文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、2019年6月にJX金属グループ2040年長期ビジョンを策定し(2023年5月に一部改定)、「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身により、激化する国際競争の中にあっても高収益体質を実現し、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針といたしました。この方針のもと、半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントからなるフォーカス事業を成長戦略のコアとして位置づけ、先端素材分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しております。基礎材料セグメントからなるベース事業は、最適な規模の事業体制のもとで、銅やレアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支えるとともに、ESG課題の解決に貢献してまいります。
近年、デジタルトランスフォーメーションの進展、脱炭素社会形成に向けた動きの加速、資源不足・枯渇懸念の深刻化、企業に求められる社会的責任の高まりなど、当社グループを取り巻く社会環境、事業環境は大きな変化に直面しております。
当社グループを取り巻く経営環境について、報告セグメント別の状況は以下のとおりです。
半導体ロジック・メモリ市場は、2017年から2022年にかけて年率6.1%(出所:TechInsights Inc. “Worldwide Silicon Demand History and Forecast” (2024年9月時点、シリコンウエハ出荷面積ベース))で拡大してきました。2023年は市況の調整が続いたものの、今後は生成AIの伸長による市場牽引が本格化するとともに、電気自動車等の普及拡大により、2023年から2027年にかけて年率7.8%(出所:同上)の成長が予想されております。特に半導体製造技術の世代における最先端ロジックについて、5nm世代以降は2023年から2027年にかけて年率37.1%(出所:同上)の高い成長が見込まれており、多層化・微細化の進展は継続するものと思われます。(注1)
半導体の成膜方法であるPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法)に用いられる当社の主力製品である半導体用スパッタリングターゲットはロジック・メモリをはじめとした各種の半導体デバイスの製造に用いられております(注2)が、最先端ロジックほど配線層数が多くなり、半導体用スパッタリングターゲットの使用量が増加する傾向にあることから、その販売量は半導体ロジック・メモリ市場の成長を上回ることが期待されます。また、最先端ロジックほど配線が細かくなり、PVDが適さない微細な配線に対するCVD/ALDによる薄膜形成ニーズも高まることが見込まれます。
さらに、データ演算需要の飛躍的な増加及び生成AIの伸長を背景に、生成AIを搭載したサーバを大量に運用できるAIデータセンターの建設も進んでおります。これに伴いAIサーバの出荷台数の増加も見込まれており、2023年から2027年にかけて年率27.8%(出所:Prismark Partners LLC 「2024 Prismark Workshop, March2024」、出荷台数ベース)の成長が予想されております。AIサーバにはチップ内の配線材料としての半導体用スパッタリングターゲットをはじめとして、光通信向け材料としてのInP基板、タンタルキャパシタ向けの高純度タンタル粉、大容量HDD向けの磁性材用ターゲットなど、半導体材料セグメントの当社製品が多く用いられていることから、このような傾向は本セグメントの収益拡大の追い風になることが見込まれます。
加えて、AIサーバには高速の並列演算を担うために多数のGPUが搭載されており、データセンター向けGPUの出荷数量も2023年から2027年にかけて年率42.4%(富士キメラ総研「2024 データセンター・AI/キーデバイス市場総調査」、出荷数量ベース)の成長が予想されております。GPUに対して高機能を付与するためには多層化・微細化に加えてパッケージング分野における技術革新が必要であり、パッケージングにおいてはチップ間の配線材(TSV・RDL)やチップレット間をつなぐ配線等の用途における成膜機会の拡大からも、当社の半導体用スパッタリングターゲットの需要の増加を見込んでおります。
(注) 1.なお、最先端ロジック(7nm世代)で2023年から2027年にかけて年率5.7%、先端ロジック(10nm世代~16nm世代)で年率3.9%、その他ロジック(20nm世代以降)で年率5.3%、半導体メモリ市場で年率8.3%の成長が見込まれております(出所:TechInsights Inc. “Worldwide Silicon Demand History and Forecast”(2024年9月時点、シリコンウエハ出荷面積ベース))。
2.2024年3月期実績における当社の半導体用スパッタリングターゲットの販売枚数のうち、約54%がロジック向けに使用されております(当社推計)。
2024年3月期においては、エレクトロニクス製品の市況調整の影響により、主力製品であるFPC向け圧延銅箔の販売が落ち込んだものの、需要は既に底打ちしており、2025年3月期からは再び成長軌道に回帰すると考えております。電子機器製品等に搭載されるFPCの面積は、2023年から2028年にかけて年率8.4%(出所:Prismark Partners LLC “The Printed Circuit Report Second Quarter / September 2024”)の成長が予想されております(注1)。今後は、AI搭載等によるスマートフォンやパソコン向け部材の更なる小型化・高機能化に加え、スマートウォッチやスマートグラスといったウェアラブル等の周辺機器の市場成長により圧延銅箔の使用拡大が見込まれます。また、世界的なEV販売台数の増加に伴い、配線用や誤作動防止のために用いられるシールド材用の圧延銅箔の採用・使用量の拡大が期待されるとともに、中長期的には産業機械、ロボット等の分野において小型化、軽量化が進み、複雑な動きに対して疲労耐性の強い圧延銅箔の使用量拡大が見込まれております。
積層セラミックコンデンサの内部電極に使用される超微粉ニッケルについては、2024年3月期には需要低迷が底を打ち、2025年3月期中には、AIを搭載する高機能通信機器の普及や、EVや自動運転の普及に伴う電装化の進展、データサーバやAIサーバ等の成長が需要を牽引し、市場は次第に成長軌道に回帰していくものと想定しております。
また、半導体材料セグメントが属する市場環境において記載しているAIサーバの導入拡大は本セグメントの収益拡大の追い風になることも見込まれており、特にAIサーバ向けのコネクタにおいては高耐熱・高強度などの特性が求められ、要求ニーズに応えるチタン銅の採用が急速に拡大しているほか、高温となるAIサーバ内における冷却液の漏液を検知するための漏液センサの需要拡大も見込まれます。
(注) 1.用途別の市場規模の成長率について、スマートフォン向けで年率6.0%、自動車向けで年率6.0%、コンシューマー向け(ウェアラブル)で年率4.2%の成長が予想されております(出所:Prismark Partners LLC 「Prismark PCB Report 2024Q2」)。

脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入が拡大するとともに、様々な産業や領域において電化が進行しており、中長期的に銅素材の需要拡大が見込まれます。例えば、電気自動車では、モーターコイルやバッテリーなどにガソリン車の約4倍の銅が使用されております。銅需要拡大の一方で、既存鉱山からの銅鉱石の供給量には限界があり、銅の需給はひっ迫することが見込まれており、銅価は堅調に推移していくものと考えられます。技術革新、製品寿命の短期化、人口増加等の要因により電気・電子機器の廃棄物であるE-Wasteの発生量が増加傾向にあり、2022年に62百万トンであったものが2030年には82百万トンに達する見通しです(出所:UNITAR “The Global E-waste Monitor 2024”)。一方で、脱炭素に向けた世界的な環境意識の高まりにより、リサイクル原料確保への動きが加速していることに加えて、環境規制強化の流れもあり、リサイクル原料の調達コストは上昇することが予想されます。また、アジア域内での製錬所建設が進むことにより、銅地金のサプライヤーが増加し、銅地金の販売環境の悪化が見込まれております。
半導体の多層化・微細化の進展及び生成AIの普及に伴うデータ伝送の高速・大容量化を背景に、半導体ロジック・メモリ市場は引き続き拡大することが見込まれています。このような市場成長を捕捉すべく、当社は半導体用スパッタリングターゲットの生産設備への積極的な拡張投資を推進しており、2028年3月期には2024年3月期対比で約1.6倍の生産能力とすることを目指します。
上工程(注1)の生産拠点については、従来は磯原工場のみであったところ、茨城県ひたちなか市に大規模用地を取得し、上工程を担う工場の設立を進めております。下工程(注2)においては、日本に加えて台湾、韓国及び米国に生産拠点を構えており、主要顧客である半導体メーカーの製造拠点に近い拠点での製造を行っております。特に米国においては当社の主要顧客である複数の先端半導体メーカーが相次いで拠点の新設・拡張を進めていることから、BCPの一層の進展を図るべく、アリゾナ州メサに新たな生産拠点を設立いたしました。新工場では生産能力を拡張するとともに、最新鋭の設備を導入することで工程の自動化を実現することにより、生産性の向上を見込んでおります。
当社グループは、グローバルで多様な顧客基盤に対応するため、今後も市場の成長を捕捉する強力なグローバル生産体制の構築を目指します。

(注) 1.上工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける溶解~熱処理工程を指します。
2.下工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。
3.生産拠点は、2024年12月時点における状況を反映しております。
(ⅰ) 既存製品の採用拡大
中長期的に増加が見込まれているAIサーバにおいては、半導体の多層化・微細化に加え、先端パッケージの利用増が見込まれております。先端パッケージにおいてはチップ内だけでなく、チップ間の配線も必要であり、当社の主力製品である半導体用スパッタリングターゲットの需要が増加するものと考えております。このほかにも、当社は先端パッケージング工程に適用可能な幅広い開発製品を保有しており、需要増の機会をとらえるべく、2024年10月に先端パッケージ材料事業推進室を新設いたしました。先端パッケージ材料事業推進室において、既存製品の拡販及び開発製品の採用拡大を進めるとともに、当社保有技術を活かした新規事業の創出を目指してまいります。
(ⅱ) 次世代のグローバルトップシェア製品の開発
当社は2016年に技術本部を設置し、長年培った高純度化、表面制御、組成、分析評価等の技術を強化すべく、技術開発を積極的に進めてまいりました。その結果、半導体・情報通信関連の特許保有件数は2013年度から2022年度までに約2.6倍と増加しております。これらの技術を活かし、当社は次世代の収益の柱の確立に向けた取り組みを進めております。
その1つの取組みとして、2024年4月に技術本部内に結晶材料事業推進部を組織し、結晶材料事業の戦略立案機能を同部に集約しております。これにより、現在成長軌道にあるInP(インジウムリン)並びにCdZnTe(カドミウムジンクテルル)といった結晶材料の開発スピードを一段と加速させ、迅速かつ着実な事業規模拡大を狙います。なお、InP(インジウムリン)基板市場は、データセンターやモバイル通信量の増加により、2023年度から2027年度にかけて年率21.5%(出所:Photonics GaAs and InP Compound Semiconductor Market Monitor, Q1 2024, Yole Intelligence、直径4インチのInP基板の面積に換算した際の出荷枚数ベース)の成長が予想されております。特に当社が注力するDataCom(伝送距離100km以内のデータセンター向けを指す)向けは、2023年度から2027年度にかけて年率28.4%(出所:同上)の成長が予想されております。
半導体製造プロセスに用いられるリソグラフィー・フォトマスク用材料、次世代半導体材料として期待されているCVDやALD向け材料等の分野においても迅速かつ着実な事業規模拡大を図るべく、2024年2月にCVD・ALD材料事業推進室を新設するとともに、CVD・ALD材料の本格供給に向け、東邦チタニウム株式会社茅ヶ崎工場の敷地内及び当社日立事業所白銀地区への生産設備及び開発設備投資を決定しております。また、TANIOBISにおいては近年の市場環境の変化をとらえた生産拠点の再編に取り組んでおりますが、当該再編の一環として、ドイツ工場に引き合いが増えているCVD・ALDプリカーサ材料の開発・生産が可能な設備を導入し、稼働を開始しております。
