第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)中期経営計画(2023~2025年度)

①2050年ビジョンと方向性

当社は、2023~2025年度を対象とした新たな中期経営計画(以下、本中計)策定にあたっては、2050年のカーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、更にその先のエネルギーの未来と当社のありたい姿について「長い時間軸」で捉える必要があると判断し、今回、新たに2050年ビジョンを策定致しました。2030年に向けて「責任ある変革者」として進める打ち手を、2040年、2050年と着実に具現化し、「社会実装」していくことを「変革をカタチに」と表現しました。

2050年は、世界的なカーボンニュートラルの潮流が加速していく中、エネルギーシステムや社会構造が大きく変化している可能性が高いと考えます。その過程においては、非連続的な技術革新など多くの課題が生じることが想定されるとともに、新たな技術を社会に受け入れられる形にして届ける担い手が求められます。

当社は、このような社会課題や環境変化に対し、エネルギーの安定供給で培ってきた知見や、地域社会との信頼関係をベースにしながら、社会実装を推進していくことで「人びとの暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たしていきます。

 

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ア.2050年の3つの事業領域及び主力事業

当社は本中計において新たに3つの事業領域を定義し、それぞれの領域の社会実装を進めることで事業ポートフォリオ転換を推進します。

①一歩先のエネルギー

②多様な省資源・資源循環ソリューション

③スマートよろずや

 

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イ.2050年カーボンニュートラルへの道筋

当社は、2050年までに、自社操業に伴う排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラルを実現します。そのための中間目標として、2030年時点のGHG排出削減量の目標を2013年比約730万トン、46%の削減を実現することで、2050年の当社のカーボンニュートラル実現への道筋を具体化していきます。

加えて、サプライチェーン全体での排出量(Scope3)においても、産業活動・一般消費者向けのソリューションを提供することで、カーボンニュートラルを目指します。

 

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②2030年に向けた経営目標と基本方針

2030年は、既存のエネルギーと素材の安定供給責務を果たしながら、2050年カーボンニュートラルに向けたトランジションの一部が具現化する時期(転換期)と位置付け、更なる利益成長や資本効率性を追求しながら、化石燃料収益比率については50%以下を目標とします。

 

ア.2030年度経営目標

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イ.2030年基本方針

2030年ビジョンである「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めます。

①ROIC経営の実践による事業ポートフォリオ転換

②従業員の成長・やりがいの最大化

③ビジネスプラットフォームの進化

 

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※上記2022年度見通しは、2022年11月16日に開示した本中計発表時に、以下2023年度計画の主要前提※のもと算出した数値となります。

豪州一般炭スポット価格($170/t)、ドバイ原油価格($90/BBL)、為替(¥130.0/$)等

 

③中期経営計画(2023~2025年度)

本中計については、2030年ビジョン「責任ある変革者」に向けた実行計画と位置付けており、下記の目標の達成に向けて既存事業の収益最大化、新規収益の創出に取り組みます。

 

ア.2025年度経営計画

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イ.セグメント別営業利益+持分利益(在庫評価影響除き)

資源セグメントにおいて、2023年度以降の石炭価格の正常化から減益を見込む一方、燃料油セグメントをはじめ既存事業の収益の最大化に取り組むことにより、2025年度のセグメント利益は、2022年度見通し(前提補正後)対比300億円増益の1,900億円を目指します。

 

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※上記2022年度見通しは、2022年11月16日に開示した本中計発表時に、以下2023年度計画の主要前提のもと算出した数値となります。

豪州一般炭スポット価格($170/t)、ドバイ原油価格($90/BBL)、為替(¥130.0/$)等

 

ウ.投資計画(3カ年)

本中計期間は、当社の事業ポートフォリオ転換を着実に推進するため、既存事業投資とは別に事業構造改革投資に2,900億円を配分します。SAF製造装置やアンモニア基地化投資を含む一歩先のエネルギー領域やリチウム固体電解質の事業化に向けた投資などの多様な省資源領域、またスマートよろずや領域では超小型EV製造に向けた投資など合計2,900億円を見込んでいます。また、既存事業の事業基盤強化や操業維持投資と合わせて3年間の投資総額は、6,900億円となる見込みです。

 

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エ.株主還元方針

前中期経営計画期間から引き続き、2023~2025年度の3カ年累計の在庫影響除き当期純利益に対し、総還元性向50%以上の株主還元を実施します。配当は、1株当たり120円の安定配当を基本とする方針です。

 

オ.キャッシュフローの配分(3カ年)

2023~2025年度では当期利益の他、資産売却等により9,100億円のキャッシュを確保します。既存事業投資は償却等の範囲内を目途に実行し、残る5,100億円のフリーキャッシュフロー(FCF)は、事業構造改革投資、株主還元に充当します。

 

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(2)事業上及び財務上の対処すべき課題

①セグメント毎の課題

当社のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。

ア.燃料油セグメント

(ア)石油精製の最適化とCNXセンター化の取り組み

石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていくと共に、国内需要減を見据えた精製能力再編に取り組み、将来に向けた最適な製油所体制を目指します。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、製油所・事業所機能を転換していくCNXセンター化を進めています。コンビナートの広大な敷地や大型船が入れる桟橋、タンク群などの既存設備は、バイオマス燃料をはじめ、水素・アンモニアや合成燃料などの製造や貯蔵、廃プラスチックのリサイクルなどに活用できるポテンシャルを有しており、各製油所・事業所の特性に合わせた取り組みを検討しています。

 

(イ)燃料油事業の海外展開

アジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、海外での燃料油事業を推進していきます。ニソン製油所については、安定操業を継続し、コスト適正化により引き続き収益改善に取り組みます。また、これまで培った知見を活用し、脱炭素関連商材の調達にも取り組みます。

 

(ウ)特約販売店ネットワークの基盤強化

特約販売店のネットワークは、燃料油、ガス等の、地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約販売店の収益力強化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。当社の最大の「資産」である特約販売店とのネットワークは、2021年4月より展開を開始したSS新ブランドapollostationを通じて、スマートよろずやを展開し、それぞれのまちの人と豊かなくらしをサポートしていきます。具体的には、人と「多様なエネルギー」をつなぐエネルギーよろずや、人と「これからの移動」をつなぐモビリティよろずやを柱に、地域の暮らしを支える生活支援基地へと進化していきます。

また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。

 

イ.基礎化学品セグメント

国内事業の収益基盤の安定・拡大を促進するため、徹底した効率化によるコスト低減を図るとともに、燃料油事業や千葉・徳山コンビナート顧客と連携し、事業環境に応じた安定生産と最適化、原料多様化による競争力強化を図ります。具体策として、2022年度に稼働を開始した愛知事業所パラキシレン製造装置により、余剰ガソリン基材の活用によるケミカルシフトを更に推進していきます。また、オフサイトファシリティの合理化により、輸送効率の向上を図ります。このほか、DXの導入などによる保安の高度化や保全工事仕様の最適化を進め、設備の信頼性向上とコスト競争力強化の両立に取り組みます。

2050年CN実現に向けては、「バイオ原料化によるバイオ化学品の供給」と「資源循環システムの確立」を推進します。バイオ化学品については、バイオエタノールを活用したバイオ化学品の生産について、SAF事業と検討を進めて行く予定です。資源循環システムの確立については、使用済みプラスチックのリサイクル事業を進めていきます。また、CN化を推進する上で、製油所・事業所の既存設備を活用するだけではなく、グループ企業の㈱プライムポリマー、PSジャパン㈱を含めた化学品のバリューチェーン全体で変革を推進します。

 

ウ.高機能材セグメント

(ア)潤滑油事業

お客様が抱えている課題やニーズに沿った商品開発・提案を推進します。特にカーボンニュートラルの取り組み進展により、需要が拡大しているEVに適合する製品や、省エネ・省資源に資する製品の上市、拡販に取り組みます。

海外においては出光ブランドモーターオイル「IBMO(Idemitsu Brand Motor Oil※)シリーズ」の展開により、出光ブランドの強化を図り、更なる収益拡大を目指します。

