文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「経営理念」に従い、責任と熱意を持ってモノ造りに挑戦し、顧客の信頼を勝ち得ることに喜びを感じ、様々な社会的責任を果たすことで、21世紀に貢献できる企業グループを目指しております。
経営理念
心が触れ合うモノ造り 信頼と喜びの行動で 21世紀に貢献する。
・経営品質を高め、顧客・株主・社会から期待され、信頼されるグローバルな企業として発展する。
・お客様に喜んでいただける商品、もしくは価値を提供することで、社会に貢献する。
・自由闊達で、常に新しいことに挑戦する企業風土をつくる。
(2)経営戦略等
当社グループは、2021年を初年度とする中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan – with New Values and Diversity –)に取り組んでおります。
①ビジョン
中期経営計画の骨子を「ビジョン」として次のように定めております。
<顧客創造とイノベーションにより、新たな価値と多様性を兼ね備えた持続可能な成長を実現する>
当社製品を3C(顧客・競合・自社)の視点から分析し、その優位性、差別化、更には新たな提案でお客様の要求に応えるべく、既存製品の更なる付加価値向上と、新たな顧客・地域での販売拡大を目指します。また、新型コロナの影響により世界経済が停滞する中、不測の事態における復元力を強化するとともに、人・環境・社会に優しく、多様性を兼ね備えた企業として、新たな時代へ挑戦し続け、体質改革と成長戦略の実現に邁進します。
②成長のロードマップ
中期経営計画では、2021年から2022年をコロナ禍からの着実な回復期、2023年から2025年をポストコロナ成長期として位置付けております。
③3つの全体戦略
戦略Ⅰ:成長分野の強化・拡大と新たな事業の創造によるグローバルでの利益体質の強化
マーケティング活動の推進や原価企画部門の体制強化、グローバルワンシステムによる管理強化によりグローバルでの競争力アップに取り組んでまいります。
戦略Ⅱ:グローバル人材の確保と育成
グローバル人事制度を構築し、当社グループにおける次期リーダー人材を含む中核社員の育成や当社における外国人従業員採用拡大、海外トレーニー制度の推進を図り、新たなグローバル事業戦略を構築できる人材を育成してまいります。
戦略Ⅲ:Resilience(復元力)の強化と新しい社会への貢献
コーポレートガバナンスの強化や事業継続マネジメント(BCM)の取組みにより、不測の事態発生時にも素早く対応できる復元力を強化してまいります。また、CSR、SDGsの取組み強化により、人・環境・社会に貢献できる企業を目指してまいります。
(3)経営環境
世界経済は、インフレ抑制を目的とした世界主要中央銀行の利上げや金融緩和の縮小、欧州の地政学リスクに起因するエネルギー価格の高騰、中国のゼロコロナ政策転換による新型コロナウイルス感染拡大等の要因により景気回復の失速が鮮明であり、先行きの不透明感も強い状況が続くものと予想されます。
自動車業界では、サプライチェーンの正常化が期待される中、依然として半導体不足の影響による生産調整は続いており、生産・販売ともに前年を上回るものの、コロナ禍前の水準に戻るには時間を要するものと見込まれます。
このような環境の中、当社グループでは、中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan – with New Values and Diversity –)において、2023年以降をポストコロナ成長期への転換期と位置付けており、新たな価値と多様性を兼ね備えた持続可能な成長につながる経営基盤の強化に取り組み、計画の達成に邁進してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中期経営計画では、「3つの全体戦略」に従った具体的な「重点施策」を確実に遂行してまいります。
CASEといわれる自動車の大きな技術革新が進む中、当社グループは特に地球環境への配慮と次世代電気自動車へのシフトを視野に入れ、自動車分野では製品の軽量化によるCO2削減に取り組むとともに自動車以外の住設分野などの製品群を拡大することで、新たな価値と多様性を兼ね備えた持続可能な企業集団をめざしてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画では、Target 25(経営数値目標)として、「連結経営目標」を次のとおり設定しており、2023年以降、2025年をポストコロナ成長期と位置づけております。
なお、2022年2月14日の公表値から修正しておりませんが、策定の前提条件が大きく変化しており、現在の経済環境や自動車業界の動向、為替の推移などを総合的に勘案のうえ精査中であります。
・連結経営目標
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単位:百万円 |
2025年12月期目標 |
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売上高 |
66,000以上 |
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営業利益 |
7,500以上 |
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営業利益率 |
11.4%以上 |
※1US$=113円を想定しております。
有価証券報告書に記載しました事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業展開上のリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に務める方針であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年12月31日)現在、入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。
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リスク分類 |
リスク項目 |
リスク内容 |
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事業環境 |
新型コロナウイルス等の感染症による影響 |
