(1)中期経営計画の見直し(2020~2022年度)
当社は、2019年11月に中期経営計画を発表しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって経営環境は大きく変化しました。加えて日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言により脱炭素化の動きが加速しています。中長期戦略の再構築と打ち手のスピードアップを図るため、2019年11月に公表した中期経営計画の見直しを実施しました。概要は以下のとおりです。
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長期事業環境想定 |
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不確実な変数が多く、事業環境は極めて不透明 |
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脱炭素化・高齢化は確実に進展 |
2019年公表の中期経営計画ではシナリオ3『虹』を前提
↓
中期経営計画の見直しでは、よりアジア太平洋地域の石油需要が早期にピークアウトを迎えかつ減少していく、シナリオ4『碧天』の可能性が高まったと認識
企業のレジリエンスを高め、将来の社会課題に着実に取り組むことが必要
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当社のパーパス再確認と2030年ビジョン |
当社の歩みを振り返ると、終始一貫「仕事を通じて人が育ち、無限の可能性を示して社会に貢献する」という価値観を大切にしてまいりました。これを「真に働く」という企業理念として成文化し、従業員一人ひとりの拠り所として、将来の変革に挑戦してまいります。
当社の歩みと大切な価値観
企業理念
2030年ビジョン
エネルギーの安定供給と共に社会課題の解決に貢献することが当社の責務と認識。
私たちは、
責任ある変革者
を2030年ビジョンとして掲げ、
■地球と暮らしを守る責任:カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジション
■地域のつながりを支える責任:高齢化社会を見据えた次世代モビリティ&コミュニティ
■技術の力で社会実装する責任:これらの課題解決を可能にする先進マテリアル
3つの責任を事業活動を通じて果たしてまいります。
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2030年に向けた基本方針と経営目標 |
中長期的な経営環境が極めて不透明な中で、いかなる環境変化にも柔軟に対応できるレジリエントな企業を目指すため、「ROIC経営の実践」「ビジネスプラットフォームの進化」「Open・Flat・Agileな企業風土醸成」の3つの方針を掲げます。
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基本方針1 |
ROIC経営の実践 |
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■資本効率性を高め、筋肉質な企業体質を実現することで、リスク許容度を向上
■ポートフォリオマネジメントに加え、成果を的確に測定するパフォーマンスマネジメントの手段としても活用
■投資判断においては、ICP(インターナルカーボンプライシング)を活用
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基本方針2 |
ビジネスプラットフォームの進化 |
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DXの加速 |
■Digital for Idemitsu(業務改革)から for Customer・for Ecosystem(顧客・ネットワーク価値提供)へ ※2021/4/1 DX認定取得(DX-Ready) |
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ガバナンスの 高度化 |
■少数且つ経営課題に即した取締役会メンバー構成、討議中心の運営 ■社外役員が主導する公正透明な指名報酬検討プロセスの更なる充実 ■海外現法含むグループ内部統制成熟度の向上 |
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基本方針3 |
Open・Flat・Agileな企業風土醸成 |
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理念・ビジョン の浸透 |
■インナーブランディング展開、社会課題解決挑戦に対する共感の醸成 ■環境変化に迅速かつ柔軟に対応するための基軸の確立 |
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組織改革 |
■階層簡素化による意思決定の迅速化、間接部門スリム化による生産性向上 ■積極的な権限移譲による成長機会の充実 ■スパンオブコントロールの最適化によるマネジメントの質向上 |
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働き方改革 |
■多様な価値観・ライフスタイルに応じた就労環境の整備、機会均等の実現 ■既存業務改革による知の探索の促進、高付加価値業務へのシフト ■脱100点主義による業務のスピード・質向上、共創促進 |
以上の基本方針を踏まえた事業戦略は次のとおりになります。
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燃料油 基礎化学品 |
■apollostationの「スマートよろずや」化 ■製油所・事業所体制の見直し、コンビナート全体での「CNX※センター」化 ■需要減に先んじた固定費圧縮 ※CNX:Carbon Neutral Transformation ■精製/化学のインテグレーション深化 ■ニソン製油所の収益貢献化 |
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高機能材 |
■リチウム固体電解質の事業化 ■電子材料・機能化学品・潤滑油・グリース・機能舗装材・アグリバイオ等 先進マテリアルの開発加速 |
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電力・再エネ |
■太陽光・風力・バイオマスの再エネ電源開発拡大 ■再エネを核とした分散型エネルギー事業の展開 ■ソーラーフロンティアのシステムインテグレーターへの業態転換 |
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資源 |
■石油開発:東南アジアガス開発へのシフト、開発技術を活用したCCS※への取り組み ※CCS:Carbon dioxide Capture and Storage ■石炭:鉱山生産規模縮小、低炭素ソリューション事業へのシフト(ブラックペレット・アンモニア) ■国内外での地熱事業拡大 |
将来に向けたポートフォリオ転換
基本方針に掲げた3つの方針に取り組むことで、2030年ビジョンを実現し、将来に向けたポートフォリオの転換を目指します。
2050年カーボンニュートラルへの挑戦
当社は、Scope1+2のCO2を可能な限り削減し、ネガティブエミッションの取り組みを進めながら、2050年のカーボンニュートラルの達成を目指します。これを成長機会と捉え、脱炭素化に資する事業を拡大するとともに、お客様のニーズを的確に把握しながらバリューチェーン全体でのCO2排出量削減にも取り組み、SDGsNo.7「エネルギーをみんなに、クリーンに」という課題へ正面から挑戦してまいります。
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■カーボンニュートラルへの挑戦 |
■バリューチェーン全体でのCO2排出量削減 |
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2030年度経営目標
在庫影響を除いた営業+持分利益は2,500億円とし、ポートフォリオマネジメントとパフォーマンスマネジメントを通じてROICを7%に引き上げることで、企業価値の向上を目指します。
また2050年カーボンニュートラルの中間目標として、2017年対比でCO2の400万tの削減を目指してまいります。
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2020年度実績 |
2030年度 |
2020年度比 |
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営業利益+持分 |
928億円※① |
2,500億円 |
+1,572億円 |
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ROIC |
3% |
7% |
+4% |
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GHG削減目標※②③ (Scope1+2) |
