第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略等

当社は、企業理念体系「Our Philosophy」を基に、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献していくことを、経営の基本方針としております。この「Our Philosophy」は、私たちの存在意義=Purposeを「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」と定めて頂点に置き、「信念=Story」「ありたい姿=Vision」「たいせつにすべき価値観=住友ゴムWAY」からなる体系にしています。当社では、「Our Philosophy」をあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とした事業活動を推進するとともに、「Our Philosophy」を体現するために策定した「中期計画」の実現を目指してまいります。

 

ご参考:企業理念体系「Our Philosophy」

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2020年2月13日公表した2025年を目標年度とした中期計画は、従来から取り組んできた「飽くなき技術革新」への継続的な注力と、「新市場への挑戦」「新分野の創出」で構築したグローバル体制の成果最大化に加え、経営基盤強化のための組織体質の強化活動・利益創出の活動を推進し、さらに経済的・社会的価値の高い企業グループとなることを目標イメージとしております。

 

ご参考:中期計画の骨子

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具体的な数値目標として、2025年までに連結売上収益1兆円以上、連結事業利益1,000億円以上、ROE10%以上、D/Eレシオ0.5以下を掲げ、目標達成に向けて邁進してまいります。

 

ご参考:中期計画の財務数値目標

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経営戦略としましては、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーとして、持続的成長の実現を通じて企業価値の最大化を目指します。

「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」の具体的な施策は、「(2)経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおりとなります。

「ESG経営の推進」については、サステナビリティ活動の更なる推進のため、長期的な視点に立った施策の企画・推進を図る部門として「サステナビリティ推進本部」を2021年1月に新設しました。サステナビリティ推進本部を中心に全社で次のようなESG活動を展開し、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)達成に貢献してまいります。

[Environment(環境)]

技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」の開発による安全・環境性能実現、工場排水の100%リサイクル技術の拡大、国内外の主要拠点での完全ゼロエミッションの継続のほか、新たに次の3つの取り組みを推進してまいります。

(カーボンニュートラルに向けた取り組み )

日本政府は2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成を2020年10月に表明しました。当社はこの目標達成に全面的に賛同し、2050年までに工場から排出する二酸化炭素の100%削減を目指します。

・スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

自社で使用している化石燃料を、次世代エネルギーとして期待されている水素や、バイオマス等の再生可能エネルギーに切り替えることにより、2050年に100%削減します。なお、水素エネルギーについては現在、国内の主力タイヤ工場で実証実験を検討中です。

・スコープ2:他社から供給された電気の使用に伴う間接排出

太陽光発電パネルの設置拡大、グリーン電力の購入拡大を図ります。

・スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出

代表的な取り組みとしては、タイヤ、スポーツ、産業品の各分野で原材料のバイオマス比率を向上した商品の開発を目指してまいります。

(天然ゴムのサステナブル化に向けた取り組み)

こちらは3つの方向で取り組みを進めてまいります。

トレーサビリティでは、国際的な環境NGO(Non-governmental Organization:非政府組織)であるWWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)と2021年よりタイアップし、天然ゴムを持続可能なものとするための各種取り組みを進めてまいります。

生産性向上では、ゴムの木の成長促進と樹液採取の生産性向上につながる研究を実施中です。

臭気改善では、臭気低減天然ゴムの開発に成功しております。今後も更なる臭気改善を図り、工場周辺の環境改善に貢献してまいります。

(プラスチックの使用量削減に向けた取り組み)

海洋プラスチック問題は現在、世界中で大きな社会課題となっています。

当社でもタイヤラベルをはじめ、商品包装材や販促ツールにプラスチックを使用しておりますが、今後、段階的にプラスチックの使用量を削減してまいります。また製品の原材料においてもリサイクル可能な素材の可能性を今後、研究してまいります。

 

[Social(社会)]

多様な属性や価値観を持つ一人ひとりが尊重され、働きがいを持つことができる風土作りのため、従来の上司評価だけではなく多面評価も導入し健全なリーダーシップ育成に活用してまいります。また、AIやIoT、RPA(パソコンを使用した定型業務の自動化)といったデジタル技術活用により業務効率化を進め、付加価値の高い仕事や新しいことに挑戦する時間を創出するとともに、在宅勤務の更なる推進等により、多様な働き方の確立を進めてまいります。

健康経営の推進については、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業が選出される「健康経営銘柄2020」に、昨年初めて選出されました。「自分の健康は自分で守る」という健康経営宣言のもと、定期健康診断・ストレスチェックの実施とそのフォローの徹底やメンタルヘルスケアの拡充等、従業員の健康意識向上を図り、疾病予防と健康増進を進めてまいります。

 

[Governance(ガバナンス)]

「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載の体制で、グローバルな事業拡大や社会的要請の高まりなどを踏まえ、取締役会の実効性向上施策や海外も含めた子会社に対する定期監査の実施等を推進し、グループ全体のコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

今後の世界経済の見通しは、新型コロナウイルス感染症の再拡大による経済環境の悪化懸念に加えて、米中の通商問題の動向、中国の経済成長率の減速、地政学的リスクの顕在化等、景気の不確実性も一層高まっていくものと予想しております。

