第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略等

当社グループは、これまで受け継がれてきた「住友事業精神」を基盤に、2020年に次のとおり「Our Philosophy」を制定しました。「Our Philosophy」をあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

 

企業理念体系「Our Philosophy」

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2020年2月13日公表した2025年を目標年度とした中期計画は、従来から取り組んできた「飽くなき技術革新」への継続的な注力と、「新市場への挑戦」「新分野の創出」で構築したグローバル体制の成果最大化に加え、経営基盤強化のための組織体質の強化活動・利益創出の活動を推進し、さらに経済的・社会的価値の高い企業グループとなることを目標イメージとしております。
 

中期計画の骨子

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具体的な数値目標として、2025年までに連結売上収益1兆円以上、連結事業利益1,000億円以上、ROE10%以上、 D/Eレシオ0.5以下を掲げ、目標達成に向けて邁進してまいります。

 

中期計画の財務数値目標

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経営戦略としましては、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーの核として収益の質や成長の持続性を考慮しながら、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指します。

「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」の具体的な施策は、「(2)経営環境及び対処すべき主な課題」に記載のとおりとなります。

「ESG経営の推進」については、2021年1月に新設した「サステナビリティ推進本部」を中心に、同年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同、また同年8月にはサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を発表するなど全社でESG活動を推進しています。

 

[Environment(環境)]

(技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」の推進)

100年に一度と言われるモータリゼーションの変革に対応するため、技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」の全技術(安全性能を高めるセーフティテクノロジーと環境性能を高めるエナセーブテクノロジー)を2029年までに完成させ、2030年以降に発売する全新商品がいずれかの技術を搭載したタイヤとします。

 

「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」概念図0102010_004.png

 

(カーボンニュートラル(Scope1、2)に向けた取り組み)

グループ全工場から排出されるCO2について、2030年には2017年比50%削減、2050年にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。この実現のため、太陽光パネルの設置やグリーン電力の購入拡大などを軸に取り組みを進めてまいります。さらにタイヤの製造工程では、次世代エネルギーとして注目されている水素を活用するべく、2021年8月から福島県の白河工場での実証実験をスタートさせました。太陽光発電と合わせて、同工場内の高性能タイヤ製造システム「NEO-T01(ネオ ティーゼロワン)」の全工程をクリーンエネルギー化することで、2023年には製造時における「CO2排出ゼロタイヤ」の完成を目指し、その後は国内外の工場へ水素利用を拡大することを検討してまいります。

 

カーボンニュートラルに向けた取り組み

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(サステナブル原材料(バイオマス及びリサイクル原材料)の活用)

タイヤ・スポーツ・産業品他の各事業で、サステナブル原材料比率の向上を進めてまいります。タイヤでは同比率を2030年に40%、2050年には100%に、スポーツのゴルフボールとテニスボールや産業品他でも、2050年での100%サステナブル原材料化を目指してまいります。

 

サステナブル原材料の活用0102010_006.jpg

 

(プラスチックの使用量削減に向けた取り組み)

プラスチックの削減が大きな社会課題となっていますが、タイヤラベルや商品の包装材などにおける当社のプラスチック使用量について、2030年には2019年比で40%削減することを目指しています。その一環として2022年1月に開催されたテニスの「全豪オープン」の大会使用球納入に際しプラスチックの蓋を廃止し、削減に取り組みました。

 

[Social(社会)]

多様な属性や価値観を持つ一人ひとりが尊重され、働きがいを持つことができる風土作りのため、メンター制度による女性向けキャリア開発や全階層向けのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修の実施、多面評価による健全なリーダーシップ育成などの施策を継続的に進めてまいります。

また、当社は「世界人権宣言」や「経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針」、国際労働機関(ILO)の各種条約などといった人権についての国際規範を尊重しておりますが、今後事業活動における人権デューデリジェンスプロセスと人権マネジメント体制の構築にも取り組んでまいります。

健康経営の推進については、新型コロナウイルス感染症の収束に見通しが立たない環境下ではありますが、日本国内においての職域接種の積極的な実施や在宅勤務の推進、新型コロナウイルス感染症と関連する不就労に対する特別有給公休の支給など、従業員が安心して健康に働くことができる環境整備に取り組んでまいります。

 

[Governance(ガバナンス)]

「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載の体制で、グローバルな事業拡大や社会的要請の高まりなどを踏まえ、取締役会の実効性向上施策や海外も含めた子会社に対する定期監査の実施等を推進し、グループ全体のコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

昨年は、従来から実施していた取締役会の実効性評価において新たに第三者機関による評価を導入した結果、社外役員への情報共有及びダイバーシティの確保が当社取締役会の強みであることが見えてきました。

今後は、これらの強みを活かすとともに、経営全般に係る重要事項についてより集中して議論を行えるよう付議事項を厳選し、重点的に議論していくべき議題については自由に意見交換する機会を設けるなど、取締役会の実効性を向上させ、更なる企業価値向上につなげてまいります。また、社外取締役が委員長を務め、委員の過半数を社外役員とする指名・報酬委員会では、中長期的な視点で当社に必要なスキルを落とし込んだスキルマトリックスを活用し、企業価値向上につながる体制について議論を行っています。今後も、取締役が中期計画達成に向けてグループ全体をさらに主導できる体制づくりを進めてまいります。
 

