第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本資料作成時点において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う影響については、社会生活、経営に与えるインパクトの見通しが困難である事などから織り込んでいません。また、収束後の経営環境の変化も現時点では想定が難しい状況です。今後の状況を注視し、適切な時期に事業への影響を評価・反映していく予定です。

したがって、以下では当社グループが2019年11月14日に公表した中期経営計画の骨子を記載しています。

 

(1) 経営ビジョン

 私たちは、ダイバーシティ&インクルージョンをもとに、環境・社会と調和を図りながら、お客様・ステークホルダーとともに、新たな価値創造に挑戦し続ける日本発のエネルギー共創企業です。
ア.多様なエネルギー・素材を、安定的に届けます。
イ.培ってきた課題解決力を、世界に展開します。
ウ.変化への適応性に富む、レジリエントな企業体を作ります。

 

(2)経営戦略等

①2030年のビジョン

ア.2030年の事業環境認識

(ア)エネルギー需要構造の変化

・先進国:化石燃料需要減、多様化が進展 (電化・分散化・再エネ化)

・新興国:堅調な経済成長、エネルギー需要は増加

(イ)技術革新の進展

・新技術(EV・ロボットなど)向けの新たな素材需要が増加

・デジタル変革の進展

(ウ)ライフスタイルの変化・社会の要請

・消費者のエコロジー意識向上、循環型社会の進展

・顧客ニーズ変化(所有から使用へ)

・国内は高齢化・過疎化の進展

・SDGs達成への具体的貢献等、企業の社会的責任に対する要請の高まり

(環境対応、地域貢献、ガバナンス強化、職場風土改善、ダイバーシティ等)

 

イ.2030年に向けた基本方針

基本方針1. レジリエントな事業ポートフォリオの実現

(ア)収益基盤事業の構造改革

・燃料油事業の収益追求(シナジー最大化、製油所信頼性向上)

・ニソン製油所の収益貢献化

(イ)成長事業の拡大

・事業規模・領域拡大(中計期間のM&A1,000億円規模)

・高機能材事業比率2030年30%へ

・海外再エネ等の総電源開発量2030年5GWへ

(ウ)次世代事業の創出

・社会の変化、顧客ニーズの多様化、環境負荷低減等を見据えた新たな事業の創出

 

基本方針2. 社会の要請に適応したビジネスプラットフォームの構築

(ア)地球環境・社会との調和

・GHG削減の取り組み(2030年:17年比▲15%)

(イ)ガバナンスの進化

・取締役会の役割機能強化

(ウ)デジタル変革の加速

・デジタル技術活用による新たな価値創造

 

ウ.定量目標

 「成長性」「収益安定性(市況変動の影響)」「環境負荷」など、複眼的視点からポートフォリオを検討し、結果として化石燃料事業への過度な依存を軽減します。

 

 

2030年度

営業利益+持分

3,000億円

3事業

営業利益比率(燃料・開発・石炭)

50%未満

高機能材事業

営業利益比率

30%以上

総電源開発量累計

(内 海外)

5GW以上

(4GW以上)

 

エ.GHGの削減目標

 GHG削減は「環境」「社会」「経済」の各分野への同時貢献を念頭に推進するという基本認識の下、3つの指標を用いて当社の関連活動を加速します。

(ア)目標値

・自社Scope1+2削減量 2030年目標値(2017年比):▲200万t-CO2(▲15%)

(イ)モニタリング指標

・供給エネルギー低炭素度 2050年の目安(2017年比):▲30%

※ただし、社会の低炭素化や技術進展の動向を踏まえて、目安の見直しを随時行う

・全社収益の炭素脱却度:2050年の事業環境を見極め、収益目標と炭素脱却度を設定

 

中期経営計画(2020~2022年度)の概要

ア.経営目標

燃料油セグメントにおける統合シナジーの拡大、ニソン製油所の収益改善に加えて、潤滑油を中心とした高機能材セグメントの事業拡大および海外電源開発の拡大等により、本中期経営計画期間累計の当期純利益は4,800億円を目指します。

 

 

中計期間累計

(3年間)

 当期利益

4,800 億円

 営業利益+持分

7,200 億円

 ROE

10%以上

 FCF

4,000億円

 

イ.キャッシュバランス

当期純利益4,800億円の確保に加えて、資産売却等も実施することで、1兆300億円(3年間累計)のキャッシュインを確保します。

また、株主還元後2,000億円のフリーキャシュは、成長分野への戦略投資、財務体質強化、22年度以降の株主還元の原資として、収支状況等を総合的に勘案の上、最終的な配分を決定します。

 

(単位:億円)

 

3年間累計

内訳

 キャッシュイン

10,300

当期利益4,800、償却費等4,500、資産売却等1,000

 キャッシュアウト

8,300

投資6,300(うちM&A財源1,000) 、株主還元2,000

 株主還元後

 フリーキャッシュ

2,000

成長分野への戦略投資、財務体質強化、

22年度以降の株主還元

 

ウ.投資計画

本中期経営計画期間中は、収益基盤事業の構造改革を推進すべく、燃料油事業の安定操業に向けた操業維持投資や事業基盤強化投資に一定の金額を配分します。

一方、事業ポートフォリオの変革に向け、機能化学品、潤滑油、電子材料など、高機能材事業群の事業領域拡大を目的とした成長戦略投資を積極的に行っていく方針です。

また、成長分野においてはM&Aについても慎重かつ大胆に検討します。

 

(単位:億円)

投資区分

位置付け

3年間累計

 成長・戦略

更なる収益拡大を追求した収益基盤事業・成長事業・次世代事業への投資

1,900

 事業基盤強化

原料多様化、定期修繕短縮、BCP対応等安定操業、競争力強化に資する投資

700

 操業維持

メンテナンス等の維持更新投資

2,700

 M&A財源

高機能材事業(機能化学品等)の成長分野におけるM&A財源

1,000

 合計

 