わが国経済でも、政府による各種政策の効果等により、緩やかな持ち直しの動きが続くことが期待されますが、感染再拡大のリスクもあり、厳しい状況が続くものと予想しております。

このような情勢のもと、当社グループは、これまで中期計画で掲げた課題を中心に市況や働き方の変化に合わせた個々のアクションプランを追加・修正しながら、着実に事業運営してまいりました。引き続き、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーの核として収益の質や成長の持続性を考慮しながら、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指し、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したリスク要因を踏まえながら、次のような課題に取り組んでまいります。

 

(タイヤ事業)

国内市場においては、低燃費タイヤにおけるプレゼンス維持向上を目指して新商品を順次投入してまいります。「ダンロップ」ブランドでは、「事故のない毎日をつくりたい。」をブランドメッセージとして発信し、安全が長続きする性能持続技術を搭載した「VEURO VE304(ビューロ ブイイー サンマルヨン)」等の高機能商品を拡販してまいります。

海外市場においては、新興諸国での拡販に加えて、ブランド価値向上を図っている「ファルケン」ブランドを活用し、欧米での拡販を継続します。日米欧に配置したテクニカルセンターを活用し、新車装着用タイヤの納入拡大によるブランド認知の向上と、市販用タイヤへの波及効果の最大化を推進してまいります。

開発面では、未来のモビリティ社会で求められるタイヤの開発及び周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」の具現化を推進します。また、当社の強みであるタイヤの回転速度の細かい変化を解析することにより路面・タイヤをモニタリングし、自動運転の高度化にも寄与する技術「センシングコア」をさらに進化させ、サービスモデル・提供価値を段階的に発展させることで、新しいモビリティ社会に求められる価値を提供してまいります。

生産面では、世界各地での増販にあわせ、高機能タイヤの生産能力増強等を継続してまいります。また、生産現場の様々な課題に対応すべく人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTといったデジタル技術活用と設備自動化を進め、持続的な成長を支える供給体制の構築に努めてまいります。

 

(スポーツ事業)

 スポーツ事業を取り巻く環境は依然厳しいものの、コロナ禍においても健康で充実した生活を送るためにスポーツの魅力や果たす役割の重要性が改めて認識されました。今後も、Eコマースの強化など新常態に適応した新しい事業スタイルを通じスポーツの「ヨロコビ」を提供し続けてまいります。

 ゴルフ用品では、増加している入門者・初心者層、気軽にスポーツを楽しむユーザーへの対応とともに、国内に加え、市場規模の大きい北米での増販を目指し、日米2拠点での開発体制で市場ニーズに応じたダントツ商品を投入することで、一層の拡販を進めてまいります。

 テニス用品では、2019年に引き続き2020年も、全豪オープン公式ボールサプライヤーとして試合球を提供、ATPツアーでも2年連続でボール使用率No.1となりました。こうして得た「ダンロップ」テニスボールへの高い評価を生かしながら、「ダンロップ」ブランドの価値向上と拡販につなげてまいります。

 ウェルネス事業では、健康志向の高まりを受けて、ゴルフスクール・テニススクール・フィットネス関連3子会社を合併し(2021年4月1日の予定)、シナジー効果を高めることにより新しい価値提供に取り組んでまいります。

 

(産業品他事業)

医療用精密ゴム部品では、今後更なる医療業界への社会的期待の高まりに応えるため、欧州を主としたグローバルでの供給体制の確立を継続してまいります。

生活用品事業では、新型コロナウイルス感染症等による感染症予防の観点から世界的に供給が逼迫している使い切り薄手手袋において、マレーシア工場での新ライン増設による供給能力増加を活かし、社会貢献及び収益力の強化に努めます。

制振事業では、引き続き堅調な販売を継続しており、今後も安全で高品質な商品供給に努めます。

 

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのある経営リスクについては、「リスク管理規定」に基づき、それぞれの担当部署および各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、経営会議等で審議しております。リスク分析・対応策の検討にあたっては、必要に応じて顧問弁護士等の専門家に助言・指導を求めております。経営リスクのうち、組織横断的なリスクについては、当社管理部門の各部が、それぞれの所管業務に応じ関連部署と連携しながら、全社的対応を行っております。

また、「リスク管理規定」に基づき社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しており、年2回開催する同委員会にて当社グループのリスク管理活動を統括し、リスク管理体制が有効に機能しているか適宜調査・確認しております。

当社グループにとって重大なリスクが顕在化し、又は顕在化が予想される場合には、「危機管理規定」に基づき、社長が危機管理本部を設置します。

このようなリスク管理体制のもと、グローバルに展開する当社の事業活動も考慮のうえ、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを次のとおり記載しております。ただし、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらのリスクを認識し、発生の回避および発生した場合の対応に努める所存であります。

 

(新型コロナウイルス感染症に係るリスク)

当社グループは、従来より新型インフルエンザ流行時の対応計画を策定するなど、感染症流行時の備えを進めて参りました。新型コロナウイルス感染症におきましても、リモートワークの環境整備を進め、在宅勤務の積極的な活用を推進するなど、感染拡大防止策の徹底を図っており、従業員の健康と安全確保を最優先に事業活動を継続しております。依然として本感染症の世界的な流行は収束しておらず、経済への影響が続くものと予想され、業務の停止やサプライチェーンの混乱等が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(政治経済情勢・需要変動・法律・規制等に係るリスク)