世界各国で新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大が繰り返されたものの、欧米諸国を中心に行動制限の緩和が進んでおり、日本でも感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同じ分類へ変更が検討されるなど出口戦略へ向かいつつあります。しかしながら、依然として感染収束の見通しは立っておらず、変異型や新種のウイルスの発生により、再度同様の事態となる可能性は否定できず、不透明な状況が続いています。 当社グループにおいても、感染再拡大が長期間にわたって続き、工場の操業停止や特定の原材料・部品等の調達に制約が生じた場合、営業活動上の制約の長期化により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループは「事業継続計画書(感染症)」を制定し、感染症により事業活動に著しく影響を及ぼすことを想定し、これを事前に防止または事業継続を図るための計画を定めております。 |
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自動車産業への依存度 |
当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、特定の自動車メーカーの系列に属さないものの、自動車業界の動向、顧客企業の業績ならびに顧客の調達方針変更、また、自動車技術の革新等に伴う既存部品の変化などにより、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、新製品の開発、新規事業の発掘、自動車以外の住設分野などの製品群を拡大する等の取り組みを進めております。 |
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海外事業展開 |
当社グループの生産および販売活動は、日本をはじめとする海外9ヵ国にわたっています。これら海外市場への事業進出には、以下のようなリスクが内在しており、当該事象が当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 ・予期しない法律または規制の変更による投資機会の逸失、製造・販売の中止、コスト負担の増加等 ・不利な政治的または経済的要因の発生 ・戦争、テロ、疾病などによる社会的混乱に伴う材料調達、生産、販売および輸送の遅延や中止 |
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各国の法令・各種規制 |
当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、独占禁止、環境保護等の各種関係法令の適用を受けております。当社グループは、こうした法令および規制を遵守し、公正な企業活動に努めておりますが、万一法令・規制違反を理由とする訴訟や法的手続きにおいて、当社グループにとって不利な結果が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 |
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原材料価格の変動 |
当社グループは、製品製造にあたり合成ゴム、補強糸、金属およびゴム部品等の材料を購入しており、これらの価格は原油や金属などの国際相場により大きく変動することがあり、購入価格に影響を受けます。当社グループにおいては、生産改善や経費削減などの原価低減に取り組んでおりますが、原材料価格の著しい変動は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 なお、対応可能な購入価格の上昇に対しては、コスト低減や販売価格への転嫁等により業績への影響を最小限に留め、原材料を安定且つ継続的に購入するため努めております。 |
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リスク分類 |
リスク項目 |
リスク内容 |
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事業環境
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部品・原材料の調達 |
当社グループが製造において使用する一部の原材料・部品については、品質、価格、納期などから特定の仕入先に依存しているものがあります。効率的かつ低コストで供給を受け続けられるかどうかは、当社グループがコントロールできないものも含めて、多くの要因に影響されますが、仕入先の生産体制、技術・研究開発力や経営状態によっては、当社グループの生産に影響を及ぼす可能性があります。また、国際的な物流問題等により、原材料・部品が入手困難になる可能性もあります。 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、調達に関する情報収集や対応策の検討、より競争力のある調達先の開拓を実施してまいります。 |
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競争の激化 |
当社グループが関連する事業分野において競争が激化し、他社による競争力のある新製品・新サービスの提供、大幅値下げ等の積極的な販売活動の展開、低価格品への需要シフト等が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 |
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為替相場の変動 |
当社グループは、日本、北米、中国、アジア、欧州の各事業拠点において生産と販売を行っており、海外取引のウエイトは高まっております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表においては円換算されております。これらの項目は、現地通貨における価値が変わらなくても、換算時の為替レートの変動の影響を受け、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。全てのリスクをヘッジすることはできませんが、当社グループでは、為替予約等により為替相場の変動リスクを最小限に留めるよう努めております。 |
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事故・自然災害等 |
