文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営戦略等
当社は、株主をはじめ全てのステークホルダーに期待され信頼されるグローバルな企業として企業価値を高めていくとともに、広く地域・社会に貢献し、快適で魅力ある新しい生活価値を創出し続けることを、会社の基本方針としております。
また、会社経営の基本精神である企業理念は次のとおりであります。
・現地現物主義に立ってお客様の期待に応え、より良い製品を責任を持って提供します。
・堅実な経営基盤をもとに時代の変化に柔軟に適応し、新しい時代を切り開きます。
・独自技術及び研究開発を充実させ、新たなニーズを積極的に開拓します。
・地球環境に責任を持った企業活動と環境に優しい技術開発を進めます。
この基本方針に則り、当社グループは、2025年を目標年度とした「新中期計画」を策定し公表しております。この「新中期計画」の目標達成イメージは、従来から取り組んできた「飽くなき技術革新」への継続的な注力と、「新市場への挑戦」「新分野の創出」で構築したグローバル体制の成果最大化に加え、経営基盤強化のための組織体質の強化活動・利益創出の活動を推進し、更に経済的・社会的価値の高い企業グループとなることであります。
具体的な数値目標として、2025年までに連結売上収益1兆円以上、連結事業利益1,000億円以上などを掲げ、目標達成に向けて邁進してまいります。
具体的な経営戦略としましては、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーとして、持続的成長の実現を通じて企業価値の最大化を目指します。
(2)経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題
今後の世界経済の見通しは、米中の通商問題の動向、中国の経済成長率の減速、英国のEU離脱によるグローバルな影響、中東地域での地政学的リスクの顕在化、新型コロナウイルス感染症による影響など、景気の不確実性が一層高まっていくものと予想しております。
わが国経済においても、消費税率の引き上げによる景気への影響と、消費マインドの改善に繋がる財政不安の解消や賃上げ動向には不透明感があることに加えて、新型コロナウイルス感染症による影響も重なり、景気の悪化が懸念される状況となっております。
このような経営環境に対応するため、当社グループは、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したリスク要因を踏まえながら、次のような課題に取り組んでまいります。
(タイヤ事業)
国内市場においては、低燃費タイヤにおけるプレゼンス維持向上を目指して新商品を順次投入してまいります。「ダンロップ」ブランドでは、「事故のない毎日をつくりたい。」をブランドメッセージとして発信し、安全が長続きする性能持続技術を搭載した「VEURO VE304」等の高機能商品を拡販してまいります。また、テニス事業における「ダンロップ」ブランドの活用拡大、価値向上への取り組みにより、タイヤ事業とのシナジー効果も最大限引き出してまいります。
海外市場においては、新興諸国での拡販に加えて、ブランド価値向上を図っている「ファルケン」ブランドを活用し、欧米での拡販を継続します。また、現地テクニカルセンターも活用した新車装着用タイヤの納入拡大によるブランド認知の向上を進めるほか、需要が拡大しているSUV用をはじめとする高機能タイヤのプレミアムカー納入拡大等を通じてグローバルに増販してまいります。
開発面では、自動車業界において100年に1度の変革が進む中、未来のモビリティ社会で求められるタイヤの開発及び周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」を活用し、次世代タイヤの開発を進め、これまでとは異なる付加価値を備えたモノづくりを展開してまいります。例えば、タイヤの回転速度の細かい変化を解析することにより路面・タイヤをモニタリングし、自動運転の高度化にも寄与する技術「センシングコア」、タイヤ性能の低下を様々な面から抑制する「性能持続技術」、タイヤパンクの心配から解放される「エアレスタイヤ」等の技術開発スピードを高め、新しいモビリティ社会がタイヤに求める価値を創出し、更なる進化を目指してまいります。
生産面では、まずは米国工場・南アフリカ工場の生産安定化を図るとともに、世界各地での増販にあわせた高機能タイヤの生産能力増強等を継続してまいります。また、生産現場の様々な課題に対応すべく人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTといったデジタル技術活用と設備自動化を進め、スマートファクトリーの実現に向けた新生産システム構想を推進し、持続的な成長を支える供給体制の構築に努めてまいります。
(スポーツ事業)
ゴルフ用品では、ゴルフクラブ・ゴルフボールで国内トップシェアを維持・拡大すべく、主力の「ゼクシオ」シリーズを軸に「スリクソン」「クリーブランドゴルフ」の各種商品の拡販を進めてまいります。海外市場では、特に世界最大市場である北米でのマーケティング体制の強化にも取り組み、拡販を進めてまいります。また、シミュレーション技術や材料開発等の独自技術によってダントツ性能の商品を開発・投入してまいります。