当社グループは、タイヤ事業、スポーツ事業及び産業品他事業を展開しております。各分野や各地域に特有の需要変動や、環境対応など顧客ニーズの変化、また、各国の政治情勢の影響を受けることがあります。海外におけるテロ、暴動、ストライキ等のリスクに対しては、リスクコンサルタント等の専門家や政府関係機関等より情報収集を行うとともに、有事の際には現地拠点の安全確認、現地情報の社内展開を行っております。さらに、アジア、欧州、米州の各地域を統括する本部を設置し、必要に応じて弁護士やコンサルタント等の専門家と契約するなどして現地特有の法規制、商習慣、リスク等を踏まえ現地拠点の経営について協議する等、リスク管理の面からも各地域における関係会社の支援を行っております。

また、当社グループは、連結売上収益に占める、国内外の自動車用タイヤの割合が大きく、自動車産業の景況が悪化した場合、自動車用タイヤの需要減少や大口顧客との取引減少など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

技術開発・研究面でも、製品開発の遅延等により顧客への新製品納入が遅れるなど、販売減少、信用・評判の失墜、競争力低下など財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが運営する事業分野において革新技術が出現し、市場で普及した場合、当社製品の需要が減少するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

このほか、各市場において、輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク、各国の国内および国際間取引に係る租税制度の変更や移転価格税制等により税金コストが増加するリスクなど各市場における法律・規制変更が当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(投資回収に係るリスク)

当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資及び事業の買収等の投資を行い、更なる企業価値の向上に努めております。

投資実行にあたっては、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行っておりますが、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離や、割引率、移転価格税制等の重要な仮定の変動によって、想定した回収可能価額が見込めない場合は減損損失が発生するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループ会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、当社が保有する関係会社株式や当社グループ会社への貸付金の評価に影響を及ぼすなど、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末における、当社が買収により取得した主要な連結子会社は、Sumitomo Rubber South Africa (Pty) Limited、㈱ダンロップスポーツウェルネス、Lonstroff AG 、Sumitomo Rubber USA, LLC.及びMicheldever Group Ltd.となります。

 

(原材料等の調達に係るリスク)

当社グループの製品の主要原材料は、天然ゴム、石油化学製品及び金属材料です。従いまして、天然ゴム価格、原油価格、鋼材価格等の商品市況価格が上昇すると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がありますが、価格転嫁交渉等により影響を最小化するよう取り組んでおります。原材料については、供給者の倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があるため、複数購買先の確保、供給に問題が発生した場合に備えた事業継続計画(BCP)策定、代替が効かない重要部材は備蓄を行う等の対策を講じ、影響を最小限にとどめるよう取り組んでおります。

 

(為替変動によるリスク)

為替の変動は、当社グループが輸出販売する製品の価格、購入する原材料の価格及び外貨建資産・負債の価値、外貨建財務諸表の邦貨換算等に影響を与えますが、日本円が他の通貨に対して円高になると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、連結売上収益に占める海外売上収益の割合が当連結会計年度で63.8%(IFRSでの数値)となり、今後も当社グループの財政状態及び経営成績が為替変動により受ける影響は拡大する可能性があります。

このため、当社グループでは、為替予約や通貨ごとの輸出入のバランス化等により、為替変動によるリスクの軽減を図っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではありません。

 

(気候変動によるリスク)

気候変動による当社グループの事業に及ぼすリスクとして、気温上昇に伴う台風や洪水、降水量の増加などの自然災害の激甚化による生産設備への損害など事業活動へのさまざまな影響、主要な原材料である天然ゴムの収穫不良による価格高騰をはじめとした原材料調達への影響、降雪量の減少による冬タイヤの需要減少などが考えられます。また、世界各国における気候変動に対する規制や制度の変化による製造拠点におけるエネルギー転換などの費用増加が見込まれ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動の緩和に貢献するため、当社は2050年までに工場でのカーボンニュートラルの達成を目指すとともに、低燃費タイヤなどの環境配慮型商品の開発促進、製品ライフサイクルアセスメントを推進し、グリーン購買、グリーン物流、製造工程の省エネルギー推進、廃棄物低減などを進めるなど、気候変動の緩和に向けたさまざまな施策にグループを挙げて取り組んでいます。

 

(製品の品質によるリスク)

当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じておりますが、製品の欠陥やクレームが発生する可能性があります。

当社グループは、欠陥が発生した場合又は裁判等により欠陥が認定された場合に備え、欠陥に起因する損害賠償等の諸費用に対する損害保険を付保しておりますが、保険で補償されない費用が発生する可能性があります。また、クレームに対する処理費並びに製品の回収・交換による費用が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(災害時のリスク)

当社グループは、世界の広範な地域で事業を展開しており、それらの事業は自然災害、疾病、戦争、テロ等に直接又は間接の影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大地震、集中豪雨、大型台風等により被害を受けた経験を踏まえ、大規模自然災害が発生した際も重要業務を継続し、迅速な復旧を図るため、事業継続計画(BCP)の策定と、国内外の拠点で災害を想定しBCPに基づいて事業継続のために対応する実践訓練を行うなど、従来より対策を講じております。また、各事業所で地震、火災等を想定して防災避難訓練および安否確認訓練を実施するなど、有事の際に被害を最小限に抑えるよう従業員の防災意識を高めるための活動を実施しております。

