文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
現在、世界13の国と地域に展開するNITTAグループ(以下「当社グループ」といいます。)は、国や地域で異なるお客さまのご要望に、コツコツと応え続け、発明と改良の精神をもって、新たな顧客価値の創造に取り組んでいます。
当社グループは、2017年3月に新たな経営理念(以下「理念」といいます。)を制定しました。この理念においては、当社グループを取り巻くステークホルダーに対する当社グループの役割として[使命]、使命達成のために当社グループ社員が持つべき考え方として[価値観]、使命達成のために当社グループ社員が取るべき行動として[行動指針]を制定しております。この理念は、当社グループのあらゆる事業活動やサステナビリティに関する取り組みの判断基準となっており、この理念に基づき、グループ全体が一丸となり、真のグローバル企業として更なる価値創造に取り組んでまいります。

(2) 目標とする経営指標
当社グループは、いたずらに規模の拡大のみを求めることなく収益性重視の経営を基本とし、中長期的な経営戦略に基づき、経営指標について目標値を設定しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2022年3月期から2031年3月期の10年間を対象とする中長期経営計画『SHIFT2030』を策定し、全社一丸となってその達成に向けた取り組みを開始しました。
10年後のあるべき姿として、「ものづくりを核としたシフトイノベーター」と定め、それを達成するための3大SHIFTとして、①成長へのSHIFT、②企業価値向上へのSHIFT、③更なるグローバル化へのSHIFT、に取り組んでまいります。
『SHIFT2030』の概要は以下のとおりです。
1.あるべき姿
ものづくりを核としたシフトイノベーター
2.『SHIFT2030』の3大SHIFT
(1)成長へのSHIFT
・既存事業の持続的成長
・新事業の探索
・新製品開発の加速
(2)企業価値向上へのSHIFT
・品質及びトータルコスト競争力の向上
・コーポレートガバナンス、コンプライアンスの強化
・ESG推進とSDGsのGOAL達成
(3)更なるグローバル化へのSHIFT
・各事業の更なるグローバル展開
・コーポレート部門によるグローバルサポート強化
3.業績目標(連結)と進捗
2025年3月期は、『SHIFT2030』フェーズ1最終年度でありましたが、目標とした売上高や営業利益率は達成することができました。新年度から『SHIFT2030』フェーズ2が始まり、その目標値の見直しを実施しております。資本効率の指標として事業ROICを導入し、その目標値は次の通りです。
(4) 会社の対処すべき課題
当社グループの製品は、自動車業界や半導体業界、その他多様な業界で使用されており、その売上は様々な要因により増減いたします。それぞれの需要業界において対処すべき課題は以下の通りです。
自動車業界
当社グループは、自動車業界向けには、燃料タンク周りやエアブレーキ用のホース・チューブ製品の他、製造ラインにおける作業ロボットの先端ツールを容易に交換できるメカトロ製品などを製造販売しております。自動車業界向けの売上は、自動車メーカーからの新規プログラムの受注や、その生産台数により増減しますが、一旦受注したプログラムは3~5年単位で継続します。また、受注先は自動車メーカーの他、タンクメーカーなどのTier1の会社となります。当社グループは、常に新しいプログラムを受注すべく自動車メーカーやTier1の会社に対する受注活動を行っております。
また、環境問題に対する意識の高まりとともに脱炭素への動きが強くなり、EV車の比率が高まることが予想されます。これにより現在当社グループが製造販売している製品の需要が減少する可能性があります。当社では、そのような状況に備え、自動車の軽量化や新エネルギーへの対応ニーズに応えるべく、常に新たな製品や用途の開発を進めております。
持分法適用会社のゲイツ・ユニッタ・アジア㈱グループの売上高では自動車業界向けが大きな割合を占めており、主には内燃機関周りのベルト製品であることから、EV車の比率が高まることで、需要が減少することが予想されます。同グループでは内燃機関以外の用途開発や、一般産業向けのベルト製品の割合を増加させるなど取り組みを進めております。
半導体業界
当社グループは、半導体業界向けには、半導体製造装置の部品としてホース・チューブ製品、半導体クリーンルーム向けの空調製品、電子部品製造時に使用される感温性粘着テープなどを製造販売しております。当社グループは、半導体業界の中でも半導体製造装置メーカー向け製品の売上比率が高いため、その売上は半導体需要及びそれに伴う半導体メーカーの設備投資の増減により影響を受けます。その需要変動に対応するため、適切で安定的な供給体制を整える事が重要になっています。当社グループでは、需要先の発注計画だけではなく、社内や代理店の在庫等も注視し、常にお客様の要望に応えられる体制構築を目指しております。
持分法適用会社のニッタ・デュポン㈱グループの売上高は全て半導体業界向けであり、半導体の需要に大きく左右されます。昨今、半導体需要は浮き沈みの波はあるものの、総じて増加傾向にあり、同グループの売上高は堅調に増加しております。半導体の種類による需要にも違いがあり、メモリ、ロジック、AI向けなど、デジタル化の流れにより必要とされる半導体も変化するため、その動向の把握は重要であり、最新の情報に注視しております。また今後、更なる需要増加により、生産能力が逼迫することも予想されるため、同グループでは必要な生産設備の増強、工場の拡張を計画的に進めております。
その他の業界
自動車業界や半導体業界が主要な需要業界ですが、両方を合わせても当社グループ全体の売上の3割程度であると認識しています。その他の需要業界としては物流業界や土木業界、食品業界、衛生用品業界、鉄道業界などがあり、また、繊維機械、紙工機械、建設機械、工作機械、金融機械などの様々な機械の部品としても使用されているため、業界は多岐にわたっています。
