第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループ(当社及び連結子会社)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、次世代の産業分野のニーズに対応できる製品づくりの観点から「高機能、高精密、高品質な製品の提供を通して社会に貢献する」ことを「経営基本方針」とし、また、社員一人ひとりが「今日に誇りを持ち、明日に希望を託し行動する」を「社訓」とします。さらに、人にも地球にも優しい「人を想い、地球を想う」を「基本理念」と定め、当社グループ全体が社会の発展とともに共存共栄していくことを指針とします。

また、100年の歴史で培った”カガク”の持てるチカラの深化に挑み、チャレンジする精神を重んじることでイノベーションを生み出し、人々の快適な暮らしを支えつづける会社であることを目指しています。

 

社訓

今日に誇りを持ち、明日に希望を託し行動する

基本理念

人を想い、地球を想う

経営基本方針

高機能、高精密、高品質な製品の提供を通して社会に貢献する

目指す姿

“カガク”のチカラで人々の快適な暮らしを支える会社

 

(2) 経営戦略等

グローバルに目まぐるしく変化する経済環境のもとで、当社グループは世界のトップメーカーを目指し、企業体質の強化を図るため計画的かつ着実に施策を推進してまいります。

①  基本理念「人を想い、地球を想う」のもと、SDGsに取り組み、環境との調和を目指した製品技術・生産技術などの開発により技術領域を広げていくとともに、地球規模の視野に立った環境保全活動を行い、持続可能な社会の実現に貢献できる企業づくりを推進いたします。

②  グループ全体の資本効率の向上を図り、今後もより一層、企業体質を強化いたします。

③  世界的な技術競争に対応するために、研究開発体制、技術力の強化を図り、基礎技術の蓄積と活用能力を高めた製品開発のスピード化を推進いたします。

④  次世代を見定め、よりユーザーニーズに対応した高機能、高精密、高品質な製品を生産する製造ラインの実現に向け、生産システム並びに研究開発の機能充実を図り、独自の優位性を持った新しい考え方を採り入れた生産システムの確立に取り組みます。

⑤  世界的なコスト競争に対応するために、世界最適生産体制の確立とコスト競争力のある体質づくりを目指して取り組みます。

⑥  生産、販売及び物流体制の強化を図るため、立地面の優位性、効率性を重視し、国内外を問わず拠点の再整備を行い、引き続き一層の充実を図ります。

⑦  人材の確保と育成を図るため、新卒社員の採用並びに専門的知識と経験の豊富な人材の通年採用を積極的に進めるとともに社員一人ひとりが多様で柔軟な働き方が実現できるよう働き方改革に取り組みます。

 

(3) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

先行きについては、中国経済の低迷、地政学的リスクの多極化と不安定化、為替や株価などの金融市場の不安定化などが継続することが見込まれるうえ、米国による高関税政策に端を発した世界経済の減速懸念の高まりなど、さらに不透明で不確実性を伴うものと予測されます。

このような環境の中、変化にぶれない強い企業体質の確立を進め、2030年度の「ありたい姿」の実現に向け、2024年度から2026年度までの3年間を計画期間とする「'24中期経営計画」を2024年5月14日に公表いたしました。当該期間を成長加速期間として収益性、資本効率性、設備投資額、株主還元、ESGの各々にKPIを設定し、これらの達成に向け取り組んでまいります。

基本理念「人を想い、地球を想う」のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献できる企業づくりを推進し、全てのステークホルダーに信頼される経営に努めます。

 

(4) 目標とする経営指標

①  経営目標値

2030年度の「ありたい姿」

売上高:1,000億円    営業利益:130億円    ROE:10%

 

『 '24中期経営計画 』(2024年度~2026年度)

 

2026年度 KPI目標

売上高

915億円

営業利益

105億円

ROE

9%

想定為替レート

1米ドル=130.00円

 

②  株主還元に関する目標値

DOEの目安 5.4%程度(1株当たり配当金180円以上)、

「'24中期経営計画」期間中の自己株式取得30億円

 

③  ESG

Scope1&2国内8拠点

2026年度のCO排出量削減目標値 2013年度比 40%

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ経営の推進体制とマテリアリティ

① サステナビリティ経営に対する考え方

 当社グループは、基本理念「人を想い、地球を想う」のもと、企業価値と社会価値のトレードオンを図るべく、ESG経営の実践に取り組んでいます。2030年度の「ありたい姿」においては、「持続可能な社会の実現への貢献(社会・環境・経済価値の向上)」を掲げ、特定したマテリアリティを主とする各ESG課題の解決に取り組んでいます。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

② サステナビリティ経営の推進体制

 環境や社会に対する企業の果たすべき役割がより大きくなった現在において、当社グループが果たすべき役割と存在意義を改めて見つめ直し、ESG経営を迅速かつ効果的に実行することを目的として、2022年4月、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。また、2024年7月にその役割と機能の一層の強化を図るべく、同委員会を「サステナビリティ会議」として新たに位置付け、より実効性のある運営体制としています。

 特定したマテリアリティについては、課題ごとに推進組織が設定され(推進組織は、各委員会、事業部門・関係会社、またはサステナビリティ会議の直轄組織となるワーキンググループが担当)、各課題解決への取り組み及びKPI管理が行われています。それら取り組みの進捗状況はサステナビリティ会議に報告され、同会議により、監視・指示・判断・評価されています。また、サステナビリティ会議の活動内容は、必要に応じて取締役会に報告されます。

 

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a.サステナビリティ会議構成

  議 長   : 代表取締役社長

  メンバー  : 取締役兼執行役員4名、執行役員4名、部門長3名

  オブザーバー: 監査役 1名

  事務局   : サステナビリティ推進室

 

b.サステナビリティ会議体制

開催頻度  : 1回/月

審議内容  : ⅰ) グループ全体のサステナビリティ課題戦略の

策定、進捗状況の監督及び助言

ⅱ) マテリアリティ・各実行課題の取組み状況に

関する討議

ⅲ) サステナビリティ課題

の特定と取締役会への報告

 

c.サステナビリティ会議主要議題一覧

開催期

カテゴリー

主要議題

第1四半期

 

 

▶ 2023年度CO排出量、水資源、廃棄物などの実績報告

 

▶ マテリアリティとKPIの見直しについて

 

▶ 統合報告書のコンテンツについて

 

▶ 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示について

第2四半期

 

▶ ESGに係る法規制(EUDR等)への対応状況について

 

 

 

▶ 人権デューディリジェンスの推進について(2024年度の計画)

 

 

 

 ▶ サステナビリティ・リンク・ローンにおける第三者検証結果報告

 

 

 

▶ 第三者評価機関(CDP)への回答内容について

第3四半期

 

 

▶ サプライチェーンにおけるサステナビリティの取り組みについて

 

 

 

▶ 2030年度に向けたCO排出量削減施策及び計画について

 

 

 

▶ 人的資本経営推進に係る施策について(行動規範ハンドブックの作成)

 

▶ SDGs推進委員会の活動内容について

第4四半期

 

 

▶ 人権デューディリジェンスの推進について(グリーバンスメカニズムの構築)

