第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「創意あふれる技術を結集して、健康的で快適な人間生活に寄与する商品をつくり出し、当社に関係するすべての人々により大きな満足を与えることをめざす」ことを企業使命とし、以下の事項を経営理念に据え、グループの総力を尽くしてこれらを実現させながら企業価値の増大を図るとともに、結果としてお客様、株主、従業員、その他のステークホルダーの信頼を得て、経済・社会の発展に貢献してまいります。

① 法令(行政上の通達・指針等を含む)、就業規則及び企業倫理を遵守する。

② 独自の技術を基盤に人々の生活に役立つ商品を多面的、積極的に開発し提供していく。

③ 高品質を徹底して追求することによってオリジナルブランド「オカモト」への信頼感を高め、国内・国際市場で強い競争力を維持していく。

④ 可能なかぎりの合理化努力を続け、つねにユーザーやお客様に歓迎されるよい仕事を継続する。

⑤ 社内においては、協調を旨とし、全員一丸となって生き甲斐と潤いのある職場環境を創造していく。

 

(2) 目標とする経営指標

当社はROE(株主資本利益率:当期利益/株主資本)を世間一般の要求水準とされている8以上とすることを目標としております。過去の株価等の市場データに基づき、CAPM(資本資産評価モデル)により推計される当社の株主資本コストはこれを下回る水準ですが、中長期的に株主資本コストを上回るリターンを継続することによって企業価値の増大を目指してまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、原油価格や為替の変動及び海外発の不安が引き続きリスクとなっておりますが、上記の経営方針のもと更なる成長と事業基盤の拡大に努めるため、次の課題に重点的に取り組んでまいります。

①  産業用製品事業及び生活用品事業それぞれにおいて、社内の研究開発の推進に加えて、事業の継承や経営権の取得等を通じて事業の多角化を進めるとともに、これらの事業並びにグループにおける生産面及び販売面での一層の相乗効果を創出し、グループ全体の売上及び利益の向上を目指す。

②  原材料価格や為替の変動等による事業環境の変動に対応できるよう、固定費・経費の圧縮等を更に進めるとともに、研究開発センターを中心に長年培ってきた技術を生かして製造コストの削減を継続的に行い、効率的なモノづくりの強化に努め、更に、資材調達から物流までのサプライチェーンの最適化及び強化を進め、確たる利益を継続的に計上すべく体質を強化する。

③  品質の追求と顧客ニーズに合致した競争力のある高付加価値の新製品を市場に投入し続けていくために営業、工場が一体となって研究開発力の維持・向上を図ることで、ブランド力を強化し、中長期的に市場競争力を高めていく。

④  コンドームの製造・販売会社として、HIV/AIDSをはじめとするSTI(注1)予防啓発活動を積極的に展開し、環境問題や社会的要請への取り組みを強化し、サステナビリティ(持続可能な社会)の実現を目指す。

(注1)「STI」とは、「Sexually(性)Transmitted(感染)Infection(症状)」の略で、日本語では「性感染症」といいます。

⑤  製造現場での再生可能エネルギーの積極的な活用と更なる省エネの推進、生産性を更に改善させるための設備投資による廃棄物の削減、及び太陽光発電事業の維持発展等を通じて持続可能な成長を図る。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の見通しにつきましては、足元の国内経済は、食料品など非耐久財を中心とした物価高騰によって家計の節約志向が高まっているものの、所得環境は緩やかに改善され、堅調に推移するインバウンド需要、底堅い企業の設備投資への意欲もあり、景気は緩やかに持ち直しています。

しかしながら、国際情勢関連では、米国の通商政策動向が見通せないことから警戒感が強まっており、世界経済の景気後退、地政学的リスクの高まり、為替相場の不安定化などの可能性により、世界経済は以前にも増して不透明な状況が続いております。

このような状況のなか、製造業たる当社といたしましては、変動的な国際情勢に起因する市況悪化や長期化する原材料価格の高騰に対処し、利益向上を図るために、市場の需要を踏まえ、生産販売数量を増加させること、稼働効率を高めることは不可欠であると認識しております。そのためには、固定観念に囚われず、新素材・新技術の研究開発により新たな市場を開拓し需要を創出することや、少子高齢化社会に対応すべく工場設備の省人化を進めるなど生産体制を最適化することが、喫緊の課題であります。

産業用製品事業においては、主力であるプラスチック製品は、食品・飲料、消費財、自動車、電気・電子などの幅広い業界で製品の消費が世界的に増加しております。一方で、世界レベルでの温室効果ガス削減や環境負荷軽減の動きを踏まえた「脱プラスチック」の影響も重なり、社会的にも3R(Reduce、Reuse、Recycle)の推進が求められております。当社としてもこの状況に対応するために、環境負荷に配慮した新素材の研究やリサイクル素材の活用を視野に入れ、新たな機能性・用途の開発等により細かなニーズの獲得に努めてまいります。加えて、国内工場の一部では生産ラインから製品倉庫までを一気通貫したオートメーション化を進めており、コスト削減及び生産効率改善を推進しております。また、自動車内装材は、米国の関税政策の影響により先行きの不透明感は増しておりますが、あらゆる状況に柔軟に対応すべく、変わり続ける市場ニーズを的確に捉えた新製品の開発や積極的な販売戦略を展開してまいります。

