクについて定期的に確認と見直しを実施しています。取締役会はリスクマネジメント委員会から提出を受けた報告書をもとにリスクの監視と評価を行い、次年度以降の対応計画を確認することにより、リスクマネジメントの取組みの決定と監督を行っています。
(4)指標及び目標
(気候変動に関するリスクおよび機会への取組み)
経済産業省資源エネルギー庁が2016年(2015年度分)よりおこなう、工場等でエネルギーを使用する事業者に対 して更なるエネルギーの使用の合理化を促すための「事業者クラス分け評価制度」ではS・A・B・Cの4段階へクラス分けにおいて優良事業者としてSランクの評価を継続しています。
当社は2022年8月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDフレームワークに基づく情報開示をサステナビリティ報告書の中で行っています。
当社の製品群は持続可能な社会の実現に必要なものが多く、現在取引先からの要請に応えるために設備投資を続けています。大型設備投資を進めたことにより現段階では総排出量を具体的につかみにくく、設備の安定稼働までは削減目標を出すことが難しいため、排出量の増加を抑える取組みとしては原単位削減への取組みをさらに強化し継続してまいります。
当社のCO2排出量の状況(扶桑化学工業単体におけるエネルギー起源の排出量)および原単位に関する推移並びに環境データは前述の通りです。
詳細はHP(下記)のサステナビリティ報告書に記載しています。
https://fusokk.co.jp/sustainability
当社は2023年8月にグループの全CO2排出量への取組みを明確にすることを目的に、サステナビリティ実施計画を策定しました。2024年度中に国内の過去3期(2021年度~2023年度)のCO2排出量Scope1~3の算出および管理体制を確立しました。更に、主要製品のカーボンフットプリント算出を完了しています。2025年度中にはグループ全体のCO2排出量の算出を完了する予定です。
(人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および社内環境整備の方針)
当社は、2023年度からの3年間を対象とした女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しています。一般事業主行動計画の数値目標と当事業年度終了時点の状況は、以下のとおりです。なお、当社においては当該指標のデータ管理および取組みが行われているものの、各連結子会社では事業規模や制度が異なり、同一の指標および目標を設定することは困難です。このため、各指標に関する目標および実績については、当社のものを記載しています。
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指標 |
目標 ( |
実績 (当事業年度) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)市場動向の影響について
ライフサイエンス事業の製品は、加工食品・飲料等の食品分野が主な用途ですが、金属加工・コンクリート混和剤等の工業分野でも広く使用されています。食品分野では、比較的景気変動の影響は限定的と言われていますが、異常気象・自然災害等により需要が大きく変動する可能性があります。工業分野では、食品分野に比べ、景気変動の影響をより一層受けるリスクが存在します。また、どの用途においても、輸入品等の競合品との価格競争、国内外の市況の変動により販売価格、原価が影響を受ける可能性があります。そのため、ライフサイエンス事業の特定の会計期間の業績に影響を及ぼす可能性があります。
電子材料および機能性化学品事業は、半導体業界を中心に製品および商品を販売しており、その半導体業界の特徴として、好況・不況の景気の波が激しいことが挙げられます。そのため、半導体業界の景気変動の波を受けるリスクが存在し、当社グループの電子材料および機能性化学品事業の特定の会計期間の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
両事業とも、特定の分野・地域・ユーザーの依存度を分散するよう、新規用途を獲得するため積極的に情報収集・製品開発を行っています。特に、半導体業界は、短期的な景気の変動はあるものの、中長期的には成長が続くものと想定しています。その想定に沿って、短期的な不況に耐えうる財務体質の強化を目指しています。
(2)自然災害・事故災害の発生について
大規模地震等の自然災害、製造および研究設備等における事故が発生した場合には、生産および物流設備、情報機器、研究機器等への被害により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。上記リスクは、当社グループだけでなく、重要な取引先でも発生する可能性があり、サプライチェーンへの影響により、当社グループの業績に影響を与える可能性もあります。自然災害等の損失最大予想額は、サステナビリティ報告書に記載しています。
(主なリスクへの対応・取り組み)
当社は、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会より国土強靭化貢献団体認証「レジリエンス認証」を取得しています。グループの生産および物流設備、システムサーバーなどの情報機器、研究設備等が自然災害・事故災害に被災した場合は、当社グループで策定しているBCPの手続きにより、適切な情報収集・対応策を実施することで、最短での復旧を目指します。
また、重要な取引先で被害が発生した場合に備えてBCPの対応状況を含むサプライチェーンアンケートを行い、BCP対策の整備を奨励するとともに、仕入の複数購買等の施策をできる限り実施し、サプライチェーンの維持・管理に努めています。
(3)技術革新の影響について
電子材料および機能性化学品事業の主要な納入先である半導体業界は技術革新の激しい業界であり、新規技術の開発・応用がなされた場合、市場が大きく変化する可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