※Idemitsu Brand Motor Oil:海外において展開されている出光ブランドのエンジンオイル。

 

 

(イ)機能化学品事業

技術・商品の優位性が重要視される分野に経営資源を集約し、成長拡大を図ります。エンプラ・コンパウンド事業に注力、次世代モビリティ、高速通信分野のニーズに対応する開発を加速、また、電動・電化、ICTを成長領域とし、分子設計、配合技術を駆使、機能材料事業の用途開発を推進します。CNXセンター構想と連携、カーボンニュートラルにも取組み、次期中期で掲げた事業構造改革を着実に実行していきます。

 

(ウ)電子材料事業

有機ELディスプレイはスマートフォンやテレビといった既存用途に加え、今後ノートパソコンやタブレット端末への適用増加が期待されており、有機EL材料市場は成長が見込まれます。有機EL材料の需要増加に対応するため、日本・韓国・中国の三つの製造拠点による材料の安定製造・供給体制を維持しつつ、競争力強化に向けた体制最適化に取り組みます。また、新たに設置する韓国拠点を活用し、韓国グローバル企業との連携強化と顧客ニーズを的確に捉えた高性能材料の研究開発を推進します。

 

(エ)高機能アスファルト事業

2023年度は、国土交通省が打ち出した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の3年目であり、継続して国内の道路舗装需要は堅調に推移するものと予測されます。顧客、社会のニーズに基づき道路ネットワークの安心安全とカーボンニュートラルの実現に向けた製品・技術開発を推進するとともに、インフラ公共資材としての安定供給に努めていきます。また、海外事業においては、特にアジア新興国における高速道路の延長計画等のインフラ整備は依然旺盛であり、道路舗装資材の需要は今後も拡大することが予測されます。国内で培った高機能アスファルトの展開を通して各国の社会インフラ構築に貢献していきます。

 

(オ)農薬・機能性飼料事業

出光興産アグリバイオ事業部の㈱エス・ディー・エス バイオテックへの統合を完了し、出光グループのユニークな新企業体として、農薬及び機能性飼料事業に対して更なるシナジーの発揮を実現していきます。

 

(カ)全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)向け固体電解質

全固体電池は、主にEVの航続距離拡大、充電時間の短縮、安全性向上といった性能ニーズに応える技術として実用化と普及拡大が期待されています。そのキーマテリアルである固体電解質について、当社は自動車・電池メーカー等のお客様と連携することで開発を加速し、更なる材料性能及びコスト競争力の向上に努めます。また、量産化に向けては小型実証設備の第1プラント(2021年11月稼働)及び第2プラント(2023年度稼働開始予定)に加え、NEDO「グリーンイノベーション基金事業 次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトに採択された大型パイロット装置建設の準備推進を通して量産技術の確立につとめ、世界に先駆けた固体電解質の早期事業化を推進します。

 

エ.電力・再生可能エネルギーセグメント

国内においては、競争力ある火力電源を始め、風力、太陽光、バイオマスといった多様な再生可能エネルギー電源など、多様なポートフォリオで構成された発電所を活用し、安定的で低炭素に貢献する電力供給を行っています。また、これまで培った太陽電池事業におけるノウハウを活かし、将来的に大量廃棄が見込まれるパネルのリサイクル・リパワリングなど循環型社会への対応も進めています。更に、今後進展する分散型社会に向けて、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた需給調整ビジネスにも取り組みます。海外においても脱炭素の潮流は国内と同様であり、北米や東南アジアにおける太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。加えて、北米におけるガス火力発電事業にも取り組んでいます。

 

オ.資源セグメント

ロシア・ウクライナ問題によりエネルギーセキュリティの強化が求められる中で、継続して安定供給を行うために、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については、環境負荷低減を図るため、石炭への混焼比率を高めることができるバイオマス燃料の製造開始や高効率燃焼技術の提案とともに、オーストラリアでの現地事業基盤を活用した新規事業に取り組みます。また、地熱開発については、大分県での地熱事業の維持・継続と秋田県での新規発電所建設を着実に行うとともに、新規事業の調査・実証を進めます。

 

②財務上の課題

2030年の基本方針の実現に向け中期的に事業構造の改革を着実に推進するため、キャッシュ・フローの配分を適切に実施するとともに財務基盤の維持・改善に努めます。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、2021年に策定した「サステナビリティ方針」において、環境、社会、ガバナンスのそれぞれについて重点方針を定め、グループ一丸となって環境課題や社会課題の解決に貢献することを目指しています。

 

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(1)サステナビリティ(ESG)共通

①ガバナンス

当社においては、気候変動や人権といったサステナビリティ(ESG)に関連する課題は、全社的なコーポレートガバナンス体制の下(56ページ)、経営委員会で議論される体制となっています。経営委員会の委員長は社長が務め、議論された内容は適宜取締役会に付議・報告されます。

また、当社ではサステナビリティの専任組織であるサステナビリティ戦略室を経営企画部の中に設置しています。サステナビリティ戦略室が、サステナビリティに関する課題進捗を取りまとめて経営に報告するなど、部門横断的に関与して、当社のサステナビリティ経営を推進しています。経営で十分なサステナビリティに関する議論、モニタリングができる体制としています。

 

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②戦略

当社は、昨年、2050年ビジョン「変革をカタチに」を策定し「人びとの暮らしを支える責任」、「未来の地球環境を守る責任」を果たしていきます。事業活動を通じて、持続可能な地球環境と社会を実現しつつ、企業としての持続的な成長を目指しています。特に、以下の分野を重点課題(マテリアリティ)として取り組みを進めています。

 

・カーボンニュートラル、循環型社会への貢献

・地域社会への貢献(エネルギー&モビリティ)

・従業員の成長・やりがいの最大化

・D&Iの深化

・デジタル変革の加速

・ガバナンスの進化

・健康、安全、遵法、人権擁護の徹底

 

尚、人的資本に関する戦略については、下記の「2(3)人的資本の多様性に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。

 

③リスク管理

当社グループは、事業活動に関わるさまざまなリスクを未然に認知・評価し、リスクに応じた適切な対応を講じることで、経営の安定を図っています。事業活動に関わるリスクを「業務リスク」「経営リスク」の2つに分類して対策を推進しています。「業務リスク」は、事故、災害、コンプライアンス違反、業務ミス、製品の瑕疵、クレーム、環境汚染、情報漏洩、サイバー攻撃、テロ、労務問題、経済安全保障、人権問題、サステナブル調達不備などに代表される業務遂行を阻害して損失のみを生じさせるリスクです。また、「経営リスク」は、事業活動に関わるリスクのうち、業務リスクを除く利益又は損失を生じさせるリスクです。投資や財務をはじめとする現在の事業戦略におけるリスクに加え、将来想定される事業環境のリスクもこれに含みます。

 

④指標及び目標

当社は、2019年に特定した重要課題(マテリアリティ)からの連続性を重視しつつ、社内外の環境変化を反映し、中期計画とビジョンの達成に向けて以下のプロセスでマテリアリティを見直し、指標・目標を定めサステナビリティ戦略を実行しています(目標値:CO2削減量15ページ、出光エンゲージメントインデックス・女性採用比率・女性役職者比率・男性育児休暇取得率・従業員一人当たり教育投資額27ページ)。

 

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尚、人的資本に関する指標及び目標については、下記の「2(3)人的資本の多様性に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。

 

(2)気候変動

①ガバナンス

化石燃料販売を主たる事業とする当社にとって、気候変動課題への取り組みは、中長期の時間軸で大規模な事業ポートフォリオ転換を伴う、最重要経営課題の一つです。

気候変動関連の対応に関しても、56ページに記載する当社のコーポレートガバナンス体制の下で対応を実施しており、取締役会は、本課題をさまざまな角度から多面的に捉えて経営方針を定めるとともに、その方針に基づいたアクションが、迅速かつ着実に実行されることを監督する役割を担っています。また、気候変動関連の主要な議案は、業務執行の最高審議機関である経営委員会に付された後、それらの中でも特に重要な内容については、取締役会に報告され、取締役会として、全社方針に基づいた執行が着実に行われているかを監督できる体制としています。

