当社グループは、2019年4月1日の統合新社の発足に先駆け、2018年10月16日に統合新社のビジョン及び事業戦略を公表しました。以下では、新社の経営方針等を記載しています。なお、現在新社の中期経営計画を策定中であり、2019年秋に公表する予定です。
(1) 経営方針
私たちは、ダイバーシティ&インクルーシブネスをもとに、環境・社会と調和を図りながら、お客様・ステークホルダーとともに、新たな価値創造に挑戦し続ける日本発のエネルギー共創企業です。
ア.多様なエネルギー・素材を、安定的に届けます。
イ.培ってきた課題解決力を、世界に展開します。
ウ.変化への適応性に富む、レジリエントな企業体を作ります。
(2) 経営戦略等
① 基本戦略
・ レジリエントな事業ポートフォリオを構築するため、基盤事業である燃料油事業と基礎化学品事業の競争力の強化を図るとともに、成長市場・分野への取り組みを加速します。
・ 石油のノーブルユースを追求し、国内6製油所、石油化学工場の競争力を高めるとともに、2018年11月14日付で商業運転を開始したベトナムのニソン製油所を含め、アジア圏におけるバリューチェーン全体の競争力強化を図ります。
・ 本経営統合の主要目的の一つである統合シナジーについては、2021年度に600億円を実現します。
・ 成長分野である高機能材事業、電力・再生可能エネルギー事業を国内外で積極展開します。
・ キャッシュ・フローについては、株主還元、戦略投資、財務基盤の強化に最適配分を行います。
・ 経営環境の変化に対応するためリスクマネジメントを一層重視するとともに、先進的なガバナンス体制を構築します。
・ 持続可能な社会作りに、より積極的に取り組みます。
・ 事業を通じて社員ひとり一人が能力を発揮し、成長できる環境を実現します。
② 統合新社の経営目標、株主還元方針、中期経営計画
ア.経営目標(2019年度〜2021年度)
・ 当期純利益 5,000億円以上(3年間累計)
2,000億円(2021年度)
・ 統合シナジー 600億円/年(2021年度)
・ ROE 10%超(2021年度)
・ ネットD/Eレシオ 0.5倍以下(2021年度)
・ 総還元性向 50%以上
イ.キャッシュ・フロー配分
安定収益を確保し株主還元を充実させつつ、成長市場・成長分野・構造改革への集中投資を行います。また、引き続き財務基盤の強化にも努めていきます。
ウ.投資戦略
投資総額5,000億円(3年間累計:内、戦略投資3,000億円)
・ 燃料油事業、基礎化学品事業:2,500億円
製油所高度化対応、海外拠点整備・拡充、SSネットワーク強化
・ 高機能材事業、電力・再生可能エネルギー事業:1,200億円
海外拠点(潤滑油、機能化学品、有機EL)、国内外電源確保、固体電解質、新規事業
・ 資源事業:1,300億円
ベトナムガス田開発、北海鉱区開発
エ.シナジーの追求
2017年5月より開始した経営統合に先立ち協働事業を強化・推進する取り組みは、原油調達、生産、物流、共同調達等様々な分野に広がっています。2019年には、2015年対比で300億円のシナジーが具体化する上、本経営統合により、以下のとおり2021年度末までにさらに300億円の追加シナジーを見込んでいます。
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分野 |
主要な項目 |
期待効果 |
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原油調達 |
・原油の共同調達 ・原油タンカーの共同配船 ・傭船/新造船コスト削減 |
15億円 |
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需給・海外 物流・販売 |
・最適生産計画システム一体化 ・7製油所の石油製品・半製品の相互融通 ・出荷基地の相互利用、共同配送 ・輸出入の一体化と海外販売の拡大 ・出荷基地の統廃合 |
290億円 |
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製造部門 調達部門 |
・精製マージン改善施策のベストプラクティス展開 ・共同調達による調達コストの削減 ・IMO対応の最適化、揮発油需要減少への対応等 |
205億円 |
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共通 |
・組織統合による重複コスト削減(オフィス統合等) ・設備投資の最適化 ・潤滑油基地の相互利用 ・その他(ITシステム、BPRの推進等) |
90億円 |
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合計 |
600億円 |
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オ.株主還元方針
株主への利益還元が経営上の重要課題であるとの認識のもと、統合効果の実現を通じ着実に収益を確保し、株主還元を実現します。2019年度〜2021年度の当期純利益目標を累計5,000億円以上とし、このうち50%又はそれを上回る株主還元の実施を目指します(なお、各事業年度に当該株主還元額の10%以上を自己株式取得に充てる予定です)。
カ.中期経営計画
2019年秋を目途に長期ビジョンを含んだ中期経営計画を公表する予定です。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① 経営環境
国内経済は、雇用・所得の環境が改善するなか、個人消費の回復基調が継続しています。一方で、中国経済の減速に加え、一部先進国での保護主義的傾向の高まりや米中の貿易協議の停滞により、世界的な景気低迷が懸念されています。また、中東・アジア・南米等での地政学リスクは前年度より増してきている状況です。
石油製品の需要について、国内市場は、電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHV)の普及や省エネルギーの進展に伴い、中長期的な需要の減少が避けられませんが、海外ではアジアの新興国を中心に、当面は堅調な需要の伸長が見込まれています。
② セグメント毎の課題
当社のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。
ア. 燃料油セグメント
(ア)石油精製の最適化
石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていきます。それにより、アジア・太平洋地域の新鋭製油所に伍する精製競争力を有し、引き続き社会に必要とされる製油所群であることを目指します。既に、統合LP(リニアプログラミング)も活用し、富士石油㈱を含めた7製油所における最適生産計画を策定できる環境を整備しています。なお、東亜石油㈱のコーカー、富士石油㈱のユリカ装置を最大限活用するとともに、千葉事業所における装置改造等により、グループ全体での重油生産比率を低減することで、2020年に予定されているIMO規制への対応を進めています。
(イ)燃料油事業の海外展開
今後も需要が拡大するアジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業(2018年11月14日付で商業運転を開始)とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、引き続き海外での燃料油事業の拡大を進めていきます。
(ウ)特約店、販売店のネットワーク強化
特約店、販売店ネットワークは、燃料油、ガス等の地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約店、販売店の経営力の安定化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで両社で培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。両ブランドの6,500店のSSネットワークは、立地上の補完関係にあります。お客様には両ブランドのネットワークを最大限活用していただけるよう、価値提供を行います。
また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。
イ. 基礎化学品セグメント
国内事業の収益基盤の安定化を更に進めるため、千葉、四日市、山口のコンビナート顧客と連携し、事業環境に応じた安定生産と最適化、原料多様化によるコスト競争力強化を図ります。
