第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。なお、当社は単一セグメントです。

 

(1)経営方針

 IT社会は多様な産業に支えられていますが、日本が最も活躍している産業は、電子デバイスに必要とされる機能

性材料を供給しているファインケミカル分野です。当社の主要製品である貴金属めっき薬品は、その機能性材料の一種であることから、当社はケミストリ(化学)を基礎に科学的に理論武装した独創的な製品により、社会課題と向き合い、多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業を目指します。

 

(2)経営戦略等

 当社は少数精鋭・ファブレス型・開発型企業として、貴金属めっきに特化して事業を発展させてきました。製造プラント等の生産設備は持っておらず、新規製品開発のためのマーケティング、それを実行するための技術開発及び営業活動に力を入れ、いち早く商品化を実現することで、市場のシェアを獲得してまいりました。設立50年を過ぎた今、コロナ禍のもとDX化等により急拡大する電子部品業界において、既存市場以外においても当社の技術で解決できる社会課題があることが、より鮮明になってきました。

 そこで当社は、自身の強みを堅持しつつ、新規事業領域や既存市場でのニーズをとらえて社会課題の解決につなげるべく、新たに中長期ビジョン「RDD2030※」を策定し、2030年までの期間を3つのフェーズに分け、既存市場はもとより、新たな市場で評価される“日本高純度化学”へと進化していくことを目指します。

※RDD2030= Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030

 

企業理念とビジョン

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中期経営計画のロードマップ

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中期経営計画の詳細は当社ホームページに開示しております。

サステナビリティ基本方針

 「めっき」とは、電子部品の接続部位の錆び(酸化)を防ぎ、電子回路の電気信号の流れを円滑に保ち最高の性能を発揮させるのに欠かせない技術です。

 当社は自社独自技術を以て、化学物質の“配合の妙”を貴金属めっき薬品のレシピに昇華することで付加価値を創出しています。当社製品をめっき工程に用いれば、必要な箇所に最低限の厚みの貴金属めっき皮膜を形成することができ、稀少資源である貴金属の使用量を大きく節約し経済合理性を高めることができます。当社の設立以来の事業そのものが、省貴金属性能でサステナブルな社会の達成を指向しています。

 貴金属めっき技術は最先端の電子機器の内部で接点・接合に使用されており、当社は、貴金属に特化しためっき薬品の開発・製造・販売を行うファブレスで知識集約型・開発型の企業として、ファインケミカル分野とエレクトロニクス業界との橋渡しの役目を担ってきました。

 パソコン・携帯電話・デジカメがスマートフォンへと集約したような技術革新とともに、小型化・高性能化・低消費電力化など電子部品の要求特性のハードルは上がり続けています。また低炭素社会への変革や社会インフラのデジタル化が加速すれば、自動車の電装化・電子化が急速に進化しEV化したように、電子部品の接点・接合点の数も爆発的に増大するため、省貴金属技術の出番が今後ますます拡大し、当社は更に広範な事業分野において地球環境への貢献を果たすことが出来ます。

 上記のような事業活動を通じて、当社は、エレクトロニクス業界への貢献を通じて、サステナブルな社会の実現のため、また社会的責任を果たすため、サステナビリティ基本方針を以下の通り定めております。

 

<サステナビリティ基本方針>

・当社は貴金属や希少鉱物を使用する製造業であり、多くの化学物質を取り扱う事業の性質上、地球環境への配慮が不可欠です。資源を有効活用し、持続可能な社会づくりに貢献することを前提として事業活動を行い、環境負荷を継続的に低減していきます。

・当社は「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」の企業理念のもと、地球環境リスクやライフスタイルの変革、エネルギーシフト等の社会課題と向き合い、ステークホルダーとの連携を深め、多様な視点と独創性を発揮しながらファインケミカルとエレクトロニクスの架け橋となることを目指します。

・当社は、サステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)が、事業のリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題として認識し、これらの課題に真摯に取り組みます。当社は、当社事業を通じた社会の持続可能な発展への貢献と共に持続的な成長と企業価値向上を目指します。

 

(3)経営環境

 当社が主力基盤とする半導体・電子部品市場は、グローバル規模での発展を維持しており、当社の販売先であるメーカーの多くは、この広大な市場に適応するために、新技術を生み出す開発力を競い合っています。

 当社を取り巻くリスクについては、次項3〔事業等のリスク〕に記載の通りですが、パンデミックや気候変動等の「環境的リスク」、貿易制限や紛争・戦争といった「地政学的リスク」、重要原材料・重要部品の不足等の「経済的リスク」、輸送インフラ不全等の「技術的リスク」といった様々なリスクが見られる不透明・不確実な足元の経営環境の中でも、新型ウイルスによるライフスタイルの変革、脱炭素/省資源に伴うエネルギーシフト、データ通信量・容量の急激な増加等の「変わらぬメガトレンド」が存在し、当社が貢献できる社会課題は多数あると認識しており、当社の独創性、知的財産を活かした事業機会はますます広がっていると考えています。

 

(4)対処すべき課題と対策

①営業力の強化

 益々加速するデジタルトランスフォーメーションの取り組みや積極的なグリーン投資、及び自動車のEV化/電装化の進展に伴い、これらを支えるデータセンターや高速大容量通信、生成AIやAI搭載機器、パワーデバイス等の需要拡大から、半導体をはじめ、半導体搭載用基板、プリント基板、コネクター等におけるハイエンド電子部品の需要が高まっており、これらの実現に必要不可欠となる高性能かつ高品質なめっき薬品が求められております。

 これらのニーズに対して、タイムリーな製品提供による国内外の市場シェア拡大が当社の成長戦略の要と考え、国内外のトップメーカーをターゲットにマーケティング活動を進め、省資源プロセス等の環境対応型製品の提案,表面処理薬品メーカー/装置メーカーとの協業によるトータルプロセスでの性能向上の提案等を積極的に行うとともに、学会発表、技術コンソーシアムへの参画、展示会出展等の広報活動により更なる認知度向上を図り、新規顧客の獲得と売上・利益の向上を目指します。

 また、顧客と当社の間で技術情報や生産状況を共有できるデータベースの準備を進めており、国内,海外を問わずソリューション提案等の充実した顧客サポートを提供できる体制を構築することで顧客との連携強化を図ってまいります。

 

②技術開発力の強化

 当社の競争相手は、貴金属めっき薬品業界だけでなく卑金属めっき薬品業界も含みます。また、グローバル化が進んだ昨今では海外のローカルメーカーも台頭しつつあり、技術開発競争は一層厳しさを増しております。このような状況の中、貴金属めっき分野では顧客要望に対しタイムリーな改良に対応できるプロセス提案力及び車載向けや産業機械向け等の新用途開拓に向けた技術開発力の向上が不可欠となります。なかでもニッケル不使用プロセスをはじめとした次世代最終表面処理プロセスの実現では、めっき薬品だけでなく、前・後処理、装置を含めたプロセス全体での性能向上も果たしていかなければなりません。また貴金属/卑金属にこだわらず、業界として技術的に未完成なテーマを厳選して完成に向けた開発を推進していくことが重要と考えます。

 さらに当社は、めっきで培った酸化還元(Redox)の技術を活かし、既存の事業領域だけでなく新しい事業領域の創出を目指しており、中長期ビジョンRDD2030のもと、電池材料開発を推進中です。従来のめっきだけに留まらない柔軟な思考力と技術開発力が必要となります。