 

 

 

▶ サーキュラーエコノミー推進の取り組みについて

 

 

 

▶ 環境配慮型製品の開発体制強化について

 

▶ SSBJによるサステナビリティ開示基準への対応について

 

 

③ ESG課題に関するマテリアリティ

 環境及び社会課題の解決を企業活動の前提条件と捉え、持続可能な社会の実現に貢献するため、取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を特定し、また実行施策ごとのKPIを設定しました。

 

a.マテリアリティの特定プロセス

 SDGs、ISO26000、GRIなどの国際的なガイドラインを参考にし、当社グループの事業環境・事業構造を分析し、社会・環境に対する依存と影響の両面から当社グループが取り組むべき課題を抽出し、サステナビリティ会議での審議を重ね、マテリアリティを決定(特定)しました。

 

b.当社グループのマテリアリティと取り組む課題・課題の施策一覧

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※ 各課題のKPIは当社ウェブサイトにてご確認ください。

https://www.mitsuboshi.com/sustainability/sustainability/

 

(2) 気候変動に関する取組み

 地球温暖化を原因とした様々な気候災害の発生頻度が増加し、被害の激甚化も年々進んでおり、当社グループは、“気候変動への対応”を経営における重要課題(マテリアリティ)として取り上げています。

 また、当社グループは、気候変動に係る取り組みをより加速させるべく、2022年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに入会しました。

 気候変動に関する取り組み強化を推進するとともに、TCFDのフレームワークに基づいた適時・適切な情報開示を行い、全てのステークホルダーの皆さまとのより一層のエンゲージメント向上を目指しています。

 

① ガバナンス

a.気候変動関連のリスクと機会についての取締役会による監視体制

・ 気候変動に関する経営の方向性については、サステナビリティ会議([第2-2-(1)-②-a参照])において気候関連のリスク及び機会などを踏まえて取りまとめられた提言が取締役会に報告の上、同会にて意思決定・監督することとしています。

 

b.気候変動関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割

・ マテリアリティの各課題進捗については、課題ごとに決められた施策を担当する推進部門(事業部門、委員会・関係会社またはワーキンググループ)からサステナビリティ会議へ実施状況が報告され、同会議にてレビュー・監視・目標や課題の進捗確認が行われ、活動の継続的な改善を図っています。

・ マテリアリティのひとつである気候変動対応活動については、「CO削減活動」、「省エネ活動」、「環境配慮型製品の開発」、「サプライヤーの排出量管理」等がサステナビリティ会議において議論されています。2024年度でのサステナビリティ会議における主な議題は[第2-2-(1)-②-c参照]に記載の表のとおりです。

 

② リスク管理

a.気候変動関連リスクの特定及び評価プロセス

・ 気候変動関連リスクは、全ての事業部門・関係会社の責任者が参加して行うリスクアセスメントにより様々な事業リスクの一つとして洗い出され、リスク管理委員会(取締役が委員長、全関係会社・事業部門、及び本社全管理部門の責任者が委員)にて、発生の可能性と影響の大きさ(影響度: 大:10億円以上、中:1億円~10億円、小:1億円未満/時間軸: 短期:~2026年、中期:~2030年、長期:~2050年)から対応すべき重大リスクを特定しています。

 

b.気候変動関連リスクの管理プロセス

・ 事業部門及び関係会社の責任者は、特定したリスクを集約し、取り組むべき課題、対応施策、対応部門、目標等を明確にして方針書に展開し、当社社長の承認を得ます。承認された方針書は、対応部門により実行計画書に展開、事業部門・関係会社責任者の承認の後、実行に移されます。

・ 実行の状況は事業部門・関係会社の責任者により監視・評価され、原則、年1回の頻度で経営会議(当社ウェブサイトのサステナビリティ/コーポレート・ガバナンスに関する取り組み参照)に報告、レビューを受け、その結果は次年度の方針書に反映されます。ESG経営のマテリアリティ課題に対応した施策の実施状況は、月1回の頻度で開催されるサステナビリティ会議に報告され、必要に応じて指示・評価されます。

 

c.気候変動関連リスク管理と全体リスク管理の統合

・ リスク管理委員会の審議を経て決定された重大リスク案は、同委員会を通じて取締役会に報告されます。決定された重大リスクに対する施策は、対応部門が所属する事業部門・関係会社の責任者により日常の監視・評価が実施され、その内容はリスク管理委員会に報告されます。

・ 2024年度も前年度に続き、“CO排出量削減目標未達による企業価値低下”が、リスク管理委員会が実施するリスクアセスメントにおいて気候変動に関連したリスクとして特定されています。事業部門・関係会社で実施されるCO排出量削減活動は、サステナビリティ会議により監視・評価され取締役会に報告されています。

・ 気候変動をはじめとしたESGのマテリアリティに係るリスクについては、サステナビリティ会議において当該リスクに対する実施内容の進捗について管理を行っています。

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① 事業部門・関係会社にてリスクと機会の洗い出しを行い発生の可能性と影響の大きさから対応すべきリスクと機会を特定

 

② リスク管理委員会にて、グループ全体で対応する重大リスクを評価・特定、対応組織を指名

 

③ リスク管理委員会は対応組織の実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

※ 図の重なり部分=「ESGのマテリアリティに関わるリスク管理」については、コンプライアンス、情報セキュリティを除きサステナビリティ会議が実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

③ 戦略

 気候変動が当社グループのバリューチェーンに与える将来的な影響及び気候変動対策の有効性検証を目的に、脱炭素トレンドが強まり移行リスク・機会の影響が大きくなる「1.5℃上昇シナリオ」と、気候変動が大きく進み物理的リスクの影響が強まる「4℃上昇シナリオ」の2つの気候変動シナリオに基づきシナリオ分析を実施しました。シナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 

・ 自動車の電動化の進展に伴うリスクと機会について

 自動車の電動化進展に伴い、2030年度までに内燃機関用ベルトの需要は2019年度と比べて約60億円減少する見通しですが、同期間において、自動車・電動ユニット用ベルト(EPB、EPS、PSDなど)や電動2輪車向け後輪駆動用ベルトなどの販売拡大により約100億円の売上増を見込んでおります。自動車の電動化進展を機会と捉え、持続可能な成長を実現できる製品の開発に努めてまいります。

 

[製品区分別・自動車業界向け売上計画]

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・CO排出量

 従来より取り組んでまいりました各事業所における太陽光発電設備の導入、再エネ電力への切り換え、重油を燃料とする設備のガス化などの取り組みを進めた結果、2024年度における国内拠点のCO排出量は27,108t(対2013年度比 ▲33.7%)となりました。海外拠点のCO排出量は44,878t(対2013年度比 ▲20.7%)となっています。

 また、自社における排出量だけではなく、バリューチェーン全体での排出量削減の取り組みにも注力しています。2024年度、当社グループのScope3を含むバリューチェーン全体での排出量は350,502tとなりました。自社での排出削減活動に継続して取り組むと共に、特に、Scope3のうち構成比の高いカテゴリ1(購入した製品・サービス)の排出量について、取引先とも協業のうえ温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。2024年度は取引先の排出量管理を目的の一つとして、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要30社を対象としたESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施しております。

