(1) 経営方針と経営戦略
当社グループは、「Yes, We Do!」の創業の精神の下、お客様の要望に真摯に向き合い、創業以来のモノづくりで培った設計・試作・評価・量産のノウハウを集結させ、常に新しい価値創造に挑戦し続ける企業として、持続的な成長を遂げてまいりました。
現在、自動車産業は電動化や自動運転などの次世代技術への移行が進みつつあり、既存のビジネスモデルを超越した価値の創造が求められています。
当社グループは、これらの大きな変化をチャンスと捉え、より高い経営目標を達成するため、2023年6月に「新中期経営計画2026」(最終年度2027年3月期)を策定・公表いたしました。
2025年3月期は「新中期経営計画2026」の初年度として、計画達成に向けた取り組みを全社一丸となって進めているほか、中長期的視点においては、独自のコア技術で高付加価値製品やソリューションを提供し続けることで飛躍的に成長するとともに、サステナブルな社会の実現に貢献する「あらゆる願いを、感動に変える。」心から愛される企業を目指しております。
①「既存事業の強化」
ⅰ)ソリューションビジネスによる拡販
・当社の主力製品であるワイパーブレードラバーにおいては、顧客要求(高払拭性能・迅速性)に応えるため、ラバーの形状だけでなく、ラバーの最適な動きを科学し、その動きに影響を与えるワイパーシステム側構成部品における設計仕様に対しても提案可能な体制を構築しております。
・このようなソリューションビジネスを通じて、顧客側のワイパーシステム開発期間が大幅に短縮し、多くの車種のワイパーブレードラバーの受注に繋がっております。今後も、顧客要求にスピーディにお応えできる体制を強化することで、ワイパー事業の拡大、および、グローバルシェアの拡大につなげてまいります。
ⅱ)強い成長地域への拡販
・強い成長地域の一つと見込んでいるインドにおいては、ダンパーの価格競争力向上による拡販を目的に鋳物工場を新設いたしました。また、技術開発サービスの拡充を目的にテクニカルセンター、及び顧客対応の迅速化を目的に営業所をそれぞれ新設するなど、インドにおける生産・開発・営業の各観点における体制強化を進めております。
・加えて、防振製品の拡販に向けては、新設したテクニカルセンター機能を更に強化すると共に、2025年3月に締結したInnova Rubbers社との業務提携を契機として、インドにおける事業拠点としての機能やサービスの拡張を目指してまいります。
② 「成長事業・新事業の拡大」
ⅰ)インダストリアル向け製品等の拡大
・ファクトリーオートメーションの分野においては、当社の高い開発力で生み出した高性能材料を必要とする「半導体製造装置向け精密シール部品」が量産を開始いたしました。航空・宇宙分野においては、エンジン内の気流を整流化する「ジェットエンジン向け製品」が量産を開始したほか、人工衛星に搭載される観測機器類の機能を十分に発揮させることに貢献する防振ゴム製品「衛星用アイソレータ」が先進レーダ衛星「だいち4号」に採用されました。新エネルギー分野においても、風力発電の風車向けとして「着氷防止コート」を開発したほか、農業機械の電動化への貢献を目的としてバッテリー保持機構の開発に取り組むなど、様々な分野で需要の掘り起こしを進めております。
ⅱ)CASE市場への拡大
・EV車への切り替え需要が足元で一服感が見られる中、バッテリー周辺製品の拡販も踊り場の様相を呈しております。こうした環境下において当社グループにおいては、「バッテリーホールドシート」が既に電気自動車に搭載され、他の車種での採用も目指して取り組んでいるほか、「放熱ギャップフィラー」は韓国メーカーに採用され、量産が開始されております。今後他社への販売も目指しています。
ⅲ)ライフサイエンス製品の拡大
・今年度から報告セグメント変更に伴い新設したライフサイエンス事業のうち、バイオ関連製品においては、当社の強みであるリンパ球用培地と間葉系幹細胞培地の拡大に軸足を置き、培地開発力の強化を進めるとともに、様々な販路を通じて拡販できるよう、体制整備を含め推進しております。さらに、アカデミア(大阪大学・金沢医科大学)との共同研究において、幹細胞の大量培養システム化の構築等を実施しております。
また、細菌検査の分野における「薬剤耐性菌検査チップ」については、2027年度の保険適用を目指し、医療現場への本格展開と事業拡大を目指してまいります。
③ 「ESGを主体とした経営基盤の改革」
ⅰ)環境への取組み(E)
・当社は環境負荷低減・脱炭素社会を実現するために「フコク環境目標」を設定し、この目標を達成するための重点取組事項に沿って、製造工程廃棄物の削減とCO2の削減に向けて活動しております。また、TCFD提言に賛同し、TCFDが推奨するシナリオ分析によって、気候変動が企業にもたらすリスクと機会を把握し、その影響に対する戦略策定を行っています。また、2025年2月には、国際環境非営利団体CDPの実施した気候変動分野の質問書において、「B」スコアを獲得いたしました。
・これらの環境への取り組み内容の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動への取組み」をご参照ください。
ⅱ)社会への取組み(S)
・ダイバーシティ&インクルージョンへの対応や働き甲斐のある環境づくりに積極的に取組んでおります。
・人的資本に関する取り組み内容の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。
ⅲ)ガバナンスへの取組み(G)
・コーポレートガバナンスやコンプライアンスの強化に取組むとともに、従来の発想から抜け出し、価値創造に貢献する組織風土の醸成を推進しております。