(2)経営環境及び対処すべき主な課題

当社グループにおいて発生した品質管理に係る不適切事案については、それぞれについて外部専門家を含む特別調査委員会を立ち上げ、事案を公表したのち、2021年11月9日に調査結果を公表しました。当社グループとしては、既に取り組み済みの品質保証本部の新設や本事案を教材としたケーススタディ研修に加え、部門間・拠点間のコミュニケーション向上やグループガバナンスの強化につながる諸施策を今後も着実に進めてまいります。また、「Our Philosophy」に掲げる「信用と確実」の遵守を徹底し、企業風土改革や品質保証体制の強化、お客様の信頼回復につなげてまいります。

 

今後の経営環境につきましては、引き続き、新型コロナウイルス感染症による影響が懸念されており、国内外において経済活動の回復に制約が見られる状況が続くと予想されます。

このような情勢のもと、当社グループは、これまで中期計画で掲げた課題を中心に市況や働き方の変化に合わせた個々のアクションプランを追加・修正しながら、着実に事業運営してまいりました。今後も、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーの核として収益の質や成長の持続性を考慮しながら、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指し、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したリスク要因を踏まえながら、次のような課題に取り組んでまいります。

 

(タイヤ事業)

ブランド戦略

パイオニアブランドである「ダンロップ」では、環境や安全の最先端技術を搭載した商品ラインアップで国内やアジア市場を中心に展開しています。走りを楽しむ人に向けたグローバルブランドである「ファルケン」では、高い機能と品質の商品ラインアップで欧米、国内市場を中心に展開を強化しています。

 

高機能商品の開発・増販

国内では、ウエットグリップ性能の低下を半減させる「水素添加ポリマー」と、低炭素社会の実現にも貢献する高機能バイオマス素材「セルロースナノファイバー」を世界で初めて用いた低燃費タイヤ「エナセーブNEXTⅢ(ネクストスリー)」や高い静粛性と操縦安定性で快適な車内空間を実現し、最高レベルのウエット性能が長続きする高機能タイヤ「VEURO VE304(ビューロ ブイイー サンマルヨン)」等を拡販してまいります。

欧州アフリカ地域では、「AZENIS FK510(アゼニス エフケー ゴーイチマル)」が、欧州最大の自動車連盟「ADAC(ドイツ自動車連盟)」の実施するタイヤテストにおいて総合1位を獲得するなど、欧州における「ファルケン」ブランドの価値は着実に向上しています。今後も欧州の自動車メーカーへの納入を着実に増やすことにより更なるプレゼンスの向上を図り、市販用タイヤの拡販にもつなげてまいります。

米州地域では、北米は「ファルケン」ブランドのSUV用タイヤ等の高機能タイヤを中心に販売が堅調に推移しており、米国工場及び輸出基地である日本とタイの工場での増産投資を進めています。南米ではブラジル工場からの供給で地産地消化を進めており、高機能タイヤの供給能力を強化するための増産投資を決定するなど、安定した利益基盤構築に努めています。

生産面では、世界各地の工場の生産能力をフル活用して地産地消化を進めながら、世界最大規模のタイヤ工場であるタイ工場で、各地域の需給を補完する体制を継続していきます。これらにより、自動車メーカーとの強固な信頼関係をグローバルで構築し、新車への装着拡大と市販用タイヤ販売への波及効果でビジネスの基盤を強化してまいります。

また、世界の主要市場でEV車両が増えつつありますが、EV車両用タイヤは既に自動車メーカーへの納入を始めております。今後も日米欧各地の自動車メーカーと連携し、EV車両の性能を最大限に引き出せるタイヤを当社独自の材料技術・設計技術により開発してまいります。

 

新たな価値の創出

現在、既に事業化している空気圧低下警報装置の技術と、路面の情報を検知できるセンシングコア技術を融合し、タイヤから得られるさまざまな情報をクラウドシステムに乗せて活用する仕組みの構築を目指しています。今後も、安全がもっと長続きし、危険を回避できる未来のタイヤとサービスを創出し、CASEやMaaSに対応したトータルソリューションを提供できるよう取り組んでまいります。

 

(スポーツ事業)

スポーツ事業を取り巻く環境は、健康で充実した生活を送るために、スポーツの魅力や果たす役割の重要性がコロナ禍により改めて認識されたこともあり、ゴルフ需要は拡大し、テニス及びウェルネス事業でも持ち直しの傾向が見られました。今後もスポーツ関連用品やサービスを通じて、お客様に「ヨロコビ」を提供し続けてまいります。

ゴルフ用品では、主力の「ゼクシオ」ゴルフクラブに12代目となる新シリーズ「ゼクシオ 12(トゥウェルブ)」を投入しました。今後も世界最大市場である北米においてマーケティング体制の強化を進めるとともに、日米2拠点での開発体制で市場ニーズに応じたダントツ商品を投入することで、一層の拡販と新たな価値創出につなげてまいります。

テニス用品では、「ダンロップ」テニスボール「Dunlop Australian Open」が2019年以降継続して、全豪オープン公式球として採用され、ATPツアーでも3年連続でボール使用率No.1となりました。こうして得た「ダンロップ」テニスボールへの高い評価を活かしながら、「ダンロップ」ブランドの価値向上と拡販につなげてまいります。

ウェルネス事業では、2021年4月にゴルフスクール・テニススクール・フィットネス関連3子会社を合併したことによるシナジー効果を定着させ、さらに加速させることで新しい価値提供に取り組んでまいります。

 

(産業品他事業)

