当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。なお、当社は単一セグメントです。
(1)経営方針
IT社会は多様な産業に支えられていますが、日本が最も活躍している産業は、電子デバイスに必要とされる機能
性材料を供給しているファインケミカル分野です。当社の主要製品である貴金属めっき薬品は、その機能性材料の一種であることから、当社はケミストリ(化学)を基礎に科学的に理論武装した独創的な製品により、社会課題と向き合い、多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業を目指します。
(2)経営戦略等
当社は少数精鋭・ファブレス型・開発型企業として、貴金属めっきに特化して事業を発展させてきました。製造プラント等の生産設備は持っておらず、新規製品開発のためのマーケティング、それを実行するための技術開発及び営業活動に力を入れ、いち早く商品化を実現することで、市場のシェアを獲得してまいりました。設立50年を過ぎた今、コロナ禍を追い風にDX化等により急拡大する電子部品業界において、既存市場以外においても当社の技術で解決できる社会課題があることが、より鮮明になってきました。
そこで当社は、自身の強みを堅持しつつ、新規事業領域や既存市場でのニーズをとらえて社会課題の解決につなげるべく、中長期ビジョン「RDD2030※」を策定し、2030年までの期間を3つのフェーズに分け、既存市場はもとより、新たな市場で評価される“日本高純度化学”へと進化していくことを目指しています。
※RDD2030= Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030
■中期経営計画
-ビジョン:RDD2030* :Team JPCでRedox技術を深化!進化!新化!
*RDD2030:Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030
-RDD2030で目指す姿:めっきで培ったRedox技術**により、ナノレベル***から豊かな未来を支える
** Redox:レドックス、reduction/oxidationの混成語で酸化還元の意
*** 1ナノメートル=10億分の1メートル
-戦略の方向性:めっき工程のトータルプロセスカンパニーへの変革
-事業戦略の基調テーマ:投資による事業拡大
(3)経営環境
当社が主力基盤とする半導体・電子部品市場は、グローバル規模での発展を維持しており、当社の販売先であるメーカーの多くは、この広大な市場に適応するために、新技術を生み出す開発力を競い合っています。
当社を取り巻くリスクについては、次項3〔事業等のリスク〕に記載の通りですが、パンデミックや気候変動等の「環境的リスク」、貿易制限や紛争・戦争といった「地政学的リスク」、重要原材料・重要部品の不足等の「経済的リスク」、輸送インフラ不全等の「技術的リスク」といった様々なリスクが見られる不透明・不確実な足元の経営環境の中でも、新型ウイルスによるライフスタイルの変革、脱炭素/省資源に伴うエネルギーシフト、データ通信量・容量の急激な増加等の「変わらぬメガトレンド」が存在し、当社が貢献できる社会課題は多数あると認識するとともに、中長期的にも、AIやロボットとの調和、スマートシティ、宇宙開発、ヘルステックなど、人々が豊かで幸せな暮らしを送る未来社会に向けて、当社の独創性、知的財産を活かした事業機会はますます広がっていくと考えています。
(4)対処すべき課題と対策
①営業力の強化
デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーションへの投資の拡大、自動車のEV化・電装化の進展に伴い、データセンターや高速大容量通信、生成AI・AI搭載機器、パワーデバイスなどを中心としたエレクトロニクス分野の需要が大きく拡大しております。この流れの中で、半導体をはじめ、各種ハイエンド電子部品のニーズが高まっており、これらの製造に不可欠な高性能・高品質なめっき薬品が求められております。
当社では、こうした成長分野において国内外の主要顧客にタイムリーな製品提供を進めるとともに、省資源プロセスなど環境配慮型製品の提案、プロセス全体での性能向上提案など、積極的なマーケティング・技術提案を行うことが今後のビジネスを展開する上で重要と考えております。そのために、自社製品の開発だけではなく、表面処理薬品メーカーや装置メーカーとの協業体制を構築してまいります。また、国際的な学会発表や技術コンソーシアムへの参画、海外展示会への出展といった広報活動を通じて、新技術およびブランド認知度を向上させ、新規顧客の獲得と事業拡大を図ってまいります。
一方、米国の貿易政策や地政学リスクの高まりから、主要顧客である電子部品メーカーの生産拠点が中国から東南アジアなど他地域へと移管される動きが加速しており、当社においても製品の供給体制、テクニカルサポート体制を顧客動向に対応させる必要があります。そのために、当社はグローバルなテクニカルサポート機能の拡充に取り組んでまいります。この取り組みとして、(キャリア採用による)海外営業人員を拡充するとともに、顧客との連携強化を目的とした技術情報・生産状況共有のためのデータベース構築を進めており、国内外を問わず高度なソリューションを提案するサポート体制の構築を推進してまいります。
今後も、変化する市場環境に対して機動的に対応しながら、顧客との信頼関係をさらに深化させ、ビジネスの拡大を図ってまいります。
②技術開発力の強化
当社の競争相手は、貴金属めっき薬品業界だけでなく卑金属めっき薬品業界も含みます。また、グローバル化が進んだ昨今では海外のローカルメーカーも台頭しつつあり、技術開発競争は一層厳しさを増しております。このような状況の中、貴金属めっき分野では顧客要望に対しタイムリーな改良に対応できるプロセス提案力及び車載向けや産業機械向け等の新用途開拓に向けた技術開発力の向上が不可欠となります。なかでもニッケル不使用プロセスをはじめとする次世代最終表面処理プロセスの実現にあたっては、貴金属めっき薬品に限定せず、前・後処理、装置等のニッチトップ企業との協力を含むプロセス全体での性能向上を達成し、めっき工程のトータルプロセスカンパニーへと変革していく必要があります。
また貴金属/卑金属にこだわらず、業界として技術的に未完成なテーマを厳選して完成に向けた開発を推進していくことが重要と考えます。
さらに当社は、めっきで培った酸化還元(Redox)の技術を活かし、既存の事業領域だけでなく新しい事業領域の創出を目指しており、中長期ビジョンRDD2030*のもと、電池材料開発を推進中です。従来のめっきだけに留まらない柔軟な思考力と技術開発力が必要となります。
サステナビリティを巡っては、当社は貴金属や希少鉱物を使用する製造業であり、多くの化学物質を取り扱う事業の性質上、地球環境への配慮が不可欠です。環境負荷低減につながる製品開発、めっき工程におけるエネルギー使用量削減といった環境にやさしい製品づくりが重要な課題であると認識しています。
このような状況の中、当社の数倍の技術陣容を有する競合薬品メーカーに対抗するためには、ユニークな発想を持ち視野の広い技術陣の育成が必要となります。能動型自律人材の採用と育成により、技術陣のレベルアップを実現し、開発力の強化を図ってまいります。同時に、当社単独では困難な技術開発やトータルソリューション力の強化を効率的に実施していくため、最適な外部連携及び協業を図ってまいります。
*RDD2030 = Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030
(5)目標の達成状況を判断するための経営指標
生成AI向けは好調でスマートフォン向けも緩やかに回復したため、車載向けが下期に減速、産業機械向けの市場低迷の影響を受けつつも、営業利益は502百万円と前期比148百万円増加いたしました。さらに政策保有株式の売却を進めたため、当期純利益は1,579百万円と前期比1,031百万円増加し、2025年3月期のROEは11.3%と前期比7.4ポイント大幅に改善しております。詳細につきましては、「第一部〔企業情報〕第1〔企業の概況〕〔主要な経営指標等の推移〕自己資本利益率」をご参照ください。中長期のROE目標10%の達成に向けて、収益性の向上、資産の更なる効率化に取り組んでいく所存であります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ基本方針
「めっき」とは、電子部品の接続部位の錆び(酸化)を防ぎ、電子回路の電気信号の流れを円滑に保ち最高の性能を発揮させるのに欠かせない技術です。
当社は自社独自技術をもって、化学物質の“配合の妙”を貴金属めっき薬品のレシピに昇華することで付加価値を創出しています。当社製品をめっき工程に用いれば、必要な箇所に最低限の厚みの貴金属めっき皮膜を形成することができ、稀少資源である貴金属の使用量を大きく節約し経済合理性を高めることができます。当社の設立以来の事業そのものが、省貴金属性能でサステナブルな社会の達成を指向しています。
貴金属めっき技術は最先端の電子機器の内部で接点・接合に使用されており、当社は、貴金属に特化しためっき薬品の開発・製造・販売を行うファブレスで知識集約型・開発型の企業として、ファインケミカル分野とエレクトロニクス業界との橋渡しの役目を担ってきました。
パソコン・携帯電話・デジカメがスマートフォンへと集約したような技術革新とともに、小型化・高性能化・低消費電力化など電子部品の要求特性のハードルは上がり続けています。また、低炭素社会への変革や社会インフラのデジタル化が加速すれば、自動車の電装化・電子化が急速に進化しEV化したように、電子部品の接点・接合点の数も爆発的に増大するため、省貴金属技術の出番が今後ますます拡大し、当社は更に広範な事業分野において地球環境への貢献を果たすことができます。