テニス用品では、「ダンロップ」のテニスボールが2019年のATPツアー使用率No.1となったほか、全豪オープン公式球として採用されるなど、グローバルマーケティング施策を活性化してまいりました。引き続き、「ダンロップ」ブランドの価値向上を図り、一層の拡販を進めてまいります。
ウェルネス事業では、「ダンロップスポーツクラブ」や「ジムスタイル」の新規出店及び会員獲得に努めてまいります。
(産業品他事業)
医療用精密ゴム部品は、スロベニア新工場での量産体制の確立を進めながら、今後も成長が見込まれる欧州市場を中心にグローバル展開を継続してまいります。
制振事業では、建物の揺れを低減する戸建て住宅用制震ユニット「ミライエ」を中心に更に販売を拡大し、安全で高品質な商品の供給に努めます。
すべての商材において、品質や機能面で付加価値の高い商品を開発・提供することにより、更なる成長を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関し、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項のうち主なものは次のとおりであります。
記載内容のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
(1)為替変動の影響
為替の変動は、当社グループが輸出販売する製品の価格、購入する原材料の価格及び外貨建資産・負債の価値、外貨建財務諸表の邦貨換算等に影響を与えますが、円が他の通貨に対して円高になると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、連結売上収益に占める海外売上収益の割合を2001年12月期の25.2%(日本基準での数値)から2019年12月期の63.2%(IFRSでの数値)へ高めてきており、今後も当社グループの業績等が為替変動により受ける影響は拡大する可能性があります。
このため、当社グループでは、為替予約や通貨ごとの輸出入のバランス化等により、為替変動によるリスクの軽減を図っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではありません。
(2)原材料価格の変動
当社グループの製品の主要原材料は、天然ゴム、石油化学製品及び金属材料です。従いまして、天然ゴム価格、原油価格、鋼材価格等の商品市況価格が上昇すると、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)金利の変動
当社グループは、有利子負債の削減を推進し財務体質の改善を図るとともに、資金調達手段の多様化や金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)製品の品質による影響
当社グループでは、所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じておりますが、製品の欠陥やクレームの発生を皆無にすることは困難です。
当社グループは、欠陥が発生した場合又は裁判等により欠陥が認定された場合に備え、欠陥に起因する損害賠償等の諸費用に対する損害保険を付保しておりますが、保険で補償されない費用が発生する可能性があります。また、クレームに対する処理費並びに製品の回収・交換による費用が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの業績や財政状態並びに社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)災害時の影響
当社グループは日本・アジア地域を中心に世界の広範な地域で事業を展開しており、それらの事業は自然災害、疾病、戦争、テロ等に直接又は間接の影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①業績
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減率 |
|
|
|
百万円 |
百万円 |
% |
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売上収益 |
894,243 |
893,310 |
△0.1 |
|
|
|
タイヤ事業 |
768,012 |
767,551 |
△0.1 |
|
|
スポーツ事業 |
84,477 |
84,705 |
0.3 |
|
|
産業品他事業 |
41,754 |
41,054 |
△1.7 |
|
事業利益 |
60,681 |
53,878 |
△11.2 |
|
|
|
タイヤ事業 |
51,187 |
46,183 |
△9.8 |
|
|
スポーツ事業 |
5,489 |
4,282 |
△22.0 |
|
|
産業品他事業 |
4,013 |
3,397 |
△15.4 |
|
|
調整額 |
△8 |
16 |
- |
|
営業利益 |
57,155 |
33,065 |
△42.1 |
|
|
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
36,246 |
12,072 |
△66.7 |
|
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
為替レートの前提
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||