 サステナビリティを巡っては、当社は貴金属や希少鉱物を使用する製造業であり、多くの化学物質を取り扱う事業の性質上、地球環境への配慮が不可欠です。環境負荷低減につながる製品開発、めっき工程におけるエネルギー使用量削減といった環境にやさしい製品づくりが重要な課題であると認識しております。

 このような状況の中、当社の数倍の技術陣容を有する競合薬品メーカーに対抗するためには、ユニークな発想を持ち視野の広い技術陣の育成が必要となります。能動型自律人材の採用と育成により、技術陣のレベルアップを実現し、開発力の強化を図ってまいります。同時に、当社単独では困難な技術開発やトータルソリューション力の強化を効率的に実施していくため、最適な外部連携及び協業を図ってまいります。

 

(5)目標の達成状況を判断するための経営指標

 スマートフォンやパソコンなどの民生向け、及びサーバー/データセンター向けのめっき薬品については緩やかな需要回復に留まったほか、産業機械向けの需要が低迷したことにより、当社の2024年3月期のROEは3.9%となり、前期比0.2ポイント悪化しております。詳細につきましては、「第一部〔企業情報〕第1〔企業の概況〕〔主要な経営指標等の推移〕自己資本利益率」をご参照ください。中長期のROE目標10%の達成に向けて、収益性の向上、資産の更なる効率化に取り組んでいく所存であります。

 また、24年3月期期末配当から5%を下限とする自己資本配当率(DOE)を適用したことに伴い、目標指標を従来の株主資本利益率から自己資本利益率に変更し、統一しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 気候変動が加速していく中、世界各地において自然環境・人々の暮らし・企業活動に様々な影響や被害が現れ始めています。気候変動への取り組みとしてパリ協定が採択され、各国がネットゼロに向けた対応を行っており、日本政府はNDCの目標(2030年度における温室効果ガス(GHG)削減目標)を26%から46%(2013年度比)に引き上げることを表明しています。こうした中、企業による事業を通じた脱炭素社会への貢献が求められています。当社は、事業を通じて気候変動の緩和と適応を行いながら持続的成長を目指します。企業に対して気候関連課題に関する情報開示要請も高まっており、情報開示の重要性を認識し、開示に向けた取り組みを進めています。

 また、当社は知識集約型・開発型の企業であるため、人的資本が企業価値向上の源泉であり、「能動型自律人材」の多寡により会社の経営が左右されると考えております。当社の中・長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせず、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成、②能動型自律人材の採用と育成、③働きやすくやりがいを感じる職場環境の整備、という3つの考え方に基づき人材育成方針並びに社内環境整備方針を策定いたしました。これらの方針をもって、全従業員が主体的に経営に参画する組織風土を醸成し、人的資本経営の実現を目指します。

 

 当社はサステナビリティ基本方針に基づき中長期的に、主に気候変動と人的資本の観点から、当社が重要と考える課題(マテリアリティ)について行動計画を下記の通り策定しています。

 

(1)-①当社のマテリアリティ

マテリ

アリティ

方針

目標

KPI

行動計画(概略)

環境に

やさしい

製品づくり

①環境負荷低減につながる製品開発及び事業活動の推進

環境配慮型製品について、個別の開発テーマごとに設定した製品化計画の達成

2030年度までの製品化計画に基づく進捗度

サステナビリティ委員会や経営会議における開発テーマの進捗管理

②めっき工程におけるエネルギー使用量削減

1.GHG排出量削減:

2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルの達成

2.エネルギー使用量:

2030年度エネルギー使用量の2022年度比20%削減

・GHG排出量
 


・エネルギー使用量

・建物の遮熱化や空調機器の更新

 

・J-クレジット等の使用

③めっきで培ったコア技術の応用によるエネルギー分野への貢献

2030年度までの電池市場への参画

2027年度までの電池材料・電解液メーカーとの共同開発合意

展示会出展などを通じた提携先の選定と共同開発合意

人的資本

経営の推進

①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成

会社の目指す姿にエンゲージしている従業員の割合を一定水準以上とする(過半を目標)

従業員エンゲージメントスコア

・エンゲージメントスコアの計測と目標値の設定

・スコア向上につながる諸施策の継続的な実施

②能動型自律人材の採用と育成

能動型自律人材に必要な教育機会・カリキュラムの整備と従業員全員の受講

育成プログラム(役職別)の受講率

能動型自律人材として求められる資質・スキルセットに必要なカリキュラムの充実化と受講率向上

③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備

1.職場環境等、会社の風土・制度に満足している従業員の割合を一定水準以上とする(過半を目標)

2.希望する全員の育児休業取得

 

3.2030年度末時点の女性管理職比率15%達成

・従業員エンゲージメントスコア

 

・育児休業取得率

 

・女性管理職比率

・エンゲージメントスコアの計測と目標値の設定

 

・育児休業制度の継続的な周知・浸透

・女性を対象としたキャリア支援プログラムによるサポート

 

(1)-② マテリアリティに関する行動計画

当社のマテリアリティに関する主な行動計画は、以下の通りです。

 

環境にやさしい製品づくり

①環境負荷低減につながる製品開発及び事業活動の推進

・環境配慮型製品(穀物由来原料代替、ニッケル不使用、シアンフリー)について、個別の開発テーマごとに設定した製品化計画を達成(製品リリース)することを目標としています。

 

②めっき工程におけるエネルギー使用量削減

・「GHG排出量削減:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルを達成する」ことと、建屋の遮熱化や空調機器の更新など様々な省エネルギーへの取り組みを行い「エネルギー使用量削減:2030年度エネルギー使用量を2022年度(167t-CO2)比で20%削減する」ことを目標としています。

・上記のエネルギー消費量削減施策のみではカーボンニュートラルは達成できないため、J-クレジット等の使用によるカーボンニュートラル実現を計画しております。

③めっきで培ったコア技術の応用によるエネルギー分野への貢献

・展示会出展などを通じて提携先の選定を進め、2027年度までに電池材料・電解液メーカーとの共同開発に合意し、2030年度には生産・販売開始することを目指します。

 

人的資本経営の推進

①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成

・本中期経営計画期間中(~2024年度)に現状の従業員エンゲージメントスコアを計測し、次期中期経営計画(2025~2027年度、2028~2030年度)における目標スコアを設定のうえ、従業員のエンゲージメント向上につながる施策(諸制度の見直し、働き方の選択肢の拡大、1on1等の対話機会の拡充等)に継続的に取り組んでいきます。

②能動型自律人材の採用と育成

・「能動型自律人材」に必要な教育機会・カリキュラムを整備し、従業員全員が受講することを計画しております。

③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備

・「従業員エンゲージメントスコア」「育児休業取得率」「女性管理職比率」を指標とし、会社の風土・制度に満足している従業員の割合が一定水準(過半)以上となっていることを測るために、エンゲージメント調査を実施することを計画中です。調査項目の詳細は、2024年中に策定する予定です。

・育児休業については、現状、希望者は全員取得しております。今後も当社の福利厚生制度の説明の機会等において、育児休業制度の周知と一層の浸透を図っていきます。

・上記のエンゲージメント向上施策の継続のほか、女性管理職については、キャリア採用と併せてキャリア支援プログラムによるサポートを検討・実行します。

 

(2) 気候変動への取り組み

 気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識しています。気候変動の取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上につながるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、当社はSDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。

当社は気候関連の財務情報開示の重要性を認識し、以下の移行計画を策定し、TCFD提言に則した情報開示を行っていきます。

 

①気候変動に関するガバナンス

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・取締役会は、サステナビリティ委員会から経営会議を経て報告される気候関連事項のうちの移行計画の策定と更新、及び目標と指標を、自社の戦略・事業計画等に照らしてその妥当性を検証し、承認します。本移行計画及び関連する気候関連目標は、2024年3月の取締役会にて承認されました。