そのため当社の業績は、一部業界の好不調による影響を受けにくく、全体としては安定したものとなっています。一方で、各業界に対する知識の不足や、対応する人的資本の分散が懸念され、当社グループ全体の成長が見通しにくくなることは課題でもあります。今後、事業ポートフォリオの見直しや事業ROIC並びに製品別損益などの分析・改善を加速し、投下資本の効率的な運用を図るとともに成長分野への投資を進めてまいります。
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナブル経営方針
当社グループは、グループ理念である「NITTAは動かす、未来へ導く製品で。世の中を前へ、そして人々を幸せに。」を実現するためには、SDGsをはじめとする社会課題の解決が重要であり、ESG経営を積極的に推進する必要があると考えています。この考えに基づき、当社グループは以下の「サステナブル経営方針」を制定し、企業価値の向上をはかるとともに、産業・社会の持続的発展と環境の維持・保全に貢献しながら事業活動を展開することとしています。
1.「未来へ導く製品」の開発を通じて、新たな価値を創造し、産業と社会の持続的発展に貢献します。
2.地域および地球環境への影響を考慮して、廃棄物の発生量を削減するとともに省資源・省エネルギーを推進し、環境負荷の低減に努めます。また、生物多様性および生態系や森林資源等の保護等を考慮して、環境保護と環境汚染の予防に努めます。
3.全ての人の尊厳が守られる社会の実現に向け、企業活動において人権侵害を未然に防止するように努めます。
4.新たな価値創造の源泉である人材の多様性を尊重するとともに、人材育成・活用を推進することにより、一人ひとりが感性や創造性を発揮できる職場環境の実現に努めます。
5.法令や社会規範を自ら遵守することはもとより、取引先とも連携し、社会に対して責任ある調達活動に取り組むなど、バリューチェーン全体において公正な事業活動を行うように努めます。
当社グループは、サステナビリティに関する社会課題の解決に向けた取り組みを経営上の重要な課題の一つとして位置付けており、その取り組みを推進するために「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
当委員会は代表取締役社長が委員長を務め、年4回開催し「NITTAグループ理念」、「NITTAグループ行動憲章」及び「サステナブル経営方針」に基づき、中長期且つESGの観点から、気候変動問題や人的資本などのサステナビリティに関するリスクと機会を分析・評価するとともにその活動の方向性などを審議しております。その結果は年4回取締役会へ報告することとしており、取締役会ではその内容を考慮した上で、重要な事項について審議し、決定しています。

・サステナビリティ推進委員会主要議題一覧
当社グループを取り巻く環境は、技術革新や社会の価値観の変化等により急速に変化していきます。そこで想定されるリスクの低減や、事業機会の創出を図り、レジリエンスを強化するために、ESG経営への取り組みが一層重要になっています。
当社グループでは、ESG経営を推進するために当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定し、中長期経営計画「SHIFT2030」における重点課題と位置付けて課題解決に向けて取り組んでいます。

当社グループは、前述のガバナンス体制の下、リスクの低減と事業機会の創出を着実に進めていくためにリスク管理及び機会の特定の取り組みを強化しています。
リスク管理については、リスクの特定、分析、評価を定期的に実施し、リスク低減のためにリスクアセスメントを実施しています。このリスクアセスメントに基づいて、リスクの「回避」、「低減」或いは「移転」等の措置を事前に講じることによりリスクの発生の可能性を小さくしたり、発生した場合の影響度を最小限にするなどのリスクコントロールを行っています。
事業機会の特定については、特定されたマテリアリティの達成度合いをはじめ、社会の趨勢や変化を踏まえてサステナビリティ推進委員会で見直しを行うとともに、必要に応じて再設定しています。
④指標
(2)気候変動への取り組みとTCFDへの対応
当社グループにとって、気候変動は事業継続に影響を及ぼす重要課題の一つであると認識し、2022年5月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同しました。気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会を分析して経営戦略及びリスク管理に反映するとともに、情報開示を充実させてまいります。
気候変動に関するガバナンスは、サステナブル経営方針に係るガバナンスに組込まれています。詳細については「(1)サステナブル経営方針 ①ガバナンス」を参照ください。
当社グループは、事業において気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。リスクと機会については、政策や規制など社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスク・機会と、異常気象の激甚化などによって生じる“物理”リスク・機会を特定しています。
シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)等が公表している「科学的根拠を有するシナリオ」を用いて、事業にどのような影響を及ぼすかを検討しました。今回実施したシナリオ分析は、当社ベルト・ゴム製品事業、ホース・チューブ製品事業、空調製品事業及びその他事業における原材料・部品の調達、製品開発、製造、販売までのサプライチェーン全体を対象とし、「4℃シナリオ」、「1.5℃シナリオ」の2つのシナリオを用いて、2030年時点における影響を考察・検討しています。
(注)評価基準(影響額の目安)
これらの分析・評価及び対応策の検討は、社外のコンサルティング会社と連携しながら、サステナビリティ推進委員会での議論を踏まえて実施したものです。
今後も外部環境の動向や変化を踏まえ、定期的にリスクと機会の分析・評価の見直しを行っていく方針です。
<対応策>