 

■2024年度CO排出量の内訳(対象:当社グループ拠点、Scope1,2,3)

■Scope1~3構成比

 

■Scope3,カテゴリ構成比

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④ 指標と目標

 当社グループでは、事業活動において重要な要素と位置付けているマテリアリティの1つに「脱炭素社会実現への貢献」を挙げており、国内拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに40%削減、2030年度までに46%削減、そして2050年度までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標を設定しています(対象:国内8拠点、Scope1及び2)。また、海外拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに27%削減、2030年度までに40%削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成する目標を設定しています(対象:海外9拠点、Scope1及び2)。

マテリアリティ

取り組む課題

対象

2026年度

目標

2030年度

目標

2050年度

目標

脱炭素社会実現への貢献

CO排出量の削減

(2013年度比)

国内拠点8拠点

Scope1及び2

40%削減

46%削減

CN達成

海外拠点9拠点

Scope1及び2

27%削減

40%削減

CN達成

 

(3) 生物多様性保全への取り組み

 人類の活動による地球温暖化、環境汚染、乱開発、乱獲等により生物多様性が急速に失われつつあり、生態系の維持が危機的な状況にあります。今、対応を怠れば、将来、生態系サービスを享受できないことにより社会全体が大きなダメージを受け、SDGsが目指す「持続可能な社会」が実現できなくなります。

 当社グループは、これまで地球温暖化の抑止に向けてCO排出量削減活動に取り組んでまいりましたが、生物多様性の損失もまた、社会全体にとって地球温暖化と同じく重要性・緊急性の高いリスクであると認識しています。当社は、マテリアリティとして「生物多様性の保全」を取り上げ、「水資源の保全」、「環境保全/環境汚染の防止」等に取り組み、具体的な施策・KPIを設定のうえ種々の活動に取り組んでまいります。

 「生物多様性に関するガバナンスとリスク管理のプロセス」は「気候変動に関する取り組み」と共通しておりますので、[第2-2-(2)-①]「ガバナンス」[第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください。

 

① 戦略

 サステナビリティ会議において、当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」について調査、検討を行い、国連等が提供するオンラインツールENCOREを使って検証を行いました。そして、TNFDが推奨する開示フレームワークLEAPアプローチに従って「生物多様性の保全」に関するリスクと機会の洗い出し、また、それらが当社グループの事業活動に与えるインパクト評価を実施し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。

 当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」の調査結果、事業活動と生物多様性にとっての重要な地域との接点、設定しましたシナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 結果として、当社グループの生産活動は水に依存していること、伝動ベルトの原材料である天然ゴムは、栽培地の拡大に伴い森林破壊の一因となっており、同様に綿についても水資源が逼迫している地域における栽培において、取水や農薬汚染等が水の需給バランスをさらに悪化させる要因となっていることなどを取り組むべき課題として特定しました。

 水と当社グループの事業活動との関係は当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

② 目標

 これまで当社グループでは、水の消費量を減らすために、日本に比べ取水環境の厳しい海外生産拠点を中心に「冷却水循環システム」、「ミスト冷却システム」等を導入してまいりました。ゴム製品の生産においては、化学反応によりゴム弾性を発現させる加硫工程が不可欠ですが、この工程では、ゴムに硫黄等を加え、高温(100℃以上)で反応させるため、加硫後には冷却が必要であり、この冷却に水を使用しています。以上のように、加硫及び加硫後の冷却は、ゴム製品を作るために欠かせない工程です。

 

 当社グループ・国内生産拠点の取水量は、海外生産拠点の約2.5倍(2024年度実績)であり、特に国内生産拠点における取水量の削減が急務となっておりますので、「国内拠点の取水量を2030年度 2021年度比50%削減する」を目標にして「冷却水循環システム」の導入を中心とした削減活動に取り組んでまいります。既に「冷却水循環システム」が導入されている海外生産拠点では生産量の増加に伴う取水量の増加が見込まれますが、「海外拠点の2030年度の取水量原単位を2021年度と同等とする」を目標にして水消費効率の維持・改善を進めてまいります。

 

③ 実施状況

■取水量削減活動

 2024年度の国内拠点の取水量は、名古屋工場において「冷却水循環システム」の導入、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、744,795㎥(2021年度比 ▲15.1%)となりました。海外拠点の取水量原単位は、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、15.18㎥/t(2021年度取水量原単位:16.77㎥/t)となりました。

 

国内拠点の取水量の推移

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海外拠点の取水量原単位の推移

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■天然ゴム、綿に関するサプライヤーエンゲージメント

 当社グループでは、天然ゴムや綿を使用しない製品仕様の開発は既に完了していますが、それらの製品では止むを得ず一部再生可能ではない原材料を使用せねばならず、資源枯渇を考えた場合、天然ゴムや綿は引き続き重要な役割を果たす原材料であると考えています。こうした背景から、今後、2023年度に策定しました調達ガイドラインに基づき、生物多様性の保全に配慮した天然ゴムや綿の調達を行っていきます。

 

 2024年度、EUの「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」に対応するため、天然ゴムサプライヤーを対象にEUDRに準拠した天然ゴムの供給が可能であるかどうか(森林破壊に関与していないか)調査いたしました。EUDRでは森林破壊を伴う7種類のコモディティ、及びその加工製品のEU域内への持ち込み、取引を禁止しており、天然ゴムを使用した当社グループの伝動ベルトはその対象となります。2025年度、調査結果に基づいてデューディリジェンスを実施し、デューディリジェンスステイトメントをEU当局の管理ツールに登録する計画です。

 

(4) 「人財戦略の強化」人的資本経営の推進

■基本的な考え方

 当社グループは、当社が今後も社会価値の向上とともに持続可能な成長を実現するためには「人財」が最も重要な成長の源泉であると認識し、2030年度の「ありたい姿」において、下記に示す「人財戦略」を掲げています。

 また、2024年5月に開示しました'24中期経営計画では、収益性向上のための最重要課題として「人財戦略強化」を掲げ、その取り組みをさらに加速しています。

 

2030年度の「ありたい姿」 -人財戦略

変革を推進する人材の育成

▶ 「人」の力を最大限に発揮できる人事制度、教育制度、職場環境の充実

▶ 多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成

① ガバナンス

 当社グループにおける人材育成と職場環境整備に関する戦略と方針は、各推進組織において立案され、サステナビリティ会議で審議、決定のうえ、取締役会に報告されます。

 

人的資本経営の推進体制と役割

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役割

推進組織

 

異動、報酬、評価などの人事制度

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

人事部

 

人材マネジメント、育成・リスキリングの企画・実行

人材開発室、DX推進室

 

安全衛生、健康管理などの

職場環境管理

総務部

 

職場環境管理に係る制度管理

安全環境管理部

 