・創業70周年を節目として、これまでの企業理念を刷新し、2023年に制定されたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の社内推進活動を行っております。
・2024年11月に公表した当社連結子会社元従業員の不正な経理処理による資金の着服行為の発生を受け、当該子会社の管理体制の立て直し及び当社の当該子会社を含むグループ会社に対する内部統制の改善・強化を目的とした再発防止策を策定・推進し、ガバナンスの向上を図っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、1953年の創業以来、「Yes, We Do!」の創業の精神の下、社会課題解決への貢献を念頭に置きながら、お客様の要望に真摯に向き合い、常に新しい価値を創造し持続的な成長を達成してきました。
2022年5月に「サステナビリティ基本方針」を制定し、地球環境や社会の様々な課題を解決し持続可能な世界の実現に貢献することを経営の最重要事項と捉え、サステナビリティ経営推進に取り組んでいます。
※サステナビリティ基本方針は下記URLをご参照下さい
①重要課題(マテリアリティ)
ステークホルダーの皆さまからの期待や要請に応えるため、ステークホルダーにとっての重要度、当社グループにとっての重要度等を定性的に分析し、下記のとおり特に重要とされるマテリアリティを選定しています。重要課題を着実に解決していくため、各重要課題に対するKPI設定・実行計画策定を進め、また中期経営計画、各種方針やガイドラインに反映させて活動推進しております。
<フコクのマテリアリティ>

当社グループは、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置・運営し、委員会メンバーはESGの各重要課題の推進責任者として任命され、各種委員会や担当部門と連携しながら活動推進し、又、経営戦略室サステナビリティ推進課が全社の活動推進を担って取り組んでおります。サステナビリティ委員会では、経営課題として重要なサステナビリティに関するリスクと機会を特定し、マネジメントするため、実行計画の策定、当社グループ全体の活動推進、その進捗のモニタリング等を実行しております。その結果は、定期的に取締役会に報告され、取締役会ではその報告内容の管理及び監督を行っております。
2024年度は、サステナビリティ委員会を4回、取締役会報告を3回実施しました。
③リスク管理
当社グループは、サステナビリティ委員会にてサステナビリティ課題におけるリスクのモニタリングや再評価、重要リスクの絞り込み等を行い、今後の戦略に反映しリスクに対応しております。
④指標と目標
当社グループでは、サステナビリティに関する重要課題、非財務指標は当社の経営計画に織りこまれております。今後もフコクグループは、モノづくりやサービスを通して世界中の皆様に安心・安全・快適を提供するため、環境への配慮、品質の強化、SCM体制の構築、ガバナンスの強化等を進め、持続可能な経営を推進すべく基盤強化を図ってまいります。
(2) 気候変動への取組み
気候変動を始めとする環境課題は、社会の重要課題の1つであり、国内外に広く事業を展開し、モノづくりやサービスを提供する当社グループにおいても最重要課題の1つとしております。当社は、2022年6月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について分析と対応を強化し、関連情報の開示を積極的に推進しております。
カーボンニュートラル達成やサーキュラーエコノミーの実現に向けて環境目標を掲げ、環境に配慮したモノづくりを進めるとともに、製品や技術で環境社会へ貢献できるよう取組を推進しています。
①ガバナンス
当社グループは、代表取締役社長を委員長とする中央環境委員会で、気候変動を含む環境関連の重要課題を審議・決定し、環境マネジメントシステム(ISO14001)でグループ全体のマネジメントを行っております。中央環境委員会にて事業に重要な影響を及ぼすと判断された気候変動を含む重要課題についてはサステナビリティ委員会にて審議・決定を行い、マネジメントを行っています。
②事業戦略
当社グループは、TCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候変動リスクと機会が事業に与える影響を把握し、その影響に対する戦略策定を進めております。
<気候変動による主なリスク及び機会>

今後、TCFD新ガイダンスに準拠したシナリオ分析の中で、精緻な財務インパクトの把握についても検討を進めてまいります。
③リスク管理
当社グループは、サステナビリティ委員会、リスク管理委員会、及び環境マネジメントシステム(ISO14001)で、リスクのモニタリングや再評価、重要リスクの絞り込み等を行い、戦略に反映しリスクへ対応しております。
④指標と目標
当社はサーキュラーエコノミーに向けた活動として「2025年に製造工程の廃棄物の50%削減」「埋立処分率2040年までに1%以下」、又、カーボンニュートラルに向けた活動として「2030年にCO2 46%削減(2013年基準)」「2050年までにカーボンニュートラル」を目標に設定し活動を推進しております。国内・海外子会社については、「2030年にCO2 30%削減」「2050年までにカーボンニュートラル」を環境目標(ガイドライン)として設定し、進捗状況をモニタリングしています。
<製造工程廃棄物削減>
サーキュラーエコノミーに向けた活動として「2025年に製造工程の廃棄物の50%削減」、更に「埋め立て処分率2040年までに1%以下」を設定し、廃棄物削減のために工法開発による不良低減や歩留まり改善、再資源化を進めております。「2025年に製造工程の廃棄物の50%削減」については、2024年度実績で目標達成しており、2025年度以降も活動継続し、更なる低減を推進します。