尚、気候変動関連の取り組みは、全社横断かつテーマが多岐にわたる取り組み課題であるため、カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けた全社課題の立案・遂行を加速させる必要があるという認識の下、2021年7月に技術・CNX※)戦略部を立ち上げ(2022年4月の組織改編で、CNX戦略室に改組)、全社CN戦略立案/GHG削減目標設定/CNX人材育成を社内関係部門と連携し主導しています。  ※) CNX : Carbon Neutral Transformation

 

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②戦略

次項で記載するリスクと機会全体像を踏まえ、リスク低減と機会最大化に向け、現在の5つの事業セグメントを3つの事業領域(「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」)に有機的に結合・再編し、各領域において必要とされる事業の社会実装を通して、2050年ビジョンの実現を目指します。

 

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2050年までの時間軸を強く意識し、エネルギーと素材の安定供給という役割を損なうことなく、最終的な社会において実装が必要とされる事業のみならず、そこに至る途中段階(移行段階)において社会が必要とする事業も含めて、社会実装テーマと特定し、実装に向けた検討を進めています。

 

③リスク管理

気候変動関連リスクは経営リスクの一つであり、2050年までを射程範囲とした、長期事業環境シナリオを策定し、シナリオのアウトプットを踏まえて、将来想定されるリスク(移行リスクと物理リスク)と機会を特定し、当社として必要な対応を明確化し、遂行しています。

 

区分

内容

当社の対応

移行

リスク

国内化石燃料需要の減少

化石代替燃料の供給拡大、国内供給体制の見直し

(CNXセンター化、スマートよろずや化)

技術革新によるエネルギー価格、資源価格の低下

サプライチェーン全体の競争力強化

政府によるカーボンプライシングの本格導入

政策動向の注視、社内炭素価格の導入・運用

化石資源採掘事業に対する規制、金融機関の慎重な投融資姿勢

石炭鉱山の生産規模縮小

炭素排出の多い企業に対するブランドイメージの低下

ステークホルダーとの対話継続・強化

物理

リスク

自然災害や海面上昇による沿岸拠点の被害、操業への影響

装置保全の計画的な強化、計器室移転の対応

異常降水や台風の頻発等による陸上・海上輸送への影響

供給維持に向けたサプライチェーン強靭化

機会

化石代替燃料の需要拡大 (固体燃料)

出光グリーンエナジーペレット生産・供給拡大

化石代替燃料の需要拡大(ガス体燃料)

アンモニア・水素サプライチェーンの構築

化石代替燃料の需要拡大(液体燃料)

SAF製造・供給体制の構築、

バイオディーゼル製造・供給体制の構築

低炭素燃料/原料供給拠点の重要性拡大

国内製油所・事業所のCNXセンター化、

バイオ化学品製造・供給体制の構築

CN社会実現に貢献する製品、素材の需要拡大

次世代素材・資材の開発※

次世代蓄電池の需要拡大

リチウム固体電解質の事業化

循環型社会実現に向けたリサイクルの本格拡大

リサイクル事業の確立

(使用済みプラスチック/ソーラーパネル/リチウム電池)

地域社会へのエネルギー安定供給

スマートよろずや化、SSネットワーク活用

電気自動車の普及拡大

超小型EVへの参画、EV向け潤滑油の開発、

EV充電・メンテナンス

再生可能エネルギーの需要拡大

国内外での多様な再生可能エネルギー電源の開発

分散型エネルギーシステムの進化、需要拡大

VPP制御サービスの開発、事業参入

 

リスク・機会の各項目詳細は、当社ウェブサイトに掲載している「出光統合レポート2022」の78ページに記載しています。

 

 

 

④指標及び目標

温室効果ガス(GHG)の排出量削減を考える際には、環境面のみならず、社会面、経済面に対してもプラスの影響を与えつつ、関連活動を推進していくことが重要だと考えています。

本認識の下、当社では、下図のように、CO2排出量削減のみに焦点を当てた環境への貢献、エネルギー供給をしつつCO2削減を実現するという社会と環境への同時貢献、CO2削減をしつつ収益を拡大するという環境と経済への同時貢献という3つの指標(目標値と社内用モニタリング指標)を用いて、CO2削減の取り組みを評価・管理する仕組みとしています。

 

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当社グループScope1+2排出量に関して、15ページにも記載のとおり、以下の目標を掲げています。

2050年:カーボンニュートラル

2030年:2013年比 △46% (△730万t-CO2相当)

2022年度のScope1+2排出量実績(速報値)は1,421万t-CO2で、2013年比の削減率は△10.5%です。

 

 

(3)人的資本の多様性に関する戦略並びに指標及び目標

①人材戦略

 

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当社は企業理念「真に働く」の下、「人が中心の経営」を掲げ「人の成長」を経営の目的にしています。当社の人財戦略は、多様な人財が個性を発揮し、仕事を通じて成長することを基本的な価値観としており、2050年ビジョンの実現に向け、「どのような未来が来ても、しなやかに、逞しく、未来を切り拓く人財集団」となるための施策を展開しています。

人財戦略として展開する施策は、大きく2つの視点で構成しています。1つ目は、人財が成長するための土壌となる風土の醸成です。多様な人財が集う中で同じベクトルを向くための「企業理念・ビジョンへの共感」、事業変革に向け新たな価値を創造するための「D&Iの深化 」に取り組んでいます。

2つ目は、人財の役割に応じた成長促進です。先の見えない時代においても未来を切り拓いていくために、役割に応じた能力開発やリスキリングにつながる教育投資を拡大し、「個々人の能力・個性の発揮」を促進しています。

人財戦略で展開するこれらの取り組みを人的資本投資として経営戦略の根幹に据え、事業構造改革投資との両輪で、2050年ビジョンの実現を目指しています。

また、これら人財戦略の取り組みにKPIを設定しており、進捗を管理していきます。各KPIについては、②指標及び目標をご参照下さい。

 

ア.企業理念・ビジョンへの共感

当社にとって企業理念は「この会社は何のために存在しているのか」を示すものです。企業理念は普遍で、北極星のようにずっと見え続けているものであり、社員にとっては自分が何か判断に迷ったときのよりどころであり、常にこうありたいと目指すものです。

当社は企業理念についての理解を深め、実践するため、一人ひとりの自問自答を大切にしています。従業員一人ひとりが、自身の担う業務と社会との接点や、自らが働く意義などと照合し、自問自答することや、従業員同士の対話において、自分の理解を共有することで、新たな気づきを得て、自らの考えを整理し、理解を深める好機になると考えています。

 

イ.D&Iの深化

当社グループは、2019年11月に制定した「ダイバーシティ&インクルージョン方針」に基づき、経営として取り組む重点課題の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実践」を掲げています。D&I推進委員会において、「行動指針」等も踏まえD&Iを推進することで目指す姿を下記のとおり設定しています。

「人が資本」「人が中心の経営」を標榜する当社は、全ての人が活き活きと活躍できることを何よりも重視します。

当社は、D&Iの推進を通じて、「異なる背景や知識・経験を持つ人が交流し化学反応を起こすことで、新たな価値を生み出す。」「既存の価値観に縛られることなく、継続的にイノベーションを生み出す組織に変容する。」ことを目指し取り組んでいます。

 

ウ.個々人の能力・個性の発揮

自律的なライフキャリア形成支援

(ア)人財育成の考え方

人の育成を経営の目的に据え、企業理念・行動指針に基づいた教育研修体系を2020年に策定しました。行動指針を高い次元で体現していく人財を増やすため、行動指針のうち特に高めていきたい「自立・自律」「変革」「共創」及びそれらの軸である「成長」については「高めていく発揮能力」として、更に詳細に設定しています。「先見」「挑戦」「決断」「協働」「完遂」「改善」「育成」という7つの観点において求める姿勢や行動のレベルを細かく定義しており、自身の現在のレベルを振り返るとともに、成長に向けて行うべきことを明確にすることが可能となっています。