燃料油事業と一体となった「Fuel to Chemical」の推進により、効率的な装置稼働と収益力向上に取り組むとともに、需要伸長が大きいアジアマーケットでベトナム・ニソン製油所から生産される製品(ベンゼン・パラキシレン)の販売拡大を確実に進めます。統合新社として、供給ソースが増える製品を軸に事業拡大とポートフォリオの選択幅を広げ、オレフィン、アロマ製品の事業基盤の安定化と収益の拡大を目指します。
ウ. 高機能材セグメント
(ア)潤滑油
国内外の内燃機自動車の省燃費化に貢献するとともに、生産効率の向上につながる工業用潤滑油の開発に取り組みます。また、電気自動車、ロボット等の最新技術製品に対応する新油の開発を行います。さらに、海外生産拠点を拡充し、国内外自動車メーカーへの供給力を向上させていきます。
(イ)機能化学品
エンジニアリングプラスチック、粘接着基材などの独自技術をベースに、国内外の成長市場や需要拡大が見込まれる用途での販売拡大を進めます。技術革新が速い自動車・電装部品や情報通信機器、アジアを中心として需要が拡大している生活消費財などが主なターゲットとなります。市場のニーズに応えながら安定生産と事業規模拡大を進めるため、水添石油樹脂の海外生産を2019年度から開始し、シンジオタクチックポリスチレン樹脂の海外生産の検討も進めていきます。
(ウ)電子材料
市場拡大期に入った有機EL材料需要への対応のため、更なる性能向上を実現できる研究開発体制を整備し、海外製造拠点を増強することで、ユーザーの期待に応えます。
(エ)高機能アスファルト
国内唯一の総合アスファルトメーカーとして、これまで培ってきた独自の技術力とノウハウを活かし、環境にやさしい商品を開発、提案していきます。特に施工後の長寿命化や、施工性改善を通して国内外の社会インフラ強靭化に貢献していきます。
(オ)アグリバイオ
食の安全と農業の生産性向上を目指し、生物農薬の開発を進め、将来的な環境規制強化に対応し得る新たな農薬市場の開拓に取り組みます。
(カ)全固体リチウムイオン電池向け固体電解質
全固体化による電池性能向上によって、充電時間の大幅短縮や蓄電能力向上が図られ、EVをはじめリチウムイオン電池の活用範囲を広げることが可能となる全固体電池向け固体電解質の製品化研究を早め、2020年代の上市を目指します。
エ. 電力・再生可能エネルギーセグメント
これまで国内で整備してきた競争力ある自社電源を基盤としつつ外部調達を最適化することで、お客様に電力を供給します。また、当社は、風力、太陽光、バイオマスといった多様な再生可能エネルギー電源を有しており、今後も積極的に開発を推進するとともに、低炭素化社会のニーズに適応した販売メニューを展開します。ソーラーパネル事業においては、独自の薄膜系太陽電池技術を活かした製品を供給し、且つ、分散型電源として自家消費型モデル等の開発に取り組みます。さらに、海外におけるガス火力発電事業、再生可能エネルギー事業、バイオマス事業等に取り組みます。加えて、マイクログリッド等の次世代のエネルギーマネジメント事業の開発に取り組んでいきます。
オ. 資源セグメント
世界的なエネルギー需要拡大を踏まえ、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については、安定且つ低廉なエネルギー源として資源開発を継続するとともに、環境負荷低減を図るため高効率燃焼技術の提案や石炭への混焼比率を高めることができるバイオマス燃料の製造技術を確立します。また、地熱開発については、大分地熱事業の維持・継続とともに、新規事業の調査・実証を進めます。
カ. 研究開発及び新ビジネス開発
当社は有機化学、無機化学、環境負荷物質の低減における知見、技術的強みを有しており、これらを高めることで新たな素材やプロセスの開発につなげていきます。社会的課題の解決に向け、コーポレート研究や各事業に属する製品研究で培ってきた技術をクロスファンクショナルにテーマ化し、国内外の大学、研究機関と連携するオープンイノベーションを推進します。
同時に、内外にインキュベーション機能を持ち、ベンチャー企業との提携、資本参加の積極的推進により、研究開発を加速するとともに、新たなビジネスを創生していきます。さらに、デジタル技術(ICT)を取り入れ、次世代(Society5.0)のエネルギーインフラ構築と新たなビジネスモデル型事業の開発に取り組みます。
③ サステナビリティへの取り組み
化石燃料を事業の中心とする統合新社にとって、地球環境への配慮・貢献や、SDGsの達成に向けた社会課題解決への貢献は必須であると考えています。以下の活動を通して、持続可能な地球環境と社会を実現しつつ、企業としての持続的成長を目指します。
・ 事業活動上排出する温室効果ガス(GHG)を削減する。
・ 外部機関の評価を積極的に活用し、事業活動目標に結びつける。
・ 当社グループの事業にかかわる全ての人々が活き活きと仕事に取り組める職場環境を整備する。
・ 当社グループの持つ事業資産と低炭素化技術を組み合わせ、課題解決につながる新たな事業創出を行う。
なお、具体的な数値目標及び行動計画については、2019年秋に発表する中期経営計画で示します。
④ 財務上の課題
統合新社の経営目標の達成に向け、成長市場での事業展開を積極的に推進していきます。そのためには、リスク対策及び海外展開の強化に向けた資金調達力の向上の観点から更なる財務基盤の強化が必要と考えています。
(4) 会社の支配に関する基本方針
当社は、当社グループの企業価値・株主共同の利益の確保・向上のため、安定的かつ持続的成長の実現に努めています。
したがって、当社株式を大量に取得しようとする者の出現等により、当社グループの企業価値・株主共同の利益が毀損されるおそれがある場合には、法令・定款で許容される範囲内において適切な措置を講じることを基本方針とします。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する部分は、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(セグメント上のリスク)
燃料油セグメント
(1) 原油価格の変動について
当社グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、アジアにおける原油需要の増加、中東やアフリカの産油国の政情不安、南米産油国における資源の国有化の動き、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も変動することが懸念されます。
また、原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けます。
当社グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
なお当社グループは、たな卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価なたな卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価なたな卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。
(2) 市場の競争について
当社グループの燃料油事業は、複数の石油会社と競合しており、これらの中には当社グループよりも事業規模や市場シェアの大きい会社があります。また日本の石油市場は、製品需要に対し精製設備やSS数が過剰となった場合や、海外の石油市場の影響を受けた場合、激しい競争状態になる可能性があります。当社グループがこのような競争下において効率的な事業運営ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(3) 原油輸入先について
当社グループは、原油輸入のほぼ全量を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(4) 石油製品の需要について
日本の石油市場は成熟しており、石油製品需要は徐々に減少すると見込まれています。更に、原油価格の高騰や、パリ協定に基づく地球温暖化に関する政府の対策等が、将来の石油製品の需要動向に影響を与える可能性があります。これらの要因により石油製品需要が減少した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(5) ニソン製油所プロジェクトについて
当社グループは、アジア市場における石油及び石油化学事業の展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下当社を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスの建設を進めてきました。
このプロジェクトの建設工事は2017年4月末に完了し、2018年5月に製品出荷、同年11月に商業生産を開始しました。