常に半導体業界の最先端の動向・情報を収集し、最先端の技術に対応した製品開発を行い、供給体制を構築しています。また、半導体研磨分野で培った技術を活かし、中空ナノシリカ、トナー市場向けナノパウダー等の製品で半導体以外の市場の開拓を進め、依存度を下げます。
(4)海外事業について
当社グループの事業は世界的に広がっており、当連結会計年度における海外売上高の連結売上高に占める比率は50.6%(北米15.6%、アジア33.9%、ヨーロッパ1.1%、その他0.2%)と海外向けの売上高の重要性が高くなっています。
また、在外の連結子会社は、中国、米国およびタイに合わせて5社あり、子会社を通じて海外においても事業を行っています。海外市場で事業を行う際には、社会的・経済的なカントリーリスク、人事・労務問題の環境の相違、法令等の規制強化等、特有のリスクがあり、それらが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
各国固有のカントリーリスクがあり、それを全て無くすことは困難ですが、各子会社へ駐在員を派遣し、専門家、業界団体等を活用し、各種リスクが顕在化する前段階での情報収集を実施し、早期対応に努めます。
(5)原材料の調達について
当社グループの原材料の調達活動において、中国からの調達のウエイトが大きなものとなっています。このため、中国の社会経済情勢の影響を受けた際には、調達が困難となる可能性や調達価格が上昇する可能性があり、特定の会計期間における業績が影響を受ける可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
中国以外の国からの調達も検討する等、分散化によりリスクの軽減を図っています。さらに、当社および現地法人を通じて、仕入れ先との協力関係を強化し、情報収集、早期の対応が可能な体制を構築しています。また、調達価格が上昇した場合は、各種コスト削減や収益構造の見直しに加え、販売価格の改定による対応も図っていきます。
(6)為替変動の影響について
(4)海外事業について(5)原材料の調達について、で記載のとおり、海外向けの売上高、海外からの仕入高、在外子会社の財務諸表の換算、また、在外子会社も現地通貨と取引通貨が違う場合、それぞれ為替相場の変動リスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
海外向けの売上高、海外からの仕入高のバランスをとることで、為替リスクの軽減を図っています。また、長期の販売契約を締結する際には、為替予約を利用して、仕入価格の固定化を図るなど、為替リスク軽減に努めています。
在外子会社の財務諸表を換算する際の為替リスクの回避は困難であり、海外子会社については、現地通貨での業績管理を行い、現地通貨ベースでの業績の向上を目指します。在外子会社が現地通貨以外の通貨で取引する場合は、基軸通貨である米ドルで取引を行い、為替の変動幅を最小限に抑えます。
(7)化学品に対する法規制について
世界的に環境問題に対する関心が高まる中、化学品への規制が強まる傾向にあります。このような状況下、当社グループの製品の製造・販売についても法律等により規制される可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
国内外の化学品への規制について、当社・子会社において、常に動向を注視し、情報収集を行い、必要な場合、担当部門において専門家や業界団体の助言等を得て、早期の対応に努めています。
(8)知的財産権について
知的財産権の取得および利用については、常に当社グループのスケジュール通りとなる保証はなく、市場競争力に影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ訴訟等の当事者になる可能性があり、その際には費用の発生や人的資源の投入を強いられる可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
知的財産権やノウハウ等は、今後の事業展開や競争力に直結するため、非常に重要であると認識しています。これまで自社権利の取得、活用、保護、ならびに他社権利の尊重について各事業部で対応していましたが、その重要性を鑑み、2023年4月1日付で管理本部内に「法務知財室」を設置しました。法務知財室の主導のもと、各事業部と協力して対応しています。また、発明審査委員会を開催し、社内で知的財産権について情報共有を図り、適正な管理運用を行う体制を構築しています。
(9)製造物責任について
当社グループでは、製品が顧客であるユーザーで原料として使用される、BtoBと呼ばれる商流が大部分を占めており、当社グループの製品に問題等が発生した場合には、ユーザーから一般消費者向けの製品へも影響を与えるなど、影響の範囲が大きく広がる可能性があります。その結果、当社グループの業績に対して影響を与えるとともに、企業への信頼についても影響を受ける可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
経営信条の一つに「信用を重んじ確実を旨とする」とあるとおり、メーカーとして品質・信頼の確保が重要であると認識し、行動規範に品質の維持、コンプライアンス活動の推進等必要な事項を定め、社内に周知徹底しています。
また、両事業とも品質保証部門に対する体制の強化を図り、当社グループの製商品に対する品質管理を行うとともに、国内外の関係部門、調達先等に関与し、工程管理による不良の低減等の品質保証活動を推進しています。
(10)設備投資計画について
当社グループは既存設備の更新だけでなく、新規設備投資等により事業の拡大を図っています。しかしながら、当社グループの製品に対する需要が期待どおりに推移しなかった場合は、生産設備の稼働率低下により、収益性が低下し、減損損失の計上・固定費の負担等、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
新規製造設備への投資決定の際に、ユーザーからの要望・市場調査を念入りに行う等、十分な検討を重ねて決定しています。