▲136万t |
▲400万t |
▲264万t |
※①:在庫影響除き
※②:2017年度対比 ※③:グループ製油所を含む
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中期経営計画(2020~2022年度)の概要 |
経営目標
2020~2022年度の3か年累計(ROEは2022年度)目標は以下の通りです。
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当期利益 (在庫影響除き) |
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営業+持分利益 (在庫影響除き) |
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ROE |
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FCF |
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(3か年累計) 2,200億円 |
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(3か年累計) 4,100億円 |
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(2022年度末) 8% |
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(3か年累計) 2,300億円 |
※2022年度の主要前提:原油60$/BBL、ナフサ560$/t、石炭75$/t、為替105円/$
セグメント別営業利益+持分利益(在庫評価影響除き)
燃料油セグメントにおける統合シナジーの拡大、ニソン製油所の収益改善に加えて、資源価格や基礎化学品市況の改善等を織込み、2022年度には1,750億円の営業利益(持分利益含む)を目指します。
キャッシュバランス
固定費削減や、投資案件の厳選、積極的な資産売却によって、フリーキャッシュフローを2,300億円確保します。フリーキャッシュフローは、株主還元、戦略投資、財務体質強化に配分します。
投資計画
投資計画は3年間累計で5,700億円を見込み、戦略及びM&A財源については、ポートフォリオ転換に向けた投資に配分してまいります。
株主還元
当社は株主還元を重要な経営課題の一つと認識し、株主還元方針を以下の通りとします。
(1)2020~2022年度3か年累計の在庫影響除き当期純利益に対し、総還元性向50%以上の株主還元を実施します。
(2)1株当たり120円の安定配当とします。
(2)事業上及び財務上の対処すべき課題
① セグメント毎の課題
当社のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。
ア. 燃料油セグメント
(ア)石油精製の最適化
石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていくことにより、将来に向けた最適な製油所体制を目指します。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、製油所・事業所機能を転換していくCNXセンター化を進めています。コンビナートの広大な敷地や大型船が入れる桟橋、タンク群などの既存設備は、バイオマス燃料をはじめ、水素・アンモニアや合成燃料などの製造や貯蔵、廃プラスチックのリサイクルなどに活用できるポテンシャルを有しており、各製油所・事業所の特性に合わせた取り組みを検討しています。
(イ)燃料油事業の海外展開
アジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、海外での燃料油事業を推進していきます。ニソン製油所については、当年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響はあるものの原油高による在庫影響などにより収支は改善し、2022年度以降も安定操業の継続、コスト適正化、マージン回復等により引き続き収益改善に取り組みます。
(ウ)特約販売店ネットワークの基盤強化
特約販売店のネットワークは、燃料油、ガス等の、地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約販売店の収益力強化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。2021年4月より展開を開始したSS新ブランドapollostationをはじめ、6,200店の両ブランドSSネットワークを最大限活用していただけるよう、価値提供を行います。具体的には、地域住民の生活を豊かにする新しい時代のよろずやとして、スマートよろずやを構想し、高齢化社会における重要な課題である「健康」に対し、SSを拠点とした予防医療の普及を図る事業の創出に向け、車両を用いた脳ドックサービスの提供を開始しました。地域における移動式健診サービスのニーズやSSのシナジーを更に発展させていきます。
また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。
イ. 基礎化学品セグメント
国内事業の収益基盤の安定・拡大を促進するため、徹底した効率化によるコスト低減を図るとともに、千葉、徳山のコンビナート顧客と連携し、事業環境に応じた安定生産と最適化、原料多様化による競争力強化を図ります。
また燃料油事業と一体となった「Fuel to Chemical」を推進し、燃料油・化学の装置稼働を最適化し、物流提携による収益力向上を目指します。その一環として、ENEOS(株)の知多製造所におけるパラキシレン生産設備の譲受を決定しました。本件はパラキシレンの事業拡大に資するとともに、ガソリン基材(石油製品)からパラキシレン(化学製品)を製造する“ケミカルシフト”の具体策となります。
更にオレフィンとアロマの事業基盤を確保しながら、資源循環やカーボンニュートラルをはじめとした環境に関する社会要請に対しても、当社単独だけでなく、コンビナートや地域、他社との提携も模索しながら、ソリューション実現に向け取り組みます。
ウ. 高機能材セグメント
(ア)潤滑油事業
自動車用潤滑油の分野では高度なトライボロジー(潤滑工学)を駆使して、お客様のニーズに適ったOEM製品を提供することで、お客様の事業展開をサポートしていきます。世界的な潮流となっている脱炭素社会の実現に向け、EV市場をターゲットに、EVの電動ユニットに適合する潤滑油、モーター駆動に伴う高耐熱性化・低騒音化のニーズに対応するグリースの開発に取り組みます。また、産業機械向けの油圧作動油やギヤ油などの工業用潤滑油についても、環境問題への関心の高まりに伴う省エネ、省資源のニーズに合致した、環境対応型高機能商品の開発を行います。更に海外における出光ブランド製品の拡大・強化に向けた取り組みも進めていきます。
(イ)機能化学品事業
エンジニアリングプラスチック、粘接着基材などの独自技術をベースに、主にアジアを中心に成長市場や需要拡大が見込まれる用途での販売拡大を進めます。具体的には技術革新が速い自動車・電装部品や情報通信機器、アジアを中心として需要が拡大している生活消費財などが主なターゲットとなります。市場のニーズに応えながら安定生産と事業規模拡大を進めており、シンジオタクチックポリスチレン樹脂など、生産設備拡充を推進しています。
(ウ)電子材料事業
有機ELテレビ出荷増等の影響により、有機EL材料市場は拡大しています。更なる拡大が見込まれる有機EL材料需要に対応するため、日本・韓国・中国の三つの製造拠点による材料の安定製造・供給体制を維持しつつ、事業競争力強化に向けた体制最適化に取り組みます。また、「電子デバイスの省電力化・長寿命化に貢献する高性能次世代材料の研究開発の加速」、「最先端技術ニーズの把握のためのディスプレイメーカーや開発パートナーとの関係強化」を推進します。
(エ)機能舗装材事業(高機能アスファルト事業)
2022年度は、国土交通省が打ち出した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の2年目であり、継続して国内の舗装需要は堅調に推移するものと予測されます。顧客、社会のニーズに基づき道路舗装の安心安全とカーボンニュートラルの実現に向けた製品・技術開発を推進していきます。また海外事業においては、ASEAN諸国等の新興国では高速道路建設の延長計画等インフラ整備は依然旺盛であり需要は今後拡大することが予測されます。国内で培った高機能アスファルトの普及を通じ各国のインフラ構築に貢献していきます。
(オ)アグリバイオ事業
出光興産アグリバイオ事業部の(株)エス・ディー・エス バイオテックへの吸収分割を完了させ、出光グループのユニークな新企業体として、これまで以上のシナジーの発揮を実現していきます。
エ. 電力・再生可能エネルギーセグメント
