第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社は、健康・創造・志の三つの思いを調和させ、「世界の人々の健康と豊かな暮らしに貢献し、人々に喜ばれ、信頼される企業になる」を経営理念のひとつとして掲げています。また、豊かさの追求、世界№1・オンリーワン企業を目指す、信用の確立、継続的な成長と発展、イノベーションへの挑戦、を全ての活動につながる価値観として位置付け、さらに熱意、誠意、創意を基本的な行動原則としています。この価値観と行動原則が経営理念を支えています。そして、真に社会的ニーズに応え、社会貢献につながる強固な経営基盤を構築することを目標にしています。

世界最高水準のゴムの薄膜化技術及び新素材を基にコア技術を生かしたゴム製品、及び独自の技術力とノウハウを駆使・凝縮した高機能かつバリエーション豊富な精密機器(緩衝器)製品を主力としております。創造性のある高品質・高付加価値で安全な、そして環境にも配慮した製品を市場に提供することによって社会的責任を果たし社会経済の発展に貢献できるものと確信しています。企業の継続的発展・企業価値の最大化を目指し実現していくことで、株主、取引先、投資家、従業員、地域社会等の全ての人々の信頼と期待に応え、企業市民としての責任を果たしてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

着実な事業拡大と効率的な事業運営により経営ビジョンを実現してまいります。「成長戦略」の推進を基本方針とし、設備投資等を核とした成長投資を積極的に展開した「第3次新中期経営計画(2018年3月期から2020年3月期まで)」、「前計画に基づく投資の効果実現・投資回収」と「有利子負債水準の適正化」を掲げた「第4次新中期経営計画(2021年3月期から2023年3月期まで)」を推進してまいりました。

投資効果の実現については事業分野ごとに濃淡が出ましたが、有利子負債水準の適正化は順調に推移し、その結果として第4次新中期経営計画の最終年度である2023年3月期の設定目標であった収益性指標の自己資本当期純利益率(ROE)10.0%、健全性指標の自己資本比率30%をそれぞれ達成することができました。

今後も経営基盤の強化を実現していくことにより、目標とする経営指標として自己資本当期純利益率(ROE)10.0%以上、自己資本比率30%台を継続的に達成し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

中期経営計画は、従来の実績と課題を念頭に置き、長年培った技術力に磨きをかけると同時にユーザーの多様なニーズに応えられる新製品の開発を行い、事業成長性の追求を基本方針としております。既存事業の強化、製造業として競争力の源泉である「ものづくり」の強化、各事業分野でオンリーワンの存在となり収益性の高い事業の集合体となる、の3点を柱に、新市場の開拓を中心とした営業基盤強化と、コスト意識を持って収益改善と財務体質強化を図り、強固な経営基盤の確立と持続的成長の実現を可能とする中長期的な方向性を明確にしております。

セグメントごとの経営戦略は以下のとおりとなります。

 

<医療機器事業>

バースコントロール総合メーカーとして避妊から出産介助までの領域をカバーする製品群の開発・販売に注力いたします。中核事業であるコンドーム製造販売事業においては生産工程の見直し改善を通じたものづくりの強化により、量産体制に向けての課題解決、高利益製品群のシェア拡大、生産性向上活動の推進を強化していきます。また、海外市場に向けてはアジア市場に照準を絞り、現地有力ブランドと協働したOEM戦略を推進してまいります。

 

<精密機器事業>

精密機器事業の主力製品であるショックアブソーバ及びロータリーダンパーは住宅設備、家電、自動車、産業用生産設備等の多岐にわたる市場で展開をしております。総合緩衝器メーカーという他に類をみないグローバルニッチ企業を目指し、「Motion Control & Technology」を旗印に消費者ニーズの多様化、製品の高付加価値に資する創造的かつハイレベルな製品開発を継続してまいります。

 