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1米ドル当たり |
110 |
円 |
109 |
円 |
△1 |
円 |
|
1ユーロ当たり |
130 |
円 |
122 |
円 |
△8 |
円 |
当期の世界経済は、米国の着実な景気の回復、欧州における緩やかな景気回復の動きが持続しましたが、中国の景気減速や、米中の通商問題の動向による景気の下振れリスクが高まるなど、不安定な状況で推移しました。
わが国経済につきましては、雇用環境は着実に改善し、個人消費の持ち直しはあるものの、海外経済の動向に関わる不確実性から、設備投資や輸出は弱含んでおり、景気の回復は緩やかなものとなりました。
当社グループを取り巻く情勢につきましては、天然ゴム価格及び石油系原材料価格は安定的に推移しましたが、市場における競合他社との競争が激化していることに加えて、ユーロ及び新興国通貨安が進行したこともあり、厳しい状況で推移しました。
このような情勢のもと、当社グループは、低燃費タイヤ・ハイパフォーマンスタイヤなどの高付加価値商品の更なる拡販の推進、欧米での販売力強化、「ダンロップ」ブランドの価値向上の取組に加えて、新市場・新分野に積極的に挑戦し、グループを挙げて事業の成長と収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みました。
この結果、当社グループの連結業績は、売上収益は893,310百万円(前期比0.1%減)、事業利益は53,878百万円(前期比11.2%減)と前期に比べて減収・減益となりました。加えてタイヤ事業における北米、南アフリカ工場では、主に生産性の改善が遅れたこと、産業品他事業におけるスイス工場では、販売計画に遅れが生じたことにより、各々の事業計画を見直した結果、のれん・固定資産の減損損失を計上することとなり、営業利益は33,065百万円(前期比42.1%減)となり、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は12,072百万円(前期比66.7%減)と大きく減益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(タイヤ事業)
タイヤ事業の売上収益は、767,551百万円(前期比0.1%減)、事業利益は46,183百万円(前期比9.8%減)となりました。
国内新車用タイヤは、納入車種拡大によるシェアアップや低燃費タイヤを中心とする高付加価値商品の拡販により販売数量が増加し、売上収益は前期を上回りました。
国内市販用タイヤは、「ダンロップ」ブランドの低燃費タイヤを中心とした高付加価値商品の拡販に加えて、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要を取り込みましたが、暖冬の影響により冬タイヤ販売が前期を下回ったため、売上収益は前期を下回りました。
海外新車用タイヤは、欧州、北米のほか、新興国での納入拡大などにより、売上収益は前期を上回りました。
海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では中国の景気減速の影響を受けましたが、欧州・アフリカ地域は、欧州を中心に「ファルケン」ブランドの販売を順調に伸ばしました。米州地域では、北米で4WD・SUV用タイヤ
「WILDPEAK(ワイルドピーク)」が好調に推移するなど「ファルケン」ブランドの販売を伸ばしました。これらにより売上収益は前期を上回りました。
以上の結果、タイヤ事業の売上収益は前期を下回り、事業利益も為替の影響に加えて、固定費、経費の増加等により減益となりました。
(スポーツ事業)
スポーツ事業の売上収益は、84,705百万円(前期比0.3%増)、事業利益は4,282百万円(前期比22.0%減)となりました。
国内ゴルフ用品ではゼクシオのリブランディングを実施し、さらに幅広いゴルファーに「確実に、まっすぐ、遠くまで飛ばす」新しいゼクシオテクノロジーを搭載したクラブ「ゼクシオ イレブン」「ゼクシオ エックス」を12月に発売、好調な滑り出しを見せ、売上収益は前期を上回りました。
海外ゴルフ用品では、北米でゴルフボールNEW「スリクソン Z-STARシリーズ」や新製品ゴルフクラブ「クリーブランド CBX2ウエッジ」などの販売が好調に推移しましたが、アジア第2の市場である韓国で高付加価値品の販売が減速し、売上収益は前期を下回りました。
テニス用品では、全豪オープン公式球の「DUNLOP Australian Open」を国内及び海外各地域で発売し、また、テニスラケットのダンロップ「CX」シリーズを国内では2018年12月、欧米では2019年1月に発売しましたが、特に国内市況が前期を下回り、売上収益は前期を下回りました。
ウェルネス事業では、前期に引き続き会員数が堅調に推移し、コンパクトジム「ジムスタイル」の新規出店もあり、売上収益は前期を上回りました。
以上の結果、スポーツ事業の売上収益は前期を上回りましたが、事業利益は、韓国での販売減に加え、商品原価アップや、為替のマイナス要素等が影響し、減益となりました。
(産業品他事業)
産業品他事業の売上収益は、41,054百万円(前期比1.7%減)、事業利益は3,397百万円(前期比15.4%減)となりました。
