第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略等

当社グループでは、これまで受け継がれてきた「住友事業精神」を基盤に、2020年に「Our Philosophy」を制定し、当社グループの存在意義である「Purpose」を以下の内容といたしました。「Purpose」を中心とする「Our Philosophy」をあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

 

企業理念体系「Our Philosophy Purpose」

 

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新たに策定いたしました中期計画の骨子は下図のとおりです。当社は、2020年から取り組む基盤強化プロジェクトにより、全社を挙げて組織体質・経営基盤を強化し、並行してDX経営の実践に向けた基幹システムの刷新等を進めております。これらの取り組みを土台に、2025年までの期間は「既存事業の選択と集中」のための構造改革に注力しつつ、あわせて成長事業の基盤づくりを推進してまいります。そして、2026年以降、事業ポートフォリオの最適化と成長事業のビジネス拡大により、更なる飛躍につなげる計画です。
 

新中期計画の骨子

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2020年公表の中期計画で設定しておりました2025年目標につきまして、連結売上収益1兆円は達成しました。外部環境の大きな変化の影響もあり、事業利益1,000億円、ROE10%、DEレシオ0.5の達成は、2026年以降となる見込みです。この度策定しました2027年までの新中期計画の財務目標は、最終年度の2027年目標数値として事業利益率7%、ROE10%、DEレシオ0.6、ROIC6%と設定しております。

 

新中期計画の各施策に全社でスピードを上げて取り組み、2027年目標の確実な達成に向けて邁進してまいります。

 

新中期計画の財務数値目標

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また、当社グループは、2021年8月にサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を発表し全社でESG活動を推進しております。

2023年1月には、「サステナビリティ経営推進本部」を新設し、「サステナビリティ推進部」「環境管理部」に加えタイヤ事業の製造及び販売に係るサーキュラ-エコノミ-(循環型経済)構築の推進を担う「サーキュラーエコノミー推進部」を配置することで、ESG経営推進に向けた更なる体制強化を行いました。

 

[Environment(環境)]

(カーボンニュートラルに向けた取り組み)

グループ全工場から排出されるCO2について、2050年にはカーボンニュートラルの達成を目指しております。この実現のため省エネ、太陽光パネルの設置やグリーン電力の購入拡大などを軸に取り組みを進めており、2030年目標のCO2削減50%(2017年比)を1年前倒しで達成できる見込みです。また、タイヤの製造工程では、次世代エネルギーとして注目されている水素を活用するべく、2021年8月から福島県の白河工場での実証実験をスタートいたしました。太陽光発電と合わせて、同工場内の高性能タイヤ製造システム「NEO-T01(ネオ ティーゼロワン)」の全工程をクリーンエネルギー化することで、本年1月には製造時(Scope1,2)カーボンニュートラルを達成した量産タイヤの生産を開始いたしました。今後は国内外の工場へ水素利用を拡大することを検討するとともに、Scope3の削減目標についても、本年中の公表に向けて検討を進めております。

再生可能エネルギーの利用については、中国工場の購入電力を全て再生可能エネルギー由来の電力に切替済みです。2022年12月には電力の再生可能エネルギー100%化を目指す企業で構成される国際的な環境イニシアチブ「RE100」への賛同を表明しました。

 

 

 

 

 

カーボンニュートラルに向けた取り組み

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(サステナブル原材料(バイオマス及びリサイクル原材料)の活用)

タイヤ・スポーツ・産業品他の各事業で、サステナブル原材料比率の向上を進めてまいります。タイヤでは同比率を2030年に40%、2050年には100%に、スポーツのゴルフボールとテニスボールや産業品他でも、2050年での100%サステナブル原材料化を目指してまいります。

 

サステナブル原材料の活用0102010_005.jpg

 

[Social(社会)]

「多様な力をひとつに、共に成長し、変化をのりこえる会社になる。」という「Our Philosophy」の「Vision」のもと、多様な属性や価値観を持つ一人ひとりが尊重され、働きがいを持つことができる風土作りを進めております。

 

(リーダーシップ開発)

社長を含む役員及び管理職のリーダーシップを強化するための施策として、360度フィードバックを年1回実施し、自身のリーダーシップスタイルを客観的に見つめる機会としております。また、執行役員にはエグゼクティブコーチングを導入し、意思決定の質やマネジメントスキルの向上に取り組んでおります。

 

(キャリア支援制度)

社員一人ひとりが挑戦し、輝ける機会の創出を目的として、キャリア支援制度を導入しており、自身の中長期的なキャリア希望を登録し対話をすることで実現の可能性を広げるキャリアマッチングや、社内外のプロジェクトに参加希望を出すことができるプロジェクト公募制などがあります。これらの制度を活用し、自身のキャリアを自律的に考えてもらう機会にしております。

 

(女性活躍の推進)

ダイバーシティ&インクルージョンの観点から、女性の活躍を推進するための施策を継続的に進めてまいります。女性管理職比率の向上や女性技能員の働きやすさ改善を重要指標として、女性管理職候補のキャリア開発を目的としたメンター制度や、男性の育児参画促進を切り口に生産性の高い職場づくりを目的とした管理職向けイクボスセミナーなどを実施しております。

 

(組織健康度調査)

これらの取り組みを通じて変革した組織風土を定量的に把握するため、2020年から組織体質アンケートを定期的に実施し結果について全社員に開示しております。全体としては改善傾向ですが、新たに見えてきた課題もありますので継続的に改善を進めてまいります。