上記のような事業活動を通じて、当社は、エレクトロニクス業界への貢献を通じて、サステナブルな社会の実現のため、また社会的責任を果たすため、サステナビリティ基本方針を以下の通り定めております。
<サステナビリティ基本方針>
・当社は貴金属や希少鉱物を使用する製造業であり、多くの化学物質を取り扱う事業の性質上、地球環境への配慮が不可欠です。資源を有効活用し、持続可能な社会づくりに貢献することを前提として事業活動を行い、環境負荷を継続的に低減していきます。
・当社は「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」の企業理念のもと、地球環境リスクやライフスタイルの変革、エネルギーシフト等の社会課題と向き合い、ステークホルダーとの連携を深め、多様な視点と独創性を発揮しながらファインケミカルとエレクトロニクスの架け橋となることを目指します。
・当社は、サステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)が、事業のリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題として認識し、これらの課題に真摯に取り組みます。当社は、当社事業を通じた社会の持続可能な発展への貢献と共に持続的な成長と企業価値向上を目指します。
■経営上の重要課題(マテリアリティ)
(1)環境にやさしい製品づくり
①環境負荷低減につながる製品開発及び事業活動の推進
②めっき工程におけるエネルギー使用量削減
③めっきで培ったコア技術の応用によるエネルギー分野への貢献
(2)人的資本経営の推進
①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成
②能動型自律人材の採用と育成
③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備
(3)知的無形資産の質的向上
①知財・無形資産の適切な管理・共有
②知財・無形資産の効果的な活用
(4)経営基盤の強化
①社外役員による監督・指導と内部監査等によるコーポレート・ガバナンスの強化
②コンプライアンス体制の強化
③ステークホルダーへの適切な情報発信
(2)サステナビリティに関するガバナンス
・取締役会は、サステナビリティ委員会から経営会議を経て報告される経営上の重要課題(マテリアリティ)に関する取り組みに関して、自社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等との整合性、計画目標の達成度合い、目標の修正の必要性等に留意しつつ、監督・承認を行っています。気候関連事項のうちの移行計画及び関連する気候関連目標を2024年3月の取締役会にて承認しました。
・サステナビリティ委員会は、定期的に(原則年4回)開催され、取締役会に承認された経営上の重要課題(マテリアリティ)に関する各目標の進捗度合いを、指標を軸にレビューします。また、計画の進捗及び対応策など重要事項については、定期的に(原則年2回)経営会議に報告し、経営会議より取締役会に報告します。
・代表取締役社長は、経営上の重要課題(マテリアリティ)に関する取り組みに経営責任を負っています。この責任には、サステナビリティの取組に関するマネジメントが含まれています。具体的には、代表取締役社長は経営会議並びにサステナビリティ委員会の主催者兼議長であり、参加メンバーから直接報告を受け、重要課題について討論する等の手法で、移行計画の効果的な実施を確保するための十分な権限と情報へのアクセス権を保持しています。
(3)経営上の重要課題(マテリアリティ)
当社はサステナビリティ基本方針に基づき中長期的に、経営上の重要課題(マテリアリティ)の中で、主に気候変動と人的資本に関する行動計画を下記の通り策定しています。
(3)-①マテリアリティのうち特に重点的に取り組む課題
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マテリ アリティ |
方針 |
目標 |
KPI |
行動計画(概略) |
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環境に やさしい 製品づくり |
①環境負荷低減につながる製品開発及び事業活動の推進 |
環境配慮型製品について、個別の開発テーマごとに設定した製品化計画の達成 |
2030年度までの製品化計画に基づく進捗度 |
サステナビリティ委員会や経営会議における開発テーマの進捗管理 |
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②めっき工程におけるエネルギー使用量削減 |
1.GHG排出量削減: 2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルの達成 2.エネルギー使用量: 2030年度エネルギー使用量の2022年度比20%削減 |
・GHG排出量 |
・建物の遮熱化や空調機器の更新
・J-クレジット等の使用 |
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③めっきで培ったコア技術の応用によるエネルギー分野への貢献 |
2030年度までの電池市場への参画 |
2027年度までの電池材料・電解液メーカーとの共同開発合意 |
展示会出展などを通じた提携先の選定と共同開発合意 |
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人的資本 経営の推進 |
①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成 |
会社の目指す姿にエンゲージしている従業員の割合を一定水準以上とする(過半を目標) |
従業員エンゲージメントスコア |
①経営層と社員とのコミュニケーションの機会の充実 ②経営への主体的な関与を促進する制度・仕組みづくり |
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②能動型自律人材の採用と育成 |
能動型自律人材に必要な教育機会・カリキュラムの整備と従業員全員の受講 |
従業員エンゲージメントスコア |
①人材投資の拡大 1)優秀な人材獲得に向けた賃金体系の維持拡充 2)教育カリキュラムの整備と受講の推奨 3)社員の成長を支援する制度や福利厚生の充実 ②挑戦、遂行、共働を促す仕掛けづくり ③採用活動を通じた多様な人材の獲得と活用 |
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③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備 |
1.職場環境等、会社の風土・制度に満足している従業員の割合を一定水準以上とする(過半を目標) 2.多様な人材により職場を活性化する |
・従業員エンゲージメントスコア ・育児休暇取得率 ・女性管理職比率 |
①社員のウェルビーイングを重視した新しい働き方や支援制度の導入 ②ライフイベントに対応した制度の拡充 ③安全で働きやすい職場環境の整備 ④キャリア採用による人材の多様化 ⑤効果的なローテーションの促進 ⑥女性のキャリア支援の充実 |
(3)-② マテリアリティに関する行動計画
当社のマテリアリティに関する主な行動計画は、以下の通りです。
■環境にやさしい製品づくり
貴金属や希少鉱物を使用する当社において、環境にやさしい製品づくりは1971年の創業時からの重点課題であるため、マテリアリティのうちでも特に重点的に取り組む課題としています。
なお、当社は製造工程をフォーミュレーション(調合)業務のみとしているため大きな製造設備は保有・稼働しておりませんのでエネルギー使用やGHG排出の絶対量は微少ではありますが、製品によるエネルギー分野への貢献だけでなく、使用量の削減についても真摯に取り組んでまいります。
①環境負荷低減につながる製品開発及び事業活動の推進
・環境配慮型製品(穀物由来原料代替、ニッケル不使用、シアンフリー)について、個別の開発テーマごとに設定した製品化計画を達成(製品リリース)することを目標としています。
②めっき工程におけるエネルギー使用量削減
・「GHG排出量削減:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルを達成する」ことと、研究開発設備の遮熱化や空調機器の更新など様々な省エネルギーへの取り組みを行い「エネルギー使用量削減:2030年度エネルギー使用量を2022年度(167t-CO2)比で20%削減する」ことを目標としています。
・上記のエネルギー消費量削減施策のみではカーボンニュートラルは達成できないため、J-クレジット等の使用によるカーボンニュートラル実現も計画しております。
③めっきで培ったコア技術の応用によるエネルギー分野への貢献
・展示会出展などを通じて提携先の選定を進め、2027年度までに電池材料・電解液メーカーとの共同開発に合意し、2030年度には生産・販売開始することを目指します。
■人的資本経営の推進
当社は知識集約型・開発型の企業であり、人的資本が企業価値向上の源泉であるため、マテリアリティのうちでも特に重点的に取り組む課題としています。
社員が「能動型自律人材」(*1)へと成長し、ウェルビーイングのもとでその能力を会社の経営戦略と一致する方向で発揮することで、製品開発や営業活動をはじめとする事業活動が活性化され、当社事業が成長する機会になります。一方でこれが損なわれると成長機会を失うリスクとなります。また、従業員が安心して働くことのできる安全な職場環境の整備を行うことが従業員の働く意欲を高める基礎となるため、これを推進することが当社事業の成長につながる機会となります。一方でこれを怠ると成長機会を失うリスクとなります。