医療用精密ゴム部品や制振事業が堅調に推移したものの、OA機器用精密ゴム部品では主要OA機器メーカーのプリンター・コピー機の生産減少、インフラ系商材における体育施設の受注減もあり、減収となりました。
以上の結果、産業品他事業の売上収益は前期を下回り、事業利益も減益となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ13,895百万円減少し、当連結会計年度末には60,631百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、91,458百万円(前連結会計年度比8,638百万円の収入の増加)となりました。
これは主として、棚卸資産の増加9,513百万円、営業債務及びその他の債務の減少13,702百万円、法人所得税の支払17,236百万円などの減少要因があったものの、税引前利益27,295百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上67,941百万円、営業債権及びその他の債権の減少11,268百万円などの増加要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、63,417百万円(前連結会計年度比2,077百万円の支出の減少)となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出59,068百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、40,979百万円(前連結会計年度比38,857百万円の支出の増加)となりました。
これは主として、短期借入金、長期借入金及び社債が純額で14,169百万円減少するなどの減少要因があったほか、配当金の支払13,150百万円を行ったことなどによるものであります。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
タイヤ事業 |
673,289 |
5.6% |
|
スポーツ事業 |
48,676 |
2.4% |
|
産業品他事業 |
28,480 |
△3.9% |
|
合計 |
750,445 |
5.0% |
|
(注)1.金額は、販売価格によっております。 |
||
|
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 |
||
②受注実績
当社グループの製品は、大部分が見込生産であり、ごく一部の製品(防舷材等)についてのみ受注生産を行っております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
タイヤ事業 |
767,551 |
△0.1% |
|
スポーツ事業 |
84,705 |
0.3% |
|
産業品他事業 |
41,054 |
△1.7% |
|
合計 |
893,310 |
△0.1% |
|
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。 |
||
|
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 |
||
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。
連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、会計上の見積りや前提が必要となりますが、当社グループは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。
当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの新中期計画における数値目標は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載のとおりですが、当連結会計年度の経営成績に重要な影響を与えた主なものは、固定費・経費の増加及び為替の円高であります。
主力のタイヤ事業において、当連結会計年度においては、原材料面では、天然ゴム価格及び石油系原材料価格が安定的に推移したことにより、増益要因となりました。販売面では、国内外新車向けを中心に販売本数は増加したものの、国内市販市場において、暖冬の影響で冬タイヤ販売が前期を下回ったことにより、数量構成他は若干の増益にとどまりました。また、主に国内外の市販市場において販売価格の改定を実施したことにより、価格要因で増益となりました。一方、為替が円高傾向で推移したことにより、減益要因となったほか、主に海外拠点への投資に伴う減価償却費及び人件費等の固定費や販路拡大による経費がそれぞれ増加し、減益要因となりました。
この結果、前連結会計年度に対し、原材料価格全体では約61億円、販売価格の改定で約15億円の増益要因となったものの、為替で約67億円、固定費で約36億円、経費で約33億円が、それぞれ減益要因となりました。低燃費タイヤなど高付加価値商品の更なる拡販、海外工場における生産能力の増強や生産性の改善など、収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みましたが、タイヤ事業全体では減益となりました。