 

(人権マネジメント体制構築)

人権マネジメントに関しては、2023年にグローバル人権方針を策定し、社内外へコミットを行う予定です。また、並行して各部門で人権リスク特定を進め、これらについて効果的に対処できる人権マネジメント体制を構築し、人権デューデリジェンスを適切に実施することで、人権の保護・尊重を進めてまいります。
 

[Governance(ガバナンス)]

当社のコーポレートガバナンス体制の概要は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。「Our Philosophy」を全ての企業活動の基盤とし、業務の執行状況について取締役会や監査役会で適宜監督を行うことで、変化の大きい社会情勢やグローバルな事業拡大等に適切に対応できる体制としております。

 

従来から実施していた取締役会の実効性評価は継続して実施していますが、2022年も実効性向上に向けた種々の取り組みを実施した結果、2021年の第三者機関による実効性評価の際に課題として挙がっていた、取締役会での議論時間の確保や社外役員への情報提供拡充等についてはいずれも改善できていることが確認できました。引き続き、取締役会の実効性を向上させ、更なる企業価値向上につなげてまいります。

 

また、本年発表いたしました新中期計画の策定にあたっては、取締役会やオフサイトミーティングなどにおいて、コンセプト決定段階から最終案の確定に至るまで複数回にわたって意見交換を行うなど、社内外の役員の多様な見解を踏まえ内容の充実を図りました。

 

また、社外取締役が委員長を務め、委員の過半数を社外役員とする指名・報酬委員会では、中長期的な視点で当社に必要なスキルを落とし込んだスキルマトリックスを活用し、企業価値向上につながる体制について議論を行っています。今後も、取締役が中期計画達成に向けてグループ全体をさらに主導できる体制づくりを進めてまいります。

 

(2)経営環境及び対処すべき主な課題

今後の経営環境につきましては、新型コロナウイルス感染症による影響で低迷した経済活動からの緩やかな回復が期待されます。

このような情勢のもと、当社グループは、新中期計画を着実に推進することで、「Our Philosophy」の具現化を図りつつ、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指し、次のような課題に取り組んでまいります。

 

(タイヤ事業)

 当社のタイヤ技術コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」を最新のデジタル技術も活用してさらに進化させ、これらの技術を新商品にも順次投入することで、将来のモビリティ社会への貢献につなげてまいります。

 

 国内市販用では、ドライ路面・ウェット路面に加え、雪道でも走行可能なオールシーズンタイヤの幅広いラインアップで、新たな需要創出を図ります。オールシーズンタイヤは、都市部や雪があまり降らない地域における天候の急変に対応できる全天候タイヤで、今後も様々な層へ訴求し販売を伸ばしてまいります。

 

 アジア地域では、強固な製販体制を構築し地産地消化を進めております。中でも、市場規模の大きい中国では、市販用でEVタイヤ「e. SPORT MAXX(イースポーツマックス)」を昨年発売したほか、新車用では、伸長著しい中華系自動車メーカーへのEVタイヤの納入を強化しております。今後、需要の回復が期待できる中国市場を中心に「ダンロップ」ブランドのプレゼンス向上につなげてまいります。

 

 欧州アフリカ地域では、市場規模の大きいドイツにおいて「ファルケン」ブランドが市販用シェア4位と市場の一角を占めるポジションに成長しております。本年は、欧州市場向けEVタイヤ「e. ZIEX(イージークス)」の発売を予定しており、「ファルケン」ブランド価値の向上及び市販用タイヤの拡販につなげてまいります。

 

 米州地域では、米国工場の収益改善を引き続き進めてまいります。また、関税や海上運賃等のリスクを低減させるために、地産地消比率を引き上げ、販売においては「ファルケン」ブランドのSUVタイヤ等の高機能タイヤを中心に商品展開を進め、利益改善を図ってまいります。南米ではブラジル工場の高機能タイヤ供給能力を増強し販売を伸ばすことにより、今後も安定した利益基盤の構築に努めてまいります。

 

 生産面では、世界各地の工場の生産能力をフル活用して地産地消化を進めながら、グローバルで生産体制を確立しております。これらにより、自動車メーカーとの強固な信頼関係をグローバルで構築し、新車への装着拡大と市販用タイヤ販売への波及効果でビジネスの基盤を強化してまいります。

 

 また、世界の主要市場でEV車両が増えつつありますが、市販用のEVタイヤは中国に続いて欧州での発売も計画しており、新車用でもすでに複数の自動車メーカーへの納入を始めております。今後もグローバル市場各国の自動車メーカーと連携し、EV車両の性能を最大限に引き出せるタイヤを当社独自の材料技術・設計技術により開発してまいります。

 

(スポーツ事業)

 スポーツ事業を取り巻く環境は、世界的なインフレや地政学的緊張が高まるなど世界経済の動向が不透明な中、スポーツの魅力や果たす役割の重要性がコロナ禍以降改めて認識されたこともあり、ゴルフ及びテニスの需要は世界的に堅調に推移し、ウェルネス事業でも持ち直しの傾向が見られました。今後もスポーツ関連用品やサービスを通じて、お客様に感動と「ヨロコビ」を提供し続けてまいります。

 ゴルフ用品では、世界最大市場である北米においてマーケティング及び営業体制の強化を進めるとともに、日米2拠点での開発体制により、市場ニーズに応じたダントツ商品を投入することで、一層の拡販と新たな価値創出につなげてまいります。