よって、当社の企業理念に基づく中長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせません。
この人的資本経営の推進を実現させるために、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成 ②能動型自律人材の採用と育成 ③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備 という3つのテーマに沿って人的資本方針を策定し、サステナビリティ委員会の管轄のもとで実行しております。この方針のもとで、全従業員が主体的に経営に参画する企業風土を育み、人的資本経営の実現を目指します。
当中期経営計画期間(2025~2027年度)における進捗はエンゲージメントスコア等によりモニタリングしてまいります。
① 企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成
・経営層とコミュニケーションを取る機会の充実や、社長をはじめとした経営者からの情報発信を質量両面で拡充することにより経営への関心を高め、より主体的に経営に参画する企業風土を醸成します。
② 能動型自律人材の採用と育成
・人材投資を拡大することにより、能動型自律人材に相応しい賃金体系を維持・継続し続けることに加えて、成長に向けて必要な教育や自己啓発の機会を整備してまいります。また、キャリア採用を通じた多様性に富んだ職場環境によって社員の成長意欲を引き出すとともに、能動型自律人材の要素である挑戦、遂行、共働を促す仕掛けや実践する機会を増やしてまいります。
③ 働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備
・社員のウェルビーイングにつながる諸制度・施策の充実、働き方の選択肢の拡大、1on1等によるキャリア支援の拡充等に継続的に取り組んでいきます。
・育児休業については、現状、希望者は全員取得しております。今後も当社の福利厚生制度の説明の機会等において育児休業制度の周知と一層の浸透を図っていきます。「育児休業取得率」をモニタリングします。
・女性管理職についてはキャリア採用と併せてキャリア支援プログラムによるサポートを検討・実行します。「女性管理職比率」をモニタリングします。
<人的資本経営にかかる労働安全衛生、人権、健康等に関する方針や取組み>
①「人材採用・育成方針」
一人ひとりが当事者意識をもった「能動型自律人材」(*1)の採用・育成に加え、スキル・経験・知識を備えた人材(性別・年齢・国籍を問わない)の登用等を通じた人材の多様性の確保を推進します。
(*1)当社は、「能動型自律人材」を以下の3つに定義づけております。
1)好奇心をもって挑戦する人材
社会の変化を先取りし、好奇心と探求心をもって果敢に新しいことに挑戦します
2)当事者意識をもってやり遂げる人材
自ら考えて行動し、常に全体最適の視点で最後まで責任をもってやり遂げます
3)多様性を尊重し周囲と協働できる人材
人を思いやり、つながりや個性を大切にすることで組織の可能性を最大化します
②「労働・安全衛生方針」(社内環境整備方針)
ア 労働慣行について
当社は、従業員の人権を含む各種の国際規範を尊重し、従業員に対して尊厳をもって扱います。
イ 安全衛生について
当社は、労働関連の負傷や疾病を最小限に抑えることに努め、安全で健康な職場環境により、製品・サービスの質の向上や従業員の定着とモラルの向上を目指します。
また、当社は、職場の衛生と安全問題を特定し解決するために、継続的な従業員への情報提供と教育を実施します。
③人権の尊重に関する取り組み(「人権の尊重に関する基本方針」)
当社は「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」を企業理念とし、「社会課題と向き合い多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業となる」ことを目標としております。
そして、当社は事業活動を通じて様々なステークホルダーの人権に負の影響を引き起こし、または助長する可能性があることを認識しており、前述した目標の達成のためにもこうした人権侵害を回避し、全ての人々の人権が尊重されなければならないことを理解しております。
そこで、当社は「人権の尊重に関する基本方針」を以下の通り定め、当社の全ての役員と社員にて遵守してまい ります。
「人権の尊重に関する基本方針」
ア 人権に対する基本的な考え方
当社は、人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たすため、すべての人々の基本的人権を規定した国連の「国際人権章典」及び「ビジネスと人権に関わる指導原則」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの人権に関する国際規範を支持・尊重し、それらを踏まえて実践に努めます。また、事業活動を行う国や地域の法令を遵守し、国際的に認められた人権と各国や地域の法令との間で相反する要請がある場合は国際的に承認された人権の原則を追求します。
イ 人権尊重
当社は多様性を尊重し、出生、国籍、人種、民族、信条、性別、年齢、職業、雇用形態、学歴、性的指向、性自認、婚姻、妊娠、疾病、障害、社会的身分または門地などいかなる差別、ならびにパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等のあらゆるハラスメント行為を行いません。また、強制労働や児童労働は認めません。
ウ 適用範囲
本方針は、当社の全役員・全従業員(正社員・契約社員・派遣社員を含む)に対して適用されます。また、当社のサプライヤーやビジネスパートナーに対して本方針を支持し、人権尊重に努めるよう働きかけ、協働して人権尊重を推進します。
エ 取り組み
・デューディリジェンス
当社は、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、これを継続して実施することで人権への負の影響の特定・評価を行い、その影響を防止・軽減することに取り組みます。
・救済
当社が人権への負の影響を引き起こした、あるいはこれを助長したことが判明した場合、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
・教育
当社は、本方針の実効性を担保するため、当社の役員・従業員に対して適切な教育を行います。
・苦情処理メカニズム
当社は人権への負の影響を含む懸念を早期に発見し、対処するため通報制度を設けています。通報においては、通報者の匿名性や通報内容の秘匿性を担保します。また通報者に対し通報を理由とする不利益な取り扱いは行いません。
・情報開示
人権尊重の取り組みの進捗状況及びその結果について、当社ウェブサイト等を通じて報告していきます。
④人的資本方針に関する指標と目標・具体的な取り組み
当社は人的資本方針に関して以下の取り組みを行っています。いずれの取り組みも、当中期経営計画期間においても指標と目標を設け達成度合いを測定する予定です。
能動型自律人材となりうる人材を豊富に獲得するため、2023年度採用より各部門長が部門最適な人材像を確立し主体的に採用活動を展開する採用方式を導入しております。
人材育成については、従業員全員が参集し経営方針の浸透と組織風土の醸成等を図る全社方針説明会の半期毎の開催をはじめ、各部門にて毎月1on1ミーティングを開催する等の活動により、当社に必要な人材像の理解の深化を図りました。また、コンプライアンス等の人権関連課題についての当社取り組みについても全従業員への周知徹底を図っています。
労働安全衛生について安全衛生委員会を中心に各ガイドラインの順守と質的向上を図る一方で、働き方の選択肢の拡充にも取り組んでおります。なお2024年度時点で育児休業取得希望者は100%取得の達成を継続しております。
人権方針に関する取り組みについては、以下の人権デューディリジェンスをご参照ください。
⑤人権デューディリジェンス
当社は、当社の人権方針に則り、当社事業活動によって影響を受ける人々を対象とした人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題を特定しています。人権デューディリジェンスの実施にあたっては、「国連指導原則 報告フレームワーク」及びUNDP*のアジアにおけるビジネスと人権「HRDD 研修進行ガイド」(2021 年)を参考にしています。
*UNDP(国連開発計画):貧困や格差、気候変動といった不公正をなくすための活動を行う国連の機関
具体的には、当社事業活動によって影響を受ける主要なライツホルダーを自社従業員・サプライヤー・顧客/エンドユーザー・地域住民の4つのカテゴリーに分け、当社にとってのリスクではなく、影響を受けるこれらのカテゴリーの人々へのリスクに着目し、潜在的な人権リスクの洗い出しを行いました。その上で、リスクの深刻度とリスクの発生可能性という2つの観点から優先順位を判断し、下記のヒートマップに整理しました。その際、発生可能性よりも深刻度に重きをおいた評価を行っております。
ア 顕著な人権課題の特定
上記ヒートマップにおいて優先度が高いと位置づけられた以下の人権課題を当社の事業活動における顕著な人権課題として特定しました。
a.紛争鉱物
b.自社従業員に対する公平・公正な処遇
また、顕著な人権課題と比べると優先度は低くなるものの、以下の人権課題についても、そのリスクを認識し、取り組みを進めてまいります。
c.職場における安全衛生(自社従業員)
d.健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)