・サステナビリティ委員会は、定期的に(原則年4回)開催され、取締役会に承認された移行計画に関する各目標の進捗度合いを、指標を軸にレビューします。また、移行計画の進捗及び対応策など重要事項については、定期的に(原則年2回)経営会議に報告し、経営会議より取締役会に報告します。取締役会では、自社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等との整合性に留意しつつ、移行計画に関する目標の達成度合い等を確認した上で移行計画の修正の必要性を検討するなどして、移行計画を監督します。

・代表取締役社長は、気候関連事項における自社の経営責任を負っています。この責任には、気候関連事項の評価や移行計画実施のためのマネジメントが含まれています。具体的には、代表取締役社長は経営会議並びにサステナビリティ委員会の主催者兼議長であり、参加メンバーから直接報告を受け、重要課題について討論する等の手法で、移行計画の効果的な実施を確保するための十分な権限と情報へのアクセス権を保持しています。

 

②戦略

 当社は、2023年6月に環境への取り組みの一環として気候変動対応についてTCFD提言に即した情報開示を行い、その中で移行リスク・物理的リスク及び機会を特定し、関連する指標及び目標を策定しました。具体的には、「GHG排出量削減:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルを達成する」ことと、建屋の遮熱化や空調機器の更新など様々な省エネルギーへの取り組みを行い「エネルギー使用量削減:2030年度エネルギー使用量を2022年度(167t-CO2)比で20%削減する」ことの2点を目標としています。

 当社の掲げている「2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラル達成」という目標は、パリ協定の目的やIPCCの報告書にある「今世紀後半のカーボンニュートラルを実現」するという目標と整合しており、また日本政府の2050年までにカーボンニュートラルを目指すという宣言とも整合しています。

 

 当社のGHG排出量は極めて少なく当社の製造におけるコストへの影響は非常に限定的ですが、移行リスクが加速する1.5℃シナリオ(IEA WEO NZE 2050シナリオ)に則り、GHG排出量を削減するために省エネ対応及び再生可能エネルギーの導入を進めることは、当社ステークホルダーが要請する低炭素社会への移行に向けた取り組みとして重要な課題と認識しています。 また、低炭素社会への移行が進むことにより、当社の顧客からエネルギー使用量削減に寄与する製品が求められることや、当社の技術を活用した新たな製品開発の可能性があると考えています。

 

 こうした考えの下、当社は以下の通り、ア GHG排出量削減、イ 環境配慮型めっき薬製品開発の促進、ウ めっきコア技術の応用 の3分野について行動計画を策定しました。

 

ア GHG排出量削減

 

 

2022年度

2023年度

2027年度

2030年度

GHG排出量

(t-CO2)

167

171

187

200

削減後GHG排出量

(t-CO2)

167

154

150

134

 上表のとおり、様々な省エネルギーの取り組みにより、2030年度に2022年度比△20%(中長期経営計画に即したBAU比では△33%)のエネルギー使用量削減を達成する計画を策定しました。

 なお、こうしたエネルギー使用量削減施策だけではカーボンニュートラルは達成できないため、J-クレジット等の使用によるカーボンニュートラル実現を計画しております。今後J-クレジット価格は高騰が予想されますが、当社のGHG排出量は極めて少ないため、クレジット購入による財務インパクトは殆ど発生しないものと考えられます。

※BAU(Business as Usualの略称)…日常的な業務やプロセス。企業・組織が通常行っている業務や日常運営のこと

 

イ 環境配慮型めっき薬製品開発の促進

 当社が開発してきた薬品は、「環境負荷低減(穀物由来薬品の代替製品開発)」「めっき工程エネルギー節約(めっき浴の低温化、時間短縮等)」「省貴金属(限りある貴金属の節約)」といった、環境に配慮した優れた性能を有しています。現在も多数の開発テーマがあり、それぞれを担当した技術者が、製品化計画に基づきフィージビリティ・ステージ(実現可能性の検討段階)とデベロップメント・ステージ(開発段階)の間で試行錯誤を繰り返しつつ開発を進めています。各開発テーマとも、サステナビリティ委員会・経営会議にて進捗状況を管理しながら、2030年度末までに対象製品すべての上市(デベロップメント・ステージの完了)を目指しています。

 

ウ めっきコア技術の応用

 当社は1971年の創業から50年を越えた今日まで、エレクトロニクス分野を事業フィールドの核と捉え、半導体パッケージやコネクター用途を中心に一貫して当社独自技術としての「Redox=(酸化還元反応)制御技術」に磨きをかけ、これを礎に多様な貴金属めっき薬品の開発・製造を行ってきました。

 コロナ禍・DX化など社会の変容に相俟って、貴金属めっきという既存市場以外の場においても自社のRedox技術を応用することで解決できる社会課題があるものと考えております。当社はそうした課題の一つとして、「二次電池(充電式電池)」に着目しました。電池の充放電反応は即ちRedox反応です。これに当社が培ってきた独自技術を応用し、従来より圧倒的に優れた性能の電池材料を実現できれば、低炭素経済への多大な貢献を果たすとともに当社の付加価値も飛躍的に高まるものと期待されます。具体的には、展示会出展の機会等を通じて2027年度末までに提携先となる電池材料・電解液メーカーを選定の上共同開発を開始し、2030年度末から製品として生産・販売を開始することを目指します。

 

・シナリオ分析

 当社は、本移行計画の達成可能性を検証するにあたり、以下の2つのシナリオを選択し、TCFDの枠組みに沿って当社事業に対する気候関連のリスクと機会を特定し、「低炭素製品市場の進展」「脱炭素政策の進展」という2つの軸から、当社のレジリエンスを検証しました。詳細は下表をご参照ください。

 

<気候変動政策が強化されているシナリオ:WEO NZE 2050シナリオ>

 世界が低炭素経済に移行するという傾向が最も顕著であるシナリオとして、国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオを選択しました。本シナリオは、2050年にネットゼロを達成するために各国が気候変動政策を積極的に導入・強化することを念頭においたシナリオです。

 

<気候変動政策が停滞しているシナリオ: IPCC RCP8.5シナリオ>

 上記シナリオと対極にある世界の低炭素経済への移行が停滞しているシナリオとして、IPCC RCP8.5シナリオを選択しました。本シナリオは、21世紀末の世界の平均気温が、産業革命前と比べて3.2℃∼5.4℃上昇すると予測するものであり、各国が気候変動政策を積極的に導入・強化することはなく、停滞していることを想定したシナリオです。

選択した
シナリオ

特定したリスク・機会

ドライバー

時間軸

財務インパクト

対応の内容

種類

概要

影響度

1.5℃

シナリオ WEO NZE 2050

移行リスク(政策・法規制)

GHG排出規制や炭素税の強化

GHG排出規制
炭素税

長期

ほとんどない

全社LED化、エアコンの買替などの環境投資策

移行リスク(評判)

ステークホルダーからのGHG排出量削減要請

ステークホルダーからのGHG排出量削減要請

長期

やや高い

サステナビリティ委員会にて、環境に貢献する製品の開発、環境投資策、シナリオ~リスク・機会分析等を推進し、サステナビリティ情報として開示

機会(製品/サービス・市場)

ニッケルを使用しないプロセスとする製品の開発

ステークホルダーからのGHG排出量削減要請

短期・中期・長期

顧客個別要求仕様に迅速に対応できる設備投資の実施、展示会出展 など

機会

(市場)