 

(産業事故等のリスク)

当社グループは、日本、アジア、欧州、米州等に製造拠点を有しており、各製造拠点において火災、爆発、有害物質の漏えい等の産業事故や環境汚染が発生し、工場の操業や地域社会に大きな影響を及ぼした場合、社会的信用の失墜、被災者への補償、復旧費用、生産活動停止による機会損失、顧客に対する補償など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、産業事故を予防するため、点検と対策を計画的に進め、産業事故の発生防止対策を実施しております。また、定期的に海外製造拠点を含め防災監査を実施し、防災対策の点検と評価を行い、各拠点の防災活動強化を図っております。環境面でも環境汚染防止のための設備対策やモニタリングを実施するなど、環境に配慮した事業運営を実施しております。

また、重要設備の停止による生産活動への影響を最小限に抑えるために、日常的および定期的な設備保全を行う一方、老朽化更新を計画的に進めております。

 

(情報の流出によるリスク)

当社グループは、事業活動を通じて、営業秘密、ノウハウ、データ等の機密情報のほか、顧客情報や従業員の個人情報も保有しております。当社グループにおきましても、コンピューターウイルス感染や不正アクセスなどサイバー攻撃のほか、パソコン、スマートフォン等の情報端末の紛失など、故意、過失を問わず情報漏えいし、当社グループの社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、技術開発情報漏えいによる競争力低下等により当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。企業の情報管理の重要性が増している中、機密情報や個人情報等の秘密保持については、社内規定の整備と運用の徹底、情報機器へのセキュリティ対策などソフト面、ハード面での対策を実施し、リスクを最小化するよう取り組んでおります。

 

(コンプライアンスに係るリスク)

当社グループは、グローバルに事業を遂行するにあたり、国内外の各種法令の適用を受けております。これらの法令に違反する行為、企業倫理に反する行為などにより、法令に基づく処罰、訴訟の提起及び信用・評判の失墜など当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「住友の事業精神」をベースに制定した「Our Philosophy」に基づき、コンプライアンスを基盤とした事業運営が実践できるよう取り組んでおります。組織としては、社長を委員長とする「企業倫理委員会」を設置し、年4回の委員会開催を通じ当社グループのコンプライアンス体制の強化を図っております。併せて、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)として、社長直轄の「コンプライアンス相談室」を設置し、当社グループ内で問題が発見された場合には、相談者が不利益を被らないよう十分配慮したうえで、事実関係の調査を進める体制を整えております。また、必要に応じて顧問弁護士の助言を得るなど、適法性にも留意しております。

 

(金利の変動によるリスク)

当社グループは、有利子負債の削減を推進し財務体質の改善を図るとともに、資金調達手段の多様化や金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(保有有価証券の時価の下落によるリスク)

当社グループは、市場性のある株式を保有しております。このため全般的かつ大幅な株価下落が続いた場合、保有有価証券に減損または評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(退職給付債務に係るリスク)

当社グループは、ポイント制の退職一時金、確定給付企業年金、確定拠出年金制度を導入しています。従業員の退職給付債務および費用については、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

企業年金基金の年金資産運用にあたっては、代議員会・理事会などを設けて重要事項の審議、決定執行が行われ、外部の運用コンサルタント会社の助言なども仰ぎながら、定期的に「資産運用管理委員会」を開催するなど適切に管理運用を行っています。

 

(知的財産に係るリスク)

当社グループでは、自社の知的財産権保護を図り、グループ事業支援のための知的財産活動を積極的に行っていますが、他社からの知的財産権侵害等により競争優位性が損なわれるなど当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社が開発する製品及び技術については当社が保有する知的財産権による保護に努めているほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう細心の注意を払い、リスク管理を徹底しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

 

百万円

百万円

売上収益

893,310

790,817

△11.5

 

タイヤ事業

767,551

679,860

△11.4

 

スポーツ事業

84,705

70,257

△17.1

 

産業品他事業

41,054

40,700

△0.9

事業利益又は

事業損失(△)

54,391

43,388

△20.2

 

タイヤ事業

46,687

40,949

△12.3

 

スポーツ事業

4,291

△741

 

産業品他事業

3,397

3,186

△6.2

 

調整額

16

△6

営業利益

33,065

38,701

17.0

親会社の所有者に

帰属する当期利益

12,072

22,596

87.2

(注)事業利益又は事業損失(△)は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

為替レートの前提

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

1米ドル当たり

109

107

△2

1ユーロ当たり

122

122

 

当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による移動制限と広範囲かつ長期間に亘る経済活動の停滞により、上半期は極めて厳しい状況となりました。下半期の前半は地域によっては回復がみられるようになりましたが、後半に入ると、欧米では感染が再拡大し、欧州の一部の地域ではロックダウンが行われるなど、全体としては厳しい状況で推移しました。