列挙したリスク・機会に対するレジリエンスを強化するために以下のような取り組みを推進しています。
気候変動に関する主なリスクは、サステナブル経営方針に係るリスクに含めて管理しています。詳細については「(1)サステナブル経営方針 ③リスク管理」を参照ください。
当社グループは、生産段階における温室効果ガス(以下、「GHG」とします。)排出量の削減に関する基本方針として、2030年度までに2013年度対比46%削減、2050年度までに「カーボンニュートラル実現」を目指すと定め、その実現に向けて取り組んでいます。GHG排出量削減のために、①エネルギー使用量自体を削減する省エネの徹底、②再生可能エネルギーの活用拡大、③GHGフリーエネルギーの購入の3つの視点での取り組みを進めて参ります。
<GHG排出量の削減に向けた当社ロードマップ>

<GHG排出量(Scope1,2)の推移>

(3)人的資本への取り組み
人的資本に関するガバナンスは、サステナブル経営方針に係るガバナンスに組込まれています。詳細については「(1)サステナブル経営方針 ①ガバナンス」を参照ください。
当社の人的資本への取り組みは以下の全体図の通りであり、社員一人ひとりが能力や特性を最大限に発揮し活き活きと活躍できるよう、人材育成方針および社内環境整備方針を掲げ、人的資本経営を推進しています。
企業理念に基づき、2030年に向けた経営戦略を策定し、その実現に向けて組織と個人の「あるべき姿」と社員に「求める姿勢」を明確にしています。また、経営戦略の実現に「必要な人材」を特定し、その人材が効率的かつ効果的に業務を遂行できるよう専門組織を設置し、育成に注力しています。
さらに、全社員の能力向上を目指し、人材育成体系を構築し育成を行うとともに、生産性向上や品質向上に関する教育や活動も積極的に実施しています。同時に、社員が持てる能力を十分に発揮できる環境を整えるため、社内環境整備方針に基づいた取り組みを進めています。
<当社の人的資本への取り組み全体図>

<全体図の①>企業理念と経営戦略
当社は、持続的な企業価値の創造において「人材こそが最大の資本」であると位置づけております。社員一人ひとりがその能力と個性を最大限に発揮し、活力をもって働ける環境の整備は、当社の成長と競争力の源泉であると認識しております。また、全社員が企業理念に基づく共通の価値観を共有し、行動指針に則った業務遂行を通じて、当社の企業価値のさらなる向上に寄与するものと認識しております。
当社では、企業理念の浸透を重要視し、社員が日常業務において自発的に理念行動を実践することを目的とした「My Mission運動」を展開しています。この取り組みでは、社員が企業理念の価値観と行動指針に沿った自身のMissionを掲げ、日々の業務に取り組むことを奨励しています。2024年には社員の93.6%が自身のMy Missionを掲げて業務に従事しており、組織内で互いのMissionを共有することで、社員同士が刺激を受け、互いに理解を深めることに繋がっています。
また、理念行動への意欲や実施の度合いをサーベイによって数値化し、その結果を社内で共有することで、企業理念への理解や共感が年々深まり、理念行動の浸透が進んでいます。サーベイの結果からも、理念行動への個人の意識や実践が、サーベイ開始当初の2018年と比較して大きく向上していることは明らかです。これにより、社員のエンゲージメントの向上にも繋がっていると確信しております。
<サーベイの結果>
当社は、中長期経営計画「SHIFT2030」において、探索型SHIFT(新規事業の模索)と深化型SHIFT(既存事業の強化)の両輪で事業をさらに発展させることを目指しております。SHIFTには、変化(SHIFT)を繰り返すことで大きな革新(イノベーション)へつなげるという想いを込めており、3大SHIFT「成長へのSHIFT・企業価値向上へのSHIFT・更なるグローバル化へのSHIFT」を掲げ、推進しております。
当社の使命の実現とSHIFT2030の達成に向けた、私たち組織・個人のあるべき姿は「ものづくりを核としたシフトイノベーター」であり、シフトイノベーターとは、世の中の変化に対応し自ら変化しながら革新に挑戦し続ける個人・集団を表しています。
<全体図の②>人事戦略と人材育成 ~人材育成方針~
当社では、企業理念と経営戦略の実現には、必要な人材を特定し育成することが重要であると認識しております。また、社員一人ひとりが価値観・行動指針を実践し、「シフトイノベーター」として活き活きと活躍することが不可欠であると捉え、次の4つの取り組みを行っております。
経営戦略に基づき、特に強化すべき人材を、イノベーション人材、デジタル人材、グローバル人材、次世代経営人材と特定し、それぞれに対して人材育成の取り組みを行っています。
・イノベーション人材
当社では、SHIFT2030で掲げる新事業の探索を行う組織として、専門部隊を設置しております。また、グループ関連会社全体として、技術・研究開発部門がInnovation活動(新規事業探索・新製品開発)に取り組んだ成果を発表するNI(NITTA Innovation)フォーラムを毎年開催するとともに、教育機関によるNI研修、部署や職種を横断したNIサークル活動、知的財産部門による知財教育体系の構築と幅広い社員層への研修等を実施しております。これらの取り組みにより、社員がイノベーションを起こし新しいものを生み出す風土づくりを全社で進めております。
・デジタル人材
当社では、専門組織を設置してDXを推進しています。その一環として策定したデジタル戦略の一つに、デジタル人材育成があります。社員のデジタルへの関与レベルを階層化し、デジタル階層別育成体系(デジタル人材育成タワー)を構築して人材の育成を行っています。
・グローバル人材
当社では、海外トレーニー派遣制度を設け、若手から中堅クラスを対象に、海外現地での語学研修と海外子会社での実務経験を組み合わせたプログラムを実施しています。また、新入社員向けの語学研修や海外駐在前研修など、グローバルに活躍する社員の育成とサポートの体制を整えています。
・次世代経営人材