6,300

 

エ.統合シナジーの最大化

経営統合によるシナジー効果600億円を2021年度末までに実現します。そのうち350億円については2019年度末までに達成しており、残る250億円についてはブランド施策統合、販売戦略見直し、精製コスト最適化、DTK(だったらこうしよう)プロジェクト推進による業務効率化などにより、2021年度までに達成すると同時に、さらなるシナジー創出を目指します。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

① セグメント毎の課題

 当社のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。

ア. 燃料油セグメント

(ア)石油精製の最適化

 石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていきます。それにより、アジア・太平洋地域の新鋭製油所に伍する精製競争力を有し、社会に必要とされる製油所群であることを目指します。

 

(イ)燃料油事業の海外展開

 今後も需要が拡大するアジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、海外での燃料油事業の拡大を進めていきます。

 

(ウ)特約店、販売店のネットワーク強化

 特約店、販売店ネットワークは、燃料油、ガス等の、地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約店、販売店の経営力の安定化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。6,500店の両ブランドSSネットワークを最大限活用していただけるよう、価値提供を行います。

 また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。

 

イ. 基礎化学品セグメント

 国内事業の収益基盤の安定化を更に進めるため、千葉、徳山のコンビナート顧客と連携し、事業環境に応じた安定生産と最適化、原料多様化によるコスト競争力強化を図ります。

 燃料油事業と一体となった「Fuel and Chemical」の検討を具体化し、効率的な装置稼働と収益力向上を進めます。また、供給ソースが増える製品を軸に事業拡大とポートフォリオの選択幅を広げ、オレフィン、アロマ製品の事業基盤の安定化と収益の拡大を目指します。

ウ. 高機能材セグメント

(ア)潤滑油事業

 自動車用潤滑油の分野では高度なトライボロジー(潤滑工学)を駆使して、お客様のニーズに適ったOEM製品を提供することで、お客様の事業展開をサポートしていきます。また、日本国内の自動車販売台数が横ばいとなる中、自動車メーカーや部品メーカーの海外移転に伴い市場がアジア等の新興国に移っており、今後も海外生産拠点を拡充してまいります。更に、世界的な潮流となっている脱炭素社会の実現に向け、EV市場をターゲットに、EVの電動ユニットに適合する潤滑油、モーター駆動に伴う高耐熱性化・低騒音化のニーズに対応するグリースの開発に取り組みます。また産業機械向けの油圧作動油やギヤ油などの工業用潤滑油についても、環境問題への関心の高まりによる省エネ・省資源のニーズに合致した、環境対応型高機能商品の開発を行います。

 

(イ)機能化学品事業

 エンジニアリングプラスチック、粘接着基材などの独自技術をベースに、国内外の成長市場や需要拡大が見込まれる用途での販売拡大を進めます。技術革新が速い自動車・電装部品や情報通信機器、アジアを中心として需要が拡大している生活消費財などが主なターゲットとなります。市場のニーズに応えながら安定生産と事業規模拡大を進めるため、水添石油樹脂の海外生産を2019年度から開始し、2022年にはシンジオタクチックポリスチレン樹脂の海外生産を計画しています。

 

(ウ)電子材料事業

 市場拡大期に入った有機EL材料需要への対応のため、更なる性能向上を実現できる研究開発体制を整備し、海外製造拠点を増強することで、ユーザーの期待に応えます。

 

(エ)高機能アスファルト事業

 国内唯一の総合アスファルトメーカーとして、これまで培ってきた独自の技術力とノウハウを活かし、環境にやさしい商品を開発、提案してまいります。特に施工後の長寿命化や、施工性改善を通して、国内外の社会インフラ強靭化に貢献していきます。

 

(オ)アグリバイオ事業

 食の安全と農業の生産性向上を目指し、生物農薬の開発を進め、将来的な環境規制強化に対応し得る新たな農薬市場の開拓に取り組みます。

 

(カ)全固体リチウムイオン電池向け固体電解質

 全固体化に伴う電池性能向上により、充電時間の大幅短縮や蓄電能力向上が図られ、EVをはじめ、リチウムイオン電池の活用範囲を広げることが可能となる全固体電池向け固体電解質の事業化に向けた研究・開発を加速し、2020年代の上市を目指します。

 

エ. 電力・再生可能エネルギーセグメント

 国内においては競争力ある自社電源を基盤としつつ外部調達を最適化することで、お客様に電力を供給します。また、当社は、風力、太陽光、バイオマス、地熱発電といった多様な再生可能エネルギー電源を有しており、今後もそのノウハウを活かして地域の特性に応じた電源開発を推進します。海外においては、北米におけるガス火力発電事業の推進、また北米や東南アジアにおける再生可能エネルギー事業に積極的に取り組みます。ソーラーパネル事業においては、従来のパネル販売から電源システム販売を行うシステムインテグレーターへと業態転換を図ることで事業成長を目指します。

 

オ. 資源セグメント

 世界的なエネルギー需要拡大を踏まえ、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については環境負荷低減を図るため、高効率燃焼技術の提案や石炭への混焼比率を高めることができるバイオマス燃料の製造技術を確立します。また、地熱開発については、大分県での地熱事業の維持・継続とともに、新規事業の調査・実証を進めます。

 

カ. 研究開発及び新ビジネス開発

 当社は有機化学、無機化学、環境負荷物質の低減における知見、技術的強みを有しており、これらを高めることで新たな素材やプロセスの開発につなげてまいります。社会的課題の解決に向け、コーポレート研究や各事業に属する製品研究で培ってきた技術をクロスファンクショナルにテーマ化し、国内外の大学、研究機関と連携するオープンイノベーションを推進します。同時に、内外にインキュベーション機能を持ち、ベンチャー企業との提携、資本参加の積極的推進により、研究開発を加速するとともに、新たなビジネスを創生していきます。さらに、デジタルトランスフォーメーションを推進し、次世代(Society5.0)のエネルギーインフラ構築や新たなモビリティを活用したビジネスモデル型事業の開発に取り組みます。