製造工程廃棄物の推移(ton)

(注)1.各年度の実績値は集計範囲の変更により、昨年度までの数値と異なります。
2. 上記グラフの算出対象は、提出会社単体となります。
<カーボンニュートラルに向けた取組み>
2050年までにカーボンニュートラル達成のため、まずは2030年までに工場のモノづくり現場による省エネ活動や、製品、技術、生産革新による削減活動を重点取組事項として活動推進しております。
また、再生可能電力(全電力の12.7%)及び太陽光発電(同0.4%)を導入し、今後も拡大する計画です。「2030年にCO2 46%削減(2013年基準)」については、2024年度実績でほぼ目標達成しておりますが、2025年度以降も活動継続し、更なる低減を推進します。
CO2排出量の推移 (ton-CO2)

(注)1.日本国内の排出量は温対法に基づき算定しております。
2.上記グラフの算出対象は、提出会社単体となります。
3.各年度の実績値は集計範囲の変更により、昨年度までの数値と異なります。
4.脱炭素社会へ貢献するため、Scope3算定及び目標設定を検討しております。
(3) 人的資本
① 人材戦略
当社は、「新中期経営計画2026」において、事業戦略の両輪として「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」を掲げました。そして、これら事業戦略遂行の土台となる、「経営基盤の改革」の一つとして、「幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「働きがいのある職場環境づくり」を人材戦略の3つの柱とし、人材の多様性の確保を含む人材育成と社内環境整備に取り組んでいます。
i)幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成(人材育成に関する考え方と取り組み)
当社が求める人材像は、物事の本質を多角的に深く考え、自発的に素早く行動できる人材です。こうした人材が、それぞれの分野や階層で能力を最大限に発揮して活躍することが、中期経営目標の達成、ひいては当社の持続的成長と企業価値の向上に繋がると考えています。
<2024年度の主な取り組み>
・次世代経営幹部
次世代経営幹部の計画的な育成に向けて、当社は2023年度に「全社人財会議」を立ち上げました。本会議は、次世代を担うリーダーの育成や、主要ポジションにおけるサクセッションプランを、全社的な視点で検討する場として運営しています。
2024年度には、次世代の経営層を見据え、若手社員一人ひとりの人物像や成長ポテンシャルを把握することを目的に、経営陣との個別面談を実施しました。面談を通じて得られた情報や所見は、全社人財会議のメンバー間で共有され、各社員の特性や志向を踏まえた育成方針や配置の方向性を検討するためのインプットとしています。
2025年度からは、こうした面談結果や議論を踏まえ、本人の志向や成長の方向性に即した、段階的な育成施策の具体化を進めていく予定です。
・グローバル人材
国内外9か国で事業を展開する当社にとって、グローバルに活躍できる人材の育成は重要な課題です。2024年度は前年度に引き続き、海外拠点の運営に関わる人材に加え、成長市場での事業拡大を見据えてセールスエンジニアの派遣を行っています。さらに、将来のグローバルリーダーや経営幹部候補となる人材の育成を目的として、より多くの若手社員に海外経験を積ませるべく、海外トレーニー制度の活用を積極的に拡大しています。
・デジタル人材
当社では、デジタル技術を活用して業務プロセスや生産プロセスを変革し、競争優位性を確保するため、DXの推進に取り組んでいます。また、その推進を担う人材の育成にも力を入れています。
2024年度は、「DX人材は実践を通してこそ育成される」という考えのもと、DXを効果的かつ効率的に進めると同時に、人材育成の場ともなる、より実効性のあるDX推進体制の構築を目指しました。その一環として、部門横断型のサポート部隊を編成し、各部門のDXを支援する体制を整備しました。これらの取り組みを通じて、DXの推進と人材育成を両立させる土壌が着実に形成されつつあります。
2025年度からは、こうした活動をより組織的かつ継続的に推進するため、システム戦略部の配下に「生産システム課」を新設し、人材育成を軸としたDX推進体制を正式に構築していきます。
ⅱ)ダイバーシティ&インクルージョン(人材の多様性の確保に関する考え方と取り組み)
当社は、性別、年齢、人種・国籍、障がいの有無など、あらゆる多様性を尊重し、すべての従業員が自分らしく働き、能力を最大限に発揮できる職場環境の実現に取り組んでいます。多様な価値観や経験を持つ人材が互いに認め合い、協力し合うことで、新たな発想や創造性が生まれ、組織全体の競争力向上につながると考えています。
<2024年度の主な取り組み>
・女性リーダーの継続的な輩出
当社では、管理職に占める女性の比率が低いことを課題と捉え、女性の採用強化や育児と仕事の両立を支援する制度の充実など、女性が長期的に活躍できる環境の整備を推進しています。
さらに、「全社人財会議」においては、女性リーダーの育成を主要テーマの一つに掲げ、女性管理職の登用促進に向けた取り組みを進めています。
2024年度には、将来的な活躍が期待される若手社員を対象に、当社の経営陣が個別面談を実施しました。面談では、業務への取り組み方やキャリア観、価値観などについてざっくばらんに対話を行い、一人ひとりの人となりや可能性をより深く理解することを目的としました。
そこで得られた気づきは、今後の育成支援の参考として「全社人財会議」で共有しています。
2025年度は、女性社員のさらなる成長支援や昇進意欲を高めるための環境整備を進めていく予定です。
・シニア社員の経験、ノウハウを活かした活躍