(イ)教育研修体系の全体像

教育研修体系のベースは、発揮能力を高めるために「コンピテンシー開発」と考えています。加えて、当社では単なる職務上の成長だけでなく、人間としての成長も支援していきたいと考え、教養を高めるためのプログラムや、異なるライフステージの社員を支援するプログラムも準備しています。全ての社員が「自身が主役である」という意識を持てるよう、積極的な姿勢で、社会に貢献する人財に成長することを期待しています。

 

エ.多様で柔軟な働き方の推進

多様な社員が働きやすい環境づくりとともに、通勤負荷の緩和にもつながるテレワーク勤務制度やフレックスタイム勤務制度、サテライトオフィスなどを整備しています。

また、仕事と家庭の両立の基本的な考え方として、当社は、両立支援、次世代育成をD&I推進の重点施策の一つと位置付け、ライフイベントに沿った制度の拡充を進めていきます。仕事と家庭(育児・介護)を両立している社員が働きやすく、やりがいを感じられる職場風土を醸成することは、全ての社員にとって能力を最大限に発揮できる環境づくりにつながるとの考えから、さまざまな取り組みを展開しています。

 

なお、ア.~エ.の詳細については、当社ウェブサイトに掲載している「出光統合レポート2022」の94~104ページをご参照下さい。

 

②指標及び目標

2022年11月16日発表 中期経営計画公表値

人材戦略の

重点取り組み

KPI

2022年度実績

2025年度目標

企業理念・

ビジョンへの共感

出光エンゲージメントインデックス※

(従業員エンゲージメント)

67%

75%以上

D&Iの深化

女性採用比率

40%

50%以上

女性役職者比率

3%

5%以上

男性育児休業取得率

84%

80%以上

個々人の能力・

個性の発揮

従業員一人当たり

教育投資額/年

43千円

100千円以上

(国内トップクラス)

※組織に対する従業員のコミットメントを測定する当社独自の指標。企業理念への共感、当社の戦略・目標への支持、自分の役割の理解、成長実感等を毎年測定し、インデックスとして目標管理

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態・経営成績及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。当社の業績に特に大きな影響を与える商品分野につきましては、セグメント別に記載しています。文中の将来に関する部分は、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する事業等のリスクに関しては、別途記載しています。

 

(1)国際情勢や経済環境等の変化によるリスク

 

当社グループは日本及び世界各地にビジネスを展開しており、各々の地域の政治動向、景気動向及び経済情勢による影響を受ける可能性があります。特に足元のウクライナ情勢の他、海外諸国の政治的要因又は経済的要因に起因する世界景気の減速及び日本国内における人口構成の変化等がもたらすエネルギー資源及び製品需要の変動や価格の乱高下は、当社の業績へ影響を与える可能性があります。

 

(2)事業を取り巻く外部環境の変化によるリスク

 

商品市況リスク

(燃料油セグメント)

当社グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、昨年から続くウクライナ情勢の他、米国を始めとした世界各国の金融政策の動向、アジアにおける原油需要の変動、中東やアフリカの産油国の政情不安、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も大きく変動することが懸念されます。

当社グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは、棚卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。

なお、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、当社の営業利益は年間60億円増減する可能性があります。

 

(基礎化学品セグメント)

①原料コストの変動について

当社グループは、基礎化学品の原料であるナフサを自社製油所で生産するとともに市場から調達しています。ナフサ価格は、原油価格や、ガソリンの需要・価格動向、中国等において進められている石油化学設備の新設による需要増加の影響を受けることがあります。市場における激しい競争等の要因により、ナフサ価格の変動を製品価格に適切に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

②製品市況の変動について

日本を含むアジアの基礎化学品市場は激しい競争状況にあり、需要の変動や供給の増加の影響を受けます。アジアでは経済成長に伴う需要の増加が見込まれますが、近年で中国を中心とした基礎化学品を製造する大型の新設プラントが急増しており、アジア市場における供給過多や、新興国の経済成長鈍化に伴う需要低迷の可能性があります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、当社グループの財政状態及び営業利益は影響を受ける可能性があります。

 

(電力・再生可能エネルギーセグメント)

当社グループでは、卸電力取引市場を介した電力の卸売及び調達を行っていますが、この取引価格は燃料価格や電力需要、原子力・火力・再生可能エネルギー等の電源の稼働状況等の影響を受けて変動します。これらの要因によって取引価格が大きく変動した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(資源セグメント)

石油開発事業においては油・ガスを生産し販売していますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

石炭事業においてはオーストラリアの自社鉱山で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売していますが、政治経済情勢あるいはその他の要因により石炭価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

調達リスク

当社グループは、原油輸入の大宗を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

 

カントリーリスク

(基礎化学品・高機能材セグメント)

当社グループは、主にアジア市場を中心とした基礎化学品の販売及び、潤滑油分野においてはグローバルで事業展開をしていますが、経済の低迷や政治リスク等の要因により市場成長が鈍化する可能性があります。

このような需要低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(資源セグメント)

当社グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。現在、当社グループが保有する確認済みの資源や探鉱活動については、ベトナム等のアジア地域とノルウェーが中心となっており、これらの地域における政治経済情勢等により当社グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない可能性があります。

また、当社グループは、オーストラリアの自社鉱山で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売しています。石炭鉱山事業につきましても、政治経済情勢、税制、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けることがあります。

 

為替リスク

当社グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。

また、原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けるほか、燃料油セグメントにおける在庫評価も影響を受けます。なお、1米ドル当たり1円変動すると、当社の営業利益は年間40億円増減する可能性があります。

 

(3)気候変動に関するリスク

 

上記の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」に記載のとおりです。

 

(4)環境規制に関するリスク

 

当社グループは、事業展開する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、当社グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行うこと、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。

 

(5)事業投資に関するリスク

 

当社グループは、事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。今後も石油、石油化学、資源事業など、既存事業の競争力維持には一定の投資を継続する予定です。一方で、カーボンニュートラル実現に向けて、製油所・工場の機能を低炭素で循環型の事業にシフトするための投資や、潤滑油、機能化学品、電子材料、固体電解質などの高付加価値製品の開発投資、更には再生可能エネルギーへの投資など、化石燃料以外の新しい事業拡大へ向けた戦略投資を行っていく計画です。このような成長分野への投資においては、必要なキャッシュ・フローを生み出すまでに一定の時間を要するため、期待された収益機会を失う可能性があります。更に経済情勢や政治動向、市場拡大の遅れ、新素材を含む他社との開発競争等によりこれらの投資が計画どおりの収益をあげられない場合は固定資産の減損損失を計上する可能性もあります。なお、投資の意思決定プロセスにおいて、投資金額をはじめとする様々なリスクの多寡に応じた投資審議を設計することで、投資リスク低減と意思決定の迅速化の両立に努めています。

また、当社グループは、アジア市場における石油及び石油化学事業の海外展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下当社を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスを操業しています。プロジェクトの総事業費は約90億米ドルであり、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。プロジェクトファイナンスによる調達額について銀行団に対し行っている債務保証及びスポンサーによる出資・貸付のうち、NSRPへの当社グループ出資比率相当の35.1%については、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(6)その他経営全般に係るリスク

 

人権に関するリスク

当社グループは、人権は全ての判断や行動において根底をなすものと考え、世界人権宣言やILO宣言で国際的に認められた人権を尊重することを基本方針として定めています。当社グループはグローバルに事業拠点を持ち、取引するサプライヤーも多国にわたることから、「ビジネスと人権」に関する意識を国際基準で高く持ち、人権デューデリジェンスを通じたリスクの軽減を進めるとともに、ビジネスパートナーにも方針の理解と遵守を要請しています。