<SP事業>

長年にわたり培ってきた、ゴム風船やフィルムバルーンを媒体とした広告・店頭販促用品での対面コミュニケーションのサポート経験や国内外のサプライチェーンの組織化ノウハウを活かして、バルーンの使用によるヒューマンタッチなビジネスを企画提案し、具体化できる国内随一の企業として存在感を発揮してまいります。

 

 

<食品容器事業>

国内最大手のゴム製食品容器メーカーとして、根強い需要に対して安定した品質と納期で製品供給を行ってまいります。また、耐熱性・耐油性を改善することにより食品全般への対応を目指すほか、食品用以外の用途拡大にも取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社を取り巻く中長期的経営環境につきましては、多様化する市場ニーズ、技術革新、生産拠点のグローバル化の進展、製品の安全性への要請、気候変動への対応等、その基本的構図は大きく変わらないものと予想され、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上の両立に向けて、戦略の明確化とガバナンスへの取組み強化が重要となります。

当社が優先的に対処すべき事業上の課題は、各事業の成長性と収益性からみて、その事業領域に相応しい経営資源を適正に配分していくこと、及び事業ポートフォリオの見直しや事業継続の可否判断を適時適切に実施していくことです。製造業として生産設備や研究開発への投資はもとより、人材の確保やIT化投資等、多岐にわたる必要投資を限られた経営資源の中から選択・決定していかなくてはならず、そのためには意思決定の基準や枠組みの更なる高度化が必要です。

また、財務上の課題として、従前の中期経営計画に基づく成長投資に伴い増加した有利子負債の適正化があげられますが、引き続き、投資の成果による営業キャッシュ・フローの強化とともに、有利子負債の削減と、株主還元、内部留保、投資の配分を適正に実施していきます。

かかる課題認識の下、中長期的な経営の基本方針に基づき、経営体質の強化、持続的な事業の成長、企業価値の向上を実現するために、以下の経営課題に取り組んでまいります。

 

① 技術力の強化、新製品の開発

新技術、新製品の開発は「ものづくり」に真摯に取り組む当社の生命線と考えております。医療機器事業の中核であるコンドーム事業においては、設計や製造工程の見直しにより、ものづくり力を徹底して高めていきます。また、メディカル事業においては、製品開発体制を強化して、新たな価値を市場に提供してまいります。

精密機器事業ではハイレベルでユニーク、かつコストパフォーマンスに優れた独自の製品を生み出す技術力をバックに、新たな素材開発と機能性を睨んだ製品開発に注力し次期成長エンジンを生み出すことでニッチトップ企業を目指してまいります。また、営業部門と技術・研究開発部門の緊密な連携を通し、ユーザーのニーズを的確に先取りすることで製品開発に生かしてまいります。

生産工場においては、新製品開発と効率生産を可能にする最新設備の拡充を継続的に推進してまいります。さらに、永年培ってきた技術・技能を受け継ぐべき人材の育成に取り組んでまいります。特に、中核となる戦略製品群につきましては、革新的な生産技術の開発にチャレンジし、競合他社との差別化とリーディングカンパニーとしての揺るぎ無い地位を確立してまいります。

 

② 新分野・新商材・新規事業への取組み

将来にわたって持続的成長を遂げていくためには、当社の中核事業に加え、既存の独自技術・営業基盤を生かした新たなコア事業の創出が重要な課題と認識しております。世界に通用する技術や優位性の高い製品の開発に積極果敢に取り組むと同時に、共同開発や技術提携等により新たな可能性を追求してまいります。海外も含め積極的に新分野を開拓し、新規事業領域の拡大と成長分野への進出、事業基盤の拡充に取り組んでまいります。

 

③ 生産性向上と効率性を追求した設備投資

生産革新によるQCDの追求を基本方針として、全社を挙げてコスト意識の徹底を図ってまいります。同時にISOをベースとした管理体制の整備と強化に注力し、生販一体となった業務運営による生産性の向上と効率性を追求いたします。自動化生産設備の開発と積極的な導入を柱とした生産能力の拡大だけでなく、既存設備の整備・更新にあたっては抜本的な生産システムの再構築を視野に、不良率の低減を始めとしたローコスト運営に資するシステム化を図り、投資効率の高い設備改革に取り組んでまいります。その一環として老朽化の進んだ生産拠点の在り方について検討してまいります。また、生産拠点の防災対策のみならず、多角的な視点から実効性の高い事業継続計画(BCP)の策定を進めてまいります。