 テニス用品では、全豪オープンのオフィシャルパートナー契約継続やATPツアーでのボール使用率No.1、世界有数のアカデミーとの協業等での若手育成、トッププロ選手との契約強化といった「ダンロップ」ブランドの価値向上施策を基盤に、ボールやラケットのシェアアップを図ります。また、「ダンロップ」ブランドは2023年、英国でのテニスボール生産開始から100周年を迎えます。様々なプロモーションやコラボレーションを通して、ブランド力の更なる向上を図るとともに、テニス業界の活性化に貢献してまいります。

 ウェルネス事業では、市場が回復傾向にあるものの依然本格回復には至らない中、不採算店舗の整理や運営の効率化を図りながら、サービス品質、顧客満足度の向上に一層努めてまいります。

 

(産業品他事業)

 制振事業では、国内住宅用制振ダンパーでシェアNo.1の技術をさらに進化させ、ビル・橋梁・自動倉庫分野へ拡大するとともに、熊本城などの歴史的建造物の保存維持にも貢献できる事業として取り組んでまいります。医療用ゴム製品事業では、当社独自の高付加価値ゴム製品で医薬品市場において事業を拡大することで、人々がより安心して、安全・快適に生活できる社会づくりに貢献してまいります。

 今後も全ての商材において時代のニーズに適応する付加価値の高い商品を開発・提供することにより、更なる成長を目指してまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのある経営リスクについては、「リスク管理規定」に基づき、それぞれの担当部署及び各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、経営会議等で審議しております。リスク分析・対応策の検討にあたっては、必要に応じて顧問弁護士等の専門家に助言・指導を求めております。経営リスクのうち、組織横断的リスクについては、当社管理部門の各部が、それぞれの所管業務に応じ関連部署と連携しながら、全社的対応を行っております。

また、「リスク管理規定」に基づき社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しており、年2回開催する同委員会にて当社グループのリスク管理活動を統括し、リスク管理体制が有効に機能しているか適宜調査・確認しております。

当社グループにとって重大なリスクが顕在化し、又は顕在化が予想される場合には、「危機管理規定」に基づき、社長が危機管理本部を設置します。

このようなリスク管理体制のもと、グローバルに展開する当社の事業活動も考慮のうえ、当社グループの財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを次のとおり記載しております。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらのリスクを認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

 

(政治経済情勢・需要変動・法律・規制等に係るリスク)

当社グループは、タイヤ事業、スポーツ事業及び産業品他事業を展開しております。各分野や各地域に特有の需要変動や、環境対応など顧客ニーズの変化、また、各国の政治情勢の影響を受けることがあります。海外における戦争、 テロ、暴動、ストライキ等のリスクに対しては、リスクコンサルタント等の専門家や政府関係機関等より情報収集を行うとともに、有事の際には現地拠点の安全確認、現地情報の社内展開を行っております。さらに、アジア・大洋州、欧州・アフリカ、米州の各地域を統括する本部を設置し、必要に応じて弁護士やコンサルタント等の専門家と契約するなどして現地特有の法規制、商習慣、リスク等を踏まえ現地拠点の経営について協議する等、リスク管理の面からも各地域における関係会社の支援を行っております。

また、当社グループは、連結売上収益に占める、国内外の自動車用タイヤの割合が大きく、自動車産業の景況が悪化した場合、自動車用タイヤの需要減少や大口顧客との取引減少など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

技術開発・研究面でも、製品開発の遅延等により顧客への新製品納入遅れが生じた場合、販売減少、信用・評判の失墜、競争力低下など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが運営する事業分野において革新技術が出現し、市場で普及した場合、当社製品の需要が減少するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

このほか、各市場において、輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク、各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更や移転価格税制等により税金コストが増加するリスクなど各市場における法律・規制変更が当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(投資回収に係るリスク)

当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資及び事業の買収等の投資を行い、更なる企業価値の向上に努めております。

投資実行にあたっては、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行っておりますが、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離や、割引率、移転価格税制等の重要な仮定の変動によって、想定した回収可能価額が見込めない場合は減損損失が発生するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループ会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、当社が保有する関係会社株式や当社グループ会社への貸付金の評価に影響を及ぼすなど、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末における、当社が買収により取得した主要な連結子会社は、Sumitomo Rubber South Africa (Pty) Limited、㈱ダンロップスポーツウェルネス、Lonstroff AG 、Sumitomo Rubber USA, LLC.及びMicheldever Group Ltd.となります。

 

(製品の品質管理に係るリスク)

当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じておりますが、製品の欠陥やクレームが発生する可能性があります。

当社グループは、欠陥が発生した場合又は裁判等により欠陥が認定された場合に備え、欠陥に起因する損害賠償等の諸費用に対する損害保険を付保しておりますが、保険で補償されない費用が発生する可能性があります。また、クレームに対する処理費並びに製品の回収・交換による費用が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、品質保証本部の設置による品質保証体制の強化や過去の不適切事案を教材としたケーススタディ研修、部門間・拠点間のコミュニケーション向上やグループガバナンスの強化につながる諸施策を継続的に進めております。引き続き、Our Philosophyに掲げる「信用と確実」の遵守を徹底し企業風土改革を推進するとともに、Bad News First/Fastも徹底していくことで、不適切な事案が再発しない体制づくりを進めてまいります。

 

(コンプライアンスに係るリスク)

