文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
富士石油グループとして、以下の企業理念及びグループ経営方針を定めています。
① 企業理念
● エネルギーの安定供給
● 安全の確保と地球環境の保全
● ステークホルダーとの共存共栄
● 活力に満ちた働きがいのある職場
② グループ経営方針
● ステークホルダー価値の最大化
グループ企業が一体となって、ステークホルダーにとっての企業価値最大化を図る
● 経営の透明性の向上
コーポレート・ガバナンスを強化するとともに、リスクマネジメント及びコンプライアンスの徹底、正確かつ適切な情報開示に努める
● 安定的な経営・収益基盤の維持
袖ケ浦製油所の持つ立地優位性・高度な設備能力と、強固な顧客基盤を背景とする安定的な収益構造を盤石なものとし維持する
● 株主への利益還元
中・長期的な事業発展のための内部留保の充実に留意しつつ、業績及び資金バランス等を勘案の上、安定的な配当の維持に努める
● 持続的な成長への挑戦
事業環境の変化を先取りした中期的経営戦略を立案し、これを着実に遂行することで、グループの持続可能な成長を実現する
当社は2021年5月に、「世界の石油需要については、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済危機からの力強いリバウンドが予想される一方、中国、インド、中東を中心に、今後数年間の石油需要の増加量を上回る規模で最新鋭の大型製油所の新増設が同時期に計画されていることから、その進捗次第では一段と厳しい競争環境が想定される。また、2050年カーボンニュートラルに向けた動きの中で、電気自動車(EV)の普及やバイオ燃料、合成燃料、水素等への燃料転換が進むことで、中長期的には石油需要の一定程度の喪失が予想される。」との事業環境認識のもと、2021~2024年度の4年間を対象とする第三次中期事業計画を策定しました。
その後、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた社会的要請が更なる高まりを見せている中で、ロシアのウクライナ侵攻、中東情勢の緊迫化等を背景とした地政学的リスクの高まりや資源価格・為替相場の大きな変動等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化する中においても、エネルギーの安定供給の使命を果たすため、収益の安定的拡大と環境負荷低減の両立に向けて、①石油精製事業の更なる基盤強化、②脱炭素社会に向けた取組み強化を基本方針とし、次の課題に注力してきました。
(取り組むべき課題)
①石油精製事業の更なる基盤強化
a.稼働信頼性の維持・強化
設備の高経年化に対し、集中的な外面腐食検査を継続して行いました。
また、全社的にデジタル化を推進し、製油所内の一部エリアにおけるドローン点検の運用開始や、技術文書のデジタル化及びデジタルツイン技術の活用のためのシステムの導入、AIによる異常予兆検知システムの導入など、デジタル技術の最大限の活用により、装置に係る運転管理・保全の一層の高度化を推進しました。
b.コスト競争力の強化、競争優位の確立
組織横断的なタスクフォースを組成し、全社的にコスト削減活動を推し進めました。具体的には、原料調達の最適化による物流コスト削減や、装置の安定稼働を前提として、外部コンサルタントを起用した修繕工事の絞り込みなど、幅広く取組みを行いました。
また、当期に本社移転及び組織改編を行い、管理部門の統合や一部業務の移管等による組織・業務のスリム化や物流管理機能の強化、本社組織・製油所組織の人的交流の促進など、人財・組織面での取組みも進めました。
なお、高付加価値製品の増産に向けて、2025年度の大規模定期修理時に高オクタン価ガソリン基材を製造するアルキレーション装置の能力増強や、軽油の増産を目的とする軽油水素化脱硫装置の能力増強工事等を行う予定です。
②脱炭素社会に向けた取組み強化
a.製油所の徹底した環境負荷低減
省エネルギーは収益性の改善と同時に製油所のCO2排出量の低減に最も確実に寄与することから、従来の取組みを一層深化・加速させ、製油所の低炭素化を推進しています。
また、当期はバイオETBEを配合したガソリンの供給といった従来の取組みに加え、環境負荷に配慮した製品の供給、燃料の使用に取り組みました。特に、製油所内での燃料転換の実現に向けて、メインボイラー(ASP-BTG)でのアンモニアの燃料使用を行うため、石油精製の過程で副生されるアンモニアとアスファルトピッチの混焼を安定的に実施し、将来的な混焼率の引き上げを見据えた各種データの収集を行ったほか、大容量での使用に必要となる設備対応の検討を行いました。