 

 

④ 海外市場の開拓、ネットワークの拡大

成長が見込める海外市場を開拓すべく新規の販売ネットワークの拡大に取り組んでまいります。中国に有する販売拠点との連携を強化し、高度な技術に裏付けされた当社製品とブランド力を前面に掲げ、中国、欧米、東南アジアへ向けて多面的な取組みを推進いたします。また、取引ウェイトが高くなる海外の顧客への対応力強化のためにドイツ代表事務所を中心に、営業及び技術面のサポート体制を拡充いたします。

 

⑤ 人材の採用と育成

企業の成長を目指すうえで組織体制の強化は不可欠であり、中長期的視点で優れた人材を継続的に採用し育成してまいります。個々の能力とモチベーション、新たな創意工夫を引き出すために働きがいのある職場環境の整備・拡充を行い、働く人の視点で働き方改革を推進してまいります。

 

⑥ 財務体質の強化

製造業として、その根幹をなす生産設備及び研究開発関連への投資資金を確保するために、収益の拡大を図ってまいります。生産性向上と合理化の推進に向けた投資により総合的なものづくりシステムの改善を図り、生産サイクルにおける適正棚卸資産の維持と製造・管理コストの削減に努めてまいります。同時に、経営環境の変化に柔軟に対応し持続的成長の実現に向けて、自己資本の増強と有利子負債の削減等を柱とする財務体質の強化に努めてまいります。

 

⑦ 経営管理体制の整備と強化

企業の持続的成長と企業価値の向上の実現に向けて、コーポレート・ガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。内部統制、リスク管理、情報管理、コンプライアンスへの取組みを強化徹底し、より信頼性と透明性の高い経営を実現しコーポレート・ガバナンスの実効性を高めてまいります。さらに、成長戦略を推進し業容の拡大を支えるために、変化に強く柔軟な対応が可能となるITシステムの整備と再構築を推進すべく2020年度に設置したデジタル推進室を中心に、全社的なデジタル化活動を強化促進いたします。

 

⑧ 企業文化の醸成

当社のあるべき姿を見据え、従来から判断や行動の基本としてきた経営理念、価値観、行動指針を「FUJILATEX WAY」として改めて明確にし、すべての活動につながる価値観を体系化しております。今後はこの企業ビジョンを全役職員で共有すべく、あらゆる機会を捉え、ひとりひとりの理解が深まるよう様々な施策により継続的に展開してまいります。日々の業務活動の拠り所とし、さらに社会貢献につながることを願いとして積極的に取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

製造業である当社は、お客様に製品を通じて「価値」を提供し、この「価値」により、「世界の人々の健康と豊かな暮らしに貢献する」という経営理念にもとづきサステナビリティへ取り組んでまいります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在の状況に基づき、当社グループが現時点で判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティの実現に向け、代表取締役を委員長とするCSR委員会を設置しており、サステナビリティに関するマテリアリティの特定、目標設定及び進捗の確認を行うこととしております。

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<気候変動への対応>

当社グループは気候変動への対応をサステナビリティの取組みにおける重要課題と位置づけ、TCFD提言に沿って気候変動対応の強化に努め、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上の両立に向けて、グループ全体でサステナビリティ活動を推進していきます。

 

(2)戦略

当社グループにおける事業戦略のレジリエンスを評価するため、気候関連におけるリスクおよび機会について、シナリオ分析を実施しています。

 

シナリオの概要

IEAやIPCCなどの国際的な機関が公表している報告書やパリ協定をはじめとする国際動向を踏まえ、低炭素社会へ移行する1.5℃シナリオおよび温暖化が進行する4℃シナリオを選択しました。

 