医療の発展に貢献する医療用ゴム製品事業、地震や台風などの自然災害対策に寄与する制振事業につきましては、引き続き注力分野と位置付け、グローバルでの拡販に努めてまいります。また、持続可能な社会に寄与する付加価値創出の取組みとして、スポーツ用人工芝事業でのマイクロプラスチックの流出抑制等も進めています。

今後も全ての商材において時代のニーズに適応する付加価値の高い商品を開発・提供することにより、更なる成長を目指してまいります。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのある経営リスクについては、「リスク管理規定」に基づき、それぞれの担当部署及び各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、経営会議等で審議しております。リスク分析・対応策の検討にあたっては、必要に応じて顧問弁護士等の専門家に助言・指導を求めております。経営リスクのうち、組織横断的リスクについては、当社管理部門の各部が、それぞれの所管業務に応じ関連部署と連携しながら、全社的対応を行っております。

また、「リスク管理規定」に基づき社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しており、年2回開催する同委員会にて当社グループのリスク管理活動を統括し、リスク管理体制が有効に機能しているか適宜調査・確認しております。

当社グループにとって重大なリスクが顕在化し、又は顕在化が予想される場合には、「危機管理規定」に基づき、社長が危機管理本部を設置します。

このようなリスク管理体制のもと、グローバルに展開する当社の事業活動も考慮のうえ、当社グループの財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを次のとおり記載しております。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらのリスクを認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

 

(新型コロナウイルス感染症に係るリスク)

当社グループは、従来より新型インフルエンザ流行時の対応計画を策定するなど、感染症流行時の備えを進めてまいりました。新型コロナウイルス感染症におきましても、リモートワークの環境整備を進め、在宅勤務の積極的な活用やワクチンの職域接種を推進するなど、感染拡大防止策の徹底を図っており、従業員の健康と安全確保を最優先に事業活動を継続しております。依然として本感染症の世界的な流行は収束しておらず、経済への影響が続くものと予想され、業務の停止やサプライチェーンの混乱が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(政治経済情勢・需要変動・法律・規制等に係るリスク)

当社グループは、タイヤ事業、スポーツ事業及び産業品他事業を展開しております。各分野や各地域に特有の需要変動や、環境対応など顧客ニーズの変化、また、各国の政治情勢の影響を受けることがあります。海外における戦争、 テロ、暴動、ストライキ等のリスクに対しては、リスクコンサルタント等の専門家や政府関係機関等より情報収集を行うとともに、有事の際には現地拠点の安全確認、現地情報の社内展開を行っております。さらに、アジア・大洋州、欧州・アフリカ、米州の各地域を統括する本部を設置し、必要に応じて弁護士やコンサルタント等の専門家と契約するなどして現地特有の法規制、商習慣、リスク等を踏まえ現地拠点の経営について協議する等、リスク管理の面からも各地域における関係会社の支援を行っております。

また、当社グループは、連結売上収益に占める、国内外の自動車用タイヤの割合が大きく、自動車産業の景況が悪化した場合、自動車用タイヤの需要減少や大口顧客との取引減少など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

技術開発・研究面でも、製品開発の遅延等により顧客への新製品納入遅れが生じた場合、販売減少、信用・評判の失墜、競争力低下など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが運営する事業分野において革新技術が出現し、市場で普及した場合、当社製品の需要が減少するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

このほか、各市場において、輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク、各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更や移転価格税制等により税金コストが増加するリスクなど各市場における法律・規制変更が当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(投資回収に係るリスク)

当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資及び事業の買収等の投資を行い、更なる企業価値の向上に努めております。

投資実行にあたっては、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行っておりますが、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離や、割引率、移転価格税制等の重要な仮定の変動によって、想定した回収可能価額が見込めない場合は減損損失が発生するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループ会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、当社が保有する関係会社株式や当社グループ会社への貸付金の評価に影響を及ぼすなど、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末における、当社が買収により取得した主要な連結子会社は、Sumitomo Rubber South Africa (Pty) Limited、㈱ダンロップスポーツウェルネス、Lonstroff AG 、Sumitomo Rubber USA, LLC.及びMicheldever Group Ltd.となります。

 

(製品の品質管理に係るリスク)

当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じておりますが、製品の欠陥やクレームが発生する可能性があります。

当社グループは、欠陥が発生した場合又は裁判等により欠陥が認定された場合に備え、欠陥に起因する損害賠償等の諸費用に対する損害保険を付保しておりますが、保険で補償されない費用が発生する可能性があります。また、クレームに対する処理費並びに製品の回収・交換による費用が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいて発生した品質管理に係る不適切事案については、品質保証本部の新設や本事案を教材としたケーススタディ研修に加え、部門間・拠点間のコミュニケーション向上やグループガバナンスの強化につながる諸施策を今後も着実に進めてまいります。また、Our Philosophyに掲げる「信用と確実」の遵守を徹底し、企業風土改革や品質保証体制の強化、お客様の信頼回復につなげてまいります。

 

(コンプライアンスに係るリスク)

当社グループは、グローバルに事業を遂行するにあたり、国内外の各種法令の適用を受けております。これらの法令に違反する行為、企業倫理に反する行為などにより、法令に基づく処罰、訴訟の提起及び信用・評判の失墜など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「住友の事業精神」をベースに制定した「Our Philosophy」に基づき、コンプライアンスを基盤とした事業運営が実践できるよう取り組んでおります。組織としては、社長を委員長とする「企業倫理委員会」を設置し、年4回の委員会開催を通じ当社グループのコンプライアンス体制の強化を図っております。併せて、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)として、社長直轄の「コンプライアンス相談室」を設置し、当社グループ内で問題が発見された場合には、相談者が不利益を被らないよう十分配慮したうえで、事実関係の調査を進める体制を整えております。また、必要に応じて顧問弁護士の助言を得るなど、適法性にも留意しております。