しかしながら、事業活動の領域で人権の侵害等が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

コンプライアンスに関するリスク

当社グループでは、コンプライアンス規程に基づき、国内外の法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンス推進体制及び内部統制の強化に努めています。しかしながら当社グループにおいて法令その他諸規則等を遵守できなかった場合、又は内部統制システムが有効に機能せずコンプライアンス上の問題が完全に回避できない事態が生じた場合には、結果ステークホルダーの信頼を失い、当社グループのレピュテーションを損ね、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは確実性の高い品質マネジメントシステムに則り製品を製造していますが、予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合に備え保険を手当てしています。しかしながら、それに伴い法的責任が発生する可能性や、直接的な責任を負わずともバリューチェーンの一部を担う者としてブランドイメージやレピュテーションの低下を回避できない場合もあり、ひいては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性もあります。

 

知的財産に関するリスク

当社グループは、事業の遂行のために知的財産権を活用しており、特に石油精製技術や潤滑油、機能化学品、電子材料、アグリバイオ、リチウム電池向け固体電解質等の付加価値の高い製品・サービスにおいて特許や企業秘密の位置づけは重要です。また、当社グループは、ブランドを商標登録しています。しかしながら、当社グループの知的財産権は、これらに関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、当社グループが保有する特許、企業秘密、商標が当社の知的財産を保護するために十分であるとは限りません。

また、当社グループの企業秘密が、従業員や取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。更に、当社グループの製品やサービスが第三者から知的財産権を侵害しているという主張がなされ、あるいは当社グループが第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性があります。当社グループが、事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、当社グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

自然災害・事故等によるリスク

当社グループの事業は、自然災害や事故、これらに起因する操業停止等のリスクを有しています。自然災害には、地震、津波、台風、豪雨豪雪に加え、日本という地震の多い地域に立地する製油所・工場における火災、爆発、油の大規模流出のリスクも含みます。また保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突、非友好国による拿捕、撃沈等の危険にさらされています。更に当社グループは、労働争議やサイバー攻撃等によるシステムダウンや情報漏洩、COVID-19のような感染症の大規模蔓延による事業中断のリスクにも晒されています。

これらのリスクを会社として逸早く認識し、全社を挙げて被害の拡大防止を図るため、「危機発生時の対応規程」を策定し、予兆を含めたトラブルの早期共有のための連絡系統、対応の優先順位の原則、危機レベルの設定とそれに応じた対策本部の体制等についてまとめています。事業継続計画(BCP : Business Continuity Plan)については、2006年度に首都直下地震版、2009年度には新型インフルエンザ版、2010年度には南海トラフ巨大地震版(2021年度に「南海トラフ含む地域的地震津波版」に拡充)を制定しました。更に2015年度に内閣府より「指定公共機関」に指定されたことを受け、「防災業務計画」を作成しました。各BCPに基づく総合防災訓練を毎年実施し、各拠点との連携やリモートを含む本部運用等についての課題を抽出し、実効力の強化に努めるとともにBCPの改定に反映しています。製油所・事業所・工場等においては、各々の危機対応規程類に基づき、拠点ごとに又は相互連携の上、防災訓練を定期的に実施しています。

当社グループは、事故や災害で想定される多額の損失に対し、自家再保険子会社を活用し適正な損害保険や損害保険サービスをグローバルに調達しています。

 

個人情報管理に関するリスク

当社グループは、石油製品販売、電力小売り、クレジットカード事業等で顧客の個人情報を多数取り扱っています。当社グループは、これらの情報の管理不徹底や外部からの不正な搾取、それによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。また、昨今の日本国や欧州を始めとする個人情報保護関連法令の適用拡大・厳格化に対する、必要な対応の不備・不足により、多額の制裁金、賠償金の発生、当社グループの信用低下、クレームや訴訟等にも繋がり、当社グループの事業、経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に関するリスク

2021年度は、COVID-19の変異株の影響により、当社グループの経営及び財政に影響を及ぼしましたが、2022年度のジェット燃料含む燃料油全体の販売は、前年度対比で回復傾向となりました。新型コロナウイルス感染症は、「5類感染症」に移行されましたが、今後の流行状況によっては、当社グループの事業、経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(7)事業等のリスク管理

 

当社グループは、事業活動に関する様々なリスクを未然に認知・評価し、リスクに応じた適切な対応を講じることで、経営の安定を図っています。取締役会が監督する「リスク経営委員会」は、グループ経営に関わるリスクマネジメント方針の決定とマネジメント状況のモニタリングなどを実施しています。他の委員会などに対し重要な業務リスク及び経営リスクに関する報告を随時求めるほか、本委員会の実施状況について、原則年1回取締役会に報告しています。

また、「リスク経営委員会」の下、業務リスクに対応する「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、適時、迅速に必要な対策を取ることを通して、業務リスクに関する全社リスクマネジメントを推進しています。当社グループ全体の重点ならびに重要リスクの更新、さまざまなリスク顕在化の兆候や新たなリスクの把握と評価、及びその他業務リスク全般に関する事項を審議、その対策の支援と進捗管理を実施し、リスク経営委員会へ上程する役割と責任を有しています。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)の影響からの回復、行動制限の解除などにより正常化に向けた動きが活発となる一方で、ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレ進行及び急激な円安影響もあり、変動の大きな1年となりました。

国内石油製品販売量は、新型コロナによる行動制限が緩和されたことにより需要が回復し、ガソリン等主燃料及びジェット燃料を中心に増加しました。

原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻以来の需給タイト化及び各国の行動規制緩和による需要回復から一時上昇基調で推移しましたが、6月以降は海外の金融引き締め策による景気減退懸念や中国の新型コロナ再拡大を受けた都市封鎖の措置等により下落基調で推移しました。この結果、ドバイ原油価格は前期比14.4ドル/バレル上昇の92.5ドル/バレルとなりました。

円の対米ドルレートは、上半期は日米の金融政策の差を背景として円安ドル高が進行し、10月には150円を超える水準まで円安が進みましたが、年末にかけて米国連邦準備理事会による利上げペースの鈍化や日銀決定会合での長短金利操作の一部運用見直しの決定等により円高が進行しました。その結果、平均レートは前期比23.1円/ドル円安の135.5円/ドルとなりました。

 

イ.業績

当社グループの当期の売上高は、原油価格の上昇等により、9兆4,563億円(前期比+41.4%)となりました。

売上原価は、8兆6,623億円(前期比+49.3%)となり、販売費及び一般管理費は、5,116億円(前期比+13.8%)となりました。

営業損益は、在庫評価影響が前年度の2,332億円の利益から大幅に減少し、557億円の利益となったことに加えて、燃料油セグメントにおける減益等により、2,824億円(前期比△35.0%)となりました。

営業外損益は、為替差益及び持分法投資損益の改善等により、391億円(前期比+57.5%)の利益となりました。その結果、経常損益は3,215億円(前期比△30.0%)となりました。

特別損益は、減損損失及び西部石油㈱の連結子会社化に伴い段階取得に係る差損が発生した一方、当社及び国内子会社の固定資産売却益等により、267億円(前期比+980億円)の利益となりました。

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、975億円(前期比△12.4%)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は29億円(前期比+6.4%)となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,536億円(前期比△9.2%)となりました。

 

ウ.事業の経過及び成果

セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。

当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2022年1月~12月期、国内子会社は2022年4月~2023年3月期について記載しています。

 

 

セグメント別売上高

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

(2022年3月期)

(2023年3月期)

増減額

増減率

燃料油

52,194

74,039

+21,844

+41.9%

基礎化学品

5,635

6,669

+1,034

+18.3%

高機能材

4,214

5,110

+896

+21.3%

電力・再生可能エネルギー

1,383

1,971

+588

+42.5%

資源

3,388

6,721

+3,333

+98.4%

その他・調整額

53

54

+1

+1.1%

合計

66,868

94,563

+27,695

+41.4%

 

セグメント別利益又は損失(△)

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

(2022年3月期)

(2023年3月期)

増減額

増減率

燃料油

(在庫評価影響除き)

3,697

(1,365)

730

(173)

△2,967

(△1,192)

△80.2%

(△87.3%)

基礎化学品

82

101

+19

+23.2%

高機能材

171

170

△2

△1.0%

電力・再生可能エネルギー

△99

5

+104

資源

810

2,309

+1,499

+185.0%

その他

8

12

+4

+47.3%

調整額

△174

△242

△67

合計

(在庫評価影響除き)

