当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
なお、重要事象等は存在しておりません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
当中間連結会計期間(2025年1月1日~2025年6月30日)における当社グループをとり巻く環境は、国内では、地政学リスクや米国の関税政策を背景に不確実性が高まる状況となりましたが、雇用や所得環境の改善により、個人消費は緩やかに持ち直し、また、製造業全般における景況感は全体としては底堅く推移しています。
海外においては、米国は、関税引き上げによるインフレ見込みから経営環境の悪化と不確実性が増大しています。 欧州は、米国による関税引き上げ前の駆け込み需要による輸出増が景況感を押し上げ、また、中国は米中合意で対中追加関税率が低下したことを受けて、足元の景気は総じて持ち直しています。
こうした状況の中、当社グループは、既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、変革の「総仕上げ」を図ることを目指す中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」に取り組んでおり、当中間連結会計期間の連結売上収益は5,792億1百万円(前年同期比10.3%増)、連結事業利益は621億19百万円(前年同期比13.8%増)、連結営業利益は548億58百万円(前年同期比2.5%減)、また、親会社の所有者に帰属する中間利益は355億35百万円(前年同期比23.7%減)となりました。
タイヤセグメントの売上収益は5,235億56百万円(前年同期比11.5%増)で、当社グループの連結売上収益の90.4%を占めました。
新車用タイヤの売上収益は、国内では、当社納入車種の販売が好調だったほか、中国においては、中国系自動車メーカーの新エネルギー車向け新規納入数拡大や当社納入車種の販売好調などにより前年同期を上回りました。
市販用タイヤの売上収益は、国内では、既存顧客での増販及び新規顧客の開拓に努めたほか、欧州においてハイインチ品へ注力したことや、アジアにおける新規販路開拓などの積極的な販売施策などにより前年同期を上回りました。
OHT(オフハイウェイタイヤの略)の売上収益は、本年2月に買収したGoodyear社のOTR事業の業績が加わったことで、前年同期を上回りました。農機用タイヤは、特に新車用市場向けを中心に厳しい環境の中にありますが、春頃より回復の兆しがみられたほか、補修用市場向けは「Mitas(ミタス)」ブランドのマーケティング活動の強化への取り組みなど、各地域において継続して販売拡大に努めたことで、欧州・北米の主要市場で需要を上回る販売伸長を果たしました。
MB(マルチプル・ビジネス)セグメントの売上収益は513億16百万円(前年同期比0.5%減)で、当社グループの連結売上収益の8.9%を占めました。
ホース配管事業の売上収益は、国内建設機械メーカーおよび北米自動車メーカーの需要減により前年同期を下回りました。
工業資材事業の売上収益は、航空部品の販売が減少した一方で、コンベヤベルトは国内トップシェアの強みを活かして大手顧客から安定的な需要を得られたほか、海洋商品の販売が好調だったことから、前年同期を上回りました。
全社の事業利益は、Goodyear社のOTR事業の連結に伴う一過性費用の計上はありましたが、タイヤ消費財での販売数量増や、「ADVAN(アドバン)」、「GEOLANDAR(ジオランダー)」、ウィンタータイヤをはじめとする高付加価値商品(AGW)やハイインチ品の販売増に加え、MB事業においても海洋商品の増収、ホース配管における構造改革などの内部努力が寄与するなど、既存事業が好調であったことから増益となりました。
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、960億14百万円となり、前連結会計年度末に比べて402億円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間末における営業活動による資金の増加は252億73百万円(前年同期比35億10百万円の収入増加)となりました。
これは、主として税引前利益、減価償却費、及び法人税等の支払いによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間末における投資活動による資金の減少は1,903億46百万円(前年同期比2,097億72百万円の支出増加)となりました。
これは、主として子会社の取得を含む事業譲受のための支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間末における財務活動による資金の増加は1,397億12百万円(前年同期比1,735億6百万円の収入増加)となりました。