当社は、今後も定期的に人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題の見直しを行ってまいります。
イ 対応策
当社は、顕著な人権課題に対して、次のように取り組んでいます。
a.紛争鉱物
・当社は、貴金属めっき薬品の製造において貴金属を使用します(金、パラジウム、白金等)。
・紛争鉱物不調達の取り組みを進めるため、貴金属の調達にあたっては、事前にLBMA認定*を受けた企業であることを確認しています。
・当社の調達方針・CSRガイドライン等において、サプライヤーへの遵法のお願い事項を定め、取引先に対して定期的に調査を行っています。調査の結果、問題があると判断した場合には、改善要請を行うと共に、十分な改善が行われない場合は、取引を中止する等の措置を講じることとしています。
* LBMA(ロンドン地金市場協会)認定とは、金融市場における金や貴金属の取引に関連する重要な認証であり、金やその他の貴金属が紛争鉱物ではないということを証明することが可能となります。LBMA認定は金や貴金属が紛争鉱物ではないことを証明するための重要なメカニズムとなっており、国際的な金融市場において、責任ある取引の基準を確立しています。
b.自社従業員に対する公平・公正な処遇
・当社は、少人数体制の下、業務の属人性に伴う長時間労働が散見されている現状に対応し、従業員のワークライフバランスを改善するための取り組みに着手しています。
①育児休業 希望者全員の取得
②柔軟な働き方(勤務時間、勤務場所)の導入検討
・当社の女性活用に関する取り組みは以下の通りです。
①女性管理職の養成(キャリア採用とキャリア支援プログラムによるサポート)
c.職場における安全衛生(自社従業員)
・当社は少人数でありながら正社員・パートタイマー・派遣社員からなる製造部門を有しており、労働安全衛生法において定められている第一種衛生管理者が複数名在籍し各職場における安全衛生を管理監督するとともに、各職場の代表で構成する安全衛生委員会が委託産業医とともに定期的な職場巡視等を行い労働環境の維持改善に努めております。
①第一種衛生管理者の資格取得奨励(2025年6月現在2名在籍)
②安全衛生委員会メンバーと産業医による職場巡視(年3回実施)
d.健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)
・当社では様々な薬品を取り扱っており、中には劇物毒物に該当するものがあります。劇毒物の取扱いに必要な資格・免許は当然取得済みであり、薬品の取扱いについて関連法規、ISO9001/14001などの国際規格、更に顧客要請等に準拠した厳格な手順を確立し、各ステークホルダーに及ぶ健康被害を決して出さないよう誠実に事業運営しております。
①薬品取扱い等に関する関連法規の更新情報の定期確認(毎月実施)
②緊急事態訓練の励行(毎年実施)
■知的無形資産の質的向上
当社は知識集約型企業であり、製造業でありながら大きな製造設備を保持しておりません。事業活動において最も大切なのは人的資本であり、研究開発活動を通じて人材が生み出す「レシピ」や、50年以上に渡って顧客課題に向き合い解決してきた「ノウハウ」や「顧客との信頼関係」です。そういった無形の資産の可用性を高めるとともに機密の流出を防ぐ、攻めと守りの両面から取り組んでいくことが知的無形資産の価値の最大化につながるものと認識しています。昨今の知識集約型経済においてはこれらの無形資産が競争力の源泉となることから、継続的な投資と戦略的な対応が必要不可欠です。当社では主に情報システムの活用により知的無形資産の価値を高めることにより、持続的な成長と市場での優位性の確立を目指しています。
■経営基盤の強化
当社は、持続的な成長と企業価値の向上を実現するため、経営基盤の強化を経営上の重要事項として位置づけています。これは、中期経営計画の着実な実行を支えるモニタリングシステムの運営や、株主・投資家の皆様への情報開示の充実といった事業の拡大につながる施策のほか、製品の品質保証や安全管理の強化、情報セキュリティ事故の未然防止、調達リスクへの対応、職場の安全衛生の確保など、負の影響を排除し企業運営の根幹となる基礎的要素を含みます。これらを強化することにより、環境変化への柔軟な対応力を高め、リスクへの耐性を向上させるとともに、事業の安定的かつ効率的な運営が可能となります。特に昨今の経済・社会の不確実性が高まる中で持続可能な成長を遂げるためには、強固な経営基盤の構築が不可欠であると判断し、戦略的に取り組んでいます。
(4) 気候変動への取り組み
気候変動が加速していく中、世界各地において自然環境・人々の暮らし・企業活動に様々な影響や被害が現れ始めています。気候変動への取り組みとしてパリ協定が採択され、各国がネットゼロに向けた対応を行っており、日本政府はNDCの目標(2030年度における温室効果ガス(GHG)削減目標)を26%から46%(2013年度比)に引き上げることを表明しています。こうした中、企業による事業を通じた脱炭素社会への貢献が求められています。当社は、事業を通じて気候変動の緩和と適応を行いながら持続的成長を目指します。企業に対して気候関連課題に関する情報開示要請も高まっており、情報開示の重要性を認識し、開示に向けた取り組みを進めています。
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識しています。気候変動の取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上につながるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、当社はSDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。
当社は気候関連の財務情報開示の重要性を認識し、以下の移行計画を策定し、TCFD提言に則した情報開示を行っていきます。
①戦略
当社は、2023年6月に環境への取り組みの一環として気候変動対応についてTCFD提言に即した情報開示を行い、その中で移行リスク・物理的リスク及び機会を特定し、関連する指標及び目標を策定しました。具体的には、「GHG排出量削減:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラルを達成する」ことと、建屋の遮熱化や空調機器の更新など様々な省エネルギーへの取り組みを行い「エネルギー使用量削減:2030年度エネルギー使用量を2022年度(161.54t-CO2)比で20%削減する」ことの2点を目標としています。
当社の掲げている「2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラル達成」という目標は、パリ協定の目的やIPCCの報告書にある「今世紀後半のカーボンニュートラルを実現」するという目標と整合しており、また日本政府の2050年までにカーボンニュートラルを目指すという宣言とも整合しています。
当社のGHG排出量は極めて少なく当社の製造におけるコストへの影響は非常に限定的ですが、移行リスクが加速する1.5℃シナリオ(IEA WEO NZE 2050シナリオ)に則り、GHG排出量を削減するために省エネ対応及び再生可能エネルギーの導入を進めることは、当社ステークホルダーが要請する低炭素社会への移行に向けた取り組みとして重要な課題と認識しています。 また、低炭素社会への移行が進むことにより、当社の顧客からエネルギー使用量削減に寄与する製品が求められることや、当社の技術を活用した新たな製品開発の可能性があると考えています。
こうした考えの下、当社は以下の通り、ア GHG排出量削減、イ 環境配慮型めっき薬製品開発の促進、ウ めっきコア技術の応用 の3分野について行動計画を策定しました。
ア GHG排出量削減
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2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
2027年度 |
2030年度 |
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GHG排出量 |
(t-CO2) |
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187 |
200 |
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削減後GHG排出量 |
(t-CO2) |
167 |
154 |
173 |
150 |
134 |
上表のとおり、様々な省エネルギーの取り組みにより、2030年度に2022年度比△20%(中長期経営計画に即したBAU比では△33%)のエネルギー使用量削減を達成する計画を策定しました。
なお、こうしたエネルギー使用量削減施策だけではカーボンニュートラルは達成できないため、J-クレジット等の使用によるカーボンニュートラル実現を計画しております。今後J-クレジット価格は高騰が予想されますが、当社のGHG排出量は極めて少ないため、クレジット購入による財務インパクトは殆ど発生しないものと考えられます。
※BAU(Business as Usualの略称):日常的な業務やプロセス。企業・組織が通常行っている業務や日常運営のこと
イ 環境配慮型めっき薬製品開発の促進