4,495

(2,162)

3,084

(2,527)

△1,411

(364)

△31.4%

(+16.9%)

(注)セグメント利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。

 

(ア)燃料油セグメント

日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向けた海外事業の強化と製油所・事業所のCNXセンター化に向けた取り組みを進めてきました。

国内製造供給においては、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みながら、燃料油の安定供給に努めました。

国内販売においては、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、2021年11月にリリースしたアプリ「Drive On」を積極展開しています。「Drive On」は、スマートよろずやのベースとなるアイテムであり、ここを起点にカーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus」、個人向けカーリース「オートフラット」、「らくらく安心車検」などに繋げていきます。また、2022年11月より決済機能「モバイルDrive Pay」を搭載し、お客様にとって「Drive On」一つで、メンテナンス予約、給油決済、クーポン利用等が可能となりました。

海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。

 

以上の結果、原油価格の上昇等もあり、燃料油セグメントの売上高は7兆4,039億円(前期比+41.9%)となりました。セグメント損益は、製品輸出マージンが拡大する一方、在庫評価影響の大幅な減少及びナフサ、LPガスなどの主要製品以外のマージン縮小や自家燃コスト増加及び原油価格の下落に伴うタイムラグ等の減少要因により、730億円(前期比△80.2%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は557億円です。

 

(イ)基礎化学品セグメント

既存事業における競争力強化の一環として、ENEOS(株)より譲受した愛知事業所のパラキシレン製造装置は、2022年度に稼働を開始しました。余剰ガソリン基材の活用によるケミカルシフトを更に推進していきます。

また2050年CN実現に向けて、「バイオ原料化によるバイオ化学品供給」と「資源循環システム確立」の取り組みを推進しています。

「バイオ原料化によるバイオ化学品の供給」については、バイオ化学品の認証システムである「ISCC Plus」を、徳山事業所(2022年3月)・千葉事業所(2023年3月)にて取得しました。外部調達したバイオナフサをベースに、マスバランス方式でのバイオ化学品の供給を開始しています。

「資源循環システム確立」に向けては、使用済みプラスチックの油化(ケミカルリサイクル)技術の開発に取り組んでおり、基本設計を完了しました。2025年度の商業運転を目指していきます。

 

以上の結果、ナフサ価格が上昇したことなどにより、基礎化学品セグメントの売上高は6,669億円(前期比+18.3%)となりました。セグメント損益は、パラキシレン及びミックスキシレンの需給がタイト化し製品マージンが回復したこと等により、101億円(前期比+23.2%)となりました。

 

(ウ)高機能材セグメント

(潤滑油事業)

国内では環境対応意識の高まりの中、業界初となる無リン無灰を実現したディーゼルエンジンオイルを上市しました。また、海外においては出光ブランド製品の拡販をすすめ、収益への貢献を果たしました。

 

(機能化学品事業)

ウクライナ情勢、コロナ禍による需要減、物流混乱があったものの、徹底した採算改善活動によって収益力強化に努めました。エンプラ・コンパウンド事業では、高付加価値分野での拡販に注力、マレーシアでSPS2号機の建設終了し試運転を開始、2023年度から商業運転を開始します。市況影響の強い汎用製品では、中国での大幅な能力増強により需給は悪化、中期的に厳しい事業環境が継続すると予想され、競争力が劣るアクリル酸事業から撤退、また水添石油樹脂事業では、日本の設備を停止し、競争力のある台湾の合弁事業へ生産集約を進めました。更に、想定よりも早く汎用化が進み事業性が見込めないLMPP事業からも撤退を決め、2023年度内に設備を停止するなど、大胆な事業の集中と選択を行い筋肉質な体質への変革を進めました。

 

(電子材料事業)

ディスプレイの高性能化及び多様な省資源・資源循環に繋がる有機EL材料、酸化物半導体の事業を展開しました。有機ELでは、蛍光型青色材料に関する新技術を開発しその顧客提供を本格化しました。また日本・韓国・中国の三つの製造拠点を通じた製品の安定供給を継続しています。

 

(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))

国内において、アスファルト需要は堅調に推移しており、社会インフラ資材の安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく製品開発や、低炭素・カーボンニュートラルに貢献する技術開発を行いました。海外事業においては、東南アジアの高速道路管理者と共同で行った試験施工結果を踏まえ、当社製品が舗装工事の発注仕様に追加されました。

 

(農薬・機能性飼料事業)

2022年7月のアグリバイオ事業部吸収分割による事業承継を完了し、㈱エス・ディー・エス バイオテックにおいて米国で畜産資材1剤の販売を開始、国内農薬登録の適用拡大を殺菌剤12件、生物農薬殺菌剤を1件、緑地管理用除草剤を1件実施し、製品の更なる普及拡大を進めて参りました。

 

以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、5,110億円(前期比+21.3%)となり、セグメント損益は、機能舗装材事業においてアスファルトの原料となる重油留分価格が低下したことよる増益の一方、機能化学品の一部製品において前年度の市況高の反動を受けた減益及び電子材料事業の販売数量減少に伴う減益等により、170億円(前期比△1.0%)となりました。

 

(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント

既存事業における安定的な収益基盤の確立に取り組むとともに、発電事業者として再生可能エネルギー電源の保有を促進します。また、蓄電池の活用等を通じたソリューション事業における実証と展開を進めています。国内においては、開発を進めていた徳山バイオマス発電所の営業運転が開始されました。また、「idemitsu CN支援サービス」の提供を開始し、自治体や企業の使用する電力のCN化やEV導入をサポートする取り組みを展開しています。海外においては、米国で、開発を進めていた大型太陽光発電所が無事完工を迎えました。また、経済成長に伴い需要が伸長する東南アジアにおいては、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置に積極的に取り組んでいます。

 

以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,971億円(前期比+42.5%)となりました。セグメント損益は、電力事業における自社電源での供給・販売を基本とした取り組みによる収益改善などにより5億円(前期比+104億円)となりました。

 

(オ)資源セグメント

(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)

石油・天然ガス開発事業について、ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、安定生産を継続しました。欧州では持分法適用会社である㈱INPEXノルウェー及び現地法人を通じて、ノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱を行いました。

地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域における新規発電所の建設を決定し、その他国内での新規案件の開発を進めました。

石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は、ノルウェー子会社の持分法適用会社への変更などの影響により434億円(前期比△42.4%)となりました。セグメント損益は、ベトナムガス田の生産数量増により増益となる一方、ノルウェー子会社の持分法適用会社化による減益等により、328億円(前期比△15.3%)となりました。

 

(石炭事業・その他事業)

石炭事業では、構造改革の一環としてエンシャム鉱山の売却を決定し、競争力の高いボガブライ鉱山での安定供給継続に特化することとしました。

その他事業については、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラント建設をベトナムで開始するとともに、ボイラー排ガス中のCO₂を固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)を用いたCO₂再資源化(カーボンリサイクル)の事業化検討を進めました。また、石炭鉱山操業で培ってきた事業基盤を活かした、レアメタル鉱山事業への参入に加え、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討、グリーン水素・アンモニアプロジェクトにおける共同検討・調査の開始等、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。

石炭事業・その他事業の売上高は、6,287億円(前期比+138.7%)となりました。セグメント損益は、石炭価格の上昇等により1,981億円(前期比+368.4%)となりました。

 

以上の結果、資源セグメントの売上高は6,721億円(前期比+98.4%)、セグメント損益は2,309億円(前期比+185.0%)となりました。

 

(カ)その他セグメント

その他セグメントの売上高は、54億円(前期比+1.1%)となり、セグメント損益は12億円(前期比+47.3%)となりました。

 

(キ)研究開発及び新ビジネス開発

(全固体電池向け固体電解質)

独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体電池のキーマテリアルである固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、2021年11月に、商業生産に向けた小型実証設備の第1プラントを千葉事業所内に建設、稼働を開始しました。また、第2プラントも2023年度の稼働開始に向け建設中です。