当社では、今後増加が見込まれるシニア社員が、その豊富な経験とノウハウを最大限に発揮し、よりいきいきと活躍できるよう、「シニア社員活躍の場の創出」に向けて、全社人財会議の分科会を立ち上げました。
2024年度は、分科会のフレームワークに基づき、シニア社員のスキルや志向と社内ニーズを的確に結びつける職務マッチングを推進しています。その結果、より全社最適で、本人の納得感も高い新たな役割の創出・配置が進みつつあります。
また、シニア社員を部下に持つ上司を対象に、キャリア支援の基本的な考え方や、シニア社員との効果的な関わり方を学ぶための研修を実施しています。この研修を通じて、シニア社員のマネジメントにおける理解を深め、個々の強みを引き出す関わり方の実践につなげることを目指しています。
・障がい者雇用の推進
当社では、障がい者の雇用および就労支援にも取り組んでいます。2024年度は、受け入れ体制の強化を目的に、障がい者職業生活相談員を増員しました。あわせて、国内グループ全体での雇用率向上を目指し、新たな採用経路の開拓にも力を入れています。これにより、従来は障がい者の雇用が少なかった事業所やグループ会社、本社の管理部門などにも、雇用の場が広がっています。
ⅲ)働きがいのある職場環境づくり(社内環境整備に関する考え方と取り組み)
「幅広い視点から自ら深く考え動く人材」の育成と、「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進を実現するためには、従業員一人ひとりが自分らしく働き、意欲的にチャレンジできる職場環境の整備が不可欠です。
当社では、多様な価値観や背景を尊重し、誰もが平等に意見を表明し、挑戦できる企業文化の醸成を目指しています。
<2024年度の主な取り組み>
・従業員エンゲージメントの向上
当社では、働きがいやエンゲージメントの向上を図るため、定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、従業員の声をもとに職場環境やマネジメントの改善に取り組んでいます。
2024年度は、エンゲージメントサーベイの結果共有に加え、部門長を対象としたワークショップを開催しました。このワークショップでは、サーベイ結果の解釈方法や課題の共有、具体的なアクションへのつなげ方について、基本的なアプローチの理解を促しました。これにより、エンゲージメント向上に向けた具体的な取り組みの推進を図っています。
さらに、アクションの効果を確認するためのフォローアンケートも実施し、これらの取り組みがエンゲージメントの向上につながっていることを確認できています。
・自分で描いたキャリアプランの実現支援
当社では、社員自身が描くキャリアプランと企業の目指す方向性が一致し、そのキャリアプランに基づいてスキルや経験を積めるよう、キャリア支援施策の充実に力を入れています。これにより、社員が自律的に将来を見据えて成長できる環境を整えています。
2024年度には、新たに部長層を対象とした上司向けキャリア研修を実施しました。これにより、上司が部下とのキャリアに関するコミュニケーションの重要性を理解し、望ましい関わり方について具体的な行動を取れるようになることを目指しました。
2025年度からは、この研修の対象を課長層にも拡大するとともに、これまで段階的に導入してきたキャリア支援の各種施策を体系的に整理し、「キャリア支援制度」として本格的に運用を開始する予定です。
・男性育児休業取得
当社では、多様なライフスタイルや価値観を尊重する取り組みの一環として、男性の育児休業取得を支援しています。性別に関係なく、育児や家庭と仕事の両立を支援することで、誰もが働きやすく、安心して長期的にキャリアを築ける職場づくりを目指しています。
2024年度は、実際に育児休業を取得した男性社員が在籍する部門において、チーム全体での業務分担やサポートの状況を社内報にて具体的な事例として紹介しました。育児休業取得を支える職場環境づくりの重要性を発信することで、社内全体での理解と協力が深まりつつあります。
② 指標と目標
(注)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率についての実績は、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
当社グループは、2024年11月に公表した当社連結子会社元従業員の不正な経理処理による資金の着服行為の発生を受け、当該子会社の管理体制の立て直し及び当該子会社を含むグループ会社に対する内部統制の改善・強化を図っております。しかしながら、今後、予期せぬ内部統制上の重大な不備・不正・誤謬等が発生した場合には、当社グループの業績や財務状況、また社会的な信用に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループは、人権遵守、コンプライアンス遵守の経営を進めております。しかしながら、事業活動を行う上で、法令に抵触する等の事態が発生した場合は、当社グループの信用低下や損害等による費用の発生等により、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、当社グループとしてはこのような事態が発生しないよう、当社グループのミッション、ビジョン、バリューの浸透、組織風土改革、コンプライアンス啓発活動によるコンプライアンス意識及び知識の向上、違反の予防の徹底等に取り組んでおります。