当社グループは、グローバルに事業を遂行するにあたり、国内外の各種法令の適用を受けております。これらの法令に違反する行為、企業倫理に反する行為などにより、法令に基づく処罰、訴訟の提起及び信用・評判の失墜など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「住友の事業精神」をベースに制定した「Our Philosophy」に基づき、コンプライアンスを基盤とした事業運営が実践できるよう取り組んでおります。組織としては、社長を委員長とする「企業倫理委員会」を設置し、年4回の委員会開催を通じ当社グループのコンプライアンス体制の強化を図っております。併せて、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)として、社長直轄の「コンプライアンス相談室」を設置し、当社グループ内で問題が発見された場合には、相談者が不利益を被らないよう十分配慮したうえで、事実関係の調査を進める体制を整えております。また、必要に応じて顧問弁護士の助言を得るなど、適法性にも留意しております。さらに、コンプライアンスに関するべからず集である「企業行動基準」を作成し、国内従業員に配布するほか、英語版や当社グループが所在する地域のその他の言語版も作成し、グローバルでのコンプライアンス強化を図っています。

 

(気候変動によるリスク)

当社グループは、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」に賛同し、気候変動に関するリスクと機会の分析を行い、事業戦略への影響を把握し、気候変動の緩和や適応につながる対策を検討しております。

気候変動による当社グループの事業に及ぼすリスクとして、世界各国における気候変動に対する規制や制度の変化に伴い、当社グループの製造拠点におけるエネルギー転換などの費用増加、気温上昇に伴う台風や洪水、降水量の増加などの自然災害の激甚化による生産設備への損害など事業活動へのさまざまな影響が考えられます。その他、主要な原材料である天然ゴムの収穫不良による価格高騰をはじめとした原材料調達への影響、降雪量の減少によるスタッドレスタイヤの需要減少なども考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動の緩和に貢献するため、当社グループは2050年までに工場でのカーボンニュートラルの達成を目指すとともに、低燃費タイヤなどの環境配慮型商品やサステナブル原材料の比率向上、センシング技術を使った低圧走行防止・環境配慮サービスの開発促進をはじめ、循環型社会の形成、グリーン購買、グリーン物流、製造工程の省エネルギーなどライフサイクル全体において、気候変動の緩和に向けた様々な施策にグループを挙げてこれまで以上に取り組みます。CASE/MaaSの普及による次世代タイヤの需要増加、環境負荷低減を考慮したタイヤや低燃費タイヤの需要拡大など、気候変動が進展した場合に見込まれる商品需要についても対応できるようにしていきます。そのうえで、気候変動が当社グループの事業に与える影響について、財務的評価を継続的に行い、気候変動の緩和と適応に取り組みます。

 詳細は、当社企業情報サイトの「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応」(https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_5.html)をご覧ください。

 

(原材料等の調達に係るリスク)

当社グループの製品の主要原材料は、天然ゴム、石油化学製品及び金属材料です。従いまして、天然ゴム価格、原油価格、鋼材価格等の商品市況価格が上昇すると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がありますが、価格転嫁交渉等により財政状態及び経営成績への影響を最小化するよう取り組んでおります。原材料については、サプライヤーの倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があるため、複数購買先の確保、供給に問題が発生した場合に備えた事業継続計画(BCP)策定、代替が効かない重要部材は備蓄を行う、財務評価や環境リスク対応等をサプライヤー評価に盛り込む等の対策を講じ、財政状態及び経営成績への影響を最小限にとどめるよう取り組んでおります。

(為替変動によるリスク)

為替の変動は、当社グループが輸出販売する製品の価格、購入する原材料の価格及び外貨建資産・負債の価値、外貨建財務諸表の邦貨換算等に影響を与えますが、日本円が他の通貨に対して円高になると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、連結売上収益に占める海外売上収益の割合が当連結会計年度で71.5%(国際会計基準(以下「IFRS」という。)での数値)となり、今後も当社グループの財政状態及び経営成績が為替変動により受ける影響は拡大する可能性があります。

このため、当社グループでは、為替予約や通貨ごとの輸出入のバランス化等により、為替変動によるリスクの軽減を図っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではありません。

 

(災害時のリスク)

当社グループは、世界の広範な地域で事業を展開しており、それらの事業は自然災害、疾病、戦争、テロ等に直接又は間接の影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大地震、集中豪雨、大型台風等により被害を受けた経験を踏まえ、大規模自然災害が発生した際も重要業務を継続し、迅速な復旧を図るため、事業継続計画(BCP)の策定と、国内外の拠点で災害を想定しBCPに基づいて事業継続のために対応する実践訓練を行うなど、従来より対策を講じております。また、各事業所で地震、火災等を想定して防災避難訓練及び安否確認訓練を実施するなど、有事の際に被害を最小限に抑えるよう従業員の防災意識を高めるための活動を実施しております。

 

(産業事故等のリスク)

当社グループは、日本、アジア、欧州、米州等に製造拠点を有しており、各製造拠点において火災、爆発、有害物質の漏えい等の産業事故や環境汚染が発生し、工場の操業や地域社会に大きな影響を及ぼした場合、社会的信用の失墜、被災者への補償、復旧費用、生産活動停止による機会損失、顧客に対する補償など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、産業事故を予防するため、点検と対策を計画的に進め、産業事故の発生防止対策を実施しております。また、定期的に海外製造拠点を含め防災監査を実施し、防災対策の点検と評価を行い、各拠点の防災活動強化を図っております。環境面でも環境汚染防止のための設備対策やモニタリングを実施するなど、環境に配慮した事業運営を実施しております。