国内においては、競争力ある自社電源を基盤としつつ外部調達を最適化することで、お客様に電力を供給します。また、当社は、風力、太陽光、バイオマスといった多様な再生可能エネルギー電源を有しており、今後もそのノウハウを活かして地域の特性に応じた電源開発を推進します。海外においては、北米におけるガス火力発電事業の推進、また北米や東南アジアにおける再生可能エネルギー事業に積極的に取り組みます。太陽電池事業においては、従来のパネル販売から次世代型システムインテグレーターへと業態転換を図ることでカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
オ. 資源セグメント
新型コロナウイルスの感染拡大により、エネルギー需要は世界的に大きく低迷しましたが、引き続き安定供給の観点から、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については、環境負荷低減を図るため、高効率燃焼技術の提案や石炭への混焼比率を高めることができるバイオマス燃料の製造を開始するとともに、オーストラリアでの現地事業基盤を活用した新規事業の検討に取り組みます。また、地熱開発については、大分県での地熱事業の維持・継続とともに、新規事業の調査・実証を進めます。
カ. 研究開発及び新ビジネス開発
(ア)研究開発及び新ビジネス開発
当社は有機化学、無機化学、環境負荷物質の低減における知見、技術的強みを有しており、これらを高めることで新たな素材やプロセスの開発につなげていきます。社会的課題の解決に向け、コーポレート研究や各事業に属する製品研究で培ってきた技術をクロスファンクショナルにテーマ化し、国内外の大学、研究機関と連携するオープンイノベーションを推進します。同時に、内外にインキュベーション機能を持ち、ベンチャー企業との提携、資本参加の積極的推進により、研究開発を加速するとともに、新たなビジネスを創生していきます。更にデジタルトランスフォーメーションを推進し、次世代(Society5.0)のエネルギーインフラ構築や超小型EVをはじめとする新たなモビリティを活用したビジネスモデル型事業の開発に取り組みます。
また、2021年7月に技術・CNX戦略部を創設し、カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアル・トランジションに向けて、再生可能エネルギー・バイオマス燃料・合成燃料・水素・アンモニア・バイオケミカルなど地球環境に優しい新エネルギー、新素材への転換を推進しています。
(イ)全固体リチウムイオン電池向け固体電解質
全固体リチウムイオン電池は、EV普及の鍵(航続距離の拡大、充電時間の短縮、安全性向上等)を握る次世代電池であり、そのキーマテリアルである固体電解質の事業化に向けた研究・開発を加速し、2020年代後半の上市を目指します。
② サステナビリティへの取り組み
当社は2030年ビジョンとして掲げた「責任ある変革者」として、昨年策定した「サステナビリティ方針」に基づき、「地球と暮らしを守る」「地域のつながりを支える」「技術の力で社会実装する」という3つの責任を、事業活動を通じて果たし、持続可能な地球環境と社会を実現しつつ、企業としての持続的な成長を目指しています。
以下に記載の領域を重点分野として、取組を進めています。
・エネルギーと素材の安定供給を継続しつつ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献
・革新的技術開発と事業活動による環境リスクの予防・低減による、自然環境の保全と循環型社会の実現
・人権尊重最優先の考え方の下、事業活動における人権への負の影響の防止と軽減
・ダイバーシティ&インクルージョン施策の推進による、企業としての成長と包摂的な社会の実現
・パートナーとの協働による、サプライチェーン全体で持続可能な社会の実現
・地域社会に寄り添ったソリューションの共創
③ 財務上の課題
2030年の基本方針の実現に向け中期的に事業構造の改革を着実に推進するため、キャッシュ・フローの配分を適切に実施するとともに財務基盤の維持・改善に努めます。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態・経営成績及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。当社の業績に特に大きな影響を与える商品分野につきましては、セグメント別に記載しています。文中の将来に関する部分は、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する事業等のリスクに関しては、別途記載しています。
(1)国際情勢や経済環境等の変化によるリスク
当社グループは日本及び世界各地にビジネスを展開しており、各々の地域の政治動向、景気動向及び経済情勢による影響を受ける可能性があります。特に足元のウクライナ情勢の他、海外諸国の政治的要因又は経済的要因に起因する世界景気の減速及び日本国内における人口構成の変化等がもたらすエネルギー資源及び製品需要の変動や価格の乱高下は、当社の業績へ影響を与える可能性があります。
(2)事業を取り巻く外部環境の変化によるリスク
商品市況リスク
(燃料油セグメント)
当社グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、足元のウクライナ情勢の他、アジアにおける原油需要の変動、中東やアフリカの産油国の政情不安、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も大きく変動することが懸念されます。
当社グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、棚卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。
なお、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、当社の営業利益は年間35億円増減する可能性があります。
(基礎化学品セグメント)
① 原料コストの変動について
当社グループは、基礎化学品の原料であるナフサを自社製油所で生産するとともに市場から調達しています。ナフサ価格は、原油価格や、ガソリンの需要・価格動向、中国等において進められている石油化学設備の新設による需要増加の影響を受けることがあります。市場における激しい競争等の要因により、ナフサ価格の変動を製品価格に適切に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
② 製品市況の変動について
日本を含むアジアの基礎化学品市場は激しい競争状況にあり、需要の変動や供給の増加の影響を受けます。アジアでは経済成長に伴う需要の増加が見込まれますが、近年で中国を中心とした基礎化学品を製造する大型の新設プラントが急増しており、アジア市場における供給過多や、新興国の経済成長鈍化に伴う需要低迷の可能性があります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、当社グループの財政状態及び営業利益は影響を受ける可能性があります。
(電力・再生可能エネルギーセグメント)
当社グループでは、卸電力取引市場を介した電力の卸売及び調達を行っていますが、この取引価格が燃料価格や電力の需要動向、再生可能エネルギーの稼働状況等の要因によって大きく変動した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(資源セグメント)
石油開発事業においては油・ガスを生産し販売していますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
石炭事業においてはオーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売していますが、政治経済情勢あるいはその他の要因により石炭価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
調達リスク
当社グループは、原油輸入の大宗を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
カントリーリスク
(基礎化学品・高機能材セグメント)
当社グループは、主にアジア市場を中心とした基礎化学品の販売及び潤滑油分野における海外での事業拡大に努めていますが、経済の低迷や政治等他の要因により市場の成長が鈍化する可能性もあります。このような需要の低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(資源セグメント)
当社グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。現在、当社グループが保有する確認済みの資源や探鉱活動については、ノルウェー、ベトナム等のアジア地域が中心となっており、これらの地域における政治経済情勢等により当社グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない可能性があります。
また、当社グループは、オーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売しています。石炭鉱山事業につきましても、政治経済情勢、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けることがあります。
為替リスク