新規製造設備や設備更新の際は、省人化、省エネルギー化等、コストの最小化、効率化を推進した設備の導入を進め、稼働率の低下にも耐えうる企業体質を目指しています。
(11)棚卸資産について
(1)市場動向の影響について、で記載したとおり、景気変動の影響を受けた際に棚卸資産が大きく増加し、陳腐化することで、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、原料価格・為替の変動により棚卸資産の簿価が市場価格より高くなり、低価法が適用されると、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
適時、販売状況・販売計画を確認し、生産・購買と販売のバランスをとり、タイムリーに生産計画・購買計画を立案・修正し、実行しています。
また、原料価格を販売価格へ転嫁し、適切な利幅を維持出来るよう、契約の見直しを実施しています。
(12)情報セキュリティについて
コンピューターウイルスによる感染や外部からの不正アクセス等によって、営業機密や個人情報の漏洩が発生した場合には、取引先からの損害賠償請求や社会的信用の失墜により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
当社は、全社の情報セキュリティを管理する管理本部領域においてISMS認証を取得しています。災害対策やセキュリティレベルを高めるためにクラウド化等を進めるとともに、ファイアウォールの強化や監視ソフトの導入など、情報セキュリティの強化を状勢変化に対応し進めています。
また、インシデント発生時への対応訓練や社員に対してe-ラーニングを活用した情報セキュリティ教育を行っています。
(13)気候変動について
気候変動の直接的な影響として、自然災害の増加、甚大化が想定されます。このリスクに対しては、(2)自然災害・事故災害の発生について、で記載しています。その他に間接的な影響として、気候変動緩和策へ対応した結果、調達先および販売先が限定される可能性や、温暖化対策の施策によるコスト増加により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(主なリスクへの対応・取り組み)
環境規制や関連法規等を遵守した上で、気候変動などの環境問題への対応を課題として捉えています。省エネの推進、CO2の算定を進め国内の過去3期(2021年度~2023年度)Scope1~3の算出を完了しました。主要製品のカーボンフットプリントの算出も取り組んでおり、2023年度分の算出を完了しています。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が提言している4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿って、気候変動が当社グループに与える影響を分析し、政府の進める政策に協調するために対策を検討・実施しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクと政策転換が不確実性を増大させる中、地域ごとに成長に差があるものの、全体として底堅さを維持しました。米国では政策金利の引下げもあり景気は堅調でしたが、新政権の関税政策が消費や投資に下押し圧力をかけました。中国では景気刺激策が実施されたものの、供給過剰や不動産市場の停滞が景気回復の妨げとなりました。日本経済においては、賃金上昇による個人消費の拡大や訪日外国人旅行者数の増加を背景に緩やかな回復を維持しましたが、物価上昇や製造業の弱含みが課題となりました。
このような情勢の下、当社グループは成長を継続するため、中期経営計画で掲げた各種施策を着実に実行しました。具体的には、新規顧客の開拓・既存顧客との関係強化・価格改定、原料資材の安定確保などの営業・購買活動を強化しました。また、2024年4月に発足した生産本部を中心に、生産活動の強化・安定化に取り組みました。同時に、将来の生産能力拡大に向けた準備も進めており、鹿島事業所Ⅰ期工事は本稼働を開始したほか、京都事業所でも新規製造設備が稼働を開始しており、鹿島事業所のⅡ期工事も順調に進行中です。さらに、グループ内従業員の交流強化によるシナジー創出や鹿島事業所における事務所棟の新設による就業環境の改善、新製品の開発、研究開発体制の強化など、新たな施策も着実に推進しています。
a. 財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,081百万円減少し、67,052百万円となりました。これは主に、商品及び製品は増加しましたが、大型設備投資の完成に伴う未収消費税の還付により、その他の流動資産が減少したためです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ8,843百万円増加し、74,449百万円となりました。これは主に、京都事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備増設工事の完成に伴い建物及び構築物、機械装置及び運搬具、無形固定資産が増加したほか、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備Ⅱ期建設工事の進捗により建設仮勘定が計上されたため、建設仮勘定の減少が限定的になったためです。
以上の結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ7,761百万円増加し、141,502百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ2,032百万円増加し、18,489百万円となりました。これは主に、京都事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備建設工事代金の支払に伴い設備関係未払金は減少しましたが、長期借入金の内、1年以内返済予定の金額を固定負債から流動負債へ振替したことによるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ3,294百万円減少し、18,963百万円となりました。これは主に、前述の長期借入金の流動負債への振替によるものです。