当社グループは国内外に広く事業を展開しており、地震や津波等の自然災害、戦争、電力不足等の社会インフラの麻痺、伝染病、パンデミック、テロ、ストライキ等が発生した地域においては、原材料や部品の調達、生産活動、製品の販売及び物流などの遅延や停滞、また、受注減少や取引停止の可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、大規模な自然災害を想定した災害発生時において、最大限事業活動を継続し、製品の安定的な供給が図れることを目的とした事業継続計画(BCP)を策定しているほか、これらを含む有事の際には必要に応じ危機対策組織を立ち上げることで、「安全最優先」の基本方針に則って従業員の安全・安心を守ると同時に、当社グループ内の連携と相互支援を強めるなど、経営への影響を最小限に留めるよう努めております。
当社グループは、事業活動を通して得意先、取引先等の個人情報や機密情報を入手することがあり、また営業上・技術上の機密情報を保有しております。万一、サイバー攻撃その他によって情報セキュリティの仕組みが無効化し、これらの情報が流出または破壊された場合や、システムの停止等に陥った場合には、当社グループの業績や財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、万全のセキュリティを企図したグループ・ネットワークを構築し、日々の進化を図るとともに、当社グループ内の情報セキュリティ教育・啓蒙にも努めております。
大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、当社グループの業績と財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、設計から製品のリリースまでの全プロセスにおいて顧客や取引先との密なる連携に基づく工程並びに機能、品質の作りこみを常に心掛けております。また、万一の事態においては迅速なリカバリーと供給体制の維持に努めます。
当社グループは海外に多くの取引先や提携先を持ち、事業所を展開しておりますため、為替レートの変動によって当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、継続的に変動を注視するとともに、必要に応じてネッティングや予約等の施策を講じ、可能な限りマイナスインパクトを軽減するべく努めております。
当社グループは多数の外部の取引先から原材料及び部品を購入しており、原材料及び部品の高騰、供給逼迫、さらには取引先の廃業などによって影響を被る可能性があります。これに対し、取引先との良好な関係を維持しつつ、製造原価の低減に資する選択的購入や切り替え、災害等の不測の事態における安定調達を目的として、継続的に取引先の拡充や適正化を進めると同時に、取引先の経営状況の把握や必要な支援の提供等にも努めております。
自動車部品業界は広範囲な環境その他の法的規制に服しており、これらの規制を遵守するための費用が、当社グループの事業にとって重大な金額となる可能性もあります。これに対し、日常的に情報の取得に努め、材料変更、工法・設備の改良、生産地変更など、負担軽減に向けた対応策を講じております。
当社グループは、世界各地に工場及び事業所を保有しており、各国の政治体制下における政策、及び経済状況の影響を受ける可能性があります。これに対し、積極的に情報収集を進め、さまざまなケースを想定して対策を講ずるべく努めております。
当社グループは、自動車関連部品が売上高の8割以上を占めており、自動車メーカー及び一次部品メーカーの経営戦略、生産動向の影響を受けます。特に、自動車メーカーのEV化、一次部品メーカーの統合やグローバル生産体制の見直しは、当社グループの需要動向に大きな影響を及ぼす可能性があります。これに対し、顧客からの要請・ニーズの変化等を想定し、日常的な情報収集を進め、必要な技術開発投資などを適切に判断しながら対応策を検討しております。
当社グループが推進する戦略的提携や合弁事業は、パートナーの経営方針や経営環境の変化により維持不可能となった場合には、当社グループの業績と財務状況が影響を被る可能性があります。これに対し、パートナーと常に良好なコミュニケーションを維持しながら情報交換や必要な交渉に努め、不測の事態の回避を図ると同時に、状況の変化に即応できる態勢を維持しております。
当社グループが保有する、自社製品に関連する多数の特許及び商標等の知的財産が広範囲にわたって保護できない場合、あるいは不当に侵害された場合には、事業活動が影響を被る可能性があります。これに対し、常に侵害にあたる事実の把握に努めており、そのような事実を認めた場合には適切な対抗手段を取れる体制を整えております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大等を背景に、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方で、不安定な国際情勢や中国経済の成長鈍化が長期化の様相を見せているほか、物価上昇や金融資本市場の変動リスク等からインフレ不安が根強く残ることに加え、米国の通商政策の影響が今後顕在化することも想定されることから、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
自動車業界においては、半導体の供給不足緩和等を背景に生産台数は回復基調ではあるものの、その回復度合いには地域差が見られました。また、電気自動車においては、積極的な研究開発投資や普及活動に取り組んでいるものの、電気自動車への需要転換については一部見直しの動きも見られました。
このような経済情勢の下で、当社グループにおいては、原材料費や労務費上昇等のマイナスの影響を受けた一方、社内での合理化及び体質改善を年間を通して進めてまいりました。