これは、主として有利子負債の増加によるものです。
当中間連結会計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。
当社グループの研究開発は、会社の基盤技術に関する研究開発活動を研究先行開発本部が、直接商品に係る研究開発活動をタイヤ、MB及びその他の技術部門が担当となり、世界的な技術の先端に挑戦し、世界初の商品を市場に提供することで、お客様に満足いただくべく努力を重ねています。
当中間連結会計期間における研究開発費の総額は、106億91百万円であります。
当社研究先行開発本部においては、環境貢献企業における研究部門として、精緻でかつ高度な分析・解析技術をベースに物質構造や反応機構等の解明による新素材開発やシミュレーション技術の開発を行い、環境にやさしいタイヤ材料の開発や電子材料用素材・省エネルギー関連への適用技術の開発などを中心に技術の先端に挑戦しています。また、機械学習(AI)を活用した開発の高度化や効率化にも積極的に取り組んでいます。
研究先行開発本部の当中間連結会計期間における研究開発費の金額は、5億7百万円であります。
当中間連結会計期間におけるセグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。
1)タイヤ
既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し「YX2026」の次世代の成長に向けた「変革」を図ることを目標とし以下のような活動をしました。
当中間連結会計期間における研究開発費の金額は、92億24百万円であります。
①AIでタイヤ打音から空気圧を判定する技術の実証実験を開始
トラック・バス用タイヤの打音からAI(人工知能)を活用して空気圧状態を判定する技術を開発し、実証実験を開始しました。
トラック・バス用タイヤの空気圧の日常点検において、依然としてハンマーによる打音点検が主流となっています。しかし、打音のみで空気圧が適正かを判断することは熟練のドライバーでも容易ではなく、手軽かつ正確に空気圧の状態を判定できる方法が求められています。こうしたニーズに応え、㈱METRIKAと協力して、さまざまな環境音の中からタイヤの打音を識別し、打音に基づいて空気圧を予測するAIアルゴリズムを開発しました。さらに、専用のアプリケーションを試作し、専用機器の設置や判定スキルの習得なしで、誰でも高精度な空気圧点検が可能になります。今後は実証実験を通じて、IoTを活用して最適な商品および運用プランの提案を迅速に行う独自の次世代タイヤマネジメントシステム「T.M.S(ティーエムエス)」との連携も計画しています。
②植物原料由来などのエタノールから高効率でブタジエンを生成する技術のベンチ設備を導入
当社と日本ゼオン㈱(以下、ゼオン)は、植物原料由来などのエタノールからブタジエンを高効率で生成する技術を実証するためのベンチ設備※を山口県周南市のゼオン徳山工場内に建設することを決定しました。ベンチ設備は、2026年から稼働を開始し、ブタジエンの確保並びに量産に向けた各種データを収集していきます。
今回実施する実証実験は、植物原料由来などのエタノールを高効率な触媒によってブタジエンに変換する技術を実証するもので、植物原料由来などの合成ゴムを量産化する技術確立の第一歩となります。ゼオンはベンチ設備で生成したブタジエンからポリブタジエンゴム(ブタジエンゴム)を試作し、当社はそのブタジエンゴムを使用したタイヤの試作および走行テストを実施し、大規模実証に向けたデータ収集を行います。
※商業化に向けた連続実証設備(パイロット設備)へ移行するために必要なデータを取得する大規模設備
③ゴム摩擦研究の第一人者であるB.N.J.Persson博士とマルチスケール凹凸路面でのゴム摩耗予測に関する世界初の理論モデルを構築
ゴムの摩擦・接触に関する研究の第一人者であるBo Nils Johan Persson(ボ・ニルス・ヨハン・ペルソン)博士との共同研究により、凹凸路面上のゴム摩耗率と摩耗粉粒子のサイズ分布を予測する理論モデルを世界で初めて構築しました。本研究は2025年2月21日付、物理学術誌「The Journal of Chemical Physics」(米国物理協会)において、掲載論文の中で最も注目に値する研究が選ばれる表紙論文に選ばれました。
当社は長年のゴム研究における実績と高い技術開発力が認められ、マルチスケールコンサルティングと契約し、Persson博士と共にゴムと路面の摩擦・摩耗に関する研究を進めてきました。このたび世界で初めて、理論化が難しかった凹凸路面上のマルチスケール(ナノ~センチレベル)におけるゴム摩耗挙動の理論モデルを構築しました。ドライおよびウェット滑走下でのゴムの摩耗挙動を様々な接触圧と速度で計測した結果、理論モデルが予測する摩耗率(単位滑走距離あたりの質量損失)と摩耗粉粒子のサイズ分布が実験結果と合致し、本理論がそれらの予測に使用できることを確認しました。