スポーツ事業及び産業品他事業の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①業績」に記載のとおりであります。
以上の結果、売上収益は893,310百万円と前連結会計年度に比べ933百万円(△0.1%)の減収、事業利益は53,878百万円と前連結会計年度に比べ6,803百万円(△11.2%)の減益となり、売上収益事業利益率は前連結会計年度に比べ0.8ポイント低下し、6.0%となりました。
その他の収益及び費用では、のれん・固定資産の減損損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ17,287百万円の減益となりました。
この結果、営業利益は33,065百万円と前連結会計年度に比べ24,090百万円(△42.1%)の減益となり、売上収益営業利益率は前連結会計年度に比べ2.7ポイント低下し、3.7%となりました。
金融収益及び費用では、為替差損及びデリバティブ評価損が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ1,039百万円の増益となりました。
以上の結果、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は12,072百万円と前連結会計年度に比べ24,174百万円(△66.7%)の減益となりました。
新中期計画における目標達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載の施策に取り組んでまいります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
・財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、1,035,484百万円と前連結会計年度末に比べて33,101百万円増加しました。現金及び現金同等物の減少などにより流動資産が16,836百万円減少したものの、IFRS第16号「リース」の適用による有形固定資産の増加などにより非流動資産は49,937百万円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、559,947百万円と前連結会計年度末に比べて30,371百万円増加し、有利子負債残高は、325,490百万円と前連結会計年度末に比べて42,008百万円増加しました。
当連結会計年度末の資本合計は475,537百万円と前連結会計年度末に比べて2,730百万円増加しました。うち親会社の所有者に帰属する持分は460,800百万円と前連結会計年度末に比べて2,873百万円増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は44.5%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,752円07銭となりました。
・キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」の項に記載のとおりでありますが、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローでは28,041百万円のプラスとなりました。
今後、主に世界各地での増販に合わせた高機能タイヤの生産能力増強のための設備投資を行っていく方針でありますが、販売数量の増加と採算性の改善により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を実現しながら、必要に応じ金融市場や金融機関からの調達も活用するなど、「成長」と「流動性の確保並びに財務体質の向上」との両立を図る所存であります。
また、当社と国内子会社、当社と一部の海外子会社との間でCMS(キャッシュマネジメントシステム)による資金融通を行っており、当社グループ内での資金効率向上を図っております。
(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)
IFRSに準拠して作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりであります。
(のれんの償却停止)
日本基準では、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で均等償却を行っておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降、償却せず毎期減損テストを行っております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度におきましては、「販売費及び一般管理費」が5,537百万円減少しております。当連結会計年度におきましては、「販売費及び一般管理費」が5,118百万円減少しております。
(退職後給付に係る費用処理)
日本基準では、発生した数理計算上の差異及び過去勤務費用を一定の期間で償却しておりましたが、IFRSでは、数理計算上の差異は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。過去勤務費用は、純損益として認識しております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度におきましては、「売上原価」、「販売費及び一般管理費」及び「金融費用」が合計で2,304百万円増加、「その他の包括利益」が1,648百万円増加しております。当連結会計年度におきましては、「売上原価」、「販売費及び一般管理費」及び「金融費用」が合計で1,444百万円増加、「その他の包括利益」が1,078百万円増加しております。