 

 

②財政状態の状況

要約連結貸借対照表

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年3月期)

当連結会計年度

(2023年3月期)

増減

流動資産

23,681

27,321

+3,640

固定資産

22,331

21,333

△998

資産合計

46,012

48,654

+2,642

流動負債

20,613

21,640

+1,027

固定負債

11,034

10,721

△313

負債合計

31,647

32,361

+714

純資産合計

14,365

16,293

+1,928

負債純資産合計

46,012

48,654

+2,642

 

ア.資産の部

当期末における資産合計は、資産売却等による固定資産の減少の一方で、西部石油㈱の連結子会社化及び在庫単価の上昇による棚卸資産の増加等により、4兆8,654億円(前期末比+2,642億円)となりました。

 

イ.負債の部

当期末における負債合計は、原油価格の下落により買掛債務が減少する一方、有利子負債の増加等により、3兆2,361億円(前期末比+714億円)となりました。

 

ウ.純資産の部

当期末の純資産合計は、配当金の支払いがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益等により、1兆6,293億円(前期末比+1,928億円)となりました。

 

以上の結果、自己資本比率は前期末の30.7%から当期末は33.2%(前期末比+2.5ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.9(前期末:0.9)となりました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

要約連結キャッシュ・フロー計算書

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年3月期)

当連結会計年度

(2023年3月期)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,461

△328

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,116

701

財務活動によるキャッシュ・フロー

△300

△904

現金及び現金同等物に係る換算差額

31

172

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

76

△360

現金及び現金同等物の期首残高

1,310

1,390

連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の

増減額(△は減少)

5

現金及び現金同等物の期末残高

1,390

1,031

 

当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,031億円となり、前期末に比べ、360億円減少しました。その主な要因は次のとおりです。

 

ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー

棚卸資産の増加に伴う必要運転資金の増加及び激変緩和措置に伴う支払消費税の増加等により、328億円の支出となりました。

 

イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー

製油所設備の維持更新投資等による有形固定資産の取得の一方、固定資産・投資有価証券の売却及び差入保証金の戻り等により、701億円の収入となりました。

 

ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー

配当金の支払いや子会社株式の取得等により、904億円の支出となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

燃料油

4,400,182

171.4

基礎化学品

586,487

108.6

高機能材

310,472

133.4

電力・再生可能エネルギー

2,160

26.3

資源

455,697

170.2

その他

合計

5,755,000

159.1

(注)上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。

 

イ.受注実績

当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

燃料油

7,403,861

141.9

基礎化学品

666,889

118.3

高機能材

511,006

121.3

電力・再生可能エネルギー

197,070

142.5

資源

672,077

198.4

その他

5,376

101.1

合計

9,456,281

141.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。

3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績の分析

経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。

 

②資本の財源及び資金の流動性についての分析

ア.資金需要

当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。

設備投資資金については、エネルギー安定供給のための維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、一歩先のエネルギーや多様な省資源・資源循環ソリューション及びスマートよろずや等の成長分野への進出・事業拡大のための投資、石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。

 

イ.財務政策

当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債・コマーシャルペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様なリソースから効果的に組み合わせて調達しています。また、カーボンニュートラル・循環型社会への実現に向けた取り組みを推進するために、トランジションボンドを発行するなど、資金調達手段の多様化を図っています。

なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。

また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。

 

(特定融資枠契約)

当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社4社と共同で、取引金融機関2行とマルチカレンシーによる特定融資枠契約360百万米ドルを締結しており、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現を達成するため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。

前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)の主な減少要因は、以下のとおりです。

(ア)原油価格急落を受け、前年度に比較し在庫評価影響の大幅な減少

(イ)燃料油セグメントにおける製品マージンの縮小

 

当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。

 

2019年

3月期

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

自己資本利益率(ROE)(%)

9.5

3.0

21.8

16.8

投下資本利益率(ROIC)(%)※

2.8

6.8

5.9

ネットD/Eレシオ(倍)

1.0

1.0

1.0

0.9

0.9

自己資本比率(%)

29.1

29.6

29.1

30.7

33.2

(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。

自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)

投下資本利益率(ROIC):(在庫影響除き税後営業利益+持分法投資損益)/(株主資本+有利子負債)

※2022年度より算定方法を変更しています。その結果、2021年3月期及び2022年3月期の数値も変更しています。

ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)

自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産

2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。

3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。

4.2020年3月期以前の投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。

 

当社が2022年11月に公表した「中期経営計画(2023~2025年度)」における経営目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)中期経営計画(2023~2025年度)」に記載しています。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、以下のとおり、特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約を締結しています。

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の種類

契約内容

効力発生日

出光興産

株式会社

シェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲー

スイス

商標等

使用契約

特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約

2016年12月19日

 

6【研究開発活動】

当社グループは、燃料油、高機能材、資源、更には新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。現在、図に示した研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。また、当社グループをとりまく事業環境が大きく変化していく中、マテリアル事業の強化、事業ポートフォリオ転換の加速を目指して、2022年7月に先進マテリアルカンパニーを設立しました。主に高機能材料事業を中心とした事業部と関係会社の研究開発を強化し、技術戦略部では社外の研究開発機関との連携強化に取組んでいます。

なお、研究開発費については、各セグメントに配賦できない全社共通研究費等102億円が含まれており、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は前年同期比24億円減少の236億円です。

 

 (当社グループの研究開発体制)

 

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当連結会計年度における各セグメントの研究開発内容、研究開発経費及び研究開発成果は次のとおりです。

 

(1)燃料油セグメント

燃料油セグメントでは、環境に配慮した石油製品の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は4億円です。

使用済みプラスチックからの軽質オレフィン化の技術開発、バイオエタノールからのジェット燃料製造の技術開発をはじめ、製油所・事業所の省エネルギー化などの環境調和型社会への貢献のための技術開発を推進しています。

 

(2)高機能材セグメント

高機能材セグメントでは、環境に配慮した潤滑油製品の開発、機能舗装材(アスファルト)の開発、機能材料及び樹脂加工製品の競争力強化に向けた保有技術の改良や新規材料の開発、電子材料事業、アグリバイオ事業における研究開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は127億円です。

 

①潤滑油事業では、カーボンニュートラルの実現に向け、省エネルギーはもちろん、環境・人・安全に配慮した研究開発をグローバルで展開しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・電動車両用トランスアクスルフルード(商品名:IDEMITSU E AXLE FLUID シリーズ)やバッテリー冷却剤の開発、洋上風車潤滑剤開発のNEDOプロジェクトへの参画などエネルギー変革に対応した研究開発に取り組みました。

・サステナブル潤滑剤を活用した製品開発を進めると共に、石油由来の潤滑剤使用量の削減のために水溶性潤滑剤の適用範囲拡大に取組み、これまで実現困難とされていたステンレス圧延工場の研削工程において生産性向上と火災の心配がない安心・安全な操業の両立を実現しました(商品名:ダフニーポリッシングオイル)。

・エンジンオイル開発ではディーゼルパティキュレートフィルターの目詰まりの要因となる灰を出さないオイルを開発し、燃料の消費量やメンテナンスの作業と費用の大幅削減を実現しました(商品名:idemitsu AshFree)。ナノテクノロジーを応用した環境配慮型商品の開発も進めました。

・3つの海外研究開発拠点と連携し、地域特性に応じた様々な環境対応型高機能・省エネルギー型商品の開発を進めており、カーエアコン用冷凍機油、産業ロボット用グリース等の商品ラインアップを拡充しました。

・基礎研究にも力を入れており、トライボロジー学会の論文賞、技術賞(3年連続)を受賞しました。

 