なお、2025年度の大規模定期修理時においては、No.1 FCC(流動接触分解装置)の省エネルギー改造工事を行う予定です。
b.脱炭素ビジネスの追求
我が国政府の目標である2050年カーボンニュートラルを踏まえ、次世代バイオ燃料、CO2フリー水素、合成燃料など当社の既存インフラ・知見が活用できる脱炭素技術については、ステークホルダーとの連携を通じて積極的に追求していくことで脱炭素社会への貢献を果たしていきます。
第三次中期事業計画期間においては、SAF(※1)の供給に係る検討に取り組み、国土交通省が実施した『輸入ニートSAFモデル実証事業』に参画し日本国内で初めて輸入ニートSAFとジェット燃料の混合を行ったほか、SAFを目的生産物とするバイオ燃料製造事業の検討を進め、製造プラントの基本設計を完了しました。本基本設計に基づく製造プラントの建設についての検討は、製造プラントの建設費が想定を遥かに超える金額となったことなどを踏まえた事業性の観点から、中止するとの判断となりましたが、引き続き、SAFの供給に向けて検討を続けていきます。
※1 Sustainable Aviation Fuel(=持続可能な航空燃料):バイオマス原料等を基に製造された合成ジェット燃料(=ニートSAF)と化石由来のジェット燃料を混合して製造され、国際規格であるASTM D7566 Table1及びASTM D1655に適合するジェット燃料油を指す。
なお、第三次中期事業計画において、当社は2050年カーボンニュートラルの実現に貢献すべく、達成すべき目標として以下の環境目標を定めました。
●製油所における省エネルギー量15,000kL-coe(※)/年(目標年度:2025年度)の達成
※Crude Oil Equivalent(原油換算)
●中期においては、2030年度に当社事業で発生する年間CO2排出量を2014年度と比較して20%以上削減することを目指します。
●長期においては、各要素技術のイノベーションの進展による技術確立と経済性の両立を前提としたうえで、2050年度には当社事業で排出するCO2をネットゼロとすることを目指すとともに、供給するエネルギーの低炭素化等を図ることにより、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献していきます。
上記のうち、省エネルギー量に関する目標については、2021年度から2025年度までの省エネルギー量の累計値(2025年度は見込み)は20,692kL-coeとなり、目標を上回る見込みです。
また、中長期的なカーボンニュートラルの実現に向けては、2023年度に新設したカーボンニュートラル推進委員会のもと、全社横断的に取組みを推進していきます。
こうした第三次中期事業計画で設定した戦略的課題については、その期間終了後においても引き続き課題であると認識しており、取組みを深化させていきます。なお、次期の中期事業計画につきましては、原油価格・為替相場の先行き、諸物価の上昇などの外部環境の変化や、これに伴う定期修理費用を始めとする固定費・変動費の増加、定期修理期間の長期化、増加コストの価格転嫁、さらに出光興産㈱との資本業務提携による協業深化など、当社の収益性や今後の戦略に大きく関わる要素について、その影響・進展等を見極めつつ、できるだけ早期に公表できるよう策定を進めます。
(3) 目標とする経営指標等
第三次中期事業計画(2021年5月策定)において目標として掲げた経営指標は以下のとおりです。
①利益計画(連結:2024年度)
②財務目標(連結:2024年度)
ROE:10%以上
ネットD/Eレシオ:1.5倍以下(※原油価格の変動に伴う短期運転資金の増減影響修正後)
③資金計画(連結:2021年度から2024年度累計)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
世界規模で異常気象が発生し、大規模な自然災害が増加するなど、気候変動問題への対応は人類共通の課題となっており、世界的に脱炭素の機運が高まる中で、我が国においても、2030年度のGHG46%削減(2013年度比)、2050年のカーボンニュートラル実現という国際公約が掲げられ、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する、グリーントランスフォーメーション実現のための各種取組みが進められています。