働きがいのある職場づくり など

働き方改革推進委員会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、職場環境の整備、生産性改善に関する施策を組織横断的に実施し迅速に普及させることを目的として、取締役が委員長を務め、ダイバーシティ(性別、年齢、職種、職制)を意識した委員で構成する働き方改革推進委員会が設けられています。本委員会では、実行課題、対象部門、対応施策、目標を設定し、対応施策の実施状況を監視・評価し、必要に応じて施策内容の変更を指示します。これら活動内容は、対応施策の進捗状況に応じて、社長及びサステナビリティ会議に報告・審議され、この内容は取締役会の報告事項となっています。

 さらに、サステナビリティ会議([第2-2-(1)-①及び②]項参照)においては、人的資本経営推進の観点から、マテリアリティの1つに「人財戦略の強化」が取り上げられ、施策ごとに推進組織(下記表参照)が指名されています。施策推進組織からサステナビリティ会議へは実施状況報告がなされ、施策実施内容の監視・評価が行われています。

 

マテリアリティ:「人財戦略の強化」  課題ごとの推進組織

取り組む課題

課題の施策

推進組織

DE&Iの推進

女性管理職比率の向上

人事部

人的資本経営の推進

従業員エンゲージメントの向上

働き方改革推進委員会

 「人財戦略の強化」に関するリスク管理のプロセスは「気候変動に関する取り組み」と共通しておりますので、[第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください。

 2024年度、リスク管理委員会において、人的資本経営に関する重大リスクは特定されませんでした。サステナビリティ会議では、前述の通り「人財戦略の強化」がESG経営におけるマテリアリティとして特定されています。

 

② 戦略

 日本企業の経営において、労働人口の減少、従業員の高齢化は各社共通した課題ですが、当社では、これら以外に、女性従業員比率・女性管理職比率の向上、従業員エンゲージメントの向上も課題となっています。従業員エンゲージメントの向上は、「人」の力を最大限に発揮するための重要な要因の一つであると考えており、2023年度より、当社単体の従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを開始いたしました。

 「リスクと機会の洗い出し」の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

a.チャレンジを是とする企業風土改革

 『2030年度の「ありたい姿」-人財戦略』に記載の通り、当社では、『多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成』を最重点課題として捉え、社長が先頭に立ち種々の施策に取り組んでいます。働き方改革や従業員エンゲージメントに係る内容については後述しますが、チャレンジを是とする企業風土への変革を目的とし、従業員からの意向も取り入れた人事制度に改定、従業員の手上げ制度としてジョブマッチング制度の導入、従業員向け株式交付制度の導入などの施策を実施しました。これら施策の結果、定量的な結果を示すことは難しいものの、心理的安全性が向上した新たな企業風土の芽生えを感じられるようになっています。また、これらの施策は、女性従業員比率・女性管理職比率の改善にも有効に機能すると考えており、先に述べました従業員エンゲージメントを指標にして活動を更に活性化させてまいります。さらには、今後、外部人材の活用を通じて新たな発想を取り入れ、企業風土改革を加速させてまいります。

 

 

b.労働人口の減少とダイバーシティの確保

 日本においては、労働人口減少への対応を進めることが今後の事業を継続していくための重要な課題であると認識しています。労働人口が減少する中、DXを推進して生産性改善と自動化を進め、事業拡大に伴う要員の増加をゼロ、或いはマイナスにするための施策推進に取り組んでいます。

 

DX活用に係る施策

施策

推進組織

受講者数(人)

2022年度

2023年度

2024年度

DX研修プログラムの実施

DX推進室

33

730

558

 

 一方、女性従業員及び女性管理職が少ない状況(2024年度での当社の女性従業員比率:11.4%、同 女性管理職比率(課長):3.4%)は、当社のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I、多様性・公平性と包摂性)における課題を明確に示しています。このような状況に対して、女性活躍を推進するために、積極的な女性の採用を行うとともに、女性にも男性にもワーク・ライフバランスの取れた制度設計など職場環境の整備を進め※1、女性に長く働いてもらい、管理職にもチャレンジしたくなる職場づくりを目指します。また同時に、すべての従業員が自身の能力を最大限に活かせる多様性と包摂性を尊重する取り組みを行います。

 

※1 育児休業制度、短時間勤務制度、時間単位ごとの年次有給休暇制度、フレックス勤務制度等、従業員一人ひとりの生活に合わせて勤務時間を調整する諸制度を導入済です。

 

c.従業員の高齢化への対応

 日本企業の経営において、従業員の高齢化は大きな課題の一つです。現状では70歳までの雇用が当たり前になりつつあり、“経験”というメリットを活かしながら、“身体的な衰え”や“技術の陳腐化”というデメリットを打ち消す施策の導入が必要となります。さらに、少子化問題が依然として改善されない現状においては、労働者の高齢化問題は持続的な課題として残存することが考えられます。高齢者層の従業員には“経験”に加えて、リスキリングによる新しい知識・スキルの習得が求められます。

 “従業員の高齢化”への対応として、まず考えなければならないのが健康の維持です。当社では、人間ドック、心臓ドック、脳ドック、生活習慣病健診等の健診サービス制度を導入しています。これらサービスが有効に機能するよう、産業医の意見を反映させながらその内容を改善してまいります。また、健康の維持に加えて、健康増進のための取り組みもまた重要です。まずは“喫煙”と“肥満”に着目し、指標(従業員の喫煙者割合 : 2030年度までに15%以下/肥満率(BMI 25以上の割合)を2030年度までに25%以下にする)を明確にして活動を進めています。

 高齢者のリスキリングについては、要員計画に基づく人材に関する要求事項に応じて、人材開発室またはDX推進室が主体となり教育プログラムの開発を行い、人材育成が実行されています。

 

d.能力開発と事業活動への展開

 当社グループでは、あらゆる職場で実施される新入社員教育、初期作業者教育が、従業員の能力開発の第一歩となります。その後、役割の変化に伴う階層別研修、職務内容に応じた専門研修、法令が定めるところの研修、自己啓発を支援する研修等、様々な能力開発プログラムを実行しています(下表参照)。また、QCサークル活動、海外拠点を含む全拠点での改善活動を発表、支援する場である「GLOBAL GEMBA KAIZEN ACTIVITY」、及びそれらの成果報告会も従業員の能力開発に大いに貢献しており、報告会において優秀な活動に付与される報奨は活動の原動力の一つとなっています。これら能力開発プログラムは、スキルマトリックスをベースにして、部門、あるいは定められた組織で年度ごとに計画・実行され、有効性を評価したのち、次年度の活動に展開されています。

 また、DE&I、人権、コンプライアンス、または企業理念に係る研修についても能力開発プログラムと同様に重要視しており、教育研修の充実に取り組んでおります。これらの研修プログラムは、主に、新入社員研修、入社3年目研修などの階層別研修を中心に実施されています。

 これら教育活動により開発された個人の能力が事業活動において有効に活用されることにより、会社の業績と従業員エンゲージメントがともに好転し始めると考えられます。当社では2025年度からタレントマネジメントシステムを導入して個人の能力を見える化し、事業戦略が求める人材をどのようにして提供していくのかを明確にした人財戦略の立案を目指してまいります。

 