当社が開発してきた薬品は、「環境負荷低減(穀物由来薬品の代替製品開発)」「めっき工程エネルギー節約(めっき浴の低温化、時間短縮等)」「省貴金属(限りある貴金属の節約)」といった、環境に配慮した優れた性能を有しています。現在も多数の開発テーマがあり、それぞれを担当した技術者が、製品化計画に基づきフィージビリティ・ステージ(実現可能性の検討段階)とデベロップメント・ステージ(開発段階)の間で試行錯誤を繰り返しつつ開発を進めています。各開発テーマとも、サステナビリティ委員会・経営会議にて進捗状況を管理しながら、2030年度末までに対象製品すべての上市(デベロップメント・ステージの完了)を目指しています。
ウ めっきコア技術の応用
当社は1971年の創業から50年を越えた今日まで、エレクトロニクス分野を事業フィールドの核と捉え、半導体パッケージやコネクター用途を中心に一貫して当社独自技術としての「Redox=(酸化還元反応)制御技術」に磨きをかけ、これを礎に多様な貴金属めっき薬品の開発・製造を行ってきました。
コロナ禍・DX化など社会の変容に相俟って、貴金属めっきという既存市場以外の場においても自社のRedox技術を応用することで解決できる社会課題があるものと考えております。当社はそうした課題の一つとして、「二次電池(充電式電池)」に着目しました。電池の充放電反応は即ちRedox反応です。これに当社が培ってきた独自技術を応用し、従来よりも圧倒的に優れた性能の電池材料を実現できれば、低炭素経済への多大な貢献を果たすとともに当社の付加価値も飛躍的に高まるものと期待されます。具体的には、展示会出展の機会等を通じて2027年度末までに提携先となる電池材料・電解液メーカーを選定の上共同開発を開始し、2030年度末から製品として生産・販売を開始することを目指します。
・シナリオ分析
当社は、本移行計画の達成可能性を検証するにあたり、以下の2つのシナリオを選択し、TCFDの枠組みに沿って当社事業に対する気候関連のリスクと機会を特定し、「低炭素製品市場の進展」「脱炭素政策の進展」という2つの軸から、当社のレジリエンスを検証しました。詳細は下表をご参照ください。
<気候変動政策が強化されているシナリオ:WEO NZE 2050シナリオ>
世界が低炭素経済に移行するという傾向が最も顕著であるシナリオとして、国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオを選択しました。本シナリオは、2050年にネットゼロを達成するために各国が気候変動政策を積極的に導入・強化することを念頭においたシナリオです。
<気候変動政策が停滞しているシナリオ: IPCC RCP8.5シナリオ>
上記シナリオと対極にある世界の低炭素経済への移行が停滞しているシナリオとして、IPCC RCP8.5シナリオを選択しました。本シナリオは、21世紀末の世界の平均気温が、産業革命前と比べて3.2℃∼5.4℃上昇すると予測するものであり、各国が気候変動政策を積極的に導入・強化することはなく、停滞していることを想定したシナリオです。
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選択した |
特定したリスク・機会 |
ドライバー |
時間軸 |
財務インパクト |
対応の内容 |
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種類 |
概要 |
影響度 |
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|
1.5℃ シナリオ WEO NZE 2050 |
移行リスク(政策・法規制) |
GHG排出規制や炭素税の強化 |
GHG排出規制 |
長期 |
ほとんどない |
全社LED化、エアコンの買替などの環境投資策 |
|
移行リスク(評判) |
ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 |
ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 |
長期 |
やや高い |
サステナビリティ委員会にて、環境に貢献する製品の開発、環境投資策、シナリオ~リスク・機会分析等を推進し、サステナビリティ情報として開示 |
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|
機会(製品/サービス・市場) |
ニッケルを使用しないプロセスとする製品の開発 |
ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 |
短期・中期・長期 |
高 |
顧客個別要求仕様に迅速に対応できる設備投資の実施、展示会出展 など |
|
|
機会 (市場) |
電池市場への参画 |
政府主導の投資促進策 |
中期・長期 |
高 |
2030年に二次電池分野のビジネスモデルを立ち上げるべく、電池材料・電解液メーカーとの共同開発等を模索中 |
|
|
4℃ シナリオ IPCC RCP8.5 |
物理的リスク |
(急性)台風や洪水による生産拠点の被災 |
台風や洪水の頻度・程度 |
長期 |
ほとんどない |
受容できるリスクと捉え、対応策(投資)不要と考える |
|
(慢性)平均気温の上昇 |
平均気温 |
長期(5年~35年) |
||||
|
物理的リスク(急性) |
サイクロンや洪水による当社顧客の工場が被災(国内外) |
サイクロンや台風の頻度・程度 |
長期 |
高 |
当社BCPに当該リスク・地政学的リスク等を編入して再計画を構築 |
|
|
機会(製品/サービス・市場) |
穀物由来原料の代替製品の開発 |
異常気象 |
中期・長期 |
中~高 |
新製品開発と既存製品改良の2アプローチで2030年に主要原材料の20%以上の入替を目指す |
|
選択したシナリオ ・国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオ
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したRCP8.5シナリオ
時間軸:短期=1年(単年度計画と同期間)、中期=3年(中期経営計画と同一期間)、
長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間)
・シナリオ分析結果
WEO NZE 2050シナリオにおいては、2050年ネットゼロに向けて低炭素経済への移行が急速に加速しており、GHG排出量削減やエネルギー使用量削減に向けて各社が取り組みを進めていることが想定されます。こうした状況下においては、当社が製品化を進めるめっき工程エネルギー節約技術のニーズが高まることが予想されます。また、電化が進むことで蓄電池の需要が増加することが想定されるため、当社のめっきコア技術の応用へのニーズも高まることが考えられます。
IPCC RCP8.5シナリオにおいては、低炭素経済への移行が停滞しており、GHG排出量削減やエネルギー使用量削減に向けて各社の取り組みの進み具体合は鈍化していることが想定されます。こうした状況下においては、当社が製品化を進めるめっき工程エネルギー節約技術のニーズはあるものの、横ばいであることが予想されます。また、電化の進み具合も鈍化し、蓄電池の需要も大きな伸びは想定されないため、当社のめっきコア技術の応用へのニーズは現状維持か低調になることが考えられます。
・目標の達成可能性
WEO NZE 2050シナリオを想定した場合、当社の各技術の活用・製品化への需要が高まることが考えられるため、そうした需要増を追い風として、計画よりも早い段階での技術開発製品化の可能性も見込めます。
一方でIPCC RCP8.5シナリオを想定した場合、当社の各技術の活用・製品化への需要の高まりは期待できませんが、 競合他社製品からの優位性を確保し、今後の環境問題の激甚化にも柔軟に対応し得る知見を獲得するため、当社のさらなる発展と地球環境への貢献を目指し、計画通り技術開発・製品開発を行う予定です。
当社のGHG排出量は極めて少ないため、いずれのシナリオを適用した場合であっても、当社のGHG排出量削減への対応に影響を及ぼすものではなく、目標は達成できる見込みです。
②リスク管理
・移行リスク及び機会
低炭素経済への移行により当社グループが直面するリスク及び機会を以下と特定しました。
ア 移行リスク(政策・法規制):GHG排出規制や炭素税の強化が想定される。
イ 移行リスク(評判):当社ステークホルダーからのGHG排出量削減要請の高まりが想定される。
ウ 機会(製品/サービス・市場):ニッケルを使用しないプロセスとする製品の開発
エ 機会(市場):電池市場への参画
・移行計画の課題と不確実性
当社のGHG排出量は極めて少ないため、GHG排出量削減に係る移行計画における課題や不確実性は想定されず、計画通り目標を達成できる見込みです。
「環境配慮型めっき薬製品開発の促進」及び「めっきコア技術の応用」に関しては、大規模な投資が必要です。当社は、人的資源、設備、作業環境等に余力がある状況ではないため、これら2つの技術開発を計画通り進めるためには、まず十分な資金の確保、人材の配置等が前提となります。
③指標と目標
本移行計画における当社の目標・測定基準は以下のとおりです。
目標1:GHG排出量削減
目標:2030年スコープ1・2に関するカーボンニュートラル達成
指標:GHG排出量
目標2:エネルギー使用量(省エネ等)
目標:2030年度エネルギー使用量20%削減(2022年度比)
指標:エネルギー使用量
当社は、財務面での影響、目標に対するパフォーマンス、組織のビジネスへの影響などに関する移行計画に係る目標とパフォーマンスを有価証券報告書や自社ウェブサイトのサステナビリティサイト等において外部のステークホルダーに報告します。
以下において、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しております。当社として必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項につきましても投資判断上、あるいは当社の事業活動を理解するうえで重要と考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から記載しております。
