当社代表取締役社長 社長執行役員 小川秀樹は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものです。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性があります。
財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2025年3月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠いたしました。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定いたしました。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定いたしました。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、財務報告に対する金額的及び質的影響並びにその発生可能性を考慮し、当社及び連結子会社5社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定いたしました。なお、上記以外の連結子会社9社及び持分法適用会社1社については、金額的及び質的重要性の観点から僅少であると判断し、全社的な内部統制の評価範囲に含めておりません。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、全社的な内部統制の評価を踏まえ、当社及び連結子会社について各事業拠点の当連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、当連結会計年度の連結売上高のおおむね3分の2程度に達しているかと、質的重要性を勘案して4事業拠点を「重要な事業拠点」といたしました。当社グループは複数事業を営む一般的な製造業の連結グループであり、経営管理上各事業拠点における売上高が事業活動の成長を計る指標として最も重要視されていることから、事業拠点の重要性を判断する指標として売上高が適切であると判断し、売上高を重要な事業拠点の選定指標といたしました。なお、2024年3月期において開示すべき重要な不備を識別したニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコ S.A.DE C.V.(以下、「NSM」とする。)及びグループオペレーションの中核会社である上海西川密封件有限公司については、質的重要性を勘案して「重要な事業拠点」に含めております。
当社グループの事業目的に大きく関わる勘定科目については、製造業の生産活動及び販売活動において多額に計上される勘定科目として、「売上高」、「売掛金」、「棚卸資産」といたしました。
さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点を含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加しております。具体的には、当社の税金・税効果会計、退職給付引当金、重要な後発事象に関する決算・財務報告プロセスについては、計算誤りによる誤謬リスクや見積り・予測を伴うことを踏まえ評価対象に追加しております。
上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断いたしました。
当社は、2024年5月29日付「当社連結子会社における棚卸資産の計算等に関する調査のお知らせ」及び2024年8月16日付「当社連結子会社における棚卸資産の計算等に関する調査結果及び再発防止策の策定に関するお知らせ」に記載のとおり、NSMにおいて貸借対照表上の棚卸資産残高が在庫明細に対して過大となっていることについて会計監査人より指摘を受けたことを契機として社内調査を行った結果、当社及びNSMにおける全社的な内部統制の不備並びに決算・財務報告プロセスの不備に起因した、棚卸資産に関する単価の誤り、数量誤り及び決算整理仕訳の誤りによる棚卸資産の過大計上と、これに伴う売上原価の過少計上が判明いたしました(以下「本件」といいます)。当社は、これらの内部統制の不備が財務報告に重要な影響を及ぼしており、全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスにおける、開示すべき重要な不備に該当すると判断し、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した内部統制報告書を2024年8月26日に提出いたしました。