生活用品事業においては、主力であるコンドーム市場は、訪日外国人によるインバウンド需要が活況化しておりますが、日本国内においては少子化の影響もあり、先行きが不透明な状況にあります。今後も、国内ではジェネレーションごとのマーケティング戦略を展開、新商品の上市や店頭での積極的な販促活動を行います。特にZ世代に関しては消費傾向の特性を理解し、効果的なアプローチ方法を図ってまいります。また海外では、引き続き技術力及びブランド力を強化し、現地文化・宗教観・倫理観に則した広告戦略として、ターゲットに沿った効果的なSNSマーケティグを展開することでマーケットシェア拡大に努めてまいります。

その他の生活用品は、既存製品のブランド力の強化を図りながら、近年の市場拡大で注目されているフェムテック分野の製品ラインアップ拡充や各種環境配慮商品の拡販など、多様化する消費者のニーズを踏まえた新製品の開発と新たな販路開拓や積極的な販売戦略に努めてまいります。

全社的には、引き続きサステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識し、創業以来の創意あふれる技術を結集し、健康的で快適な人間生活に寄与する製品を作り出すことで社会に貢献し、ステークホルダーの皆様により大きな満足を与えることを使命としたサステナビリティ基本方針を掲げて経営を推進してまいります。

環境配慮の面では、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー使用量とCO2排出量の削減や産業廃棄物の削減・縮小に取り組み、企業としての社会的責任を果たすべく活動してまいります。多種多様なリスクへの対応では、BCP対策として、各既存工場の自然災害対策を図るとともに、新しい生産・物流面の拠点とすべく2024年に着工した岡山工場・倉庫の稼働に向けた準備を進めてまいります。

また、これまでも行っていた人権尊重の取り組みを一層強化するために、2025年3月には「オカモトグループ人権方針」を策定いたしました。本方針に基づき、当社のパーパスである「モノづくりの可能性から、身近な『うれしい』を暮らしと社会に造り続ける。」を実現するため、事業活動にかかわる全ての人々の人権を尊重する取り組みに努めてまいります。

製造業として「安全は、全てに優先する」を理念とし、従業員の安全衛生の確保が企業活動の最重要基盤であると考え、多様な人材が闊達に働ける企業として、全てのステークホルダーが健全な社会生活を送れる企業体であり続けるよう持続的な成長を目指すコーポレート・サステナビリティを実現してまいります。

更に、幅広く株主の皆様の支持を得られるよう、資本コスト・株価を意識した経営に努め、持続的成長が期待できる分野への経営資源の重点配分や事業ポートフォリオの再構築により生産性の向上や収益力の強化を図ってまいります。加えて、サステナブルな企業として中・長期的な視点での企業価値の向上を実現するため、環境、社会、経済の持続可能性に配慮し、各ステークホルダーとの対話・協働と、ガバナンスやリスク管理体制の充実を図り、より透明性の高い経営を行うとともに、それらに関する情報の積極的な開示に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) サステナビリティ基本方針

当社は創業以来の創意あふれる技術を結集し、健康的で快適な人間生活に寄与する製品を作り出すことで、社会に貢献しステークホルダーの皆様により大きな満足を与えることを使命としております。

「身近な暮らしを科学する」をコーポレートスローガンとして掲げ、安全で高品質な製品の企画開発を通じ、新たな価値を創造しながら継続的な成長と持続可能な社会へ貢献することにより、コーポレート・サステナビリティを実現いたします。

また「モノづくりの可能性から、身近な「うれしい」を暮らしと社会に造り続ける」をパーパスとし、社会からの信用、信頼に堅実に応えながら、あたり前の暮らしの質を守り、革新し続け、社会のそして世界の役に立ち続けるために事業活動に取り組んでおります。

 

①  ガバナンス

当社はサステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による指示・監督を行っております。サステナビリティに係る事項は、代表取締役社長執行役員が統括しております。

組織体

開催頻度

役割

責任者

取締役会

月1回以上

取締役会は、サステナビリティ関連のリスクと機会に係る重点課題について、執行役員会経由で取組状況や目標の達成状況の報告を受け、その報告内容を監査し、対応策を指示します。

代表取締役  社長執行役員

(議長)

 

執行役員会

1回/月

執行役員会は、サステナビリティ委員会より報告を受けた検討内容につき、サステナビリティ関連事項が事業に与える影響について評価し、対応策の立案及び目標の設定を行い、達成状況を管理します。

代表取締役  社長執行役員(議長)

サステナビリティ委員会

1回/月

サステナビリティ委員会は、サステナビリティに係るESG重点課題が事業に与える影響について定期的に分析・評価を行い、識別したリスクの最小化と機会の獲得に向けた対応策を示し、サステナビリティ推進室を通じ社内各部署に指示を行うとともに、その対応策の達成状況を執行役員会に報告します。

代表取締役  社長執行役員

サステナビリティ担当役員(議長)

 

 

≪サステナビリティ委員会≫

サステナビリティ委員会は、取締役常務執行役員、関係部署の担当執行役員、関係部署の部長等によって構成されており、事業活動を通じて継続的な成長と、持続可能な社会へ貢献することを目的として、サステナビリティに係る経営課題に対する一元的な対応を推進しております。

今後といたしましては、温室効果ガス(Scope3)の把握に向けての検討やCSR調達方針の精査など、サステナビリティに係る課題について取り組みを進めてまいります。

2025年3月よりは、責任あるサプライチェーン調達や人権問題の検討等を円滑に推進していくことを視野に、調達部門の責任者である資材部長をサステナビリティ委員会のメンバーとして加えております。