当社では、次世代の経営人材を的確に見極め育成することが、企業の持続的成長に不可欠であるとの認識のもと、サクセッションプランの策定およびビジネスリーダー育成研修を人事施策の一環として実施しています。
当社では、多様性がイノベーションの源泉であると認識し、ダイバーシティを推進しています。女性活躍推進においては、意欲と能力のある女性を積極的に登用するため、管理職登用制度の改定や育成研修を実施し、2020年度には5.4%だった女性管理職比率が2024年度には8.9%に増加しました。
また、職種のダイバーシティにも取り組んでおり、組織の中核となる管理職を多様な職種から登用するための育成研修を行っています。さらに、新卒採用・キャリア採用の入社形態による格差を生じさせないよう、キャリア採用者向けの育成研修を充実させ、活躍を促しています。障がい者についても、入社形態を問わず積極的に採用し、健常者と同じ人事制度で処遇しています。これにより、様々な部署で障がい者が活躍しています。
当社では、すべての社員の能力やスキル向上を目指し、人材育成体系を構築・運用し、毎年ブラッシュアップしています。社員の多彩なキャリア形成を支援するため、「研修タワープログラム」により、階層別研修とテーマ別研修を充実させています。また、生産性向上や品質向上に関する教育および活動(TQM(※)、QCサークル活動、自工程完結活動 等)も、全社を挙げて活発に行っています。
(※)TQM:Total Quality Managementの略
(研修タワープログラム)

(生産性向上や品質向上に関する教育/活動) 「Total Nitta System」:Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の向上
当社では、社員のモチベーション向上と優秀な人材の確保を目的として、昨年、人事制度を改定しました。新しい人事制度は、企業理念やSHIFT2030の実現に向けたサブシステムとして位置付けられ、連動しています。NITTA流のジョブ型を基に、資格等級制度・評価制度・賃金制度を再構築しました。社員の行動の基盤となる理念行動を資格等級制度の等級要件に組み込み、評価制度とも連動させています。
また、シニア社員の活躍が今後ますます重要になることを踏まえ、管理職の役職定年後の働き方を複線化し、定年後についてもモチベーションを維持して活躍できるよう、役割と成果に応じた処遇の実現を図りました。さらに、高度専門人材の職種や地域限定職の新設、アルムナイ制度の導入なども行っています。
今後、事業業績の状況、エンゲージメントや組織風土の調査結果、従業員満足度調査の結果をモニタリングしながら、より良い制度を目指していきます。
<全体図の③>社員が活躍するための基盤の整備 ~社内環境整備方針~
刻々と変化する社会環境の中で、企業が持続的に成長するためには、社員が健康で安心して働ける職場環境の整備が不可欠です。当社では、健康経営と働き方改革を推進するとともに、福利厚生の充実に努めています。
当社では、一人ひとりの能力が最大限に発揮され、イノベーションが創出される組織づくりにおいて、「挑戦する風土」の醸成が重要であると考えています。こうした背景から、組織および個人の挑戦度を可視化する「チャレンジ風土スコア」と、心理的安全性の確保状況を測る「風通し風土スコア」を継続的にモニタリングしています。
また、社員のエンゲージメントが業務パフォーマンスに与える影響の大きさを重視し、2018年より「ワーク・エンゲージメント」の定点観測を実施しています。さらに、離職率も組織風土を示す重要な指標の一つと位置づけ、常にその動向を把握し、健全な職場環境の維持に努めています。各スコア・数値は以下の<人的資本の取り組み一覧>を参照ください。
当社は、価値創造に向けた重要なマテリアリティの一つとして「働きがいのある魅力的な職場環境の実現」を掲げており、その実現手段の一環として健康経営を位置付けています。2018年には「健康経営宣言」を策定し、「健康なからだ」「健康なこころ」「健康な職場」という3つの健康をキーワードに、健康経営を推進しております。これらの取り組みの成果を可視化するため、明確な成果指標を設定し、継続的なモニタリングを行っています。
こうした継続的な取り組みが評価され、当社は2019年以降、7年連続で「健康経営優良法人(大企業部門・ホワイト500)」に認定され、さらに2023年および2024年には「健康経営銘柄」に2年連続で選定されました。今後も、社員の心身の健康維持・向上を支える施策を継続的に展開し、持続可能で活力ある職場づくりを目指してまいります。
<健康経営の最終的な成果指標>
※1. 出勤はしているものの、健康問題が理由で完全な業務パフォーマンスが出せない状態のこと。病気や怪我がないときに発揮できる仕事の出来を100%としたときの、自身の仕事の出来を評価したもの。SPQを用いたサーベイを実施。なお、SPQとは平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「東京大学ワーキング」で開発された、1項目の設問によりプレゼンティーイズムを簡便に測定できる尺度。
※2. 新職業性ストレスチェック結果より得られる数値
当社では、年次有給休暇取得率の向上、長時間労働の防止、あらゆるハラスメントの防止などの取り組みを進めています。2024年度の人事制度改定では、地域限定社員選択制の新設、在宅勤務制度の拡充、特別休暇の見直し等を行いました。
当社では、育児・介護支援について、法定を超える制度の運用に努めています。育児による時短勤務は小学校3年生まで、時差勤務は6年生までを対象としており、本年6月には時短勤務の対象を小学校6年生まで拡大する予定です。介護の時短については183日まで、時差については介護状態が続く限り制度の利用を可能としています。男性社員の育児休業取得率の向上にも取り組んでおり、2024年度の取得率は目標の50%を超え、52.2%に達しました。
上記の人的資本への取り組みを、一覧表に示すと下表のとおりです。
<人的資本の取り組み一覧>
人的資本に関する主なリスクは、サステナブル経営方針に係るリスクに含めて管理しています。詳細については「(1)サステナブル経営方針 ③リスク管理」を参照ください。