プロジェクトの総事業費は約90億米ドルであり、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。
当社グループは、プロジェクトファイナンスによる調達額のうち、NSRPへの当社グループ出資比率相当の35.1%について銀行団に対し債務保証を行っており、建設工事の完了後に設備が一定の条件で稼働することができない場合、保証の実行により当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
また、当社グループはスポンサーによる出資及び貸付の35.1%を負担しますが、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
当社グループは、プロジェクトで想定される損失に対し㈱日本貿易保険の海外投資保険を付保していますが、このような保険が損失を填補するために必ずしも十分ではない可能性があります。
基礎化学品セグメント
(1) 原料コストの変動について
当社グループは、基礎化学品の原料であるナフサを自社製油所で生産するとともに市場から調達しています。ナフサ価格は、原油価格や、中国等において計画されている石油化学設備の新設による需要増加の影響を受けることがあります。ナフサ価格の変動を市場における激しい競争等の要因により製品価格に適切に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 需要の変動について
日本を含むアジアの基礎化学品市場は激しい競争状況にあり、需要の変動や供給の増加の影響を受けます。当社グループが基礎化学品事業を行うに際しては、日本やアジアの市場において、より事業規模が大きく経営基盤の確立した、あるいはより競争力を有する企業や米国産シェールガスによる基礎化学品等との競合にさらされます。また、最近において中国を始めとするアジアの国々における基礎化学品の需要は増加してきましたが、これらの国々における経済の低迷や他の要因により今後の需要は減少する可能性もあります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
高機能材セグメント
(1) 潤滑油、高機能アスファルト事業について
当社グループは、石油製品の生産で培った技術力とノウハウを活かし、潤滑油分野や高機能アスファルト分野において国内外で事業の拡大に努めていますが、当社グループよりも事業規模や市場シェアの大きい会社との競争にさらされる可能性があります。また、経済の低迷や他の要因により市場の成長が鈍化する可能性もあります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 機能化学品、電子材料、アグリバイオ事業について
当社グループは将来の成長に向けて、機能化学品分野や電子材料分野、アグリバイオ分野において、付加価値の高い製品の開発を行っています。しかしながら、市場拡大の遅れや新素材を含む他社との開発競争等により、これらの製品の開発や生産あるいは市場の開拓で成果を挙げられるとは限りません。もし、当社グループが採算のとれる規模でこれらの製品の販売ができない場合、当社グループは開発コストを回収し、利益を確保することができない可能性があります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
電力・再生可能エネルギーセグメント
(1) 太陽電池事業について
当社グループは、日本国内において太陽電池を生産し、国内外へ販売しています。太陽電池の世界的な需要は今後も増加することが見込まれていますが、各国政府の支援政策の変更が、国内外の太陽電池の需要動向に影響を与える可能性があります。また、太陽電池における技術革新は急速に進行しており、これに伴う技術標準やコスト競争力の優位性が変化し、国内外の他社との競合状況に影響を及ぼす可能性があります。また、太陽電池市況は需給環境、業界他社との価格競争に影響を受ける一方、売上原価は、原材料価格等の変動の影響を受けるため、市場環境等により売上原価の変動を販売価格に反映することが困難となる可能性があります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 電力事業について
当社グループは、日本国内において複数の発電所を所有・運営し、また一部は日本卸電力取引所などの市場から電力を調達して、電力の小売、卸売を行っています。当社グループの発電所は石油、LNG、太陽光、バイオマス、地熱、風力など多様なエネルギー源を使用していますが、それらのエネルギー源及び市場から調達する電力等は、需給環境等により価格が変動し、または調達に支障が生じる可能性があります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
資源セグメント
(1) 石油開発事業について
①資源確保について
当社グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。しかし、当社グループによる権益の取得や探鉱が成功しない場合や確認済みの資源を予定どおり効率的に開発することができない場合、将来の原油生産は減少することになります。更に、当社グループが保有する確認済みの資源はノルウェーに集中しており、探鉱活動についてはノルウェー、ベトナムの2地域で行っています。これらの地域における政治経済情勢等により当社グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
②原油価格について
石油開発事業の近年の営業利益は、主に原油価格に支えられていますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 石炭事業について
当社グループは、オーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売しています。しかしながら、他のエネルギーへの需要の移動、環境及びその他の規制、オーストラリア産石炭の主な輸出先である中国の需要動向等により、需要が変動する可能性があります。また、当社グループよりも事業規模が大きく、経営基盤が確立している他の企業との競争にさらされる可能性もあります。更に、当社グループによる石炭鉱山事業は気候の変動、事故、政治経済情勢、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けることがあります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(その他のリスク)
(1) 投資について
当社グループは、事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。当社グループは、当連結会計年度には783億円の投資を行いました。今後も石油、石油化学を始めとする既存事業の競争力強化や石油開発・石炭事業の収益確保、新規事業育成のための投資を継続する予定ですが、投資に必要なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合や外部調達ができない場合、予定した投資ができず期待された収益機会を失う可能性があります。更に経済情勢や市場環境の変化等により、これらの投資が計画どおりの収益をあげられない可能性もあります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 有利子負債について
当社グループは、これまで有利子負債の削減を図ってきましたが、依然として多額の負債を負っています。当連結会計年度末における有利子負債残高は9,514億円で、当連結会計年度の支払利息は86億円です。
当社グループは、今後も有利子負債の削減に取り組んでいきますが、事業の継続、拡大に向けた投資を行うため追加的な資金調達が必要となるかもしれません。しかしながら、金融情勢の変化等により、資金調達に制約が生じた場合や金利上昇により金利負担が増加する場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。また、一部の有利子負債については、一般的な財務制限条項が付されており、今後、財務体質が大きく変動した場合には、当社グループの資金調達が影響を受ける可能性があります。
(3) 経営統合及び事業提携について