電池市場への参画

政府主導の投資促進策

中期・長期

2030年に二次電池分野のビジネスモデルを立ち上げるべく、電池材料・電解液メーカーとの共同開発等を模索中

4℃

シナリオ IPCC RCP8.5

物理的リスク

(急性)台風や洪水による生産拠点の被災

台風や洪水の頻度・程度

長期

ほとんどない

受容できるリスクと捉え、対応策(投資)不要と考える

(慢性)平均気温の上昇

平均気温

長期(5年~35年)

物理的リスク(急性)

サイクロンや洪水による当社顧客の工場が被災(国内外)

サイクロンや台風の頻度・程度

長期

当社BCPに当該リスク・地政学的リスク等を編入して再計画を構築

機会(製品/サービス・市場)

穀物由来原料の代替製品の開発

異常気象

中期・長期

中~高

新製品開発と既存製品改良の2アプローチで2030年に主要原材料の20%以上の入替を目指す

選択したシナリオ ・国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオ

         ・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したRCP8.5シナリオ

時間軸:短期=1年(単年度計画と同期間)、中期=3年(中期経営計画と同一期間)、

    長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間)

 

・シナリオ分析結果

 WEO NZE 2050シナリオにおいては、2050年ネットゼロに向けて低炭素経済への移行が急速に加速しており、GHG排出量削減やエネルギー使用量削減に向けて各社が取り組みを進めていることが想定されます。こうした状況下においては、当社が製品化を進めるめっき工程エネルギー節約技術のニーズが高まることが予想されます。また、電化が進むことで蓄電池の需要が増加することが想定されるため、当社のめっきコア技術の応用へのニーズも高まることが考えられます。

 

 IPCC RCP8.5シナリオにおいては、低炭素経済への移行が停滞しており、GHG排出量削減やエネルギー使用量削減に向けて各社の取り組みの進み具体合は鈍化していることが想定されます。こうした状況下においては、当社が製品化を進めるめっき工程エネルギー節約技術のニーズはあるものの、横ばいであることが予想されます。また、電化の進み具合も鈍化し、蓄電池の需要も大きな伸びは想定されないため、当社のめっきコア技術の応用へのニーズは現状維持かが低調になることが考えられます。

 

・目標の達成可能性

 WEO NZE 2050シナリオを想定した場合、当社の各技術の活用・製品化への需要が高まることが考えられるため、そうした需要増を追い風として、計画よりも早い段階での技術開発製品化の可能性も見込めます。

 一方でIPCC RCP8.5シナリオを想定した場合、当社の各技術の活用・製品化への需要の高まりは期待できませんが、 競合他社製品からの優位性を確保し、今後の環境問題の激甚化にも柔軟に対応し得る知見を獲得するため、当社のさらなる発展と地球環境への貢献を目指し、計画通り技術開発・製品開発を行う予定です。

 

当社のGHG排出量は極めて少ないため、いずれのシナリオを適用した場合であっても、当社のGHG排出量削減への対応に影響を及ぼすものではなく、目標は達成できる見込みです。

 

③リスク管理

・移行リスク及び機会

 低炭素経済への移行により当社グループが直面するリスク及び機会を以下と特定しました。

ア 移行リスク(政策・法規制):GHG排出規制や炭素税の強化が想定される。

イ 移行リスク(評判):当社ステークホルダーからのGHG排出量削減要請の高まりが想定される。

ウ 機会(製品/サービス・市場):ニッケルを使用しないプロセスとする製品の開発

エ 機会(市場):電池市場への参画

 

・移行計画の課題と不確実性

 当社のGHG排出量は極めて少ないため、GHG排出量削減に係る移行計画における課題や不確実性は想定されず、計画通り目標を達成できる見込みです。

 「環境配慮型めっき薬製品開発の促進」及び「めっきコア技術の応用」に関しては、大規模な投資が必要です。当社は、人的資源、設備、作業環境等に余力がある状況ではないため、これら2つの技術開発を計画通り進めるためには、まず十分な資金の確保、人材の配置等が前提となります。

 

④指標と目標

 本移行計画における当社の目標・測定基準は以下のとおりです。

目標1:GHG排出量削減

目標:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラル達成

指標:GHG排出量

 

目標2:エネルギー使用量(省エネ等)

目標:2030年度エネルギー使用量20%削減(2022年度比)

指標:エネルギー使用量

 

 当社は、財務面での影響、目標に対するパフォーマンス、組織のビジネスへの影響などに関する移行計画に係る目標とパフォーマンスを有価証券報告書や自社ホームページのサステナビリティサイト等において外部のステークホルダーに報告します。詳細は当社ホームページ(https://www.netjpc.com/)ご覧ください。

 

(3)人的資本経営の推進

 当社は知識集約型・開発型の企業であり、人的資本が企業価値向上の源泉であるため、従業員のエンゲージメントを高め、従業員の健康・安全衛生や多様性といった人的資本を活用する上で基礎となる取り組みを実施することが必要であると考えます。

 当社が望む「能動型自律人材」(*1)を育成し、その能力が会社の経営戦略と一致する方向で発揮されることで、製品開発や営業活動をはじめとする事業活動が活性化され、当社事業が成長する機会になります。一方でこれが損なわれると成長機会を失うリスクとなります。また、従業員が安心して働くことのできる健康的で安全な職場環境の整備を行うことが従業員のエンゲージメントを高める基礎となるため、これを推進することが当社事業の成長につながる機会となります。一方でこれを怠ると成長機会を失うリスクとなります。

 よって、当社の企業理念に基づく中長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせません。

 この人的資本経営の推進を実現させるために、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成 ②能動型自律人材の採用と育成 ③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備 という3つのテーマに沿って人的資本方針を策定いたしました。この方針をもって、全従業員が主体的に経営に参画する企業風土を育み、人的資本経営の実現を目指します。

 

①「人材採用・育成方針」

 一人ひとりが当事者意識をもった「能動型自律人材」(*1)の採用・育成に加え、スキル・経験・知識を備えた人材(性別・年齢・国籍を問わない)の登用等を通じた人材の多様性の確保を推進します。

(*1)当社は、「能動型自律人材」を以下の3つに定義づけております。

・好奇心をもって挑戦する人材

~社会の変化を先取りし、好奇心と探求心をもって果敢に新しいことに挑戦します~

・当事者意識をもってやり遂げる人材

~自ら考えて行動し、常に全体最適の視点で最後まで責任をもってやり遂げます~

・多様性を尊重し周囲と協働できる人材

~人を思いやり、つながりや個性を大切にすることで組織の可能性を最大化します~

 

②「労働・安全衛生方針」(社内環境整備方針)

ア 労働慣行について

当社は、従業員の人権を含む各種の国際規範を尊重し、従業員に対して尊厳をもって扱います。

イ 安全衛生について

当社は、労働関連の負傷や疾病を最小限に抑えることに努め、安全で健康な職場環境により、製品・サービスの質の向上や従業員の定着とモラルの向上を目指します。

また、当社は、職場の衛生と安全問題を特定し解決するために、継続的な従業員への情報提供と教育を実施します。

 

③人権の尊重に関する取り組み(「人権の尊重に関する基本方針」)

 当社は「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」を企業理念とし、「社会課題と向き合い多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業となる」ことを目標としております。

 そして、当社は事業活動を通じて様々なステークホルダーの人権に負の影響を引き起こし、または助長する可能性があることを認識しており、前述した目標の達成のためにもこうした人権侵害を回避し、全ての人々の人権が尊重されなければならないことを理解しております。

 そこで、当社は「人権の尊重に関する基本方針」を以下の通り定め、当社の全ての役員と社員にて遵守してまいります。

 