1.5℃シナリオ

2050年カーボンニュートラルを達成するため、炭素税や排出量取引、脱プラスチックに関連する様々な法規制が強化される一方、低炭素製品や生分解性素材などの需要拡大が想定されます。なお、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して、今世紀末ごろに約1.5℃の上昇に抑えられることから、物理的な影響は大きくないことが想定されます。

・IEA(国際エネルギー機関) WEO NZEシナリオ、SDSシナリオ

・IPCC(気候変動に関する政府間パネル) RCP1.9

4℃シナリオ

化石燃料への依存による経済が進展し、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末ごろに約4℃上昇するに伴い、洪水などの気温上昇に起因する異常気象など、自然災害の発生が激増し、物理的な被害が拡大することが想定されます。

・IEA WEO STEPSシナリオ

・IEA 「The Future of Cooling」

・IPCC RCP8.5

・WRI Aqueduct Floods、

国土交通省 ハザードマップ 等

 

識別した重要なリスク・機会、財務インパクトおよび対応策

1.5℃シナリオ

分 類

事業への影響

期 間

影響度

主な対応策

リスク

機 会

政策・法規制

炭素税・排出量取引制度の導入

炭素排出の負担が発生し、炭素税等の転嫁による原材料などの調達コストが増加

 

中~長

・石化由来原料の使用量削減

・調達先における低炭素化の取組に関わる現状把握と連携促進

炭素税等の転嫁による物流コストが増加

 

中~長

・物流効率化の推進

・物流事業者との連携強化

自社の炭素排出コスト(Scope1,2に係る炭素税等)が増加

 

中~長

・再エネ活用の検討

・効率性能が高い設備への更新の検討

石油由来製品への規制強化

バージンプラスチック等への課税により石油由来原料などの調達コストが増加

 

中~長

・石化由来原料の使用量削減

・生分解性プラスチック等の調達量の拡大

テクノロジー・技術

低炭素技術の進展

 

低炭素・循環型製品の開発による需要の増加

中~長

・メーカー(OEM先等)との協働による高付加価値製品の開発の推進

市場

小売電力価格の上昇

自社が調達する電力コストの増加

 

中~長

・効率性能が高い設備への更新の検討

素材の価格上昇

低炭素・循環型社会の進展に伴い、サステナブル系新素材の価格が上昇

 

中~長

・サプライヤーとの協働による高付加価値製品の開発

評判

低炭素や循環型社会に対する顧客の意識の高まり

気候変動対策の遅延や情報開示不足による信用力の低下

 

中~長

・脱炭素経営、気候変動関連の情報開示の推進

 

脱炭素経営の推進による企業価値の上昇

中~長

 

 

4℃シナリオ

分 類

事業への影響

期 間

影響度

主な対応策

リスク

機 会

急性

温暖化による気象災害(洪水・大雨・台風等)の激甚化

気象災害の被災による自社拠点への損害拡大、操業停止

 

中~長

・生産拠点の新設・移転時における気候変動リスクなどの継続評価

気象災害によりサプライチェーンが寸断

 

中~長

・サプライチェーンマネジメントの強化

・代替品、複数購買の検討

BCP対応コストの増加

 

中~長

・BCPの継続的な見直し・改善

慢性

気温上昇による熱帯性感染症の増加

原材料の生産国における蚊媒介感染症等の流行によりサプライチェーンが寸断

 

中~長

・BCPの継続的な見直し・改善

期  間(短:0~3年未満/中:3~10年未満/長:10~30年)

 

(3)リスク管理

当社グループでは、気候変動に伴うリスクを将来の不確実性を高める要素と捉え、統合的なリスク管理プロセスへの反映を検討してまいります。CSR委員会は、関連部署と連携して、気候関連リスク・機会を幅広く抽出し、リスク・機会の事業に対する影響度をもとに、重要なリスク・機会の識別および評価を行い、対応策を検討しています。シナリオ分析の結果やリスク・機会に関する対応策の進捗状況は、定期的に取締役会へ報告しています。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、気候変動への対応を重要課題の一つとしており、気候関連リスクおよび機会を測定・管理するために、Scope1およびScope2の排出量を指標として定め、温室効果ガス排出量の状況をモニタリングしています。我が国における2050年カーボンニュートラル達成を目指すため、脱炭素経営を推進し、低炭素社会の実現に貢献してまいります。また、今後はバリューチェーン全体を通した環境負荷まで視野を広げて対応を進めていく予定です。