②機能舗装材(アスファルト)事業では、省資源・省エネルギーや環境に配慮した舗装材料、例えば耐水性を強化し長寿命化を可能にした舗装材などを独自開発しています。また、アスファルトの特性を活かした屋根用防水材や、建物の地盤沈下による損傷を防ぐための基礎杭に塗布するアスファルトなど、工業用製品も開発し日本国内で製造販売しています。特に舗装材の製品開発においては、当社の長年の舗装材開発の実績から、行政機関や施設管理者と、十分連携しながら進めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・高速道路や空港舗装向け機能舗装材においては、スコープ3排出量削減の可能性を視野に入れ、工場から排出されたCO2から合成した炭酸カルシウムを使用した「CO2固定化舗装材」の実用化検討を行いました。また水に起因する道路の損傷を大幅に抑制する舗装の耐水性強化技術について、試験施工を通した実用化検討を行いました。

・建築防水材料においては、環境対応型高機能商品の開発を進め、作業時の揮発成分を約30%減らした作業環境改善効果の高い材料を実用化しました。

 

③機能材料分野では、エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂やシンジオタクチックポリスチレン樹脂の高付加価値商品の開発及び新機能を有した粘接着基材の開発に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロンTM)では、透明性や流動性に優れた光学グレードの開発、耐久性や耐薬品性、難燃性に優れる共重合グレードの開発を行っています。光学グレードは液晶ディスプレイ部品や自動車を含む各種照明部品市場で好評を得ており、特に自動車照明用材料では高透明性及び高導光性が要求されるDRL(Daytime Running Light)部品向けの販売がここ数年高い伸び率で拡大を続けています。

・シンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレックTM)では、成形サイクルや成形時の流動性を改良したグレードを展開し、自動車電装部品等への販売を拡大しました。また、電波透過性、電気特性が評価され車間距離レーダー部品、電気自動車部品への採用が始まっています。一方、実績分野である家電・日用品分野の増販、高速通信分野向けの材料スペックイン推進、押出・フィルム・繊維分野、アロイ分野のマーケティング強化により、自動車分野以外への新規用途開拓も推進していきます。

・プラスチック複合材料(商品名:カルプTM)では、ポリオレフィン系樹脂コンパウンドにて、植物由来の原料化の検討や主力商品である難燃グレードの環境安全性を高める非ハロゲン化の開発を推進、また、ポリフェニレンサルファイド系樹脂コンパウンドにて、水中・油中において良摺動性を示すグレードの開発や電装部品の新たな用途展開に向けた絶縁熱伝導グレードの開発を推進しました。

 

④シート・フィルム分野では、包装材料のグレード開発及び産業用途の加飾分野の開発を行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・昨今の環境問題対応への社会的要求を受け止め、プラスチック包装材の減容化につながるフィルム等の環境対応商品の開発を継続し、成形容器の作製時に発生するシートの端材のリサイクル技術を検討しました。

・顧客ニーズに基づくグレード開発を推進し、成型容器向けのバリアシート(商品名:マルチレイシートTM)の品揃え、無機物を多く含有しプラスチックの使用量を減らしたフィルム(商品名:ユニクレストTM)開発や、誤飲防止につながるチャイルドレジスタンス機能を持つジッパーテープ、電子レンジ加熱で発生する蒸気を逃がす機能を持つジッパー(商品名:プラロックTM)の改良開発等により、商品ラインアップの拡充を行いました。

 

⑤電子材料事業では、有機EL材料、酸化物半導体材料に代表される電子材料分野での新素材の研究開発を行っています。特に有機EL材料においては、顧客との連携強化、大学との共同研究などを通じて商材の更なる高性能化から次世代技術の開発まで、幅広い開発活動を推進しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・蛍光型青色材料を用いた有機EL素子において、新発光方式を開発し、世界最高レベルの発光効率と長寿命化に成功しました。本成果はディスプレイ関連の世界最大の学会であるSociety for Information Display主催のシンポジウム「Display Week 2022」の最優秀論文に選定されました。

・㈱ジャパンディスプレイと多様なディスプレイに適用可能な多結晶酸化物半導体「Poly-OS」を開発することに成功しました。また、複数の顧客にサンプル提供を開始し、取組が本格化しました。

 

⑥農薬・機能性飼料事業では、微生物培養技術や応用技術、天然物活用技術によって、農業や畜産分野の「食の安全・安心」と「増大する食糧需要」に貢献する商品のラインアップを拡充しています。開発した剤は、国内はもとより海外への展開も積極的に行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・米国向け畜産資材の開発を行い、1剤の販売開始に貢献しました。日本国内では、農薬登録の適用拡大に向けた検討により、殺菌剤12件、生物農薬殺菌剤1件、緑地管理用除草剤1件の登録取得に貢献しました。

 

(3)資源セグメント

石炭事業では、顧客ニーズに応える技術サービスと石炭のクリーン利用技術の開発に取り組んでおり、近年では、バイオマス混焼によるCO2排出量の削減や、排ガス中のCO2を炭酸塩として固定化させる技術開発を積極的に推進しています。当セグメントに係る研究開発費は4億円です。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりで、特にパリ協定発効を踏まえ、環境と調和した石炭利用技術の開発を強化しました。

・石炭火力のCO2排出削減に繋がる木質バイオマスの製造・販売の事業化に向け、ベトナムでの商業プラントの運転を2023年7月に開始すべく、自社コールセンターでの受入・貯蔵、共に取組む需要家の石炭ボイラでの混焼試験を実施し、より実用的な評価技術を確立してきました。試験結果を踏まえ、木質バイオマスの品質向上や需要家へのコンサルティングを行っています。

・CO2を資源として活用するとともにCO2の排出削減を行うため、廃コンクリート中のカルシウムと発電所や工場から排出されるCO2を作用させ炭酸塩(炭酸カルシウム)を製造するプロセスの研究開発を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て進めています。

・石炭鉱山での植栽を活用した新規事業創出を目的に、(独)エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同でバイオマス燃料や炭素材料の研究開発を実施しました。

 

(4)全社共通(コーポレート研究)

中期経営計画(2023~2025年度)に掲げた事業ポートフォリオ転換に向け、社会や技術のトレンドを踏まえた新規事業創出のための研究開発を実施しています。

 

①次世代技術研究所では、循環型社会の実現に向けて、自社の設備への適用を見越したバイオマスやCO2を出発原料とするクリーンな素材・燃料の開発を実施しています。また高機能材事業の成長に向けて、保有している有機・無機合成、生物変換技術、光・電気化学の要素技術を活かしたモビリティ向け軽量/強靭化素材や環境配慮型農畜産資材、高速通信関連材料等の開発に取り組んでいます。加えて、事業部研究所と一体となって研究開発を加速させるべく、高度な分析・解析技術、計算科学を用いた研究開発のサポートを実施しています。これらを進めるにあたっては、2020年4月に国立大学法人東京工業大学内に設立した「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」に代表されるアカデミアとの共同研究や、国家プロジェクトへの参画等によるオープンイノベーションを積極的に活用し、自社開発にこだわることなく研究開発の早期成果創出に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・NEDO「グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクト」の課題の一つとして採択された、「常温、常圧下アンモニア製造技術の開発」において、新規アンモニア合成技術にて常温・常圧でもアンモニアが合成されるというコンセプトの原理検証に成功しました。

②リチウム電池材料部では、次世代電池として早期の商業化が望まれる全固体電池のキーマテリアルである固体電解質を中心に、次世代電池用材料及びその量産化の研究開発を行っています。材料開発においては自動車メーカー・電池メーカー等のお客様と連携し、固体電解質の更なる性能向上・コスト競争力向上に努めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・材料開発の加速を目的として、当社内の電池評価設備を拡充し稼働を開始しました。量産に向けた技術開発として、小型実証設備の第1プラント(21年11月稼働開始)に続き、23年内の稼働を目指し第2プラントの建設を進めています。

・NEDO「グリーンイノベーション基金事業 次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトのテーマの一つとして、「硫化物系固体電解質の量産技術開発」が採択されました。

・将来的な全固体電池バリューチェーンの付加価値向上に向けた取組みとして、正極材料と固体電解質を融合した新しい高性能材料について、Umicore社との共同開発を開始しました。更に、硫黄系正極材の研究開発及び、全固体電池のリサイクル技術の探索やスキーム検討も開始しました。