当社グループは、顧客第一の精神に徹し「顧客に満足される製品(もの)作り」、「正確な仕事で品質保証」を実践することにより広く社会に貢献することを経営理念として事業を行っております。
目標とする経営指標は、持続的な成長と企業価値の向上という観点から「連結売上高経常利益率3%以上の維持」としており、安定的な収益の確保を目指しております。
今後のわが国経済は、物価上昇、国内外の金融政策と為替変動、地政学リスクなどの経済減速要因はあるものの、賃上げ等による所得・雇用環境の改善により個人消費が伸び、緩やかな経済成長が続くものと期待されております。
このような状況のもと当社グループといたしましては、当社グループが提供する製品やサービスにより、引き続き安心・安全な社会の維持に貢献してまいります。コスト上昇圧力に対しては、生産体制の見直しと原価構造の改善、適切な売価の再設定を継続して進めてまいります。
また、中長期的な研究開発の強化や生産の合理化を目的として、今後、大田原製作所の設備や基幹システムなどの刷新を検討してまいります。
なお、東京証券取引所スタンダード市場の上場維持基準の適合に向けて、引き続き流通株式比率等の改善に取り組んでまいります。
消防・防災事業では、激甚化・頻発化する自然災害に対し、人命の救助、社会インフラの安全確保に特化した救助資機材や特殊車両のニーズが高まっております。そのニーズに合致した商材の開発や開拓を行うとともに、当社の強みである提案型営業を深化させるべく人材の育成を行い、収益力の強化を進めてまいります。
航空・宇宙、工業用品事業では、生産体制の見直しと原価構造の改善を継続して進めております。また、将来の宇宙分野の需要拡大に向けた新製造方法確立を目指すとともに、航空部品や発電所向け部品の製造技術を活かし、新分野に貢献できるよう研究・開発を進めてまいります。
不動産賃貸事業では、同事業の中核である商業施設のテナント様と連携を図り、地域社会に貢献する営業を続けてまいります。
今後も強固な経営基盤の確立と持続的な成長を目指して、グループ一丸となり対処すべき課題に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、サステナビリティ全般を取締役会において統括しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。コンプライアンス全般に係る事項については、総務部長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置し、企業並びに従業員個人の法令や規則の遵守状況を定期的に検証しております。環境マネジメントについては、総務担当取締役を環境管理責任者とする環境管理委員会を設置し、隔月で開催する環境会議において、環境目標に対する定期的なモニタリングと評価を行います。両委員会において経営上の重要事項と判断される場合は、速やかに代表取締役社長並びに総務担当取締役へ報告するとともに、総務担当取締役より取締役会へ報告または上程され、審議を行います。
① 人的資本
当社グループは、経営理念である「顧客に満足される製品(もの)作り」、「正確な仕事で品質保証」の実践を継続するため、多様性に富んだ人財・組織である必要性を認識しております。男女共同参画社会の実現に向けた取り組みはもとより、人材の育成と働き甲斐のある職場環境の整備を行い、個人並びに組織の能力と生産性を高めていくことを基本方針としております。当社グループのうち提出会社及び連結子会社の一部は製造業であり、工場では重量物や危険物を取り扱う業務も多いことから従業員に占める男性の比率が高くなっておりますが、女性が活躍できる職場環境の整備を推進してまいります。
② 環境
当社グループは「環境方針」を2012年4月に策定し、環境への負荷の少ない循環型社会実現に寄与するため、製品の開発・設計の段階から生産・物流、廃棄などの全段階における環境負荷低減に努めております。
当社グループにおけるリスク管理は、リスクの発生頻度や当社グループが受ける影響度に応じて、担当業務執行部門において行い、取締役会に報告しております。取締役会は、全社的なリスク管理の視点から対応すべきリスクを優先順位付けし、事業計画に反映しております。
なお、サステナビリティ関連のリスクを含む事業者のリスクについては、
① 人的資本
多様性に富んだ組織に向け女性が長期に活躍できる職場を目指し、次の指標を用いております。
(注)1.上記指標の算定は、嘱託社員を含みパートタイマー社員を除く。
2.当社グループに属する全ての会社において指標及び目標の設定が行われているものではないため、当社グループにおける記載が困難です。このため、指標に関する目標及び実績は、当社単体について記載しております。
② 環境
廃棄物、水利用、電力、化石燃料、有機溶剤、二酸化炭素など10項目の使用量や排出量の低減目標を2021年度から2023年度の3年計画で策定しており、項目ごとに2020年度に対して3年間で3%減(毎年1%減)または現状維持を目指しております。