当社は、社員の多様性の確保、一人ひとりの社員にとって適切かつ有効な人材育成体制の整備、並びに、社員が健康かつ安心して活き活きと働ける職場環境の実現に向けて様々な取り組みを行っており、それらに関する指標と目標を下表の通り設定しています。また、これまでの取り組みの実績は以下の通りです。
なお、当社グループの連結子会社においては、各社の事業特性や地域性に応じた独自の人事制度を運用しております。現時点では、各社の人的資本に関する情報の収集・管理体制を整備している段階にあり、開示は提出会社の情報に限定しております。
<指標・目標・実績>
・健康経営に関しては、上記のほか24項目のモニタリング指標を設定し実績を当社ホームページにおいて公開しています。 https://www.nittagroup.com/jp/sustainability/esg/society/health.html
<実績の推移グラフ>
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの企業価値の持続的向上、コンプライアンス推進並びにリスク管理を統括する機関として、取締役、監査役及び事業部長等が出席する「サステナビリティ推進委員会」、「コンプライアンス推進委員会」、「リスク管理委員会」を定期的に開催し、グループ全体のサステナビリティ、コンプライアンス並びにリスク管理に係る重要な事項について審議し、取締役会に定期的に報告しております。
(1) 当社グループは、中長期かつESGの観点から、地球環境の保全と社会の継続的な発展に貢献する事業活動を展開するため、「サステナビリティ推進委員会」内に「サステナビリティ推進部会」を設け、当社グループの企業価値の持続的向上を図る取り組みを推進しております。
(2) 当社グループの役員及び従業員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保する体制を整備、運用するために、「NITTAグループ行動憲章」を定めると共に、「コンプライアンス推進委員会」内に「コンプライアンス推進部会」を設け、役員及び従業員へのコンプライアンス教育・研修を推進しております。
(3) 当社グループ全体のリスク管理業務を担当する機関として、「リスク管理委員会」内に「リスク管理部会」を設置し、当社グループとしてのリスクの把握及び対策を推進しております。
(4) 不祥事の未然防止や早期発見を目的に、経営陣から独立した内部通報制度を設け、運用しております。
(5) 「品質・環境・労働安全衛生方針」に基づき、事業活動における品質、環境、労働安全衛生の継続的改善に取り組んでおります。
(6) 重大な損害を及ぼす恐れのある事故その他の事象が発生した場合には、初動対応を指揮命令する機関として、「危機管理本部」をすみやかに設置し、損害の拡大あるいは事業が継続できなくなるリスクに対応します。
(7) 適正な財務報告を確保するための体制を構築し、運用しております。
(8) 当社内部監査部門が定期的に当社グループの全社統制監査を実施し、当社監査役に報告しております。
リスク管理の体制図は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載の(会社の機関関係図)に記載の通りです。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見できない又は重要とみなされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループでは、このような経営及び事業リスクを最小化するために、様々な対応及び仕組みづくりを行ってまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の世界経済は、多くの地域で景気の持ち直しの動きが見られましたが、欧米の高い金利水準の継続や中国経済の停滞、ウクライナや中東地域を巡る情勢に加え、足元ではアメリカの関税政策の動向により、先行き不透明感が高まりました。国内経済については、物価の上昇がみられるものの、雇用や所得環境が改善したことにより、緩やかな回復基調となりました。
当社グループ製品の主要需要業界におきましては、半導体製造装置向けが需要回復傾向にあり、物流業界向けも北米などで好転がみられましたが、自動車業界向けや建設機械向けでは依然として需要が低調でした。
このような環境下、当社グループの当連結会計年度における売上高は902億7千6百万円と、前連結会計年度比16億6千7百万円の増収(1.9%増)となりました。
損益面では、高騰した原材料価格の販売価格への転嫁が進み、また、半導体製造装置向けなど高付加価値製品の売上が回復したこと等により、営業利益は51億5千5百万円と前連結会計年度比7億3千4百万円の増益(16.6%増)となりました。
また、持分法適用会社において、半導体業界向けの需要が好調に推移したことにより、持分法による投資利益が増加したため、経常利益は146億1百万円と前連結会計年度比25億9千4百万円の増益(21.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は121億3千1百万円と前連結会計年度比22億7千3百万円の増益(23.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ベルト・ゴム製品事業
主力のベルト製品(受注額165億1千6百万円、前期比15.7%増、当社単独ベース)、ゴム製品(受注額45億8千5百万円、前期比0.3%増、当社単独ベース)は、国内では、電子部品向けの感温性粘着テープの需要が堅調でしたが、前年度のリネン業界向けのRFID製品の特需が収束しました。海外では、北米で物流業界向けのベルト製品の需要が好転し、また、アジア地域で電子部品向け等のベルト製品の需要が堅調でした。
ベルト・ゴム製品の生産規模は、138億8千2百万円(前期比10.0%増・販売価格ベース、当社単独ベース)となりました。
以上の結果、売上高は296億8千4百万円と前連結会計年度比1億4千8百万円の増加(0.5%増)となりました。セグメント利益は、34億7千3百万円と前連結会計年度比3千4百万円の増加(1.0%増)となりました。