また、重要設備の停止による生産活動への影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を行う一方、老朽化更新を計画的に進めております。

 

(情報の流出によるリスク)

当社グループは、事業活動を通じて、営業秘密、ノウハウ、データ等の機密情報のほか、顧客情報や従業員の個人情報も保有しております。コンピューターウイルス感染や不正アクセスなどサイバー攻撃のほか、パソコン、スマートフォン等の情報端末の紛失など、故意、過失を問わず情報漏えいし、社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、技術開発情報漏えいによる競争力低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。企業の情報管理の重要性が増している中、機密情報や個人情報等の秘密保持については、社内規定の整備と運用の徹底、情報機器へのセキュリティ対策などソフト面、ハード面での対策を実施し、リスクを最小化するよう取り組んでおります。

 

(金利の変動によるリスク)

当社グループは、有利子負債の削減を推進し財務体質の改善を図るとともに、資金調達手段の多様化や金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(保有有価証券の時価の下落によるリスク)

当社グループは、市場性のある株式を保有しております。このため全般的かつ大幅な株価下落が続いた場合、保有有価証券に減損又は評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(退職給付債務に係るリスク)

当社グループは、ポイント制の退職一時金、確定給付企業年金、確定拠出年金制度を導入しております。従業員の退職給付債務及び費用については、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

企業年金基金の年金資産運用にあたっては、代議員会・理事会などを設けて重要事項の審議、決定執行が行われ、外部の運用コンサルタント会社の助言なども仰ぎながら、定期的に「資産運用管理委員会」を開催するなど適切に管理運用を行っております。

 

(知的財産に係るリスク)

当社グループは、特許権、商標権等の知的財産権の取得により自社の知的財産権保護を行っておりますが、他社からの知的財産権侵害等により競争優位性が損なわれるなど当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社が開発する製品及び技術については当社が保有する知的財産権による保護に努めているほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう細心の注意を払い、リスク管理を徹底しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

 

百万円

百万円

売上収益

936,039

1,098,664

17.4

 

タイヤ事業

795,045

939,941

18.2

 

スポーツ事業

101,429

116,597

15.0

 

産業品他事業

39,565

42,126

6.5

事業利益

51,975

21,963

△57.7

 

タイヤ事業

41,398

12,311

△70.3

 

スポーツ事業

8,604

8,943

3.9

 

産業品他事業

1,945

680

△65.0

 

調整額

28

29

営業利益

49,169

14,988

△69.5

親会社の所有者に

帰属する当期利益

29,470

9,415

△68.1

(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

為替レートの前提

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

1米ドル当たり

110

132

22

1ユーロ当たり

130

138

8

 

当期の世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響からの回復傾向が見られるものの、地域によっては高水準のインフレとそれを抑えるための急激な金利上昇に加え、ウクライナ情勢による地政学的緊張など、経済成長への懸念が見られる状況が続いております。我が国においても、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ経済が回復していく期待があるものの、為替や物価の動向などで不確実性が高い状況です。

当社グループを取り巻く情勢につきましては、多くの市場で回復基調となるなど明るい兆しも見えたものの、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの高騰の影響を受けました。そのような中、当社グループは2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて経営基盤強化を目指す全社プロジェクトを強力に推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を目指して顧客ニーズに対応した高機能商品を開発、増販するなど、グローバル体制による競争力の強化に取り組みました。また、事業環境の急激な変化に対応すべく、2027年を目標年度とした中期計画の再編成を実施いたしました。

この結果、当社グループの連結業績は、売上収益は1,098,664百万円(前期比17.4%増)、事業利益は21,963百万円(前期比57.7%減)、営業利益は14,988百万円(前期比69.5%減)となり、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は9,415百万円(前期比68.1%減)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

 

(タイヤ事業)

タイヤ事業の売上収益は、939,941百万円(前期比18.2%増)、事業利益は12,311百万円(前期比70.3%減)となりました。

国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足等により自動車メーカーの減産が続いていることの影響を受け低調に推移しました。足元の販売状況は前期を上回るなどやや回復傾向がみられましたが、累計の販売は前期を若干下回りました。

国内市販用タイヤは、年初より好調に推移しておりましたが、年末にかけては降雪の遅れや物価上昇によるタイヤ消費マインド低下の影響がみられました。夏タイヤでは新商品のグローバルフラッグシップタイヤやプレミアム商品の販売に注力したほか、季節に左右されずに安全・安心を提供できる商品として好評を得ているオールシーズンタイヤは市場認知度が徐々に上がってきており販売を伸ばしました。冬タイヤの販売は年間ではほぼ前期並みとなりました。これらの結果、販売は前期とほぼ同等となりました。

海外新車用タイヤは、半導体不足影響による自動車メーカーの減産はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前期よりも販売が回復し、前期を上回りました。

海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では、中国でゼロコロナ政策の影響もあり販売が低調に推移し前期を下回りました。インドネシアやタイでは、前期に比べると新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されたこともあり回復傾向が見られ、下期、特に第4四半期に入りインフレや燃料価格上昇の影響などはあったものの通年の販売は前期を上回りました。欧州においては、インフレ進行の影響もありタイヤ需要が鈍化してきており、販売は前期を下回りました。米州地域においては、北米では積極的な値上げを行ったほか低採算品の販売を縮小したことなどにより販売数量は減少したものの製品構成を改善することができました。南米においては、上期は旺盛な需要を背景に販売を伸ばしましたが、下期に入り需要減退がみられたこともあり、ほぼ前期並みの販売となりました。