 

②サステナビリティへの取り組み

 化石燃料を事業の中心とする統合新社にとって、地球環境への配慮・貢献や、SDGsの達成に向けた社会課題解決への貢献は必須であると考えています。以下の活動を通して、持続可能な地球環境と社会を実現しつつ、企業としての持続的成長を目指します。

・事業活動上排出する温室効果ガス(GHG)を削減する。

・外部機関の評価を積極的に活用し、事業活動目標に結びつける。

・当社グループの事業にかかわる全ての人々が活き活きと仕事に取り組める職場環境を整備する。

・当社グループの持つ事業資産と低炭素化技術を組み合わせ、課題解決につながる新たな事業創出を行う。

 

③財務上の課題

 経営目標の達成に向け、成長市場での事業展開を積極的に推進していきます。そのためには、リスク対策及び海外展開の強化に向けた資金調達力の向上の観点から更なる財務基盤の強化が必要と考えています。

 

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態・経営成績及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。当社の業績に特に大きな影響を与える商品分野につきましては、セグメント別に記載しています。文中の将来に関する部分は、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する事業等のリスクに関しては、別途記載しています。

 

(1)国際情勢や経済環境等の変化によるリスク

 

当社グループは日本及び世界各地にビジネスを展開しており、各々の地域の政治動向、景気動向及び経済情勢による影響を受ける可能性があります。特に海外諸国の政治的又は経済的要因に起因する世界景気の減速及び日本国内における人口構成の変化等がもたらすエネルギー資源及び製品需要の変動や価格の乱高下は、当社の業績へ影響を与える可能性があります。

 

(2)事業を取り巻く外部環境の変化によるリスク

 

商品市況リスク

(燃料油セグメント)

当社グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、アジアにおける原油需要の変動、中東やアフリカの産油国の政情不安、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も変動することが懸念されます。

当社グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは、たな卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価なたな卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価なたな卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。

なお、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、当社の営業利益は年間40億円増減する可能性があります。

 

(基礎化学品セグメント)

 当社グループにおいて、石油化学事業を中心に、ナフサ・スチレンモノマー・パラキシレンなどの価格の変動をタイムリーに製品価格に反映できず、そのスプレッドを十分に確保することができなかった場合、ナフサなどの製品市況変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(資源セグメント)

石油開発事業の近年の営業利益は、主に原油価格に支えられていますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。なお、1バレル当たりのブレント原油価格が1米ドル変動すると、当社の営業利益は年間10億円増減する可能性があります。

石炭事業においてはオーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売していますが、政治経済情勢あるいはその他の要因により石炭価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

調達リスク

 当社グループは、原油輸入の太宗を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

 

カントリーリスク

(基礎化学品・高機能材セグメント)

当社グループは、主にアジア市場を中心とした基礎化学品の販売及び潤滑油分野における海外展開での事業拡大に努めていますが、経済の低迷や政治等他の要因により市場の成長が鈍化する可能性もあります。このような需要の低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(資源セグメント)

当社グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。現在、当社グループが保有する確認済みの資源や探鉱活動については、ノルウェー、ベトナム等のアジア地域が中心となっており、これらの地域における政治経済情勢等により当社グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない可能性があります。

また当社グループは、オーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売しています。石炭鉱山事業につきましても、政治経済情勢、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けることがあります。

 

為替リスク

当社グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。

また、原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けるほか、燃料油セグメントにおける在庫評価にも影響を受けます。なお、1米ドル当たり1円変動すると、当社の営業利益は年間25億円増減する可能性があります。

 

(3)気候変動・環境規制に関するリスク

 

気候変動への対応に対して世界的に関心が高まる中、パリ協定に見られる低炭素社会への動きが加速し、今後各国における気候変動政策の強化、環境関連法規等の変更・新規導入が実施された場合、多額の費用負担や投資が必要となり、また当社グループの扱う商品の減少スピードが加速する可能性があります。さらに資金調達の観点においても厳しさが増すことが想定され、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、事業展開する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、当社グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行うこと、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。

その他にも、地球温暖化等の環境問題に伴うEV普及等の政策対応等が、将来の石油製品の需要動向に影響を与える可能性があります。また、廃棄プラスチック問題への社会的関心の高まり・規制の強化による使い捨てプラスチック削減に伴う汎用プラスチック需要の伸長鈍化が、基礎化学品や機能化学品の需要動向に影響を与える可能性があります。

 

(4)事業投資に関するリスク

 

当社グループは、事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。今後も石油、石油化学を始めとする既存事業の競争力強化や石油開発・石炭事業の収益確保、新規事業育成のための投資を継続する予定です。特に将来の成長に向けて、機能化学品分野や電子材料分野、アグリバイオ分野において、付加価値の高い製品の開発や、海外再生可能エネルギーへの積極的な投資、事業拡大へ向けたM&Aを行っていく計画ですが、投資に必要なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合や外部調達ができない場合、予定した投資ができず期待された収益機会を失う可能性があります。更に経済情勢や政治動向、市場拡大の遅れ、新素材を含む他社との開発競争等によりこれらの投資が計画どおりの収益をあげられない場合は固定資産の減損損失を計上する可能性もあります。なお、投資の意思決定プロセスにおいて、投資金額を始めとするリスクの多寡に応じた投融資委員会審議を設計することで、投資リスク低減と意思決定の迅速化の両立に努めています。