当社グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。
また、原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けるほか、燃料油セグメントにおける在庫評価も影響を受けます。なお、1米ドル当たり1円変動すると、当社の営業利益は年間30億円増減する可能性があります。
(3)気候変動・環境規制に関するリスク
パリ協定の目標達成に向け、世界各国・地域が気候変動の原因とされる温室効果ガスの排出削減に向けた取組を加速し、気候変動政策の強化、環境関連法規等の変更・新規導入が実施された場合、追加的な費用負担や投資の発生、当社が取り扱う化石燃料・原料の需要の減少スピードの加速、化石燃料事業に対する金融機関の投融資の抑制等の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。また、自然災害や、海面上昇等の影響により、沿岸部に位置する製造拠点が被害を受け、操業に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業展開する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、当社グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行うこと、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。
(4)事業投資に関するリスク
当社グループは、事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。今後も石油、石油化学、資源事業など、既存事業の競争力維持には一定の投資を継続する予定です。一方で、カーボンニュートラル実現に向けて、製油所・工場の機能を低炭素で循環型の事業にシフトするための投資や、潤滑油、機能化学品、電子材料、リチウム固体電解質などの高付加価値製品の開発投資、更には再生可能エネルギーへの投資など、化石燃料以外の新しい事業拡大へ向けた戦略投資を行っていく計画です。このような成長分野への投資においては、必要なキャッシュ・フローを生み出すまでに一定の時間を要するため、期待された収益機会を失う可能性があります。更に経済情勢や政治動向、市場拡大の遅れ、新素材を含む他社との開発競争等によりこれらの投資が計画どおりの収益をあげられない場合は固定資産の減損損失を計上する可能性もあります。なお、投資の意思決定プロセスにおいて、投資金額をはじめとする様々なリスクの多寡に応じた投融資委員会審議を設計することで、投資リスク低減と意思決定の迅速化の両立に努めています。
また、当社グループは、アジア市場における石油及び石油化学事業の海外展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下当社を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスを操業しています。プロジェクトの総事業費は約90億米ドルであり、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。プロジェクトファイナンスによる調達額について銀行団に対し行っている債務保証及びスポンサーによる出資・貸付のうち、NSRPへの当社グループ出資比率相当の35.1%については、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(5)その他経営全般に係るリスク
人権に関するリスク
当社グループは、人権は全ての判断や行動において根底をなすものと考え、世界人権宣言やILO宣言で国際的に認められた人権を尊重することを基本方針として定めています。当社グループはグローバルに事業拠点を持ち、取引するサプライヤーも多国にわたることから、「ビジネスと人権」に関する意識を国際基準で高く持ち、人権デューデリジェンスを通じたリスクの軽減を進めるとともに、ビジネスパートナーにも方針の理解と遵守を要請しています。
しかしながら、事業活動の領域で人権の侵害等が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
コンプライアンスに関するリスク
当社グループでは、コンプライアンス規程に基づき、国内外の法令遵守をはじめとした、コンプライアンスの強化に努めています。しかしながら当社グループの内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス上の問題が完全に回避できない事態が生じた場合には、結果ステークホルダーの信頼を失い、当社グループのレピュテーションを損ね、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは確実性の高い品質マネジメントシステムに則り製品を製造していますが、予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合に備え保険を手当てしています。しかしながら、それに伴い法的責任が発生する可能性や、直接的な責任を負わずともバリューチェーンの一部を担う者としてブランドイメージやレピュテーションの低下を回避できない場合もあり、ひいては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性もあります。
知的財産に関するリスク
当社グループは、事業の遂行のために知的財産権やライセンスを活用しており、特に石油精製技術や潤滑油、機能化学品、電子材料、アグリバイオ、太陽電池等の付加価値の高い製品・サービスにおいて特許や企業秘密の位置づけは重要です。また、当社グループは、ブランドを商標登録しています。しかしながら、当社グループが保有する特許、企業秘密、商標が当社の知的財産を保護するために十分であるとは限りません。
また、当社グループの企業秘密が、従業員や取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。当社グループが、第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性や、第三者から知的財産権の侵害についてクレームを受け、その技術を利用できなくなる可能性があります。当社グループが、事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、当社グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。
自然災害・事故等によるリスク
当社グループの事業は、自然災害や事故、これらに起因する操業停止等のリスクを有しています。自然災害には、地震、津波、台風、豪雨豪雪に加え、日本という地震の多い地域に立地する製油所・工場における火災、爆発、油の大規模流出のリスクも含みます。また保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突、非友好国による拿捕、撃沈等の危険にさらされています。更に当社グループは、労働争議やサイバーテロ等によるシステムダウンや情報漏洩、COVID-19のような感染症の大規模蔓延のリスクにも晒されています。
これらのリスクを会社として逸早く認識し、全社を挙げて被害の拡大防止を図るため、「危機発生時の対応規程」を策定し、予兆を含めたトラブルの早期共有のための連絡系統、対応の優先順位の原則、危機レベルの設定とそれに応じた対策本部の体制等についてまとめています。事業継続計画(BCP : Business Continuity Plan)については、2006年度に首都直下地震版、2009年度には新型インフルエンザ版、2010年度には南海トラフ巨大地震版(2021年度に「南海トラフ含む地域的地震津波版」に拡充)を制定しました。更に2015年度に内閣府より「指定公共機関」に指定されたことを受け、「防災業務計画」を作成しました。各BCPに基づく総合防災訓練を毎年実施し、各拠点との連携やリモートを含む本部運用等についての課題を抽出し、実効力の強化に努めるとともにBCPの改定に反映しています。製油所・事業所・工場等においては、各々の危機対応規程類に基づき、拠点ごとにまたは相互連携の上、防災訓練を定期的に実施しています。
当社グループは、事故や災害で想定される多額の損失に対し、自家再保険子会社を活用し適正な損害保険をグローバルに調達していますが、損失を補填するために必ずしも十分でない被害を受ける可能性もあります。
個人情報管理に関するリスク
当社グループは、石油製品販売、電力小売り、クレジットカード事業等で顧客の個人情報を多数取り扱っています。当社グループは、これらの情報の管理不徹底や外部からの不正な搾取、それによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。また、昨今の日本国や欧州を始めとする個人情報保護関連法令の適用拡大・厳格化に対する、必要な対応の不備・不足により、多額の制裁金、賠償金の発生、当社グループの信用低下、クレームや訴訟等にも繋がり、当社グループの事業、経営成績が影響を受ける可能性があります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に関するリスク