目標に対する当連結会計年度の結果は、集計に時間を要するため公表可能な数値はありません。なお、前連会計年度では目標10項目を全て達成しております。次期以降は新たな計画期間となるため、さらなる環境負荷の低減を進めてまります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループは、石油化学製品や金属素材を主な原材料とする製品を製造しております。原油価格や金属素材価格の変動に対しては、資材調達時のロット購入や適切な在庫管理によるコストダウンを図っておりますが、世界的な需給のひっ迫や地政学リスクの上昇などにより、原材料価格が急激に高騰する局面では販売価格への転嫁にも限界があり、原価の上昇や支払代金の増加など経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内及び海外の品質基準により製品の製造を行い、全ての製品につき欠陥が発生しないように万全の品質保証体制を整えておりますが、重大な品質不良、品質事故が発生した場合、追加コストの発生や製品評価の低下による取引高の減少など、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、災害リスク等に対して、リスク管理規定並びに防災計画を整備し、想定外の事象を極力排除し対策を実施しております。しかしながら、ひとたび大規模災害等が発生した場合、従業員の心身へのダメージや、事業拠点・生産設備の損壊・閉鎖などによる直接的影響、社会インフラの不安定化に伴う受注量の大幅減、原材料の調達難、物流機能の低下など間接的影響により、甚大な損害が発生し事業の継続を困難にする可能性があります。
また、未知の感染症の発生と感染拡大により社会の混乱や経済活動の制約が生じた場合、従業員並びに関係者の感染リスク軽減を最優先事項として、十分に安全を確保した体制のもと事業活動を行ってまいりますが、様々な取引の遅延や中断などにより経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、自社の技術・営業・その他事業に関する機密情報を保有し、また、取引先等の機密情報に接することがあります。最新のセキュリティ環境によるシステムやネットワークの構築と、情報セキュリティポリシー、リスク管理等の諸規定に基づく情報利用を徹底し、情報漏洩防止について対策しておりますが、サイバー攻撃等による情報漏洩が発生した場合、取引の中断や停止、当社グループの有形無形を問わない財産を毀損する可能性があります。
当社グループは、事業活動と持続的な成長にあたり、研究開発部門の技術者、製造部門の熟練技能者をはじめ、品質管理、販売、調達並びに経営管理の各部門の業務遂行とマネジメントなどに有能な人材の確保が不可欠であり、定期的な人材の採用と育成に努めております。企業間の人材獲得競争が激しくなるなど人材の確保が困難な状況となった場合、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。
当社グループは、事業活動に関連する有用な知的財産権の取得並びに保護に努めております。その知的財産権について訴訟やクレーム等の問題が発生した場合、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。
当社グループは、外貨建の輸入取引に係る為替や資金調達に係る金利など、市況変動の影響を受ける取引をしております。為替変動に対しては為替予約などの利用、金利変動に対しては金利の固定化や金利スワップなどの利用により、それぞれ一定の範囲内で変動リスクを低減する取引を行っておりますが、短期及び中長期の予測を超えた市況変動があった場合、為替決済代金や金利支払額の増加などにより経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、工場や賃貸用不動産など多くの固定資産を事業に活用しております。中長期的な視点による経営管理のもと固定資産を評価しておりますが、今後、事業環境が大幅に悪化した場合、減損損失が発生し、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループの退職給付制度は、主として確定給付型企業年金制度を採用しております。退職給付債務及び退職給付費用は、合理的な見積に基づく基礎率の設定と数理計算を行っておりますが、年金資産の運用状況の急激な悪化や従業員の就業環境等に変化があった場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
提出会社である当社は、株式会社東京証券取引所のスタンダード市場へ上場しております。当社は、2024年3月31日基準日現在、「流通株式比率」について、上場維持基準を充たしておりません。「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおり、「上場維持基準の適合に向けた計画書」に基づき上場維持基準適合へ取り組んでおりますが、外部環境の影響により計画の遅れが発生した場合、株価や株式の流動性と財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に変更されたことに伴い、社会経済活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド消費が回復しました。また、需要や生産の持ち直しにより企業収益は改善し、賃上げ機運も高まるなど景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、国内では原材料価格やエネルギーコストの高止まり、物価上昇による需要の減少懸念、人手不足の深刻化などが継続しており、海外各国の金融政策や長期化する地政学リスクの影響とともに、楽観できない要因も抱えた状況で推移しております。