 

(気候変動によるリスク)

当社グループは、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」に賛同し、気候変動に関するリスクと機会の分析を行い、事業戦略への影響を把握し、気候変動の緩和や適応につながる対策を検討しております。

気候変動による当社グループの事業に及ぼすリスクとして、世界各国における気候変動に対する規制や制度の変化に伴い、当社グループの製造拠点におけるエネルギー転換などの費用増加、気温上昇に伴う台風や洪水、降水量の増加などの自然災害の激甚化による生産設備への損害など事業活動へのさまざまな影響が考えられます。その他、主要な原材料である天然ゴムの収穫不良による価格高騰をはじめとした原材料調達への影響、降雪量の減少によるスタッドレスタイヤの需要減少なども考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動の緩和に貢献するため、当社グループは2050年までに工場でのカーボンニュートラルの達成を目指すとともに、低燃費タイヤなどの環境配慮型商品や、センシング技術を使った低圧走行防止・環境配慮サービスの開発促進をはじめ、グリーン購買、グリーン物流、製造工程の省エネルギーなどライフサイクル全体において、気候変動の緩和に向けた様々な施策にグループを挙げてこれまで以上に取り組みます。CASE/MaaSの普及による次世代タイヤの需要増加、環境負荷低減を考慮したタイヤや低燃費タイヤの需要拡大など、気候変動が進展した場合に見込まれる商品需要についても対応できるようにしていきます。そのうえで、気候変動が当社グループの事業に与える影響について、財務的評価を継続的に行い、気候変動の緩和と適応に取り組みます。

 詳細は、当社企業情報サイトの「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応」(https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_5.html)をご覧ください。

 

(原材料等の調達に係るリスク)

当社グループの製品の主要原材料は、天然ゴム、石油化学製品及び金属材料です。従いまして、天然ゴム価格、原油価格、鋼材価格等の商品市況価格が上昇すると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がありますが、価格転嫁交渉等により財政状態及び経営成績への影響を最小化するよう取り組んでおります。原材料については、サプライヤーの倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があるため、複数購買先の確保、供給に問題が発生した場合に備えた事業継続計画(BCP)策定、代替が効かない重要部材は備蓄を行う、財務評価や環境リスク対応等をサプライヤー評価に盛り込む等の対策を講じ、財政状態及び経営成績への影響を最小限にとどめるよう取り組んでおります。

(為替変動によるリスク)

為替の変動は、当社グループが輸出販売する製品の価格、購入する原材料の価格及び外貨建資産・負債の価値、外貨建財務諸表の邦貨換算等に影響を与えますが、日本円が他の通貨に対して円高になると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、連結売上収益に占める海外売上収益の割合が当連結会計年度で68.0%(国際会計基準(以下「IFRS」という。)での数値)となり、今後も当社グループの財政状態及び経営成績が為替変動により受ける影響は拡大する可能性があります。

このため、当社グループでは、為替予約や通貨ごとの輸出入のバランス化等により、為替変動によるリスクの軽減を図っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではありません。

 

(災害時のリスク)

当社グループは、世界の広範な地域で事業を展開しており、それらの事業は自然災害、疾病、戦争、テロ等に直接又は間接の影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大地震、集中豪雨、大型台風等により被害を受けた経験を踏まえ、大規模自然災害が発生した際も重要業務を継続し、迅速な復旧を図るため、事業継続計画(BCP)の策定と、国内外の拠点で災害を想定しBCPに基づいて事業継続のために対応する実践訓練を行うなど、従来より対策を講じております。また、各事業所で地震、火災等を想定して防災避難訓練及び安否確認訓練を実施するなど、有事の際に被害を最小限に抑えるよう従業員の防災意識を高めるための活動を実施しております。

 

(産業事故等のリスク)

当社グループは、日本、アジア、欧州、米州等に製造拠点を有しており、各製造拠点において火災、爆発、有害物質の漏えい等の産業事故や環境汚染が発生し、工場の操業や地域社会に大きな影響を及ぼした場合、社会的信用の失墜、被災者への補償、復旧費用、生産活動停止による機会損失、顧客に対する補償など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、産業事故を予防するため、点検と対策を計画的に進め、産業事故の発生防止対策を実施しております。また、定期的に海外製造拠点を含め防災監査を実施し、防災対策の点検と評価を行い、各拠点の防災活動強化を図っております。環境面でも環境汚染防止のための設備対策やモニタリングを実施するなど、環境に配慮した事業運営を実施しております。

また、重要設備の停止による生産活動への影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を行う一方、老朽化更新を計画的に進めております。

 

(情報の流出によるリスク)

当社グループは、事業活動を通じて、営業秘密、ノウハウ、データ等の機密情報のほか、顧客情報や従業員の個人情報も保有しております。コンピューターウイルス感染や不正アクセスなどサイバー攻撃のほか、パソコン、スマートフォン等の情報端末の紛失など、故意、過失を問わず情報漏えいし、社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、技術開発情報漏えいによる競争力低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。企業の情報管理の重要性が増している中、機密情報や個人情報等の秘密保持については、社内規定の整備と運用の徹底、情報機器へのセキュリティ対策などソフト面、ハード面での対策を実施し、リスクを最小化するよう取り組んでおります。