2021年度は、前年度に引き続きCOVID-19の変異株の影響が、当社グループの経営及び財政に影響を及ぼしました。いまだ国内での完全収束の見通しは立っておらず、特にジェット燃料については大幅な減便の影響が依然として続いており、需要回復までには数年かかるリスクがあります。また、その他の石油製品、石油化学品、潤滑油、電子材料の分野においても、変異株の影響を受けており、見通しを立てにくい状況が続いています。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出および行動制限措置により一進一退の状況が続きましたが、ワクチン接種の普及などもあり年間を通しては緩やかに回復しました。
国内石油製品販売量は、ガソリン等主燃料は新型コロナによる外出自粛等の影響により前年度並みの実績となりましたが、ジェット燃料は国内航空便の再開・増便等に伴い、前年度を上回りました。
原油価格は、上期は新型コロナワクチン普及に伴い米欧を中心とした経済正常化等から需要は回復し、供給面においてもOPECプラスが協調減産を継続したこと等から需給バランスはタイトな状況が継続し上昇基調で推移しました。下期に入り新型コロナ・オミクロン株感染拡大による経済減速懸念等から一時下落する場面もありましたが、経済に与える影響は限定的との観測等から上昇に転じ年を越しました。2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻により地政学的リスクが顕在化したことを受け、原油をはじめとした資源価格が急騰して年度末を迎えました。この結果、ドバイ原油価格は年度初めの63ドル/バレル台から右肩上がりで上昇を続け、年度末にかけては一時期120ドル/バレルを越える状況もあり、年間平均価格では前期比33.6ドル/バレル上昇の78.1ドル/バレルとなりました。
円の対米ドルレートは、上半期は概ね109円~111円のレンジで推移しましたが、10月以降は米国の物価上昇による利上げ観測の高まりや原油高などを背景にした日本の貿易収支悪化観測から円が売られ、11月下旬には4年ぶりに115円台をつけ、その後もドル高基調が続きました。3月以降は米国が政策金利の引き上げを決める中、ロシアによるウクライナ侵攻により更に資源高が進んだことを背景としてドル高が急加速し、年度末にかけて一時125円台まで進みました。その結果、平均レートは前期比6.3円/ドル円安の112.4円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格の上昇などにより、6兆6,868億円(前期比+46.7%)となりました。
売上原価は、5兆8,026億円(前期比+45.2%)となり、販売費及び一般管理費は、4,497億円(前期比+7.3%)となりました。
営業損益は、在庫評価影響が前年度の75億円の利益から大幅に増加し、2,332億円の利益となったことに加えて、燃料油セグメントにおける増益などにより、4,345億円(前期比+2,944億円)となりました。
営業外損益は、持分法投資損益の改善などにより、248億円(前期比+565億円)の利益となりました。その結果、経常損益は4,593億円(前期比+3,509億円)となりました。
特別損益は、子会社に対する長期貸付金等評価損失の計上などにより、712億円(前期比△274億円)の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、1,113億円(前期比+819億円)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は27億円(前期比△30億円)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は2,795億円(前期比+2,446億円)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2021年1月~12月期、国内子会社は2021年4月~2022年3月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
|
(2021年3月期) |
(2022年3月期) |
増減額 |
増減率 |
|
燃料油 |
35,934 |
52,194 |
+16,260 |
+45.3% |
|
基礎化学品 |
3,290 |
5,635 |
+2,345 |
+71.3% |
|
高機能材 |
3,326 |
4,214 |
+888 |
+26.7% |
|
電力・再生可能エネルギー |
1,237 |
1,383 |
+145 |
+11.8% |
|
資源 |
1,720 |
3,388 |
+1,668 |
+97.0% |
|
その他・調整額 |
59 |
53 |
△5 |
△9.2% |
|
合計 |
45,566 |
66,868 |
+21,301 |
+46.7% |
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
|
(2021年3月期) |
(2022年3月期) |
増減額 |
増減率 |
|
燃料油 (在庫評価影響除き) |
1,021 (947) |
3,697 (1,365) |
+2,676 (+418) |
+262.1% (+44.2%) |
|
基礎化学品 |
34 |
82 |
+48 |
+140.2% |
|
高機能材 |
130 |
171 |
+41 |
+31.8% |
|
電力・再生可能エネルギー |
△173 |
△99 |
+74 |
― |
|
資源 |
47 |
810 |
+763 |
― |
|
その他 |
9 |
8 |
△1 |
△13.4% |
|
調整額 |
△66 |
△174 |
△108 |
― |
|
合計 (在庫評価影響除き) |
1,003 (928) |
4,495 (2,162) |
+3,492 (+1,234) |
+348.3% (+133.0%) |
(注)セグメント利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。
国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。コロナ禍による激しい需要変動の中、製油所の稼働調整や製品の輸出入等の柔軟な需給対応を実施し、燃料油の安定供給に努めました。
国内販売においては、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、新アプリ「Drive On」・カーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus/SEIBIS」を基盤としたスマート施策と、SSをあらゆる移動体のメンテナンス拠点とすべく、「らくらく安心車検」や個人向けカーリース「オートフラット」を始めとしたモビリティ施策を展開します。また、2030年ビジョンで掲げた「地域のつながりを支える責任」を果たすべく、SSの「スマートよろずや」化構想に向けて、移動式脳ドックやゴーストキッチンなどの実証を開始しました。更には、次世代モビリティサービスを手掛ける「㈱出光タジマEV」の設立や、介護事業を包括的に連携・サポートする仕組みづくりに取り組むQLCプロデュース㈱の株式を取得するなど新たな取り組みを加速しています。
海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
以上の結果、燃料油セグメントの売上高は、原油価格の上昇などにより5兆2,194億円(前期比+45.3%)となりました。セグメント損益は、年間を通した原油価格上昇に伴う在庫評価益の影響やタイムラグによる製品マージン改善および持分法投資損益の増加要因が、自家燃などのコスト増加の減益要因を上回り3,697億円(前期比+262.1%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は2,332億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
既存事業の競争力強化として、徳山事業所のエチレン製造装置内にある旧型ナフサ分解炉2基の停止、高効率ナフサ分解炉1基の新設を行い、2021年2月に稼働を開始しました。エチレン製造の効率化により、従来比30%の省エネルギー効果を実現し、年間約16,000トンのCO2排出量削減に寄与する予定です。
更にカーボンニュートラルへの対応として、全社横断的なワーキンググループを発足し、ケミカルリサイクルをはじめとするサーキュラーエコノミーに向けた検討を開始しています。
以上の結果、基礎化学品セグメントの売上高は、ナフサ価格が上昇したことなどにより5,635億円(前期比+71.3%)となりました。セグメント損益は、スチレンモノマーの製品マージンの回復等により82億円(前期比+140.2%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
グローバルでの販売拡大に向けて、今後更なる需要増加が見込まれるEVの電動ユニットに適合する潤滑油やモーター駆動に伴う高耐熱性化・低騒音化のニーズに対応するグリースの開発推進に努めました。また、海外における出光ブランド製品の拡販に向けて商品開発・販売戦略の取り組みを強化しました。