こうした中で、当社においても気候変動に係る対応を経営上の重要事項と認識し、「低炭素・循環型社会への貢献は、企業としての社会的責務かつ、当社の未来のための最重要経営課題であると捉え、低炭素化した石油及びカーボンニュートラルなエネルギーを供給する企業となる」ことを2050年に向けた長期的な経営の方向性の一つとして定めました。
この方向性に基づき、2021年5月に策定した「第三次中期事業計画」において「脱炭素社会に向けた取組強化」を基本方針の一つとして掲げ、① 製油所の徹底した環境負荷低減、② 脱炭素ビジネスの追求を重点課題として設定し、課題に注力しています。
なお、気候変動への対応を含めた当社の中長期的な経営方針・戦略となる「2050年に向けた長期的な経営の方向性」、「第三次中期事業計画」の策定に当たっては、当社常勤役員会と取締役会での複数回の審議を経ています。
②戦略
当社では、気候変動に関する事業影響を把握し、気候関連リスク・機会に対する対応策を検討すること等を目的に、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析の前提として、2050年時点における気温上昇について、4℃及び1.5℃シナリオを選択し、リスク重要度の評価及び事業インパクト評価並びに対応策の定義について検討し、以下のとおり整理しています。
<リスクと機会>

<事業インパクト評価>

<対応策>

当社は、当社グループの事業目的に重大な影響を及ぼすリスクの顕在化を未然に防止するとともに、経営危機に適切に対応し、経営危機発生に伴うグループの損失を最小化するために、平常時のリスク管理及び経営危機発生時の対応について体制並びに行動要領を定めることを目的として「リスク管理規程」を定めています。同規程に基づき、当社グループの各部門は担当する業務に内在するリスクを網羅的に洗い出し、当該リスクが顕在化した場合に想定される損害の種類、規模、影響レベルとその発生確率に基づきリスクを評価し、対応策を定めています。
気候変動に関するリスクもこれらリスクの一つとして位置付けられ、気候変動に関するリスク及び機会については「第三次中期事業計画」の中で課題化され、全社で取組みを進めています。また、気候変動対応(省エネルギー/脱炭素化/災害対応)を含めた安全環境に係る事項については、社長を議長とする安全環境会議にて方針・年度計画・具体的施策等を定期的に審議・決定しています。
当社は、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献すべく、第三次中期事業計画において達成すべき目標として、2025年度の環境目標「製油所における省エネルギー量15,000kL-coe/年の達成」を設定しています。
加えて、中長期の目指す水準として「2030年度に当社事業で発生する年間CO2排出量を2014年度と比較して20%以上削減すること」を定めています。さらには、各要素技術のイノベーションの進展による技術確立と経済性の両立を前提としたうえで「2050年度には当社事業で排出するCO2をネットゼロとすること」を目指すとともに、供給するエネルギーの低炭素化を図ることにより、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献することも目指しています。
なお、当社事業から排出される温室効果ガス(GHG)に加え、当社が供給する石油製品等の消費段階で排出されるGHGの排出量算定を実施し、
(2) 人材の多様性を含む人的資本に対する取組み
環境変化が激しく、将来の不透明感(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)が増す中で、企業理念の実現に向けて会社および従業員が継続的に成長するためには、従業員一人ひとりが主体的に動ける自律型人財へ育つとともに、組織への貢献意欲を高め、互いに学び合い、高め合い、支え合う必要があると考えています。
このことを踏まえ、以下のとおり定義した「期待する人財」を継続的に育成することを目指します。
イ.推進方針
「期待する人財」を育成するために必要な教育研修制度を構築・整備し、従業員一人ひとりに対し、常に適切な研修機会を提供しつつ、経営層、各職場、従業員等から幅広い意見を取り入れて、継続的に制度の改善を図ります。
組織の目標・方針を示すとともに、各職群・階層に明示された期待される能力・役割と人財育成を連動させ、目標の実現に努力し貢献した従業員を適切に対応、評価します。
ウ.人事部と人財育成部の連携
人事部と人財育成部は十分に連携し、各職場および従業員に対して、人財育成を通じて、それぞれの従業員能力を活かし、やりがいを持っていきいきと働くことができる「活力のある職場環境づくり」をサポートしていきます。