火災などの重大事故や地震など大規模な自然災害や人的災害が万一発生した場合は、当社グループはもとより発生地域によっては、顧客または仕入先の生産設備等の被害やサプライチェーンの混乱等による生産への影響が予想されます。当社グループは、こうした事態に対処するため、その被害を最小限にくい止めるための体制の整備に努めておりますが、災害の規模により当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、大規模地震等の発生に備え、耐震補強工事を継続的に進めております。また、大規模地震等に見舞われた際の事業の継続または早期再開を目的に、「事業継続計画書(地震)」を制定しております。 |
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人材の確保 |
当社グループの将来的な成長には事業遂行に必要な人材を採用し、確保し続ける必要があります。今後、優秀な人材の確保・育成が中長期的に計画どおり進まなかった場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。 なお、全体戦略の1つとして、グローバル人材の確保と育成を掲げ、リスクの低減に取り組んでおります。 |
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資産の減損 |
当社グループは、事業環境が大幅に悪化するなどの場合は、減損損失が発生し、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 |
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リスク分類 |
リスク項目 |
リスク内容 |
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事業運営
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製品の欠陥 |
当社グループでは、製品の品質は事業を維持、発展させるためのもっとも重要なものの1つであると考え、世界基準や取引先の厳しい品質管理基準を遵守するため各種の施策や対策を実施し、製品品質の維持・向上に最大限の注意を払い製造販売しております。しかしながら、自動車の不具合の原因が当社グループの供給した製品の欠陥にある場合、リコール等の処置がなされることがあります。当社グループにおいては、製品の品質確保に万全を期してはおりますが、このような事態が発生した場合、契約上も、法律上もリコール等の処置にかかわる費用を負担しなければならないことがあります。リコール等による多額の費用の発生や顧客満足度の低下は当社グループの評価を下げると共に、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、開発、生産、品質保証部門が一体となり、品質に関する課題を共有、議論し、早期に最善な方法で解決する活動を行っております。 |
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知的財産権 |
当社グループは、当社グループ製品による第三者の重要な知的財産権の侵害を防止するとともに、第三者により当社の知的財産権を侵害されないよう他社製品の継続的な調査を行っておりますが、当社グループのような企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。このような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 |
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情報システム障害による影響 |
当社グループのほぼ全ての業務は情報システムに依存しており、トラブル発生の場合には、販売・生産などの業務への影響が予想されます。当社グループでは、トラブル回避のため、セキュリティを高めるなどシステムやデータ保護に努めておりますが、災害などの外的要因やウイルスなどにより情報システム障害が発生した場合、その規模によっては、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、クラウドサービスへの移行やSOCサービス(Security Operation Center) ならびにMDRサービス(Managed Detection and Response)を活用し、不正アクセスに対する監視体制の強化を図っております。 また、サイバーセキュリティ対策については、2022年より「情報セキュリティ委員会」を設置し、従業員教育、メール訓練、内部監査、外部リスクアセスメント等の実施を通じた体制強化の推進に取り組んでおります。 |
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環境 |
気候変動 |
気候変動などの環境問題への対応は、当社グループにとって重要な課題であり、気候変動に対する政策及び法規制、市場の要求を踏まえ、環境配慮型製品の開発に取り組んでおりますが、これらの規制が予測を超えて厳しくなった場合、コストの増加、販売機会損失等により、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動により近年増加傾向にある台風・豪雨等の異常気象、地震などの大規模自然災害等が発生した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループでは、事業活動に関わる各国の環境関連法規制の遵守及びサプライチェーン全体で環境保全と環境負荷低減に努めるなど、リスクの低減に取り組んでおります。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を適用したことに伴い、前連結会計年度と収益認識に関する会計処理が異なっておりますが、経営成績の状況については、「収益認識会計基準」を遡及適用していない前連結会計年度の実績値を記載しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)については、ゼロコロナ政策を続けた中国で経済活動の停滞への影響が長期化したものの、欧米諸国を中心に行動制限の緩和が進み景気は回復へと向かいました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻により、昨年から続く半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱に拍車がかかり、世界各国ではインフレが進行しました。このようななか、欧米諸国では物価安定のため金融引き締め政策への転換が進められました。