当事業年度において、当社では外部専門家の再発防止策に関する提言を踏まえ再発防止策を具体化し、再発防止策を実施するために構成された分科会が行う毎週の進捗会議、並びに毎月の経営者に対する報告会にて施策の進捗を確認いたしました。全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスは、決算処理手続に係る業務手順書を作成のうえ、担当者への教育を実施し、さらに上位者による査閲及び承認が行われるプロセスを整備し、運用を開始いたしました。システム面においては、決算整理仕訳における承認機能の導入、在庫管理システムのマニュアル整備、アクセス権限設定及び棚卸資産に係る単価変更の履歴が残る設定に改善いたしました。
また、NSMを含む連結子会社のリスク管理体制(3線モデルを踏まえた内部統制及びリスク管理体制)を強化するため、連結子会社のリスクや内部統制に係る管理・指導の責任部署の明確化・一元化を行い、より効果的な制度・ルールの構築と運用を進めました。当社内部監査室は再発防止策の策定を支援し、実施状況を確認いたしました。当社及びNSMの不備に関しては、内部監査室長が再発防止策の策定・実施を監督・支援するとともに、経営戦略部が再発防止策の実施状況を踏まえ全社的な内部統制、決算・財務報告プロセスについて評価いたしました。
個別の開示すべき重要な不備に対する再発防止策による是正状況は後述のとおりであり、全社的な内部統制、決算・財務報告プロセスでは棚卸資産過大計上の原因に対し、プロセス及び文書が整備され、運用されていることを確認いたしました。
以上の結果、当事業年度末時点において、開示すべき重要な不備は是正され、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断いたしました。
前年度の開示すべき重要な不備と再発防止策による是正状況は以下のとおりとなります。
(全社的な内部統制における開示すべき重要な不備)
(1) NSMにおいて、棚卸資産に関連する決算処理につき、内部統制の構築が不十分であり、業務が一部属人化していたこと
NSMの棚卸資産に係る決算処理手続について業務手順書やマニュアルが存在せず、棚卸資産金額の補正の決算処理や外部保管在庫等の在庫管理システムへの計上、長期滞留在庫の評価検討等について、引継ぎや担当者の理解が不十分であったことを踏まえ、決算処理手続に係る手順について文書化し、運用を開始いたしました。
具体的には、棚卸資産金額の補正手続、原材料の移動平均単価及び仕掛品・製品の標準単価算出過程の作業手順、低価法算定シートの作成手順、長期滞留在庫に関して不動在庫を把握する手順、その他棚卸資産(商品・貯蔵品)に関して、不良在庫化しているものを把握する手順、実地棚卸結果及び外部保管在庫と在庫管理システム上の理論在庫を照合して調整する手順について文書化し、運用を開始いたしました。
(2) 当社の管理統括本部内におけるグローバル経営戦略本部において、各連結子会社の決算体制につきモニタリングは実施していたものの、業務の引継ぎの状況や親会社からの支援の要否について十分な検討ができておらず、また、関連部署への情報伝達が十分に行われていなかったこと
海外子会社管理については、関係会社管理基準で規定されているところ、海外子会社の管理に関する統括部門と、当該基準の別表で記載された海外子会社からの協議・報告事項に係る主管部門、共同部門の役割が不明確であり、当該統括部門によるリスクや内部統制の状況に関する一元的管理や、モニタリング・指導が十分に実施できておりませんでした。このため、2024年12月に基準名称を「関係会社管理基準」から「グループ会社管理基準」へ変更するとともに本則と別表を改訂し、経営戦略部に海外子会社管理に関する統括の役割と責任があることを明確化いたしました。
改訂にあたっては、経営戦略部を統括部門とし、海外子会社からの協議・報告事項に係る主管部門からの報告を受け、必要に応じて主管部門に対して対応を指示・支援することや、共同部門に対して主管部門が必要に応じて協力を求めることができることを明記することで、統括部門と主管部門、共同部門の関係性を明確にし、統括部門による一元管理の役割を強調いたしました。
また、海外子会社における現地会計監査人による監査手続の過程で監査意見に影響を及ぼす事象が確認された場合には、財務報告の信頼性に係るリスクであることから、適時かつ適切に統括部門や主管部門に報告されるよう、グループ会社管理基準で規定する協議・報告事項のうちリスクに関する情報は、新たに導入した「リスク管理ツール」に入力して統括部門が管理し、このツールにより内部監査室と情報共有する仕組みを整備し、運用を開始いたしました。
(3) NSMにおいて使用されている在庫管理システムの仕様に関する理解が不十分であり、棚卸資産の単価に与える影響が把握されておらず、在庫管理システムの運用管理が十分に機能していない状況であったこと
在庫管理システムの体系的なマニュアルが存在せず、担当者の当該システムの仕様に関する理解が不十分となっていたことを踏まえ、在庫管理システムを利用する各場面における操作手順マニュアルを作成し、担当者への教育を実施いたしました。