当社の中長期的な企業価値向上及び持続的成長のために、公平性を担保したうえで多様な人財や価値観を積極的に取り入れ、高い意欲を持った多様な人財が心身ともに健康でいきいきと活躍することが重要であると認識しています。その実現に向け、2019年度に全面改定した新たな人事制度のもと、より一層生産性を向上させ、働きがいのある会社となるよう以下をはじめとする様々な環境の整備に取り組みます。また、社会環境の変化等に応じた見直しも不断に実施します。
ア.人事制度
新たな等級・報酬・評価制度に基づき、若年層の上位職への早期登用、シニア世代のライン長への継続起用、女性従業員の職域拡大・管理職候補者育成及び登用、障がい者の特性に応じた雇用・配置等を実施します。
イ.管理職登用
性別や国籍、採用経路等によらず、能力・業務実績等を総合的に評価し、適性の認められる人物を管理職に登用します。
ウ.多様な働き方の推進
仕事と育児、介護、自己啓発等との両立を図るべく2019年度に導入したフレックスタイム制度及び法定以上に拡充した育児・介護休業制度の活用を推進します。また、多様な働き方を実現すべく2020年度に導入したテレワーク制度やデジタル技術の幅広い利活用等を通じたワークライフバランス向上にも努めます。また、特にシニア世代においては、本人の希望等を踏まえた柔軟な雇用形態の活用を通じた多様な働き方が実現できるような環境を整備します。
当社は、全部門の更なる残業の低減に努め、定期修理工事時などの特別な時期を除き最終的には残業ゼロを目指します。
エ.女性活躍推進
女性の活躍は企業の持続的成長に不可欠であるとの認識のもと、製造現場を含めた全ての職場に女性社員を配置し、女性の次世代管理職候補者の育成等の各種施策を実施します。また、社内セミナー等を通じ、女性活躍を推進する職場環境構築のための意識改革も図ります。
オ.職群転換制度
従業員の多様なキャリア形成、新たなチャレンジ、私生活との更なる調和等を実現することを目的に導入した職群転換制度の積極的な活用を図ります。
カ.障がい者雇用の推進
障がいを有する者に対する各人の特性に応じた配置や合理的配慮のみならず、産業保健スタッフ(産業医、嘱託医、保健師等)の相談体制の拡充、通院等を考慮した休暇日数の増加等の対応を実施します。
女性活躍推進法の行動計画に基づき、2025年度の採用者に占める女性比率を30%以上、また有給休暇取得率を90%以上とすることを目標に掲げており、継続して有給休暇取得率の更なる向上を目指します。また、女性管理職を2025年度までに1名以上登用する目標を掲げていましたところ、当目標は2022年度に達成していますが、今後も女性管理職、経営幹部クラス等上位職位への登用を目指します。また、これらの目標実現に向けてPDCAを回しながら各種取組みを実施するとともに、新たな定量目標の設定等についても検討を行っていきます。
なお、人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略並びに指標及び目標に関し、当社では各種の取り組みを行っている一方、連結グループに属する全ての企業では行っていないことから、連結グループにおける記載が困難です。このため、本項に記載する指標及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の内容を記載しています。
当社グループの事業において、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は、以下のとおりです。
なお、以下の事項には将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらの事項に限られるものではありません。
①法的規制等の変更リスク
当社グループの事業は、国内外の法律や諸規則、環境規制等に従って進められており、将来においてこれらの変更が当社グループの事業や業績に影響を与える可能性があります。
②為替レートの変動リスク
当社グループは、資産・負債の一部を米国ドル建てで保有しています。また、当社グループは、原材料の多くを米国ドル建てで購入しており、為替ヘッジ取引により為替レートの変動による影響の緩和に努めていますが、為替変動リスクを完全に排除することは難しく、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
③市況変動リスク