表) 能力開発プログラム一覧

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e.従業員エンゲージメント向上のための環境整備

 当社グループの基本理念「人を想い 地球を想う」は、個の尊重、ダイバーシティの尊重を謳っており、当社は性別や人種はもとより、生活環境や考え方を異にする全ての従業員が安全、安心に生産性を高め、充足感をもって働くことのできる職場づくりを目指しています。

 2023年度より従業員エンゲージメントの測定を開始しました。”やりがい”、”達成感”、”上司”との関係” 等とスコアの相関が高いことから、1on1ミーティングなどの施策による上司と部下の関係改善、ジョブマッチング制度などによる”やりがい”を醸成することにより、従業員エンゲージメントスコアの改善を図ります。

 

 

 その他、従業員エンゲージメント向上に係る取り組みの一例は下記の通りです。

◆ 女性活躍推進

2025年3月末時点の当社の女性従業員比率は11.4%、女性管理職比率は課長で3.4%、定期採用者に占める女性の比率は22.0%となっています。'21中期経営計画の見直しにおいて「人財戦略」を重要項目として取り上げ、「人財戦略の強化」をマテリアリティとしました。当社では、女性管理職比率の改善を目指し、先ずは課長職における女性比率をKPIとし、「ダイバーシティの推進」に取り組んでいます。

「管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」につきましては、[第1-5-(4)]をご参照ください。

 

◆ 年次有給休暇制度

生活における様々な状況に対応して働き続けられるように、繰り越し日数も含め、最大で40日の年次有給休暇を取得することができ、また、休暇を取得しやすいように半日単位、時間単位の取得もできる制度としています。

年次有給休暇取得率

2022年度

2023年度

2024年度

53.1%

68.3%

67.1

 

◆ 育児休業制度、短時間勤務制度

育児休業は法律に則り、最長で子供が2歳になるまで取得ができます。育児休業からの職場復帰後は、労働時間を最大で2時間短縮できる短時間勤務の選択が可能です。短時間勤務は子供が小学校の始期に達するまで選択可能で、子供が3歳になるまでは賃金の減額もありません。また、所定外労働・深夜業の制限等の制度もあり育児に配慮しています。

育児休業取得率

 

2022年度

2023年度

2024年度

男性

26.5%

59.3%

50.0%

女性

100%

100%

100%

当年度権利取得者中の取得率(継続者は含まない)

 

③目標

 2024年度、サステナビリティ会議では「人財戦略」における課題の施策「女性管理職比率の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」を迅速、確実に改善することを目的としてそれぞれにKPIを設定いたしました。

課題の施策

KPI

女性管理職比率の向上

女性管理職比率(課長)

2026年度 : 5%以上、2030年度 : 10%以上 (三ツ星ベルト単体)

従業員エンゲージメントの向上

スコア改善目標(2023年度比)

2026年度 : 10%改善、2030年度:13%改善

 

 (5) 人権の尊重

■基本的な考え方

 三ツ星ベルトグループは、当社の事業活動に係る全ての人の人権を尊重することが社会及び当社グループの持続可能な成長の最大の前提条件であると考えており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」及びその他の国際基準に基づきマテリアリティの1つに「人権と人格の尊重」を取り上げ、人権尊重の取り組みを推進しています。

 

①ガバナンスとリスク管理プロセス

 「人権と人格の尊重」に係るリスクはサステナビリティ会議のワーキンググループが実施する人権デューディリジェンス(人権DD)により特定され、サステナビリティ会議が指名する推進組織により人権リスクに対する施策が実行されます。活動の進捗状況はサステナビリティ会議により監視・評価され、その内容はサステナビリティ会議から取締役会に報告されています。

 人権リスクは全社的なリスク管理プロセスにおいても特定されます([第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください)。

 

②取り組み状況

人権方針の制定と人権DD

 2023年1月、人権方針を制定するとともに、サステナビリティ会議のワーキンググループでの人権DD及びサステナビリティ会議での議論により、当社のサプライチェーンを含む事業活動において、以下の人権リスクを特定しました。2024年2月には、調達ガイドラインをウェブサイトに開示し、取引先に人権DD活動への協力を要請しました。

特定した人権リスク

推進組織

児童労働、強制労働を伴う原材料(天然ゴム、綿等)の使用

サステナビリティ会議事務局+購買部

人権方針、調達ガイドラインの詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

人権救済メカニズムの構築

 2024年度、当社はサステナビリティ会議において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める人権救済メカニズム(グリーバンスメカニズム)の構築に向けた取り組みを開始いたしました。2025年度も引き続き、より実効性の高い仕組みの実現に向けて、調査・研究を積極的に進めてまいります。

 

サプライチェーンエンゲージメント

 2024年度、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要30社を対象とした人権課題を含むESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施し、調査結果説明会を開催いたしました。2025年度も本ツールを活用してサプライヤーと協働し、持続可能で責任ある調達を推進してまいります。

 2024年度、EUの「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」に対応し、天然ゴムサプライヤーを対象にEUDRに準拠した天然ゴムの供給が可能であるかどうか(森林破壊、児童労働、強制労働に関与していないか)調査いたしました。2025年度、調査結果を人権DD活動に展開する計画です。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 経済状況の変化について

当社グループは、自動車産業、一般産業、農業機械産業、情報機器関連産業、建設資材産業等における機能部品を開発、製造し、提供する企業であり、日本、アジア、米国、欧州等を主要な市場としております。従って、各々の業界での需要の変化並びに各々の地域での需要や経済状況の変化によって影響を受ける場合があります。

主力製品である伝動ベルトは、自動車産業、一般産業、農業機械産業、情報機器関連産業向けを中心として納入しており、その各々の業界での需要の低下や設備投資の減少により、結果として、ベルト及び関連製品を提供する当社製品の需要が減少する場合があり、業績に影響を受ける場合があります。

また、当社グループが販売する伝動ベルトは、その約70%を海外で生産しており、今後も海外への依存度が高まることから、海外における経済の影響を受ける場合があります。

戦争やテロ、暴動、災害、伝染病等により、経済活動に急激な打撃を受けた場合、その間、需要が低迷することが想定されますが、材料の調達や顧客への製品の納入が困難となることも想定されます。従って、当社グループは、顧客への製品納入体制の充実を図るため、全世界での生産体制の見直しなど様々な対策を既に講じていますが、必ずしも全てのリスクを回避し得るとは限りません。

以上のようなことから、業界の動向や国内・海外の経済状況により、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(2) 感染症の蔓延による異常事態について

当社グループは、様々な産業に向けて製品を製造し、提供する企業であり、日本、アジア、米国、欧州等を主要な市場としているため、新型コロナウイルス感染症のように世界全体に広がり影響が及ぶ状況の中では、世界全体の社会経済活動が停滞し、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を受ける可能性があります。

このような状況の中、当社グループでは、勤務体制の見直しやテレワーク等を積極的に推進するとともに、リスク管理委員会の活動を通じて、感染拡大防止マニュアルの標準化やBCPの策定により事業リスクの最小化を図るべく取り組んでおります。また、取引先との情報交換の体制強化を図り、厳しい状況下にあってもより良い体制がとれるよう、事業活動を推進してまいります。

 