わが国経済においても、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞により個人消費や輸出、生産の減少に伴い雇用情勢も悪化しました。各種政策の効果もあって、持ち直しの動きもみられましたが、厳しい状況で推移しました。

当社グループを取り巻く情勢につきましては、天然ゴム価格や石油系原材料価格は下落し、低位に推移しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の悪化により、販売環境が大きく悪化したことに加え、新興国通貨安が進行したこともあり、非常に厳しい状況で推移しました。

このような情勢のもと、2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて、経営基盤の強化と収益力の向上を目指して、ウィズコロナを踏まえた様々な対策に取り組みましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による需要の減退が大きく、厳しい事業運営を強いられました。

この結果、当社グループの連結業績は、売上収益は790,817百万円(前期比11.5%減)、事業利益は43,388百万円(前期比20.2%減)と前期に比べて減収・減益となりましたが、のれん・固定資産の減損損失の計上額が大きく減少したこと等により営業利益は38,701百万円(前期比17.0%増)、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は22,596百万円(前期比87.2%増)と大きく増益となりました。

 

不透明で変化の激しい環境に柔軟に対応し、更なる成長を果たすために、当社グループでは当社の存在意義を改めて明確にし、ブレない指針として全社員をはじめとする全てのステークホルダーと共有することが必要と考え、新企業理念体系として「Our Philosophy」を定めました。あらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値、社会的価値の向上と持続可能な社会の発展の貢献に努めてまいる所存です。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(タイヤ事業)

タイヤ事業の売上収益は、679,860百万円(前期比11.4%減)、事業利益は40,949百万円(前期比12.3%減)となりました。

国内新車用タイヤは、納入車種拡大によるシェアアップや低燃費タイヤを中心とする高機能商品の拡販を進めましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により自動車メーカーの生産台数が大幅に減少したことから、売上収益は前期を下回りました。

国内市販用タイヤは、新商品「VEURO VE304(ビューロ ブイイー サンマルヨン)」をはじめとする「ダンロップ」ブランドの低燃費タイヤを中心に、高機能商品の拡販に加えて、新技術の「ナノ凹凸(オウトツ)ゴム」を採用したダンロップ史上最高の氷上性能を実現したスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 03(ウインター マックス ゼロスリー)」の展開・拡販に努めましたが、新型コロナウイルス感染症による影響を受け市場が低迷したことにより、売上収益は前期を下回りました。

海外新車用タイヤは、新型コロナウイルス感染症の影響により多くの地域で自動車メーカーの大幅な減産が発生したことにより、売上収益は前期を下回りました。

海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では、特に上半期の中国において新型コロナウイルス感染症の感染拡大阻止に向けた大規模な都市封鎖が行われたこともあり、需要は大きく落ち込みました。欧州・アフリカ地域及び米州地域においても、同様に、新型コロナウイルス感染症の影響により市場が低調となりました。下半期に入り、地域により市場の回復度合いは異なりますが、中国・北米地域などの市況の回復の早い地域を中心に、高機能商品の積極的な拡販を進めました。

以上の結果、タイヤ事業の売上収益は前期を下回り、減益となりました。

 

スポーツ事業)

スポーツ事業の売上収益は、70,257百万円(前期比17.1%減)、事業損失は741百万円(前期は4,291百万円の利益)となりました。

ゴルフ用品は、北米、欧州中心に新型コロナウイルス感染症に伴う市場縮小に6月以降反転が見られ、強化してきたデジタル系マーケティング・販売チャネル関係強化、新商品の効果もあり下半期は海外で前年同期比増収となるも、上半期の販売減を補うには至らず、売上収益は前期を下回りました。

また、テニス用品は、下半期はゴルフ用品と同様海外で前年同期比増収となるも、新型コロナウイルス感染症の影響や、6月にバボラ社との国内販売代理店契約を終了したことによる減収が響き、通年の売上収益では前期を下回りました。

ウェルネス事業でも新型コロナウイルス感染症の影響によりスポーツクラブの一時休業を実施したこと等により会員数が減少しましたが、6月以降、感染予防に万全の対策を期しつつ全拠点で営業を再開し、利用者は徐々に戻りつつあるものの売上収益は前期を下回りました。

以上の結果、スポーツ事業の売上収益は前期を下回り、事業損失となりました。

 

(産業品他事業)

産業品他事業の売上収益は、40,700百万円(前期比0.9%減)、事業利益は3,186百万円(前期比6.2%減)となりました。

医療用精密ゴム部品や制振ダンパーが堅調に推移し、新型コロナウイルス感染症の影響で使い切り手袋の需要が増えましたが、OA機器用精密ゴム部品では主要OA機器メーカーのプリンター・コピー機の生産減少、インフラ系商材における受注減もあり減収となりました。

以上の結果、産業品他事業の売上収益は前期を下回り、減益となりました。

 

②財政状態の状況

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

百万円

百万円

百万円

資産合計

1,035,484

974,805

△60,679

資本合計

475,537

467,097

△8,440

親会社の所有者に

帰属する持分

460,800

454,743

△6,057

親会社所有者帰属

持分比率(%)

44.5

46.6

2.1

ROE(%)

2.6

4.9

2.3

ROA(%)

5.2

4.3

△0.9

有利子負債

325,490

276,739

△48,751

D/E レシオ(倍)