以上の結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ1,262百万円減少し、37,453百万円となりました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9,023百万円増加し、104,048百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。
b. 経営成績
当連結会計年度の売上高は69,501百万円(前連結会計年度比17.9%増、10,531百万円増)となりました。営業利益は16,230百万円(同46.4%増、5,146百万円増)、経常利益は16,561百万円(同39.4%増、4,678百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,622百万円(同39.3%増、3,279百万円増)となりました。
売上高、営業利益は、後述の各セグメントの要因により増収増益となりました。経常利益は、為替差益が減少しましたが、営業利益の増加により、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に移転補償金が発生したため特別利益が減少し、固定資産除却損により特別損失が増加しましたが、経常利益の増加により、増益となりました。
当社グループの報告セグメントの業績は、次のとおりです。
(ライフサイエンス事業)
ライフサイエンス事業の業績は、外部顧客に対する売上高が36,287百万円(前連結会計年度比6.3%増、2,144百万円増)、営業利益は5,289百万円(同6.2%減、347百万円減)となりました。
国内市場では、食品用途の需要は引き続き堅調であり、工業用途や医薬品・日用品用途での需要が回復しました。海外市場では、欧州・東南アジア向けのリンゴ酸や米国での有機酸で需要を取り込んで増加したほか、中国を始めとするアジア地域でも堅調に推移しました。円安による在外子会社の売上高増加の効果も加わり、売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、シェアアップのための価格是正に加えて、円安による輸入価格やエネルギー価格の上昇等のコストアップ要因や、定期修繕を例年より長期間実施したことによる生産量の減少の影響もあり、前連結会計年度を下回り、増収減益となりました。
(電子材料および機能性化学品事業)
電子材料および機能性化学品事業全体の業績は、外部顧客に対する売上高が33,213百万円(前連結会計年度比33.8%増、8,386百万円増)、営業利益は13,171百万円(同74.8%増、5,637百万円増)となりました。
半導体市場は、在庫調整が一巡し、用途による濃淡はあるものの、AI用途を中心に需要は回復しました。半導体市場の回復により主力製品である超高純度コロイダルシリカの販売数量が増加したことに加え、コストアップ要因に対する販売価格改定や円安効果により、売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、鹿島事業所の新規製造設備の本稼働に伴う減価償却費や立ち上げに係る費用の増加によるコストアップの影響がありましたが、売上増加による影響が大きく、前連結会計年度を上回り増収増益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益および減価償却費の発生により取得した資金を有形固定資産の取得、法人税等の支払、配当金の支払等に充てた結果、前連結会計年度末に比べ246百万円減少し、29,237百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果取得した資金は、22,701百万円(前連結会計年度は7,061百万円の取得)となりました。これは主に、法人税等の支払に対して、税金等調整前当期純利益による収入および減価償却費の発生による収入があったためです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、20,538百万円(前連結会計年度は18,576百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が発生したためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、2,409百万円(前連結会計年度は17,663百万円の取得)となりました。これは主に、配当金の支払によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比 |
|
ライフサイエンス |
25,977,739千円 |
0.6% |
|
電子材料および機能性化学品 |
34,945,695 |
21.6 |
|
合計 |
60,923,434 |
11.7 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
b.受注実績
当社グループは、見込み生産を行っているため、受注高および受注残高を把握していません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比 |
|
ライフサイエンス |
36,287,718千円 |
6.3% |
|
電子材料および機能性化学品 |
33,213,808 |
33.8 |
|
合計 |
69,501,527 |
17.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
FUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd. |
- |
- |
8,994,254 |
12.9 |