 

役職

氏名

委員

取締役  常務執行役員

田中  祐司

委員

常務執行役員  システム戦略部・技術全般担当

田中  健嗣

委員

常務執行役員  医療品部・生活用品部担当

久米  孝之

委員

執行役員  人事部長

山﨑  実

委員

執行役員  経営管理室長

谷口  雄二

委員

執行役員  経理部長

細谷  久雄

アドバイザー

取締役  常勤監査等委員

髙島  寛

 

(注)サステナビリティ委員会のメンバーにつきましては、2025年3月31日時点での取締役及び関係部署の担当執行役員のみを記載しております。

 

当該事業年度におけるサステナビリティ委員会の具体的な検討内容は、以下のとおりです。

開催実績

12回

主な議題

・サステナビリティに関する考え方及び取り組みに係る開示について

・オカモトグループ人権方針についての検討

・人的資本、多様性に関する開示の検討

・連結子会社の規程類改訂について

・工場経費購買に関する内部統制の構築、評価について

・マテリアリティ(重要課題項目)設定の検討

・2024年CDP質問書回答について

・TCFDシナリオ分析について

・TCFD提言に準じた開示について

・政府で検討されている2026年からの排出量取引参加義務化について

・Scope3排出量算定の取り組みについて

・事業所から排出されている廃棄物の算定について

 

なお、サステナビリティ委員会において検討しました具体的な審議内容及びその進捗状況につきましては、2024年度は取締役会(8回)及び執行役員会(8回)に報告しております。

 

≪サステナビリティに係る所管部署≫

サステナビリティ推進室は、サステナビリティ委員会の下部組織として、サステナビリティ委員会の指示・命令に従いサステナビリティに関する情報収集、社内各部署のサステナビリティに係る教育、取り組み状況の確認や指示目標の達成数値を集計し、サステナビリティ委員会に報告しております。

当社のサステナビリティに係るガバナンス体制図は、以下のとおりです。

 


 

 

②  リスク管理

≪サステナビリティ関連リスクを識別・評価・管理するプロセス≫

当社では、気候変動を含むサステナビリティ課題が当社にもたらすリスク及び機会等について、サステナビリティ委員会が主体となって議論を行っております。

サステナビリティ推進室は、サステナビリティ委員会の具体的な指示・命令に従い、社内各部署のサステナビリティに係るリスク及び機会等に関する教育、指導を行うとともに情報を収集・集約し、サステナビリティ委員会へ報告いたします。

サステナビリティ委員会は、識別されたサステナビリティ関連リスクについてリスクの潜在的な大きさを総合的に判断・評価した上で、優先度を議論しその結果を執行役員会に報告いたします。

執行役員会は、報告を受けたサステナビリティ関連事項が事業に与える影響について評価し、内容を精査した上で取締役会に報告いたします。

取締役会は、サステナビリティ関連のリスクと機会に係る重点課題について、その取り組み状況や目標達成状況の報告を受け、その報告内容を監査し、対応策を指示いたします。

事業におけるリスク及び機会は、当社の課題や事業における環境側面の結果などを総合して特定し、今後の計画の中で管理し、当社全体で取り組んでまいります。

 

③  戦略

a. 組織が識別した、短期・中期・長期の気候変動リスク及び機会

当社は気候変動に係るリスク及び機会の分析にあたっての影響度と時間軸の定義につきましては、下記のとおりです。

影響度

定義

当社の信用や事業戦略への影響または財務影響が大きいと想定される

当社の信用や事業戦略への影響または財務影響が中程度と想定される

時間軸

「2050年の社会像」を想定

 

 

b. 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響

当社は、気候変動が当社に与えるリスク・機会及び事業に与えるインパクトの評価とその対応策構築を目的として「平均気温が1.5℃」での移行リスク・物理的リスクと機会、「4℃上昇」で物理的リスクと機会の「シナリオ分析」を行いました。

それぞれの平均気温上昇時に移行リスク・物理的リスクと機会において事業インパクトを特定し、2050年までの対応策実現に向けて検討を進めております。

当社のシナリオ分析に係る定義につきましては、下記のとおりです。

シナリオ

概要

1.5℃シナリオ

2050年に温室効果ガス排出量(GHG排出量)をネットゼロとするため、炭素税や排出量取引、プラスチック規制など、脱炭素に向けた政策が強化されます。それに伴い、温室効果ガス削減取り組みの要請、バージンプラスチックから再生・バイオプラスチックへの移行、低炭素製品等の需要拡大が想定されます。なお、気温上昇が抑えられることから、物理的な影響は大きくないことが予想されます。

4℃シナリオ

化石燃料への依存により経済が発展し、気候変動に対する政策は十分に講じられず、脱炭素技術はあまり進展しません。一方で、気温上昇に伴い、空調設備や熱中症対策の必要性が高まるとともに、洪水などの気象災害の激甚化が生じ、物理的な被害が拡大することが予想されます。

 

※参考資料  1.5℃シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)

※参考資料  4℃シナリオ   :IPCC(気候変動に関する政府間パネル)

 