 

Scope1・Scope2の排出量実績(対象期間:2023年4月~2024年3月)

 

排出量[t-CO2]

構成割合

Scope1

燃料の燃焼等に伴う直接排出

2,030

50.0%

Scope2

購入した電力、熱の使用等に伴う間接排出

2,033

50.0%

Scope1+2の合計

4,063

100.0%

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する対応(ダイバーシティ&インクルージョンの推進)>

(2)戦略

持続的な成長を実現するためには多様な人材による新たな価値創造が不可欠であり、そのために自律的にキャリアを構築できる人材育成と多様な視点を活かし、機能させる組織風土の醸成に向けて各種制度等の見直しを進めてまいります。

また、ダイバーシティ推進は持続的に成長できる強い企業になるための経営戦略の一つであり、従業員それぞれの多様な考え方や経験を活かすことで新しい価値創造を目指します。ダイバーシティの取り組みとして、働き方改革は個人の事情や制約があっても働きやすい環境づくりを目標とし、様々な人事施策の導入や各組織でのマネジメントにより改革に取り組み、働きやすさの向上に努めています。これにより多様な人材の働く機会と多様性が活かされる組織となることで持続的な成長を実現してまいります。

 

(3)リスク管理

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関するリスク

当社グループは、創業以来培ってきた技術を基に最先端の技術開発を推進し競争力を維持するために、優秀な人材の確保が不可欠です。事業拡大や展開に合わせて計画通りに人材が確保・教育できない場合は事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

 

人材の多様性の確保等に関する指標

項目

目標達成年度

実績

(当連結会計年度)

採用した労働者に占める

女性労働者の割合

2026年3月期までに 50

28.6

男性労働者の育児休業取得率

2026年3月期までに 100

100.0

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(知的財産に関するリスク)

当社グループは、開発する製品は多種、広範囲で、これに関連する知的財産権もまた複雑で多岐にわたっております。新製品の開発にあたっては、他者の権利を侵害しないように細心の注意を払っております。現在、第三者より知的財産権に関する侵害訴訟は提起されておりませんが、権利侵害等の理由により第三者から販売差し止め等の訴訟を提起される可能性があります。また、第三者による権利侵害があり類似品が製造されることを完全に防止できない可能性があります。

このように、知的財産権における保護の失敗や不当な侵害は、当社グループの事業展開、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(金利変動によるリスク)

当社グループは、相対的に有利子負債比率が高い水準にあります。金利の固定化、金利スワップ取引等による金利変動リスクの回避を視野に入れ、調達コストの低減を心がけておりますが、今後金利が上昇した場合には経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(資金調達に係るリスク)

当社グループは、金融機関と締結している借入に係る契約の一部に財務制限条項が付されており、同条項に抵触し、期限の利益を喪失した場合には当社の財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(原材料高のリスク)

当社グループ製品の主要原材料はいずれも値上げ圧力が強く、シリコンオイル、樹脂、天然ゴムなどの商品市況の影響による価格上昇も要因となり、製品原価に影響を及ぼす可能性があります。製品価格への転嫁や、合理化等の企業努力で値上げコストを吸収していく方針ですが、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(原材料・部品の調達リスク)

当社グループは、合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品等を調達しており、その調達はサプライヤーの供給する能力に依存しております。需要過剰の場合は十分な供給が受けられない可能性や、価格が高騰する可能性があります。さらに、自然災害等によりサプライチェーンが被害を受けた場合は生産活動に影響を及ぼす可能性があります。調達に関連するリスクを回避するため、複数のサプライヤーを確保し緊密な関係構築に努めておりますが、供給不足等の問題が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(災害発生のリスク)