(機能化学品事業)
自社技術を軸に、自動車、情報・通信向けエンジニアリングプラスチック、生活必需品向け粘接着基材、耐久消費材向け中間体等、高機能材の拡大に努めました。事業規模拡大については、粘接着基材において、2020年に水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)生産を台湾FPCC(Formosa Petrochemical Corporation)社と協業にて実施し、市場に供給開始しています。更にエンジニアリングプラスチックにおいて、当社独自技術であるSPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂の生産規模拡大を決定、マレーシアにて第二装置を建設開始し、2022年度末に完工予定です。
(電子材料事業)
有機EL材料、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2020年に商業運転を開始した、中国四川省内成都の有機EL材料製造工場は順調に稼働し、日本、韓国、中国の三拠点による製造供給体制を確立しました。
(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))
国内のアスファルト需要は堅調に推移し、インフラ整備への安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく商品開発や、他部門との共同でカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発に取り組みました。海外事業においては、東南アジアにおける現地発注者との高速道路における試験的施工の結果を踏まえ、発注仕様に採用されることとなりました。
(アグリバイオ事業)
2011年6月に株式公開買付により㈱エス・ディー・エス バイオテックを連結子会社化し、農業関連資材を中心とした共同取組みを推進してきましたが、更なる連携強化とシナジー発揮のため、同社を当社の完全子会社とし、更に当社アグリバイオ事業部を同社に吸収分割により承継し、アグリバイオ事業を一体運営することとしました。
以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、4,214億円(前期比+26.7%)となり、セグメント損益は、潤滑油事業における販売数量の減少に伴う減益を機能化学品事業のマージン拡大および電子材料事業の販売数量増加による増益などが上回ったことにより171億円(前期比+31.8%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組んでいます。国内においては、さいたま市とゼロカーボンシティ実現に向けた共創推進の連携協定を締結するなど、自治体との取り組みを進めています。海外においては、米国、フィリピンにおいて、開発を進めていた大型太陽光発電所が無事完工を迎えました。また、成長市場である東南アジアにおいては大型の太陽光発電所に加え、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置にも取り組んでいます。
以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,383億円(前期比+11.8%)となりました。セグメント損益は、前年度の電力市況高騰による調達コスト上昇の反動などにより△99億円(前期比+74億円)となりました。
(オ)資源セグメント
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱に成功した北部北海での油田開発に取り組み、ドゥーヴァ油ガス田の生産を開始しました。また、従来当社の連結子会社であった出光スノーレ石油開発(株)(現:(株)INPEXノルウェー)は、当社が一部株式を(株)INPEXに譲渡したことによって持分法適用会社となり、連結バランスシートの圧縮、スリム化に繋がりました。一方、当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、2020年11月から生産を開始したベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは安定生産を継続しました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規案件の開発や海外案件の検討を進めました。
石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格上昇などにより754億円(前期比+128.9%)となり、セグメント損益は387億円(前期比+473.4%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
オーストラリアでは、既存鉱山の競争力強化に向け、遠隔自動採炭などの新技術導入に向けたトライアル生産を実施しました。また、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討、ニューキャッスル港でのグリーン水素・アンモニアプロジェクトにおける共同検討・調査の開始等、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
低炭素ソリューション事業においては、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラントをベトナムに建設することを決定しました。また、石炭ボイラ制御最適化システムに加え、バイオマス燃料混焼率最適化システムも販売を開始しました。
石炭事業・その他事業の売上高は、2,634億円(前期比+89.4%)となりました。セグメント損益は、石炭価格の上昇などにより423億円(前期比+443億円)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は3,388億円(前期比+97.0%)、セグメント損益は810億円(前期比+763億円)となりました。
(カ)研究開発及び新ビジネス開発
(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、2021年11月に、商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼働を開始しました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (2021年3月期) |
当連結会計年度 (2022年3月期) |
増減 |
|
流動資産 |
16,655 |
23,681 |
+7,026 |
|
固定資産 |
22,889 |
22,331 |
△558 |
|
資産合計 |
39,544 |
46,012 |
+6,467 |
|
流動負債 |
16,213 |
20,613 |
+4,400 |
|
固定負債 |
11,180 |
11,034 |
△146 |
|
負債合計 |
27,393 |
31,647 |
+4,254 |
|
純資産合計 |
12,151 |
14,365 |
+2,214 |
|
負債純資産合計 |
39,544 |
46,012 |
+6,467 |
ア.資産の部
当期末における資産合計は、原油価格の上昇による棚卸資産および売掛金の増加等により、4兆6,012億円(前期末比+6,467億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、原油価格の上昇により買掛債務が増加したこと等により、3兆1,647億円(前期末比+4,254億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、配当金の支払い357億円や非支配株主持分398億円の減少があった一方、親会社株主に帰属する当期純利益2,795億円の計上などにより、1兆4,365億円(前期末比+2,214億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は30.7%(前期末比+1.6ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.9(前期末:1.0)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (2021年3月期) |
当連結会計年度 (2022年3月期) |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
1,705 |
1,461 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,099 |
△1,116 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△562 |
△300 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
△32 |
31 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
12 |