 

c.2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえた、組織戦略のレジリエンス

当社は、組織戦略のレジリエンスを検証するにあたり、リスクごとの事業インパクト分析を実施し、その結果を基にシナリオ分析の検討を進めております。また、その対応策を分析し、部門別の重要施策やサステナビリティ経営の基本戦略などに活用することで、レジリエンス保持に努めてまいります。

 

 

④  指標及び目標

気候関連のリスク対応において、温室効果ガス排出量の削減が重要であることと認識しております。まずは、サステナビリティ関連リスクのうち気候関連リスク・機会を管理するため、温室効果ガス(Scope1.2)排出量の把握を重要な指標と定め、中長期的な温室効果ガス排出量削減を目指し、オカモトグループ各社における温室効果ガス排出量の把握を実施いたしました。今後といたしましては、温室効果ガス(Scope3)の把握に向けて、検討を進めてまいります。

 

 

対象及び範囲

地域

国内・海外を含む全エリア

事業範囲

全工場及び全事業所

企業範囲

オカモト株式会社及び連結子会社

 

 

 

温室効果ガス把握内容

Scope1

自社の燃料使用等による直接排出

Scope2

自社が購入した電気などによる間接的な排出

 

 

                                                                            単位:t-CO2

2023年度実績

排出量

Scope1                    単体

26,384

Scope2  ロケーション基準  単体

45,107

Scope2  マーケット基準    単体

42,014

 

                                                                            単位:t-CO2

2024年度実績

排出量

Scope1                    単体

27,090

Scope2  ロケーション基準  単体

44,764

Scope2  マーケット基準    単体

41,206

 

                                                                            単位:t-CO2

2024年度実績

排出量

Scope1                    連結

35,012

Scope2  マーケット基準    連結

64,865

 

注)・連結については連結決算における連結範囲18社について、マーケット基準にて温室効果ガス(Scope1.2)排出量の算出をしております。

・数値は自社での算出によるものであり、第三者機関による検証を受けた保証された数値ではありません。

政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。加えて、2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すこと、さらに50%削減の高みに向けて挑戦を続けていくことを表明しております。

当社といたしましても、政府が掲げる目標の達成に寄与できるよう、オカモトグループ各社における温室効果ガス排出量削減に向けて対応を進めてまいります。

工場におけるエネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの導入、環境に配慮した商品開発、廃棄物の削減、リサイクルの強化等について検討を続けてまいります。

これらの検討を進めることが、企業の存在価値を更に高めるとともに、生産の効率化、製造業としての基盤強化、ひいては収益の向上につながると考えております。

 

(2) 人的資本、多様性に関する開示

①  戦略

人材育成方針

当社は、「身近な暮らしを科学する」をコーポレートスローガンとして掲げております。

企業使命として、創意あふれる技術を結集して、健康的で快適な人間生活に寄与する商品をつくり出し、当社に関係するすべての人々により大きな満足を与えることを目指しております。

 

2024年2月1日の創立90周年を機に、これからも身近な暮らしを科学し続けていくために、私たちの社会での役割や存在意義を議論し、当社パーパスを策定し、明文化いたしました。モノづくりへのこだわりと強い想い、続けることへのこだわりを込めております。

 

<パーパス>

「モノづくりの可能性から、身近な「うれしい」を暮らしと社会に造り続ける」

 

パーパス実現のため、社会に貢献し続ける人材を育成いたします。

さらに当社は、人間重視の経営を目指し、個を尊重し、多様な人材が闊達に働ける企業を目指すとともに、働く人、その家族が健全な社会生活を送れる企業体であり続けてまいります。

特に対話を重視する組織風土醸成のため、社長自ら多くの社員との「座談会」の機会を持ち、各職場における課題から当社の世の中における現在地、強み弱みを共有し、未来へどの様にアプローチしていくべきかを対話し続けております。

 

人権方針の策定

これまでも「人権に対する基本的な考え方」に則り、人権尊重に取り組んでまいりましたが、取り組みをより一層強化するため、サステナビリティ委員会での議論を経て、2025年3月13日の取締役会において承認を受け「オカモトグループ人権方針」を策定いたしました。

今後、責任あるサプライチェーンの構築を目指し、人権尊重の取組みを進めるために、「人権デュー・デリジェンス」を行うこと、次に「救済へのアクセスを整備すること」を検討しております。まずは、策定した人権方針を当社の取引先(サプライヤー)に周知し、ご賛同いただき、人権尊重への取り組みをお願いしてまいります。

当社の事業活動に関わるすべての人々の人権を尊重し、その取り組みを推進していくことが重要だと考えております。

 

②  指標及び目標

人的資本の活用と多様性に関して、指標及び目標を次の通り掲げております。

指標

目標

実績 (当連結会計年度)

女性管理職比率

2033年まで10%以上

9.9

男性の育児休業取得率

さらなる水準向上を目指します。

61.9

男女間賃金格差の縮小

男女間賃金格差の縮小に向けて、賃金や雇用管理のあり方を見直すための視点や性別を問わず社員の活躍を促進することを目指します。

61.5

 

※男性の育児休業取得率の目標を2026年までに35%以上としていましたが、2025年の実績が61.9%でしたので、上記の通り修正いたしました。

※各指標に関する目標及び実績は、当社及び国内子会社の目標及び実績になっております。

 

 