原油をはじめとする原材料価格が下落した場合、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)による棚卸資産評価損が発生し売上原価を押し上げることになります。また、石油製品市況は需給や原油価格の動向といった外部要因によって大きく変動します。かかる市況変動リスクに対しては、原材料並びに生産製品の在庫管理を徹底するとともに、主に海外市況に左右され市場リスクに曝される取引においてヘッジ対応を適切に行い、その抑制に努めていますが、市況変動リスクを完全に排除することは難しく、当社グループの業績に影響が生じます。また、タンカー市況が変動した場合にも、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
④金利変動リスク
当社グループでは、長期・短期の有利子負債を有しており、金利が上昇した場合は営業外費用の増加要因となります。長期の有利子負債については金利の変動による影響を緩和すべく、金利スワップ取引等により金利の固定化を図っていますが、金利が変動した場合には、当社グループの金融収支に影響が生じる可能性があります。
⑤災害、事故等による操業リスク
当社グループは、国内において生産設備、事務所を、また、海外において事務所を有していますが、自然災害や事故等により生産設備、情報システム等に障害が発生した場合には、生産活動の抑制又は停止をせざるを得なくなる可能性があります。かかる状況に対処すべく、当社は事業継続計画(BCP)を策定しており、事業の継続・早期復旧を図るための体制を整備していますが、事業活動の抑制・停止が長期化した場合には当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
⑥感染症によるリスク
新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の流行が発生した場合においても、当社は国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な重要インフラ事業者として、石油製品の供給継続に努めることを基本方針としていますが、当社役職員に感染が確認された場合などにおいては、感染の拡大防止を図るべく出社人員の抑制等の措置をとる必要があることから事業規模の縮小を迫られる可能性があります。
また、感染症の流行により経済活動の停滞が長期化し石油需要へ大きな影響を及ぼす場合、当社グループの業績に深刻な影響が生じる可能性があります。
⑦原材料の調達リスク
当社グループは、原油の多くを中東地域から調達している一方で、中東以外の地域からの原油調達も行っており、リスクの分散に努めていますが、国際的な政治情勢の変動等により、原油調達に支障が生じた場合には、当社グループの事業や業績に影響が生じる可能性があります。
⑧競争環境に関するリスク
国内の石油製品需要は少子高齢化の進行や低燃費車の普及等によって構造的な内需減少傾向が続いており、国内の石油需要に対し精製設備能力が過剰となることで、国内需要を巡り激しい競争環境に曝される可能性があります。世界においても、貿易摩擦の激化に伴う経済成長鈍化への懸念など石油製品需要に対する不確実性が高まっており、需要に対して供給能力が上回るような状況においては、競争環境が一段と厳しいものになる可能性があります。当社グループは中長期的な経営戦略として、稼働信頼性の維持・強化やコスト競争力の強化、競争優位の確立のための石油精製業の更なる基盤強化に努めていきますが、これらの石油需要を巡る競争の激化により、当社グループの事業及び業績に影響が生じる可能性があります。
⑨気候変動に関するリスク
先進国を中心に地球温暖化ガスの削減、省エネルギー等地球環境に配慮した低炭素化・脱炭素化の動きが進展しています。当社グループは、低炭素・循環型社会への貢献が、企業としての社会的責務かつ、当社グループの未来のための最重要経営課題であると捉え、中長期的な経営戦略として脱炭素社会に向けた取組み強化を進めていきますが、今後低炭素化・脱炭素化の動きの急激な進展により、想定を上回る速さで石油製品需要が減少した場合、当社グループの事業及び業績に影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、重大な影響を及ぼすリスクの顕在化を未然に防止するとともに、経営危機に適切に対応し、経営危機発生に伴うグループの損失を最小化するために、平常時のリスク管理及び経営危機発生時の対応について体制並びに行動要領を定めた「リスク管理規程」を整備しています。