 

(金利の変動によるリスク)

当社グループは、有利子負債の削減を推進し財務体質の改善を図るとともに、資金調達手段の多様化や金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(保有有価証券の時価の下落によるリスク)

当社グループは、市場性のある株式を保有しております。このため全般的かつ大幅な株価下落が続いた場合、保有有価証券に減損又は評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(退職給付債務に係るリスク)

当社グループは、ポイント制の退職一時金、確定給付企業年金、確定拠出年金制度を導入しております。従業員の退職給付債務及び費用については、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

企業年金基金の年金資産運用にあたっては、代議員会・理事会などを設けて重要事項の審議、決定執行が行われ、外部の運用コンサルタント会社の助言なども仰ぎながら、定期的に「資産運用管理委員会」を開催するなど適切に管理運用を行っております。

 

(知的財産に係るリスク)

当社グループは、特許権、商標権等の知的財産権の取得により自社の知的財産権保護を行っておりますが、他社からの知的財産権侵害等により競争優位性が損なわれるなど当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社が開発する製品及び技術については当社が保有する知的財産権による保護に努めているほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう細心の注意を払い、リスク管理を徹底しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

 

百万円

百万円

売上収益

790,817

936,039

18.4

 

タイヤ事業

679,860

795,045

16.9

 

スポーツ事業

70,257

101,429

44.4

 

産業品他事業

40,700

39,565

△2.8

事業利益又は

事業損失(△)

43,388

51,975

19.8

 

タイヤ事業

40,949

41,398

1.1

 

スポーツ事業

△741

8,604

 

産業品他事業

3,186

1,945

△39.0

 

調整額

△6

28

営業利益

38,701

49,169

27.0

親会社の所有者に

帰属する当期利益

22,596

29,470

30.4

(注)事業利益又は事業損失(△)は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

為替レートの前提

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

1米ドル当たり

107

110

3

1ユーロ当たり

122

130

8

 

当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により一部で依然として厳しい状況にありますが、全体としては回復が続いています。我が国においても経済全体の持ち直しの動きがゆるやかに続いています。

当社グループを取り巻く情勢につきましては、為替の円安により輸出環境が改善したことに加え、欧米をはじめ多くの市場で回復基調となるなど明るい兆しも見えたものの、海上輸送コストや原材料価格の高騰の影響を受けました。そのような中、当社グループは2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて経営基盤強化を目指す全社プロジェクトを強力に推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を目指して顧客ニーズに対応した高機能商品を開発、増販するなど、グローバル体制による競争力の強化に取り組みました。

この結果、当社グループの連結業績は、売上収益は936,039百万円(前期比18.4%増)、事業利益は51,975百万円(前期比19.8%増)、営業利益は49,169百万円(前期比27.0%増)となり、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は29,470百万円(前期比30.4%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

 

(タイヤ事業)

タイヤ事業の売上収益は、795,045百万円(前期比16.9%増)、事業利益は41,398百万円(前期比1.1%増)となりました。

国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足の影響等により自動車メーカーの生産台数が減少したことが受注に影響し、販売は前期を下回りました。

国内市販用タイヤは、夏タイヤで高機能商品の販売が増加しました。また、季節に左右されずに安全・安心を提供できる商品として好評を得ているオールシーズンタイヤのカテゴリーで、乗用車用に加えてタクシーやバン用のタイヤも発売しました。冬タイヤの販売は降雪の影響もあり堅調に推移しました。これらの結果、販売は前期を上回りました。

海外新車用タイヤは、半導体不足影響による自動車メーカーの減産はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前期よりも受注が回復し、販売は前期を上回りました。

海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では中国で新商品投入の効果により販売が増加したほか、需要が回復しているインドネシアでも拡販できました。欧州においてはタイヤ需要が回復する中、レース活動などプロモーションの効果もあり販売本数を伸ばすことができました。米州地域においては、北米でSUV用タイヤの「ワイルドピーク」シリーズが引き続き好調で販売を伸ばしましたが、輸送コンテナの逼迫による制約に加えて、輸送費高騰の影響を大きく受けました。南米においては地産地消の強みを活かし、旺盛な需要に対応して販売を伸ばすことができました。

以上の結果、タイヤ事業の売上収益は前期を上回り、利益はほぼ横ばいとなりました。

 

(スポーツ事業)

スポーツ事業の売上収益は、101,429百万円(前期比44.4%増)、事業利益は8,604百万円(前期は741百万円の損失)となりました。

ゴルフ用品は、日本市場ではコロナ禍において需要が引き続き活況となり、松山英樹選手のマスターズ優勝効果もあり「スリクソン」のゴルフクラブ・ボールや「クリーブランド」のゴルフクラブが好調に推移したほか、12月に発売したゴルフクラブ「ゼクシオ12(トゥウェルブ)」も好調な出足となりました。海外では北米、韓国などを中心にゴルフクラブ・ボールともに販売を伸ばすことが出来ました。その結果、売上収益は前期を上回りました。

またテニス用品は新型コロナウイルス感染症の影響で全体需要がやや減少する中で販売が増加したほか、海外市場ではスペイン発祥のラケット競技「パデル」のスポーツ用品も好調に推移したことで、売上収益は前期を上回りました。

ウェルネス事業では新型コロナウイルス感染症の影響は継続していますが、感染予防に万全の対策を講じつつ全拠点で営業を強化したこともあり、売上収益は前期を上回りました。