「人権の尊重に関する基本方針」

ア 人権に対する基本的な考え方

 当社は、人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たすため、すべての人々の基本的人権を規定した国連の「国際人権章典」及び「ビジネスと人権に関わる指導原則」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの人権に関する国際規範を支持・尊重し、それらを踏まえて実践に努めます。また、事業活動を行う国や地域の法令を遵守し、国際的に認められた人権と各国や地域の法令との間で相反する要請がある場合は国際的に承認された人権の原則を追求します。

イ 人権尊重

 当社は多様性を尊重し、出生、国籍、人種、民族、信条、性別、年齢、職業、雇用形態、学歴、性的指向、性自認、婚姻、妊娠、疾病、障害、社会的身分または門地などいかなる差別、ならびにパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等のあらゆるハラスメント行為を行いません。また、強制労働や児童労働は認めません。

ウ 適用範囲

 本方針は、当社の全役員・全従業員(正社員・契約社員・派遣社員を含む)に対して適用されます。また、当社のサプライヤーやビジネスパートナーに対して本方針を支持し、人権尊重に努めるよう働きかけ、協働して人権尊重を推進します。

エ 取り組み

・デューディリジェンス

 当社は、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、これを継続して実施することで人権への負の影響の特定・評価を行い、その影響を防止・軽減することに取り組みます。

・救済

 当社が人権への負の影響を引き起こした、あるいはこれを助長したことが判明した場合、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。

・教育

 当社は、本方針の実効性を担保するため、当社の役員・従業員に対して適切な教育を行います。

・苦情処理メカニズム

 当社は人権への負の影響を含む懸念を早期に発見し、対処するため通報制度を設けています。通報においては、通報者の匿名性や通報内容の秘匿性を担保します。また通報者に対し通報を理由とする不利益な取り扱いは行いません。

・情報開示

 人権尊重の取り組みの進捗状況及びその結果について、当社ホームページ等を通じて報告していきます。

 

④人的資本方針に関する指標と目標・具体的な取り組み

 当社は人的資本方針に関して以下の取り組みを行っています。いずれの取り組みも、次期中期経営計画の実行期間においても指標と目標を設け達成度合いを測定する予定です。

・能動型自律人材となりうる人材を豊富に獲得するため、2023年度採用より各部門長が部門最適な人材像を確立し主体的に採用活動を展開する採用方式を導入しました。

・人材育成については、従業員全員が参集し経営方針の浸透と組織風土の醸成等を図る全社方針説明会の半期毎の開催をはじめ、各部門にて毎月1on1ミーティングを開催する等の活動により、当社に必要な人材像の理解の深化を図りました。また、コンプライアンス等の人権関連課題についての当社取り組みについても全従業員への周知徹底を図っています。

・労働安全衛生について安全衛生委員会を中心に各ガイドラインの順守と質的向上を図る一方で、働き方の選択肢の拡充にも取り組んでおります。なお2023年度時点で育児休業取得希望者は100%取得を達成しております。

・人権方針に関する取り組みについては、以下の人権デューディリジェンスをご参照ください。

 

⑤人権デューディリジェンス

 当社は、当社の人権方針に則り、当社事業活動によって影響を受ける人々を対象とした人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題を特定しています。人権デューディリジェンスの実施にあたっては、「国連指導原則 報告フレームワーク」及びUNDP のアジアにおけるビジネスと人権「HRDD 研修進行ガイド」(2021 年)を参考にしています。

 具体的には、当社事業活動によって影響を受ける主要なライツホルダーを自社従業員・サプライヤー・顧客/エンドユーザー・地域住民の4つのカテゴリーに分け、当社にとってのリスクではなく、影響を受けるこれらのカテゴリーの人々へのリスクに着目し、潜在的な人権リスクの洗い出しを行いました。その上で、リスクの深刻度とリスクの発生可能性という2つの観点から優先順位を判断し、下記のヒートマップに整理しました。その際、発生可能性よりも深刻度に重きをおいた評価を行っております。

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ア 顕著な人権課題の特定

 上記ヒートマップにおいて優先度が高いと位置づけられた以下の人権課題を当社の事業活動における顕著な人権課題として特定しました。

a.紛争鉱物

b.自社従業員に対する公平・公正な処遇

 また、顕著な人権課題と比べると優先度は低くなるものの、以下の人権課題についても、そのリスクを認識し、取り組みを進めてまいります。

c.職場における安全衛生(自社従業員)

d.健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)

 当社は、今後も定期的に人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題の見直しを行ってまいります。

 

イ 対応策

 当社は、顕著な人権課題に対して、次のように取り組んでいます。

a.紛争鉱物

・当社は、貴金属めっき薬品の製造において貴金属を使用します(金、パラジウム、白金等)。

・紛争鉱物不調達の取り組みを進めるため、貴金属の調達にあたっては、事前にLBMA認定(*1)を受けた企業であることを確認しています。

・当社の調達方針・CSRガイドライン等において、サプライヤーへの遵法のお願い事項を定め、取引先に対して定期的に調査を行っています。調査の結果、問題があると判断した場合には、改善要請を行うと共に、十分な改善が行われない場合は、取引を中止する等の措置を講じることとしています。

(*1)LBMA(ロンドン地金市場協会)認定とは、金融市場における金や貴金属の取引に関連する重要な認証であり、金やその他の貴金属が紛争鉱物ではないということを証明することが可能となります。LBMA認定は金や貴金属が紛争鉱物ではないことを証明するための重要なメカニズムとなっており、国際的な金融市場において、責任ある取引の基準を確立しています。

b.自社従業員に対する公平・公正な処遇

・当社は、少人数体制の下、業務の属人性に伴う長時間労働が散見されている現状に対応し、従業員のワークライフバランスを改善するための取り組みに着手しています。

 ①育児休業 希望者全員の取得

 ②柔軟な働き方(勤務時間、勤務場所)の導入検討

・当社の女性活用に関する取り組みは以下の通りです。

 ①女性管理職の養成(キャリア採用とキャリア支援プログラムによるサポート)

c.職場における安全衛生(自社従業員)

・当社は少人数でありながら正社員・パートタイマー・派遣社員からなる製造部門を有しており、労働安全衛生法において定められている第一種衛生管理者が複数名在籍し各職場における安全衛生を管理監督するとともに、各職場の代表で構成する安全衛生委員会が委託産業医とともに定期的な職場巡視等を行い労働環境の維持改善に努めております。

 ①第一種衛生管理者の資格取得奨励(2024年6月現在2名在籍)

 ②安全衛生委員会メンバーと産業医による職場巡視(年3回実施)

 

d.健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)

・当社では様々な薬品を取り扱っており、中には劇物毒物に該当するものがあります。劇毒物の取扱いに必要な資格・免許は当然取得済みであり、薬品の取扱いについて関連法規、ISO9001/14001などの国際規格、更に顧客要請等に準拠した厳格な手順を確立し、各ステークホルダーに及ぶ健康被害を決して出さないよう誠実に事業運営しております。

 ①薬品取扱い等に関する関連法規の更新情報の定期確認(毎月実施)

 ②緊急事態訓練の励行(毎年実施)

 

※当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みの詳細は、当社ホームページ(https://www.netjpc.com)をご覧ください。

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しております。当社として必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項につきましても投資判断上、あるいは当社の事業活動を理解するうえで重要と考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から記載しております。