数年単位で周期的な需要変動が生じやすい市場特性を踏まえ、需要の低迷や下振れが生じる場合においても一定の収益を確保できる体制を目指し、各種取組みに着手しております。まずは製品ポートフォリオの見直しを行い、圧延銅箔、チタン銅を中心とする高付加価値製品の積極的拡販を推進する一方で、低収益製品の販売を縮小する方針としております。加えて、営業面では、高競争力製品の価格適正化や生産コスト上昇分の価格転嫁による収益力強化、製造面では、設備集約によるコスト削減や歩留まり改善等による生産性改善を進めており、情報通信材料セグメントにおける損益分岐点引き下げを図っております。さらに、ひたちなか工場における大型投資の抑制を決定する一方で、今後とも成長が期待される高付加価値製品の生産については、2024年3月期に日立事業所内に竣工済みの新たな仕上圧延工場と製品ポートフォリオの見直しにより創出した既存工場のキャパシティーの活用により対応いたします。投資の抑制と成長の両立を実現し、市況の変化に柔軟に対応できる体制への切替えを進めてまいります。
当社は、事業環境及び当社グループにとっての最適化の観点で事業・製品の選択と集中を実行してまいりました。特に2018年における「JX金属グループ 2040年長期ビジョン」策定後はフォーカス事業中心の事業ポートフォリオの形成を目指してベース事業を中心に大幅な組織再編を行うことにより、資本効率の向上に向けた体制構築を加速させております。
ベース事業においては、2018年3月期に物流機能強化を目的としたセンコーホールディングスへの日本マリン株式会社株式の譲渡(現在当社持分40%)及び事業環境の見通しを踏まえた常州金源銅業有限公司の株式譲渡(現在当社持分0%)を行ったことに加えて、2023年3月期には銅製錬企業であるLS-Nikkoの当社グループ保有株式の全て(49.9%)を売却いたしました。さらに、2024年3月期においては当社グループが100%を保有していた銅鉱山運営会社であるMLCC株式の51%を売却するとともに(その後、2024年7月に追加で19%を売却。追加分も含めた譲渡後の当社持分30%)、当社が間接的に15.79%を保有していたMinera Los Pelambres銅鉱山権益の3.27%及び当社が67.8%を保有していた銅製錬事業の原料調達・販売機能を担うPPCの株式の20%を売却いたしました(譲渡後の当社持分47.8%)。
同時にフォーカス事業における経営リソースの集中も進めており、例えば製品の集中については2016年3月期に車載LiB向け正極材の製造停止、2023年3月期にはFPD用ターゲットの製造中止を決定したほか、足元も情報通信材料セグメントにおける収益性の低い伸銅品の整理を図っております。また、事業分野の集中として精密加工事業からの実質的な撤退を決め、当該事業を営む当社の連結子会社であるJXPTの持分売却(譲渡後の当社持分15%)、無錫日鉱富士精密加工有限公司の売却を行い(譲渡後の当社持分0%)、収益性の高い製品への経営リソース集中を図っております。
このような一連の組織再編により、2023年3月期と2024年3月期の2ヵ年で合計約1,159億円の減損損失を計上しておりますが、一方で2024年3月期には有利子負債を2,251億円削減(各年度末のNet Debtの差額から計算)いたしました。また、フォーカス事業とベース事業の資産構成比率が変化し、2023年3月期期首時点で72%を占めていたベース事業の資産比率が、2024年3月期期末時点では53%となっております(注1)。
主に2023年3月期以降に実施した組織再編により、今後は連結営業利益に占めるフォーカス事業の構成比率が増加し、連結営業利益率が大きく上昇する見込みです。また、これらの組織再編後もコスト競争力の高い銅鉱山や製錬所を保有しており、ベース事業として底堅い収益を安定的に創出しております。以下に、上記に記載した事業再編を2020年3月期期首の段階で完了していたと仮定した場合のベース事業(基礎材料セグメント)の2020年3月期から2024年3月期までの営業利益、すなわち2020年3月期期首からMLCCの当社持分30%、LS-Nikkoの当社持分なし、PPCの当社持分47.8%であったと仮定した場合のベース事業の営業利益の推移を示します。
当社グループは、今後もフォーカス事業の収益性強化、ベース事業におけるボラティリティの縮小を目的としたポートフォリオの最適化に向けた取り組みを継続してまいります。
(注) 1.ベース事業の資産額を、連結財政状態計算書における資産合計から事業共通の資産額を除いた金額で割って算出しております。

(注) 2.LME銅価格は2019年4月1日から2024年3月29日の推移を記載しております。
3.2020年3月期から2022年3月期のベース事業営業利益については、当社がENEOSホールディングス金属セグメントの数値等をもとにして業績管理や分析の目的で作成した数値であり、2023年3月期以降の当社の連結財務諸表に基づく諸数値の作成方法とは異なる点があります。また、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査法人による監査を受けておりません。詳細については、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 参考情報①」注1及び注10をご参照ください。
4.2020年3月期はカセロネス銅鉱山に係る事業の営業利益375百万円を控除し、カセロネス銅鉱山に係る事業の当期利益に当社グループとの金融取引に伴う影響等を調整した金額のうち持分30%相当となる558百万円を加算しております。2021年3月期はカセロネス銅鉱山に係る事業の営業利益(減損損失除き)9,505百万円を控除し、カセロネス銅鉱山に係る事業の当期利益に当社グループとの金融取引に伴う影響等を調整した金額のうち持分30%相当となる4,872百万円を加算しております。2022年3月期はカセロネス銅鉱山に係る事業の営業利益33,464百万円を控除し、カセロネス銅鉱山に係る事業の当期利益に当社グループとの金融取引に伴う影響等を調整した金額のうち持分30%相当となる9,950百万円を加算しております。2023年3月期は、カセロネス銅鉱山に係る事業の営業利益28,179百万円を控除し、カセロネス銅鉱山に係る事業の当期利益に当社グループとの金融取引に伴う影響等を調整した金額のうち持分30%相当となる6,293百万円を加算しております。2024年3月期は、カセロネス銅鉱山に係る事業の営業利益38,147百万円を控除し、カセロネス銅鉱山に係るの第1四半期の当期利益のうち持分30%相当となる1,179百万円を加算し、第2四半期から第4四半期の持分法投資損益のうち持分30%相当の9,613百万円を加算しております。
5.2020年3月期は、PPCに係る事業の連結営業利益5,717百万円を控除し、PPCに係る当期利益のうち持分47.8%相当となる1,456百万円を加算しております。2021年3月期は、PPCに係る事業の連結営業利益2,649百万円を控除し、PPCに係る当期損失のうち持分47.8%相当となる△76百万円を加算しております。2022年3月期は、PPCに係る事業の連結営業利益10,404百万円を控除し、PPCに係る当期利益のうち持分47.8%相当となる3,404百万円を加算しております。2023年3月期は、PPCに係る事業の連結営業利益15,806百万円を控除し、PPCに係る連結当期利益のうち持分47.8%相当となる6,459百万円を加算しております。2024年3月期は、PPCに係る事業の連結営業利益4,802百万円を控除し、PPCに係る連結当期利益のうち持分47.8%相当の3,059百万円を加算しております。
6.2020年3月期は、MLCC・PPC間の棚卸未実現利益2,326百万円を控除しております。2021年3月期は、MLCC・PPC間の棚卸未実現利益△10,108百万円を控除しております。2022年3月期は、MLCC・PPC間の棚卸未実現利益△2,297百万円を控除しております。2023年3月期は、MLCC・PPC間の棚卸未実現利益9,392百万円を控除し、MLCC及びPPC両社に係る内部利益消去のうち持分14.34%(30%×47.8%)相当となる934百万円を加算しております。2024年3月期は、MLCC・PPC間の棚卸未実現利益5,205百万円を控除しております。
7.2021年3月期は、MLCCに係る減損額69,378百万円を加算し、MLCCに係る債務消滅益63,531百万円を控除しております。
2025年3月期から2027年3月期の3年間において当社は総額約2,700億円の戦略投資を予定しており、当該投資の大部分をフォーカス事業における投資に振り向けることを予定しております。特に、先端ノードをはじめとして今後伸長する半導体需要を確実に捕捉し、高品質な素材を安定的に供給するために、当該期間においては半導体材料セグメントへの成長投資を最優先に実行いたします。
なお、主な投資先であるひたちなか工場については、収益性が高く、需要の急拡大が見込まれる半導体用スパッタリングターゲット等の半導体関連の投資を中心に実施することといたします。これにより、2023年3月期から開始したひたちなか工場への投資総額は当初想定の約2,000億円規模から約1,500億円規模となる見込みです。
成長投資後の余剰資金については、株主還元とのバランスを図りつつ有利子負債の返済に充当いたします。また、コスト削減や運転資本削減を通じた有利子負債の削減も行っており、2028年3月期にNet Debt/EBITDA 1.5倍未満を達成することを目標として掲げております。
当社グループは全社を挙げて取り組む経営指標として成長性、収益性及び資本効率性等を重視しております。JX金属グループ2040年長期ビジョンに掲げるとおり半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして高収益体質を実現するためには、半導体材料セグメント及び情報通信材料セグメントからなるフォーカス事業の営業利益率及び利益構成比を高めることが重要であると考えております。
当社グループのフォーカス事業の状況について、2024年3月期はスマートフォンやPC等の民生用電子デバイスの需要減少や中国の景気減速を背景として、当社の顧客企業における在庫調整が長期化し、主力製品である半導体用スパッタリングターゲット及びFPC向け圧延銅箔はともに対前年で減販となりました。

また、情報通信材料セグメントにおけるJXPT株式の売却決定に伴う減損損失の計上など、収益性向上のための製品ポートフォリオの見直しに伴う営業利益の一時的な悪化が見られました。
一方で、「(2) 経営環境」に記載のとおり、当社グループのフォーカス事業を取り巻く今後の市場環境は成長軌道にのっていくものと見込まれております。まず、半導体ロジック・メモリ市場は、2023年から2027年にかけて年率7.8%の成長が予想されており、特に生成AIの伸長、すなわち先端・最先端半導体市場が成長を牽引することが見込まれております。多層化・微細化が求められる先端・最先端半導体では、成膜に用いる半導体用スパッタリングターゲットの使用量が増加します。このような市場環境の変化を捕捉して半導体用スパッタリングターゲットの増販を図り、半導体市場を上回る成長を目指すべく、当社は新工場設立等による生産能力の拡大等を計画しております。また、電子機器製品等に搭載されるFPCの面積は2023年から2028年にかけて年率8.4%の成長が予想されており、AI搭載等によるスマートフォンやパソコン向け部材の更なる小型化・高機能化に加え、周辺機器の市場成長により使用が拡大していくものと見込まれております。当社のFPC向け圧延銅箔は、複雑な動きに対して疲労耐性が強い特徴を有することから、このような市場環境において引き続き優位性を維持できるものと想定しております。
このような事業環境の変化を踏まえ、当社は下表のとおり中長期目標を策定し、2024年5月14日に公表しております。
なお、当該中長期目標の策定においては社会経済環境、金利動向、為替動向、銅価等の市況環境、規制環境、技術革新、デジタル化推進の継続、半導体市況の回復その他経営環境等について一定の前提を置いており、当社内において合理的な根拠に基づく適切な検討を経ておりますが、これらの前提と現実が異なる場合には異なる結果が導かれる可能性があることから、将来に関する事項の達成を保証するものではございません。
(注) 1.中長期目標は、本書提出日において適用される国際会計基準に基づき算出しており、2027年1月1日以降に適用されるIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の内容は反映しておりません。
2.中長期目標値設定の前提として、為替レートは2025年3月期140円/米ドル・2026年3月期以降135円/米ドル、銅価は2025年3月期以降380¢/lbを使用しております。また、半導体材料セグメントの営業利益の策定にあたっては、半導体ロジック・メモリ市場の成長率について、中長期目標策定時点の見通しとして2023年から2027年にかけて年率7.6%(TechInsights Inc. “Worldwide Silicon Demand History and Forecast”(2024年3月時点、シリコンウエハ出荷面積ベース))で成長することを前提にし、加えて、各顧客の生産状況を勘案しております。