具体的には、取締役会で定めたリスク管理の基本方針に従い、平常時におけるグループのリスク管理全般を行うとともに、経営危機発生時においては社長の指揮のもと事案の処理に当たることとしています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
当事業年度におけるドバイ原油価格は、イスラエルとイランの緊張の高まりにより4月に上昇しましたが、両国の報復攻撃が軽微に留まったことやОPECプラスが減産幅を縮小するとの報道、長期化する中国経済の低迷を受け、原油価格は軟調に推移しました。1月に入ると、米国の対ロシア制裁強化により急騰しましたが、OPECプラスが自主減産の段階的な縮小を決定したことや米国の関税政策の影響により、3月中旬にかけて下落し、期中平均は前期を約4ドル下回る約79ドルとなりました。
外国為替相場は、米国における根強いインフレ圧力に伴う利下げ観測後退により、期初から円安基調が続きました。7月から9月にかけては日米金利差が縮小し、一時的に円高に振り戻しましたが、10月以降は堅調な米国経済指標を背景に再び円安が進行しました。その後、米国大統領選挙でのトランプ氏勝利を受け、同氏の政策に起因する米国景気の後退懸念が高まると円高基調に転じました。その結果、期中平均は前期より約8円の円安となる約153円となりました。
国内石油製品需要は前期比95.4%となり、ハイブリッド車の普及など構造的要因を背景に引き続き漸減傾向となっています。
(連結業績)
このような事業環境のもと、当期の連結業績につきましては、売上高は当期が非定期修理年度であったことによる販売数量の増加等により、前年同期比1,164億円増収の8,401億円となりました。
損益につきましては、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)による原価の押し上げ要因が87億円と前期の押し下げ要因より反転したこと(前期は96億円の原価押し下げ要因)等により、営業損益は前期と比較して217億円減益となる55億円の損失となりました。経常損益は、持分法による投資利益20億円を計上したこと等から、前期と比較して226億円減益となる38億円の損失となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、子会社株式売却損11億円を計上したこと等により、前期と比較して212億円減益となる57億円の損失となりました。
なお、当期の在庫影響を除いた実質ベースの損益については、営業利益相当額は31億円(前期比33億円減益)、経常利益相当額は48億円(前期比42億円減益)となりました。
なお、当社グループは、石油精製/販売事業のみの単一セグメント・単一事業部門であるため、セグメント別の記載を省略しています。
当社グループは石油精製/販売事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における生産実績は次のとおりです。
当連結会計年度は、受注生産を行っていません。
当社グループは石油精製/販売事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は次のとおりです。
(注) 1 上記の金額には、揮発油税及び地方道路税を含めています。
2 最近連結会計年度の主要相手先別販売実績は、次のとおりです。
当期の財政状態及びキャッシュ・フローの分析は下記のとおりですが、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際に生じる結果とは大きく変わる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。
この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。
なお、決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び当連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書上の金額の算定には、将来に関する判断、また見積りを行う必要があり、過去の実績等を勘案し、合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
特に、棚卸資産の評価及び固定資産の減損については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況」(重要な会計上の見積り)に注記しています。
(流動資産)