3.前連結会計年度のFUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd.に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額および収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断および仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断および仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っています。しかしながら、これらの見積り、判断および仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
② 連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりです。
a. 経営成績等の状況
経営成績の分析
(ライフサイエンス事業)
主要製商品群、新規製商品群ごとにテーマを定め、取り組みを進めました。
1.重点製品
1-1.リンゴ酸類
国内においては、輸入品の動向を注視し適正価格での販売維持、液体品の拡販に努めました。その結果、食品向けは堅調に推移し、工業用途(メッキ・洗浄剤等)で販売数量が25%増加しました。また、2025年2月からは価格改定を実施しました。海外においては、アジア市場でのシェア維持、需要回復による数量増、戦略的価格対応による欧米での物量奪回、新規販売国での販売網の強化および営業展開に取り組みました。その結果、販売価格は円換算後で10%、ドル建てでは15%低下しましたが、海外市場でのシェアを回復し、ドイツ、スペイン、アメリカ、マレーシア、タイで販売が拡大しました。
1-2.クエン酸類
国内においては、市況価格の動向に迅速に対応してシェアの拡大に努めるとともに、価格改定により失った顧客への営業を強化して、大手飲料、大口洗剤メーカー向け販売数量回復を目指しました。その結果、販売価格は10%低下しましたが、販売数量は7%増加し、シェアを回復しました。大手飲料向けでは入札不調もあり厳しい状況は継続しましたが、大口洗剤メーカー向けでは販売数量が20%増加し、シェアが回復しました。
クエン酸の調達手段を増加させるため、タイのクエン酸メーカーとの関係を強化し、重点的に販売を強化しました。その結果、新規採用が増加しました。また、主に半導体洗浄用途で使用される高純度クエン酸の内製化、販売強化を進めました。製造設備は鹿島事業所内に2024年10月に完成し、早期事業化のための対応を行っています。
1-3.グルコン酸類
国内においては、工業用途でのシェア拡大、価格スプレッドの確保に努めました。その結果、価格是正により販売価格は20%上昇しましたが、大型公共工事の減少により販売数量は10%減少して、売上高は減少しました。売上原価は仕入価格の上昇に加え、円安の影響もあり30%コストアップとなり、利益率は低下しました。
海外においては、米国子会社PMP Fermentation Products, Inc.の拡大した生産能力を活かすため、柔軟に価格対応を行い販売数量の回復を目指しました。その結果、利益は横ばいでしたが、販売数量は35%、シェアは10%それぞれ増加し、大幅に回復しました。
1-4.フマル酸・マレイン酸・ビタミンC類
(フマル酸・マレイン酸)
大手顧客のシェア維持に努めるとともに、需要が縮小傾向にある製紙、塗料、住設業界での大口顧客をターゲットにして販売数量の増加を目指しました。その結果、製紙、塗料、住設業界の需要は低調に推移しましたが、入浴剤等の大口顧客でのシェアは確保しました。価格面では原料価格に連動した販売価格上昇に加え、スプレッドの改善を実施し、利益率の改善に努めました。
(ビタミンC類)
医薬品用途向けに増産および外注による供給体制の強化に取り組み、メインユーザー向けには着実に需要を取り込み、販売増を目指しました。また、医薬品用途の水平展開を図るとともに、飲料用途等の一般用途の提案を促進しました。その結果、供給体制は、当社で増産を推進するとともに、OEMで補完する体制を構築し、販売面では需要が増加する医薬品用途や飲料向けで販売数量が大幅に増加しました。
2.次世代製品
2-1.FFAビジネス※
コート果実酸、米飯向け製剤、酸化防止製剤、褐変防止製剤等の新製品販売拡大、粉末酢酸、易溶化フマル酸、グルテンフリー食品向け製剤等の新製品の上市、ストレスフリー製剤ビジネスの拡大を目指しました。また、大阪工場のFFA設備をフル活用して、利益の最大化を目指しました。その結果、新製品群は後述の通り、新製品の上市、新規採用が増加しました。大阪工場のFFA設備も稼働率が向上しています。
※食品添加物製剤(Formulation of Food Additives)、食品素材・食品添加物製剤(Formulation of Food Materials and Food Additives)、機能性食品素材・食品添加物(Functional Food Material and Food Additive)、機能性果実酸(Functional Fruits Acid)の商品群をFFAと総称しています。
2-2.コート果実酸・応用製剤
FFA製品へ分類されるコート果実酸や日持ち向上剤、酸化・褐変防止剤、マスキング剤、ストレスフリー製剤等の応用製剤の開発拡販に注力しました。コート果実酸は、目標への進捗は低い状況ではありますが、製品ラインナップを拡充し、採用も徐々に増加しています。日持ち向上剤のランチフレッシュRも目標に達していませんが、国内で採用が進み、海外でも販売が増加しています。酸化・褐変防止剤では、変色防止剤のキプカロンFR-T、酸化防止剤のオキシナジーは着実に採用が増加しています。ストレスフリー製剤も採用が進み、用途も芝、イネ以外への用途拡大を図っています。
ライフサイエンス事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は、前連結会計年度に比べ2,144百万円増加し36,287百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に比べ347百万円減少し、5,289百万円となりました。