これらのことから当連結会計年度の業績については、連結売上高は、前年同期比0.9%増の896億57百万円となりました。営業利益は、前年同期比29.5%増の47億21百万円となりました。経常利益は、当社の連結子会社である上海フコク有限公司で発生した不正行為に伴う貸倒引当金繰入額や特別調査費用等を計上しましたが、前年同期比11.6%増の45億69百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、上海フコク有限公司の「防振事業」セグメントにおける固定資産の減損損失並びに同社で発生した不正行為に伴う法人税、住民税及び事業税を計上したことなどが影響し、前年同期比3.9%減の29億31百万円となりました。
セグメントの経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
売上高は、受注が堅調に推移したこと及び為替換算の影響により、前年同期比5.5%増の411億49百万円となりました。セグメント利益は、原材料費や労務費等の上昇を合理化や売価反映等により吸収したことで、前年同期比15.3%増の49億99百万円となりました。
売上高は、受注が概ね堅調に推移したこと及び為替換算の影響により、前年同期比1.1%増の381億77百万円となりました。セグメント利益は、金具鋼材費や労務費等の上昇を合理化や売価反映等により吸収したことで、前年同期比33.9%増の28億67百万円となりました。
売上高は、主に国内の好調な受注に支えられ、前年同期比23.1%増の9億80百万円となりました。セグメント利益は、売上増に伴い、前年同期比21.0%増の2億51百万円となりました。
現在、採算性向上に資する非採算部品の事業縮小を進めていることから、売上高は、前年同期比20.7%減の53億42百万円となりました。セグメント利益は、金具鋼材費や労務費等の上昇を合理化や売価反映等により吸収したことで、前年同期比256.7%増の80百万円となりました。
売上高は、主に東南アジアでの需要減少が見られたことから、前年同期比11.0%減の47億84百万円となりました。セグメント利益は、原材料費や労務費等の上昇を合理化や売価反映等により吸収したことで、前年同期比8.1%増の2億5百万円となりました。
財政状態の状況は次のとおりです。
総資産は、前連結会計年度末に比べて33億68百万円増加し、794億2百万円となりました。
主な要因は、為替換算の影響や有形固定資産の取得等による固定資産の増加34億88百万円によるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べて5億57百万円減少し、334億65百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べて39億26百万円増加し、459億36百万円となりました。
主な要因は、利益剰余金の増加18億3百万円、為替換算調整勘定の増加20億95百万円等によるものです。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5億82百万円増加し、119億81百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は66億31百万円(前年同期は88億43百万円)となりました。これは主に減価償却費50億38百万円、税金等調整前当期純利益44億53百万円による資金の増加と、仕入債務の減少31億20百万円等の資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は58億35百万円(前年同期は44億66百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得が58億1百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は6億40百万円(前年同期は27億81百万円)となりました。これは主に配当金の支払が11億28百万円あったことによる資金の減少と、借入による収入が借入金の返済を6億11百万円上回っていたことによる資金の増加によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
固定資産の減損
固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、将来キャッシュ・フロー及び経済的残存使用年数到来後の不動産の正味売却価額を見積り、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前年同期比33億68百万円(4.4%)増の794億2百万円となりました。うち流動資産は同1億20百万円(0.3%)減の455億97百万円、固定資産は同34億88百万円(11.5%)増の338億4百万円となっております。流動資産の減少は、僅少であります。固定資産の増加は、設備投資に伴う有形固定資産の増加と無形固定資産の増加等によるものです。
当連結会計年度末の負債の合計は、前年同期比5億57百万円(1.6%)減の334億65百万円となりました。うち流動負債は同26億46百万円(9.8%)減の242億39百万円、固定負債は同20億88百万円(29.3%)増の92億26百万円となっております。流動負債の減少は、前連結会計年度末が金融機関の休日であったため、電子記録債務に未決済残高が含まれていたのに対して、当連結会計年度末は金融機関の休日ではなかったためです。固定負債の増加は、長期借入金の増加等によるものです。
純資産
当連結会計年度末における純資産は、前年同期比39億26百万円(9.3%)増の459億36百万円となりました。その主な要因は、原材料費や労務費等の上昇の影響を生産合理化や体質改善等で吸収したことによる利益剰余金の増加と、為替換算調整勘定の増加によるものです。為替換算調整勘定は主として米ドル及び中国元の為替変動の影響により前連結会計年度末の45億44百万円から66億40百万円に増加しました。非支配株主持分は、非支配株主に帰属する当期純利益2億72百万円の計上により、前年同期比1億89百万円(7.7%)増の26億62百万円となりました。