以上の結果、スポーツ事業の売上収益は前期を上回り、増益となりました。

 

(産業品他事業)

産業品他事業の売上収益は、39,565百万円(前期比2.8%減)、事業利益は1,945百万円(前期比39.0%減)となりました。

主要OA機器メーカーのプリンター・コピー機の生産が回復基調となったことによるOA機器用精密ゴム部品の販売の増加や、海外を中心とした医療用ゴム製品の販売堅調の一方で、インフラ系商材における受注の減少や使い切り手袋の需要減退等がありました。

以上の結果、産業品他事業の売上収益は前期を下回り、減益となりました。

 

②財政状態の状況

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

百万円

百万円

百万円

資産合計

974,805

1,086,169

111,364

資本合計

467,097

513,543

46,446

親会社の所有者に

帰属する持分

454,743

501,540

46,797

親会社所有者帰属

持分比率(%)

46.6

46.2

△0.4

ROE(%)

4.9

6.2

1.3

ROA(%)

4.3

5.0

0.7

有利子負債

276,739

296,784

20,045

D/E レシオ(倍)

0.6

0.6

1株当たり親会社

所有者帰属持分

1,729円05銭

1,907円03銭

177円98銭

(注)ROAは連結ベースの事業利益に基づき算出しております。

 

当連結会計年度末の資産合計は、1,086,169百万円と前連結会計年度末に比べて111,364百万円増加しました。棚卸資産の増加などにより流動資産が96,429百万円増加しました。また、退職給付に係る資産の増加及び投資有価証券時価評価によるその他の金融資産の増加などにより非流動資産は14,935百万円増加しました。

当連結会計年度末の負債合計は、572,626百万円と前連結会計年度末に比べて64,918百万円増加し、有利子負債残高は、296,784百万円と前連結会計年度末に比べて20,045百万円増加しました。

 当連結会計年度末の資本合計は513,543百万円と前連結会計年度末に比べて46,446百万円増加しました。うち親会社の所有者に帰属する持分は501,540百万円と前連結会計年度末に比べて46,797百万円増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.2%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,907円03銭となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ890百万円増加し、当連結会計年度末には75,093百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、63,090百万円(前連結会計年度比60,414百万円の収入の減少)となりました。

これは主として、棚卸資産の増加61,734百万円、法人所得税の支払16,758百万円などの減少要因があったものの、税引前利益44,765百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上67,724百万円、営業債務及びその他の債務の増加33,121百万円などの増加要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、54,023百万円(前連結会計年度比8,429百万円の支出の増加)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出47,726百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、13,332百万円(前連結会計年度比48,549百万円の支出の減少)となりました。

これは主として、短期借入金、長期借入金及び社債が純額で16,855百万円増加したほか、配当金の支払15,776百万円、リース負債の返済13,382百万円を行ったことなどによるものであります。

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

663,928

20.3%

スポーツ事業

47,834

10.6%

産業品他事業

32,056

9.6%

合計

743,818

19.1%

(注)1.金額は、販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

②受注実績

 当社グループの製品は、大部分が見込生産であり、ごく一部の製品(防舷材等)についてのみ受注生産を行っております。

 

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

795,045

16.9%

スポーツ事業

101,429

44.4%

産業品他事業

39,565

△2.8%

合計

936,039

18.4%

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。

連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、会計上の見積りや前提が必要となりますが、当社グループは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

また、新型コロナウイルス感染症による影響については、変異株による経済活動への影響が懸念されており、収束時期が見通せない中、国内外において経済活動の回復に制約が見られる状況が続くと予想されます。先行きは予断を許さない状況でありますが、ウイズコロナの新常態において、緩やかに回復に向かうものと仮定しております。

当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの中期計画における数値目標は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載のとおりですが、当連結会計年度の経営成績に重要な影響を与えた主なものは、原材料価格の上昇及び海上輸送コストの負担増であります。

主力のタイヤ事業において、当連結会計年度においては、原材料価格の上昇及び海上輸送コストの負担増の影響、並びに北米でアンチダンピング課税の負担増の影響があったものの、販売数量の増加、製品構成の良化及び売価への価格転嫁により事業利益はほぼ横ばいとなりました。原材料面では、天然ゴム価格及び石油系原材料価格が上昇したことにより、減益要因となりました。販売面では、新車用タイヤでは世界的な半導体不足の影響があったものの、市販用タイヤ、新車用タイヤともにコロナ禍からの回復の中で販売を伸ばしたことや製品構成の良化により、数量・構成他は増益要因、原材料価格の上昇等に伴い価格改善を進めたことで価格も増益要因となりました。為替については、円安傾向で推移したことにより、増益要因となりました。直接原価はコロナ影響を受けた前期と比べ、操業度が定常状態に戻ったことで増益要因となった一方、堅調な投資とコロナ禍からの回復に伴い、固定費及び経費は減益要因となりました。

この結果、前連結会計年度に対し、原材料価格全体で約370億円、固定費で約51億円、経費で約11億円の減益要因となったものの、販売価格で約246億円、数量・構成他で約82億円、直接原価で約59億円、為替で約49億円がそれぞれ増益要因となりました。高機能商品の更なる拡販、海外工場における生産性の改善など、収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みましたが、原材料価格の上昇及び海上輸送コストの負担増の影響が大きくタイヤ事業全体では事業利益はほぼ横ばいとなりました。

スポーツ事業及び産業品他事業の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度 事業利益の増減要因0102010_007.png

 