(3) 自動車産業から受ける影響について

当社グループの売上のうち、自動車産業への販売による依存度は約47%に及んでいることから、特定の自動車メーカーの系列に属さないものの、自動車産業の景気低迷、顧客企業の業績不振、顧客の部品調達方針の変更あるいは大規模な自然災害による被災など、当社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。

自動車産業をはじめ全ての顧客に対し、顧客満足度を維持、向上させるための経営に取り組んでいますが、これらの状況の変化により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、電動化の進展については、常に動向を注視し、内燃機関用ベルトの需要減少を中長期的なリスクとして捉え、電動化対応製品の開発等を進めております。

 

 

(4) 材料の調達について

当社グループの生産拠点は、製品の製造に伴う主要原料であるゴム、帆布、繊維、樹脂など様々な材料を必要としており、これらの調達については、安定して調達できること、安価であること、品質上問題がないことなどを考慮し、仕入業者を分散して調達しております。なお、リスク管理委員会の活動を通じて、重要な材料・加工品は、特定の取引先に過度に依存することがないように複数社購買のための準備を図っており、また、取引先に対しBCPの策定を要請しております。

しかしながら、原油をはじめとする資源価格の高騰局面にあっては、主要原料の市況価格が上昇し、その調達コストが大きく押し上げられることによって、製造原価が大幅に上昇する可能性があります。また、海外からの原材料の調達や海外拠点への原材料供給において輸出入規制等の変更が安定的、効率的調達の阻害要因となる可能性もあります。

以上のことから、当社グループが柔軟に原材料の調達ができない場合や、調達コストが著しく上昇する場合には、業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 為替レートの変動について

当社グループは、日本、アジア、米国、欧州等を中心として製品の生産、販売活動を行っております。各地域の販売活動は輸出も含んでおり、通常取引の上での為替の変動リスクに加え、取引の結果として保有する外貨預金、売掛金及び貸付金等の外貨建資産が為替変動の影響を受ける可能性があります。

また、連結財務諸表作成の過程で全て円換算することから、換算時の為替レートにより現地通貨の価値に変動がなくても円換算後の価値に影響を受ける可能性があります。他の通貨に対する円高は、当社グループにとっても業績のうえで影響を受けることとなります。

当社グループは、為替リスクを軽減し、これらをできる限り回避するため様々な施策を講じていますが、短期的な影響には対応できないケースも少なくないことから、業績や資産価値の下落などに影響を与える可能性があります。

 

(6) 国内外の事業活動における公的規制について

当社グループは、事業を展開する各国において、輸出入に関する規制、関税に関する規制、事業や投資に関する規制等、様々な制限を受けており、また、独占禁止、特許、租税、廃棄物処理・リサイクルなど環境等の様々な法的な規制も受けております。従って、これらの経営環境に当社グループの事業活動が柔軟に対応できない場合には、コストの増加や海外進出をしている国からの事業の撤退を余儀なくされる可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 製品の品質について

当社グループは製品品質の維持向上を図るため、顧客要求基準及び当社グループ基準に基づいた厳しい品質管理体制をとっておりますが、万一、欠陥品や顧客クレームが発生した場合に備え、当社グループの損失を最小限にとどめるための損害保険を付保しております。

しかしながら、保険の適用対象とならない事態に至った場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(8) 自然災害等のリスクについて

当社グループの生産拠点において地震・水害等の自然災害による壊滅的な損害を受けた場合には、顧客への製品の供給が困難となり、売上高の減少や修復に伴う一時的な巨額の費用負担が発生する可能性があります。このような災害に備えるため、海外の生産拠点に対するバックアップも含めた国内外の生産体制の整備を図るとともに、リスク管理委員会の活動を通じて、製品の納入等に対するリスク回避のための検討を行い、大規模事故・災害が発生後、早期に顧客への製品供給対応が図れるよう、体制の強化・充実に取り組んでおります。

しかしながら、このような取り組みにも拘わらず、一時的な操業の中断や納入遅れの発生、修復に係る多大な費用の発生により、業績に影響を受ける可能性があります。

また、当社グループの生産拠点が損害を受けない場合でも、主要顧客が自然災害による壊滅的な損害を受けたり、サプライチェーンの寸断などで生産停止あるいは減産を余儀なくされる事態に至れば、売上の減少により業績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、緩やかな回復基調で推移しているものの、中国経済の低迷、地政学的リスクの多極化と不安定化、為替や株価などの金融市場の不安定化など、多くの課題に直面しました。

このような環境の中、変化にぶれない強い企業体質の確立を進め、2030年度の「ありたい姿」の実現に向け、2024年度から2026年度までの3年間を計画期間とする「'24中期経営計画」を2024年5月14日に公表いたしました。当該期間を成長加速期間として収益性、資本効率性、設備投資額、株主還元、ESGの各々にKPIを設定し、これらの達成に向け取り組んでおります。

 

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

総資産は、前連結会計年度末比7,465百万円減少の128,161百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末比5,004百万円減少の32,375百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末比2,461百万円減少の95,786百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の当社グループの経営成績は、売上高90,510百万円(前連結会計年度比7.7%増)、営業利益8,928百万円(前連結会計年度比15.1%増)、経常利益9,154百万円(前連結会計年度比4.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,060百万円(前連結会計年度比27.6%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

国内ベルト事業の売上高は28,138百万円(前連結会計年度比2.8%増)、セグメント利益は8,043百万円(前連結会計年度比0.1%減)となりました。

海外ベルト事業の売上高は48,595百万円(前連結会計年度比10.6%増)、セグメント利益は3,285百万円(前連結会計年度比54.7%増)となりました。

建設資材事業の売上高は8,102百万円(前連結会計年度比10.9%増)、セグメント利益は703百万円(前連結会計年度比19.4%増)となりました。

その他の売上高は5,674百万円(前連結会計年度比4.9%増)、セグメント利益は285百万円(前連結会計年度比35.8%増)となりました。

 

②  キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して、収入が4,175百万円減少し、7,751百万円の収入となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益が2,385百万円増加したものの、投資有価証券売却益が2,379百万円、法人税等の支払額が2,270百万円それぞれ増加したことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出が957百万円増加し、3,622百万円の支出となりました。主な要因は、投資有価証券の売却による収入が2,299百万円増加したものの、有形固定資産の取得による支出が1,947百万円、定期預金の預入による支出が1,081百万円それぞれ増加したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出が1,226百万円減少し、8,242百万円の支出となりました。主な要因は、自己株式の取得による支出が1,228百万円増加したものの、配当金の支払額が1,126百万円、長期借入金の返済による支出が900百万円それぞれ減少したことによるものです。

営業、投資、財務の各活動によるキャッシュ・フローの合計額に為替換算差額88百万円を減算し、現金及び現金同等物の減少額が4,201百万円となり、これに期首残高35,045百万円を加算した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は30,843百万円となりました。

 

③  生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

国内ベルト事業

27,074

7.9

海外ベルト事業

33,434

10.4

建設資材事業

4,282

104.2

その他

2,335

5.4

合計

67,125

12.4

(注)1  金額は、販売価格によっております。

2  上記の金額には、外注製品受入高は含まれておりません。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