(表示組替)
日本基準において、「営業外収益」、「営業外費用」、「特別利益」、「特別損失」として表示していた項目を、IFRSでは財務関連損益については「金融収益」及び「金融費用」として表示し、それ以外の項目については、「その他の収益」、「その他の費用」及び「持分法による投資利益」として表示しております。
該当事項はありません。
当社グループにおいては、当社の研究開発組織・施設を核として世界各地に所在する子会社・関連会社との密接な連携のもと、タイヤ・スポーツ・産業品他事業、幅広い領域・分野で研究開発を推進しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
セグメント別の主要な研究開発活動は、次のとおりであります。
(1)タイヤ事業
当社グループのタイヤ技術研究開発は、神戸本社に隣接したタイヤテクニカルセンターを中心に、欧州・米国のテクニカルセンターと連携して、「タイヤが地球環境の為に貢献できること」をテーマに、「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つの方向性で環境配慮商品の開発に取り組んでおります。
また、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化する中、当社はタイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」を掲げております。例えば、タイヤの摩耗、経年による性能低下を抑制し、新品時の性能を長く持続させる「性能持続技術」や、商品ライフサイクル全体で環境性能を高めて循環型社会の実現に寄与する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方を採り入れた商品開発を推進するとともに、デジタルツールを用いて得られる様々なデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指しております。
「SMART TYRE CONCEPT」の核となる技術の一つであるタイヤセンシング技術「センシングコア」が、2019年3月にドイツ・ハノーバーで開催された「Tire Technology Expo 2019」内で開かれた「Tire Technology International Awards for Innovation and Excellence」において、優れた先進技術に贈られる「Tire Technology of the Year」を受賞しました。「センシングコア」は、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析し、路面の滑りやすさやタイヤにかかる荷重などの情報を検知する技術です。この技術を発展させることで、例えば検知した情報をクラウド経由で街・社会の情報に統合すれば、その情報を入手した車両は路面やタイヤに起因する危険をあらかじめ察知し、回避することが可能になります。
データを利用した新たなソリューションサービスとしては、2019年5月に発表した群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)との協業によるレベル4(高度自動運転)に対応したタイヤ周辺サービスの共同研究について、自動運転車のタイヤ空気圧データとCRANTS内に設置されている自動運転管制所との連携が完了しました。これにより、車両が無人の場合でも遠隔でタイヤ空気圧のモニタリングが可能となり、自動運転車におけるパンクなどを想定したタイヤトラブルの予知保全に貢献します。今後、空気圧異常によるトラブル時を想定した、サービス体制の構築を進めてまいります。
また、2019年7月には、関西大学と共同で行っている、タイヤの内側に静電気を利用した発電デバイス(エナジーハーベスト)を取り付け、回転によって電力を発生させる技術の開発を発表しました。タイヤ内側に取り付けるTPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)などのセンサー類の電源供給として応用が期待でき、将来的にバッテリー不要のデジタルツールを活用したサービス創出に貢献できるものです。なお、本テーマは2018年10月の国立研究開発法人科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)シーズ育成タイプFS(注1)採択に引き続き、2019年10月には同プログラムの「産学共同フェーズ(シーズ育成タイプ)」に採択され、同機構の支援を受けながら開発を進めております。