当社グループは、2019年4月1日に昭和シェル石油㈱と経営統合を実施し、燃料油事業等の強化やシナジーの創出に向けて取り組んでいます。しかしながら、当社グループの置かれた環境等により、当初期待した成果やシナジー効果等を十分に得られない可能性があり、また時間や費用等が想定以上にかかる可能性があります。また当社グループは、競争力強化の一環として、他社との事業提携を進めてきましたが、提携先の経営、事業、資産に対して十分なコントロールができない事態が生じることや、相手先企業の事情や当社グループの置かれた環境等によって事業提携が影響を受ける可能性があります。このような場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(4) 事故、災害について
当社グループの事業は、自然災害や事故、これらに起因する操業停止等のリスクを有しています。自然災害には、地震や津波、台風に加えて、日本という地震の多い地域に立地する製油所・工場における火災や爆発のリスクを含みます。当社グループの設備は、人的や機械的なエラーによる事故の影響を受けることもあります。当社グループが保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突等の危険にさらされています。また当社グループは、労働紛争や情報システム障害の発生によるリスクにもさらされます。このようなリスクの発生により当社グループの事業は、長期間にわたって中断される可能性があります。
当社グループは、事故や災害で想定される損失に対し損害保険等を付保していますが、このような保険が損失を填補するために必ずしも十分ではない可能性があります。
(5) 環境に関する規制について
当社グループの事業は、当社グループが事業を行い、あるいは権益を有する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、当社グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行うこと、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。地球温暖化問題への取り組みに関連して、日本や他の国が温室効果ガスの排出の制限や新たな炭素課税を導入することにより、当社グループは多額の費用負担や投資が必要となる可能性があります。このような環境やその他の規制の遵守に伴う債務や義務の負担により、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(6) 内部統制システムについて
当社グループでは、従来からコンプライアンス規程に基づき、国内外の法令遵守をはじめとした、コンプライアンスの強化に努めています。
しかしながら、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス上のリスクが完全に回避できない事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(7) 知的財産権について
当社グループは、事業の遂行のために知的財産権やライセンスを活用しており、特に石油精製技術や潤滑油、機能化学品、電子材料、アグリバイオ、太陽電池等の付加価値の高い製品分野において特許や企業秘密の位置づけは重要です。また当社グループは、ブランドを商標登録しています。しかしながら、当社グループが保有する特許、企業秘密、商標が当社の知的財産権を保護するために十分であるとは限りません。
また、当社グループの企業秘密が、従業員や取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。
当社グループが、第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性や、第三者から知的財産権の侵害についてクレームを受けて、その技術を利用できなくなる可能性があります。
当社グループが、事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、当社グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。
(8) 製造物責任について
当社グループは、厳正な品質管理基準に基づき製品を製造していますが、万が一製品に欠陥が発生した場合に備えて保険に加入しています。しかしながら、予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合には、法的責任を負う可能性がある他、ブランドイメージの低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(9) 為替相場の変動について
当社グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。
また、為替相場の変動は、海外の連結子会社及び持分法適用会社の収益や財務諸表を円貨換算する場合にも影響を与えることになります。
(10) 資産価格の下落について
当社グループは、当期に固定資産の減損損失159億円を計上しました。今後も当社グループが保有する資産の価値が経済情勢等の変化により下落した場合には、評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(11) 個人情報の管理について
当社グループは、石油製品販売やクレジットカード事業等に関して顧客の個人情報や資産データを直接的、間接的に取り扱っています。当社グループは、これらの情報の管理不徹底やそれによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。更に、顧客の個人情報が不適切に取り扱われ、あるいは管理上の問題が発生した場合、当社グループがその情報を直接管理していたかどうかにかかわらず、当社グループへの信頼の低下、クレーム、訴訟等につながり、当社の事業、経営成績は影響を受ける可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資や雇用環境の改善傾向が続き緩やかな回復基調にある一方で、米中貿易摩擦の激化や中国経済の急減速などの影響により先行きが不透明な状態が続きました。
国内石油製品は、ガソリンについては車両の燃費改善など構造的要因による若干の需要減に加え、暖冬の影響による灯油等の中間留分、電源の多様化などの影響に伴う電力向け重油の需要減少により、石油製品全体では前年度を下回りました。
ドバイ原油価格は、米国の対イラン経済制裁に伴う供給懸念などを背景に秋口まで1バレル80ドル超まで上昇していたものの、11月以降は需給の緩和や世界経済の先行き不透明感などにより50ドル台まで下落しました。その後、OPEC協調減産の効果などにより戻り基調となりました。この結果、平均価格では前期比13.5ドル/バレル上昇の69.3ドル/バレルとなりました。
石油化学製品は、アジアを中心に需要が堅調に推移しました。石油化学原料であるナフサの平均価格は、前期比で101ドル/トン上昇の621ドル/トンとなりました。
円の対米ドルレートは、年度初めは107円台でスタートしましたが、米国の政策金利の引き上げなどにより10月には114円台まで円安が進みました。その後、概ね1ドル109円台から113円台の範囲で安定して推移し、平均レートはほぼ前期と同じ110.8円/ドルとなりました。
イ.業績
このような環境下、当社グループの当期の売上高は、原油価格及びナフサ価格の上昇による石油製品セグメント及び石油化学製品セグメントでの増収などにより4兆4,251億円(前期比+18.6%)となりました。
売上原価は、原油価格及びナフサ価格の上昇などにより3兆9,374億円(前期比+21.6%)となりました。販売費及び一般管理費は、3,084億円(前期比+5.4%)となりました。
営業利益は、資源価格上昇による資源セグメントでの増益があった一方で、精製用燃料費の増加や在庫評価影響による石油製品セグメントの減益などにより1,793億円(前期比△10.9%)となりました。
営業外損益は、利息や配当金の受取が増加したものの、持分法投資損益の減少などにより102億円(前期比△352億円)の損失となりました。その結果、経常利益は1,691億円(前期比△25.3%)となりました。
特別損益は、石油開発事業において油田プレミアム契約解消益を計上した一方で、固定資産の減損損失やLPG事業に係る違約金負担額などを計上したことにより、244億円(前期比△103億円)の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、税金等調整前当期純利益が減少したものの、前期に関係会社株式に係る過年度損失額を税務上損金算入したことによる税金費用の減額などがあったことにより579億円(前期比+126億円)となりました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、資源セグメントでの増益などにより53億円(前期比+18.5%)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は815億円(前期比△49.8%)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