社内環境整備方針

当社は、様々な国で、様々な事業を展開していることに加え、事業領域や市場ニーズは急速に多様化が進んできておりますので、幅広く多様な人材を獲得するため、定期採用に加えて、経験者採用活動を実施いたします。過去5年間の定期採用者に占める女性割合は24.4%となっております。また、外国籍の社員も採用いたしました。引き続き、女性採用率向上と採用の国際化を目指してまいります。

また、採用した社員のスキル向上が組織及び企業としての競争力の向上に資することから、積極的かつ多様な社内教育を実施しております。取締役から新入社員まで、階層別の研修を実施しているほか、座学形式・討議形式・実践形式等の対面研修、WebによるE-learning研修等、様々なカリキュラムを行うことに加え、指導面接制度等により目標設定と進捗及び結果評価を実施し、目標遂行者の育成及び指導者の育成を行ない、実質的な人材の育成に力を入れております。

さらに、当社は、製造業として「安全は、全てに優先する」を理念とし、従業員の安全衛生の確保が企業活動の最重要基盤であると考え、上記「理念」の下、「安全衛生方針」、「安全六原則」及び「行動六指針」を定めて活動しております。

 


 

特に職場においては、リスクアセスメントを実施し、事故やケガの予防活動に注力するとともに、心身の健康の維持・増進のため、健康に関する啓発活動と定期健康診断を実施継続いたします。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
 

(1) 原材料の調達に関するリスク

当社グループの製品群の多くは、石油など一次産品をもとにした原材料を加工したものが多く、当社の品質要件を満たす原材料を安定して調達できること、安価であることなどを考慮し、仕入れ業者を分散して調達しております。しかしながら、原油をはじめとする原材料価格の高騰や地政学的リスク、調達先の事業縮小・撤退により安定調達が困難になるリスク等が考えられます。以上のことから、安定的に調達できない場合や調達コストが著しく上昇する場合には、業績に影響を与える場合があります。

(2) 季節要因のリスク

当社グループの製品群には、カイロ、除湿剤等の季節的要因、特に冷夏・暖冬、低降水量・低降雪量といった天候の影響を受けやすい製品があります。機動的な生産、在庫の最適化に努めておりますが、これらの季節的要因については予測が困難であるため、その変動によって当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外展開に伴うリスク

当社グループは、事業をグローバルに展開しておりますが、これに伴い以下の場合には当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

①  為替変動リスク

当社グループは外貨建取引を行っておりますが、それらは為替レート変動による影響を受けることがあります。為替予約等による相場変動のリスクヘッジを行っているものの、急激な為替レートの変動は、業績に影響を与える可能性があります。

②  地政学的リスク

当社グループではアジア及び北米地域に事業拠点を開設するとともに、製品や原材料の輸出入などグローバルに取引を展開しておりますが、昨今の国際情勢で経済格差が顕著な地域や一部には政治的な緊張感が高まっている地域があり、こうした地域で、政治変動・経済情勢の変化・法改正等により、著しい景気の悪化、労働力不足やストライキのほか、テロ、戦争などが発生した場合、当社グループの経営成績や財政状況などに影響を及ぼす可能性があります。

③  各国の経済通商政策リスク

当社グループは、事業をグローバルに展開しており、各国政府の経済通商政策の影響を受ける可能性があります。具体的には、免税であった輸出品が関税対象になる場合、あるいは元々関税対象だったがその関税が大幅に上昇する場合等のリスクがあります。また、直接的な関税賦課の影響に加え、その影響を受ける対象品の需要が減少することや、世界的に物品の流通に障害が出るなどの間接的な影響も想定されます。

このようなことから、特定の国・地域における経済政策の急激な変更、あるいは保護主義的な措置が導入された場合、当社の事業活動や収益性、投資計画に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 地震等自然災害及び感染症によるリスク

当社グループは、全社的に突発的な自然災害、不慮の事故の発生等に備えて、損害保険及び火災保険等により影響を最小限度に止めるよう努めておりますが、当社の産業用製品事業の中核を担う静岡工場は大規模地震発生の可能性を指摘されている地域に位置し、また、福島工場は「令和元年東日本台風」による浸水被害が発生した地域に位置しており、これらを含めた自然災害が発生した場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、感染症の発生及び拡大は、原材料の継続的な調達、生産体制の維持、市場への製品の安定供給やサプライチェーンに著しい支障をきたす場合があり、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 気候変動に関するリスク

当社グループでは、気候変動により気温上昇が進んだ場合に考えられる台風・集中豪雨等の異常気象や自然災害によって工場等が損害を受けた場合は、復旧のためのコスト負担などが経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、サプライチェーンが異常気象や自然災害によって損害を受けた場合も、原材料供給の停止などが生産活動に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会に向けた各種規制の強化、炭素税の導入など移行時の環境変化により、今後の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 製品の品質維持とブランドの毀損リスク

当社グループは、高い技術力に根差した高品質の製品を供給することにより築き上げてきた企業ブランド及び商品ブランドの維持・向上が経営上の重要課題であると認識しております。特に品質管理体制には万全を期しておりますが、予想を超える品質トラブルが発生すれば、売上の減少や企業ブランド価値の低下等経営成績や財政状態に支障をきたす懸念があります。また、従業員によるコンプライアンス違反やSNS等における根拠のない不正確な情報の拡散などが発生した場合、当社のブランドイメージが毀損し、消費者・取引先からの信頼を損なう可能性があります。その結果、当社グループの経営成績や財政状況などに影響を及ぼす可能性があります。