また、当社グループは、アジア市場における石油及び石油化学事業の展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下当社を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスの建設を進め、2018年11月に商業生産を開始しました。プロジェクトの総事業費は約90億米ドルであり、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。プロジェクトファイナンスによる調達額について銀行団に対し行っている債務保証及びスポンサーによる出資・貸付のうち、NSRPへの当社グループ出資比率相当の35.1%については、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(5)その他経営全般に係るリスク

 

コンプライアンスに関するリスク

 当社グループでは、従来からコンプライアンス規程に基づき、国内外の法令遵守をはじめとした、コンプライアンスの強化に努めています。しかしながら、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス上のリスクが完全に回避できない事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは厳正な品質管理基準に基づき製品を製造していますが、万が一製品に欠陥が発生した場合に備えて保険に加入しています。しかしながら、予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合には、法的責任を負う可能性がある他、ブランドイメージの低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

知的財産に関するリスク

当社グループは、事業の遂行のために知的財産権やライセンスを活用しており、特に石油精製技術や潤滑油、機能化学品、電子材料、アグリバイオ、太陽電池等の付加価値の高い製品分野において特許や企業秘密の位置づけは重要です。また当社グループは、ブランドを商標登録しています。しかしながら、当社グループが保有する特許、企業秘密、商標が当社の知的財産権を保護するために十分であるとは限りません。

 また、当社グループの企業秘密が、従業員や取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。当社グループが、第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性や、第三者から知的財産権の侵害についてクレームを受けて、その技術を利用できなくなる可能性があります。当社グループが、事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、当社グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

自然災害・事故等によるリスク

当社グループの事業は、自然災害や事故、これらに起因する操業停止等のリスクを有しています。自然災害には、地震や津波、台風に加えて、日本という地震の多い地域に立地する製油所・工場における火災や爆発のリスクを含みます。当社グループの設備は、人的や機械的なエラーによる事故の影響を受けることもあり、また保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突等の危険にさらされています。さらに当社グループは、労働紛争や情報システム障害の発生及びパンデミックによるリスクにもさらされています。このようなリスクの発生により当社グループの事業は、長期間にわたって中断される可能性があります。

これらのリスクに対応するため、当社グループは危機対応に関する最上位の規程として「危機発生時の対応規程」を策定し、対応方針や危機レベルの捉え方、連絡系統、対策本部の設置方法などについてまとめています。事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)については、2006年度に首都直下地震版、2009年度には新型インフルエンザ版、2012年度に南海トラフ巨大地震版を策定しました。さらに2015年度に、内閣府より指定公共機関に指定されたことを受け、「防災業務計画」を作成しました。各種BCPに基づく総合防災訓練を毎年実施し、各拠点との連携や課題を確認し、実践的な対応力の強化に努めるとともに、BCPの改定に反映しています。製油所・事業所・工場などにおいては、各種危機対応規程類に基づき、拠点全体で防災訓練を定期的に実施しています。

当社グループは、事故や災害で想定される損失に対し損害保険等を付保していますが、このような保険が損失を填補するために必ずしも十分ではない可能性があります。

 

個人情報管理に関するリスク

当社グループは、石油製品販売やクレジットカード事業等に関して顧客の個人情報や資産データを直接的、間接的に取り扱っています。当社グループは、これらの情報の管理不徹底やそれによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。更に、顧客の個人情報が不適切に取り扱われ、あるいは管理上の問題が発生した場合、当社グループがその情報を直接管理していたかどうかにかかわらず、当社グループへの信頼の低下、クレーム、訴訟等につながり、当社の事業、経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に関するリスク

当社グループの財政状態・経営成績は、COVID-19感染拡大というパンデミックリスクの顕在化により大きな影響を受けています。また、事態が長期化した場合は、その影響が更に拡大する可能性があります。今後の見通しは不透明ではありますが、COVID-19感染拡大は経済動向のみならず、政治・社会・技術動向にも影響を及ぼし得るため、Post COVID-19の事業環境シナリオを策定し、既に公表しています中期経営計画の見直し等、リスクへの対応を進めていきます。

(予想されるリスク)

・原油、石油製品等の輸送における乗組員、運転手の感染による業務の停滞

・国内外での感染拡大防止対策に伴う消費減による石油製品(含む潤滑油)、石油化学製品の需要減及び商品市況への影響

・世界経済停滞による耐久消費財の需要減に伴う潤滑油、機能化学品等の高機能材分野での販売減

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境

 当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資や雇用環境の改善傾向が続き緩やかな回復基調にある一方で、米中貿易摩擦の激化や中国経済の急減速などの影響により先行きが不透明な状態が続きました。また、当連結会計年度末にかけては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により景況感が大きく悪化しました。

 国内石油製品販売量は、ガソリンについては車両の燃費改善など構造的要因による若干の需要減に加え、昨年度に引き続き、暖冬の影響による灯油等の中間留分、電源の多様化などの影響に伴う電力向け重油の需要減少により、全体では前年度を下回りました。

 ドバイ原油価格は、5月中旬までは70ドル/バレルで推移しましたが、米中対立等を受けた世界経済の先行き不透明感の強まり等を背景に5月以降は下落が続きました。12月にOPECプラスの減産目標の引き上げやサウジアラビアの自発的な追加減産の表明などから上昇傾向になりましたが、2月末以降、新型コロナウイルスの拡大による世界経済失速・原油需要減退懸念等にOPECプラスの協調減産協議の決裂が重なり下落が進みました。この結果、平均価格では前期比9.0ドル/バレル下落の60.3ドル/バレルとなりました。

 石油化学製品は、需要は堅調に推移しましたが、新規装置増設を背景に供給過剰となり、石油化学原料であるナフサの平均価格は、前期比で81ドル/トン下落の540ドル/トンとなりました。