セグメント別売上高
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
(2018年3月期) |
(2019年3月期) |
増減額 |
増減率 |
|
|
石油製品 |
28,708 |
34,889 |
+6,181 |
+21.5% |
|
石油化学製品 |
5,007 |
5,554 |
+547 |
+10.9% |
|
資源 |
2,894 |
3,080 |
+186 |
+6.4% |
|
その他 |
698 |
728 |
+30 |
+4.3% |
|
合計 |
37,307 |
44,251 |
+6,945 |
+18.6% |
セグメント別営業利益
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
(2018年3月期) |
(2019年3月期) |
増減額 |
増減率 |
|
|
石油製品 (在庫評価影響除き) |
886 (575) |
565 (505) |
△321 (△70) |
△36.3% (△12.2%) |
|
石油化学製品 |
422 |
318 |
△104 |
△24.7% |
|
資源 |
668 |
871 |
+203 |
+30.4% |
|
その他 |
73 |
78 |
+5 |
+6.9% |
|
調整額 |
△36 |
△39 |
△3 |
- |
|
合計 (在庫評価影響除き) |
2,013 (1,702) |
1,793 (1,733) |
△220 (+31) |
△10.9% (+1.8%) |
(ア)石油製品セグメント
石油製品セグメントにおいては、国内の供給・販売体制の競争力強化及び海外市場への事業拡大を基本戦略として、次のような取り組みを行いました。
(燃料油事業)
供給においては、需給環境や販売状況を踏まえた原油処理を行い、供給コスト削減と安定供給に努めました。
また、愛知製油所ではFuel to Chemicalの推進のためミックスキシレン回収装置の商業運転を開始しました。
販売においては、新たな事業モデルの構築の柱である「出光オートフラット」を軸としたTCS事業を強化するとともに、「PIT in plus」や「ドライブコンサルタント」といった新たなWeb施策を打ち出すことで、カーライフステーションへの転換に取り組みました。
海外においては、ベトナムにおいてニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッドの運営するニソン製油所が2018年11月14日付で商業運転を開始し、成長するアジア市場での事業展開を進めています。また、環太平洋地域等の海外成長市場での燃料油の供給から販売に至る事業基盤構築のため、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進めました。
(潤滑油事業)
潤滑油販売数量は、好調なアジア・北米を中心とした海外販売の伸長を背景に国内・海外合計で120万KLを超え、過去最高を更新しました。グローバルマーケットでの強固な販売・供給体制の構築に向け、販売体制の見直しと海外生産能力の増強検討を進めました。
石油製品セグメントの売上高は、原油の輸入価格が上昇したことなどにより3兆4,889億円(前期比+21.5%)となりました。営業利益は、製品マージンの改善があったものの、精製用燃料費の増加や在庫評価影響の減少などにより565億円(前期比△36.3%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は60億円です。
(イ)石油化学製品セグメント
石油化学製品セグメントにおいては、基礎化学品事業の更なる収益基盤の強化と、機能化学品事業の成長市場における事業規模拡大を基本戦略として、次のような取り組みを行いました。
(基礎化学品事業)
基礎化学品事業においては、三井化学㈱と共同運営している千葉ケミカル製造有限責任事業組合のエチレン装置の改修により原料選択の多様化を図りました。また、良好な市場環境下でエチレン装置、芳香族装置等の主要装置の安定稼働を維持することにより、コンビナート各社、自社誘導品へのオレフィン・芳香族の安定供給を実施しました。
(機能化学品事業)
エンジニアリングプラスチック事業においては、ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロン®)とシンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレック®)等を中心に国内外への増販を図りました。
粘接着基材事業では、ホットメルト接着材の粘着付与剤として需要伸長が期待できる水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)において、台湾FPCC社(Formosa Petrochemical Corporation)と共同で新プラントを建設中です。また、従来の結晶性ポリプロピレン樹脂と比べて大幅に融点が低く軟質特性を有する機能性軟質ポリプロピレン(商品名:エルモーデュ®)については、従来からの衛生材向け接着基剤、不織布の改質材などに加え新たな用途開拓に国内外で取り組んでいます。
石油化学製品セグメントの売上高は、ナフサ価格が上昇したことなどにより5,554億円(前期比+10.9%)となりました。営業利益は、製造用燃料費の増加及びスチレンモノマー等の市況要因などにより318億円(前期比△24.7%)となりました。
(ウ)資源セグメント
資源セグメントは、安定生産の継続、徹底したコスト削減と生産性向上による保有資産の価値向上と資産ポートフォリオ見直しを基本方針として、次のような取り組みを行いました。
(石油開発事業・地熱事業)
石油開発事業においては、既存油田の安定操業・生産とともに操業改善活動を行った結果、ノルウェー領北海において原油換算で日量2.7万バレルの原油・ガスを生産しました。また、ベトナム沖において発見したガス田について、オペレーターとして開発作業に取り組みました。
地熱事業においては、大分県滝上地区にてバイナリー発電を含めて順調な操業を継続するとともに、秋田県湯沢市小安地域にて、事業実証を目的に環境アセスメントに着手しました。その他、東北地区等での調査活動を行いました。
石油開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格が上昇したものの、生産数量の減少などにより775億円(前期比△4.1%)となりました。営業利益は370億円(前期比+36.0%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
石炭事業においては、日本企業唯一のオペレーターシップを活かし競争力ある鉱山経営を行い、その結果、豪州・インドネシアの自社炭合計で12.5百万トンを生産しました。また、低炭素ソリューションの提供のため、当社、郵船商事㈱、日本郵船㈱の3社で共同開発した石炭ボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」の販売を進めるとともに、バイオマス燃料のサンプル製造を開始しました。
その他、ウラン事業においては、カナダのシガーレイク鉱山において生産したウラン精鉱の販売をしています。
石炭事業・その他事業の売上高は、石炭事業で石炭価格が大幅に上昇した影響などにより2,305億円(前期比+10.5%)となりました。営業利益は501億円(前期比+26.6%)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は3,080億円(前期比+6.4%)、営業利益は871億円(前期比+30.4%)となりました。
(エ)その他セグメント
その他セグメントのうち、電子材料事業、アグリバイオ事業、再生可能エネルギー事業においては、次のような取り組みを行いました。
(電子材料事業)
有機EL材料分野においては、中国における需要拡大に備えて四川省成都市に現地法人を設立しました。また、「有機EL素子及び有機発光媒体の発明」において、2018年度全国発明表彰「恩賜発明賞」と「発明実施功績賞」を受賞しました。
(アグリバイオ事業)
農業緑化資材においては、販売会社である出光アグリ㈱を通じ、先進的生産団体への生物農薬の拡販活動に取り組んでいます。