3.当社は、2023年7月にカセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCC株式の51%をLundin社へ譲渡しており、当該譲渡に伴う評価損742億円を2023年3月期実績に計上しております。上表の連結営業利益、連結営業利益率、フォーカス事業及び半導体材料セグメントの事業別利益構成比、ROE、Net Debt/EBITDAにはその影響が含まれております。また、MLCCの株式譲渡等により生じた通算前欠損金がグループ通算制度によって損益通算されたことで、通算税効果額の精算が行われました。これにより、2024年3月期実績における当期純利益が税引前利益対比で増加し、一時的にROEが改善いたしました。
4.当社は、2024年3月31日をみなし売却日として、当社が67.8%を保有していたPPC株式の持分のうち20%を丸紅株式会社に譲渡いたしました。そのため、2024年3月期実績について、連結損益計算書にはPPCの事業活動の影響が反映されておりますが、連結財政状態計算書にはPPCが保有する資産及び負債を取り込んでおりません。なお、PPCの単体財務諸表につきましては「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 参考情報②」をご参照ください。
5.中長期目標の営業利益を算出する際に用いるその他の収益及び費用について、受取配当金や事業構造改革費用など、将来において発生が見込まれるものについてはこれを織込んでおります。なお、その他費用における減損損失に関しては、収益性について問題が生じる会社又は資産グループは将来において発生しないものと想定いたしました。
6.営業利益にかかる中長期目標として、2024年3月期から2028年3月期までの営業利益の年平均成長率を採用しております。これは、当社の継続的な成長を市場成長と照らし合わせて確認するうえでより適切な示し方であると判断したことによるものであり、2023年3月期及び2024年3月期の実績については参考値として営業利益の実額を示すにとどめております。
7.事業共通費用を除いたフォーカス事業(半導体材料セグメント、情報通信材料セグメント)及びベース事業(基礎材料セグメント)の営業利益を基に算出しております。フォーカス事業の営業利益は半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントの営業利益を単純合算しております。
8.Net Debt (有利子負債 - 現預金(ENEOSグループ金融短期貸付金含む)) ÷ EBITDA (営業利益 + 減価償却費及び償却費) により算出しております。
当社グループはこれまでも様々な社会貢献活動や環境保全活動を実施してまいりましたが、ESGに対する世界的な潮流を受けて、組織的対応を強化し、全社的視点からESG経営に取り組む必要があることから、2020年10月、ESGへの取り組みを統括する「ESG推進部」を発足し、関連会議体を整備いたしました。
社長の諮問機関である「ESG推進会議」では、ESGへの対応に関する基本方針や活動計画、及びそれらのモニタリングを行っております。ESG推進会議は社長を議長、当社の経営会議のメンバー(社長が指名した執行役員)を構成員、常勤監査等委員及び社外取締役をオブザーバーとし、原則として年2回開催されます。
また、ESG活動のグループ全体における推進・浸透を図るため、下部機関として、各部門、グループ会社等のESG推進責任者により構成される「ESG推進責任者会議」を設置しております。ESGに関わる重要事項については、取締役会・経営会議に適宜、付議・報告しております。

ESG推進会議の委任に基づき、活動の分野に応じて下記委員会を設置しております。各委員会における審議結果等はESG推進会議にて報告いたします。
当社グループにおけるコンプライアンス推進のための教育その他の諸施策及び活動計画の策定、当社グループ各社におけるコンプライアンス推進状況のレビューを行います。
事務局を当社法務部として、年2回及び必要の都度開催しております。
当社グループの安全衛生・環境保全に関する活動計画の策定、当社グループ各社における安全衛生・環境保全に関する活動状況のレビューを行います。
事務局を当社環境安全部として、年2回及び必要の都度開催しております。
当社グループにおけるCO2ネットゼロに向けた取り組み推進のための活動方針及び活動計画その他諸施策の策定、当社グループ各社におけるCO2ネットゼロに向けた取り組みの推進状況のレビューを行います。事務局を当社ESG推進部として、年2回及び必要の都度開催しております。
事業を取り巻く様々なリスクに関して、将来予測や内外の環境変化を踏まえて特定・分析及び評価を行い、回避・低減・移転・保有等の対応を実施しております。当社グループでは、JX金属経営会議において重要リスクの決定、各重要リスクの対応計画の承認、及びそれらのモニタリングを実施しております。また当社総務部のリスクマネジメント室が、当社及び当社グループのリスクマネジメントの総括に関する業務を分掌し、全社的リスクマネジメントの推進を担っております。詳細については「
当社グループでは、2040年長期ビジョンの実現に向け、優先的に取り組むべき6つのマテリアリティを特定しております。各マテリアリティはKPIを設定したうえで、ESG推進会議にて達成度合いを測定・評価しながら運用しております。
当社グループのマテリアリティは、世界的な社会課題とSDGsが掲げるゴール、国際ガイドライン(GRI、ISO26000等)、国内外イニシアティブ、同業他社の動向などを踏まえて、以下のステップにより特定いたしました。なお、特定したマテリアリティは、今後の社会情勢やニーズの変化、経営戦略等に応じて内容の見直しを定期的に実施していく予定です。
Environment
マテリアリティ①:地球環境保全への貢献
Social
マテリアリティ②:くらしを支える先端素材の提供
マテリアリティ③:魅力ある職場の実現
(注) 1.障がい者の雇用促進と安定を目的として設立される子会社
マテリアリティ④:人権の尊重
マテリアリティ⑤:地域コミュニティとの共存共栄
Governance
マテリアリティ⑥:ガバナンスの強化
当社グループでは、気候変動を地球規模で解決すべき喫緊の課題ととらえ、その解決に寄与するべく、CO2ネットゼロを最終目標に掲げ、その達成に向けた取り組みを一層加速しております。
気候変動対応に関する基本方針の策定、重点目標の設定、それらのモニタリング等については、社長の諮問機関であるESG推進会議で行っております。
気候変動に係るリスク・機会についてはESG推進部が各部門と連携し、TCFD提言のフレームワークに沿ってシナリオ分析を含む評価・特定を行っております。シナリオ分析に当たっては、気候変動影響に伴う規制や事業への影響等のリスク要因を幅広く情報収集・分析し、気候変動対応に係る自社のリスク・機会の把握、中長期的な事業戦略上の対策などを検討しております。また、分析の結果や対応策の実施状況等については、ESG推進会議等を通じて経営陣に共有し、それを基に各部門がESG推進部とも連携しながら取り組みを進めております。
さらに、近年では、EUのバッテリー規則の施行や炭素国境措置(CBAM)の始動、米国のインフレ削減法などの政策や法規制の整備・強化を背景としてサステナブル原料調達の需要が高まっております。当社では、リサイクル比率が高く、かつ、カーボンフットプリントの低い銅製品をはじめとする非鉄金属製品の安定供給を通じて、取引条件の悪化や取引関係の解消、操業規模の縮小というリスクの回避、顧客基盤の維持や製品の魅力度向上を目指しております。

当社グループは、気候変動における指標をCO2自社排出量(scope1,2)と定め、2050年度にCO2自社排出量のネットゼロを目指すことを目標としております。2018年度のScope1,2におけるCO2自社排出量を基準として、2050年度からのバックキャストで2030年度までに50%減とすることを中間目標に設定しております。
気候変動が当社グループ及び当社グループ事業に及ぼすリスク・機会の抽出、リスクへの対応と機会の実現に向けた戦略を検討するに当たって、国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook(WEO)」を参照いたしました。このほか、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による地球温暖化シナリオを分析に用いました。
気候変動に伴う脱炭素社会への移行を想定すると、再生可能エネルギーへの電源構成の転換、電動化等の電力利用の変革、サーキュラーエコノミーの社会実装等に向けて当社グループの果たす役割は大きく、製品需要の増加や高機能化などの機会が想定されます。一方、当社グループ自身がグローバルでカーボンニュートラル化を進めることに伴うコスト増加やその遅れによる機会損失などのリスクも存在します。また、国内外の事業所において、異常気象により生産設備や物流網が被害を受け、操業停止に陥る物理リスクの高まりが考えられます。

脱炭素社会・資源循環型社会への移行に伴い、当社グループの事業に係る非鉄金属や高機能電子材料の需要が伸びていくことが想定され、これに応えるための能力増強、技術開発やパートナーシップ構築をいかに実現していくかがポイントと考えております。一方、当社グループのカーボンニュートラルへの移行をスムーズに進めていくこと、自然災害に伴う物理リスク低減と発現時の影響の最小化に向けたBCP高度化が重要となること等がシナリオ分析の結果から見えてきました。
当社は、カーボンニュートラルの実現に不可欠な脱炭素資源である銅をサステナブルに供給するための考え方を、サステナブルカッパー・ビジョンという形で掲げ、実現に向けての施策を推進しております。カーボンフットプリント(CFP)の削減、リサイクル原料比率の向上、責任ある調達の推進等、サステナビリティ向上に関わる取組みを前進させるためには、サプライチェーンに携わる方々との連携が不可欠という認識のもと、銅の生産・利用に関わる様々な企業等と多くの対話を重ねました。この対話の中で汲み取ったニーズ、さらに資源循環、脱炭素、供給安定性、原料トレーサビリティの向上、並びに経済合理性といった複数の視点に立って、市場への最適な銅の供給スキームを検討した結果、社会に求められる銅の供給の1つの姿として、マスバランス方式を用いた2種類の100%リサイクル電気銅(PCL100/mb、MR100/mb)(注1)を上市することを2024年1月に発表いたしました。この100%リサイクル電気銅の社会実装に向けた取り組みを「Cu again」プロジェクトとして始動し、お客様とともに資源循環や脱炭素等の社会課題の解決を目指しております。「Cu again」とは、電気銅(Cu)が、社会での役割を終えてスクラップとして戻り、リサイクルを経て、繰り返し(again)、未来の社会を支えていくという願いを込めたものです。当社は顧客とともに資源循環や脱炭素等の社会課題の解決を目指して取り組みを加速しております。
(注) 1.PCL100/mb(Partnered Closed Loop 100% mass balance method)は、顧客の使用済み製品や工程端材を由来とする銅リサイクル原料を水平リサイクルし、含有されている銅の相当量を100%リサイクル電気銅として返還するもの。MR100/mb(Mixed Recycle 100% mass balance method)は、当社グループがリサイクル原料回収ネットワークを通じて市中から収集した銅リサイクル原料を基に、100%リサイクル電気銅を販売するもの。
当社グループでは、2040年長期ビジョンで掲げる「技術立脚型企業」への転身を図り、企業価値の最大化を実現していくためには、「人」の力によるイノベーションが不可欠であり、「人」の意欲・能力を最大限引き出すことが経営上の重要課題と考えております。こうした考えのもと、人材への投資を積極的に進めております。
当社グループでは、下記のような人材が新たな価値や付加価値を創出していくと定義し、人材獲得の強化を推進しております。
a. 多様性を理解・受容しながら様々な立場の関係者と協働し、革新をリードできる人材
b. オーナーシップ(当事者意識)を持ち、自ら考え、行動・チャレンジできる人材
c. 環境の変化に応じて「ありたい姿」を描き、実現に向け貪欲に策を講じられる人材
上記定義に基づく付加価値創出人材を獲得するために、以下の施策を遂行しております。
当社では、人事部採用担当の組織強化や採用チャネルの多様化により、幅広く優秀な人材を採用しております。新卒採用では、高専生を含めた技術系人材、留学経験を有する国内外のグローバル人材を積極採用しております。当社にない様々な知見・経験をお持ちの方に活躍いただくキャリア採用も定着しており、直近3年の採用実績においては新卒とキャリアの割合がほぼ5:5となっております。そのキャリア採用拡充のために、従業員の知人・友人を紹介いただくリファラル採用、当社退職者に再入社いただくカムバック採用など、チャネルの多様化を進めております。大学卒・高専・キャリアと、様々なチャネルを用いることで採用人材の質・量・多様性を確保し、新たな知見や技術、アイデアなどを積極的に共有しようとする闊達な企業風土の醸成につながっております。
当社では、技術立脚型企業への転身に向けた各種施策の確実な実行に向け、競争力の根源となる技術開発力、生産現場力をさらに高めていくため、技術系人材を積極採用しております。
<新卒採用>
・ 大学(院)時の専攻を限定せず、幅広い学部から当社の求める志向と能力を持った人材を採用