76 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
1,293 |
1,310 |
|
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の 増減額(△は減少) |
5 |
5 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
1,310 |
1,390 |
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,390億円となり、前期末に比べ、81億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の上昇に伴い必要運転資金は増加したものの、減価償却費や税金等調整前当期純利益などの資金増加要因により、1,461億円の収入となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
主に製油所設備の維持更新投資や米国におけるメガソーラー発電事業への投資などによる有形固定資産の取得(947億円)により、1,116億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払い(357億円)や有利子負債の返済などにより、300億円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
燃料油 |
2,567,751 |
159.2 |
|
基礎化学品 |
540,050 |
138.7 |
|
高機能材 |
232,786 |
109.4 |
|
電力・再生可能エネルギー |
8,218 |
85.8 |
|
資源 |
267,822 |
221.7 |
|
その他 |
- |
- |
|
合計 |
3,616,629 |
154.2 |
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
燃料油 |
5,219,413 |
145.3 |
|
基礎化学品 |
563,526 |
171.3 |
|
高機能材 |
421,437 |
126.7 |
|
電力・再生可能エネルギー |
138,289 |
111.8 |
|
資源 |
338,776 |
197.0 |
|
その他 |
5,319 |
90.8 |
|
合計 |
6,686,761 |
146.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。
設備投資資金については、エネルギー安定供給のための維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、先進マテリアルや次世代モビリティ&コミュニティ等の成長分野への進出・事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債・コマーシャル・ペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様な選択肢から効果的に組み合わせて調達しています。
当連結会計年度末の短期借入金の残高は2,848億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,750億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は1,400億円、コマーシャル・ペーパーの残高は2,370億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社4社と共同で、取引金融機関2行とマルチカレンシーによる特定融資枠契約360百万米ドルを締結しており、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現を達成するため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)および投下資本利益率(ROIC)の主な改善要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急騰を受け、前年度に比較し在庫評価影響の大幅な改善
(イ)石炭をはじめとする資源価格高騰により、資源セグメントにおける収益改善
(ウ)燃料油セグメントにおける製品マージンの改善
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
|
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
|
自己資本利益率(ROE)(%) |
22.3 |
9.5 |
- |
3.0 |
21.8 |
|
投下資本利益率(ROIC)(%) |
- |
- |
- |
2.7 |
6.4 |
|
ネットD/Eレシオ(倍) |
0.9 |
1.0 |
1.0 |
1.0 |
0.9 |
|
自己資本比率(%) |
29.7 |
29.1 |
29.6 |
29.1 |
30.7 |
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
投下資本利益率(ROIC):税後営業利益/(純資産+有利子負債)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。
4.2020年3月期以前の投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。
当社が2021年5月に公表した「中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」における経営目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」に記載しています。
当社は、以下のとおり、特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約を締結しています。
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の種類 |
契約内容 |
効力発生日 |
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出光興産 株式会社 |
シェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲー |
スイス |
商標等 使用契約 |
特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約 |
2016年12月19日 |
当社グループは、燃料油、高機能材、資源、更には新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。現在、図に示した研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。また、エネルギー・マテリアルトランジションならびに先進マテリアル領域の強化・拡大に向け、2021年7月に技術・CNX戦略部を新たに設立、全社研究開発戦略の策定、部門横断での新規事業開発に取り組んでいます。
なお、研究開発費については、各セグメントに配賦できない全社共通研究費等125億円が含まれており、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は前年同期比55億円増加の
(当社グループの研究開発体制)
当連結会計年度における各セグメントの研究開発内容、研究開発経費及び研究開発成果は次のとおりです。
(1) 燃料油セグメント
燃料油セグメントでは、環境に配慮した石油製品の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
廃プラスチックからのエチレン・プロピレン製造の技術開発をはじめ、製油所・事業所の省エネルギー化及び環境調和型社会への貢献のための技術開発を推進しています。
(2) 高機能材セグメント
高機能材セグメントでは、環境に配慮した潤滑油製品の開発、機能舗装材(アスファルト)の開発、機能材料及び樹脂加工製品の競争力強化に向けた保有技術の改良や新規材料の開発、電子材料事業、アグリバイオ事業における研究開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
①潤滑油事業では、省燃費・省エネルギーや環境に配慮して開発した商品をグローバルに展開し、国内及び海外市場への安定供給実現に努めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・自動車用潤滑剤においては、車両の効率向上に寄与する低粘度EV車両用潤滑油、及び信頼性向上に寄与するEV車両用グリースを開発し、商品ラインアップを拡充しました。
・工業用潤滑油においては、消費電力削減(CO2削減)に貢献する省エネルギー型機械設備用潤滑油、低地球温暖化係数冷媒に対応する冷凍機油、作業環境改善に寄与する切削油の開発等を推進し、高機能商品ラインアップを拡充しました。