家畜用補助飼料においては、牛、鳥、豚の胃腸を健康に保つ「ルミナップ®」「クロストップ®」「モルッカ」について、国内での大型農場を中心とした採用拡大に取り組むとともに、海外の販路拡大に向けた準備を進めました。
(再生可能エネルギー事業)
再生可能エネルギーへの取り組みとして、北九州市門司区、兵庫県姫路市、福島県いわき市において太陽光発電所(メガソーラー、発電能力計 15,210kW)を運営しています。バイオマス発電は、稼働中の土佐グリーンパワー㈱(当社出資比率50%、発電出力6,250kW)及び㈱福井グリーンパワー(当社出資比率10%、発電出力7,340kW)が稼働中です。また、風力発電は、二又風力開発㈱(当社出資比率40%、発電出力51,000kW)が稼働中です。
以上の結果、その他セグメントの売上高は728億円(前期比+4.3%)、営業利益は78億円(前期比+6.9%)となりました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (2018年3月期) |
当連結会計年度 (2019年3月期) |
増減 |
|
流動資産 |
12,082 |
12,254 |
+172 |
|
固定資産 |
17,120 |
16,649 |
△471 |
|
資産合計 |
29,203 |
28,903 |
△300 |
|
流動負債 |
11,616 |
11,958 |
+342 |
|
固定負債 |
8,527 |
8,156 |
△372 |
|
負債合計 |
20,143 |
20,114 |
△30 |
|
純資産合計 |
9,059 |
8,789 |
△270 |
|
負債純資産合計 |
29,203 |
28,903 |
△300 |
ア.資産の部
当期末における資産合計は、原油の輸入価格の上昇によるたな卸資産の増加などがあったものの、スノーレ鉱区買収時に締結した油田プレミアム契約の解消に伴う油田プレミアム資産の取り崩しや持分法投資損失の計上に伴い投資有価証券が減少したことなどにより、2兆8,903億円(前期末比△300億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、原油の輸入価格の上昇などによる一時的な運転資金需要に伴い有利子負債(9,514億円)が増加した一方、スノーレ鉱区買収時に締結した油田プレミアム契約の解消に伴う油田プレミアム負債の取り崩しなどの影響により、2兆114億円(前期末比△30億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益815億円を計上した一方、自己株式の取得(559億円)や配当金の支払い(185億円)及び円高による為替換算調整勘定の減少などにより8,789億円(前期末比△270億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.7%から当期末は29.1%(前期末比△0.6ポイント)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (2018年3月期) |
当連結会計年度 (2019年3月期) |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
1,368 |
1,510 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△899 |
△1,223 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△519 |
△202 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
8 |
△47 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△43 |
39 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
901 |
868 |
|
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の 増減額(△は減少) |
10 |
△1 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
868 |
907 |
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、907億円となり、前期末に比べ、39億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の上昇に伴うたな卸資産の増加や法人税等の支払などの資金減少要因を、税金等調整前当期純利益や減価償却費などの資金増加要因が上回ったため、1,510億円の収入となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
設備投資による有形固定資産の取得(763億円)や長期貸付金の増加(197億円)などにより、1,223億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
短期借入金・コマーシャル・ペーパーによる資金調達が増加した一方で、自己株式の取得(559億円)や配当金の支払い(185億円)などにより、202億円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
石油製品 |
1,837,286 |
120.0 |
|
石油化学製品 |
494,876 |
109.8 |
|
資源 |
223,940 |
101.7 |
|
その他 |
14,523 |
89.3 |
|
合計 |
2,570,628 |
115.9 |
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源部門については、販売金額によって記載をしています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
石油製品 |
3,488,938 |
121.5 |
|
石油化学製品 |
555,405 |
110.9 |
|
資源 |
307,976 |
106.4 |
|
その他 |
72,824 |
104.3 |
|
合計 |
4,425,144 |
118.6 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
4.各部門の販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。営業費用の主なものは、人件費、物流費、作業費、研究開発費等です。
設備資金については、各事業分野別に以下の資金需要があります。
(ア)燃料油事業・基礎化学品事業については、販売・供給体制の再構築と競争力強化を目的とした投資や海外成長市場への進出による事業拡大のための投資
(イ)潤滑油事業・機能化学品事業・電子材料事業・アグリバイオ事業については、環境配慮型商品の開発強化やグローバル展開による事業拡大に向けた投資
(ウ)石油開発事業・石炭事業・ウラン事業については、保有鉱区の安定生産の継続と探鉱開発による埋蔵量確保に向けた投資
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の活用、更に資本増強等を効果的に組み合わせて調達していきます。
当期末の短期借入金の残高は1,547億円、長期借入金の残高は5,312億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は600億円、コマーシャル・ペーパーの残高は2,040億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は、各々の子会社が現地通貨を借入にて調達するほか、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達及び十分な流動性確保並びに、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行5行で作られるシンジケート団と、2020年3月までの契約期間において短期借入を実行できる特定融資枠契約(災害型コミットメントライン契約)を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。なお、当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。