・ 学校推薦ではない、自由応募者の採用拡大
・ 高専生の積極採用
<キャリア採用>
・ 新規事業企画や技術開発などのポジションにて、当社にない分野の技術的知見を持つ人材を採用
・ 基幹職以上の重要ポジションでの採用
・ 多様な業界出身(自動車、電機、化学、大学等)の人材を採用
・ 従業員紹介(リファラル)や退職者の再入社(カムバック)で自社にマッチした人材を採用
当社では、以下の人材育成方針のもと、各種の施策・支援策を展開しております。

上記方針に基づく具体的な施策は以下のとおりです。
基幹職登用の早期化や職種を超えた異動といったキャリアパスの多様化等の状況に合わせ、2023年度から柔軟かつ能動的な教育体系への見直しを行いました。若手階層別教育では若手の早期戦力化と管理職向け教育の拡充、選択型教育の導入や自己啓発支援などで自律的な学びの促進、社外での実践的な教育の機会、経営幹部候補人材・海外事業展開を担えるグローバル人材・専門的な知見で会社を牽引するスペシャリスト・現場の競争力向上を担う人材の計画的な育成を目指しております。その他、財務知識やコミュニケーションの質や問題解決スキルに関する共有認識を醸成するためのトレーニングも実施しております。
従業員一人ひとりの能力や資質に応じた様々な研修制度を設けております。具体的には、当社のDNAを取り入れながら自律自走し、チャレンジを行うための基礎力とマインドの獲得を目指す入社3年目までの若手向け研修、マネジメント力向上や経営マインド、スキルを身に付けることを目的とした基幹職向け研修、製造現場の要となる主任職・係長職を対象に、現場の管理者として必要な能力開発・知識の獲得を図る現場管理者向け研修、社員の自律的・自発的な成長のため、従来の階層別教育に加え、各社員の役割期待・力量・志向等に応じて学ぶことができる選択制プログラムなどです。
上記のほか、グローバル人材育成を目的とした海外若手研修や国外留学制度、自律的なキャリア構築支援を図るキャリア教育などのプログラムを用意しております。また、社員自らの学習意欲をサポートすることを目的に、社員自らが希望する外部研修プログラムを申請して受講し、プログラム終了時に会社が費用の半額(上限50万円/ 1プログラム)を補助する「セルフ・イノベーション・サポート」制度を設けつつ、場所や時間に制約されることなく学習が可能なオンライン動画学習サービス「Udemy Business」を導入しております。
当社では、人事諸制度の改定を2021年度より段階的に進めてまいりました。社員一人ひとりが自分自身の役割を意識し、互いに尊重・刺激し合い、切磋琢磨しながらよりチャレンジングに課題に取り組める環境の整備を通して、技術立脚型企業への転身を目指してまいります。
職種や部署、等級に拘らず、長期・全社目線でマネジメントを担える優秀な人材を育成・抜擢し、経営の中枢を担えるよう制度改定を行いました。具体的には、部下を持つライン長を管理職として区分を明確化したほか、職責の大きさに基づく処遇の徹底、基幹職登用の早期化などの施策を実行いたしました。
(イ)一般職人事制度改定
生産現場を支える人材を適切に評価・処遇することによる現場競争力の強化、当社が茨城県で進めているひたちなか工場、日立新工場、日立北工場の建設に対応するための人材の確保・育成、シニアをはじめとした多様な人材が活躍できる仕組みづくりなどのために制度改定を実行いたしました。具体的な施策は以下のとおりです。
・ 「総合職」と「業務職」のコース区分の明確化
各コースの役割を明らかにしたうえで、それに応じた適切な評価及び処遇ができる仕組みといたしました。また、業務職から総合職・地域総合職へのコース転換制度を設け、本人の挑戦意欲に応じてチャレンジできる仕組みも整えることで、より自律的なキャリア形成に向けた支援や変革に挑戦する企業文化の醸成を図ってまいります。

・ 「地域総合職」の新設
大幅な人員増が見込まれる茨城県エリアを対象に、当社初となる「地域総合職」コースを設置いたしました。本コースでは勤務場所を茨城県内とし、原則として転居を伴う異動は行いません。IターンやUターンを含め、茨城県内での採用や事業運営の強化につなげてまいります。
・ 定年延長の実施
生産現場の安定操業や技能伝承などの観点から定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、処遇についても60歳時点の給与水準を維持することといたしました。一方で、若手・中堅層にマネジメント機会を付与し、組織を活性化するという観点から、60歳を上限とする役職定年制度を導入いたしました。

当社グループでは、国内外の諸法令の定めに従い、高齢者雇用、障がい者雇用、女性の活躍推進及び外国人の雇用などに取り組むとともに、多様な人材が働きがいを感じながら個々の能力を最大限発揮できる環境の実現を進めております。当社では、多様な働き方のための施策として、在宅勤務制度やコアタイムなしフレックスタイム制の導入、障がい者雇用・定着の推進、男性の育児休業取得支援などに取り組んでおります。また出産や育児に関係する制度では、法定の制度に加え当社独自の制度を設けております。


当社では多様な人材がやりがいをもって働くことができる環境を整備しており、育児休業復帰後の定着率・復職率や再雇用者、障がい者雇用率向上にも取り組んでおります。
当社では女性をはじめとした多様な人材がやりがいを持って働くことができる環境整備を行うことで「人と組織の活性化」を図り、社員がその能力を最大限に発揮できるようにするため、下記のとおり行動計画を策定しております。
当社グループの経営成績及び財務状況に重大な影響を与える可能性がある主要なリスクを以下に記載しております。当社グループでは、事業活動を取り巻く多様なリスクに対して的確な対応を図ることでJX金属グループの経営を支えることを目的に、統合的にリスクを管理するERM(Enterprise Risk Management)を導入しております。特に当社グループにおける重要なリスクに関しては、当社の経営会議において議論・決定し、各リスク所管部署が実施しているリスク対応の状況をモニタリングしております。ERMを運用することで、JX金属グループ2040年長期ビジョンの実現をより確実にすることを目指してまいります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
1.フォーカス事業における競争優位性の喪失リスク
当社では、特にフォーカス事業である半導体材料/情報通信材料セグメントにおいて、顧客との永続的な強い信頼関係を構築することで、顧客要望や最新の開発動向などをいち早く入手し、的確にそれに応え続けることで競争優位性を確保しております。また、そのために、研究開発と先端技術の知的財産権の権利化・第三者による権利侵害の防止、事業運営に必要な人材の採用・育成、複数購買をはじめとするサプライチェーンの強靭化、品質管理体制の強化及び供給責任を果たすための生産能力の拡大等に積極的に取り組んでおります。しかしながら、これらの取組みが奏功しない場合、顧客ニーズの変化や当社が技術革新に乗り遅れること等により顧客要望に十分に応えられないケースが続いた場合、競合他社が低価格で高品質な類似商品を提供し始めた場合、提携やM&Aにより競合他社の競争力が高まった場合、さらに、半導体業界は少数の大手半導体メーカーにシェアが集中しているため、当社グループとかかる大手半導体メーカーとの関係が悪化した場合又は当社グループの製品が標準材料指定を失った場合等には、当社が競争優位性を失い、シェアの喪失や販売マージンの縮小が生じる可能性があります。
現在の製品群が競争優位性を失った場合の対応として、注力領域を定め、新規製品・事業開発の取り組みを進めており、その実現に向けて、社内リソースは元より、当社グループ間の技術のコラボレーション、大学との共同研究及び外部企業とのパートナーシップ等、様々な外部リソースについても積極的に活用しております。しかしながら、新規製品・事業創出に向けた取り組みが、当社の収益基盤に成長するまでには、相応の時間と経営資源の投入が必要となり、また、かかる取組みが奏功する保証はありません。そのため、新規製品・事業が創出できていない状況で、半導体材料/情報通信材料セグメントでの競争優位性を喪失した場合、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
2.中長期事業目標の未達リスク
当社グループは、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして、先端素材で社会の発展と革新に貢献することを目指すべく、2024年5月に中長期の事業戦略及び事業目標を公表いたしました。当該中長期の事業戦略及び事業目標は、半導体市場の成長を中心とする事業環境の見通し、為替動向、金利動向、銅価格の見通し等、策定時点における経済・事業環境の認識を中心とした様々な前提に基づいて策定したものです。しかしながら、半導体をはじめとする先端素材関連市場の成長鈍化や急激な円高進行による外貨建取引の収益減等、経済・事業環境認識の前提が想定どおりとならない可能性を常に抱えております。
加えて、当社は、収益性及び資本効率の改善を目的として、「構造改革プロジェクト」を実行しております。当該プロジェクトにおいては運転資本の改善、設備投資の最適化、拡販・売価見直し及び全社での間接費を含むコストの最適化を進めており、約1,200件の施策を通じて、2024年3月期においては約30億円の営業利益の改善(対2023年3月期実績)、約200億円の運転資本改善(対2023年3月期実績)及び約550億円の投資額削減(対2024年3月期予算)を実現いたしました。2025年3月期においてもさらなる営業利益改善を目指して追加的な施策を実施しており、その効果を当該事業目標の中に織込んでおります。施策の件数や各施策がもたらす財務指標の改善効果については実現可能性や進捗に応じて段階的に管理しております。
このような前提及び施策が想定どおりに実現しない場合には、当該中長期の事業戦略及び事業目標の達成が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
3.市場環境の変化に関するリスク
持続可能な社会の実現に向けて、IT、モビリティ、ヘルスケア、エネルギー、建築など様々な産業でデジタルデータの活用が進展し、各分野に用いられる先端素材のニーズがさらに拡大しております。なかでも半導体市場は、IoT・AI社会の発展や第5世代移動通信システム(5G)の普及、DXの実現に向けたデータ社会への移行が加速するなか、技術革新が続くことで中長期的には更なる成長が見込まれております。当社は、先端素材を通じた社会の発展に貢献することを目指し、半導体メーカーをはじめとする世界各国に存在する顧客に対して製品を製造・販売しておりますが、世界経済の動向や最終製品の需要増減等の要因により、成長の過程で需給バランスが崩れ市場規模が急激に変動することがあります。例えば、半導体市場が縮小した場合や顧客において余剰在庫の調整が生じた場合には、需給バランスの崩れから生産過剰や在庫増加等が発生する可能性があります。また一方では、設備投資の実行タイミングの遅れや、市場の成長規模の見誤りなどにより、需要の増加に対応できない場合には、製品の供給において顧客のニーズに応えることができず、機会損失が生じるなど、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
かかる状況を想定し、当社では、市場動向や顧客の需要動向の調査・分析結果を基に、生産量・在庫量の適正化を図っております。また、製品ラインナップの多様化や生産体制の増強に向けて時機をとらえた柔軟な設備投資判断に努めております。しかしながら、将来において当社の想定を超える市場環境の著しい変化が起きた場合や設備投資について当初想定していた効果が得られなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、先端素材の製造・開発を成長戦略のコアとして位置づけ、そこに良質な原料を供給するため、資源開発から製錬・リサイクル事業を一貫して展開しております。製品の販売や原材料及び資材の購入は、その多くを米国ドルや現地通貨建てで行っております。そのため、金属価格や為替変動等のリスクにさらされており、先物ヘッジ取引の活用等によるリスク低減に努めております。また、当社の主力製品である半導体用スパッタリングターゲット及び圧延銅箔は銅価の変動やその他のコストの増加分を販売価格へ転嫁するなどの施策を進めることによって原材料価格の変動に高い耐久性を備えているものと当社は判断しており、原材料である銅価が変動した局面においても安定した収益を維持してまいりました。しかしながら、金属価格及び為替等の急激かつ大幅な変動が発生した場合には、その影響を顧客に転嫁できず、また、収益性が低下する可能性があります。また、当社の製錬・リサイクル事業には一定の固定費がかかることからコストの削減には限界があるため、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
4.M&Aや事業提携に関するリスク