0.7

0.6

△0.1

1株当たり親会社

所有者帰属持分

1,752円07銭

1,729円05銭

△23円02銭

(注)ROAは連結ベースの事業利益に基づき算出しております。

 

当連結会計年度末の資産合計は、974,805百万円と前連結会計年度末に比べて60,679百万円減少しました。棚卸資産の減少などにより流動資産が23,402百万円減少しました。また、投資抑制及び為替換算影響による有形固定資産の減少などにより非流動資産37,277百万円減少しました。

連結会計年度末の負債合計は、507,708百万円と前連結会計年度末に比べて52,239百万円減少し、有利子負債残高は、276,739百万円と前連結会計年度末に比べて48,751百万円減少しました。

 当連結会計年度末の資本合計は467,097百万円と前連結会計年度末に比べて8,440百万円減少しました。うち親会社の所有者に帰属する持分は454,743百万円と前連結会計年度末に比べて6,057百万円減少しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.6%1株当たり親会社所有者帰属持分は1,729円05銭となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ13,572百万円増加し、当連結会計年度末には74,203百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、123,504百万円(前連結会計年度比32,046百万円の収入の増加)となりました。

これは主として、営業債務及びその他の債務の減少1,993百万円、法人所得税の支払9,178百万円などの減少要因があったものの、税引前利益29,771百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上67,665百万円、棚卸資産の減少25,027百万円、営業債権及びその他の債権の減少5,991百万円などの増加要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、45,594百万円(前連結会計年度比17,823百万円の支出の減少)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出41,681百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、61,881百万円(前連結会計年度比20,902百万円の支出の増加)となりました。

これは主として、短期借入金、長期借入金及び社債が純額で40,945百万円減少したほか、配当金の支払7,890百万円を行ったことなどによるものであります。

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

551,834

△18.0%

スポーツ事業

43,237

△11.2%

産業品他事業

29,238

2.7%

合計

624,309

△16.8%

(注)1.金額は、販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

②受注実績

 当社グループの製品は、大部分が見込生産であり、ごく一部の製品(防舷材等)についてのみ受注生産を行っております。

 

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

679,860

△11.4%

スポーツ事業

70,257

△17.1%

産業品他事業

40,700

△0.9%

合計

790,817

△11.5%

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。

連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、会計上の見積りや前提が必要となりますが、当社グループは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

また、新型コロナウイルス感染症による影響については、感染症の再拡大による経済環境の悪化、下振れリスクが懸念され、先行きは予断を許さない状況でありますが、ウイズコロナの新常態において、翌連結会計年度では、世界の経済活動は前連結会計年度のレベルには回復しないものの、緩やかに回復に向かうものと仮定しております。

当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの中期計画における数値目標は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載のとおりですが、当連結会計年度の経営成績に重要な影響を与えた主なものは、新型コロナウイルス感染症の影響による需要の減少及び原材料価格の下落であります。

主力のタイヤ事業において、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響による大幅な需要減少と、それに伴う操業度低下によるコストアップにより、大幅な減益となりました。原材料面では、天然ゴム価格及び石油系原材料価格が低位に推移したことにより、増益要因となりました。販売面では、国内外の市販市場において販売価格の改定を実施しましたが、新車向けで原材料単価連動制によるマイナスがあり、価格要因は若干の減益要因となりましたが、製品構成が良化したことにより、新型コロナウイルス感染症の影響を除いた数量・構成他は増益要因となりました。為替については、円高傾向で推移したことにより、減益要因となりました。一方、生産性改善をはじめとする原価低減に取り組んだことに加え、徹底した経費抑制により、直接原価、固定費及び経費は増益要因となりました。

この結果、前連結会計年度に対し、新型コロナウイルス感染症の影響で約460億円、為替で約44億円、販売価格で約1億円の減益要因となったものの、原材料価格全体で約261億円、経費で約88億円、数量・構成他で約67億円、直接原価で約22億円、固定費で約9億円が、それぞれ増益要因となりました。高機能商品の更なる拡販、海外工場における生産性の改善など、収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みましたが、新型コロナウイルス感染症による需要減少の影響が大きく、タイヤ事業全体では減益となりました。

スポーツ事業及び産業品他事業の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

ご参考:当連結会計年度 事業利益の増減要因

 

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     ※コロナ影響の内訳は、タイヤ事業約460億円、スポーツ事業約66億円、産業品他事業約7億円となります。

以上の結果、売上収益は790,817百万円と前連結会計年度に比べ102,493百万円(△11.5%)の減収、事業利益は43,388百万円と前連結会計年度に比べ11,003百万円(△20.2%)の減益となり、売上収益事業利益率は前連結会計年度に比べ0.6ポイント低下し、5.5%となりました。

その他の収益及び費用では、前連結会計年度に多額ののれん・固定資産の減損損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ16,639百万円の増益となりました。

この結果、営業利益は38,701百万円と前連結会計年度に比べ5,636百万円(17.0%)の増収となり、売上収益営業利益率は前連結会計年度に比べ1.2ポイント上昇し、4.9%となりました。

金融収益及び費用では、為替差損及びデリバティブ評価損が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ3,183百万円の減益となりました。