特定融資枠契約の極度額 1,000億円
③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現と持続的な成長を目指しています。この経営の基本戦略を達成するため、自己資本利益率(ROE)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
当該指標のうち前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)の主な悪化要因は、以下のとおりです。
(ア)在庫評価影響の減少などによる石油製品セグメントの減益、及び製造用燃料費の増加などによる石油化学製品セグメントの減益
(イ)事業構造改善に伴う損失やLPG事業に係る違約金負担額などの特別損失の計上
(ウ)上記などによる親会社株主に帰属する当期純利益の減少
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
|
|
2015年 3月期 |
2016年 3月期 |
2017年 3月期 |
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
|
自己資本利益率(ROE)(%) |
- |
- |
16.3 |
22.3 |
9.5 |
|
ネットD/Eレシオ(倍) |
1.5 |
1.6 |
1.6 |
0.9 |
1.0 |
|
自己資本比率(%) |
21.5 |
20.8 |
22.1 |
29.7 |
29.1 |
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):当期純利益/自己資本(期首期末平均)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2015年3月期及び2016年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する
当期純損失を計上しているため記載していません。
(1)当社は、2018年7月10日開催の取締役会において、以下の合意書の締結を決議し、同日付で締結しました。
|
合意書の名称 |
相手先 |
内容 |
|
当社大株主との間の合意書 |
日章興産株式会社 出光正和氏 |
1.当社と昭和シェル石油株式会社との株式交換の実施 2.当事者間で合意した事項が満たされていることを条件とする、当社株主総会での大株主による賛成の議決権行使 3.株式交換後の当社の運営 |
|
昭和シェル石油株式会社との経営統合に関する合意書 |
昭和シェル石油 株式会社 |
1.経営統合の方式及びスケジュール 2.経営統合の経営体制等 3.経営統合後の株主還元方針 |
(2)当社は、2018年10月16日開催の取締役会において、昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)との間で、両社間の株式交換(以下「本株式交換」という。)による経営統合の実施を通じて、短期的にはシナジー創出を最大化し屈指の競争力を持つ企業体を目指しつつ、中長期的には事業構成の最適化や環境・社会・ガバナンスへの取組み等を推進し、レジリエントな企業体への進化を図り、もって両社の企業価値を向上させることを目的として、株式交換契約の締結を決議し、同日付で締結しました。なお、当該契約は、2018年12月18日開催の当社及び昭和シェルの臨時株主総会において承認され、2019年4月1日に効力を生じました。
本株式交換の概要は、以下のとおりです。
①株式交換の内容
当社を完全親会社とし、昭和シェルを完全子会社とする株式交換
②株式交換の効力発生日
2019年4月1日
③株式交換の方法
当社は、本株式交換に際して、本株式交換により当社が昭和シェルの発行済株式の全部を取得する時点の直前時における昭和シェルの株主(昭和シェルの2019年3月18日開催の取締役会決議に基づく、昭和シェルの自己株式の消却後の株主をいい、昭和シェル及び当社を除きます。)に対して、当社の普通株式104,411,875株を割当交付しました。なお、当社は、割当交付に際し当社が保有する自己株式10,486,357株を充当しました。
④株式交換比率
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|
当社 |
昭和シェル |
|
株式交換比率 |
1 |
0.41 |
(注)株式の割当比率
昭和シェルの普通株式1株に対して当社の普通株式0.41株を割当交付しました。
⑤株式交換比率の算定根拠
当社及び昭和シェルは、それぞれ、第三者算定機関による株式交換比率の算定結果を参考に、両社が相互に実施したデュー・ディリジェンスの結果及び両社の株主の利益等を踏まえ、両社の株価状況を主たる基準として、両社で株式交換比率について慎重に協議を重ねた結果、上記④に記載の株式交換比率が適切であるとの判断に至り、合意・決定しました。
⑥本株式交換の後の株式交換完全親会社となる会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
|
商号 |
出光興産株式会社 (トレードネーム:出光昭和シェル) |
|
本店の所在地 |
東京都千代田区丸の内三丁目1番1号 |
|
代表者の氏名 |
代表取締役会長 月岡 隆 代表取締役副会長 亀岡 剛 代表取締役社長 木藤 俊一 代表取締役 岡田 智典 |
|
資本金の額 |
168,351百万円 |
|
純資産の額 |
現時点では確定していません |
|
総資産の額 |
現時点では確定していません |
|
事業内容 |
石油精製並びに油脂製造、販売 石油化学製品の製造、販売 石油・石炭資源の開発、生産、販売 電子材料・農業薬品の開発、製造販売等 |
(3)当社は、2019年5月15日開催の取締役会において、当社の完全子会社である昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)から同社の全事業を承継するため、当社を吸収分割承継会社、昭和シェルを吸収分割会社とする吸収分割(以下「本吸収分割」という。)を行うことを決議し、同日、昭和シェルとの間で本吸収分割に係る吸収分割契約(以下「本吸収分割契約」という。)を締結しました。
本吸収分割の概要は、以下のとおりです。
①本吸収分割の目的
本吸収分割により昭和シェルの資産、負債及び権利義務を当社に承継し、両社の組織及び事業の一体化を図ることで、両社の経営統合を推進し、より一層のシナジー創出を行うことを目的としています。
②本吸収分割の方法
当社を吸収分割承継会社、昭和シェルを吸収分割会社とする簡易吸収分割です。
③本吸収分割の効力発生日
2019年7月1日(予定)
④本吸収分割に係る割当ての内容
本吸収分割による対価の割当てはありません。
⑤承継会社が承継する権利義務
当社は、本吸収分割により、昭和シェルの全事業に属する資産、債務及び権利義務のうち、本吸収分割契約において規定するものを承継します。
⑥承継する事業の経営成績
売上高 3,082,871百万円(2019年3月期)
⑦承継する資産、負債の状況(2019年3月31日現在)
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資 産 |
負 債 |
||
|
流動資産 |
586,993百万円 |
流動負債 |
515,965百万円 |
|
固定資産 |
283,493百万円 |
固定負債 |
130,234百万円 |
|
合計 |
870,486百万円 |
合計 |
646,199百万円 |
⑧本吸収分割後の承継会社の概要
本吸収分割後の当社の商号、本社の所在地、代表者の氏名及び資本金及び決算期に変更はありません。本吸収分割後の事業内容は、①石油精製並びに油脂製造、販売、②石油化学製品の製造、販売、③電子材料・農業薬品の開発、製造、販売、④電気供給事業、⑤石油・石炭資源の開発、生産、販売等となる予定です。
当社グループは、石油製品、石油化学製品、資源、電子材料及びアグリバイオの各事業、更には新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。現在、図に示した研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。
なお、研究開発費については、各セグメントに配賦できない全社共通研究費23億円が含まれており、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は前年同期比16億円増加の
(当社グループの研究開発体制)
(注)先進技術研究所は、2019年4月1日付で次世代技術研究所に名称を変更しました。