 記載された事項で、将来に関する事項は、提出日現在入手可能な情報から当社の経営判断や予測に基づくものです。

 

a 電子機器業界への依存度が高いことについて

 当社製品は、主に電子部品の半導体搭載基板、プリント基板、コネクター、リードフレーム等に用いられており、その販売先は主に電子機器業界であります。当社の業績は、これらの電子機器業界動向、とりわけスマートフォン市場、パソコン市場の影響を大きく受けます。

 

b 製品市況及び原材料市況等の影響について

 当社の主要製品に使用されている原材料は、貴金属類と薬品類に大別され、金額ベースでは貴金属類が大半を占めております。

 薬品類の価格は比較的安定しておりますが、貴金属(金、銀、パラジウム)は国際商品市況に大きく左右されます。ウクライナ侵攻・台湾有事等の地政学的リスクの顕在化や鉱山の事故等を背景とした原材料の価格高騰、供給制限が生じた場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、貴金属についての顧客との契約は基本的に仕入、販売とも当日の建値を基準に決定しており、受注と同時に貴金属の発注を行うため、利益額については貴金属価格の変動の影響をほとんど受けません。ただし、回転在庫を確保しておくことによる価格変動リスクが発生するため、納期の短縮や、在庫量を最小限に抑えることで、影響を最小限にとどめるよう努めております。

 

c 為替変動による影響について

 2023年3月期及び2024年3月期における当社の輸出比率は、それぞれ56.4%、55.6%であります。海外との取引につきましては、円建での決済を基本としておりますが、最近ではドル建による取引が増加傾向にあります。為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、これによる当該リスクを完全に回避できる保証はなく、業績が為替変動の影響を受ける可能性があります。

 

d 研究開発について

 電子機器業界における技術革新は著しく、より顧客ニーズに合った製品を提供し、シェアの維持と拡大を行うための研究開発は極めて重要であり、当社は新製品の開発及び既存製品の改良等の研究開発活動を全力で推進しております。

 当社は今後とも、最先端デバイス向けめっき薬品をはじめ、ユーザーの更なる性能の向上及びコストダウンに貢献するめっき薬品や、環境に配慮しためっき薬品等の研究開発活動に取組んでいく方針ですが、かかる研究開発活動が当社の計画通りに順調に行われなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

e 知的所有権について

 当社の主力製品である貴金属めっき薬品は、成分組成が複雑であるため、分析による成分組成の解析が困難で同等品としての参入は一般的に容易ではないことに加え、当社が申請した特許が不成立となった場合にはめっき薬品の組成情報が公開されてしまうことから、当社はこれまで貴金属めっき薬品の特許権取得を積極的に行っておりませんでした。

 しかしながら、近年の有機分析技術の進展を受け、今後の新技術の研究開発については、組成情報による特許出願ではなく物理化学定数で規定するパラメーター特許出願により技術保全を重視していく方針です。ただし、出願する特許がすべて登録されるとは限らず、また、当社の研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合には、当社の事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。

 入念な事前調査を行っているにもかかわらず、当社が開発・販売する製品が第三者の知的所有権を侵害しているものと判断された場合や、当社製品に関連する新しい他社特許が認可された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

f 技術ノウハウの流出及び漏出について

 当社の技術情報には、めっき薬品の開発経緯、めっき薬品の組成・成分、当社と顧客間との技術データ等があります。これらの技術情報は所定の保管庫に収納し、日次管理を行っており、外部への持出、複写等を禁じております。特にめっき組成・成分につきましては、当社特有の呼称に変換して記載するなど、漏出防止に努めております。

 しかしながら、最近は社外とのコミュニケーションにメール、フラッシュメモリ、プロジェクター等を使用するケースが増加しており、万が一これらの情報が外部へ漏出した場合には、めっき薬品の成分分析結果と漏出情報との照合により類似品製造が可能になると考えられ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、WEB会議や在宅ワーク等といった働き方が浸透するに伴い、ITツールを利用する機会が多くなり厳密な社内管理ルールで運用しているにもかかわらず、セキュリティ事故等により一部の営業機密等が漏洩し、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、社員採用時に当社の方針、守秘義務、機密保持等の理解を徹底しておりますが、退職者が出た場合には、退職後相当期間も含む守秘義務契約にもかかわらず、一部の技術情報等が流出し、当社の事業に影響を及ぼす可能性は否定できません。

 

g 人材の確保、育成について

 当社は、各社員が自らの役割を遂行することはもちろん、各々が常に全体観を持って業務を推進しております。現状では、知名度の向上、採用活動の強化、教育・研修の拡充等の施策により優秀な人材を確保できる状況にありますが、今後、研究開発体制の更なる強化、更なる海外展開、新事業分野への進出等にともなう業容の拡大に際し、当社の求める人材を十分に確保、育成できない場合には、今後の事業推進に影響を及ぼす可能性があります。

 

h 法的規制について

 当社は、めっき薬品の原材料として「毒物及び劇物取締法」の対象となる薬品を使用しているため、その販売、製造、輸入等に関して同法の規制を受けております。

 当社は、劇物、毒物に関する販売業登録、製造業登録及び輸入業登録等を取得しており、徹底した社内管理体制を確立し、法令遵守に努めております。しかしながら、万が一法令違反があった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

i 廃棄物等の管理について

 当社の製造または実験過程において生じる廃液及び大気中への排出物については、環境に配慮した適切な処理が必要とされます。当社は、廃液についてはその濃度に応じて、排水処理装置での処理、または外部委託処理を行っております。排気管理については実験室及び製造工程における局所排気を通じ排気ガス処理装置で処理しております。これらの取組みの結果、現在まで行政からの指導、地域住民等からの申入れ等を受けたことはありませんが、将来において当社の排出物の管理に何らかの問題が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

j 被災時の対策について

 当社はこれまで全部門が単一拠点に集中することで意思決定の迅速さ、生産効率と顧客満足の向上に努めてまいりました。一方、東日本大震災後、BCP(事業継続計画)の重要性が注目され、当社主要顧客からBCP策定を要求される機会も増しております。
 当社としましては、主要製品の在庫保有と主要顧客向け外部倉庫の運用をしております。また、当社事務棟で主要製品の製造スペース及び設備導入などの準備が完了し、緊急時製造拠点として確保しました。しかしながら、首都圏において大規模な震災等が発生した場合、一時的に製品製造や出荷等が滞り、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

 当期の世界経済はアフター・コロナの生活様式が定着し新型コロナウイルス感染症の経済・生活への影響が軽 減される流れが継続する一方でウクライナや中東情勢など予断を許さない不安定な国際情勢が続き世界各国の インフレの進行と金融引き締め政策が継続し中国での不動産開発投資に端を発する内外需要の低迷による景気減 速も見られ依然として先行き不透明な状況が続きました国内経済においては新型コロナウイルスの感染状況 の鎮静化もあり正常化が進みインバウンド需要が急回復するなど回復基調にありますが物価の上昇により個人 消費が伸び悩むとともに円安基調にもかかわらず海外経済の減速が海外輸出への逆風となり景気回復に足踏み が見られました

 

 電子部品業界におきましては中国の低調な個人消費や欧州における景気減速の影響からスマートフォンやパソ コンなどの民生向けにおいては需要の回復ペースが鈍く弱含みで推移しましたクラウド/データセンター向けや 半導体装置/FA機器などの産業機器向けにおいては生成AI向けについては堅調に推移したものの慎重な設 備投資により需要が伸び悩みました車載用電子部品については自動車の電装化や電気自動車へのシフトに伴う 継続的な需要増からおおむね堅調に推移したものの電気自動車の需要減速による在庫調整が見られました

 