(7) 情報漏洩のリスク

当社グループは、事業活動において顧客等の個人や信用に関する情報を入手し、他企業等の情報を受け取ることがあります。これらの情報の秘密保持には細心の注意を払い、情報の漏洩が生じないよう最大限の管理に努めておりますが、不測の事態により情報が外部に流出する可能性があります。この場合には、損害賠償等の多額な費用負担が発生して、事業活動やブランドイメージに影響が及ぶ可能性があります。また、事業上の重要機密が第三者に不正流用されるおそれもあり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 法律・規制・訴訟等のリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国において、展開している事業に関連する様々な法律や規制の適用を受けております。今後、国内外における予期せぬ法律や規制の変更、新たな法律や規制により当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループはコンプライアンス(法令遵守)の徹底を図っておりますが、国内外の事業活動に関連して重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に労務関係では、当社グループは労働法規に則った適正な管理体制を構築し従業員の労働環境の向上に努めておりますが、長時間労働、職場でのハラスメント及び雇用形態における不均衡などのコンプライアンスに抵触する問題が発生した場合、行政指導や法的措置を受けるリスク、あるいは従業員のモチベーションや定着率の低下を招く可能性があります。

(9) 固定資産の減損リスク

①  産業用製品事業の減損リスク

当社グループの産業用製品事業が有する固定資産は、主として取引先の生産工程で使用されるなど事業者向けの製品を製造する設備であります。これら設備は事業者向けのため、製造設備の構造的規模あるいは投資金額が大きくなる傾向があり、短期的な回収より長期的な視点で設備投資を実施する場合があります。その場合、将来キャッシュ・フローを短期的に生成することができず減損損失に至る場合があります。

②  生活用品事業の減損リスク

当社グループの生活用品事業が有する固定資産は、主として消費者向けの製品を製造する設備であります。当社グループの一部製品は、他社と競合する製品が多数あり、その年の事業環境あるいは販売動向等、市場での商圏変動や販売価格変動等が起こりやすい環境下にあります。これにより収益性の低下が生じた場合、減損損失の兆候を認識し将来キャッシュ・フローを生成することができなかった場合は減損損失に至る場合があります。

(10) 知的財産侵害に関するリスク

当社グループは、技術ノウハウの蓄積と知的財産権の保護に努めておりますが、第三者による知的財産権の侵害を効果的に防止できないことがあります。また、当社グループの製品又は技術が第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、その訴えが認められた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 人材確保のリスク

当社グループの事業活動を継続的かつ安定的に展開していくためには、高い専門性と優れたマネジメント能力を有する人材の確保及び育成が不可欠であります。特に、研究開発、品質管理、海外事業などの分野においては専門性の高い人材の重要度が増しております。また、地方における人材獲得競争の激化、就労環境に対する意識の変化などにより、現場労働者の必要な人員の確保、育成が困難となる可能性があります。

今後も国内においては労働人口の減少が予測されますが、これらの人材の採用・定着・教育が計画通りに進まない場合、製品開発、生産体制の維持・拡充、及び営業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、働き方改革やダイバーシティ推進に対する対応が遅れた場合、企業の魅力度や従業員満足度の低下を招き、人材流出や採用競争力の低下につながる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、資源・原材料価格の高騰などによる継続的な物価高で一部に足踏みがみられるものの、堅調な企業業績やインバウンド需要の増加、雇用・所得環境の改善により個人消費に持ち直しの動きがみられることなどから、総合的には緩やかに回復しております。一方で、国際情勢では米国の通商政策の行方の不透明性や地政学リスクの高まり及び中国経済の先行きの懸念、国内では物価高による消費者マインドの悪化や人手不足による供給の制約などの可能性から、先行きが不透明な状況が続いております。

このような経営環境のなか当社グループは、各セクションで事業戦略の遂行を進め競争力の強化に努めました。営業部門では引き続き原材料高を鑑みた価格の適正化を図りつつ、国内外での積極的な活動によりシェアアップに取り組んでまいりました。生産・管理部門では、原材料の安定的な調達や生産効率の更なる改善によるコスト縮減を進めてまいりました。

また、理研コランダム株式会社の完全子会社化の実施、岡山県井原市の新工場・物流倉庫建設の着工、生産・資材管理新システムの導入に向けた準備など、将来を見据えた施策を着実に実行してまいりました。

結果、当連結会計年度における売上高は109,107百万円(前年同期比2.8%増)となりました。営業利益は8,701百万円(前年同期比13.3%減)、経常利益は9,764百万円(前年同期比19.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,674百万円(前年同期比9.7%減)となりました。

 

a.  経営成績

  セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

  (産業用製品)

一般用フイルムは、価格改定を実施しましたが市況が低迷し売上微減となりました。工業用フイルムは、滞留していた市場在庫も減少し、ステッカー用が好調で売上増となりました。建材用フイルムは、価格改定の実施に加え新規商圏の獲得があり売上増となりました。多層フイルムは、食品包装用、医療用及び工業材料用が堅調で売上増となりました。壁紙は、住宅着工件数の低迷が継続し売上減となりました。農業用フイルムは、価格改定の実施に加え新商品の発売があり売上増となりました。自動車内装材は、中国での日系メーカー生産減少の影響はあったものの、北米市場の好調が継続し売上増となりました。フレキシブルコンテナは、石油化学向けの需要が減少し売上減となりました。粘着テープは、包装用テープが堅調に推移し売上増となりました。工業テープは、眼鏡用及び車輛用が好調に推移し売上増となりました。食品衛生用品のうち、ラップはスーパーマーケット及び外食関連の新規獲得があり売上増となりました。食品用手袋は、価格競争が激しく売上減となりました。食品用脱水・吸水シートであるピチット製品は、外食向けの好調に加え食品加工向けも堅調で売上増となりました。研磨布紙等は、半導体向けの研磨材が得意先の在庫調整により売上減となりました。