上記の結果、自己資本比率は前年同期比2.5ポイント増の54.5%、1株当たり純資産は前年同期比231.26円増の2,684.64円となりました。
当連結会計年度は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大等を背景に景気は緩やかな回復基調で推移した一方、不安定な国際情勢や経済情勢が続いたことに加え、米国の通商政策の影響が今後顕在化することも想定されることから、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
自動車業界においては、生産台数は回復基調で推移したものの、その回復度合いには地域差が見られたほか、電気自動車においては、積極的な研究開発投資や普及活動に取り組んでいるものの、電気自動車への需要転換については一部見直しの動きも見られました。
このような経済情勢の下で、当社グループにおいては、原材料費や労務費上昇等のマイナスの影響を受けた一方、社内での合理化及び体質改善を年間を通して進めたことで、連結売上高は、前年同期比0.9%増の896億57百万円、 営業利益は、前年同期比29.5%増の47億21百万円となりました。経常利益は、当社の連結子会社である上海フコク有限公司で発生した不正行為に伴う貸倒引当金繰入額や特別調査費用等を計上しましたが、前年同期比11.6%増の45億69百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、上海フコク有限公司の「防振事業」セグメントにおける固定資産の減損損失並びに同社で発生した不正行為に伴う法人税、住民税及び事業税を計上したことなどが影響し、前年同期比3.9%減の29億31百万円となりました。これにより、1株当たりの当期純利益は181.87円(前年同期は189.35円)となっております。
なお、セグメント別の業績分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
c. キャッシュ・フローの分析
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比22億11百万円減の66億31百万円となりました。前連結会計年度末日が金融機関の休日だったこと等による仕入債務の減少が主な要因となります。なお法人税等の支払額は12億74百万円(前年同期は8億57百万円)となっております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比13億69百万円増の58億35百万円の支出となりました。設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出が主な要因となります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比21億41百万円減の6億40百万円の支出となりました。前年同期は借入金の返済が収入を上回り18億79百万円の支出となりましたが、当連結会計年度は借入金の収入が返済を上回り6億11百万円の収入となりました。
現金及び現金同等物に係る換算差額は、主に中国元及び米ドルの為替変動の影響により4億26百万円となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて5億82百万円増加し、119億81百万円となりました。
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資並びに配当金の支払いであります。これらの資金需要につきましては、自己資金及び金融機関からの借入による資金調達にて対応していくことを基本方針としております。
また、突発的な資金需要に備え、当社は主要な取引銀行との間でコミットメントライン契約を締結し、手許流動性リスクに備えております。なお、これについて当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
当連結会計年度末における有利子負債は126億62百万円となっており、前連結会計年度末に比べ10億75百万円増加しております。
キャッシュ・フローの状況の詳細については、「c.キャッシュ・フローの分析」に記載のとおりであります。
雇用・所得環境の改善等を背景に景気は緩やかな回復が続く一方、不安定な国際情勢や物価上昇、金融資本市場の変動リスク等に加え、米国の通商政策の影響が今後顕在化することも想定されることから、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
自動車業界においては、地域差はあるものの生産台数の回復基調が底堅く続くものと見ていますが、米国の通商政策の動向によっては、今後影響が出てくることも想定されます。
このような状況の下、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは、2023年度に公表した「新中期経営計画2026」の目標値である2026年度売上高1,200億円、営業利益率8%、ROE12%達成に向け、「既存事業の強化」と「成長事業・新事業の拡大」の事業戦略の両輪に加え、「ESGを主体とした経営基盤の改革」に取り組むことで、収益の最大化を狙ってまいります。また、長期的な視点としては、当社独自のコア技術で高付加価値商品やソリューションを提供することで、サステナブルな社会の実現に貢献できる“心から愛される企業” を目指してまいります。