当社グループの生産拠点は、栃木県に集中しており、予期せぬ地震や停電その他の災害が発生した場合には、開発、生産拠点等が大きな損害を受け、業績に影響を与える可能性があります。なお、一定期間以上築年数が経過して老朽化の進んだ一部の工場については、地震等の災害により大きな被害を受けることも想定されます。

 

(国際的活動及び海外進出のリスク)

海外で事業を行う際には、以下のような特有のリスクがあります。

・政治的、経済的、法制的、社会情勢の変化に伴う地政学的リスクの影響

・為替レートの変動

・社員の採用と雇用維持及びマネジメント

国際的活動に当社グループが十分に対処できない場合、事業展開、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(資産価値の変動、減損会計に対するリスク)

当社グループの保有する土地や設備、有価証券などの資産価値低下等による減損処理が必要となった場合、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(法的規制などのリスク)

当社グループの製造するコンドーム製品、メディカル製品等は基本的に薬機法の規制を受けており、これらの製造販売を行うためには、厚生労働大臣の承認、製造所については都道府県知事の許可を必要とします。許認可の未承認や取り消し等により事業展開、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(製品の品質問題に関するリスク)

当社グループは品質管理には万全を期しておりますが、現在の技術・管理水準を超える品質に与える重大な問題等により、製造物責任に基づく製品の回収・損害賠償責任等に至るおそれがあり、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(情報システム・セキュリティリスク)

当社グループは、経営情報資産・ネットワーク設備等について社外への漏えい及び不正アクセスを防ぐためにクラウド化、ファイアウォールなどのセキュリティの強化、社内啓蒙に努めております。しかし、予期しないコンピュータウイルスの発生・不正アクセスなどその規模によっては業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(環境保全に関するリスク)

当社グループは水質汚染、有害物質、廃棄物などに関する種々の環境関連法令及び規制等の適用対象となる多数の製造設備を保有しております。設備の管理や生産活動には万全の注意を払い、様々な対策を講じております。環境関連法令及び規制等の遵守、追加的な環境改善への取組み、不測の事態への対応等が極めて困難な場合や関連費用の増加、違反による事業停止などにより業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(人材確保に関するリスク)

当社グループは創業以来培ってきた技術を基に最先端の技術開発を推進し競争力を維持するために、優秀な人材の確保は不可欠です。事業拡大や展開に合わせて計画どおりに人材が確保・教育できない場合は業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高を受けて個人消費が伸び悩むほか、海外経済の減速に伴う輸出の停滞など経済の回復ペースは緩やかなものとなりました。

世界経済については、欧米を中心に急速な金融引締めによる金利上昇の影響と、中国における不動産市場や民間投資の停滞により、景気減速局面が続きました。

このような状況の下、当社は精密機器事業を中心に市場需要を丹念に取込み、年度後半からの需要回復を前提に活動いたしましたが、景気減速を背景とした市況回復の遅れが続き、年間を通して厳しい状況が続きました。

また、従業員の処遇改善や部材高騰等のコスト上昇を、合理化と販売価格の適正化等による利鞘の確保により吸収に努めましたが、売上減少の影響が大きく前年比で大幅な減益となりました。

医療機器事業が展開する主力のヘルスケア部門については、国内市場向けは依然として少子高齢化に伴う市場縮小の傾向が続いており、取扱いアイテムの構成見直しと製造コストの削減による採算強化に取り組んでおりましたが、生産販売体制や新規設備の見直しと共に、設計や製造工程の再構築を通じた「ものづくり力」の強化に取り組み、徐々に成果が出てまいりました。

精密機器事業においては、国内外の製造関連企業を中心とした顧客ニーズに対応すべく、ハイレベルな製品開発、新たな非対面営業による提案営業の試み、QCDの強化に取り組んでおりますが、主力市場の需要低迷が想定以上に長期化し、売上面で苦戦した1年となりました。