 円の対米ドルレートは、4月は111円台でスタートしましたが、5月~9月の米中貿易摩擦の激化等により一時105円台まで円高が進行したものの、米中協議進展の期待が高まった10月以降は円安に推移しました。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、一時102円台まで円高が進みました。その結果、平均レートは前期比2.1円/ドル下落し108.7円/ドルとなりました。

 

イ.業績

 当社グループの当期の売上高は、原油価格やナフサ価格は下落したものの、4月1日に実施した昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)との株式交換による経営統合などにより6兆459億円(前期比+36.6%)となりました。

 売上原価は、5兆6,327億円(前期比+43.1%)となり、販売費及び一般管理費は、4,171億円(前期比+35.2%)となりました。
 営業損益は、燃料油セグメントにおける在庫評価、及び資源セグメントにおける生産量減少や資源価格の下落の影響などにより△39億円(前期比△1,832億円)となりました。

 営業外損益は、持分法投資損失の計上などによ101億円(前期比+1億円)の損失となりました。その結果、経常損益は△140億円(前期比△1,831億円)となりました。
 特別損益は、昭和シェル株式の段階取得に係る差益や前年度に計上した固定資産の減損損失、LPG事業に係る違約金負担額の減少などにより、33億円(前期比+212億円)の損失となりました。
 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、36億(前期比△544億円)となり、非支配株主に帰属する当期純利益は、資源セグメントでの減益などにより21億(前期比△59.7%となりました。
 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は△229億円(前期比△1,044億円)となりました。

 

〔参考〕

昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△12.0%、営業損益は、前期比△2,453億円となりました。

 

ウ.事業の経過及び成果

 セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。

 なお、「第5 経理の状況 (セグメント情報)」に記載のとおり、昭和シェルと経営統合したことに伴い、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「石油製品」「石油化学製品」及び「資源」の3つのセグメントから、「燃料油」「基礎化学品」「高機能材」「電力・再生可能エネルギー」及び「資源」の5つのセグメントに再編しています。

 

セグメント別売上高

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

(2019年3月期)

(2020年3月期)

増減額

増減率

燃料油

32,702

48,210

+15,508

+47.4%

基礎化学品

4,684

4,592

△92

△2.0%

高機能材

3,520

3,938

+418

+11.9%

電力・再生可能エネルギー

229

1,277

+1,048

+458.1%

資源

3,080

2,418

△662

△21.5%

その他

37

23

△14

△38.5%

合計

44,251

60,459

+16,207

+36.6%

 

セグメント別利益又は損失(△)

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

(2019年3月期)

(2020年3月期)

増減額

増減率

燃料油

(在庫評価影響除き)

280

(220)

△1,094

(△201)

△1,373

(△421)

基礎化学品

318

119

△199

△62.5%

高機能材

297

284

△13

△4.4%

電力・再生可能エネルギー

7

△5

△12

資源

885

418

△468

△52.8%

その他

26

4

△22

△84.4%

調整額

△152

11

+163

合計

(在庫評価影響除き)

1,662

(1,602)

△262

(631)

△1,924

(△971)

(△60.6%)

   (注)セグメント別利益又は損失(△)は、セグメント別の営業利益と持分法投資損益の合計額です。

 

(ア)燃料油セグメント

 日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。

 国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化によるIMO規制への対応、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。

 国内販売においては、地域になくてはならないお客さま一人ひとりの暮らしと移動を支えるライフパートナーとしてSSを捉え、法人向けカーリース商品「オートフラットBiz」の販売開始や、岐阜県飛騨市および高山市における超小型EVを活用したMaaS事業実証開始など、新しい事業モデルの構築に取り組みました。

 海外においては、2018年に商業運転を開始したベトナムのニソン製油所の設備初期不具合の検査・補修を実施し、安定操業の実現に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の海外成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。

 

 燃料油セグメントの売上高は、原油価格は下落したものの昭和シェルとの経営総合の影響などにより、4兆8,210億円(前期比+47.4%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などにより△1,094億円(前期比△1,373億円)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価損益は△893億円です。

 

〔参考〕

昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△10.4%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比△1,892億円となりました。

 

(イ)基礎化学品セグメント

 徳山事業所において従来比約30%の省エネルギー効果がある高効率型ナフサ分解炉の建設に着手するなど、基礎化学品事業の更なる収益基盤の強化に努めました。また全社横断的なワーキンググループを発足し、廃棄プラスチック問題解決に向けた検討を開始しました。

 

 基礎化学品セグメントの売上高は、ほぼ前年並みの4,592億円(前期比△2.0%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、スチレンモノマー等製品マージンの縮小などにより119億円(前期比△62.5%)となりました。

 

(ウ)高機能材セグメント

(潤滑油事業)

 「技術立脚型&地域密着型グローバル潤滑剤メーカーとして新しい価値を創出し続ける」を基本方針に、さらなる海外展開と新領域の商品開発の推進に努めました。製造においてはインドネシアに2か所目の工場を開所、中国でも2か所目となる工場建設に着工し、販売においては新たにフィリピンに販売会社を設立、パキスタンで販売会社が営業開始しました。また商品開発では電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)の駆動ユニット向け専用フルードを新開発しました。

 

(機能化学品事業)

 自社技術を軸に、自動車、情報・通信、生活必需品、耐久消費財向け中間体事業の拡大に努めました。エンジニアリングプラスチック事業においては、マレーシアに第2SPS(シンジオタクチックポリスチレン)製造装置を建設し、当社オンリーワン技術であるSPS樹脂の生産規模を現状の2倍に引き上げることを決定しました。粘接着基材事業では、台湾FPCC社(Formosa Petrochemical Corporation)と共同で建設した水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)の生産装置が完成し、2020年度に商業生産を開始する予定です。

 

(電子材料事業)