当社は、事業の成長を加速させるうえで有効な手段となる場合や競争優位性に寄与する場合には、必要に応じてM&Aや事業提携(出資、合弁及びスタートアップ投資等を含む)を実施しております。これらの実施に当たっては、相手企業の財務状況や事業内容について可能な限り情報収集と分析を踏まえた事前審査を行っております。しかしながら、事前審査にも関わらず関連するリスクや法務、コンプライアンス、規制上の問題、潜在的な負債について適切に検出又は正確な評価を行えず、また、市場環境の将来的な著しい変化、取得した事業との統合や協業の不奏功、対象会社の経営陣・従業員の流出等の様々な要因により、事業を計画どおりに展開することができない場合には、投下資金の未回収等、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは世界の各地域に事業拠点を有しており、グローバルなネットワークを構築しております。資源事業においては南米チリのカセロネス鉱山をはじめ銅やレアメタル鉱山への出資、探鉱、開発を行っているほか、金属・リサイクル事業やタンタル・ニオブ事業においても、世界各国から原料を調達し、半導体材料や情報通信材料に不可欠な原料のサプライチェーン強化に向けた取り組みを進めております。
近年、将来における資源枯渇への危機意識や資源需給の不均衡に加え、資源国のロイヤリティ課税や高付加価値化政策の導入といった戦略物資化(いわゆる資源ナショナリズム)や紛争鉱物問題、需要国におけるリサイクル原料などの囲い込みの動きなどが進んでおります。このような動きがさらに進むと、原料の調達がより困難になる可能性があります。こうした原料調達リスクに加え、国際的な政治対立の深まり、紛争又はテロ行為の発生、各地域の政治・経済情勢、労働力の確保、労働条件及び労働問題、サプライチェーンの脆弱性、為替レートの変動、輸出入の制限や外資規制を含む法規制、税制、法慣行、当局による法令等の運用及びその変更、商慣習及び文化の差異、言語の差異、訴訟の多発、現地事業のモニタリングの困難性等の想定困難な課題に対応する必要があり、これらの課題に適時適切に対応できない場合には、各地域において当社グループが期待する成長を実現できず又は当社製品のサプライチェーンが寸断される結果、当社グループの事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
6.自然災害リスク
近年の異常気象により自然災害は激甚化する傾向にあります。当社グループは、国内外に多数の事業拠点とグループ会社を有し、グローバルに事業活動を展開しております。地震、津波、洪水、大雪等の規模が極めて大きい自然災害が発生した場合、社会インフラや経済活動の停止によるサプライチェーンの寸断だけではなく、当社資産の甚大な被害の発生、工場閉鎖等により、長期にわたって、顧客への供給遅延や供給停止が発生し、収益を悪化させる可能性があります。また、従業員の被災により、人命に関わる事態となる可能性があります。このような事態に備え、当社グループでは、人的・物的被害の最小化及び早期復旧を図るための事業継続計画を策定し、定期的な各種訓練と、その結果に基づく改善を継続的に行っております。しかしながら、当社の想定を遥かに超える被災状況に陥り、早期復旧が困難な場合には、当社グループの事業継続に支障をきたす可能性があります。
7.感染症流行リスク
新型コロナウイルスの発生時には、JX金属グループ感染症対策基本規則及び感染症対応マニュアルを定め、政府・官公庁・地方自治体等の公的機関等、適切と考えうる国内外の情報を収集し、さらに、基本方針、実施する対策、出社方針・勤務体制の変更、感染した場合の行動等を適宜従業員に対して周知徹底いたしました。上記のとおり、感染症流行時には、適切な対応を実施し、当社グループの事業運営に大きな影響を発生させないよう努めております。しかしながら、将来において予期せぬ強毒性を有する又は感染力の高い新たなパンデミックが発生した場合には、拠点地域での人流の抑制や既存のサプライチェーンの寸断が発生する可能性があります。また、当社従業員が当該感染症にり患し、生産拠点での必要な人員を確保できない場合、当社グループの事業継続に支障をきたす可能性があります。
8.ESGに関するリスク
近年、ステークホルダーから企業に対して、脱炭素・循環型社会への貢献、生物多様性や水資源の保全、人権の尊重等、ESG各分野に対する取り組みが求められております。当社グループでは、長期ビジョンにおいて、持続可能な社会の実現に貢献することを打ち出し、経営方針としてESGを重点課題に定め、その中でも特に優先的に取り組むべき6つのテーマをマテリアリティとして特定し、各種施策の推進・対応を積極的に進めております。しかしながら、将来においてステークホルダーからの要請の厳格化や諸外国の規制強化等が生じた場合には、これに対応するために追加的な投資が必要となるほか、十分な対応が取れない場合には、顧客との取引関係の解消、操業の縮小に追い込まれる等、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が発生する可能性があります。また、当社グループのブランドに対する社会的信用の低下につながる可能性があります。
9. 人事リスク
少子高齢化により国内労働人口が減少するなか、現役世代、特に10-30代の働き方への価値観は、急激に変化かつ多様化しております。また、海外で主流だったキャリア志向は、国内にて近年急速に広く定着したものと認識しております。当社では、人材確保に向けて、人事制度の見直しによる処遇改善により、雇用市場における競争力を高める取り組みや、自己申告に基づく柔軟な配置転換の実施等、事業環境の変化に対応できる組織風土を醸成する取り組みを進めております。しかしながら、当社が、将来的な労働市場の変化に十分に対応できない場合、従業員が当社で働く魅力は相対的に低下し、離職者が増加する可能性があります。また当社が求めるあらゆる人材の層において、新規採用者の確保が困難となることが想定されます。さらに、人員の不足が長期にわたり継続する場合には、事業運営に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が発生する可能性があります。
10. 労務リスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、国内外に多くの従業員を抱えていることから、各国の関連法令、ルール等の定めにしたがって、各種人事制度と内部通報制度を整備するとともに、役員・従業員向け教育を充実することで、コンプライアンス知識や意識の向上を図っております。しかしながら、それらの制度設計やその運用が、将来において関連法規の予期せぬ変更に対応できない場合、当局から課徴金の支払いや操業停止等の行政処分を受ける可能性があります。また、不適切な労働時間の管理による長時間労働や、モラルの欠如による各種ハラスメント行為、海外の労働慣習からの逸脱行為等が発生した場合、従業員の心身の健康が損なわれたり、人材の流出や従業員又は労働組合との間の紛争に発展することにより、当社グループの財政状況に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
11. 内部統制に関するリスク
当社グループは、業務の効率性と適正性を十分に確保するための内部統制システムを、取締役会の監督のもと、整備・運用しております。しかしながら、当社及びグループ各社において、取り組みの範囲を超える予期せぬ事態により、内部統制システムが有効に機能せず、法令・規則違反、巨額な損失リスクの顕在化(契約違反による損害賠償、役員・従業員等の不正の誘発などを含む)、ディスクロージャーの信頼性の毀損等に発展した場合、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
12. 情報セキュリティリスク
サイバー攻撃や誤操作、内部不正により、当社や取引先の情報資産が流出・毀損し、生産・事業運営の停止や、顧客・サプライチェーンへの深刻な影響が発生する可能性があります。当社グループでは、ISO/IEC27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステムを導入し、サプライチェーン全体における情報セキュリティの強化を推進するとともに、役員・従業員等の情報セキュリティ意識向上に向けて研修を実施することで、情報資産を確実に保護する体制を整備し継続的に改善しております。しかしながら、サイバー攻撃や産業スパイ等による機密情報を狙う手口は巧妙化しており、当社グループの取り組みの範囲を超える予期せぬ事態により、個人情報やその他の情報流出事故等が発生した場合、行政処分による課徴金や刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等を課せられ、当社グループの財政状況に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
13. 製品品質リスク
当社グループは、国内外生産拠点において、国際品質マネジメント規格や各業界で求められる基準に従い、多様な製品の品質マネジメントを実施しております。また、独自に保有する品質技術や過去から蓄積する品質トラブルデータを活用し、製品の企画、設計、試作、製造の各段階での設計審査、内部監査、サプライヤーとの協力関係構築・品質監査・指導、工程管理等を通じて製品の信頼性や安全性を十分に確保するため、品質管理体制の構築を図っている他、各拠点における検査自動化、人材育成を継続的に推進しております。
しかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超える予期せぬ事態により、品質上の不具合(規制物質含有を含む)や不正が発生した場合、又はかかる不具合等によって製品の納入に遅延が発生した場合、回収コストや賠償費用が発生し、当社グループの財政状況に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
14. 環境問題に関するリスク
当社グループの事業は、国内外で様々な環境関連法令の適用を受けており、それらの法令に基づき、環境保全活動を行っております。
子会社であるグールド・エレクトロニクス社(米国法人、以下、「グールド社」という。)は、過去の事業において生産拠点を展開していた米国内の地域における環境問題に関連して、米国スーパーファンド法等の環境法令に基づき特定のサイトについて潜在的責任当事者として浄化作業を中心とする環境対策等に関する責任の対象とされております。同社の最終的な負担額は、地域指定の原因となった物質の量及び性質、他の潜在的責任当事者の総数及びその財政状態、対応工事の方法及び技術、環境法令の改正、物価の動向など多くの要因に左右され、相応に多額となる可能性があります。グールド社は、上記に関しては、合理的な見積りに基づき引当計上を行っておりますが、上記要因により実際の負担額が引当額を上回り、結果として、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは長年の事業活動の結果、全国各地に休廃止鉱山を所有しております。鉱山保安法に基づき、それらの休廃止鉱山の坑廃水処理などの活動を実施しておりますが、関連法令の改正や自然災害等が発生した場合には、休廃止鉱山の管理に要する費用が変更となる可能性があります。上記負担額に関しては、合理的な見積りに基づき引当計上を行っておりますが、上記要因により実際の負担額が引当額を上回る可能性があり、この場合、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が生じる可能性があります。
当社グループの事業は、日本及び海外各国・地域の様々な法規制の対象となっております。法規制には、環境法、労働法、税法、輸出入関連法、個人情報保護関連法、経済安全保障に関連する規制等に加えて、事業活動を行うために必要とされる様々な許認可があります。これらの法律や規制を遵守しなかった場合、罰金・賠償金を含む罰則が課される可能性や当社の社会的信用の低下を招く可能性があります。さらに、新たな法律や行政命令を含む規制の導入、又は裁判所や規制当局による既存の法律や規制に係る解釈・運用の変更がなされた場合、当社グループの事業活動が制限される、規制遵守のためのコストを増加させるなど、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が生じる可能性があります。
また、当社グループの日本及び海外各国・地域における事業活動が、訴訟、紛争、行政手続きを含むその他の法的手続(知的財産権、製造物責任、労働等に関する紛争等を含む)の対象になることがあります。子会社であるグールド社においては、過去に事業を展開していた一部の米国内指定地域について、米国スーパーファンド法等の環境法令に基づく環境対策等に係る責任の有無を、係属中の訴訟等において争っております。加えて、過去にグールド社と一定のかかわりがあった会社が販売した製品が原因でアスベスト等による健康被害を被ったとして個人から損害賠償を求められている訴訟にも継続的に対応しております。グールド社においては、このような訴訟が本書提出日現在においても複数係属しており、また、同様の訴訟が将来発生する可能性もあると認識しております。
かかる訴訟は不確実性を伴うことからその帰結を合理的に予測することは困難であるため、判決等によって生じうる環境対策費用及び賠償金等を含む訴訟関連費用について、グールド社は「14.環境問題に関するリスク」に記載の引当に計上しておりません。
そのため、このような訴訟対応の過程で、グールド社において多額の環境対策費用や賠償金等が発生した場合には、結果として、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