このような状況のもと当社グループといたしましては、引き続きお客様に満足される製品・サービスの提供により、安心・安全な社会の維持に貢献するべく事業活動を行ってまいりました。また、受注予測の精度向上と平準生産の拡充、3Dプリンタ等を活用した製造工程の効率化により、生産体制の見直しと原価構造の改善を進めております。そのほか、激甚化する自然災害の対応に向けた資機材の開発や開拓、原材料価格の高騰に伴う売価の再設定等に取り組んでまいりました。
売上高は、航空・宇宙、工業用品事業における受注回復に加え、消防・防災事業において資機材関連の受注が当初計画を上回ったことから、大幅な増収となりました。
利益面では、円安の影響を含む原材料価格の高騰などはあるものの、工場稼働率の向上と大幅な増収を受け、業績回復に伴う従業員の賃金等の待遇改善を進めつつ、増益を達成することができました。
その結果、売上高は13,353百万円(前期比24.9%増)、営業利益1,136百万円(前期比166.9%増)、経常利益1,105百万円(前期比170.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益733百万円(133.5%増)となりました。
当連結会計年度における報告セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(消防・防災事業)
消防ホース・消火栓ホースは、第3四半期まで順調に推移しておりましたが、第4四半期では販売数量が減少しております。大口径ホースは、エンドユーザの大口更新案件があったことから売上高は増加しました。資機材では、第1四半期に前期持ち越し案件と安全対策資機材などの大口案件が重なり販売増となったことに加え、第4四半期にも救助資機材や安全対策資機材の販売が大幅に増加しました。
利益面では、資機材関連の大幅な増収効果を主因として増益となっております。
その結果、売上高8,718百万円(前期比28.8%増)、セグメント利益(営業利益)は871百万円(前期比109.8%増)となりました。
(航空・宇宙、工業用品事業)
航空・宇宙部門は、前期からの受注回復が継続しており、大型機のエンジン部品及び配管類などの金属製品の販売が増加しました。そのほか、ゴムシール材などの補用品の販売も増加しております。
工業用品部門では、前期に引き続き原油貯蔵施設向けタンクシールの交換需要が多く、販売が増加しております。
利益面では、原材料価格の高騰などの影響はあるものの、受注の増加に伴い工場稼働率の向上が大きく寄与し原価率が改善したことから増益となっております。
その結果、航空・宇宙、工業用品事業の売上高は4,138百万円(前期比20.8%増)、セグメント利益(営業利益)は521百万円(前期比104.2%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
売上高は、前期中に経営資源の有効活用及び財政基盤の強化を目的として賃貸物件を売却した影響もあり、微減となっております。
利益面では、賃貸商業施設のメンテナンス費用の増加により減益となっております。
その結果、売上高は497百万円(前期比0.1%減)、セグメント利益(営業利益)は91百万円(前期比13.6%減)となりました。
当連結会計年度末の流動資産残高は13,214百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,289百万円の増加となりました。主として、受取手形、売掛金及び契約資産が617百万円、棚卸資産が446百万円それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度末の固定資産残高は4,353百万円となり、前連結会計年度末に比べ44百万円の減少となりました。主として、有形固定資産が122百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末の流動負債残高は6,486百万円となり、前連結会計年度末に比べ495百万円の増加となりました。主として、電子記録債務が219百万円、未払法人税等が154百万円それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度末の固定負債残高は2,359百万円となり、前連結会計年度末に比べ209百万円の減少となりました。主として、退職給付に係る負債が226万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産残高は8,722百万円となり、前連結会計年度末に比べ958百万円の増加となりました。主として、利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益733百万円の増加と剰余金の処分48百万円により減少し、その他の包括利益累計額は、退職給付に係る調整累計額が175百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より3百万円減の2,850百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、366百万円の資金の増加(前期は254百万円の資金の減少)となりました。