 有機EL材料、タフゼット(特殊ポリカーボネート樹脂)、ポリアニリン(導電性高分子)、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2018年に中国四川省内の成都に建設を開始した有機EL材料製造工場は、2020年度の可能な限り早い時期の商業運転開始を目指しています。本拠点は日本、韓国に次ぐ当社第三の有機EL材料製造拠点となり、日中韓の3極体制を構築します。本拠点稼働開始後は、3つの工場合計の年間製造能力が22トンとなります。

 

(高機能アスファルト事業)

 日本のインフラを支える社会的使命を果たすべく、道路工事に伴うCO2排出量の削減や道路のライフサイクルコストの低減に取り組むとともに、国内で培った技術をアジアや中東エリアのインフラ構築に役立てるべく検討を進めました。

 

(アグリバイオ事業)

 世界の農産畜産物生産の効率化に貢献すべく、天然物由来の生物農薬・畜産資材の開発・販売に取り組みました。生物農薬の新規剤開発においては、㈱エス・ディー・エス バイオテックと連携しながら取り組みを進めています。

 

(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)

 独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池の主要素材である固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、千葉事業所内への固体電解質の小型量産設備新設を決定しました。

 

 高機能材セグメントの売上高は、3,938億円(前期比+11.9%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、284億円(前期比△4.4%)となりました。

 

 

 

〔参考〕

昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△9.7%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比△14.5%となりました。

 

(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント

 「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組みました。2点目については、ベトナムにおけるメガソーラー発電所を完工、米国にて3件の太陽光発電プロジェクトを開始、フィリピンにおける太陽光発電プロジェクトに参画、国内では徳山事業所におけるバイオマス発電の事業化決定など、着実に取り組みを進めました。また3点目については、地域新電力「気仙沼グリーンエナジー株式会社」へ出資し、再生可能エネルギーを用いた地産地消モデル推進による地域との共生について実証をスタートするなど、取り組みを進めました。

 

 電力・再生可能エネルギーの売上高は、1,277億円(前期比+458.1%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、△5億円(前期比△12億円)となりました。

〔参考〕

昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△6.9%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比+70億円となりました。

 

(オ)資源セグメント事業

(石油・天然ガス開発事業、地熱事業)

 石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存の生産油田の安定生産、探鉱に成功した北部北海やバレンツ海域での油田開発に取り組みました。また環境負荷低減を推進すべく、世界初の試みとなる石油ガス生産設備に直接接続する浮体式洋上風力発電設備の開発を開始しました。一方ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは、当社がオペレーターとなって引き続き天然ガス開発に取り組みました。

地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規地熱事業の開発や海外への展開の検討を進めました。

 

 石油開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格下落の影響などにより489億円(前期比△36.9%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は178億円(前期比△52.1%)となりました。

 

(石炭事業・その他事業)

 オーストラリアおよびインドネシアに展開する既存鉱山の競争力強化に向け、堅実な経営及び将来の環境変化に向けた遠隔自動採炭などの新技術の導入検討を進めました。またブラックペレット(バイオマス燃料)の開発や石炭ボイラ制御最適化システムの販売を通じて、低炭素ソリューションの提供を進めるとともに、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討など、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。

 

 石炭事業・その他事業の売上高は、1,929億円(前期比△16.3%)となりました。セグメント(営業利益+持分法投資損益)は240億円(前期比△53.4%)となりました。

 

 以上の結果、資源セグメントの売上高は2,418億円(前期比△21.5%)、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は418億円(前期比△52.8%)となりました。

 

 

② 財政状態の状況

要約連結貸借対照表

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2019年3月期)

当連結会計年度

(2020年3月期)

増減

流動資産

12,254

15,503

+3,249

固定資産

16,649

23,366

+6,718

資産合計

28,903

38,869

+9,966

流動負債

11,958

16,484

+4,526

固定負債

8,156

10,380

+2,224

負債合計

20,114

26,864

+6,750

純資産合計

8,789

12,006

+3,216

負債純資産合計

28,903

38,869

+9,966

 

ア.資産の部

当期末における資産合計は3兆8,869億円(前期末比+9,966億円)となりました。

 

イ.負債の部

当期末における負債合計は、2兆6,864億円(前期末比+6,750億円)となりました。

 

ウ.純資産の部

当期末の純資産合計は、4月1日付の株式交換に伴う資本剰余金の増加(前期末比+3,308億円)や自己株式の処分、市場買付による自己株式の取得及び消却などにより、1兆2,006億円(前期末比+3,216億円)となりました

 

以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は29.6%(前期末比+0.5ポイント)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

要約連結キャッシュ・フロー計算書

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2019年3月期)

当連結会計年度

(2020年3月期)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,510

△327

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,223

△1,345

財務活動によるキャッシュ・フロー

△202

1,579

現金及び現金同等物に係る換算差額

△47

△9

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

39

△101

現金及び現金同等物の期首残高

868

907

連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の

増減額(△は減少)

△1

488

現金及び現金同等物の期末残高

907

1,293

 

当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,293億円となり、前期末に比べ、386億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。

 

ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー

原油の輸入価格の下落に伴い必要運転資金は減少したものの、前期末の休日要因解消による未払石油諸税の支払増加の影響などにより、327億円の支出となりました。

 

 

イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー

主に設備投資による有形固定資産の取得(1,186億円)により、1,345億円の支出となりました。

 

ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー

配当金の支払い(340億円)や自己株式の取得(132億円)を実施した一方、短期借入金・コマーシャル・ペーパーによる資金調達を行ったことなどにより、1,579億円の収入となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

燃料油

2,441,756

146.9

基礎化学品

510,971

112.3

高機能材

256,218

111.5

電力・再生可能エネルギー

16,239

資源

168,858

75.4

その他

合計

3,394,045

132.0

(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

3.前年同期比(%)は、前年同期の生産実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。

4.当連結会計年度において、燃料油セグメントの生産実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。

 