以上の結果、売上収益は936,039百万円と前連結会計年度に比べ145,222百万円(18.4%)の増収、事業利益は51,975百万円と前連結会計年度に比べ8,587百万円(19.8%)の増益となり、売上収益事業利益率は前連結会計年度に比べ0.1ポイント上昇し、5.6%となりました。

その他の収益及び費用では、減損損失が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ1,881百万円の増益となりました。

この結果、営業利益は49,169百万円と前連結会計年度に比べ10,468百万円(27.0%)の増益となり、売上収益営業利益率は前連結会計年度に比べ0.4ポイント上昇し、5.3%となりました。

金融収益及び費用では、為替差損が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ4,506百万円の増益となりました。

以上の結果、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は29,470百万円と前連結会計年度に比べ6,874百万円(30.4%)の増益となりました。

中期計画における目標達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載の施策に取り組んでまいります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは9,067百万円のプラスとなり、主に配当金の支払15,776百万円に充当しております。なお、配当に関する基本方針は、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載のとおりとなります。

今後、主に世界各地での増販に合わせた高機能タイヤの生産能力増強のための設備投資を行っていく方針でありますが、販売数量の増加と採算性の改善により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を実現しながら、必要に応じ金融市場や金融機関からの調達も活用するなど、「成長」と「流動性の確保並びに財務体質の向上」との両立を図りながら、2020年2月13日公表の中期計画で目標としているD/Eレシオ0.5以下の達成を目指してまいります。なお、当社と国内子会社、当社と一部の海外子会社との間でCMS(キャッシュマネジメントシステム)による資金融通を行っており、当社グループ内での資金効率向上を図っております。

また、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「A+(長期)、J-1(短期)」の信用格付を取得しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

5【研究開発活動】

当社グループにおいては、当社の研究開発組織・施設を核として世界各地に所在する子会社・関連会社群との密接な連携のもと、タイヤ・スポーツ・産業品他事業、幅広い領域・分野で研究開発を推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、25,447百万円であります。

セグメント別の主要な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1)タイヤ事業

当社グループのタイヤ技術研究開発は、神戸本社に隣接したタイヤテクニカルセンターを中心に、欧州・米国のテクニカルセンターと連携して商品の開発に取り組んでおります。

また当社は、総合的な機能を有する岡山タイヤテストコースと冬用タイヤの開発を行う名寄及び旭川タイヤテストコースを国内に有しています。冬用タイヤ開発拠点である名寄タイヤテストコース(北海道名寄市)では冬シーズンの凍結路や圧雪路におけるタイヤ性能の試験・解析を行っており、2021年1月に名寄タイヤテストコース内に、新たな試験施設「NICE(Nayoro indoor ICE field)」を開設しました。「NICE」は、国内最大級の屋内氷上試験施設として、天候に左右されない高精度な試験を可能とします。今後、「NICE」を活用することで冬用タイヤの更なる高性能化と開発のスピードアップを図ってまいります。

 

当社は「タイヤが地球環境の為に貢献できること」をテーマに、「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つの方向性で環境配慮商品の開発に取り組んでおります。また、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化するなか、「さらに高い環境性能」を実現する技術である「エナセーブ・テクノロジー」に基づいて環境配慮商品の開発を推進しております。

また、当社はCASE/MaaSなどの自動車業界の変革に対応するためのタイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」を掲げております。例えば、タイヤの摩耗、経年による性能低下を抑制し、新品時の性能を長く持続させる「性能持続技術」や、商品ライフサイクル全体で環境性能を高めて循環型社会の実現に寄与する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方を採り入れた商品開発を推進するとともに、デジタルツールを用いて得られるさまざまなデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指しております。

その中でもタイヤを「センサー」としたソリューションサービスの分野では、独自のタイヤセンシング技術「SENSING CORE(センシングコア)」を進化させ、タイヤの摩耗量を検知する技術を新たに確立しました。これにより、従来から検知可能であったタイヤの空気圧減圧・輪荷重・路面状態に加えて、タイヤ摩耗が検知できるようになりました。当社独自の「SENSING CORE」は、タイヤ開発で培ったタイヤの動的挙動に関する知見と、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析するデジタルフィルタリング技術を融合し、タイヤそのものをセンサーのように利用することで、タイヤへのセンサーの追加を必要とせず、車両にソフトウェアをインストールするだけで検知が可能となり、その機能はメンテナンスフリーであるというのが大きな特長です。さらに、車両より必要な情報をクラウドにアップすることで、クラウド上で検知することも可能です。

クラウド上のデータは独自のアルゴリズムで解析を行い、モビリティサービスや運送事業者などの安全運行やメンテナンスコストの削減などへの活用を見込んでいます。

一方、関西大学と共同で、タイヤの内側に静電気を利用した発電デバイス(エナジーハーベスト※1)を取り付け、タイヤの回転によって電力を発生させる技術開発を行っています。この開発では摩擦帯電に係る構造と材料の最適化で発電電力を向上させ、さらに充電機能の追加により、電池などのバッテリーを使用せず、タイヤ周辺に搭載するセンサーへの電源供給が可能となりました。このタイヤ内発電技術は、タイヤ内センサーデバイスの電池寿命を解決する手段でありますが、この実現により環境配慮型のセンサーデバイスの提供が可能となると考えています。

 