16. ENEOSホールディングス(親会社)との関係に関連するリスク
当社親会社であるENEOSホールディングスは、本書提出日現在における当社の発行済株式総数の100%を保有しており、当社は同社の完全子会社に該当しておりますが、同社の当社株式保有比率は、当社の新規上場に伴う株式売出しにより過半数を下回る見込みです。
かかる状況のもとで当社グループの経営意思決定の透明性・公正性を確保すべく、当社は取締役11名のうち独立性のある社外取締役を5名選任しているほか、委員の過半数かつ議長を独立性のある社外取締役で構成する指名・報酬諮問委員会を設立し、当社取締役の選解任・役員報酬に関連する重要事項について協議することとしております。なお、当社は本書提出日時点においてENEOSホールディングスより塩田 智夫を監査等委員である取締役として選任しておりますが、当該人事は事業運営、財務・会計及びサステナビリティ等の分野における同氏の知見を活かして、当社の取締役会の経営機能の一層の強化を図ることを目的としたものであります。また、当該人事については企業経営の健全性及び少数株主保護の観点から支障がないことを指名・報酬諮問委員会に諮問のうえで決定しております。
さらに、当社グループの経営において、事前に同社の承認を要する事項も定めていないことから、以上を踏まえれば、当社株式上場後において、当社グループの事業運営の独立性は確保されると判断しておりますが、同社は議決権の行使を通じて当社グループの経営判断に影響を及ぼしうる立場にあることから、同社利益が他の株主の利益と一致しない可能性があります。
親会社であるENEOSホールディングスは、以下「グループ体制図」のとおり、「石油製品ほか」、「機能材」、「電気」、「再生可能エネルギー」、「石油・天然ガス開発」及び「金属」の6つのセグメントを定義し、グループ各社に権限委譲を進めることにより自立性・機動性・独立性を高めた業務執行を2024年4月より開始しております。各セグメントは事業上の棲み分けがなされており、本書提出日現在、当社グループが推進する金属事業の展開に影響を及ぼす競合等は生じておらず、親会社グループにおけるそのような意思決定の公表もありません。
当社グループは「JX金属グループ2040年長期ビジョン」に基づき半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針としており、本書提出日現在において親会社グループ内の他のセグメントと競合する事業を営むことは想定しておりませんが、将来において親会社グループにおける経営方針及び事業戦略等の変更が生じた場合には、グループ内における競合が生じるなど、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が生じる可能性があります。
(グループ体制図)

2024年3月期における、当社グループと親会社グループとの取引は以下のとおりです。重要性を鑑み、取引金額が1億円以上のものに絞って記載しております。
親会社グループとの主な取引(2024年3月期)
(注) 1.製品の販売、資材の購入、運賃の支払、保険料の支払、業務の受託、業務委託料の支払、資金の借入、利息の支払、債務の保証については、独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っております。
2.ネット借入、貸付残高を記載しています。
3.以下に記載の取引については、本書提出日時点で解消しております。
・ENEOSホールディングスに対する経営管理料の支払について、2025年3月期の上半期における支払いをもって解消
・ENEOS USA Inc.に対する短期貸付金及び同社からの利息の受取、ENEOSファイナンス㈱からの短期・長期借入金及び同社に対する利息の支払並びにJX Nippon Finance Netherlands B.V.に対する短期貸付金、利息の支払及び同社からの利息の受取について、ENEOSグループ金融から離脱し、当社を頂点とするグループ金融制度に移行したことに伴って解消
当社グループでは、株式上場後においても健全な取引を実施し少数株主の利益に十分配慮すべく、関連当事者との取引を行うに当たっては、関連当事者取引規則に基づく取引の統制を行っております。具体的には、各取引について合理性及び取引条件の妥当性があることを検証しており、これらが担保される場合に限り取引を実施することとしております。また、検証された取引条件どおりに取引が実施されている旨、内部監査や監査等委員会監査により事後的に確認することとしております。もっとも、ENEOSグループとの間の潜在的な利益相反を適切に管理できない場合には、当社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、2024年3月期の期末配当に関して、上場後の資本構成も踏まえて検討・決定することを目的として期末後の定時株主総会までに実施しておりませんでした。「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載している中長期目標への影響等を考慮したうえで、上場企業に求められている資本コストを意識した経営の実現に向けて高いROE水準を維持・向上にもつながることから、2024年11月29日を効力発生日として株主であるENEOSホールディングスに対する配当を実施いたしました。配当の実施に当たっては、上記関連当事者取引規則に基づく協議・決議を事前に行っております。 配当の内容及び方針については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご確認ください。
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
世界経済は、欧米を中心としたインフレ圧力に対する金融引き締めに伴う景気減速懸念や、中国のゼロコロナ政策、不動産問題等による景気回復遅れ等を受け、回復ペースは鈍化しています。また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加えイスラエルとハマスの軍事衝突も発生し、世界経済の下振れリスクはより一層強まりました。
一方、我が国の経済については、物価上昇による家計や企業への影響や世界経済の下振れ懸念はあるものの、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う行動制限の解除を受け、経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復が継続しました。
銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり407セントから始まり、期末には396セント、期平均では前期比9セント安の379セントとなりました。金融引き締めによる世界的な景気減速懸念や中国の景気回復の遅れ等の影響を受け上値が重い状態が続いたものの、銅鉱石の供給不安等も影響し、堅調に推移しました。
円の対米ドル相場は、日米の金利差拡大を背景とする円安が進行し、11月には151円台の水準に達し、その後12月に142円程度まで揺り戻すも、期末にかけて再び151円台まで円安が進行しました。期平均では前期比9円安の145円となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,325,887百万円となり、前連結会計年度末に比べ505,670百万円減少しました。主な内容は、PPCの持分法適用会社化に伴う連結除外による棚卸資産の減少によるものです。
負債合計は605,085百万円となり、前連結会計年度末に比べ623,980百万円減少しました。主な内容は、PPCの持分法適用会社化に伴う連結除外による買掛金の減少や、MLCCの株式一部譲渡に対する受取額を借入金返済に充当したことによる借入金の減少です。
資本は720,802百万円となり、前連結会計年度末に比べ118,310百万円増加しました。主な内容は利益剰余金の増加によるものです。なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比20.5ポイント増加し47.3%となりました。
当連結会計年度における当社グループの売上高は、MLCCの株式譲渡に伴う連結範囲からの除外、エレクトロニクス関連市場のサプライチェーンにおける在庫調整に起因する減販等を主因として、前連結会計年度比7.7%減の1,512,345百万円となりました。営業利益については、減収による影響はあるものの、円安による為替評価益、MLCC株式の譲渡決定に伴って前年度に計上した減損損失の反転等により、前連結会計年度比13,247百万円増益の86,172百万円となりました。税引前利益は前連結会計年度比15,387百万円増益の78,714百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度比65,694百万円増益の102,624百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
生成AI向け高性能半導体用途の需要増加はあるものの、スマートフォンやPC等の民生用電子デバイスの需要減少に伴うサプライチェーンにおける在庫調整が継続したことを要因として、主要製品である半導体用スパッタリングターゲットを中心に製品販売量が前連結会計年度を下回り、減益となりました。
半導体材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比16.7%減の123,151百万円となりました。営業利益は前連結会計年度比7,843百万円減益の26,410百万円となりました。
スマートフォン需要の回復の遅れや中国の景気減速等によるサプライチェーンにおける在庫調整の継続を主因として、主要製品である圧延銅箔及びチタン銅を中心に製品販売量が前連結会計年度を下回りました。また、JXPT株式の一部売却に伴い資産及び負債を売却コスト控除後の公正価値で測定したことにより減損損失を5,315百万円計上しました。これらを主因として、前連結会計年度に比べて減益となりました。
情報通信材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比15.6%減の188,072百万円となりました。営業利益は前連結会計年度比20,479百万円減益の933百万円となりました。
MLCCの株式譲渡による連結除外による利益剝落や、PPCの株式一部譲渡による公正価値評価に伴う損失を計上したものの、円安による為替評価益やMLCC株式の譲渡決定に伴って前年度に計上した減損損失の反転により増益となりました。
基礎材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比6.0%減の1,227,002百万円となりました。営業利益は前連結会計年度比48,163百万円増益の77,240百万円となりました。
当中間連結会計期間末の総資産は1,276,455百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,432百万円減少しました。主な内容は、グループ通算制度に基づき親会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収金を回収し借入金の返済に充当したことによるものです。
負債合計は515,993百万円となり、前連結会計年度末に比べ89,092百万円減少しました。これは、2024年7月に実施したMLCC株式の一部譲渡に対する受取額を借入金返済に充当したことによる借入金の減少等の影響によるものです。
資本は中間利益の計上等により760,462百万円となり、前連結会計年度末に比べ39,660百万円増加しました。なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比4.2ポイント増加し51.5%となりました。
当中間連結会計期間の連結売上高は、円安基調の継続、金属価格の高止まり等の増収要因はあったものの、MLCC及びPPCの一部株式譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、前年同期間比56.7%減の337,011百万円となりました。また、営業利益は、前年同期間比5,696百万円減の68,120百万円となりました。税引前中間利益は、前年同期間比3,569百万円減の65,968百万円となり、法人所得税費用21,802百万円を差し引いた中間利益は、前年同期間比8,665百万円減の44,166百万円となりました。なお、中間利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する中間利益が36,730百万円、非支配持分に帰属する中間利益が7,436百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
半導体材料セグメントについては、サプライチェーン上の在庫正常化や生成AI向け高性能半導体用途の需要拡大による増販、円安を主因に、前年同期間比増益となりました。
半導体材料セグメントの当中間連結会計期間における売上高は、前年同期間比28.5%増の73,642百万円となりました。営業利益は前年同期間比3,028百万円増益の15,774百万円となりました。