原材料の分野においては、2019年10月にタイヤの原材料情報に加えてゴム内部の構造情報である高度分析データのリアルな情報から高精度なゴム物性推定や、使用前後の構造変化の検知によって使用後のゴム物性推定などに応用できるAI技術「Tyre Leap AI Analysis」の確立を発表しました。タイヤに用いられるゴムは天然ゴムや合成ゴムなどのポリマー、カーボンやシリカなどの補強剤、架橋剤や添加剤などで作られる複合体であり、各材料の配合量や構造といった様々な要因によって性能が決定されます。非常に複雑なゴムの内部構造に関し、今回確立したAI技術「Tyre Leap AI Analysis」により、人にはできない高精度な解析を実現し、画像(構造情報)から物性を導き出します。また、ゴムに配合されている原材料の情報と他の構造情報を組み合わせることで、さらに高精度な物性推定を可能にします。本技術の活用により、当社が「SMART TYRE CONCEPT」で掲げている「性能持続技術」の開発を加速させ、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献する安全・安心な高性能タイヤ開発につなげてまいります。
そして、2019年12月には、「SMART TYRE CONCEPT」の主要技術を採用した第一弾商品として、「エナセーブ NEXTⅢ」を発売しました。AI技術「Tyre Leap AI Analysis」と新材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」(注2)を駆使し、タイヤの摩耗や経年による性能低下のメカニズムを分子レベルで解明し、これまでと全く異なる新しいポリマー「水素添加ポリマー」をタイヤで初めて採用することで、ゴム内部の分子の強い結合力と切れても戻る結合を実現、ウエットグリップ性能の低下を従来品と比べて半減させる「性能持続技術」のコンセプトを取り入れました。さらに、「エナセーブ NEXTⅢ」は、高機能バイオマス材料であり国が重点産業として推進している素材であるセルロースナノファイバーを世界で初めてタイヤ用ゴムに採用するとともに、タイヤラベリング制度において最高グレード「AAA-a」も達成しており、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の観点から環境負荷低減にも貢献できるものです。
当事業に係る研究開発費は
注1 大学等の研究成果に基づく技術シーズの可能性検証及び実用性検証を行い、中核技術の構築を目指す産学共同の研究開発を支援するプログラム
注2 「ADVANCED 4D NANO DESIGN(アドバンスド フォーディー ナノ デザイン)」
ナノからミクロンレベルまでゴムの内部構造を連続的かつ鮮明に解析し、シミュレーションすることを可能とする技術
(2)スポーツ事業
スポーツ事業本部並びに米国のRoger Cleveland Golf Company, Inc.に研究開発部門を設置しており、コンピューターシミュレーション技術等を用いて新技術・新商品の開発並びに評価、試験に取り組んでおります。
兵庫県丹波市の「ゴルフ科学センター」では、スイングマシーンによるテストに加え、トッププロからアベレージゴルファーまでの様々な方のヒューマンテストを行い、クラブやボールの特性に加え、スイングとクラブの関係など、膨大なデータを集積し、総合的に測定・解析・評価を行っております。
これらの技術により、ゴルフクラブでは11代目となる「ゼクシオ イレブン」及び「ゼクシオ エックス」を開発し、2019年12月に発売しました。ゴルフクラブの手元に重量を集中させ、テークバック時のヘッドを支える力を軽減させることで、理想のトップポジションを作り出す「WEIGHT PLUS(ウエイトプラス)」テクノロジーを開発。これによりコックがたまり深く安定した理想のトップ「飛びのパワーポジション」を実現。より速く、正確なインパクトを可能にし、高い飛距離性能を実現できるクラブとなりました。
ゴルフボールでは、「スリクソン Z-STARシリーズ」を開発し、2019年2月に商品化しました。高分子材料SeRMセルム®を世界で初めてゴルフボールに使用し、飛距離性能とスピン性能を高次元で両立させました。
テニスラケットでは、ダンロップ「SX」シリーズを開発し、2019年12月に発売しました。フェースのトップ部にストリングの可動域と可動方向が異なる2種類の楕円グロメットを配置する新技術「スピンブーストテクノロジー」を開発。これにより、弾道のブレを補正することが可能となり、近年のゲームの高速化で増加しているオフセンターショットに対応することが可能となりました。
当事業に係る研究開発費は
(3)産業品他事業
高減衰ゴムを用いた制振事業、医療用精密ゴム部品、OA機器用精密ゴム部品等の商品において、消費者ニーズに合わせた商品開発に積極的に取り組んでおります。
制振事業では、壁の少ない狭小住宅や3階建て向けの制震ユニット「ミライエ Σ(シグマ)」について、1階部分の高さに関する適用範囲を拡大することで住宅の設計性を向上させ、さらに多くの住宅へ高性能の安全・安心を提供できるようになりました。
・アルファベットのAを象徴的に扱い、親しみやすく覚えやすい形状のフレームを採用した点
・ゴムの性能を生かして耐震建材に使用し地震の揺れを最大95%まで低減(注3)させた点
・設計者の設計性や施工業者の施工性の向上も図っている点
これらが評価され「ミライエ Σ(シグマ)」が「2019年度グッドデザイン賞」を受賞しました。ミライエシリーズでの受賞は「2012年度グッドデザイン賞」(「ミライエ」が受賞)に続き、二度目の受賞となりました。
当事業に係る研究開発費は
注3 2017年1月京都大学防災研究所によるミライエ軸組の実大実験の結果によります。