記載された事項で、将来に関する事項は、提出日現在入手可能な情報から当社の経営判断や予測に基づくものです。
a.電子機器業界への依存度が高いことについて
当社製品は、主に電子部品の半導体搭載基板、プリント基板、コネクター、リードフレーム等に用いられており、その販売先は主に電子機器業界であります。当社の業績は、これらの電子機器業界動向、とりわけスマートフォン市場、パソコン市場の影響を大きく受けます。
b.製品市況及び原材料市況等の影響について
当社の主要製品に使用されている原材料は、貴金属類と薬品類に大別され、金額ベースでは貴金属類が大半を占めております。
薬品類の価格は比較的安定しておりますが、貴金属(金、銀、パラジウム)は国際商品市況に大きく左右されます。ウクライナ侵攻・台湾有事等の地政学的リスクの顕在化や鉱山の事故等を背景とした原材料の価格高騰、供給制限が生じた場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
なお、貴金属についての顧客との契約は基本的に仕入、販売とも当日の建値を基準に決定しており、受注と同時に貴金属の発注を行うため、利益額については貴金属価格の変動の影響をほとんど受けません。ただし、回転在庫を確保しておくことによる価格変動リスクが発生するため、納期の短縮や、在庫量を最小限に抑えることで、影響を最小限にとどめるよう努めております。
c.為替変動による影響について
2024年3月期及び2025年3月期における当社の輸出比率は、それぞれ55.6%、48.8%であります。海外との取引につきましては、円建での決済を基本としておりますが、最近ではドル建による取引が増加傾向にあります。為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、これによる当該リスクを完全に回避できる保証はなく、業績が為替変動の影響を受ける可能性があります。
d.研究開発について
電子機器業界における技術革新は著しく、より顧客ニーズに合った製品を提供し、シェアの維持と拡大を行うための研究開発は極めて重要であり、当社は新製品の開発及び既存製品の改良等の研究開発活動を全力で推進しております。
当社は今後とも、最先端デバイス向けめっき薬品をはじめ、ユーザーの更なる性能の向上及びコストダウンに貢献するめっき薬品や、環境に配慮しためっき薬品等の研究開発活動に取組んでいく方針ですが、かかる研究開発活動が当社の計画通りに順調に行われなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
e.知的所有権について
当社の主力製品である貴金属めっき薬品は、成分組成が複雑であるため、分析による成分組成の解析が困難で同等品としての参入は一般的に容易ではないことに加え、当社が申請した特許が不成立となった場合にはめっき薬品の組成情報が公開されてしまうことから、当社はこれまで貴金属めっき薬品の特許権取得を積極的に行っておりませんでした。
しかしながら、近年の有機分析技術の進展を受け、今後の新技術の研究開発については、組成情報による特許出願ではなく物理化学定数で規定するパラメーター特許出願により技術保全を重視していく方針です。ただし、出願する特許がすべて登録されるとは限らず、また、当社の研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合には、当社の事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
入念な事前調査を行っているにもかかわらず、当社が開発・販売する製品が第三者の知的所有権を侵害しているものと判断された場合や、当社製品に関連する新しい他社特許が認可された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
f.技術ノウハウの流出及び漏出について
当社の技術情報には、めっき薬品の開発経緯、めっき薬品の組成・成分、当社と顧客間との技術データ等があります。これらの技術情報は所定の保管庫に収納し、日次管理を行っており、外部への持出、複写等を禁じております。特にめっき組成・成分につきましては、当社特有の呼称に変換して記載するなど、漏出防止に努めております。
しかしながら、最近は社外とのコミュニケーションにメール、フラッシュメモリ、プロジェクター等を使用するケースが増加しており、万が一これらの情報が外部へ漏出した場合には、めっき薬品の成分分析結果と漏出情報との照合により類似品製造が可能になると考えられ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、WEB会議や在宅ワーク等といった働き方が浸透するに伴い、ITツールを利用する機会が多くなり厳密な社内管理ルールで運用しているにもかかわらず、セキュリティ事故等により一部の営業機密等が漏洩し、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、社員採用時に当社の方針、守秘義務、機密保持等の理解を徹底しておりますが、退職者が出た場合には、退職後相当期間も含む守秘義務契約にもかかわらず、一部の技術情報等が流出し、当社の事業に影響を及ぼす可能性は否定できません。
g.人材の確保、育成について
当社は、各社員が自らの役割を遂行することはもちろん、各々が常に全体観を持って業務を推進しております。現状では、知名度の向上、採用活動の強化、教育・研修の拡充等の施策により優秀な人材を確保できる状況にありますが、今後、研究開発体制の更なる強化、更なる海外展開、新事業分野への進出等にともなう業容の拡大に際し、当社の求める人材を十分に確保、育成できない場合には、今後の事業推進に影響を及ぼす可能性があります。
h.法的規制について
当社は、めっき薬品の原材料として「毒物及び劇物取締法」の対象となる薬品を使用しているため、その販売、製造、輸入等に関して同法の規制を受けております。
当社は、劇物、毒物に関する販売業登録、製造業登録及び輸入業登録等を取得しており、徹底した社内管理体制を確立し、法令遵守に努めております。しかしながら、万が一法令違反があった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
i.廃棄物等の管理について
当社の製造または実験過程において生じる廃液及び大気中への排出物については、環境に配慮した適切な処理が必要とされます。当社は、廃液についてはその濃度に応じて、排水処理装置での処理、または外部委託処理を行っております。排気管理については実験室及び製造工程における局所排気を通じ排気ガス処理装置で処理しております。これらの取組みの結果、現在まで行政からの指導、地域住民等からの申入れ等を受けたことはありませんが、将来において当社の排出物の管理に何らかの問題が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
j.被災時の対策について
当社はこれまで全部門が単一拠点に集中することで意思決定の迅速さ、生産効率と顧客満足の向上に努めてまいりました。一方、東日本大震災後、BCP(事業継続計画)の重要性が注目され、当社主要顧客からBCP策定を要求される機会も増しております。
当社としましては、主要製品の在庫保有と主要顧客向け外部倉庫の運用をしております。また、当社事務棟で主要製品の製造スペース及び設備導入などの準備が完了し、緊急時製造拠点として確保しました。しかしながら、首都圏において大規模な震災等が発生した場合、一時的に製品製造や出荷等が滞り、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)業績等の概要
当期の世界経済は、緩やかな回復基調を見せましたが、各国の貿易・金融政策や地政学的リスクの高まりなどにより先行きが不透明な状況が継続しました。資源・エネルギー価格の上昇や物流の遅延がインフレに影響を与え、各国の金融政策に影響を及ぼし、金利・為替・株式相場の変動を引き起こしています。米国では堅調な雇用と所得環境に支えられた個人消費の増加により景気は堅調に推移しました。しかし、政策金利の引き下げがあったものの依然として高水準を維持し、関税によりさらなるインフレが懸念され、予断を許さない状況です。欧州では個人消費が堅調で緩やかな回復基調が続きましたが、製造業の不振が長期化し、成長は鈍化しました。中国では景気刺激策や対中制裁関税実施前の駆け込み輸出の増加により回復しましたが、不動産投資や個人消費の低迷により低調な状況が続きました。日本経済においては堅調な個人消費やインバウンド需要を背景に緩やかな回復基調にありますが、物価の上昇は続いており、製造業は力強さを欠いています。
電子部品業界におきましては、生成AI向けの旺盛な需要に牽引されAIサーバ/データセンター向けは好調に推移しましたが、スマートフォンやパソコンなどの民生向けは需要回復に足踏み感がみられ、FA機器などの産業機器向けは在庫調整の長期化により低迷しました。車載用電子部品については、先進運転支援システムなどの電装化による継続的な需要増はあったものの、電気自動車の成長鈍化などによる在庫調整から停滞感が見られました。
当社におきましては、プリント基板・半導体搭載基板用めっき薬品の販売について、スマートフォンやパソコンなどの民生向けは下期に市場減速の影響を受けましたが緩やかに回復し、生成AI関連の半導体パッケージやモジュール向けは好調に推移しました。コネクター用めっき薬品の販売については、当社製品の優位性(省金効果)からスマートフォン向けで堅調に推移しました。車載向けは在庫調整の影響を受けて減速したうえ、産業機器向けで引き続き市場が低迷しました。リードフレーム用めっき薬品の販売については、当社製品の品質安定性が評価され、スマートフォンやパソコン向けで底堅く推移しました。