売上高は、クエン酸類の国内販売価格の低下や製紙、塗料用途向け製品の需要が低調で推移しましたが、リンゴ酸の海外市場のシェア回復による増加、医薬品用途のビタミンCの増加、国内工業用途の需要一部回復、米国子会社PMP Fermentation Products, Inc.の米国グルコン酸市場のシェア回復、円安の効果による輸出、海外子会社の円換算増加も合わせて、前連結会計年度比で増加しました。
営業利益は、シェア回復による販売数量増加、高収益のビタミンC類の販売増加によるプラス効果はあるものの、円安による仕入価格の高騰、シェア回復のための価格是正、鹿島事業所の定期修繕を例年より長期間実施したことによる生産量の減少の影響もあり、前連結会計年度比で減少し、増収減益となりました。
引き続き、既存製商品では特に海外市場での販売力の強化、拡大を図り、シェアの維持、拡大に努めるとともに、新商品の開発、拡販を進め、業績の拡大を目指します。
(電子材料および機能性化学品事業)
「1-1.販売 成長を続ける半導体市場への対応」「1-2.生産・技術増産/安定生産/設備技術/品質」、「1-3.製品開発」「2.機能材料セグメント」、「3.外部環境変化への対応」の各テーマに取り組みました。
1-1.販売 成長を続ける半導体市場への対応
半導体市場は、2023年に一時的な調整局面を迎えたことにより遅れが生じたものの、長期的には成長が継続し、毎年10%程度の成長が見込まれています。需要の拡大に応えることができる販売体制、生産能力、技術開発体制の拡充に取り組みました。各顧客に対して長期の需要予測を確認し、顧客・製品別の製造ライン戦略を確定するとともに、コスト上昇要因毎に丁寧な価格改定を実施しました。
1-2.生産・技術増産/安定生産/設備技術/品質
生産能力の拡充として、2023年度に完成した鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の顧客認定を進め、2024年度末からはフル稼働を開始しました。2024年度に完成した京都事業所の超高純度コロイダルシリカ新設備は、早期の顧客認定を目指し、顧客、製品別に戦略を作成し対応を行っています。2025年度に完成予定の鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の工事も計画通り順調に進捗しています。
安定生産への対応としては、計画的に設備修繕を進めるとともに、市場動向に合わせた生産計画を立案し実行しました。その結果、修繕計画を予定通り行うことで安定生産に寄与し、需要増に対応して、当初計画より10%の増産を達成しました。また、鹿島事業所、京都事業所の新設備においても安定稼働への対応の準備を進めました。
品質対応としては、粗大粒子数低減プロセスの確立等、最先端半導体製造プロセスの品質要求への対応に取り組み、粗大粒子数低減グレードを開発し、顧客評価へ進みました。
設備技術対応としては、設備の省エネルギー化、環境対応、省力化、自動化を検討し、構想を立案し、実施に向けた精査を進めました。
1-3.製品開発
生産効率が高く、顧客ニーズを満たす高付加価値の製品群として高濃度コロイダルシリカの開発を進めました。その結果、高濃度・高生産性品目の製品ラインナップを拡充させ従来比1.5倍の効率化を達成しました。複数グレードで顧客への提案を開始し、評価が進展しています。
最先端CMP向けコロイダルシリカの開発においては、継続的に取り組みを進めました。Beyond2nm世代の技術課題克服に向け顧客と綿密に連携し、顧客要望を踏まえた製品開発を実施し、次世代向け要求事項に対応した製品のサンプルワークを開始しました。
SiC等の新素材向け砥粒に対応した新コンセプト粒子の開発においては、コンセプト設計段階から製品開発段階へと進展し、砥粒の性能検証を実施しています。
2.機能材料セグメント
シリカ機能性材料の用途、素材毎に開発を進めました。
トナー外添剤用途の製品であるナノパウダーは、新規顧客の開拓を行い、新たな顧客で採用に向けた評価が継続しています。低誘電材用途の製品では、中空サブミクロンシリカの開発を行い、採用に向けた顧客評価が継続し、量産化に向けた設備投資の検討を行っています。その他にも化粧品、医療、バイオ等の新規用途開発にも取り組み、化粧品用途では顧客の評価が開始されました。
中長期的な市場開拓テーマとしては、多孔質シリカ・シリカナノシート・コアシェルシリカ等の新技術の市場探索を展示会等を通じて実施しています。
3.外部環境変化への対応
半導体市場が回復する中、日本経済は、円安、労働市場の逼迫によりインフレが継続しています。このような環境下で、各部門で課題に取り組みました。
物流・購買の課題としては、半導体市場の回復による出荷量、生産量が増加し、それに対応した生産能力増強に伴い調達量が大幅に増加し、購買価格、エネルギー価格はインフレに伴い高値が継続しています。また、米中対立等によるサプライチェーンリスクも懸念されます。主要原料である金属ケイ素は、調達リスク低減を目指し、調達ルートの分散の検討、品質の確認等に取り組みました。その他の原料、資材においてもサプライヤーとの連携により安定調達に努めるとともに、使用量の削減、複数購買を進めサプライチェーンリスクの低減に努めました。増加する販売数量への対応としては、出荷拠点を拡充し、出荷能力の増強を図りました。
BCP対応としては、京都事業所、鹿島事業所の新設備が立ち上がり、2拠点、3工場の供給体制が確立、増強されました。鹿島事業所の新設備の顧客認定も進み、量産ステージへ移行しています。前述の購買対応等を含めBCPの体制強化を進めています。
2030年を見据えた中長期の需要予測に基づき、次期投資計画の検討を行い、さらなる成長を目指します。
電子材料および機能性化学品事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は前連結会計年度に比べ8,386百万円増加し、33,213百万円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ5,637百万円増加し、13,171百万円となりました。