以上のほか、各市場で値上げを行ったことに加え、為替影響もあり、タイヤ事業の売上収益は前期を上回りましたが、海上輸送コスト、原材料価格およびエネルギーコストの高騰があり、事業利益については減益となりました。

 

(スポーツ事業)

スポーツ事業の売上収益は、116,597百万円(前期比15.0%増)、事業利益は8,943百万円(前期比3.9%増)となりました。

ゴルフ用品は世界的なゴルフ需要の高まりによる部材不足などはありましたが、北米、韓国中心に海外で大きく販売を伸ばし売上収益は前期を上回りました。また、テニス用品も同様に、売上収益は前期を上回りました。

ウェルネス事業では会員数が一定程度挽回したことなどから売上収益は前期を上回りました。

以上の結果、スポーツ事業の売上収益は前期を上回り、事業利益についても増益となりました。

 

(産業品他事業)

産業品他事業の売上収益は、42,126百万円(前期比6.5%増)、事業利益は680百万円(前期比65.0%減)となりました。

医療用ゴム製品事業は国内外ともに堅調に推移し、OA機器用ゴム部品事業は円安の影響もあり増収、制振事業やインフラ事業も増収となる一方で、生活用品事業は使い切り手袋の競争激化等により減収となりました。

以上の結果、産業品他事業の売上収益は前期を上回り、事業利益については減益となりました。

 

②財政状態の状況

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

百万円

百万円

百万円

資産合計

1,086,169

1,225,202

139,033

資本合計

513,543

563,863

50,320

親会社の所有者に

帰属する持分

501,540

546,200

44,660

親会社所有者帰属

持分比率(%)

46.2

44.6

△1.6

ROE(%)

6.2

1.8

△4.4

ROA(%)

5.0

1.9

△3.1

有利子負債

296,784

372,760

75,976

D/E レシオ(倍)

0.6

0.7

0.1

1株当たり親会社

所有者帰属持分

1,907円03銭

2,076円74銭

169円71銭

(注)ROAは連結ベースの事業利益に基づき算出しております。

 

当連結会計年度末の資産合計は、1,225,202百万円と前連結会計年度末に比べて139,033百万円増加しました。棚卸資産の増加などにより流動資産が90,818百万円増加しました。また、有形固定資産の取得及び為替換算影響などにより非流動資産は48,215百万円増加しました。

当連結会計年度末の負債合計は、661,339百万円と前連結会計年度末に比べて88,713百万円増加し、有利子負債残高は、372,760百万円と前連結会計年度末に比べて75,976百万円増加しました。

 当連結会計年度末の資本合計は563,863百万円と前連結会計年度末に比べて50,320百万円増加しました。うち親会社の所有者に帰属する持分は546,200百万円と前連結会計年度末に比べて44,660百万円増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は44.6%、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,076円74銭となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,247百万円減少し、当連結会計年度末には73,846百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、27,869百万円(前連結会計年度比35,221百万円の収入の減少)となりました。

これは主として、棚卸資産の増加51,758百万円、法人所得税の支払16,483百万円などの減少要因があったものの、税引前利益22,539百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上75,348百万円、営業債務及びその他の債務の増加10,205百万円などの増加要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、78,697百万円(前連結会計年度比24,674百万円の支出の増加)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出67,324百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、41,556百万円(前連結会計年度は13,332百万円の資金の減少)となりました。

これは主として、短期借入金、長期借入金及び社債が純額で69,722百万円増加したほか、配当金の支払13,148百万円、リース負債の返済13,438百万円を行ったことなどによるものであります。

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

754,464

113.6%

スポーツ事業

59,715

124.8%

産業品他事業

38,417

119.8%

合計

852,596

114.6%

(注)金額は、販売価格によっております。

 

②受注実績

 当社グループの製品は、大部分が見込生産であり、ごく一部の製品(防舷材等)についてのみ受注生産を行っております。

 

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

タイヤ事業

939,941

118.2%

スポーツ事業

116,597

115.0%

産業品他事業

42,126

106.5%

合計

1,098,664

117.4%

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。

連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、会計上の見積りや前提が必要となりますが、当社グループは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

また、新型コロナウイルス感染症による影響については、翌連結会計年度以降も一定程度継続するものの、各国の経済は緩やかに回復するものと想定しております。

当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの中期計画における数値目標は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載のとおりですが、当連結会計年度の経営成績に重要な影響を与えた主なものは、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増であります。

主力のタイヤ事業において、当連結会計年度においては、製品構成の良化及び販売価格への価格転嫁が増益要因となったものの、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増の影響があり、事業利益は前連結会計年度に比べ290億円の減益となりました。原材料面では、天然ゴム価格及び石油系原材料価格が上昇したことにより、減益要因となりました。販売面では、新車用タイヤでは世界的な半導体不足の影響があったものの、市販用タイヤ、新車用タイヤともにコロナ禍からの回復の中で販売を伸ばしたことや製品構成の良化により、数量・構成他は増益要因、原材料価格の上昇等に伴い価格改善を進めたことで価格も増益要因となりました。直接原価はエネルギーコスト上昇の影響が大きく減益要因となり、固定費及び経費も設備投資の増加や人件費の増加などにより減益要因となりました。為替については、円安傾向に推移したため、販売面では増益要因となったものの、米ドル建てコストが増加したことにより、減益要因となりました。