当社は今後もPersson博士およびマルチスケールコンサルティングとの研究を進め、高次元の耐摩耗性能を実現したタイヤ開発を追求するとともに、EVなど高重量な電動車の増加に伴い、ますます重要性を増すタイヤ摩耗による環境課題の解決に貢献していきます。
<OHT事業>
OHTのすべてのカテゴリーにブランドを持つマルチブランド戦略に基づき、各ブランドの提供価値の最大化を目指して研究開発活動を行っています。
Trelleborg、Mitasの両ブランドで事業展開するYokohama TWSは、市場で最も先進的な技術の開発を通じて、農業機械用タイヤや産業車両用タイヤを中心にプレミアムサプライヤーとしての地位を強化し続けています。また、Alliance、Galaxy等のブランドの農業機械・建設車両用タイヤなどを展開するYokohama ATGは、開発リードタイムの短さを活かして、ニッチ商品の早期開発・投入などを通じて、バリューセグメントでのプレゼンスを高めています。
①アダプティブ・タイヤ・マネジメント・システム(ATMS)
ATMSは、荷重、圧力、温度などの作業条件をリアルタイムに検知し、常に最適なトラクターの車両設定を提案することで、農業の生産性の向上を実現する当社独自のシステムです。対応車種の拡大に向け、現在OEM各社による検証が進められています。
②製品・材料開発
厳しい使用条件下における農機用タイヤの耐久性と性能向上を目的とした先進材料技術への投資を行っています。また、持続可能なコストでバイオ素材とリサイクル素材の採用を推進する取り組みを継続しています。2025年6月には、特定製品の5,000時間走行保証プログラムを開始しました。
③ラバートラック
世界的な需要拡大傾向にあるラバートラック市場にて、従来の農業における生産性の概念を再定義するような次世代ソリューションの提供を目指し、革新的な製品の開発に取り組んでいます。
2)MB
「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」をテーマに掲げ、安定収益の確保を目指した技術開発を積極的に行いました。
当中間連結会計期間における研究開発費の金額は、8億57百万円であります。
①柔軟性とコンパクト性を追求した高圧ホース「レベックスC(CWP)」シリーズを新発売
建設・土木機械や工作機械、産業機械まで幅広く使用できる高圧ホース「レベックス」シリーズ の新たなラインアップとして、柔軟性とコンパクト性を追求した「レベックスC(CWP)」シリーズを2025年1月から日本国内で販売を開始しました。最高使用圧力35MPa、内径19mmと25mmの2サイズからスタートし、今後は他のサイズも拡充していく計画です。新商品の「レベックスC(CWP)」は、従来品である「レベックス(NWP)」の特徴である優れた耐久性※、耐熱性、耐摩耗性、耐候性を踏襲しながら、外径をよりコンパクトに、柔軟性の向上(曲げ剛性の低減)や10%以上の軽量化(25mmサイズの場合、当社比)などを達成。耐久性能と扱いやすさを高いレベルで両立させました。
※ISO18752BC級相当のインパルス試験に合格。これにより、配管スペースが狭く屈曲が必要な内部配管など、これまで高圧ホースの取り回しが難しかった配管でもよりスムーズな作業が可能となります。
②省エネルギー性能を高めた難燃性コンベヤベルト「FLAME GUARD ECO」を発売
難燃性コンベヤベルトとして好評を博している「FLAME GUARD」シリーズから省エネルギー性能を高めたコンベヤベルト「FLAME GUARD ECO(フレイムガード・エコ)」を発売しました。
「FLAME GUARD ECO」は火災防止のために難燃性コンベヤベルトが必要とされる港湾や火力発電所の石炭搬送ラインでの使用を想定し開発しました。省エネ性能向上にあたっては、世界トップレベルの省電力性能を実現した横浜ゴムのコンベヤベルト「ECOTEX」で培った技術を活用し、ゴム配合を最適化。これにより、エネルギーロス発生の一因であるベルトがローラーを乗り越える時のゴム変形を小さくし、走行抵抗を抑制しコンベヤの消費電力削減に貢献します。難燃性と省エネ性能の両立により、安全な操業に貢献するとともに、エネルギーコスト削減やCO2排出量削減による環境負荷低減に寄与します。
特殊配合ゴムにより自己消火性を持つ「FLAME GUARD」シリーズとして、難燃性、難燃超耐摩耗性、難燃重耐油性、難燃中温耐熱性、難燃高温耐熱性のコンベヤベルトを品揃えしています。今回、ベルトがローラー上を通過する際に発生する乗り越え抵抗を大幅に低減させた「FLAME GUARD ECO」の発売により、さらに強力な商品ラインアップとなりました。
上記のほか、ゴルフクラブ等のスポーツ用品にかかる研究開発費が1億2百万円あります。
「第4 経理の状況 要約中間連結財務諸表注記(12. 企業結合)」に記載しております。