半導体市場は、PC・スマートフォン向け等の需要は低調に推移しましたが、AI半導体向けの需要が好調で超高純度コロイダルシリカの販売数量は大幅に増加しました。円安の効果やコストアップに伴う価格改定の効果も合わせて、売上高は前連結会計年度比で増加しました。
営業利益は、鹿島事業所、京都事業所の新設備稼働に伴う減価償却費の増加、製造ライン増加に伴う固定費の増加、資材価格の上昇等のコストアップ要因はありましたが、円安を含む売上高の増加の効果に加え、新規設備を含む製造稼働率上昇による増産効果、生産効率化によるコストダウン効果により、前連結会計年度比で増加し、増収増益となりました。
半導体の需要は、中長期的に成長が続くことが予測されています。最先端半導体への技術対応、需要の増加に対応した製販体制を構築する必要があります。引き続き、最先端分野へ対応した製品開発、供給能力の強化等、課題への対応を継続し、業績の拡大を目指します。
(売上高)
前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに増加したため、10,531百万円増加し、69,501百万円となりました。
(営業利益)
前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業では減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業の増加が大きく、5,146百万円増加し、16,230百万円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べ475百万円減少し、477百万円となりました。これは主に、受取利息は増加しましたが、為替差益が前連結会計年度に比べ595百万円減少したためです。営業外費用は、前連結会計年度に比べ7百万円減少し、145百万円となりました。これは主に、長期借入金にかかる支払利息が増加しましたが、投資事業組合運用損が減少したためです。
経常利益は、上記要因はあったものの、営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ4,678百万円増加し、16,561百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比べ95百万円減少し、97百万円となりました。これは主に、固定資産売却益が増加しましたが、前連結会計年度に計上された移転補償金の収入の影響がなくなったためです。特別損失は、前連結会計年度に比べ322百万円増加し、391百万円となりました。これは主に、固定資産除却損が増加したためです。法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額は、税金等調整前当期純利益の増加により法人税等合計で前連結会計年度に比べ981百万円増加し、4,644百万円となりました。
特別損益は減少しましたが、経常利益の増加により、税金等調整前当期純利益は増加しました。法人税等は増加しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて3,279百万円増加し、11,622百万円となりました。
財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりです。
キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b. 資本の財源および資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、棚卸資産の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。運転資金の財源は、自己資金および金融機関からの短期借入等を基本としています。当連結会計年度は、新たな短期借入は行っておらず、当連結会計年度末に短期借入金の残高はありません。
投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収等によるものです。投資資金の財源は主に、自己資金および金融機関からの長期借入等によります。当連結会計年度において新たな長期借入は行っていません。当連結会計年度末の長期借入金の残高は、2025年度完成予定の鹿島事業所超高純度コロイダルシリカ製造設備の投資資金200億円に対し、2023年度に銀行より長期借入で調達した200億円です。当連結会計年度に実施した設備投資に係る資金の財源は、前述の長期借入金と自己資金を充当しています。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における当社の最重要指標である「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)は、前連結会計年度に比べ6,295百万円増加し、24,539百万円となりました。減価償却費は、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業で減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業で増加し、全体で増加しました。これは電子材料および機能性化学品事業の鹿島事業所、京都事業所の新規製造設備の本稼働によるものです。営業利益は、前述のとおりライフサイエンス事業で減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業で減価償却費の増加額以上に増加したため、全体で償却前営業利益が前連結会計年度比で増加しました。
総資産回転率は0.51回で、前連結会計年度に比べ向上しました。設備投資に伴う固定資産の増加により総資産が増加したものの、売上高の増加が上回ったためです。