 当社におきましてはプリント基板・半導体搭載基板用めっき薬品について生成AI向けなど一部の最先端半 導体パッケージ向けは堅調に推移したもののスマートフォンやパソコン向け及びこれらのメモリ向けは緩やかな需要回復に留まりましたコネクター用めっき薬品の販売については車載向けで堅調に推移したもののスマートフォン向けの需要回復が鈍くまた産業機械向けで需要が低迷し低調に推移しましたリードフレーム用めっき薬品についてはスマートフォンやパソコン向けで需要の底を打ったものの弱含みに推移しまたパラジウム価格下落の影響も受けて減収となりました

 その結果、売上高は11,419百万円(前期比29.7%減)、営業利益は354百万円(前期比37.6%減)、経常利益は553百万円(前期比26.6%減)、当期純利益は548百万円(前期比3.8%減)となりました。
最終用途品目別の状況は次のとおりであります。

 

(プリント基板・半導体搭載基板用)

 プリント基板や半導体パッケージ基板に適用される貴金属めっき薬品は生成AI向けなど一部の最先端半導体 パッケージ向けは堅調に推移したもののスマートフォンやパソコン向け及びこれらのメモリ向けは緩やかな需要回復に留まり売上高は4,668百万円と前期比0.7%の増収となりました

(コネクター・マイクロスイッチ用)

 コネクター用めっき薬品の販売は車載向けで堅調に推移したもののスマートフォン向けの需要回復が鈍くまた産業機械向けで需要が低迷し低調に推移したことで売上高は2,166百万円と前期比31.6%の減収となりました

(リードフレーム用)

 リードフレーム用めっき薬品の販売はスマートフォンやパソコン向けで需要の底を打ったものの弱含みに推移 しまたパラジウム価格下落の影響も受けて売上高は4,327百万円と前期比47.6%の減収となりました

(その他)

 売上高は257百万円と前期比35.7%の増収となりました

 

〔当期の経営成績〕

(単位:百万円)

 

前年度

当年度

 

 

増減額

増減率

補足

売上高

16,254

11,419

△4,835

△29.7%

 

売上原価

14,678

10,045

△4,632

△31.6%

売上原価率88.0%(前年度 90.3%)

売上総利益

1,576

1,374

△202

△12.8%

売上総利益率12.0%(前年度 9.7%)

販売費及び一般管理費

1,009

1,020

10

1.1%

 

営業利益

567

354

△213

△37.6%

 

経常利益

753

553

△200

△26.6%

 

当期純利益

569

548

△21

△3.8%

 

自己資本利益率

4.1%

3.9%

 

△0.2%

 

 

①売上高

 当期の海外での売上高は総売上高の55.6%を占めます。海外での売上高は60.5%が円建てで、39.5%が外貨建てです。外貨建てにつきましては、基本的には為替ヘッジをし、為替レートの変動による影響を抑えております。

 

②売上原価

 売上原価は主として原材料費、工場の人件費から構成されています。また原材料費は貴金属と一般薬品に分けられます。このうち一般薬品につきましては、価格は比較的安定しておりますが、貴金属につきましては、その価格変動及び数量の増減は売上原価に大きな影響を与えます。貴金属についての顧客との契約は基本的に仕入、販売とも当日の建値を基準に決定しており、受注と同時に貴金属の発注を行っております。

 

③販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、主に人件費、研究開発費、減価償却費などであります。当期は前期に比べ減価償却費は減少したものの、一般費が増加しました。

 

自己資本利益率

 当社は経営指標の設定に際し、自己資本水準の最適化を図る中で、資本に関連する指標(ROE、DOE)の算出方法を従来の株主資本ベースから自己資本ベースに見直しました。

当期は純利益の減少に伴い、自己資本利益率は3.9%と前期比で0.2ポイント悪化しております。

 

 

(2)財政状態の状況

(単位:百万円)

 

2023年3月末

2024年3月末

 

 

増減額

主な増減理由

 流動資産

7,832

8,003

171

現金及び預金+393未収消費税等△139

原材料及び貯蔵品△87

 固定資産

7,778

9,136

1,357

投資有価証券+1,213

資産合計

15,611

17,140

1,529

 流動負債

237

333

96

未払法人税等+80設備関係未払金+63

未払金△41

 固定負債

1,868

2,269

400

繰延税金負債+400

負債合計

2,106

2,603

496

純資産合計

13,505

14,537

1,032

その他有価証券評価差額金+928

繰越利益剰余金+87

負債純資産合計

15,611

17,140

1,529

 

①資産

 当期末の総資産は17,140百万円となり、前期比1,529百万円の増加となりました。

 流動資産は、前期比で棚卸資産、未収消費税等が減少し現金及び預金が増加したため171百万円増の8,003百万円となりました。固定資産は主に投資有価証券評価差額の増加により、1,213百万円増の9,136百万円となりました。

 

②負債

 当期末の負債総額は2,603百万円となり、前期末比496百万円の増加となりました。
 流動負債は、未払金等の買掛債務が減少したものの、未払法人税等、設備未払金の増加により96百万円増加し333百万円となりました。固定負債は繰延税金負債の増加により400百万円増の2,269百万円となりました。

 

③純資産

 当期末の純資産は14,537百万円となり、前期末比1,032百万円の増加となりました。

 これは利益剰余金が当期純利益による増加、剰余金の配当による減少を主に87百万円増加したことに加え、有価証券評価差額金が928百万円増加したことによるものです。

 

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

①キャッシュ・フローの状況の分析

(単位:百万円)

 

前年度

当年度

 

 

増減額

主な増減理由

 営業活動による

キャッシュ・フロー

2,539

684

△1,854

売上債権の増加△1,858

 投資活動による

キャッシュ・フロー

19

166

147

投資有価証券の売却による収入+260

有形固定資産の取得による支出△94

 財務活動による

キャッシュ・フロー

△824

△457

366

自己株式の取得の減少+297

配当金支払額の減少+67

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

1,735

393

△1,341

現金及び現金同等物の期首残高

3,729

5,465

1,735

現金及び現金同等物の期末残高

5,465

5,858

393

 

 当期末の現金及び現金同等物の残高は、5,858百万円となり、前期比393百万円の増加となりました。これは投資有価証券の売却が主な要因です。なお、当期におけるキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。

 

(営業活動におけるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは684百万円の収入となり、前期比1,854百万円の減少となりました。これは主に前期に売掛金回収が進み売上債権が減少した反動で、売上債権が増加したことによるものです。

 

(投資活動におけるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは166百万円の収入となり、前期比147百万円の収入増となりました。これは有形・無形固定資産の取得による支出が111百万円増加した一方で、投資有価証券の売却による収入が260百万円増加したことによるものです。


(財務活動におけるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは457百万円の支出となり、前期比366百万円の支出減となりました。これは主に当期は自己株式の取得を実施しなかったことと、前期の記念配当がなくなり配当金支払額が減少したことによるものです。

 

②財務政策

 当社の事業は前述の「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」 に記載のとおり様々なリスクを伴っており、運転資金としては将来予測可能な資金需要に対して十分な流動性ある資産を確保していく方針です。現在、運転資金及び経常的な設備投資資金については手許資金で賄っておりますが、中長期の成長投資に向けては、政策保有株式の流動化による資金を積極的に活用することを考えております。

 当社の株主還元の基本方針は下記の3点であります。

(1) 長期的な成長を目指して資本効率と財務健全性のバランスを取る

(2) プライム市場上場会社として、当面の業績に大きく左右されない一定レベルの株主還元に積極的に取り組む

(3) 配当性向に加えDOE(自己資本配当率)5%を下限とした配当方針を採用する

 配当については、後述の「第4[提出会社の状況] [配当政策]」をご参照ください。

 また、自己株式の取得についても状況に応じて機動的に実施を検討いたします。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