流動資産は、前連結会計年度末と比べ189億円減少の2,427億円となりました。主な要因は、棚卸資産の減少105億円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少58億円、未収入金の減少44億円です。
(固定資産)
固定資産は、前連結会計年度末と比べ19億円増加の1,301億円となりました。主な要因は、投資有価証券の増加43億円、建設仮勘定の増加9億円、機械装置及び運搬具の減少36億円です。
(流動負債)
流動負債は、前連結会計年度末と比べ212億円減少の2,419億円となりました。主な要因は、短期借入金の減少244億円です。
(固定負債)
固定負債は、前連結会計年度末と比べ46億円増加の450億円となりました。主な要因は、修繕引当金の増加56億円です。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ4億円減少の859億円となりました。主な要因は、利益剰余金の減少70億円、為替換算調整勘定の増加38億円、繰延ヘッジ損益の増加26億円です。
当期は在庫影響が原価押し上げ要因となったことなどから損失を計上し、純資産は減少しました。また、前期末と比した原油価格の下落に伴う売掛金及び棚卸資産の減少等により、総資産も減少しました。一方で、長期借入金の返済も進み、また原油価格の下落等により短期借入金も減少した結果、関連する自己資本比率、ネット・デット・エクイティ・レシオ等の財務指標は改善しました。
当期末における現金及び現金同等物は、前期末に比して9億円減少し、85億円となりました。
営業活動の結果、前期においては、仕入債務の増加236億円等による収入及び税金等調整前当期純利益185億円が、棚卸資産の増加349億円等による支出を上回ったことにより、キャッシュ・フローは74億円の収入となりました。一方、当期においても、棚卸資産の減少105億円、未払消費税等の増加86億円等による収入が、法人税等の支払額36億円等による支出及び税金等調整前当期純損失57億円を上回ったことにより、キャッシュ・フローは314億円の収入となりました。
投資活動の結果、前期においては、主に製油所施設等に係る有形固定資産の取得45億円等により、キャッシュ・フローは51億円の支出となりました。なお、これらの投資資金は借入金及び自己資金等により賄いました。一方、当期においても、主に製油所施設等に係る有形固定資産の取得40億円等により、キャッシュ・フローは48億円の支出となりました。なお、これらの投資資金は借入金及び自己資金等により賄いました。
財務活動の結果、前期においては、長期借入金の純減少16億円等による支出により、キャッシュ・フローは12億円の支出となりました。一方、当期においても、短期借入金の純減少244億円等による支出により、キャッシュ・フローは278億円の支出となりました。
なお、当社の2021年度から2024年度の4年間の資金計画に対する進捗状況は、(5)目標とする経営指標等の進捗状況において記載のとおりです。
資本の財源及び資金の流動性に関連して、当社グループの資金需要の主なものは、当社における重要な経営課題のひとつである袖ケ浦製油所の稼働信頼性の維持・強化を目的とした同製油所における機器等の更新工事や安全対策に係る設備投資等です。また、これらに充当する資金については、収益状況等に留意しつつ、金融機関からの借入金及び自己資金等で賄っていく予定としています。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりです。
(注) 1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
3 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。
第三次中期事業計画(2021年5月策定)において目標として掲げた2024年度の経営指標に対する実績は以下のとおりです。
①利益計画(連結:2024年度)
※2022年度より、「営業外収益」の「補助金収入」に含めていた燃料油価格激変緩和対策補助金を「売上高」に含める表示方法へ変更し、2021年度実績について、表示方法の変更の内容を反映させた組み換え後の数値を記載しています。
②財務目標(連結:2024年度)
※原油価格の変動に伴う短期運転資金の増減影響修正後
③資金計画(連結:2021年度から2024年度累計)
利益目標及び財務目標(連結)として、2024年度の営業利益100億円、経常利益85億円、当期純利益75億円、ROE10%以上、ネットD/Eレシオ1.5倍以下を掲げていました。