国内ベルト事業

31,799

4.4

2,794

6.0

海外ベルト事業

48,677

9.6

3,750

2.2

建設資材事業

9,756

15.7

3,462

△27.2

その他

830

44.4

93

125.2

合計

91,064

8.6

10,101

△9.0

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

国内ベルト事業

28,138

2.8

海外ベルト事業

48,595

10.6

建設資材事業

8,102

10.9

その他

5,674

4.9

合計

90,510

7.7

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①  財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)  財政状態

当連結会計年度末は、現金及び預金の減少等により流動資産が2,818百万円、投資有価証券の減少等により固定資産が4,646百万円それぞれ減少したことから、総資産は前連結会計年度末比7,465百万円減少の128,161百万円となりました。

負債は、未払法人税等の減少等により流動負債が1,962百万円、繰延税金負債の減少等により固定負債が3,041百万円それぞれ減少したことから、前連結会計年度末比5,004百万円減少の32,375百万円となりました。

純資産は、利益剰余金が2,954百万円増加したものの、その他有価証券評価差額金の減少等によりその他の包括利益累計額が4,505百万円減少した結果、前連結会計年度末比2,461百万円減少の95,786百万円となりました。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の72.4%から74.7%に上昇しました。

 

前連結会計年度との比較は下記のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

総資産額

(百万円)

135,627

128,161

△7,465

純資産額

(百万円)

98,247

95,786

△2,461

自己資本比率

(%)

72.4

74.7

2.3

1株当たり純資産額

(円)

3,463.30

3,403.14

△60.16

 

2)  経営成績

イ  売上高

売上高は、前連結会計年度と比べ7.7%増加の90,510百万円となりました。

国内ベルト事業の売上高は、前連結会計年度と比べ2.8%増加の28,138百万円となりました。自動車部品分野では、新車向けの販売は前連結会計年度並みに推移し、補修市場向けにおいてはトラック用の交換需要が旺盛であったため、自動車部品分野全体としては売上高が増加しました。

産業機械分野では、伝動ベルトにおいては、射出成形機メーカーやロボットメーカーなどの一部ユーザーで生産が増加したため、販売が順調に推移しました。搬送ベルトにおいては、重量物搬送用のゴムコンベヤベルトの販売が好調を維持し、食品工場向け樹脂コンベヤベルトの販売も増加しました。一方、合成樹脂素材においては、液晶製造装置用の販売が低調でしたが、産業機械分野全体としては売上高が増加しました。

海外ベルト事業の売上高は、前連結会計年度と比べ10.6%増加の48,595百万円となりました。自動車部品分野では、中国及び米国において四輪車向け電動ユニット(EPSなど)駆動用ベルトの販売が好調でした。また、インドにおいても電動二輪車向け後輪駆動用ベルトの販売が好調でした。一方、米国において多用途四輪車の生産調整の影響で販売が低調でしたが、自動車部品分野全体としては売上高が増加しました。

産業機械分野では、農用市場においては、収穫機械用の補修部品交換需要の拡大と新製品の投入が寄与し、販売が好調でした。一方、中国でのその他の補修市場向けにおいては、景気低迷による市中在庫の調整の影響を受け販売が低調でしたが、産業機械分野全体としては売上高が増加しました。

建設資材事業の売上高は、前連結会計年度と比べ10.9%増加の8,102百万円となり過去最高となりました。建築防水向けでは、施工現場の人手不足の影響を受け、売上高が減少しました。土木遮水向けでは、廃棄物処分場などの超大型の工事物件が寄与し、売上高が増加しました。また、2023年2月に事業を譲り受けた土木防水向けでは、大型公共工事物件の受注増により、売上高が増加しました。

その他の売上高は、前連結会計年度と比べ4.9%増加の5,674百万円となりました。その他には、エンジニアリング ストラクチュラル フォーム、電子材料、仕入商品などが含まれております。電子材料分野では、データセンター向けの大口受注や国内外での新規顧客開拓により売上高が増加しました。

 

ロ  売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前連結会計年度と比べ6.8%増加の62,416百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度と比べ7.7%増加の19,165百万円となり、営業費用全体では前連結会計年度と比べ7.0%増加の81,581百万円となりました。

 

ハ  営業外損益

営業外損益は、前連結会計年度の1,845百万円の収益(純額)に対し、当連結会計年度は225百万円の収益(純額)となりました。

金融収支が、前連結会計年度の800百万円の収益(純額)に対し、当連結会計年度は878百万円の収益(純額)と改善したものの、その他営業外損益項目は前連結会計年度の1,044百万円の収益(純額)から当連結会計年度は652百万円の損失(純額)と減少しました。

この結果、経常利益は前連結会計年度と比べ4.7%減少の9,154百万円となりました。

 

ニ  特別損益

特別損益は、前連結会計年度の681百万円の利益(純額)に対し、当連結会計年度は3,518百万円の利益(純額)となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度と比べ23.2%増加の12,673百万円となりました。

 

ホ  親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ27.6%増加の9,060百万円となりました。

これにより、1株当たり当期純利益は前連結会計年度の250円40銭に対し、当連結会計年度は320円25銭となりました。

 

3)  経営成績に重要な影響を与える要因等

当社グループは、自動車産業、一般産業、農業機械産業、情報機器関連産業、建築・土木産業への売上高がグループ全体売上高に対して大きな割合を占めていることから、これらの産業は環境の変化も大きく、また、競争も激しいため常に厳しい経営環境と言えます。

当社グループの経営に影響を与える主な要因としては、国内・海外の市場動向、為替動向、資材費の動向、諸外国の政策方針に伴う輸出入規制の動向などがあげられます。

こうした中でも、当社グループは、グローバル市場における競争に勝ち残っていくとともに、財務基盤を強化し、ユーザーニーズに対応した高機能、高精密、高品質な製品を提供できるものづくりを目指し、「品質を作り、品質を売る」という創業の精神のもと、グループ全体の強固な経営基盤を確立すべく、取り組んでいきます。

経営環境の変化に対応できるよう、常にムダを省き、合理化、生産性向上を推進し、厳しい環境下でも利益が確保できる体質を構築していきます。

また、当社グループは海外との取引が約半分を占めることから、計画段階での想定レートを厳しく設定し、経営に大きな影響が及ばないよう配慮して取り組んでいます。さらに、海外との取引上の規制等の問題については、グループの現地法人との定期的な会合等を通じて、情報共有に努めています。

 

4)  経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2  事業の状況  1  経営方針、経営環境及び対処すべき課題等  (4) 目標とする経営指標」に記載している中期3か年計画『'24中期経営計画』の1年目となる2024年度の達成・進捗状況は以下のとおりです。

 

2024年度

 

計画

実績

計画比

売上高

885億円

905億円

20億円

(102.3%)

営業利益

90億円

89億円

△1億円

(98.7%)

DOE

5.4%程度

5.4%

0.0ポイント

1株当たり配当金

180円

186円

6円

 

5)  セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

〔国内ベルト事業〕

自動車部品分野では、新車向けの販売は前連結会計年度並みに推移し、補修市場向けにおいてはトラック用の交換需要が旺盛であったため、自動車部品分野全体としては売上高が増加しました。