米国においては、新型コロナによる行動制限は大幅に緩和され、個人消費の回復を背景に景気は堅調に推移しましたが、半導体等部品の供給不足や雇用情勢の悪化に加えウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰など、インフレが深刻な問題となりました。また、インフレ抑制のため急激な金融引き締め策が進められることとなり、今後もその動向と世界経済への影響が注視されています。
欧州においては、新型コロナの影響は限定的なものとなり、半導体等部品の供給不足が続くものの、景気は回復に向かいましたが、ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア産エネルギーや資源に依存している各国では影響が大きく、安全保障のみならず、経済活動にも悪影響が及んでいます。
中国においては、ゼロコロナ政策によるロックダウンや厳しい行動制限により、個人消費は低迷し、生産活動も制限され、不動産価格の低迷や電力不足も加わり景気は減速しました。また、12月ではゼロコロナ政策が突如解除されたことで感染が急拡大し、景気は再び不透明なものとなりました。
アジアにおいては、新型コロナによる行動制限の緩和が進み、景気は概ね好調に推移しておりますが、中国経済と関係が深い各国において経済停滞の影響を受け、サプライチェーンの混乱や資源価格の上昇など、インフレの加速が懸念されています。
日本経済は、新型コロナの感染拡大を繰り返しながらも、行動制限の緩和が進みました。一方、引き続き、半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱は継続しており、経済回復への足かせとなっています。また、欧米諸国との金融政策の違いによる円安の進行は、総じて企業業績を後押しした反面、輸入企業の業績や個人消費の悪化をもたらしました。今後の金融政策と為替相場への影響に注目が集まっています。
当社グループの主要事業分野である日本自動車業界に関する状況は、次のとおりであります。
昨年から続く半導体等部品の供給不足や物流網の混乱に加え、ウクライナ侵攻に起因した資源高、中国でのロックダウンによるサプライチェーンの混乱により、引き続き生産調整を余儀なくされました。また、進行中の円安は、輸出においてメリットになった反面、原材料価格やエネルギー価格で大幅なコスト増をもたらしました。今後は、世界的に進むカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも期待されています。
この結果、当連結会計年度における国内乗用車メーカー8社の国内四輪車販売台数は、前年比4.6%減の383万台、四輪車輸出台数は、前年比1.0%減の353万台となり、国内四輪車生産台数は、前年比0.1%減の738万台となりました。また、海外生産台数は、前年比2.6%増の1,658万台となりました。
このような環境のなか、当連結会計年度の売上高は64,172百万円(前連結会計年度58,260百万円)、営業利益は7,678百万円(前連結会計年度6,841百万円)、経常利益は8,452百万円(前連結会計年度7,531百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,578百万円(前連結会計年度4,781百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
日本
半導体等部品の供給不足により顧客の生産調整が継続したものの、国内顧客は昨年減産分の挽回生産が一部実施されたことや、円安に伴う外貨建て売上高の増加もあり、売上高は32,487百万円(前連結会計年度30,545百万円)、営業利益は2,708百万円(前連結会計年度1,873百万円)となりました。
北米
北米市場は、半導体等部品の供給不足の影響や物流網の混乱により顧客の生産調整が継続し、現地通貨ベースでの売上高は7.1%減少したものの円安の影響により、売上高は10,673百万円(前連結会計年度9,587百万円)、NICHIRIN-FLEX U.S.A., INC.でのサイバー攻撃に伴う特別費用96百万円(物流費用、対策費用等)の計上により、営業利益は326百万円(前連結会計年度346百万円)となりました。
中国
ゼロコロナ政策によるロックダウンや厳しい行動制限により断続的な生産停止が続くなか、現地通貨ベースでの売上は2.4%減少したものの円安の影響により、売上高は13,401百万円(前連結会計年度11,995百万円)、売上減少に加え物流コスト等の増加により、営業利益は1,840百万円(前連結会計年度1,905百万円)となりました。
アジア
半導体等部品の供給不足により顧客の生産調整は続いているものの、二輪用ブレーキホースが堅調に推移したことに加えて円安の影響もあり、売上高は19,952百万円(前連結会計年度17,026百万円)、営業利益は3,169百万円(前連結会計年度3,092百万円)となりました。
なお、NICHIRIN IMPERIAL AUTOPARTS INDIA PVT., LTD.における収益性の低下により顧客関連資産126百万円の減損損失を計上することとしました。
欧州
昨年より複数の日系顧客が欧州工場を閉鎖したことに加え、半導体等部品の供給不足やウクライナ情勢による顧客の生産調整の影響を受け、現地通貨ベースでの売上は13.0%減少、売上高は4,720百万円(前連結会計年度5,104百万円)売上減少に加え原材料価格やエネルギー価格の高騰により、営業損失は290百万円(前連結会計年度は営業損失11百万円)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は45,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,431百万円増加しました。これは主に、現金及び預金1,293百万円の増加、売掛金916百万円増加、棚卸資産921百万円増加によるものであります。固定資産は26,947百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,147百万円増加いたしました。これは、建物及び構築物が155百万円増加、機械装置及び運搬具が700百万円増加したものであります。この結果、総資産は、72,540百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,579百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は13,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ151百万円減少いたしました。これは主に、買掛金が723百万円増加、電子記録債務が208百万円減少、短期借入金が201百万円減少、未払法人税等が609百万円減少したことによるものであります。