これに対し2024年度の実績は、在庫影響による原価の押し上げ効果やインフレ等による各種コストの増加、過年度と比して海外製品市況が低位に推移したこと等により、連結純利益は計画を下回る▲57億円(前年度比212億円減益)となりました。また、在庫影響を除いた実質ベースの損益についても、営業利益相当額は31億円(前年度比33億円減益)、経常利益相当額は48億円(前年度比42億円減益)となりました。これに伴い、ROEも▲7%と計画を下回る結果となりました。一方、ネットD/Eレシオについては、有利子負債の削減と4年間の連結純資産の増加の両面が寄与し、0.8倍と計画を大きく上回って達成しました。
(1)石油製品取引契約
当社は、出光興産㈱、㈱JERA、住友化学㈱、日本航空㈱及びENEOS㈱と石油製品等の取引に関する契約を締結しています。
(2)特定融資枠契約
当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行と特定融資枠契約を締結しています。
(3)資本業務提携に関する合意書
当社は、2024年4月16日の取締役会決議に基づき、同日付で出光興産㈱と資本業務提携に関する合意書を締結しました。
1. 合意の目的
出光興産㈱は千葉県市原市に製油所と石油化学工場が一体となった千葉事業所を有し、効率的で一貫した生産体制を構築しています。製油所は、1963年に操業を開始し、現在も基幹事業所として最先端の装置やシステムを多数導入することで、首都圏を中心に旺盛な需要に対応しています。また石油化学工場は、1975年に操業を開始し、エチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を生産しています。
当社も出光興産㈱と同じ京葉臨海コンビナートに袖ケ浦製油所を有しています。袖ケ浦製油所は、隣接する住友化学㈱の千葉工場とパイプラインで繋がっており、出光興産㈱千葉事業所、当社袖ケ浦製油所、住友化学㈱千葉工場の三社で効率的な生産体制を構築しています。
京葉臨海コンビナートは首都圏の一大消費地に向けた石油製品・石油化学製品の迅速な供給ルートを保持するのみならず、海外に向けた石油製品・石油化学製品の輸入・輸出ルートを確保しています。これらの立地の優位性から国内外の需要動向に柔軟に対応できる体制となっています。
石油製品、及び石油化学製品の国内需要は長期的な人口減少や省エネルギー、省資源・資源循環の動向に呼応し漸減していくことが予想されます。一方、海外においては経済発展を続ける東南アジアを中心に今後も旺盛な需要が見込まれています。
以上のような環境下において、出光興産㈱千葉事業所と当社袖ケ浦製油所の協業を軸とする既存燃料油事業のシナジー創出、並びに両社協働での将来の京葉地区での燃料油供給及びカーボンニュートラル燃料の受入れ、製造及び供給拠点の構築を目的として、資本業務提携に関する合意書を締結しました。
2. 合意の内容
(1) 原油及びナフサの調達・配船業務の共同化
(2) 定期修理工事(SDM)の共同管理化(SDM時期の最適化、SDM期間の人員融通等)
(3) その他両社の利益最大化に資するシナジーの検討
(4) 次世代カーボンニュートラル燃料の供給拠点化に向けた投資検討
(5) 出光興産㈱から当社に対する非常勤取締役候補者2名の指名
3. 取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程
当該合意にあたり、社長を議長とし執行役員及び常勤監査役で構成する常勤役員会及び独立社外取締役が3分の1以上を占める取締役会において慎重に検討・審議を行い、2024年4月16日の取締役会決議に基づき、同日付で出光興産㈱と資本業務提携に関する合意書を締結しました。
4. 合意が当社の企業統治に及ぼす影響
当社は出光興産㈱から社外取締役2名を迎えており、石油業界における豊富な経験と見識から、取締役会を始めとする場で特に袖ケ浦製油所の運営や製造技術等に関する事項について助言を受けています。
同社との関係においては、一般株主との利益相反リスクが存在することを認識しており、経営戦略の立案等にあたっては、独立社外取締役が3分の1以上を占める取締役会において十分に議論を行ったうえで、当社独自の経営判断に基づき意思決定を行っています。また、取締役会の決議において、特別の利害関係を有する取締役は議決に参加できないことなどを明確に定めており、当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響は軽微であると考えています。
該当事項はありません。