この結果、前連結会計年度に対し、販売価格で約689億円、数量・構成他で約137億円がそれぞれ増益要因となったものの、原材料価格で約688億円、海上運賃で約212億円、直接原価で約147億円、固定費で約19億円、為替で約27億円、経費で約23億円の減益要因となりました。高機能商品の更なる拡販、海外工場における生産性の改善など、収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みましたが、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増の影響が大きくタイヤ事業全体では前期の事業利益を下回りました。

スポーツ事業及び産業品他事業の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度 事業利益の増減要因

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以上の結果、売上収益は1,098,664百万円と前連結会計年度に比べ162,625百万円(17.4%)の増収、事業利益は21,963百万円と前連結会計年度に比べ30,012百万円(△57.7%)の減益となり、売上収益事業利益率は前連結会計年度に比べ3.6ポイント低下し、2.0%となりました。

その他の収益及び費用では、減損損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ4,169百万円の減益となりました。

この結果、営業利益は14,988百万円と前連結会計年度に比べ34,181百万円(△69.5%)の減益となり、売上収益営業利益率は前連結会計年度に比べ3.9ポイント低下し、1.4%となりました。

金融収益及び費用では、為替差益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ11,970百万円の増益となりました。

以上の結果、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は9,415百万円と前連結会計年度に比べ20,055百万円(△68.1%)の減益となりました。

中期計画における目標達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載の施策に取り組んでまいります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは50,828百万円のマイナスとなりましたが、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載の方針に基づき、配当金の支払13,148百万円を行いました。

今後、主に世界各地での増販に合わせた高機能タイヤの生産能力増強のための設備投資を行っていく方針でありますが、販売数量の増加と採算性の改善により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を実現しながら、必要に応じ金融市場や金融機関からの調達も活用するなど、「成長」と「流動性の確保並びに財務体質の向上」との両立を図りながら、2023年2月14日公表の中期計画で目標としているD/Eレシオ0.6の達成を目指してまいります。なお、当社と国内子会社、当社と一部の海外子会社との間でCMS(キャッシュマネジメントシステム)による資金融通を行っており、当社グループ内での資金効率向上を図っております。

また、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「A+(長期)、J-1(短期)」の信用格付を取得しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

5【研究開発活動】

当社グループにおいては、当社の研究開発組織・施設を核として世界各地に所在する子会社・関連会社群との密接な連携のもと、タイヤ・スポーツ・産業品他事業、幅広い領域・分野で研究開発を推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、27,259百万円であります。

セグメント別の主要な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1)タイヤ事業

当社グループのタイヤ技術研究開発は、神戸本社に隣接したタイヤテクニカルセンターを中心に、欧州・米国のテクニカルセンターと連携して「タイヤが地球環境の為に貢献できること」をテーマに、「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つの方向性で環境配慮商品の開発に取り組んでおります。社会の持続的発展と企業の成長を同時に実現することを目指し、地球環境にやさしい商品開発を推進しています。

また、当社はCASE/MaaSなどの自動車業界の変革に対応するためのタイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」を掲げております。例えば、タイヤの摩耗、経年による性能低下を抑制し、新品時の性能を長く持続させる「性能持続技術」や、商品ライフサイクル全体で環境性能を高めて循環型社会の実現に寄与する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方を採り入れた商品開発を推進するとともに、デジタルツールを用いて得られるさまざまなデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指しております。

 

ソリューションサービスの分野では、当社はオリックス自動車株式会社のレンタカー事業で、スローパンク※1検知機能を新たに備えたタイヤの空気圧や温度をリモート監視する「空気圧・温度管理サービス」の実証実験を開始しました。当社が開発したスローパンク検知のアルゴリズムに基づき、空気圧・温度の変化をTPMSが監視し、異常発生時に管理者にアラートを通知する仕組みになっています。目視点検や運転中の違和感では発見することが非常に難しいスローパンクを早期に見つけることでタイヤトラブルを未然に防ぐことを可能にします。この実証実験を通して、レンタカー事業の安全運行をサポートするサービスとして、タイヤトラブルの未然防止や点検作業の効率化・工数削減、燃費改善などの具体的な効果を検証し、更なる価値の提供及びサービスの向上に取り組みます。

また、2022年3月には関西大学と共同でタイヤの回転によって電力を発生させ、タイヤ周辺に搭載されたセンサーにバッテリーレスで電源供給できる発電デバイス(エナジーハーベスト)を利用し「タイヤ摩耗状態及び接地面形状測定方法」を開発しました。この開発で新たに、タイヤ回転接地時にそれぞれの発電デバイスから得られる電圧波形からタイヤ接地長や回転周期、電圧値を算出することができ、これらを計算することでタイヤの摩耗量を推定できます。また、小型化した発電デバイスをタイヤ内に複数個装着することでタイヤ接地面の幅方向の情報を取得しタイヤ接地面形状を測定する方法を開発しました。これらの技術はタイヤソリューションサービスに活用できると同時に、今後のタイヤ開発にもつながる知見を得られることが期待されます。

 

材料開発の分野では東北大学、金沢大学、埼玉大学と共同で、夢の低燃費タイヤの開発につながるバイオポリマーの合成に成功しました。独自に開発した改変トマト由来酵素を触媒とすることで、ポリマー※2の先頭モノマー※3を選択できることを発見しました。今後研究を進めることで2040年代を目標に更なる低燃費タイヤを開発し、持続可能な社会の発展に貢献します。