また、単価計算方法の変更や単価の変更が可能なアクセス権限が、必要のない従業員にも付与されていたため、当該アクセス権限を適切な者に限定する設定に変更いたしました。
さらに、在庫管理システムは単価の変更履歴が残らない仕様となっていたため、単価の変更履歴が残る仕様に変更するとともに、単価の変更に際しては、申請に基づき拠点長の承認を得たうえでシステム担当者が登録を行う内部統制を整備し、運用を開始いたしました。
(決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備)
(1) NSMにおける棚卸資産に関連する決算処理につき、業務手順書、マニュアルの整備が不十分であり、また担当者の交代に際して十分な引継ぎができていなかったこと
決算処理手続に係る棚卸資産金額の補正手続、原材料の移動平均単価及び最終仕入単価の算出手順、仕掛品、製品標準単価、低価法算定シートの作成手順、長期滞留在庫に関して不動在庫を把握する手順、その他棚卸資産(商品・貯蔵品)に関して不良在庫化しているものを把握する手順について文書化し、担当者への教育を実施いたしました。
また、過年度に発生した在庫管理システムにおける単価設定誤りの主な原因は、在庫管理システムについて体系的なマニュアルが存在せず、経理担当者や日本人駐在員の当該システムの仕様に関する理解が不十分であったことにあるため、在庫管理システムに関する操作手順マニュアルを作成し、担当者への教育を実施いたしました。
(2) 棚卸資産の残高明細表の合計金額と試算表残高を照合し、差異に関する調査がなされるべきところ、両者に差異が発生しているにもかかわらず、十分な調査がされていなかったこと
棚卸資産の残高明細表の合計金額と試算表残高を照合し、差異がある場合には調査すること及び調査結果について上位者や他担当者による査閲及び承認の手順を文書化し運用を開始いたしました。
また、過年度に未使用ロケーションに理論在庫が残存していたことで当該理論在庫の取崩漏れが発生していましたが、在庫管理システム上で未使用ロケーションに在庫が入力できないよう、設定を変更するとともに、棚卸実施時にはロケーション別在庫明細を査閲し、未使用ロケーションに理論在庫が残っていないかを確認することといたしました。
(3) 上位者や他担当者による残高明細表内において異常な項目を検知する手続及び残高明細表の合計金額と試算表残高の整合性の検討や、差異調整をする際の決算整理仕訳の査閲が求められるべきところ、これらの手続が適切に実施されていなかったこと
上位者や他担当者による残高明細表内の前期財務諸表との比較やエクセル数式のチェック等の異常項目を検知する手続及び残高明細表の合計金額と試算表残高の整合性の検討や、差異調整をする際の決算整理仕訳の査閲・承認に関する手順書を作成し、運用を開始いたしました。
また、内部統制の整備状況の不備により、決算処理に係る業務についてリスクの程度に応じた適切な職務分掌が出来ておらず、上位者や他担当者による査閲及び承認のプロセスが組み込まれていなかったことを踏まえ、リスクに応じたコントロールが適切に働くプロセスを整備し、運用を開始いたしました。
(4) NSMにおける決算数値の比較分析により異常値を発見すべきところ、実施された決算数値の比較分析に不十分な点があり、異常な数値の推移を十分に捕捉できる運用になっていなかったこと
財務報告に関する情報は、当社による海外関係会社の事業計画進捗確認やグループ内での情報共有等を目的とするグローバル西和会(取締役会構成員及び海外子会社管理責任者らが出席)という会議体に年2回報告されていましたが、過年度に異常値を発見できなかったのは当該報告資料において、本件のような重要な誤謬に係る異常値を発見できる詳細な財務分析が行われていなかったことが原因であります。そのため、誤謬等を原因とする異常値を発見する観点を備えた財務分析結果の報告フォーマットを作成するとともに、当該フォーマットを用いて財務分析の結果を四半期ごとに当社取締役会へ報告するという運用を開始いたしました。
(5) 当社による連結子会社の財務諸表数値の分析により異常値を発見すべきところ、分析方法に関するマニュアルが不十分であり、モニタリングが十分に実施できていなかったこと
NSMを含む連結対象の各関係会社の財務数値について、当社経理部による異常値を発見するための財務分析が不十分であったことから、対前期末比の増減について閾値を設定し、閾値を超えたものについては、当社経理部から各関係会社に増減理由を確認できる財務分析ツールを作成し、運用を開始いたしました。
また、財務分析ツールによる異常値発見の精度を高度化する目的で、財務分析の担当者に対し主管部門である当社経理部による財務分析に関する研修を実施いたしました。当該研修は知識の定着を図るために今後も毎年実施する予定です。
該当事項はありません。