以上の結果、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は22,596百万円と前連結会計年度に比べ10,524百万円(87.2%)の増益となりました。

中期計画における目標達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載の施策に取り組んでまいります。

 

キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは77,910百万円のプラスとなり、主に借入金等の返済40,954百万円及び配当金の支払7,890百万円に充当しております。なお、配当に関する基本方針は、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載のとおりとなります。

今後、主に世界各地での増販に合わせた高機能タイヤの生産能力増強のための設備投資を行っていく方針でありますが、販売数量の増加と採算性の改善により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を実現しながら、必要に応じ金融市場や金融機関からの調達も活用するなど、「成長」と「流動性の確保並びに財務体質の向上」との両立を図りながら、2020年2月13日公表の中期計画で目標としているD/Eレシオ0.5以下の達成を目指してまいります。なお、当社と国内子会社、当社と一部の海外子会社との間でCMS(キャッシュマネジメントシステム)による資金融通を行っており、当社グループ内での資金効率向上を図っております。

また、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「A+(長期)、J-1(短期)」の信用格付を取得しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

5【研究開発活動】

当社グループにおいては、当社の研究開発組織・施設を核として世界各地に所在する子会社・関連会社群との密接な連携のもと、タイヤ・スポーツ・産業品他事業、幅広い領域・分野で研究開発を推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、24,215百万円であります。

セグメント別の主要な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1)タイヤ事業

当社グループのタイヤ技術研究開発は、神戸本社に隣接したタイヤテクニカルセンターを中心に、欧州・米国のテクニカルセンターと連携して、「タイヤが地球環境の為に貢献できること」をテーマに、「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つの方向性で環境配慮商品の開発に取り組んでおります。

自動車産業を取り巻く環境が大きく変化するなか、「さらに高い環境性能」を実現する技術である「エナセーブ・テクノロジー」に基づいて環境配慮商品の開発を推進しております。

また、当社はタイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」を掲げております。例えば、タイヤの摩耗、経年による性能低下を抑制し、新品時の性能を長く持続させる「性能持続技術」や、商品ライフサイクル全体で環境性能を高めて循環型社会の実現に寄与する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方を採り入れた商品開発を推進するとともに、デジタルツールを用いて得られるさまざまなデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指しております。

原材料の分野では、茨城大学との共同研究により、タイヤ用ゴムに含まれるさまざまな材料を選択的に観測できる手法を確立しました。これは茨城大学が新たに開発した量子線顕微装置を用いており、既に製品化されているタイヤ用ゴムそのものの評価が可能になる画期的な手法です。これにより、タイヤそのものの構造を評価することが可能となり、この画像データを活用することで、燃費性能や耐摩耗性能などに優れたタイヤの内部構造を導き出せることから、材料開発の加速化が期待されます。

2020年3月には、天然ゴムの臭気発生原因を特定し、臭いを大幅に抑えた「臭気低減天然ゴム」を新たに開発したことを発表しました。「臭気低減天然ゴム」は、当社の天然ゴム加工工場(タイ)において原材料の加工工程に独自手法を取り入れ、臭気発生原因となる原材料中の非ゴム成分(タンパク質・脂質等)の分解を抑制することで、大幅な臭気低減を実現しました。本手法の確立により、天然ゴム加工工場のみならずタイヤ製造工場などの臭気問題解決への貢献が期待されます。当社では世界的な環境意識の高まりに対応すべく、天然ゴムの改質や高機能バイオマス材料を活用したタイヤ性能向上に取り組むなど研究開発を進めています。特に天然ゴムは、タイヤ原材料の重量構成比で約30%と大きな比率を占めており、天然ゴムを取り巻く課題解決に率先して取り組んでいます。

また、2020年9月には、スーパーコンピュータ「京」を活用して取り組んだ研究「タイヤ用ゴム材料の大規模分子動力学シミュレーション(課題番号:hp170063)」が、HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)利用研究課題優秀成果賞を受賞しました。今回受賞した研究は、ゴム材料に添加するシリカとカップリング剤の結合の仕方がゴム材料の強度に及ぼす影響を明らかにしたもので、ゴムの耐摩耗性向上に繋がる成果を得たものです。今後は、このシミュレーションの成果を新たなゴム材料及び商品の開発に活かしていきます。また、さらに高い安全性と環境負荷低減を両立したタイヤ開発を進めるため、シミュレーションにおいては、2021年3月から学術・産業分野へ共用が開始されたスーパーコンピュータ「富岳」も活用し、取り組みを進めていきます。

ソリューションサービスの分野においては、タイヤの空気圧や温度をリモート監視することができる空気圧管理ソリューションサービスの実証実験を開始しました。この実証実験は新出光グループとの共同で実施しております。タイヤの空気圧や温度をリモート監視できるサービスの効果を検証するものです。今回、500台の乗用車タイヤに装着したTPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)で得た情報はクラウドを通じて確認出来、メンテナンス作業の負荷を軽減するだけでなく適正な空気圧維持によって走行時の燃費向上につながるなど、安全・安心な走行に貢献します。