ホース・チューブ製品事業
ホース・チューブ製品(受注額212億4千9百万円、前期比0.9%増、当社単独ベース)は、国内では、半導体製造装置向け製品が回復傾向となり、また、自動車製造ライン向けのメカトロ製品が堅調に推移しましたが、自動車業界や建設機械向け製品が低調でした。利益面では原材料価格上昇の販売価格への転嫁が進みました。海外では、アジア圏、特に中国で自動車業界や建設機械向け製品が低調でした。
ホース・チューブ製品の生産規模は、215億2千4百万円(前期比4.4%減・販売価格ベース、当社単独ベース)となりました。
以上の結果、売上高は315億1千8百万円と前連結会計年度比1億7千9百万円の減少(0.6%減)となりました。セグメント利益は、1億4千7百万円と前連結会計年度比1億3千9百万円の増加となりました。
化工品事業
化工品製品(受注額153億9千7百万円、前期比9.1%増、ニッタ化工品株式会社単独ベース)は、国内では、鉄道向けゴム製品が堅調に推移しました。海外では、OA機器向けエラストマー製品や鉄道向けゴム製品が堅調に推移しました。
化工品製品の生産規模は、151億4千万円(前期比6.9%増、販売価格ベース、ニッタ化工品株式会社単独ベース)となりました。
以上の結果、売上高は130億2千9百万円と前連結会計年度比12億6百万円の増加(10.2%増)となりました。セグメント利益は、10億1千5百万円と前連結会計年度比5億6千万円の増加(123.3%増)となりました。
その他産業用製品事業
空調製品(受注額45億1千6百万円、前期比8.9%増、当社単独ベース)は、半導体業界や製薬業界、病院向け等のフィルタ製品の需要が堅調に推移しましたが、測定器などの需要が低調でした。
以上の結果、売上高は115億2千7百万円と前連結会計年度比5千2百万円の増加(0.5%増)となりました。セグメント利益は、2億6千1百万円と前連結会計年度比1億7千7百万円の減少(40.4%減)となりました。
不動産事業
テナント収入の減少により、売上高は9億2千4百万円と前連結会計年度比4千9百万円の減少(5.1%減)となりました。セグメント利益は、3億1千6百万円と前連結会計年度比5千9百万円の増加(23.2%増)となりました。
経営指導事業
経営指導の対象となる関連会社の業績が半導体市場回復の影響を受け好調であったため、売上高は22億7千7百万円と前連結会計年度比4億7千2百万円の増加(26.1%増)となり、セグメント利益は、18億5千8百万円と前連結会計年度比3億3千8百万円の増加(22.3%増)となりました。
その他
自動車運転免許教習事業や北海道における山林事業等で構成されるその他の事業の売上高は、13億1千5百万円と前連結会計年度比1千6百万円の増加(1.3%増)となりましたが、セグメント利益は、4千3百万円と前連結会計年度比1千万円の減少(20.0%減)となりました。
当連結会計年度末における資産合計は1,799億3千1百万円となり、前連結会計年度末に比べて104億2千6百万円の増加となりました。流動資産は842億6千2百万円となり24億1千1百万円の減少となりました。主な要因は現金及び預金が減少したことによるものです。
固定資産は956億6千8百万円となり128億3千8百万円増加しました。そのうち有形固定資産は302億9千7百万円と47億2千6百万円増加しました。無形固定資産は7億2百万円と9千3百万円の減少となりました。投資その他の資産は646億6千9百万円と、82億5百万円増加しました。
負債合計は257億5千4百万円と17億3千8百万円の減少となりました。純資産合計は1,541億7千6百万円となり121億6千5百万円の増加となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加や、円安により為替換算調整勘定が増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の83.3%から85.3%となりました。
期末発行済株式総数(自己株式控除後)に基づく1株当たり純資産は、前連結会計年度末の5,063.77円から5,540.38円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、350億6千1百万円(前連結会計年度末比44億3千7百万円の減少)となりました。各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、70億7百万円の収入(前連結会計年度比19億1千5百万円の収入減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益146億9千3百万円等があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、69億3千万円の支出(前連結会計年度比52億7千万円の支出増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出65億1千2百万円等があったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、52億1千7百万円の支出(前連結会計年度比15億1千6百万円の支出増)となりました。これは主に配当金の支払額37億1千7百万円があったことによるものです。
生産、受注及び販売の状況については、各セグメントの業績に関連付けて示しております。
尚、事業の性格上、生産実績及び受注実績の記載に馴染まない不動産事業、経営指導事業等につきましては、記載を省略しております。また、主な相手先別の販売実績及びその割合につきましては、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比16億6千7百万円増(1.9%増)の902億7千6百万円となりました。主要な需要業界である半導体製造装置向けが回復傾向となり、また物流業界向けのベルト製品が北米で年度後半に好調に転じました。前連結会計年度で特需のあったRFID製品が、当連結会計年度では収束していることや、自動車業界向けのチューブ製品等で需要が伸びず、売上高を押し下げる要因となっていますが、合計の売上高としては前連結会計年度比増加の結果となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度に比べ7億3千4百万円増加(16.6%増)し、51億5千5百万円となりました。原材料価格やエネルギー価格上昇について販売価格への転嫁が進んだことが影響しており、また、付加価値の高い半導体製造装置向け製品の販売が増加するなど、プロダクトミックスの改善影響もあり、営業利益が増加しました。