これは、主として税金等調整前当期純利益1,104百万円、減価償却費255百万円、賞与引当金の増加額56百万円などの資金増加要因と、売上債権の増加額837百万円、棚卸資産の増加額446百万円などの資金減少要因によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、146百万円の資金の減少(前期は292百万円の資金の増加)となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出120百万円、無形固定資産の取得による支出1百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、223百万円の資金の減少(前期は370百万円の資金の減少)となりました。これは、主として社債及び借入金による収支171百万円の減少、配当金の支払額48百万円などによるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、最近の当社グループを取り巻く経営環境の変化が大きいことから、まずは安定的な収益率の確保へ注力することとし、前連結会計年度から目標とする経営指標を「連結売上高経常利益率3%の維持」と再設定し、事業活動を進めてまいりました。
当連結会計年度は、航空・宇宙、工業用品事業における受注回復に加え、消防・防災事業において資機材関連の受注が当初計画を上回ったことから、大幅な増収となりました。利益面でも、大幅な増収を受けた利益額の確保と工場稼働率の向上により増益となっており、その結果、当連結会計年度は連結売上高経常利益率8.3%となり、目標とする経営指標を達成しております。しかしながら、当連結会計年度も原材料やエネルギーコストの高止まり等による利益下押し要因が解消しない状況で推移しております。また、当社グループの中長期的な成長に向けた設備や人的資本への投資も課題であり、これらの要因や課題に取り組みつつ、次期以降も目標である「経常利益率3%の維持」を目指してまいります。
資機材関連の売上高大幅増を要因として利益額を確保し、外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率は10.0%(前期6.1%)に上昇しております。なお、消防・防災事業は、受注競争が厳しく、かつ、期中の受注に対して第4四半期の売上となる案件が多い事業であり、単年度ベースの業績管理も難しい点があります。しかし、当期の第1四半期では、外部環境要因により前期から持ち越した案件等が寄与しており、当期の経営成績の特徴的な要因の一つとなっております。
航空・宇宙部門では、エンドユーザーの中期的な計画のもと、大型機のエンジン部品及び配管類の受注が回復しており、工業用品部門では、前期から継続してタンクシールの交換需要が多い状況で推移しました。両部門の受注増は、当期の売上高を押し上げるとともに、次期以降に向けた受注残高も積み増しており、生産高の増加と原価率の改善に寄与しております。また、材料価格高騰の状況を踏まえ、前期から実施してきた売価の改定も一定の効果をみせております。その結果、外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率 は12.6%(前期7.5%)に上昇しております。収益性の回復は進んでおりますが、材料価格の上昇は継続しており、生産性の向上や売価の改定は継続して進める必要があります。
(不動産賃貸事業)
外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率は18.4%(前期21.6%)と低下しておりますが、これは全社的な業績回復を踏まえ、追加的な修繕を実行した結果であり、事業の収益性に問題はありません。
主要な科目残高の前期比は、現金及び預金99.9%、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産並びに電子記録債権の合計。)113.8%、棚卸資産(商品及び製品、半製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品の合計)116.5%となり、それぞれ安定した水準で維持しております。
現金及び預金は、地政学的リスクをはじめとする外部環境の動向を踏まえ、適切な流動性を確保しております。
売上債権は、例年、消防・防災事業の販売が顧客予算との関連性から年度後半に集中するため、期末の残高が増加する傾向にあります。航空・宇宙、工業用品事業においては、前期から続く受注回復の継続が売上債権残高の増加要因となっております。
棚卸資産は、前期同様、受注の増加、物価上昇と為替レートの円安進行による原材料価格の高騰に伴い残高が増加しましたが、金額ベースによる在庫回転率は僅かながら良化しております。引き続き調達及び生産の効率化に向けた取り組みが必要と認識しております。
(固定資産)
当連結会計年度は、有形固定資産及び無形固定資産への投資額118百万円(建設仮勘定を除く。)に対し、減価償却費(無形固定資産の償却費を含む。)255百万円となり、償却費の範囲内で投資を行っております。前期同様、当連結会計年度も期首から厳しい経営見通しであったことから、投資額は喫緊の課題に向けた投資に絞った結果となっております。
(流動負債、固定負債)
支払手形及び買掛金と電子記録債務の合計残高は前期比104.1%となっております。消防・防災事業の販売取引が年度後半に集中することと相関して購買取引も増加する傾向にあり、当連結会計年度も売上債権同様増加しております。