なお、2024年11月に公表いたしました当社連結子会社元従業員の不正な経理処理による資金の着服行為の発生につきまして、株主様、取引先様をはじめとする関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。二度とこのような事態を起こすことがないよう再発防止策を着実に遂行することにより、皆様からの信頼回復に努めてまいります。
再発防止策等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。
技術供与契約
業務支援契約
当社がより一層成長するためにお客様とのコミュニケーションをさらに充実させたいという想いを込めて、新しい拠点「Φ(ファイ)コミュニケーションHUB PCH」を愛知県安城市にオープンしました。ここは当社の開発商品を触って、体験して頂きながら、お客様と新たな価値を共創する場として活用します。ニーズが激しく変化する世の中で、直接会話しながらお客様の真のニーズを聞き出す機会を増やし、ソリューションビジネスを展開しています。特に電動化の主要部分となるバッテリー周辺で、セル間緩衝材、及び熱マネージメントアイテムである放熱ギャップフィラー(*1)は、数多くの企業と共創させていただいており、成果も出てきました。放熱ギャップフィラーにおいては、2件の国際特許出願を完了しました。しかし、バッテリー周辺の仕様は各社様々で変化が激しくコンペチターも多い中、受注を獲得するべく、素材メーカーやベンチャー企業との共創を積極的に進め、新たな価値創出に取り組んでいます。
また、「ソフトマテリアルであったらいいなを実現する」を掛け声に、ソフトロボティクス(*2)分野の開発も着手し始めており、2件の国内特許出願を完了しました。このような既存ビジネスを超えた商品開発を充実させる背景もあり、当連結会計年度の研究開発費の総額は、前連結会計年度の
*1:放熱ギャップフィラーとは、熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物です。発熱装置に塗布することによって、 放熱ギャップフィラーを通じて熱を外に逃がし、装置の温度上昇を抑制します。
*2:ソフトロボティクスとは、人間のように柔軟性のある動き・作業を行うロボット技術を指します。
自動車分野においては、電気自動車の電費向上にかかせない熱マネージメントシステム向けの熱伝導性シートやシール部品、電気回路を制御する高電圧デバイスシール部品、バッテリー暴走時の安全性を確保するバルブ部品、燃料電池車向け大型電動アクチュエーター用クッション部品等、車輛及びシステムの次世代自動車のニーズへ対応した積極的な開発を進めています。
特に当社の主軸製品であるワイパーブレードラバーにおいては、かねてから展開している中国Tier1メーカーへの技術支援戦略が実を結び、お客様のグローバル車両メーカーへの新規参入に貢献致しました。一方で、世界トップシェアのワイパーブレードラバーメーカーとして、これまでの取り組みに加え、新たな視点からの製品開発も視野に入れ、ソリューションビジネスの深化を通じて、新たな価値を提案できる体制を目指します。
非自動車分野のインダストリアル関連においては、超低ウェービングリニアガイド用シール、エアーシリンダー用パッキンを国内の顧客向けに開発し、一部量産が開始されました。
CASE時代に対応した商品について、EV電池用緩衝材であるセル間断熱弾性体やセンサー用防振ゴム等の開発に積極的に取り組んでいます。この他、宇宙関連機器用防振ゴム、並びに農業機械技術クラスター事業に参画するなど、積極的に新規分野の製品開発を行っています。EV電池用緩衝材では2件の国際特許出願、宇宙関連機器用防振ゴムでは1件の国際特許出願を完了しました。また、2030年以降の全固体電池に関する緩衝材の開発も進行しており、1件の国内特許出願を完了しました。今後も、自動車産業及び宇宙産業における価格決定力と競争優位性を高めていきます。
自動車業界向けの防振製品においては、共創により自動車用足回り防振ゴムブッシュが量産化され、引き続きサスペンション用ブッシュ等の各種防振ゴム、クランクシャフト用ダンパープーリー等を国内外の顧客向けに開発しており、更なる拡販活動を積極的に行っております。インドのInnova Rubbers社と業務支援に関する提携を結び、互いの強みを活かした相互補完的な関係のもと、同地域での拡販に向けた体制づくりを進めています。
一般産業分野においては、建機のキャビン用液封マウント、林業用機械のキャビン用小型液封マウント、住宅用防振ゴム、鉄道軌道用防振ゴム、及び鉄道関連の台車周辺緩衝ゴムなどを国内外の顧客向けに幅広く開発しております。長寿命、高い防振性能、カーボンニュートラル対応商品等、昨今増加している顧客ニーズにお応えするため、新材料、新形状を積極的に採用し、新しい付加価値をご提供できるよう開発を進めています。
ライフサイエンス事業においては、今後成長が見込める再生医療、遺伝子治療、個別化医療などの先端医療分野に期待を込め、再生医療の細胞加工で使用されるカスタム培地や細胞凍結保護液、細胞凍結バッグなどを上市しました。更に高付加価値の遺伝子治療用システムバッグや自動培養装置用カスタムバッグの開発などを進めています。その他の細胞関連製品においても、複数の大学や関連企業と積極的に共同研究を行っており、新しい製品開発に向けての有効性確認やエビデンスの蓄積も行っています。
いずれのセグメントにおいても競合他社が多数おり、技術開発が盛んになっています。知的財産権、特に特許においては競合他社からの出願が目立っており、技術内容の重複及び先願がリスクになり得ます。そこで、2024年度より、これまで以上に競合他社の技術情報及び市場動向を、早く・的確に入手する取組みを開始しました。そして、研究開発と知的財産戦略とをこれまで以上に連携させ、先行開発を促進し、将来の総合的な市場優位性の獲得を目指します。