情報通信材料セグメントについては、サプライチェーンにおける過剰在庫の調整がほぼ終了し、スマートフォンやサーバ用途の増販を主因に、前年同期間比増益となりました。なお、2024年8月にタツタ電線株式会社の公開買付けが成立し、当社の連結子会社となりました。
情報通信材料セグメントの当中間連結会計期間における売上高は、前年同期間比20.9%増の110,318百万円となりました。営業利益は前年同期間比14,287百万円増益の14,630百万円となりました。
基礎材料セグメントについては、円安や銅価上昇に伴う増益要因はあるものの、2023年7月のMLCC株式の譲渡により生じた為替評価益の反転や、2024年3月のPPCの一部株式譲渡に伴う利益剥落等を主因に、前年同期間比減益となりました。
基礎材料セグメントの当中間連結会計期間における売上高は、前年同期間比75.9%減の154,481百万円となりました。営業利益は前年同期間比21,884百万円減益の42,775百万円となりました。
当第3四半期連結会計期間末の総資産は1,257,926百万円となり、前連結会計年度末に比べ67,961百万円減少しました。主な内容は、グループ通算制度に基づき親会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収金を回収し借入金の返済に充当したことによるものです。
負債合計は556,608百万円となり、前連結会計年度末に比べ48,477百万円減少しました。主な内容は、2024年7月に実施したMLCC株式の一部譲渡に対する受取額を借入金返済に充当したことによる借入金の減少です。
資本は701,318百万円となり、前連結会計年度末に比べ19,484百万円減少しました。主な内容は親会社への配当を実施したこと等による利益剰余金の減少によるものです。なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.7ポイント増加し48.0%となりました。
当第3四半期連結累計期間における当社グループの売上高は、円安基調の継続、金属価格の高止まり等の増収要因はあったものの、MLCC及びPPCの一部株式譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、前年同期間比54.0%減の516,921百万円となりました。営業利益はPPCの株式一部譲渡に伴う利益剥落等があったものの、スマートフォンやサーバ用途製品における主要製品の増販等により、前年同期間比3,019百万円増益の86,170百万円となり、税引前四半期利益は前年同期間比4,786百万円増益の82,922百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期間比4,354百万円増益の46,029百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
当第3四半期連結会計期間にTANIOBIS GmbHにてのれんの減損損失を計上したものの、好調なAI関連投資を反映した高性能半導体やデータセンター向けの半導体用スパッタリングターゲット製品需要拡大を背景とした増販及び円安を主因に増収となり、前年同期間並みとなりました。
半導体材料セグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は、前年同期間比23.5%増の110,866百万円となりました。営業利益は前年同期間比575百万円減益の20,209百万円となりました。
以下に、2020年3月期の月平均販売数量を100として指数化した、当社半導体用スパッタリングターゲットの販売量の推移を示します。

当第3四半期連結会計期間にJX METALS PHILIPPINES, Inc.の電解銅箔設備の減損損失を計上したものの、サプライチェーンにおける過剰在庫の調整が終了したことによる、スマートフォンやサーバ用途製品における主要製品の増販を主因に、前年同期比で増益となりました。なお、2024年8月にタツタ電線株式会社の公開買付が成立し、同社は当社の連結子会社となり、同年11月に完全子会社となりました。
情報通信材料セグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は、前年同期間比33.9%増の186,873百万円となりました。営業利益は前年同期間比21,516百万円増益の20,875百万円となりました。
以下に、2020年3月期の月平均販売数量を100として指数化した、当社圧延銅箔及びチタン銅の販売量の推移を示します。

円安や銅価上昇に伴う増益要因はあるものの、2023年7月のMLCCの株式譲渡により生じた為替評価益の反転や、2024年3月のPPCの株式一部譲渡に伴う利益剥落等を主因に前年同期間比で減益となりました。
基礎材料セグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は、前年同期間比75.6%減の222,364百万円となりました。営業利益は前年同期間比17,520百万円減益の50,787百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ17,996百万円減少し、36,779百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2,149百万円増加の38,400百万円の収入となりました。当連結会計年度における主なキャッシュ・フローの収入要因は、税引前利益や利息及び配当金の受取額、運転資金の減少等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の71,283百万円の支出に対し、主として子会社株式の一部売却による収入や短期貸付金の減少等により90,241百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の51,320百万円の収入に対し、主として短期及び長期の借入金の返済や非支配持分への配当金支払により154,360百万円の支出となりました。
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ29,152百万円増加し、65,931百万円となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間に比べ207,626百万円増加の130,669百万円の収入となりました。当中間連結会計期間における主なキャッシュ・フローの収入要因は、税引前中間利益や法人所得税の還付、利息及び配当金の受取等によるものです。法人所得税の還付については、グループ通算制度に基づき親会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収金を回収したものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間に比べ79,204百万円減少し、3,872百万円の収入となりました。これは、有形・無形固定資産の取得やタツタ電線株式会社の子会社化のための株式取得等の支出要因があったものの、MLCC株式の一部譲渡等の収入要因が上回ったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間の48,134百万円の支出に比べ57,155百万円支出が増加し、105,289百万円の支出となりました。これは、主として短期借入金の返済によるものです。
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ20,749百万円増加し、57,528百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間に比べ154,529百万円増加の187,031百万円の収入となりました。当第3四半期連結累計期間における主なキャッシュ・フローの収入要因は、税引前四半期利益や法人所得税の還付及び配当金の受取等によるものです。法人所得税の還付については、グループ通算制度に基づき親会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収金を回収したものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間の76,981百万円の収入に対し、持分法で会計処理されている投資の一部売却による収入があったものの有形固定資産の取得や連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得等により6,957百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期間の149,872百万円の支出に対し、主として短期借入金の返済や配当金支払により160,765百万円の支出となりました。
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しております。
第22期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。
第23期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)
当中間連結会計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。
2.第23期中間連結会計期間の基礎材料セグメントにおける販売実績は、当連結会計年度対比で大幅に下落しております。これは、2024年3月31日をみなし売却日として当社が67.8%を保有していたPPC株式の持分のうち20%を丸紅株式会社に譲渡したことに伴いPPCが当社の持分法適用会社となり、以降の基礎材料セグメントにおける販売実績にPPCの事業活動の影響が反映されなくなったことによるものです。
第23期第3四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年12月31日)
当第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。
2.第23期第3四半期連結累計期間の基礎材料セグメントにおける販売実績は、当連結会計年度対比で大幅に下落しております。これは、2024年3月31日をみなし売却日として当社が67.8%を保有していたPPC株式の持分のうち20%を丸紅株式会社に譲渡したことに伴いPPCが当社の持分法適用会社となり、以降の基礎材料セグメントにおける販売実績にPPCの事業活動の影響が反映されなくなったことによるものです。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられる様々な要因を考慮したうえで、見積り及び判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。
(売上高)
MLCCの株式譲渡に伴う連結範囲からの除外、エレクトロニクス関連市場のサプライチェーンにおける在庫調整に起因する減販等を主因として、当社グループの売上高は1,512,345百万円(前期比7.7%減)となりました。
(営業利益)
売上高の減少、特にエレクトロニクス関連市場のサプライチェーンにおける在庫調整に起因する減少等により売上総利益が減少しました。一方で、円安による為替評価益や前期のMLCCの株式譲渡決定に伴う公正価値評価損失の反転、販売費及び一般管理費の減少により、営業利益は86,172百万円(対売上高比率5.7%)となりました。
(税引前利益)
受取利息や受取配当金、為替差益、デリバティブ利益等の金融収益の発生(3,135百万円)及び支払利息や為替差損、デリバティブ損失等の金融費用の発生(10,593百万円)等により、当連結会計年度の税引前利益は78,714百万円(対売上高比率5.2%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
法人所得税費用の戻りが36,173百万円計上となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は102,624百万円(対売上高比率6.8%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(売上高)
好調なAI関連投資を反映した高性能半導体やデータセンター向けの製品需要拡大やエレクトロニクス関連市場のサプライチェーンにおける在庫調整の終了等の増収要因はあったものの、MLCC及びPPCの株式一部譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、337,011百万円(前年同期比56.7%減)となりました。
(営業利益)
PPCの株式一部譲渡に伴う利益剥落等により売上総利益は減少した一方で、エレクトロニクス関連市場のサプライチェーンにおける在庫調整の終了によるスマートフォンやサーバ用途製品における主要製品の増販、販売費及び一般管理費の減少等により、営業利益は68,120百万円(対売上高比率20.2%)となりました。
(税引前中間利益)
受取利息や受取配当金、為替差益、デリバティブ利益等の金融収益の発生(1,063百万円)及び支払利息や為替差損、デリバティブ損失等の金融費用の発生(3,215百万円)等により、当中間連結会計期間の税引前中間利益は65,968百万円(対売上高比率19.6%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する中間利益)