(持分法による投資利益)
当社グループの持分法適用会社には、ゲイツ・ユニッタ・アジア㈱グループと、ニッタ・デュポン㈱グループの2グループがあり、それぞれの主要需要業界は自動車業界と半導体業界となります。
ゲイツ・ユニッタ・アジア㈱グループは合弁契約に従って、日本を含むアジア地区で自動車メーカーや一般産業向けのタイミングベルト、テンショナー、プーリーなどの製造販売を行っております。ゲイツ・ユニッタ・アジア㈱グループの2024年度の業況は、自動車業界向けでは前連結会計年度比では減少している拠点が多いものの、日本の半導体製造装置向け等が比較的堅調でした。また利益面では原価低減や経費削減の効果もあり、持分法による投資利益は前年度比で増加する結果となりました。
ニッタ・デュポン㈱グループは合弁契約に従って、日本及び海外の日系メーカーを中心に半導体研磨材料の製造販売を行っております。ニッタ・デュポン㈱グループの2024年度の業況は、日本や中国において、半導体業界の需要増加を受け、好調に推移しました。結果として持分法による投資利益が増加しています。
上記の結果、当連結会計年度における持分法による投資利益は、前連結会計年度に比べ16億6千7百万円増加(23.8%増)し、86億6千9百万円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、前連結会計年度に比べ25億9千4百万円増加(21.6%増)し、146億1百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ22億7千3百万円増加(23.1%増)し、121億3千1百万円となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1,799億3千1百万円となり、前連結会計年度末に比べて104億2千6百万円の増加となりました。海外拠点の工場拡張等で設備投資が進み、また下請け企業に対する支払いを早期化したこと等により、現金及び預金は減少しましたが、設備投資により固定資産が増加しており、また、持分法適用会社の評価、保有株式の株価上昇により投資有価証券が増加しております
(負債)
負債合計は257億5千4百万円と17億3千8百万円の減少となりました。下請け企業に対する支払いの早期化などにより電子記録債務が減少したことによるものです。
(純資産)
純資産合計は1,541億7千6百万円と121億6千5百万円の増加となり、自己資本比率は85.3%となりました。親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加しており、年度末にかけ円安が進んだことにより為替換算調整勘定が増加しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ① 財政状態及び経営成績の状況 (i)経営成績」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度の営業キャッシュ・フローは70億7百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を350億6千1百万円保有しております。
営業活動上の運転資金、設備投資、研究開発のための資金及び配当支払など、主に短期的に資金需要を満たすための資金は、原則として営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、M&A等の巨額の資金需要に対応する場合は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保及び財務の健全性・安定性を維持するため、自己資金もしくは銀行等から資金調達を行う方針です。資金調達を行う際は、期間や国内外の市場金利動向等、また自己資本比率やROEといった財務指標への影響度等を総合的に勘案しながら、最適な調達を実施します。
株主還元の考え方
当社では、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけ、企業体質の強化・充実を図りつつ、業績に応じた適正な利益配分を行うことを「基本方針」としております。また、2024年3月期から中長期経営計画『SHIFT2030』フェーズ2終了までの期間(2024年3月期~2028年3月期)においては、この基本方針を維持しつつ、連結配当性向30%以上かつDOE(株主資本配当率)2.5%以上を目安に、安定的かつ着実な増配(期間中毎年1株当たり10円以上の増配)を継続的に実施することで、株主の皆様のご期待にお応えしてまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
当社グループの連結財務諸表の作成に当たっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用する事が必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じた合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社並びにグループ各社は、NITTAグループ理念における使命に基づき、長期的な成長と企業価値向上を目指し、技術開発を重視しています。設計から製品化までの一貫した研究体制の確立を基本として、新材料に関する基礎研究及びその応用研究と新技術、更には生産技術全般の開発まで幅広く進めております。