その結果、当連結会計年度の売上高は、7,508百万円と前年同期と比べ577百万円(△7.1%)の減少となりました。

また、利益面につきましては、生産合理化と投資計画の見直しや諸経費の節減と共に販売価格適正化に継続的に取り組みましたが、売上高減少の影響が大きく、営業利益は439百万円と前年同期と比べ321百万円(△42.2%)の減益、経常利益は382百万円と前年同期と比べ347百万円(△47.7%)の減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は289百万円と前年同期と比べ227百万円(△44.0%)の減益となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。なお、セグメント損益は、営業利益又は営業損失に基づいております。

 

医療機器事業

主力のヘルスケア部門については、国内市場においては採算を重視した製品・商品ラインナップの絞り込みと販売チャネル選択に注力いたしました。また、海外市場向けには前期比で出荷数が大幅に増加したほか、円安に伴う円ベースでの販売増加効果も売上底上げの要因となりました。

新素材コンドームSKYNの売上やメディカル製品の売上も堅調に推移いたしました。

利益面ではヘルスケア事業における不採算製品の見直し、販売費節減への継続的な取組みに加えて、生産効率等の改善に向けた取組みの効果が徐々に発揮されてきており、採算が大幅に改善しました。

また、メディカル製品につきましては、労務費の上昇や原料切替に伴う生産コストの上昇を生産効率化で吸収しきれませんでしたが、子会社の不二ライフの業績が好調に推移したことがセグメント利益を押し上げ、前期比増益となりました。

この結果、売上高は2,367百万円と前年同期と比べ44百万円(1.9%)の増加となりました。

セグメント利益は、5年ぶりに黒字を計上し、8百万円(前年同期は103百万円の損失)となりました。

 

精密機器事業

精密機器事業は一般産業機械市場の需要低迷が想定以上に長期化したことや欧州市場の景気回復の遅れや中国市場の景気減速が影響し、一部の取引先業種で在庫調整が発生したこと等が重なり、大幅な減収となりました。

労務費の上昇や部材等のコスト上昇を生産の合理化と販売価格の適正化により吸収し、原価コントロールに努めましたが、売上減少の影響が大きく、販売費を含めた利益率の下押し要因となりました。

この結果、売上高は4,168百万円と前年同期と比べ942百万円(△18.4%)の減少となりました。

セグメント利益は、831百万円と前年同期と比べ391百万円(△32.0%)の減益となりました。

 

SP事業

主力取引先に対して企画商品を中心にバルーンの販売が好調に推移いたしました。

この結果、売上高は735百万円と前年同期と比べ320百万円(77.4%)の増加となりました。

セグメント利益は、商品構成比の変更等に伴い計画比でコストが膨らみましたが、36百万円と前年同期と比べて19百万円(122.1%)の増益となりました。

 

食品容器事業

海外向け販売が伸びず、売上計画を下回ったことにより、売上高は236百万円と前年同期と比べ0.2百万円(△0.1%)の減少となりました。

セグメント利益は、労務費の上昇や原料切替に伴う生産コストの上昇を販売増加や生産効率化で吸収できず、29百万円と前年同期と比べ39百万円(△57.1%)の減益となりました。

 

 生産、仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

医療機器事業

1,116,176

6.7

精密機器事業

4,112,116

△17.6

食品容器事業

187,848

△8.2

5,416,141

△13.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

 

② 仕入実績

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

医療機器事業

954,646

△9.8

精密機器事業

28,137

△57.0

SP事業

481,230

68.5

食品容器事業

13,684

13.6

1,477,699

3.9

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、仕入価格によっております。

3 当連結会計年度のSP事業におきまして、仕入実績が著しく増加しました。
これは、市場の回復による大口顧客向け定期商品及び新商品の売上が好調だったことによります。

 

③ 受注実績

セグメントの名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

精密機器事業

3,311,562

△23.3

720,910

△17.6

3,311,562

△23.3

720,910

△17.6

(注) 精密機器事業の一部についてのみ受注生産を行っており、他の精密機器事業及び他のセグメント事業について

は見込み生産を行っております。

 