また、トヨタ自動車株式会社が事業化に向けて実証実験を進めているクラウド材料解析プラットフォームサービス「WAVEBASE (ウエイブベイス)」を活用し、データサイエンスを駆使することで、ゴム材料開発に重要な先端研究施設から得られるデータの解析プロセスを効率化し、解析時間を100分の1以下に短縮することに成功しました。今後当社では「WAVEBASE」を活用し、最先端実験施設での現場でリアルタイム解析を行うほか、さまざまな実験室系分析装置で得られるデータを統合し、ビッグデータとして解析することで、研究開発の効率化・高速化・省力化に繋げます。また従来は気づくことができなかった新たな着眼点を得ることで、独自の材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN(アドバンスド フォーディー ナノ デザイン) 」を進化させ、さらに安全性能と環境性能を備えたタイヤの開発を目指します。

 

当社は設計や材料開発などのタイヤ開発の様々な業務でAI活用の取り組みを進めています。製造業では生産年齢人口の減少による人手不足や、熟練技術者・設計者の高齢化が進む中、技術・経験・ノウハウを次世代に伝承するとともにデジタル技術を活用し、これらを見える化することが急務となっています。当社と日本電気株式会社(以下NEC)は協業で、タイヤ開発における匠(熟練設計者)のノウハウのAI化に成功しました。官能評価の解釈に関するコミュニケーションをAIが学習できるデータに体系化することで、官能評価の解釈及び改良案考案のAI化を実現しました。また、これまではOJTによる属人的な伝承が中心だった匠の思考プロセスを見える化し、経験が浅い設計者への改良案考案過程やノウハウなどの技能伝承も可能にします。当社は今後、本AIの活用により若手設計者をより高度な技術開発に集中させてまいります。

当事業に係る研究開発費は22,229百万円であります。

 ※1   ごく小さい穴や亀裂、リムとタイヤビード間からのエア漏れ、エアバルブからの漏れなどにより徐々

      に空気が抜けていく状態。

 ※2・3 モノマーは単量体、ポリマーは重合体を指す。モノマーが重合反応することによりポリマーとなる。

 

(2)スポーツ事業

スポーツ事業本部並びに米国のRoger Cleveland Golf Company, Inc.に研究開発部門を設置しており、コンピューターシミュレーション技術等を用いて新技術・新商品の開発並びに評価、試験に取り組んでおります。兵庫県丹波市の「ゴルフ科学センター」では、スイングマシーンによるテストに加え、トッププロからアベレージゴルファーまでの様々な方のヒューマンテストを行い、クラブやボールの特性に加え、スイングとクラブの関係など、膨大なデータを集積し、総合的に測定・解析・評価を行っております。

これらの技術により、ゴルフクラブでは「スリクソンZX(ゼットエックス)」の後継モデルとなる「スリクソンZX MkⅡ(マークツー)シリーズ」を開発し、2022年11月に発売しました。クラウン部分にフルチタン構造を採用し、大きなたわみを生み出す剛性の低いエリアと、パワーを逃がさずしっかりと受け止める剛性の高いエリアを交互に配置し、飛距離性能を向上させました。

ゴルフボールでは、NEW「スリクソン Z-STAR(ゼットスター)シリーズ」3機種を開発し、商品化しました。ボールコア中心付近の硬度変化をより大きくし、ドライバーショットでの高初速化、アイアンショットでのスピン量増加を実現する一方、コア表面付近の硬度変化を緩やかにすることで、優れたアプローチショットスピン性能も同時に実現しています。また、コーティングについても配合を一新し、インパクト時のボールの滑りを抑制し、フェースに食いつくような打感を実現しました。3機種展開で、「スリクソン Z-STAR XV(エックスブイ)」ではドライバーでの飛距離を、「スリクソンZ-STAR」ではソフトなフィーリングとアプローチスピンを、「スリクソンZ-STAR ◆(ダイヤモンド)」は、ロング・ミドルアイアンでのスピン性能を優先するゴルファー向けに、それぞれ専用の技術を搭載しています。

テニスラケットでは、しなやかな打球感と更なるパワーアップを実現したダンロップのパワー系テニスラケット「FX(エフエックス)」シリーズを開発し、商品化しました。グロメット下の中央に小溝を設け、フレームとストリングのたわみ量を増加させ、反発性の向上とスイートエリアの拡大を実現しました。また、フレーム形状は従来モデルのまま、フレームの硬さを部分的に調整することで、ユーザーの求める、よりしなやかな打球感を実現しています。

当事業に係る研究開発費は2,974百万円であります。

 

(3)産業品他事業

ハイブリッド事業本部では、高減衰ゴムを用いた制振部材、医療用ゴム製品、ヘルスケア用品等、安全・安心・快適をテーマとする事業活動に積極的に取り組んでおります。

手袋事業では、昨年12月に「樹から生まれた手袋 シンプルカラーズ」を発売いたしました。当商品は、蛋白質を通常の天然ゴムよりも少なくした素材を使用した手肌にやさしい家庭用ゴム手袋となります。内面には綿製の裏毛が使用され、スムースな脱着にも配慮されています。今後もお客様のニーズにお応えしながら、安心で快適な暮らしに貢献する商品をお届けしてまいります。手袋のみならず、カーボンニュートラル、プラスチック削減等、社会課題の解決を目指し、より安心・安全・快適な毎日に貢献できる研究開発を行っていきます。

当事業に係る研究開発費は2,056百万円であります。