また、特定投資株式に関する保有方針に沿って、保有する銘柄の一部を売却しました。
その結果、売上高は12,611百万円(前期比10.4%増)、営業利益は502百万円(前期比41.8%増)、経常利益は657百万円(前期比18.8%増)、当期純利益は1,579百万円(前期比188.1%増)となりました。
最終用途品目別の状況は次のとおりであります。
(プリント基板・半導体搭載基板用)
プリント基板や半導体パッケージ基板に適用される貴金属めっき薬品において、スマートフォンやパソコンなどの民生向けは下期に市場減速の影響を受けましたが緩やかに回復し、生成AI関連の半導体パッケージやモジュール向けは好調に推移した結果、売上高は5,708百万円と前期比22.3%の増収となりました。
(コネクター・マイクロスイッチ用)
コネクター用めっき薬品の販売において、当社製品の優位性(省金効果)からスマートフォン向けで堅調に推移しました。車載向けは在庫調整の影響を受けて減速したうえ、産業機器向けで引き続き市場が低迷しました。その結果、売上高は1,848百万円と前期比14.7%の減収となりました。
(リードフレーム用)
リードフレーム用めっき薬品の販売においては、当社製品の品質安定性が評価され、スマートフォンやパソコン向けで底堅く推移し、売上高は4,740百万円と前期比9.6%の増収となりました。
(その他)
売上高は313百万円と前期比21.5%の増収となりました。
〔当期の経営成績〕
(単位:百万円)
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前年度 |
当年度 |
|
|
|
|
増減額 |
増減率 |
補足 |
|||
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売上高 |
11,419 |
12,611 |
1,191 |
10.4% |
|
|
売上原価 |
10,045 |
10,982 |
937 |
9.3% |
売上原価率87.1%(前年度 88.0%) |
|
売上総利益 |
1,374 |
1,628 |
253 |
18.5% |
売上総利益率12.9%(前年度 12.0%) |
|
販売費及び一般管理費 |
1,020 |
1,125 |
105 |
10.4% |
|
|
営業利益 |
354 |
502 |
148 |
41.8% |
|
|
経常利益 |
553 |
657 |
104 |
18.8% |
|
|
当期純利益 |
548 |
1,579 |
1,031 |
188.1% |
|
|
自己資本利益率 |
3.9% |
11.3% |
|
7.4% |
|
①売上高
当期の海外での売上高は総売上高の48.8%を占めます。海外での売上高は62.5%が円建てで、37.5%が外貨建てです。外貨建てにつきましては、基本的には為替ヘッジをし、為替レートの変動による影響を抑えております。
②売上原価
売上原価は主として原材料費、工場の人件費から構成されています。また原材料費は貴金属と一般薬品に分けられます。このうち一般薬品につきましては、価格は比較的安定しておりますが、貴金属につきましては、その価格変動及び数量の増減は売上原価に大きな影響を与えます。貴金属についての顧客との契約は基本的に仕入、販売とも当日の建値を基準に決定しており、受注と同時に貴金属の発注を行っております。
③販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、主に人件費、研究開発費、減価償却費などであります。当期は前期に比べ積極的な成長投資を実施したことにより、主に人件費及び減価償却費が増加しました。
④自己資本利益率
当期は純利益の増加に伴い、自己資本利益率は11.3%と前期比で7.4ポイント改善しております。
(2)財政状態の状況
(単位:百万円)
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|
2024年3月末 |
2025年3月末 |
|
|
|
増減額 |
主な増減理由 |
|||
|
流動資産 |
8,003 |
9,544 |
1,540 |
現金及び預金+1,425、 原材料及び貯蔵品+198 |
|
固定資産 |
9,136 |
6,312 |
△2,824 |
投資有価証券△2,821 |
|
資産合計 |
17,140 |
15,856 |
△1,284 |
― |
|
流動負債 |
333 |
784 |
450 |
未払法人税等+446 |
|
固定負債 |
2,269 |
1,477 |
△792 |
繰延税金負債△792 |
|
負債合計 |
2,603 |
2,261 |
△341 |
― |
|
純資産合計 |
14,537 |
13,594 |
△943 |
その他有価証券評価差額金△1,862 繰越利益剰余金+864 |
|
負債純資産合計 |
17,140 |
15,856 |
△1,284 |
― |
①資産
当期末の総資産は15,856百万円となり、前期比1,284百万円の減少となりました。
流動資産は、主に前期比で政策保有株式の売却が進んだ結果、現金及び預金が増加し、1,540百万円増の9,544百万円となりました。固定資産は主に投資有価証券の減少により、2,824百万円減の6,312百万円となりました。
②負債
当期末の負債総額は2,261百万円となり、前期末比341百万円の減少となりました。
流動負債は、収益増及び政策保有株式の売却により未払法人税等が446百万円増加し784百万円となりました。固定負債は繰延税金負債の減少により792百万円減の1,477百万円となりました。
③純資産
当期末の純資産は13,594百万円となり、前期末比943百万円の減少となりました。
これは利益剰余金が当期純利益による増加、剰余金の配当による減少を主に864百万円増加したものの、有価証券評価差額金が1,862百万円減少したことによるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
①キャッシュ・フローの状況の分析
(単位:百万円)
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前年度 |
当年度 |
|
|
|
増減額 |
主な増減理由 |
|||
|
営業活動による キャッシュ・フロー |
684 |
579 |
△104 |
税引前当期純利益+1,444 投資有価証券売却損益(△は益)△1,341 棚卸資産の増加△313 |
|
投資活動による キャッシュ・フロー |
166 |
1,522 |
1,355 |
投資有価証券の売却による収入+1,414 |
|
財務活動による キャッシュ・フロー |
△457 |
△676 |
△218 |
配当金支払額の増加△254 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
393 |
1,425 |
1,032 |
― |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
5,465 |
5,858 |
393 |
― |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
5,858 |
7,284 |
1,425 |
― |
当期末の現金及び現金同等物の残高は、7,284百万円となり、前期比1,425百万円の増加となりました。これは投資有価証券の売却が主な要因です。なお、当期におけるキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは579百万円の収入となり、前期比104百万円の減少となりました。これは主に営業利益が改善したものの棚卸資産が前期に比べ増加したことによるものです。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは1,522百万円の収入となり、前期比1,355百万円の収入増となりました。これは投資有価証券の売却による収入が1,414百万円増加したことによるものです。
(財務活動におけるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは676百万円の支出となり、前期比218百万円の支出増となりました。これは主に配当金の支払額が254百万円増加したことによるものです。
②財務政策
当社の事業は前述の「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」 に記載のとおり様々なリスクを伴っており、運転資金としては将来予測可能な資金需要に対して十分な流動性ある資産を確保していく方針です。現在、運転資金及び経常的な設備投資資金については手許資金で賄っておりますが、中期経営計画で掲げる事業拡大のための戦略投資に向けては、政策保有株式の売却に伴う資金を積極的に活用する予定です。
当社の株主還元の基本方針は下記の3点であります。
(1) 長期的な成長を目指して資本効率と財務健全性のバランスを取る
(2) プライム市場上場会社として、当面の業績に大きく左右されない一定レベルの株主還元に積極的に取り組む
(3) 配当性向に加えDOE(自己資本配当率)5%を下限とした配当方針を採用する
配当については、後述の「第4[提出会社の状況] [配当政策]」をご参照ください。
また、自己株式の取得についても状況に応じて機動的に実施を検討いたします。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社は単一セグメントのためセグメント毎の記載はしておりません。