 当社は単一セグメントのためセグメント毎の記載はしておりません。

①生産実績

用途品目別

第53期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

プリント基板・半導体搭載基板用

4,655,251

100.9

コネクター・マイクロスイッチ用

2,167,808

68.4

リードフレーム用

4,336,059

52.0

その他

257,150

207.2

合計

11,416,269

70.3

(注) 上記の金額は、販売価格によっております。

 

②受注実績

用途品目別

第53期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

受注高

受注残高

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

プリント基板・半導体搭載基板用

5,009,459

109.4

529,956

280.8

コネクター・マイクロスイッチ用

2,083,324

69.9

34,180

29.3

リードフレーム用

4,135,021

50.9

201,580

51.2

その他

235,637

138.6

3,012

11.9

合計

11,463,442

72.3

768,730

106.0

 

③販売実績

用途品目別

第53期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

プリント基板・半導体搭載基板用

4,668,225

100.7

コネクター・マイクロスイッチ用

2,166,014

68.4

リードフレーム用

4,327,518

52.4

その他

257,865

135.7

合計

11,419,624

70.3

 

(注)1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

  イビデン株式会社との取引増加の主な要因は、お預かりした貴金属を加工して販売する形態から、当社が貴金属を調達し販売する形態に変更されたことによるものです。

相手先

前事業年度

当事業年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

イビデン株式会社

1,816,461

11.2

2,656,243

23.3

兼松株式会社

2,468,168

15.2

1,707,722

15.0

株式会社コタベ

2,203,861

13.6

1,407,500

12.3

CHANG WAH TECHNOLOGY Co.Ltd

2,219,708

13.7

1,304,813

11.4

 

 

 

(注)2 最近2事業年度の主要な輸出先及び輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。

 なお、( )内は、総販売実績に対する輸出高の割合であります。

輸出先

第52期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

第53期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

台湾

3,070,526

33.4

2,021,407

31.8

韓国

915,625

10.0

661,308

10.4

シンガポール・マレーシア

3,195,684

34.8

2,016,025

31.7

中国

649,688

7.1

562,669

8.9

その他の地域

1,343,846

14.7

1,092,853

17.2

合計

9,175,371

(56.4%)

100.0

6,354,265

(55.6%)

100.0

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この

財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 詳細につきましては「第一部〔企業情報〕第5〔経理の状況〕1〔財務諸表等〕〔注記事項〕重要な会計方針」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発活動の基本方針

 当社の研究開発部門のミッションは、「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」の企業理念の下、独創的な製品をエレクトロニクス業界に提供することです。

 エレクトロニクス業界は急速にグローバル化が進んでおり、これに対応するには、当社の研究開発業務を、ソフト技術、材料技術の両面より推進する必要があります。ソフト技術を駆使してグローバル化に対応しながら、一方では次世代の材料技術を長期的な視野で育成していくのが当社の研究開発の基本方針です。

 ソフト技術とは、顧客の製品、要求性能、設備に合わせて最適なトータルプロセスを提案する技術です。対象となる電子デバイスは多様であり、顧客の設備も多様であるため、当社の既存のめっき薬品使用条件だけでなく前工程、後工程との組み合わせで顧客に最適なトータルプロセスを提案することが要求されます。

 一方、材料技術とは、既存の薬品では対応できないような課題を解決するための新しい薬品を開発する業務です。新規化合物を発見しないと問題が解決されないような製品には、新規化合物の環境試験も行わねばならず、開発から製品化までには数年の検討期間が必要になることもあり、長期間にわたる計画が必要です。

 なお、当社は単一セグメントのためセグメント毎の記載はしておりません。

 

 

(2)研究開発活動の主要課題

 当社は、会社設立以来、エレクトロニクス業界を最大のターゲットとして貴金属めっき薬品を提供してまいりました。近年、めっき液の低金濃度化やめっき皮膜の薄膜化による金使用量を削減(省金化)した仕様が浸透しつつあり、めっき皮膜物性を維持しつつ、このような仕様に対応することが主要課題となっております。

そのような状況の中でも業界に先駆けてFC-BGA(Flip-Chip Ball Grid Array)パッケージ用無電解金めっき薬品のシアンフリー化を達成しており、技術課題の解決と環境配慮志向の両面で新たな価値を提供しています。

 さらに、省金化に伴う貴金属めっき薬品の販売量低下を補うべく、これまでに集積した貴金属めっき技術を、エレクトロニクス業界以外へ展開すること、貴金属以外のめっき技術へ応用することも課題として取り組んでおります。

 その一つが電池材料への展開です。電気自動車や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、従来よりも安価で軽量かつ長寿命な電池が求められています。電池の充放電反応は、めっきと同じ酸化還元反応(Redox反応)を利用しています。当社はめっき薬品開発で培ったRedox制御技術で電池材料の課題解決にも貢献すべく、新たな技術開発に着手しています。

 このような新たな技術開発を推進するためには、従来のめっきだけに留まらない柔軟な思考力と技術開発力が必要となるため、当社の数倍の技術陣容を有する競合めっき薬品メーカーにも対抗できるユニークな発想を持つ技術陣の育成が必要となります。引き続き、新分野に積極的にチャレンジする人材、資質の高い人材の採用と育成により、技術陣のレベルアップを実現し、開発力の強化を図ってまいります。同時に、当社単独では困難な技術開発を効率的に実施していくため、最適な外部連携を図ってまいります。

具体的には以下の課題に取り組んでまいります。

① 環境問題対応

・有害物質(シアン、鉛)不使用のめっき技術

・穀物由来原料の削減

・めっき廃液の削減

② 新規要求に対するデバイス対応

・5G対応のめっき技術

・高密度実装技術対応のめっき技術

・自動車電装化対応めっき技術

③ 新しい事業領域の創出

・電解液・電極など電池材料向けの技術開発

④ 効率化

・実験データの利活用

・メカニズムの可視化

 

(3)研究開発の成果

 当期の研究開発の成果は次のとおりであります。

① 5G対応ニッケル不使用めっき技術(DIG、EPIG)

 一般的に厚付けで施されるNiめっき皮膜を使用せず、電子回路の細線化に貢献できる最終表面処理プロセスとして期待されております。今期は複数顧客で評価が進展し、プロセス全体の最適化と製品化に向けた準備を進めております。2023年10月に台湾で開催されたIMPACT 2023カンファレンスにて、当社ニッケル不使用めっき技術に関して講演を行いました。

 

② 高密度パッケージ用無電解金めっき技術

 最先端高密度半導体パッケージ基板用の環境配慮型のシアンフリータイプ無電解金めっき液は、顧客で量産稼働中です。更なる性能向上に向けた改良も進めております。

③ 半導体配線用金めっき技術

 最先端半導体用のシアンフリー電解金めっき液について、顧客評価が進行中です。

④電池材料

 2024年3月に開催された第16回国際二次電池展に出展し、次世代電池向けの電解液や金属ナノ材料に関する研究開発成果を発表致しました。サンプルワークに向けての準備を進め、既に一部のサンプルワークを開始しております。

⑤めっき廃液の削減

 廃液量の削減に貢献できる技術として、スタンプ式電解金めっき薬品を開発しました。この技術は、対象物に必要な部分だけにめっき液を適用することで、従来の浸漬式めっき処理に比べて廃液量の削減が期待できます。現在、この技術を活用したサンプルワークの準備を進めております。

 

(4)研究開発費

 第53期(2024年3月期)における、研究開発費の総額は342,537千円であります。