また、2020年11月には、レベル4自動運転車を対象に、空気圧データ取得から異常時のタイヤメンテナンスまでのシステムを構築し実証実験を実施しました。これは昨年から行っている群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)との共同研究によるもので、車両が無人の場合でもタイヤ空気圧のリモート監視を可能とするものです。自動運転車におけるパンクなどを想定したタイヤトラブルの予知保全及びトラブル発生時の早期対応に貢献できます。

当社では、CASE/MaaSといった自動車業界の変革に対応していくため、タイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」を掲げ、当社技術センシングコアの進化と組み合わせたソリューションサービスの展開を進めています。タイヤの空気圧不足はパンクの原因の一つであるとともに、燃費や走行性能の低下にもつながることから、定期的なメンテナンスが重要です。また、自動運転の普及によるドライバーレス社会では、今まで以上にメンテナンスフリーが求められており、摩耗管理や路面状況の検知技術なども加えることで、自動運転車両の安全・安心にもつながるソリューションサービスの構築を目指していきます。

そして、2020年8月には、新技術の『ナノ凹凸(オウトツ)ゴム』を採用し、「SMART TYRE CONCEPT」の性能持続技術にも寄与する『液状ファルネセンゴム※1』を組み合わせたスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 03(ウインター マックス ゼロスリー)」を発売しました。摩耗しても凹凸構造を維持し続ける『ナノ凹凸ゴム』と、ゴムのしなやかさを長期にわたって保つ『液状ファルネセンゴム』により、その高い氷上性能が長期間維持します。これらの技術の組み合せにより、圧雪アイスバーンやミラーアイスバーン、ブラックアイスバーンなどが発生する危険な冬道でも安全かつ安心して走行できる「WINTER MAXX 03」が誕生しました。

当事業に係る研究開発費は20,589百万円であります。

 ※1 株式会社クラレがWINTER MAXX向けに開発した素材。

 

(2)スポーツ事業

スポーツ事業本部並びに米国のRoger Cleveland Golf Company, Inc.に研究開発部門を設置しており、コンピューターシミュレーション技術等を用いて新技術・新商品の開発並びに評価、試験に取り組んでおります。

兵庫県丹波市の「ゴルフ科学センター」では、スイングマシーンによるテストに加え、トッププロからアベレージゴルファーまでの様々な方のヒューマンテストを行い、クラブやボールの特性に加え、スイングとクラブの関係など、膨大なデータを集積し、総合的に測定・解析・評価を行っております。

これらの技術により、ゴルフクラブではNEW「スリクソン ZXシリーズ」を開発し、2020年10月に発売しました。ドライバーには、剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した4層構造の「REBOUND FRAME」を搭載。大きなたわみを生み出し、反発性能が大幅に向上しました。

ゴルフボールでは、NEW「スリクソン Z-STARシリーズ」を開発し、商品化しました。「Z-STAR」は従来品より0.1mm厚くしたカバーと、新開発コーティングでスピン性能が向上。「Z-STAR XV」は新開発の2層コアによりボールスピードがアップしました。また、いずれのモデルにもディンプルの深さを最適化した新しい「強弾道338スピードディンプル」を搭載し、風に負けない力強い弾道を実現しました。

テニスラケットでは、ダンロップ「FX」シリーズを開発し、2020年8月に発売しました。新形状のシャープなラウンド形状フレームや、グロメットの下に設けた「溝」の新構造、スロート部に搭載した高伸縮性・高反発性を併せ持つ新素材などで、パワーとコントロールの両立を実現しました。

また、テニスボールでは練習球「セントジェームス・プレミアム」を開発し、2020年9月に発売しました。快適な打球感を持続させるため、ゴムの強度や耐久性を高める材料「扁平タルク」をボールのコアゴムに練りこみ、ボール内の気体を抜けにくくすることに成功。従来品と比べ1.5倍※2の長寿命化を実現しました。

当事業に係る研究開発費は1,767百万円であります。

 ※2 従来品の開缶後2か月後と本品の3か月後の物性変化と同等にすることで、快適な打球感が持続し約1.5

倍の長寿命化を実現。

 

(3)産業品他事業

産業品事業本部では、高減衰ゴムを用いた制振部材、医療用精密ゴム部品、車椅子用スロープ等、安心・安全・快適をテーマに消費者ニーズに合わせた商品開発に積極的に取り組んでおります。

制振事業では、戸建て住宅用制震ユニット「MIRAIE」と同じ高減衰ゴムを用いたビル用制振ダンパーについて、国内及び海外での展開を進めておりますが、昨年は台湾において台北市の有数なランドマークとなる大規模な再開発事業(2棟の高層オフィスビルと6棟の高層住宅)向けに開発した新仕様が採用され、納入を開始しています。

このように日本国内をはじめ海外でも実績がある制振ダンパーについて、当社従来品比より約42%エネルギー吸収性能を向上させることに成功しました。この技術を活用し地震や風揺れに対する振動低減・抑制効果を京都大学と共同で解析することとなりました。この開発中のゴムを用いて、住宅用、ビル用共に順次新製品に適用していく計画となっております。

今後も制振部材のほか、カーボンニュートラル、プラスチックの削減等、社会問題を解決することを念頭に、人々のより安全・快適な暮らしに貢献する研究開発を行っていきます。

当事業に係る研究開発費は1,859百万円であります