材料開発の分野では当社と東北大学多元物質科学研究所による、産学連携の共同研究で、当社が2015年に完成させた独自の新材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」にて開発した4D-CT(4次元X線CT)法の約1,000倍速での高速撮影に成功しました。この技術により、実際にタイヤが摩耗する時に近い状態で、ゴムが破壊する様子を連続的かつ様々な速度で3D観察することが可能となりました。今後この技術を活用し、耐摩耗性能に優れた環境に優しいロングライフなタイヤの新材料開発を加速させてまいります。

また、当社と東北大学が参画する、国立研究開発法人科学技術振興機構が独創的で国際的に高い水準の研究を推進する戦略的創造研究推進事業「CREST」にて、超高速撮影が可能なマルチビーム4D-CT法の開発を進めています。超高速マルチビーム4D-CT法から得られるビッグデータの解析に向けて、機械学習など高度情報処理との融合により、高性能な材料の開発を目指します。

さらに、2021年3月から学術・産業分野へ共用が開始されたスーパーコンピュータ「富岳」(以下、「富岳」)の令和3年度HPCIシステム利用研究課題募集における「富岳」産業課利用枠に採択されました。「富岳」を利用することで「ADVANCED 4D NANO DESIGN」を進化させ、分子運動に加えて化学変化まで表現できるゴム材料のシミュレーションを実現させる予定です。

 

デザイン技術の分野では、2021年8月にタイヤのサイドウォールの文字や模様の視認性を向上させる黒色デザイン技術「Nano Black(ナノブラック)」を確立しました。「Nano Black」で新たに採用された凹凸形状は、光が吸収面に衝突する回数が多いほど色が黒く見えることに着目し、吸収面の単位面積当たり表面積を最大化することで、どの角度から見ても黒さが損なわれずくっきり見えるように設計しています。この技術によって、サイドウォールのブランドロゴや商品名などの視認性を向上させるとともに、デザイン性を高めることで高級感を創出し、さらにお客様に選んでもらえるタイヤづくりを目指します。

当事業に係る研究開発費は21,257百万円であります。

 ※1 環境発電。身の回りの使われずに捨てられている、光、振動、熱などのわずかな環境エネルギーを拾い集めて活用する技術。

 

(2)スポーツ事業

スポーツ事業本部並びに米国のRoger Cleveland Golf Company, Inc.に研究開発部門を設置しており、コンピューターシミュレーション技術等を用いて新技術・新商品の開発並びに評価、試験に取り組んでおります。兵庫県丹波市の「ゴルフ科学センター」では、スイングマシーンによるテストに加え、トッププロからアベレージゴルファーまでの様々な方のヒューマンテストを行い、クラブやボールの特性に加え、スイングとクラブの関係など、膨大なデータを集積し、総合的に測定・解析・評価を行っております。これらの技術により、ゴルフクラブでは「ゼクシオ」12代目となる「ゼクシオ エックス」及び「ゼクシオ 12(トゥウェルブ)」を開発し、2021年12月に発売しました。ヘッドのクラウン部に搭載した凸型の「ActivWing(アクティブウイング)」が、ダウンスイング時の空力をコントロールし、ヘッドのブレを抑制し、インパクトの最適化が可能となりました。ヘッドの反発を高める「REBOUND FRAME(リバウンド フレーム)」構造との相乗効果で、ボール初速を向上させ、大きな飛距離を生み出します。

テニスラケットでは、多様なプレースタイルに対応すべく、スピン性能だけでなく、飛びの安定性にも着目して開発したダンロップ「SX」シリーズを開発し、商品化しました。新グロメット構造「スピンブースト・プラス・テクノロジー」搭載で、オフセンターにおける打点のばらつきによる弾道のブレを自動的に補正します。これにより、飛びの安定性が向上し、ネットエラーやコースアウトが減少します。

このほか、ゴルフクラブ、テニスラケットで培った技術を応用して開発を進めていたバドミントンラケット「Z-STAR(ゼットスター)」シリーズ、「AERO-STAR(エアロスター)」シリーズを、2021年7月から発売しました。当社の製造子会社ダンロップゴルフクラブ製ゴルフシャフト「MIYAZAKI」のキーテクノロジーとノウハウを生かし、通常のシャフトよりカーボン繊維を高密度化することにより高い剛性を実現しました。カーボン繊維層間に振動を抑制する粒子を付加することで、インパクト時の衝撃や不快な振動を抑え、安定性が向上しました。フレーム部分には、テニスラケットに搭載している高反発素材「ソニックコア」の技術を応用し、振動吸収性の向上や、反発力の増幅を実現しました。

当事業に係る研究開発費は2,241百万円であります。

 

(3)産業品他事業

ハイブリッド事業本部では、高減衰ゴムを用いた制振部材、医療用ゴム製品、車いす用可搬形スロープ等、安全・安心・快適をテーマとする事業活動に積極的に取り組んでおります。

スポーツ用人工芝事業においては、持続可能な社会の実現を念頭に、人工芝からのマイクロプラスチック流出を抑制するための実証実験を、施設の所有・管理者である兵庫県西宮市との協力の下で開始いたしました。公表例としては国内で初めての取り組みとなり、環境省が取りまとめた「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」にも紹介されています。今後、当社の調査や実証実験の結果を公開し、バリア資材やメンテナンスによる流出抑制効果の情報を施設管理者に提供することで、人工芝由来のマイクロプラスチック問題解決に向けた活動を推進してまいります。スポーツ用人工芝のみならず、カーボンニュートラル、プラスチックの削減等、社会問題を解決することを念頭に、人々のより安全・快適な暮らしに貢献する研究開発を行っていきます。

当事業に係る研究開発費は1,949百万円であります。