①生産実績
|
用途品目別 |
第54期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
プリント基板・半導体搭載基板用 |
5,700,898 |
122.5 |
|
コネクター・マイクロスイッチ用 |
1,848,744 |
85.3 |
|
リードフレーム用 |
4,744,990 |
109.4 |
|
その他 |
311,388 |
121.1 |
|
合計 |
12,606,021 |
110.4 |
(注) 上記の金額は、販売価格によっております。
②受注実績
|
用途品目別 |
第54期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|||
|
受注高 |
受注残高 |
|||
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
プリント基板・半導体搭載基板用 |
5,717,915 |
114.1 |
538,898 |
101.7 |
|
コネクター・マイクロスイッチ用 |
1,850,115 |
88.8 |
36,153 |
105.8 |
|
リードフレーム用 |
4,669,610 |
112.9 |
130,307 |
64.6 |
|
その他 |
344,234 |
146.1 |
34,029 |
1,129.6 |
|
合計 |
12,581,876 |
109.8 |
739,389 |
96.2 |
③販売実績
|
用途品目別 |
第54期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
プリント基板・半導体搭載基板用 |
5,708,974 |
122.3 |
|
コネクター・マイクロスイッチ用 |
1,848,142 |
85.3 |
|
リードフレーム用 |
4,740,883 |
110.0 |
|
その他 |
313,217 |
121.5 |
|
合計 |
12,611,218 |
110.4 |
(注)1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前事業年度 |
当事業年度 |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
イビデン株式会社 |
2,656,243 |
23.3 |
3,412,023 |
27.1 |
|
兼松株式会社 |
1,707,722 |
15.0 |
1,943,725 |
15.4 |
|
株式会社コタベ |
1,407,500 |
12.3 |
1,775,504 |
14.1 |
|
CHANG WAH TECHNOLOGY Co.Ltd |
1,304,813 |
11.4 |
1,667,275 |
13.2 |
(注)2 最近2事業年度の主要な輸出先及び輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。
なお、( )内は、総販売実績に対する輸出高の割合であります。
|
輸出先 |
第53期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
第54期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
台湾 |
2,021,407 |
31.8 |
2,726,949 |
44.3 |
|
韓国 |
661,308 |
10.4 |
517,307 |
8.4 |
|
シンガポール・マレーシア |
2,016,025 |
31.7 |
1,353,487 |
22.0 |
|
中国 |
562,669 |
8.9 |
577,029 |
9.4 |
|
その他の地域 |
1,092,853 |
17.2 |
976,627 |
15.9 |
|
合計 |
6,354,265 (55.6%) |
100.0 |
6,151,401 (48.8%) |
100.0 |
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この
財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては「第一部〔企業情報〕第5〔経理の状況〕1〔財務諸表等〕〔注記事項〕重要な会計方針」をご参照ください。
該当事項はありません。
(1)研究開発活動の基本方針
当社の研究開発部門のミッションは、「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」の企業理念の下、独創的な製品をエレクトロニクス業界に提供することです。
エレクトロニクス業界は急速にグローバル化が進んでおり、これに対応するには、当社の研究開発業務を、ソフト技術、材料技術の両面より推進する必要があります。ソフト技術を駆使してグローバル化に対応しながら、一方では次世代の材料技術を長期的な視野で育成していくのが当社の研究開発の基本方針です。
ソフト技術とは、顧客の製品、要求性能、設備に合わせて最適なトータルプロセスを提案する技術です。対象となる電子デバイスは多様であり、顧客の設備も多様であるため、当社の既存のめっき薬品使用条件だけでなく前工程、後工程のニッチトップ企業との協力を含む組み合わせで、顧客に最適なトータルプロセスを提案することが要求されます。
一方、材料技術とは、既存の薬品では対応できないような課題を解決するための新しい薬品を開発する業務です。新規化合物を発見しないと問題が解決されないような製品には、新規化合物の環境試験も行わねばならず、開発から製品化までには数年の検討期間が必要になることもあり、長期間にわたる計画が必要です。
なお、当社は単一セグメントのためセグメント毎の記載はしておりません。
(2)研究開発活動の主要課題
当社は、会社設立以来、エレクトロニクス業界を最大のターゲットとして貴金属めっき薬品を提供してまいりました。近年、めっき液の低金濃度化やめっき皮膜の薄膜化による金使用量を削減(省金化)した仕様が浸透しつつあり、めっき皮膜物性を維持しつつ、このような仕様に対応することが主要課題となっております。
そのような状況の中でも業界に先駆けてFC-BGA(Flip-Chip Ball Grid Array)パッケージ用無電解金めっき薬品のシアンフリー化を達成しており、技術課題の解決と環境配慮志向の両面で新たな価値を提供しています。
さらに、省金化に伴う貴金属めっき薬品の販売量低下を補うべく、これまでに集積した貴金属めっき技術を、エレクトロニクス業界以外へ展開すること、貴金属以外のめっき技術へ応用することも課題として取り組んでおります。
その一つが電池材料への展開です。電気自動車や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、従来よりも安価で軽量かつ長寿命な電池が求められています。電池の充放電反応は、めっきと同じ酸化還元反応(Redox反応)を利用しています。当社はめっき薬品開発で培ったRedox制御技術で電池材料の課題解決にも貢献すべく、新たな技術開発に着手しています。
このような新たな技術開発を推進するためには、従来のめっきだけに留まらない柔軟な思考力と技術開発力が必要となるため、当社の数倍の技術陣容を有する競合めっき薬品メーカーにも対抗できるユニークな発想を持つ技術陣の育成が必要となります。引き続き、新分野に積極的にチャレンジする人材、資質の高い人材の採用と育成により、技術陣のレベルアップを実現し、開発力の強化を図ってまいります。同時に、当社単独では困難な技術開発を効率的に実施していくため、最適な外部連携を図ってまいります。
具体的には以下の課題に取り組んでまいります。
①環境問題対応
・有害物質(シアン、鉛)不使用のめっき技術
・穀物由来原料の削減
・めっき廃液の削減
②新規要求に対するデバイス対応
・5G対応のめっき技術
・高密度実装技術対応のめっき技術
・自動車電装化対応めっき技術
③新しい事業領域の創出
・電解液・電極など電池材料向けの技術開発
④効率化
・実験データの利活用
・メカニズムの可視化
(3)研究開発の成果
当期の研究開発の成果は次のとおりであります。
①5G対応ニッケル不使用めっき技術(DIG、EPIG)
一般的に厚付けで施されるNiめっき皮膜を使用せず、電子回路の細線化に貢献できる最終表面処理プロセスとして期待されております。今期は複数顧客で評価が進展し、プロセス全体の最適化と製品化に向けた準備を進めております。2025年エレクトロニクス実装学会春季講演大会にて、高周波向け用途での伝送損失の優位性に関する展示を行いました。
②高密度パッケージ用無電解金めっき技術
最先端高密度半導体パッケージ基板用の環境配慮型のシアンフリータイプ無電解金めっき液は、顧客で量産稼働中です。今期は性能を向上した次世代品を開発し、顧客の最終評価段階に到達しました。
③半導体配線用金めっき技術
最先端半導体用のシアンフリー電解金めっき液について、顧客評価が進行中です。
④電池材料
2025年2月に開催された第18回国際二次電池展において、地方独立行政法人 大阪産業技術研究所(ORIST)様のブース内でポスター出展を実施しました。当社開発品のPRを実施し、サンプルワークを開始しました。
⑤めっき廃液の削減
廃液量の削減に貢献できる技術として、スタンプ式電解金めっき薬品を開発しました。この技術は、対象物に必要な部分だけにめっき液を適用することで、従来の浸漬式めっき処理に比べて廃液量の削減が期待できます。現在、この技術を活用したサンプルワークの準備を進めております。
(4)研究開発費
第54期(2025年3月期)における研究開発費の総額は