産業機械分野では、伝動ベルトにおいては、射出成形機メーカーやロボットメーカーなどの一部ユーザーで生産が増加したため、販売が順調に推移しました。搬送ベルトにおいては、重量物搬送用のゴムコンベヤベルトの販売が好調を維持し、食品工場向け樹脂コンベヤベルトの販売も増加しました。一方、合成樹脂素材においては、液晶製造装置用の販売が低調でしたが、産業機械分野全体としては売上高が増加しました。

以上の結果、当セグメントの売上高は28,138百万円(前連結会計年度比2.8%増)、セグメント利益は8,043百万円(前連結会計年度比0.1%減)となりました。

また、セグメント資産は63,439百万円(前連結会計年度比4.4%減)となりました。

 

〔海外ベルト事業〕

自動車部品分野では、中国及び米国において四輪車向け電動ユニット(EPSなど)駆動用ベルトの販売が好調でした。また、インドにおいても電動二輪車向け後輪駆動用ベルトの販売が好調でした。一方、米国において多用途四輪車の生産調整の影響で販売が低調でしたが、自動車部品分野全体としては売上高が増加しました。

産業機械分野では、農用市場においては、収穫機械用の補修部品交換需要の拡大と新製品の投入が寄与し、販売が好調でした。一方、中国でのその他の補修市場向けにおいては、景気低迷による市中在庫の調整の影響を受け販売が低調でしたが、産業機械分野全体としては売上高が増加しました。

以上の結果、当セグメントの売上高は48,595百万円(前連結会計年度比10.6%増)、セグメント利益は3,285百万円(前連結会計年度比54.7%増)となりました。

また、セグメント資産は57,876百万円(前連結会計年度比0.0%増)となりました。

 

〔建設資材事業〕

建築防水向けでは、施工現場の人手不足の影響を受け、売上高が減少しました。土木遮水向けでは、廃棄物処分場などの超大型の工事物件が寄与し、売上高が増加しました。また、2023年2月に事業を譲り受けた土木防水向けでは、大型公共工事物件の受注増により、売上高が増加しました。

以上の結果、当セグメントの売上高は8,102百万円(前連結会計年度比10.9%増)となり過去最高となりました。セグメント利益は703百万円(前連結会計年度比19.4%増)となりました。

また、セグメント資産は3,662百万円(前連結会計年度比29.5%増)となりました。

 

〔その他〕

その他には、エンジニアリング ストラクチュラル フォーム、電子材料、仕入商品などが含まれております。

電子材料では、データセンター用の基板加工品の大口受注や、半導体向けの導電性ペースト材の国内外での新規顧客開拓により、売上高が増加しました。

その他の売上高は5,674百万円(前連結会計年度比4.9%増)、セグメント利益は285百万円(前連結会計年度比35.8%増)となりました。

また、セグメント資産は5,991百万円(前連結会計年度比8.7%減)となりました。

 

(注)  上記の各セグメントにおける売上高は外部顧客への売上高を記載しており、セグメント利益はセグメント間取引消去前の金額を記載しております。

なお、セグメント利益は、営業利益ベースの数値であります。

 

②  キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1)  キャッシュ・フローの状況

「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1) 経営成績等の状況の概要  ②  キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

2)  資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金及び設備資金については、自己資金又は金融機関からの借入により資金調達することを基本とし、このうち、借入による資金調達に関しては、運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は長期借入金で調達しております。一方で、キャッシュ・マネジメント・システムの導入によりグループ内での余剰資金の有効活用を図っております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は6,069百万円であります。また、現金及び現金同等物の残高は30,843百万円となっております。

 

③  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は適正な連結財務諸表を作成する責任を有しており、以下の確認を行っております。

また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表  注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

a.有価証券

投資その他の資産に計上している有価証券は、当社の保有目的に基づき、子会社・関連会社株式及びその他有価証券に適切に分類し、会計処理しております。減損処理にあたっては、その他有価証券で上場株式について、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理の対象とし、30%から50%までのものについては当該会社の資産状況、金額の重要性等を勘案して必要と認められる額を減損処理の対象としております。また、非上場株式については、純資産額が50%以上下落した場合に減損処理の対象としております。

 

b.棚卸資産

棚卸資産は、棚卸資産の評価に関する会計基準に基づき適切に評価しております。

 

c.営業債権

営業債権は、貸借対照表日以前の売上から生じた債務者に対する正当な債権であり、貸借対照表日後に出荷したもの、委託又は試用販売のために出荷したもの等に係る債権は含めておりません。また、貸借対照表日後に発生すると予想される貸倒損失に対して適正な引当金を計上しております。

 

d.繰延税金資産

適正な法人税等及び法人税等調整額を計上しております。繰延税金資産に関しては将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。

 

e.固定資産の減損

固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、回収可能価額に基づき減損の判定を行っております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は「高機能、高精密、高品質な製品の提供を通して社会に貢献する」を経営基本方針に掲げ、新規技術の開発、周辺技術の研究を通じ基盤技術の一層の充実を図り、総合的かつ多角的なシミュレーション技術を積極的に活用し、多様で変化の速いユーザーニーズにタイムリーに対応するとともに、環境負荷低減、高生産性、さらには経営基本方針に謳われた高機能、高精密、高品質な製品開発を目指して、材料、設備、工法、評価方法等を含めたトータルな研究開発活動を行っております。

現在、研究開発は当社の研究開発部本部、技術本部並びに各グループ会社の開発部門との連携により推進されております。また、大学や研究機関との共同研究並びに他社との共同開発を密接な連携・協力のもとに推進し、先進技術の研究開発を効果的に進めております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は3,371百万円であります。

なお、研究開発費については、各部門に配分できない基礎研究費用730百万円が含まれております。

 

(1) 国内ベルト事業

主に当社及び三ツ星ベルト技研㈱が中心となって、これまで培ってきたベルトに関する技術をベースとして高機能を追求した伝動、搬送システムについて研究開発を行っております。当連結会計年度の主な研究開発成果としては、四輪車向け電動ユニット(EPSなど)駆動用タイミングベルト、電動二輪車向け後輪駆動用タイミングベルト、多用途四輪車・パーソナルモビリティ向けベルト、農業機械用高負荷対応ベルト、省エネVベルト『e-POWER®NX』等をあげることができます。

当セグメントに係る研究開発費は2,144百万円であります。

 

(2) 海外ベルト事業

国内ベルト事業と同じく、主に当社及び三ツ星ベルト技研㈱が中心となって研究開発を行っております。当セグメントに係る研究開発費は、国内ベルト事業に係る研究開発費に含まれております。

 

(3) 建設資材事業

当連結会計年度の主な研究開発成果としては、ファストバック防水工法、アクリルゴム系塗膜防水材等をあげることができます。

当セグメントに係る研究開発費は114百万円であります。

 

(4) その他

当連結会計年度の主な研究開発成果としては、半導体向け導電性ペースト、社内生産ラインの自動化装置等をあげることができます。

当セグメントに係る研究開発費は382百万円であります。