④ 販売実績

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

医療機器事業

2,367,054

1.9

精密機器事業

4,168,915

△18.4

SP事業

735,208

77.4

食品容器事業

236,937

△0.1

7,508,117

△7.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度のSP事業におきまして、販売実績が著しく増加しました。
これは、市場の回復による大口顧客向け定期商品及び新商品の売上が好調だったことによります。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社テック

864,041

10.7

828,434

11.0

ピップ株式会社

918,014

11.4

813,653

10.8

ダイドー株式会社

1,082,332

13.4

4 当連結会計年度について、当該割合が100分の10未満の相手先は記載を省略しております。

 

(2)財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は、6,318百万円で前年比65百万円増加しました。主な増加要因は、商品及び製品の90百万円、仕掛品の207百万円などであり、主な減少要因は、現金及び預金の241百万円、受取手形及び売掛金の113百万円などであります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は、5,002百万円で前年比212百万円減少しました。主な要因は、建物及び構築物の133百万円、機械装置及び運搬具の53百万円、リース資産の53百万円の減少などであります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は、4,819百万円で前年比233百万円減少しました。主な要因は、短期借入金の105百万円、未払法人税等の100百万円の減少などであります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は、2,649百万円で前年比195百万円減少しました。主な要因は、長期借入金の81百万円、リース債務の94百万円の減少などであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、3,857百万円で前年比280百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金の226百万円の増加などであります。この結果、自己資本比率は34.1%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,365百万円と前年同期と比べ

242百万円(△15.1%)の減少となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、210百万円の収入(前年同期は771百万円の収入)となりました。
 資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益375百万円、売上債権の減少額95百万円などであり、主な減少要因は、棚卸資産の増加額328百万円、仕入債務の減少額82百万円などであります。棚卸資産の増加は、取引先の在庫調整および部材高騰と円安による在庫単価上昇の影響によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、122百万円の支出(前年同期は75百万円の支出)となりました。
 資金の主な減少要因は、有形固定資産の取得87百万円であります。これは主に精密機器事業における販売管理システムの更新および工場設備の更新によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、346百万円の支出(前年同期は675百万円の支出)となりました。
 資金の主な増加要因は、長期借入れによる収入300百万円などであり、主な減少要因は、長期借入金の返済341百万円、短期借入金の返済105百万円、リース債務の返済93百万円などであります。営業活動によるキャッシュ・フローを設備投資、有利子負債の削減、内部留保、株主還元にバランス良く配分する方針に基づき活動し、財務体質の強化に努めております。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として営業活動から得られるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。運転資金等の短期の資金需要につきましては自己資金に加えて35億円のコミットメントライン契約により機動的な調達を確保しております。設備投資等の長期資金需要につきましては、資金需要の期間及び目的を勘案し、金融機関からの長期借入やリース等の選択肢から最適な調達方法を検討して対応しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらの見積り及び仮定については過去の実績等に基づいて合理的に判断しておりますが、実際の結果は異なる可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、「健康と豊かさに貢献する」ために時代をリードする製品造りを基本理念とし、当連結会計年度の研究開発活動は、栃木・新栃木・真岡・栃木千塚工場の研究部署においてそれぞれの製品群につき新製品の試験的製作、あるいは新技術の研究等に取り組みつつ次期展開にも備えております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は194百万円であります。

 

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(医療機器事業)

 当社が中心となってコンドームの改良から製品の開発及び新しい医療機器の開発研究、さらに生産技術の開発に至るまで行っております。当事業に係る研究開発費は、40百万円であります。

 

(精密機器事業)

 当社が中心となってショックアブソーバ(緩衝器)のソフト&サイレントを実現する製品の開発、さらに生産技術の開発に至るまで行っております。当事業に係る研究開発費は、142百万円であります。

 

(食品容器事業)

 当社が中心となって食品容器の改良から製品の開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、0百万円であります。

 

(全社共通)

 当社が中心となって新製品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、10百万円であります。