以上により、当セグメントの売上高は74,628百万円(前年同期比5.1%増)、セグメント利益は1,338百万円(前年同期比38.4%減)となりました。

 

  (生活用品)

コンドームは、新商品の発売及びインバウンド顧客増加により売上増となりました。また、海外は中国景気低迷の影響を受けるも売上は微増でした。浣腸は、主要小売店での新規定番採用等があり売上増となりました。除湿剤は、店頭販売が堅調に推移し売上増となりました。カイロは、当初暖冬傾向でしたが年明けからの気温の低下で店頭販売が増加し前年並みとなりました。手袋は、家庭用手袋は大手得意先取引減少のため売上減となりました。医療用手袋は競争激化により売上減となりました。産業用手袋は価格改定に加え新規獲得もあり売上増となりました。メディカル製品のうち滅菌器は、市況の落ち着きにより売上減となりました。ブーツは、市況の低迷に加え価格改定の影響があり売上減となりました。シューズは、前年度に取り扱いアイテムの整理があり売上減となりました。

以上により、当セグメントの売上高は34,237百万円(前年同期比1.8%減)、セグメント利益は9,267百万円(前年同期比4.6%減)となりました。

 

 

  (その他)

その他の事業は、物流受託事業及び太陽光発電事業であります。

当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高又は振替高を含む)は3,513百万円(前年同期比5.1%増)、セグメント利益は433百万円(前年同期比26.0%増)となりました。

 

b.  財政状態

  (資産)

当連結会計年度末における総資産は146,134百万円で、前連結会計年度末と比べ2,275百万円増加しております。流動資産は89,348百万円で、前連結会計年度末と比べ3,860百万円の増加となりました。これは主として、現金及び預金1,464百万円、商品及び製品2,365百万円が増加したことによるものです。

固定資産は56,785百万円で、前連結会計年度末と比べ1,585百万円の減少となりました。これは主として、有形固定資産1,230百万円、無形固定資産667百万円が増加し、投資有価証券2,208百万円、長期貸付金992百万円が減少したことによるものです。

 

  (負債)

当連結会計年度末における総負債は51,669百万円で、前連結会計年度末と比べ607百万円減少しております。流動負債は36,945百万円で、前連結会計年度末と比べ30百万円の減少となりました。これは主として、電子記録債務が993百万円増加し、支払手形及び買掛金が1,065百万円減少したことによるものです。

固定負債は14,724百万円で、前連結会計年度末と比べ576百万円の減少となりました。これは主として、繰延税金負債が427百万円増加し、退職給付に係る負債が854百万円減少したことによるものです。

 

  (純資産)

当連結会計年度末における純資産は94,464百万円で、前連結会計年度末と比べ2,882百万円増加しております。これは主として、利益剰余金3,242百万円、為替換算調整勘定2,112百万円、資本剰余金701百万円が増加し、非支配株主持分が2,814百万円減少したことによるものです。

 

②  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,264百万円(3.4%)増加し、38,932百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、7,240百万円(前年同期比44.1%減)となりました。

増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益9,721百万円、減少の主な内訳は、法人税等の支払額2,947百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、2,002百万円(前年同期比66.3%減)となりました。

収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入1,482百万円、支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出3,586百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、5,748百万円(前年同期比126.5%増)となりました。

支出の主な内訳は、配当金の支払額2,445百万円、自己株式の取得による支出1,044百万円であります。

 

 

③  生産、受注及び販売の実績

 

a.  生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

産業用製品

59,593

△4.3

生活用品

23,818

△0.7

合計

83,412

△3.3

 

(注) 1  金額は、販売価格によっております。

 

 

b.  受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

産業用製品

42,374

△1.2

3,308

△11.0

生活用品

7,660

3.9

631

△4.7

合計

50,035

△0.5

3,940

△10.0

 

 

 

c.  販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

産業用製品

74,628

5.1%

生活用品

34,237

△1.8%

その他

241

△4.7%

合計

109,107

2.8%

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

①  財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの事業領域は、大きく産業用製品事業と生活用品事業に分かれ、その代表的な製品は、産業用製品事業ではプラスチックフイルム、壁紙、フレキシブルコンテナ、車輌内装材、粘着テープ、食品衛生用品、食品用脱水・吸水シート等であり、生活用品事業ではコンドーム、カイロ、除湿剤、メディカル製品、手袋、シューズ等と多岐にわたります。これらの事業は1934年の創業以来培ってきた素材の研究と高度な技術の追求、並びに会社の統合・合併・事業の譲受等による製造技術・ノウハウの吸収により、成長してまいりました。これらの事業を基盤として当社グループは環境にやさしい製品を世に送り出し、株主・顧客・取引先・地域社会・従業員などの様々なのステークホルダーとの友好な関係の維持、発展に努めてまいりました。このような状況のなか、当連結会計年度における売上高は109,107百万円(前年同期比2.8%増)、在庫圧縮やコストダウンを継続し、営業利益は8,701百万円(前年同期比13.3%減)となりました。営業外損益は、為替レートの変動により436百万円の為替差損となりました。特別利益は、投資有価証券売却益1,221百万円を計上しております。特別損失は、収益性の低下が生じ短期的な業績回復が見込まれないと判断した事業(手袋事業、カイロ事業、フイルム事業、農業用フイルム事業、多層フイルム事業、工業テープ事業、壁紙事業、食品包装用事業及び研磨布紙事業)に関して減損損失を1,065百万円計上しております。これらにより、親会社株主に帰属する当期純利益6,674百万円(前年同期比9.7%減)となりました。