資金調達関連として、社債、長期借入金並びに短期借入金の合計残高は前期比94.6%となりました。当連結会計年度は、営業キャッシュフローによる収入を原資として有利子負債を削減した結果となっております。
(純資産)
親会社株主に帰属する当期純利益の計上や配当実施の結果、株主資本残高は前期比108.8%となりました。その他の包括利益累計額はその他有価証券の時価上昇、年金資産の増加に伴い退職給付に係る調整累計額がプラスに転じたことから272百万円(前期△2百万円)となっております。
なお、自己資本比率は49.6%(前期47.6%)と前期に比べ上昇しており、経営基盤の安定性は引き続き確保しているものと判断しております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、航空・宇宙、工業用品部門における受注回復や消防防災事業における資機材関連の販売増加により大幅な増収となりました。また、工場稼働率の向上等による売上原価率の良化から税金等調整前当期純利益が大幅に増加し、減価償却費をはじめとしたその他の資金増加要因も安定した数値で推移しました。前期に引き続き、期末に売上が集中し債権の回収が翌期に繰り越されたことで資金減少要因としてマイナスの影響も受けましたが、結果として営業キャッシュ・フローはプラスに転じました。投資活動によるキャッシュ・フローでは、前期に引き続き資金のバランスを維持しつつ設備投資を行っております。その結果、現金及び現金同等物の残高は前期比99.9%と同水準を維持しております。
資金調達については、金融機関からの借入を基本としております。調達した資金は自己資金とあわせ、原材料や商品購入資金、人件費や経費支払いなどの運転資金と、研究開発費や設備投資資金に充当しております。長期借入を行う場合、借入期間は原則5年以内としておりますが、不動産取得などの投資資金については、投資回収期間を考慮し借入期間を別途設定する場合があります。なお、当社は運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行5行と当座貸越契約を締結しており、突発的な資金需要が発生した場合の手許流動性を確保する手段を準備しております。当連結会計年度末日現在の当座貸越契約の未実行残高は1,790百万円であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産、負債の報告数値及び報告期間における収益、費用の報告数値に影響を与える見積りを行う必要があります。見積りを行った時点で合理的と考えられる仮定に基づき判断を行いますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性があります。
当期の連結財務諸表に対して、重要な会計上の見積りとして認識している項目は以下のとおりであります。
(棚卸資産の評価)
棚卸資産について適正な価値で貸借対照表に計上するため、評価を行っております。過剰、滞留、陳腐化した棚卸資産については、合理的な見積り在庫回転期間に基づき評価損を計上しております。また、収益性の低下した棚卸資産については、将来の需要や販売価格等の見積りに基づき、正味実現可能価額まで評価損を計上しております。
(固定資産の減損)
固定資産について、その帳簿価額が回収できないという兆候を示す事象や経営状況の変化が発生した場合、減損の判定を行っております。将来キャッシュ・フローの見積りに基づき減損の判定を行い、減損の認識が必要と判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を上回る部分について減損損失を計上しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産について、将来の課税所得の見積りやタックス・プランニングに基づき、一定期間における回収可能性が高いと判断した部分に限り計上しております。回収可能性が見込めないと判断した部分については評価性引当金を計上しております。将来の課税所得の見積りやタックス・プランニングは、事業計画を基礎として過去の業績等も考慮し策定しておりますが、経済情勢の変動、経営成績の悪化、事業計画の変更などにより、適宜、見直しが行われます。繰延税金資産の回収可能性についても定期的に検討を行い、繰延税金資産の計上額及び税金費用に適切に反映しております。
詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は米国カークヒル社及びパーカーハニフィン・ストラトフレックス社との間に技術援助契約を締結しておりますが、その概要は次のとおりであります。
当企業集団における研究開発活動は、連結財務諸表を作成する当社のみが行っており、お客様や市場のニーズをとらえた開発と、当社の技術的なシーズを製品化するための研究に取り組んでおります。
当連結会計年度の研究開発活動については、以下のとおりであります。
(1) 消防・防災事業
前期から継続して生産能力の向上を図る製造方法の研究と新ホースの開発、ホース用大口径金具の開発、品質保証体制の向上を図る検査方法の研究などを実施しております。
(2) 航空・宇宙、工業用品事業
将来の宇宙分野の需要拡大に向け量産化をターゲットとした新製造方法の研究、官需機の改修に伴う断熱材と国産化維持の為の配管類の開発、小型軽量エンジン向け金属部品の開発などを実施しております。
これらの結果、当連結会計年度における研究開発費は、