②機能舗装材(アスファルト)事業では、国内外において、省資源・省エネルギーに加え、カーボンニュートラルに資する道路舗装材料、建築防水材料に代表されるインフラ資材分野における研究開発を行っています。特に道路舗装材料においては、道路管理者との連携強化、共同研究を行うことで、舗装リサイクル材や橋梁舗装材の高性能化・長寿命化、次世代高耐久舗装技術の開発を行っています。これら新技術の社会実装をとおして、安心して利用できる道路舗装の実現に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・舗装リサイクル向け機能舗装材においては、NEXCO総研とリサイクル舗装の性能向上に資する研究を共同で行い、試験舗装による評価を行いました。
・高速道路や幹線道路向け機能舗装材においては、国土交通省ならびにNEXCO総研と連携を図りながら、舗装面の平坦性向上と長寿命化に効果のある材料の開発を推進しました。
・カーボンニュートラルに資する機能舗装材として、燃焼排ガス中のCO2を舗装中に固定化する技術を開発しました。
③機能材料分野では、エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂やシンジオタクチックポリスチレン樹脂の高付加価値商品の開発、新機能を有した粘接着基材である機能性軟質ポリプロピレンや水添石油樹脂の開発および機能性コート剤として特殊ポリカーボネートやポリアニリンの開発に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロンTM)では、自動車照明用途にて高透明性、高導光性及び高耐候性が要求されるDRL(Daytime Running Light)部品向けの新グレード開発に取り組みました。また特殊共重合グレードを使用したコンパウンドグレードの開発を推進しました。
・シンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレックTM)では、電気自動車市場の拡大を想定し、電装部品用の材料開発を推進しました。また、優れた電波透過性、電気特性を活かした高速通信分野向けの材料スペックイン推進および、押出・フィルム・繊維分野、アロイ分野のマーケティング強化により、自動車分野以外への新規用途開拓に取り組みました。
・一般の結晶性ポリプロピレン樹脂と比較して、融点が低く、軟質特性、遅延結晶性を有する機能性軟質ポリプロピレン(商品名:エルモーデュTM)や、重合および水添技術をベースに独自開発した無色透明の石油樹脂で、海外生産を開始した水添石油樹脂(商品名:アイマーブTM)では、ホットメルト接着剤や不織布向けを始めとする新規用途開拓を推進しました。
・耐摩耗性・耐熱性に優れる特殊ポリカーボネート(商品名:タフゼットTM)は、電子写真感光体ドラムの表面コーティング用樹脂として、さらなる性能向上のための開発に取り組みました。
・溶剤に可溶な導電性高分子で、電子部品に採用されているポリアニリンは、その特徴を生かした新規用途開拓を推進しました。
・プラスチック複合材料(商品名:カルプTM)では、ポリオレフィン系樹脂コンパウンドにて植物由来の原料化の検討や、主力商品である難燃グレードの環境安全性を高める非ハロゲン化の開発を推進、また、ポリフェニレンサルファイド系樹脂コンパウンドにて、光ファイバーコネクタ向けの超精密成形グレードやセラミックスに対する高い摺動性を示すグレードの開発などを推進しました。
④シート・フィルム分野では、包装材料のグレード開発及び産業用途の加飾分野の開発を行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・昨今の環境問題対応への社会的要求を受け止め、バイオマスプラスチックを用いたシート・フィルム、ジッパー等の環境対応商品の開発を継続しラインアップを増やすとともに、シートにおいてはマテリアルリサイクルの更なる拡充の検討を開始しました。
・包装材料においては、易開封、イージーピール、直線カット等のユニバーサルデザインと顧客ニーズに対応した商品開発を進めました。易開封性を備え持つ成形容器(商品名:マジックトップTM)では、食品メーカーのForm Fill Seal機での成形を可能とし、今後拡大する病院食・介護食分野へ対応しました。
⑤電子材料事業では、有機EL材料、酸化物半導体材料に代表される電子材料分野での新素材の研究開発を行っています。特に有機EL材料においては、顧客との連携強化、大学との共同研究などを通じて商材の更なる高性能化から次世代技術の開発まで、幅広い開発活動を推進しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。
・ディスプレイ用酸化物半導体材料において、顧客で良好な評価結果が得られ、既存技術対比で大幅な低消費電力化の可能性を確認しました。
⑥アグリバイオ事業では、微生物培養技術や応用技術、天然物活用技術によって、農業や畜産分野の「食の安全・安心」と「増大する食糧需要」に貢献する商品のラインアップを拡充しています。開発した剤は、国内はもとより海外への展開も積極的に行っています。当連結会計年度の主な実績は以下の通りです。
・農業分野では、国内で微生物を利用した残渣分解剤1剤の販売を開始しました。
・連結子会社の㈱エス・ディー・エス バイオテックでは、農薬の3剤の新規登録を行いました。また、22剤の
拡大登録を取得しました。さらに新たに2剤の販売を開始しました。
(3) 資源セグメント
石炭事業では、顧客ニーズに応える技術サービスバイオマス等の混焼によるCO2排出量の削減や、CO2を化学原料として利用する技術開発を積極的に推進しています。当セグメントに係る研究開発費は
・石炭火力のCO2排出削減に繋がる木質バイオマスの製造・販売の事業化に向け、ベトナムでのプレマーケティングプラントの運転開始、ブラックペレットの混焼に取組む自社事業所・需要家と共に石炭ボイラでの混焼試験を実施し、より実用的な技術を確立してきました。試験結果を踏まえ、木質バイオマスの品質向上や需要家へのコンサルティングを行っています。
・郵船商事株式会社が保有するボイラ制御技術に当社が保有する石炭高効率燃焼技術を融合させて機能向上を図ったボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」の販売を通じ、需要家の石炭ボイラから排出されるCO2の削減に貢献しています。本事業は日本郵船グループと共同で実施しており、バイオマス混焼による、機器や発電効率への影響・経済的負担の算定等にも取り組んでいます。
・CO2を資源として活用するとともにCO2の排出削減を行うため、廃コンクリート中のカルシウムと発電所や工場から排出されるCO2を作用させ炭酸塩(炭酸カルシウム)を製造するプロセスの研究開発を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て進めています。
・石炭鉱山植栽とそのバイオマスを活用したGHG低減を目的に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で新規事業創出の研究開発を実施しました。
(4) 全社共通(コーポレート研究)
コーポレート研究としては、社会のニーズや技術のトレンドを掴み、適社性を加味したうえで、新規事業創出に向けた機能性素材・電子素材の開発やエネルギー・マテリアルトランジションに資する研究を行っています。また、全社研究開発を加速するため、分析・解析技術の高度化、機械学習、AIを活用した研究促進を図っています。
・電動化社会、高度情報化社会に必要とされる次世代材料として、超耐熱スーパーエンプラ・導電高分子・無機電子素材及び各種デバイスの開発に取り組んでいます。カーボンニュートラルへの取り組みとして、バイオマスやCO2を原料とする素材、燃料やCO2の固定化技術を開発しています。これらを進めるにあたっては、自社単独での開発にこだわることなくオープンイノベーションを積極的に活用しています。
・2020年4月に国立大学法人東京工業大学すずかけ台キャンパス内に開設した「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」においては高難度な技術課題の解決に取り組んでいます。
・将来のエネルギーキャリアとして注目されているアンモニアを常温常圧で水と窒素から製造する東京大学 西林仁昭教授らが開発した触媒系の実用化の検討を行っています。本研究は早期実用化が望まれ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて経済産業省が立ち上げたグリーンイノベーション基金事業に採択されました。本資金を活用し、“窒素社会”を目指した実用化研究を加速します。
・リチウム電池材料部では、次世代電池として早期の商業化が望まれる全固体電池のキーマテリアルである固体電解質を中心に、次世代電池用材料及びその量産化の研究開発を行っています。市場拡大が見込まれる電動車両に必要な安全で高性能な全固体電池の実現に向け、固体電解質の開発・材料提供を通じて貢献すべく、固体電解質の量産化に向けた開発の加速を目的として、商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼動を開始しました。加えて、材料提供先の拡大に伴い、次世代技術研究所の敷地内にも設備を建設することを決定しました(完工・稼働開始は23年度第1四半期)。