固定負債は6,009百万円となり、前連結会計年度末に比べ932百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が626百万円減少、リース債務が170百万円減少、退職給付に係る負債が173百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は、19,601百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,083百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は52,938百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,662百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が3,405百万円増加し、為替換算調整勘定が2,499百万円増加、非支配株主持分が156百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は63.7%(前連結会計年度末は59.9%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,547百万円増加し、当連結会計年度末は17,836百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシユ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は6,770百万円の増加(前連結会計年度は6,352百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益8,421百万円(資金の増加)および、減価償却費2,577百万円(資金の増加)、投資有価証券売却損益189百万円(資金の減少)、売上債権の増加418百万円(資金の減少)、仕入債務の増加266百万円(資金の増加)、法人税等の支払額3,167百万円(資金の減少)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は942百万円の減少(前連結会計年度は591百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,018百万円、投資有価証券の取得による支出611百万円、投資有価証券の売却による収入322百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は4,205百万円の減少(前連結会計年度は2,602百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出679百万円、配当金の支払額1,172百万円、非支配株主への配当金の支払額1,521百万円等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年 1月 1日 至 2022年12月31日) |
前年同期比(%) |
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日本 (百万円) |
18,968 |
103.2 |
|
北米 (百万円) |
11,096 |
112.2 |
|
中国 (百万円) |
12,384 |
106.4 |
|
アジア(百万円) |
17,526 |
116.5 |
|
欧州 (百万円) |
4,745 |
92.1 |
|
合計 (百万円) |
64,722 |
107.7 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループの主要製品である自動車用ホースは、基本的には販売先からの受注による受注生産であり、必要なものを必要な時に納入する「ジャスト・イン・タイム」の定時・定量納入方式を特徴としております。
しかし、販売先より提示を受ける納入内示と実際の納入は、時期、数量が異なるとともに確定受注から納期までは極めて短い期間であります。従って、現実的には販売先からの四半期および翌月の生産計画の内示を基に、過去の実績・当社の生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っております。
このような理由により、受注高および受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年 1月 1日 至 2022年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本 (百万円) |
18,936 |
104.3 |
|
北米 (百万円) |
10,628 |
111.0 |
|
中国 (百万円) |
12,385 |
111.8 |
|
アジア(百万円) |
17,673 |
121.8 |
|
欧州 (百万円) |
4,549 |
92.3 |
|
合計 (百万円) |
64,172 |
110.1 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、2022年は中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan)の2年目で”コロナ禍からの着実な回復期”かつ2023年からの”ポストコロナ成長期”への転換点となる重要な年として経営課題に取り組みました。
世界経済は、欧米諸国を中心に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)からの行動制限の緩和が進み景気は回復へと向かいましたが、ロシアによるウクライナ侵攻により、昨年から続く半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱に拍車がかかりました。世界各国ではインフレが進行し、欧米諸国では物価安定のため金融引き締め政策への転換が進められました。
こうした外的環境要因による制約を受けながらも、グループとしてサプライチェーンの有効活用を図り、拠点間の連携強化に努め、最適な生産場所・生産体制の確立に向け取り組んだ結果、当期の経営成績は、新型コロナ前の水準まで回復しました。
当連結会計年度の売上高は64,172百万円、営業利益は7,678百万円、経常利益は8,452百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,578百万円となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標および当連結会計年度の達成・進捗状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