事業全体としては、堅調に推移するインバウンド需要、底堅い企業の設備投資への意欲もあり、景気は緩やかに持ち直しています。しかしながら、国際情勢関連では、米国の通商政策動向が見通せないことから警戒感が強まっており、世界経済の景気後退、地政学的リスクの高まり、為替相場の不安定化などの可能性により、世界経済は以前にも増して不透明な状況が続いております。それら仮定を定めた上で会計上の見積りを実施しております。

経営成績については「第2  事業の状況  4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  a.経営成績」に記載のとおりですが、産業用製品事業のうち特に自動車内装材は、米国の関税政策の影響により先行きの不透明感は増しておりますが、あらゆる状況に柔軟に対応すべく、変わり続ける市場ニーズを的確に捉えた新製品の開発や積極的な販売戦略を展開してまいります。

生活用品事業のうち特にコンドームは、訪日外国人によるインバウンド需要が活況化しておりますが、日本国内においては少子化の影響もあり、先行きが不透明な状況にあります。今後も、国内ではジェネレーションごとのマーケティング戦略を展開、新商品の上市や店頭での積極的な販促活動を行います。海外市場では、各国の世情に沿ったSNS戦略で市場拡大を目指します。また、ASEAN地域など成長が期待できるエリアを取り込むように営業活動を行ってまいります。

今後、将来への成長をより加速・維持する経営を図るため、当社並びに連結子会社各社に至るまで収益の基盤を広げ、かつ強固なものとするため設備投資を進めてまいります

 

②  キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,264百万円(3.4%)増加し、38,932百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は230百万円増加し9,721百万円となりました。また、固定資産減損損失1,065百万円(前年同期比1,513百万円減)、売上債権の減少による増加3,100百万円(前年同期比3,585百万円増)、仕入債務の減少による減少2,469百万円(前年同期比3,448百万円減)、棚卸資産の増加による減少2,272百万円(前年同期比2,082百万円減)となりました。これらにより、営業活動によるキャッシュ・フロー全体では7,240百万円の増加(前年同期比5,717百万円の収入減)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の事業基盤となる設備投資を実施しており、投資活動によるキャッシュ・フロー全体では2,002百万円の支出(前年同期比3,947百万円の支出減)となっております。

財務活動によるキャッシュ・フローは、株主還元の充実及び資本効率の向上等を目的とした施策としての配当金の支払額2,445百万円、自己株式の取得1,044百万円により財務活動によるキャッシュ・フロー全体では5,748百万円の支出(前年同期比3,210百万円の支出増)となっております。

よって、これらにより当連結会計年度末においての現金及び現金同等物は38,932百万円となりました。

また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、円滑な事業活動に必要な流動性の確保を主眼とし、主として銀行等から長期借入金及び短期借入金にて資金調達を行っております。なお、現時点では借入れによる資金調達により一定程度手許資金が確保されている状況のため、社債等の資金調達手段は考えておりません。今後も今まで築いてきた金融機関等との良好な関係を確保しつつ、追加で資金が必要になった時点で最良の判断を行っていく考えであります

更に当社グループは、様々な事業を展開していることから戦略的に資源配分を行っていく方針であります。特にここ最近では、将来の事業基盤を支える事業に積極的に設備投資を実施しており、設備投資額も高水準となっております。今後も経済状況を鑑み、競争力を維持していくための資源配分を行う考えであります。また同時に、株主還元の充実を図るため配当及び自己株式の取得も併せて実施する考えであります

 

 

③  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5  経理の状況  1 連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております

 

5 【重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、今まで独自の技術とノウハウを培い、高品質、高性能を追求することにより、「オカモトブランド」に対する消費者の信頼性を高める努力を続けてまいりました。

今後も、常に消費者に求められる「人々の生活に役立つ環境にやさしい製品」を積極的に開発し、提供してまいります。

現在、産業用製品の研究開発は静岡研究開発センターを中心に、また生活用品については茨城研究開発センターを中心に行っております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は1,356百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

(1) 産業用製品

当社が中心となり、プラスチックフイルム、農業用フイルム、車輌内装材、食品包装用フイルム、壁紙等の分野で、新素材、複合機能製品、非塩ビ製品、環境配慮製品等の消費者のニーズにあった製品開発を行っており、また粘着製品では包装用、工業用(電気・電子用テープ等)の新素材、新用途及び環境配慮製品の研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費の金額は1,025百万円であります。

(2) 生活用品

当社が中心となり、コンドーム、手袋、カイロ、除湿剤、介護用品、医療機器、シューズ、ブーツ等の分野にて多様化するニーズに応えるため研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費の金額は330百万円であります。