当社グループの研究開発活動は、グループ全体の技術戦略の議論を行う技術戦略委員会を設け、仮説検証マーケティング手法を活用しながら、市場や顧客ニーズに応える重要な新規事業及び新製品の創出に直結するよう、迅速な経営判断の下で実行しています。新規事業・新製品に関する技術開発は、当社テクニカルセンターに開発研究グループを設け、新材料・新技術の開発及びコア技術の集積と向上に向けて関連する部門や外部機関と連携して研究開発活動を行なっております。また、既存事業分野の関連技術と製品開発活動に関しては、当社各事業部及びグループ各社の技術部門によりそれぞれ該当分野別に推進されております。
当連結会計年度の研究開発費は
(1) ベルト・ゴム製品事業
当社工業資材事業部を中心に、平ベルト・ゴム成形品の研究開発を行っております。当連結会計年度の主な成果は、ベルト事業では物流・食品・金融・紙工・繊維など幅広い用途に向けた高機能平ベルトの開発を進め、グローバルOEMでの採用に結び付けております。さらに省エネ製品の開発、バイオマス由来材料の活用、製造工程の環境負荷低減にも取り組んでいます。ゴム化成品事業においても建設資材分野の鋼製ジョイントで2品番、ゴムジョイント1品番の製品ラインナップを追加しています。インテリマーの感温性粘着テープでは半導体・セラミックコンデンサなどの電子部品の製造プロセスの顧客要求に応えるべく製品の改良、性能向上のための技術開発を行っております。また、両事業とも新たな市場に対する開発も推進しています。
当事業に関わる研究開発費は
(2) ホース・チューブ製品事業
当社ニッタ・ムアー事業部を中心に、樹脂ホース、チューブ、継手及び自動工具交換装置の研究開発を行っております。当連結会計年度は、半導体製造装置、医療装置、工作機械、建設機械、産業車両、飲料用機器、データーセンター冷却システム、自動車用途向けに各種ホース・チューブ、継手の開発、及び自動車用途向けとして新エネルギー車向けの製品を開発しました。また、メカトロ製品としては、ロボット向け自動工具交換装置の新ラインナップに加え、食品等の柔らかい製品を把持できるハンドリング用ロボットハンドのSoftmatics製品のアタッチメントなどラインナップ拡充に向けた製品を開発しました。さらに、製販技一体のプロジェクト活動により、新規分野・新用途分野での新規案件の発掘及び開発着手に結び付けております。
当事業に関わる研究開発費は
(3) 化工品事業
ニッタ化工品㈱を中心に、鉄道車輛部品(空気ばね・軸ばね)及び一般産業用防振ゴム、OA機器用クリーニングブレード、ウレタン原液、樹脂及び引布製品に関する材料及び製品構造の研究開発を行っております。当連結会計年度はインド市場向けに鉄道車両部品の新商品開発を行いました。また、ウレタン原液においては、環境に配慮した材料の開発、樹脂製品においては、顧客ニーズに対応した製品改良を行いました。各分野とも高度で多岐にわたる新規材料、新構造を市場へ提案すべく、評価手法・解析手法の能力向上と製品開発を推進しております。
当事業に関わる研究開発費は
(4) 「新製品・新規事業開発」及び「その他産業用製品事業」
テクニカルセンターで基礎研究から取り組んできました、当社独自開発のCNT(Carbon Nano Tube)を用いた炭素繊維複合化技術であるNamd™(エヌアムド)は、技術名称を冠してバドミントンラケットやゴルフクラブなどのスポーツ・レジャー用途での実用化を皮切りに、第二世代の2G-Namd™(ツージー・エヌアムド)の特長の一つである「疲労耐久性」を活かし、これまで実現困難だった軽量高強度かつ高信頼性のCFRP製品を開発しました。今後は本製品を高信頼性が求められる航空・宇宙分野用途に展開するため、2025年に航空宇宙品質マネジメント(AS9100)認証の取得を目指します。
その他にもテクニカルセンターでは、イノベーション活動(Nitta Innovation(NI))活動を加速させるためにサークル活動(NIサークル)を実施、さらに製品開発力の幅を広げるため、幅広い派生技術群、営業的知見及び開発成果などを全社で共有することを目的とした全社イベントであるNIフォーラムを開催し、会社全体としてのイノベーション力をより向上させることにも努めております。
また、経営戦略室では「新事業探索チーム」から発足した「MSプロジェクト」の活動により、当社が保有する北海道の森林資源を活用したメープルシロップの製造販売事業を開始しました。「再生医療事業化プロジェクト」では、再生医療等製品の受託開発製造企業であるファーマバイオ株式会社と共同で、眼科疾患の移植治療用細胞シートの製造用機器及びその消耗部材(シングルユース部素材)を開発中です。
SDGsへの取り組みとしては、自社が北海道に保有している山林の保全活動を推進するため、森林資源から木質新素材セルロースファイバーなどの天然由来の素材原料の製品への添加や代替使用などにより、機能発現と石油由来原料の削減を両立した新製品や新用途の開発に取り組んでいます。
これらの新規事業・新製品開発や既存事業における製品開発を推進するに当たり、知的財産の分野においては、高度な特許情報分析ツール等の活用により、当社の技術戦略と連携したグローバルな知的財産戦略に基づいた権利取得と権利網の構築・維持強化にも努めております。
空気清浄分野では、フィルタ性能規格のグローバルハーモナイズが進む中、安心で安全な空気環境を求めるニーズに対応し、PM2.5や省資源・省エネルギーなどの環境面やSDGsの課題解決に寄与する製品、感染症対策など人々の安全と健康の維持に貢献する製品、グローバルに先端技術を支える最先端半導体製造装置用フィルタやケミカルフィルタ、鉱山・重工・建築分野の作業者の健康を保護する製品の開発など、様々な市場要求に引き続き取り組んでいます。また、ライフサイエンス分野における無菌製造・操作環境の維持・管理に資する技術として、有効性や安全性が高い過酢酸製剤を活用した環境のバイオ除染技術・製品の開発と拡充を進めており、独自技術のVPA(Vaporized Peracetic Acid:蒸気化過酢酸)を活用したバイオロジカルクリーン環境の構築・維持システムの開発を進めております。
「新製品・新規事業開発」及び「その他産業用製品事業」に関わる研究開発費は771百万円です。