当連結会計年度における各セグメントの研究開発内容、研究開発経費及び研究開発成果は次のとおりです。
(1) 石油製品セグメント
石油製品セグメントでは、環境に配慮した石油製品、潤滑油製品の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
①燃料油事業では、重質油処理装置の全体最適処理技術の開発及び、劣質原油処理時の腐食機構の解明と対策検討、石油製品の高付加価値化を目的としたペトロリオミクス技術の開発、プロセス技術を活かした事業競争力の強化、製油所・事業所の高効率化、省エネルギー化及び環境調和型社会への貢献を目指した技術開発を行っています。
②潤滑油事業では、省燃費・省エネルギーや環境に配慮して開発した商品をグローバルに展開し、国内及び海外市場への安定供給実現に努めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・自動車用潤滑油においては、省燃費性を更に高めたエンジン油と、EV車両用潤滑油を開発し、商品ラインアップを拡充しました。
・工業用潤滑油においては、環境対応型高機能商品の開発を進め、消費電力削減に繋がる省エネルギー型機械設備用潤滑油や冷凍機油、産業ロボット用グリース、更に、作業環境改善効果の高い水溶性切削油やプレス油の開発を推進し、商品ラインアップを拡充しました。
・中国での需要家ニーズに的確・迅速に対応するため、開発センターを設置して研究開発活動を開始しました。
(2) 石油化学製品セグメント
石油化学製品セグメントでは、機能材料事業において、機能材料及び樹脂加工製品の競争力強化に向けた保有技術の改良や新規材料の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
①機能材料分野では、新機能を有した粘接着基材の開発及びエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂やシンジオタクチックポリスチレン樹脂の高付加価値商品の開発に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・通常の結晶性ポリプロピレン樹脂と比べて大幅に融点が低く、軟質特性を有する機能性軟質ポリプロピレン(商品名:エルモーデュ®)は、従来から展開してきた衛生材料用接着剤原料、不織布改質剤、フィルム改質剤、及び木工用接着剤原料としての用途開発を展開し、拡販に繋げました。
・ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロン®)では、透明性や流動性に優れた新しいグレードを開発し、液晶ディスプレイ部品や自動車を含む各種照明部品市場で好評を得ています。特に自動車照明用材料では高透明性が要求されるDRL(Day Time Running Light)部品向けの販売が好調で、ここ数年高い伸び率で拡大を続けています。2015年12月に千葉工場のポリカーボネート製造装置を停止し、2016年度より特殊グレードを含む全てのグレードの生産を、台湾Formosaグループの中核企業であるFCFC社へ集約し、市場での競争力をさらに向上させました。昨年はこの特殊グレードで車載用途への採用も始まり、今後の展開を加速していきます。
・シンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレック®)では、成型サイクルや成形時の流動性を改良したグレードを展開し、自動車電装部品等への販売を拡大しました。また、電波透過性、電気特性が評価され車間距離レーダー部品、電気自動車部品、高速通信向け部品への採用を拡大しました。
②シート・フィルム分野では、包装材料のグレード開発及び産業用途の加飾分野の開発を行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・包装材料では、顧客ニーズに基づくグレード開発を推進し、バリアシート(商品名:マルチレイTM)を用いた電子レンジに対応した通蒸容器の開発、直接カットジッパーテープグレードの改良(商品名:プラロックTM)等により、商品ラインアップの拡充を行いました。
・加飾分野では、従来から展開してきた大手バイクメーカーへの展開を拡大するとともに、新たに開発した塗装代替の高輝度グレードにより自動車・住設・家電の各分野へ用途展開し、拡販に繋げました。
・昨今の環境問題対応への社会的要求を受け止め、顧客のニーズに合うシート・フィルム・ジッパーの環境対応商品の開発を推進しました。
(3) 資源セグメント
石炭事業では、鉱山で生産される製品炭の品質を向上させるとともに、石炭を効率よくクリーンに利用して環境負荷を低減する技術の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
・石炭火力のCO2排出削減に繋がる木質バイオマスの製造・販売を目指し、製造技術、評価技術の確立及び実機ボイラでの実証試験を実施しました。これを用いて、石炭との混焼に最適な木質ペレットの選定及び需要家へのコンサルティングセールスを行っています。
・郵船商事㈱が保有するボイラ制御最適化システム(商品名:ULTY)と出光が保有する石炭高効率燃焼技術を融合させることで機能向上を図った新型ULTY(商品名:ULTY-V plus) を発売し、需要家の石炭ボイラから排出されるCO2の削減に貢献しています。本事業は日本郵船グループと共同で実施しています。
・低品位炭の利用促進を目的に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同でインドネシア褐炭を用いた炭素材料の研究開発を実施しました。
(4) その他セグメント
上記以外に、電子材料事業、アグリバイオ事業で研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費は70億円です。
①電子材料事業では、有機EL材料、酸化物半導体材料に代表される電子材料分野での新素材の研究開発を行っています。特に有機EL材料においては、顧客との連携強化、大学との共同研究などを通じて商材の更なる高性能化から次世代技術の開発まで、幅広い開発活動を推進しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・2018年4月、酸化物半導体材料の開発加速のために、先進技術研究所先端素材研究室の無機材料開発メンバー
を統合して、人員増強を行いました。
・2018年5月、全国発明表彰において、有機EL素子及び有機発光媒体の発明で「恩賜発明賞」と「発明実施功績賞」を受賞しました。また、本受賞が、出光グループのブランドイメージ向上に大きく貢献したことを高く評価され、本発明の発明者4名に対して社長賞が授与されました。
・2018年12月、中国成都市内に有機EL材料の製造工場を建設することを発表しました。本拠点には、製造工場だけでなく、顧客と共同で評価できる機能を設け、当社開発材料の採用促進を図ってまいります。
②アグリバイオ事業では、微生物培養技術や応用技術、天然物活用技術によって、農業や畜産分野の「食の安全・安心」と「増大する食糧需要」に貢献する商品のラインアップを拡充しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・畜産分野では、日本国内での新規登録・発売が1剤(堆肥化促進剤)、また海外での新規登録が1剤(飼料原料)となりました。
・連結子会社の㈱エス・ディー・エス バイオテックでは、日本国内での新規農薬の登録件数は2剤、新規農薬の登録申請は4剤となりました。また、17剤の拡大登録を取得しました。
③リチウム電池材料では、次世代電池として技術確立が望まれる全固体電池のキーマテリアルである固体電解質を中心とした次世代電池用材料及びその量産化の研究開発を行っています。今後市場の拡大が見込まれる電動車両に必要な、安全で高性能な全固体電池の確立に向け、固体電解質の材料開発・提供を通じて推進していきます。
・研究開発・市場開拓を加速させるために、2018年7月にリチウム電池材料室を新設しました。
(5) 全社共通(コーポレート研究)
コーポレート研究としては、事業部研究所で実施している研究開発を高度な分析機器と解析技術を用いてサポートすることと、社会や技術のトレンドを掴み、適社性を加味しながら新規事業の創出に向けた機能材料の開発や気候変動対策の研究を実施しています。
・2018年4月、AIや機械学習機能の活用による次世代材料設計の加速化を目指し、先進技術研究所内に新たに計算科学チームを編成しました。
・2018年7月、中長期的な材料開発の基礎研究を継続・強化するため、先進技術研究所内に次世代電池材料研究室を新設しました。