イ.受注実績

 当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

燃料油

4,820,992

147.4

基礎化学品

459,227

98.0

高機能材

393,837

111.9

電力・再生可能エネルギー

127,713

558.1

資源

241,775

78.5

その他

2,304

61.5

合計

6,045,850

136.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

4.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。

5.前年同期比(%)は、前年同期の販売実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。

6.当連結会計年度において、燃料油セグメント及び電力・再生可能エネルギーセグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 経営成績の分析

経営成績の分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。

 

② 資本の財源及び資金の流動性についての分析

ア.資金需要

当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。営業費用の主なものは、人件費、物流費、作業費、研究開発費等です。

 設備投資資金については、維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、成長分野・海外成長市場への進出による事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の安定生産継続と探鉱開発による埋蔵量確保に向けた投資等の需要があります。

 

イ.財務政策

 当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の活用、更に資本増強等を効果的に組み合わせて調達していきます。

 当期末の短期借入金の残高は2,109億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,969億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は800億円、コマーシャル・ペーパーの残高は3,160億円となりました。

 なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は、各々の子会社が現地通貨を借入にて調達するほか、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。

 また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。

 

(特定融資枠契約)

 当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と2021年3月までの契約期間において短期借入を実行できる特定融資枠契約を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当該契約の極度額は内貨で2,100億円であり、当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社3社と共同で、取引金融機関2行と特定融資枠契約を締結しています。当該契約の極度額は外貨で360百万米ドルであり、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。

 

 

③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現と持続的な成長を目指しています。この経営の基本戦略を達成するため、自己資本利益率(ROE)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。

 当該指標のうち自己資本比率については、昭和シェルとの株式交換により自己資本が増加したため改善しています。前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)の主な悪化要因は、以下のとおりです。

(ア)原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などによる燃料油セグメントの減益、及び製品マージン縮小等による基礎化学品セグメントの減益

(イ)資源価格下落などによる資源セグメントの減益

(ウ)上記などによる親会社株主に帰属する当期純利益の減少

 

 

当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。

 

2016年

3月期

2017年

3月期

2018年

3月期

2019年

3月期

2020年

3月期

自己資本利益率(ROE)(%)

16.3

22.3

9.5

ネットD/Eレシオ(倍)

1.6

1.6

0.9

1.0

1.0

自己資本比率(%)

20.8

22.1

29.7

29.1

29.6

(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。

自己資本利益率(ROE):当期純利益/自己資本(期首期末平均)

ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)

自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産

2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。

3.2016年3月期及び2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する

当期純損失を計上しているため記載していません。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)当社は、2019年5月15日開催の取締役会において、当社の完全子会社である昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)から同社の全事業を承継するため、当社を吸収分割承継会社、昭和シェルを吸収分割会社とする吸収分割(以下「本吸収分割」という。)を行うことを決議し、同日、昭和シェルとの間で本吸収分割に係る吸収分割契約を締結し、7月1日に効力を生じました。本吸収分割の概要については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載しています。

 

(2)当社は、2019年4月1日に効力を生じた株式交換により、昭和シェルを当社の完全子会社といたしました。これにより、以下の契約が当社グループの主要な契約となりました。

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の種類

契約内容

効力発生日

出光興産

株式会社

(注)

シェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲー

スイス

商標等
使用契約

特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約

2016年12月19日

シェルルブリカンツジャパン株式会社

シェル・インターナショナル・ペトロリウム・カンパニー・リミテッド

英国
オランダ
 

潤滑油事業
枠組契約

潤滑油製品に関する技術交流及び研究開発、OEMとの関係、並びにサービスの相互提供等に関する契約

2016年12月19日

(注)2019年7月1日に効力を生じた本吸収分割により、当社が昭和シェルより契約上の地位を承継しています。

5【研究開発活動】

当社グループは、燃料油、高機能材、資源、更には新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。現在、図に示した研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。

なお、研究開発費については、各セグメントに配賦できない全社共通研究費41億円が含まれており、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は前年同期比39億円増加の194億円です。

 

 (当社グループの研究開発体制)

 

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当連結会計年度における各セグメントの研究開発内容、研究開発経費及び研究開発成果は次のとおりです。

 

(1) 燃料油セグメント

燃料油セグメントでは、環境に配慮した石油製品の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は24億円です。

燃料油事業では、重質油処理装置の全体最適処理技術の開発、及び劣質原油処理時の腐食機構の解明と対策検討、石油製品の高付加価値化を目的としたペトロリオミクス関連技術の開発、プロセス技術を活かした事業競争力の強化、製油所・事業所の高効率化、省エネルギー化及び環境調和型社会への貢献を目指した技術開発を行っています。

 

(2) 高機能材セグメント

高機能材セグメントでは、環境に配慮した潤滑油製品の開発、機能材料及び樹脂加工製品の競争力強化に向けた保有技術の改良や新規材料の開発、電子材料事業、アグリバイオ事業における研究開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は122億円です。

①潤滑油事業では、省燃費・省エネルギーや環境に配慮して開発した商品をグローバルに展開し、国内及び海外市場への安定供給実現に努めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・自動車用潤滑油においては、省燃費性を更に高めたエンジン油と、EV車両用潤滑油を開発し、商品ラインアップを拡充しました。

・工業用潤滑油においては、環境対応型高機能商品の開発を進め、消費電力削減に繋がる省エネルギー型機械設備用潤滑油や冷凍機油、産業ロボット用グリース、更に、作業環境改善効果の高い水溶性切削油やプレス油の開発を推進し、商品ラインアップを拡充しました。

 

②機能材料分野では、新機能を有した粘接着基材の開発及びエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂やシンジオタクチックポリスチレン樹脂の高付加価値商品の開発に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・一般の結晶性ポリプロピレン樹脂と比べて大幅に融点が低く、軟質特性を有する機能性軟質ポリプロピレン(商品名:エルモーデュ®)は、従来から展開してきた衛生材料用接着剤原料、家具用接着剤原料、不織布・フィルム等のポリプロピレン改質剤での展開を進め拡販に繋げました。

ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロン®)では、透明性や流動性に優れた新しいグレードを開発し、液晶ディスプレイ部品や自動車を含む各種照明部品市場で好評を得ています。特に自動車照明用材料では高透明性及び高導光性が要求されるDRL(Day Time Running Light)部品向けの販売が好調で、ここ数年高い伸び率で拡大を続けています。2015年12月に千葉工場のポリカーボネート製造装置を停止し、2016年度より共重合技術を活用した特殊グレードを含む全ての生産を、台湾Formosaグループの中核企業であるFCFC社へ集約し、市場での競争力をさらに向上させました。昨年はこの特殊グレードは車載用途での採用も始まり、従来に無かった市場に向けて、今後更に展開を加速させていっています。

シンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレック®)では、成形サイクルや成形時の流動性を改良したグレードを展開し、自動車電装部品等への販売を拡大しました。また、電波透過性,電気特性が評価され車間距離レーダー部品,電気自動車部品への採用が始まっています。更には高速通信向け部品への納入開始により、自動車分野以外への新規用途開拓も推進していきます。

 

③シート・フィルム分野では、包装材料のグレード開発及び産業用途の加飾分野の開発を行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・昨今の環境問題対応への社会的要求を受け止め、バイオプラスチックを用いたシート・フィルム、生分解性樹脂を用いたジッパー等の環境対応商品を開発し、顧客へ提供を開始しました。

・包装材料では、顧客ニーズに基づくグレード開発を推進し、バリアシート(商品名:マルチレイTM)を用いたロングライフ化に対応した食品容器の開発、レトルト対応ジッパーテープ(商品名:プラロックTM)を用いた電子レンジに対応した調理袋の開発等により、商品ラインアップの拡充を行いました。

・加飾分野では、開発した塗装代替の高輝度グレードにより自動車・住設・家電の各分野へ用途展開し、拡販に繋げました。

 

④電子材料事業では、有機EL材料、酸化物半導体材料に代表される電子材料分野での新素材の研究開発を行っています。特に有機EL材料においては、顧客との連携強化、大学との共同研究などを通じて商材の更なる高性能化から次世代技術の開発まで、幅広い開発活動を推進しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・東レ㈱との共同取り組みにおいて、次世代の技術として期待されている熱活性化遅延蛍光(TADF)の材料で世界最高レベルの発光効率と寿命を達成しました。

・本成果は、新たな技術の早期実用化に向けた大きな進歩であり、2019年11月に東レ㈱と共同プレス及び国際学会での共同発表を行いました。

 

⑤アグリバイオ事業では、微生物培養技術や応用技術、天然物活用技術によって、農業や畜産分野の「食の安全・安心」と「増大する食糧需要」に貢献する商品のラインアップを拡充しています。また、海外展開に向けて登録申請の準備を進めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・農業分野では、新規発売が1剤(殺虫剤)となりました。

・連結子会社の㈱エス・ディー・エス バイオテックでは、日本国内での新規農薬の登録件数は3剤、新規農薬の登録申請は5剤となりました。また、67剤の拡大登録を取得しました。

 

(3) 資源セグメント

石炭事業では、鉱山で生産される製品炭の品質を向上させるとともに、石炭を効率よくクリーンに利用して環境負荷を低減する技術の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は2億円です。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりで、特にパリ協定発効を踏まえ、環境と調和した石炭利用技術の開発を強化しました。

・石炭火力のCO2排出削減に繋がる木質バイオマスの製造・販売を目指し、製造技術、評価技術の確立及び実機ボイラでの石炭との混焼試験を実施しました。試験結果を踏まえ、木質バイオマスの品質向上や需要家へのコンサルティングを行っています。

・郵船商事㈱が保有するボイラ制御技術に出光が保有する石炭高効率燃焼技術を融合させて機能向上を図ったボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」の販売を通じ、需要家の石炭ボイラから排出されるCO2の削減に貢献しています。本事業は日本郵船グループと共同で実施しています。

・宇部興産㈱及び日揮グローバル㈱とともに、複数の大学の参画を得てCCSU研究会を設立。産学協働で、産業廃棄物に含まれるカルシウム等によりCO2を固定化し、資源として利用する研究開発を開始しました。

・低品位炭の利用促進を目的に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同でインドネシア褐炭を用いた炭素材料の研究開発を実施しました。

 

 (4) 全社共通(コーポレート研究)

コーポレート研究としては、社会や技術のトレンドを掴み、適社性を加味したうえで、新規事業創出に向けた機能材料の開発や気候変動対策に資する研究を実施するとともに、事業部研究所を含め全社で推進している研究開発の加速を図るべく高度な分析・解析技術によるサポートを実施しています。

リチウム電池材料室では、次世代電池として技術確立が望まれる全固体電池のキーマテリアルである固体電解質を中心とした次世代電池用材料及びその量産化の研究開発を行っています。市場拡大が見込まれる電動車両に必要な、安全で高性能な全固体電池の実現に向け、固体電解質の材料開発・提供を通じて貢献していきます。固体電解質の商業生産に向けた小型量産設備を千葉事業所内に建設する計画です(完工・稼働開始は21年度第1四半期)。

 

・2018年4月、AIや機械学習機能の活用による次世代材料設計の加速化を目指し、先進技術研究所内に新たに計算科学チームを編成しました。

・2018年7月、中長期的な材料開発の基礎研究を継続・強化するため、先進技術研究所内に次世代電池材料研究室を新設しました。

・2019年4月、先進技術研究所と旧昭和シェル石油のコーポレート研究部門(厚木地区)を統合し、名称を次世代技術研究所に変更しました。