法人所得税費用が21,802百万円計上となり、親会社の所有者に帰属する中間利益は36,730百万円(対売上高比率10.9%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(売上高)
円安基調の継続、金属価格の高止まり等の増収要因はあったものの、MLCC及びPPCの株式一部譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、516,921百万円(前年同期比54.0%減)となりました。
(営業利益)
売上高の減少、PPCの株式一部譲渡に伴う利益剥落等により売上総利益が減少しました。一方で、スマートフォンやサーバ用途製品における主要製品の増販、販売費及び一般管理費の減少等により、営業利益は86,170百万円(対売上高比率16.7%)となりました。
(税引前四半期利益)
受取利息や受取配当金、為替差益、デリバティブ利益等の金融収益の発生(1,704百万円)及び支払利息や為替差損、デリバティブ損失等の金融費用の発生(4,952百万円)等により、当第3四半期連結会計期間の税引前四半期利益は82,922百万円(対売上高比率16.0%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する四半期利益)
法人所得税費用が29,068百万円計上となり、親会社の所有者に帰属する四半期利益は46,029百万円(対売上高比率8.9%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社はENEOSグループ金融制度に基づいてENEOSファイナンス株式会社等からの借入れを行っておりましたが、2024年9月までに外部金融機関への借換えを完了することによってこれを離脱し、当社独自のグループ金融制度に移行しております。
当該制度の下、当社グループでは、運転資金及び設備投資等の資金需要に対して、自己資金や必要に応じ金融機関からの借入等で資金調達を行っております。また、子会社の資金調達については、グループ資金の効率性確保の観点から原則として当社が実施し、当社から当社グループ子会社に貸付を実施いたします。当社グループでは、グループ資金を当社が集中して管理し、グループ全体としての資金の効率的な調達・運用を実現しております。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
当社と三井金属鉱業株式会社との合弁会社であるPPCの発行済株式のうち20%を丸紅株式会社へ譲渡することについて約したものです。これにより、当社のPPCに対する持分比率は47.8%となり、PPCは当社の連結子会社から持分法適用会社になりました。
PPCにおける銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。丸紅株式会社がPPCの株主になることに伴い、新たに4社間で「株式譲渡契約書」と同締結日にて「合弁契約書」を締結しました。
当社のオランダ子会社であるNippon Mining of Netherlands B.V.の保有するNippon LP Resources B.V.の発行済株式の13.06%を丸紅株式会社のオランダ子会社であるMarubeni LP Holding B.V.へ譲渡することについて約したものです。これにより当社が間接的に15.79%を保有するロス・ペランブレス銅鉱山権益のうち3.27%をMarubeni LP Holding B.V.に譲渡し、当社が間接的に保有する同鉱山権益は12.52%になりました。
当社は、当社とLundin社間で2023年7月13日に締結したチリ・カセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCCに関する「Shareholders Agreement(株主間契約)」に基づき、Lundin社に対して、同日の1年後から5年の間においてMLCC株式の19%を追加取得できるコール・オプションを付与しておりました。本株式譲渡契約書は、Lundin社がこの権利を早期行使することについて約したものです。これにより、当社からMLCC株式の19%をLundin社の完全子会社であるLMC Caserones SpAに譲渡し、当社からLundin社(当該完全子会社を含みます。)へのMLCC株式の譲渡割合は、2023年7月13日付で譲渡した51%と合わせて、70%となりました。
当社グループは、長期ビジョンとして掲げる「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身を実現するため、半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントからなるフォーカス事業を成長戦略のコアと位置づけ、研究開発活動を拡大しております。また、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発にも取り組んでおります。 新規事業創出においては、次世代半導体材料、フォトニクス材料を始めとする先端素材分野を中心に事業ポートフォリオの拡充を目指しております。特に、データセンターやAI搭載IoTデバイスに使用される高性能半導体の製造に必要な次世代半導体材料の開発に注力をしており、結晶材料では当社のコア技術である高純度化、組成制御、温度制御の技術を駆使し、データセンター数の増加やモバイル通信量の増加、センシング技術の高度化等に対応するための高品質な結晶材料を供給する体制構築を図っております。また、次世代半導体製造プロセスでの使用が期待されるCVD・ALD用材料は、生産能力の増強とともに新規生産プロセスの開発、新規材料開発の強化を行っております。
研究開発体制は、既存製品の改良やプロセスの改善など既存事業の強化を行う当社各事業部の開発部門と、技術立脚型新規事業の創出を推進する技術本部から成り立っております。技術本部では、全社的な技術戦略の企画・立案を所管する機能や、開発段階のテーマを事業化に向けて管理する機能、当社グループのコーポレートラボの位置づけとして、先端素材や資源開発・製錬・リサイクルに関する次世代技術の研究開発を行う機能を担っております。
当連結会計年度に発生した研究開発費は
報告セグメントごとの研究開発活動の状況は次のとおりです。
高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めております。半導体用スパッタリングターゲット、酸化物、窒化物スパッタリングターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリングターゲットや、化合物半導体、その他電子材料を中心とした新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでおります。
特に、生成AI用などの微細な先端半導体に用いられるスパッタリングターゲットにおいては、更なる低パーティクル化の取り組みとともに、電気抵抗や拡散バリア性の面で新たな合金開発を進めております。また、これらの半導体を格納するパッケージにおいてはインターポーザなど導通部分が増えるため、電気特性を損なわないよう、半導体めっき液に使われる金属原料についても、高純度化や誤作動の要因となるα線の削減に取り組んでおります。この結果、当連結会計年度に発生した当セグメントに係る研究開発費は
精密な組成制御を実現する溶解鋳造技術、独自の結晶制御を可能にする圧延加工技術並びにユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能伸銅品の開発を進めております。半導体リードフレームやカメラモジュール用スプリングの次世代材料として、チタン系及びコルソン系新規銅合金の開発に取り組んでおります。また、今後の需要増加が見込まれるロボットや5G・6Gといった高速移動通信に使われるプリント配線板材や電磁波シールド材の用途に、屈曲性、高周波特性、微細回路形成性に優れる圧延銅箔の開発に取り組んでおります。マテリアルインフォマティクス(シミュレーション、データ解析等)の活用や外部研究機関との連携を通し、開発のスピードアップを推進しております。この結果、当連結会計年度に発生した当セグメントに係る研究開発費は
サステナブルな資源開発に向け、環境負荷低減を目的とした鉱山操業におけるCO2排出量削減の技術調査・開発を進めております。また、今後先端素材分野での需要拡大が期待されるレアメタルのサプライチェーン確保・責任ある原料調達への貢献のため、鉱石からの回収技術の評価・開発を進めております。
銅製錬事業においては、2040年にリサイクル原料処理比率を50%とするグリーンハイブリッド製錬構想を掲げており、リサイクル原料を効率的に処理するための前処理プロセスを含む新規の製錬技術について試験研究を進めております。また、貴金属及びレアメタル等の回収率アップとともに、不純物許容度の高い精製プロセスの実現に向け技術開発を進めております。この結果、当連結会計年度に発生した当セグメントに係る研究開発費は
次世代半導体材料であるCVD・ALD用材料、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、電池材料の開発等について、当社事業部、関係会社等を跨ぎグループ横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しております。
CVD・ALD用材料関連では、生成AIの進化によりデータセンターやAI搭載IoTデバイスの市場が拡大し、これらの機器に必要とされる高性能半導体には、高集積化を実現するために更なる微細化や多層化が求められております。これに伴いCVD・ALDによる薄膜形成のニーズが高まっていることから、CVD・ALD用材料の量産ラインを構築し、今後さらに生産能力を増やすため、新規プロセス開発や新規材料開発に向けた設備強化を行っております。また、スタートアップやベンチャーキャピタルファンドへの出資も積極的に行い、2022年9月には先端素材の分野において20年以上の投資実績のあるベンチャーキャピタルファンドPangaea Ventures Impact Fund、2023年6月には独自技術の中間膜を開発している東京大学発のベンチャー企業である株式会社Gaianixxなどへの出資を行っております。これら独自の技術を有するスタートアップと当社が保有するコア技術の融合により革新的イノベーションが創出され、スピーディな事業化への取り組みを進めております。
さらに、分析、シミュレーション及びデータ解析技術、生産技術の向上を通して、技術開発の促進又は効率化、生産プロセスの最適化を図っております。この結果、新規事業及びその他の事業における研究開発費は7,226百万円となりました。
第23期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)
インジウムリンやカドミウムジンクテルルをはじめとする結晶材料の分野は、データセンターやモバイル通信量の増加、さらには、センシング技術の高度化などにより、今後飛躍的な成長が見込まれております。
こうした中、当社は2021年に「結晶材料事業推進室」を新設し、同分野をフォーカス事業における次世代の収益の柱とするべく、事業規模拡大に向けた取り組みを進めてまいりました。
これまで、同事業の生産計画策定や販売などは、当社薄膜材料事業部の営業部が行っておりましたが、市場変化・開発競争が今後ますます厳しくなる中、技術開発のスピードを一段と加速させるべく、2024年4月1日付にてこれまで結晶材料事業推進室と薄膜材料事業部の営業部が個々で担っていた機能を「技術本部結晶材料事業推進部」として新組織の中に統合し、結晶材料事業全体の戦略立案機能を一元化することで、迅速かつ着実な事業規模拡大を図ることといたしました。
この結果、当中間連結会計期間に発生した研究開発費は
半導体製造の先端パッケージング分野における新規事業の育成推進のため、2024年11月1日付で、「技術本部技術戦略部」内に「先端パッケージ材料事業推進室」を設置いたしました。当社の主力製品である半導体用スパッタリングターゲットが使用される前工程(シリコンウエハ上にトランジスタや配線を形成する工程)のみならず、複数のチップを1つの基板上に高密度で実装するチップレットなど、後工程(半導体チップを基板に実装するパッケージング工程)においても様々な手法が開発されており、こうした手法の高度化に向け、より高機能な材料が求められております。先端パッケージ材料事業推進室において、当社グループの先端パッケージ材料関連のマーケティング及び開発に関する機能を一元的に担うことにより、よりスピード感を持って、市場の要求に対応をしてまいります。また、外部機関との連携も活用しながら、材料の新規開発や実用化に向けた取り組みを推進してまいります。当社グループは、こうした活動を通じて、半導体材料分野における製品ラインナップの拡充も目指してまいります。
この結果、当第3四半期連結累計期間に発生した研究開発費は13,263百万円となりました。その内訳としては、半導体材料セグメント3,840百万円、情報通信材料セグメント2,900百万円、基礎材料セグメント1,172百万円、新規事業5,351百万円です。