指標 |
2021年 (実績) |
2022年度 (計画) |
2022年度 (実績) |
2022年度 (計画比) |
2022年度 (前期比) |
||
|
売上高 |
58,260 |
65,500 |
64,172 |
△1,328 |
△2.0% |
+5,912 |
+10.1% |
|
営業利益 |
6,841 |
7,300 |
7,678 |
+378 |
+5.2% |
+837 |
+12.2% |
|
経常利益 |
7,531 |
8,800 |
8,452 |
△348 |
△4.0% |
+921 |
+12.2% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
4,781 |
4,300 |
4,578 |
+278 |
+6.5% |
△203 |
△4.2% |
(注)2022年計画は、2022年11月11日の公表値を記載しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、自動車業界の動向、顧客企業の業績や調達方針の変更などにより、経営成績に重要な影響を受ける可能性があります。
その他の要因につきましては、「第2 事業の状況」の「2事業等のリスク」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末の現金及び預金は18,354百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,293百万円増加いたしました。これは営業活動の結果獲得した資金が6,770百万円と前連結会計年度に比べ418百万円増加し、投資活動の結果使用した資金が942百万円と前連結会計年度に比べ350百万円増加し、財務活動の結果使用した資金が4,205百万円と前連結会計年度に比べ1,602百万円増加したことによります。
上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金および金融機関からの借入金にて賄われております。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,513百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は17,836百万円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成においては、資産・負債および収益・費用の適正な開示を行うため、貸倒引当金、退職給付に係る負債、賞与引当金などに関する引当については、過去の実績や当該事象の状況に照らし合理的と考えられる見積りおよび判断を行い、また価値の下落した投資有価証券の評価や繰延税金資産の計上については、将来の回復可能性や回収可能性などを考慮して計上しております。但し、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、見積りと異なる場合があります。
当社グループが採用しております会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「重要な会計方針」に記載のとおりであります。
なお、今後の新型コロナの当社グループへの影響は、地域によって程度が異なるものの、当連結会計年度末から1年程度継続すると仮定し、会計上の見積りを行っております。
新型コロナの収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、上記の見積りの結果に影響し、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)当社が技術援助等を受けている契約
該当事項はありません。
(2)当社が技術援助等を与えている契約
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相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約期間 |
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和承R&A |
大韓民国 |
自動車用エアコンディショニングホース製造に関する技術 |
2022年3月5日から 2025年3月4日まで |
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自動車用ブレーキホース製造に関する技術 |
2018年12月5日から 2023年12月4日まで |
||
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2022年3月5日から 2025年3月4日まで |
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|
自動車用パワーステアリングホース製造に関する技術 |
2022年3月5日から 2025年3月4日まで |
(注) 上記についてはロイヤルティとして純売上高の一定割合を受け取っております。
当社グループは、国内および世界市場における競争力を強化し、顧客ニーズである自動車の安全性向上や快適さを追求する製品、環境に優しい製品を開発するとともに、商品開発力で世界の顧客から期待される自動車用ホースのLeading Companyを目指しております。自動車や自動二輪車のEV化が加速していく中で、商品群の変化に関する情報を先取りし、顧客満足度向上にも注力しております。家電、住宅分野などでは、節水タイプ等のモデルに適した新製品の開発にも取り組んでおります。
主要製品であります自動車用ホース分野に関して、エアコン関連では、海外顧客向け内面樹脂付きエアコンホース曲管仕様の受注が拡大しており、生産対応中ですがコストDownの取組みも継続中です。また、IHX(カーエアコン用内部熱交換器)も、熱交換性能と更なる生産性向上を図った新仕様の開発も完了し、今後客先提案をしてまいります。液圧ブレーキホースでは、二輪用主力商品のSLIMシリーズの生産量が増加してきているため、日本だけではなくベトナムでの生産も開始しました。また、ブレーキパイプと口金具を一体化させた新仕様の量産もスタートしました。
今後、多品種に亘り樹脂化の傾向が増加すると予測されることから、SDGsにも貢献出来る材料選定にも着手しております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は