ROE(自己資本利益率)は11.7%で、前連結会計年度に比べて向上しました(前連結会計年度は9.1%)。分母である純資産は利益の計上により増加しましたが、分子である親会社株主に帰属する当期純利益が増加したためです。今後も新規製造設備の本稼働に伴い、減価償却費の増加によるコストアップが想定されていますが、収益性の向上により、継続的にROE(自己資本利益率)の10%以上の達成を目指します。
自己資本比率は73.5%で前連結会計年度より向上し、引き続き水準以上の安全性は確保できています。利益の増加により純資産が増加し、自己資本比率は向上しました。今後も、増加が見込まれる需要に対応するため、継続的な設備投資や研究開発投資が成長の源泉であり、投資を継続するためにも、一定水準以上の純資産の厚みが必要であると考えています。今後も、最適な資本のバランスの維持を意識しつつ、資本コストを意識した最適な資金調達の検討を行います。投資計画、還元政策を考慮し、効率性、収益性のより一層の向上を目指します。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、ライフサイエンス事業については新大阪事業所および東京研究所、電子材料および機能性化学品事業については神戸研究所および東京研究所を拠点としています。各拠点において、販売戦略ターゲットに対応し、海外子会社を含む営業関連部門や品質保証部門等との相互連携、ユーザーとの相互協力を図りながら、新規事業・製品の開発、技術開発情報の収集等を行いました。また、当社では各セグメントに配分できない研究開発活動を行っています。
当社は、2028年度の稼働開始を目指して、事業融合型の新たな研究開発拠点の設立を計画しています。両事業の研究開発機能を集約することで生じるシナジー効果を活かし、新規事業の創出と既存事業の強化を図ります。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は、次のとおりです。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)ライフサイエンス事業
近年、食に関する様々な課題を解決するために、最新技術を用いたフードテックが活用されており、食材の成分や構造を制御し、見た目や食感を向上させるフードデザインの進化は目覚ましいところです。また、食品の鮮度保持技術や、未利用食材を活用したレシピ開発などにもフードテックは利用され、フードロス削減に向けた業界の取り組みもますます盛んになっています。食に関するこのような取り組みに対し、当社としても主力製品である各種有機酸およびその塩類を用いて貢献できるよう、コート果実酸や食品添加物製剤といった付加価値を有する商品の開発に注力しました。
既存の有機酸粒子の表面を油脂で均一にコーティングしたコート果実酸については、積極的に外部での評価を進め各種用途にて採用をいただいています。そして、お客様のニーズにさらに応えるべく、より耐熱性を高めたり、水分散性を高めたりといった改良を行いながら、継続して商品開発を行いました。
また、ビタミンC(アスコルビン酸)やビタミンE(トコフェロール)を加工食品の酸化防止や褐変・変色防止に、グルコノデルタラクトンを米飯加工品の保存性向上に、グルコン酸ナトリウムを大豆等の植物性原料特有の不快風味改善になどと、その対象となる課題に対し、当社が有する有機酸およびその塩類をはじめとした各種素材がより効果を発揮できるようアレンジした、食品添加物製剤の開発を行いました。そして、積極的に拡販活動を進め、順次採用いただいているところです。
その一方で、食に関わる分野以外でも有機酸およびその塩類を幅広くご利用いただけるよう、取り組みを行いました。電子材料業界向けに、有機酸中の不純物を極力排除して超高純度化する技術を確立し、その技術をもとに鹿島事業所において生産設備を完工するに至りました。また、農作物に対する非生物的ストレスを制御してダメージを軽減し、健全な農作物提供に寄与するバイオスティミュラント剤に関する取り組みを継続しつつ、一次産業向けとして、肥料や農薬とは異なるアプローチで農作物の安定した生育と収穫に有機酸類が効果的であることを示せるよう、検討を継続しています。さらには、酢酸など通常は液状である有機酸を、他の有機酸やその塩類と組み合わせて加工することにより安定的に粉末化できることを見出せており、その実現のため、効率よく製造するための技術確立を進めているところです。
これらの取り組みを通じて見出せた新たな価値をお客様に満足いただけるような商品の開発につなげ、各種有機酸およびその塩類を新たな分野でもご利用いただけるよう努めていきます。
なお、当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は、
(2)電子材料および機能性化学品事業
シリコンウエハ研磨および半導体CMP研磨スラリー向けの超高純度コロイダルシリカ製品および新規用途向け応用製品の開発は、神戸研究所および東京研究所の2拠点での継続的な人員配置の最適化や研究設備の導入・整備により順調に進んでいます。
半導体研磨スラリー向け超高純度コロイダルシリカ製品(クオートロン®)では、粒子サイズや形状、表面状態、粗大粒子数の精密なコントロールといった技術開発への注力により、技術ノード1.8nm以降の次世代半導体の微細化を実現するための顧客要求性能に合った製品開発と共に、生産性を改善した新製品の開発を複数進めており、顧客評価において良好な結果が得られています。また、新しい材料や研磨工程での採用を目指した超高純度コロイダルシリカ開発への取り組みについて、顧客評価結果に基づいた改良を継続して進めています。
低誘電フィラー市場でのビジネス獲得に向けた応用製品として、東京研究所において中空シリカパウダー(ミラリカ™)の開発を進めており、顧客採用に向けた評価において良好なフィードバックが得られているとともに、2025年1月の展示会nano tech 2025において「マテリアル賞」を受賞するなど順調な進捗となっています。加えて、当社における超高純度コロイダルシリカのコア技術をベースとした新規分野向け製品の拡充に向けた開発活動を継続しています。
なお、当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は、