文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、2030年を見据えたビジョンを「AR-2030 VISION」として定め、その行動指針は、「ステークホルダー・エンゲージメントを高める」としています。会社は社会のためにあること、また持続的に社会の責任を果たして社会に貢献できる企業であり続けることを常に考えていきます。そして私たちを取り巻くすべてのステークホルダーとの対話を通じて、企業価値を高めてまいります。
この「AR-2030 VISION」の実現に向けて、2023年4月~2026年3月の三ヵ年をどのように取り組んでいくかを第14次三ヵ年中期経営計画として取りまとめ、テーマを「後継」と「Well-being」としました。中期基本方針は、「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」としています。中期経営戦略は、①事業活動の深化・進化・新化、②スマートファクトリーの実践、③Well-beingを高める、④地域社会貢献として、ESG経営を進化させ、4事業が新たな施策を持って2030年またその先の将来に向かって「新しいカタチ」に挑戦するステージに入ります。これまで以上に柔軟かつ好奇心旺盛な思考で行動し、事業活動を通じて様々な方々と一緒に未来につながるカタチをつくっていきたいと考えています。
2026年3月期はこの第14次三ヵ年中期経営計画の最終年度となります。グローバルな経済・市場環境は大きく変化しており、先行きの不透明感も増してきています。このような状況下でも当社グループは立ち止まって様子を伺うのではなく、私たちの活躍する足場をしっかりと固めて、稼ぐ力を高めていくため「選択と集中で駆け抜ける・駆け上がる」をスローガンに掲げて取り組んでまいります。
当社グループの存在価値は、独自の技術を活かした付加価値の提供による製品開発で市場に貢献することです。継続した要素技術の深掘りとこれまでの製品の製造だけの委託を受けるOEMから、自社で設計や開発も行うODMに移行させていくことで、より付加価値を向上させ、稼ぐ力を高めることになると考えています。そのために、2025年4月から技術本部を設置し、分散していた技術の知識や権限を集中して整理し、効果的に運用し、早く確実に成果を上げていける体制を整えました。ますます高度化する市場や顧客の要求に「機動力・対応力・誠実」に象徴する「朝日ラバーらしさ」を磨いて、光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信の4つの事業分野で貢献してまいります。
私たちは、「個性を尊重し特徴ある企業に高めよう。豊かな人間関係、生活の向上を目指し社会に奉仕しよう。」という当社の社訓を心に刻み、当社を取り巻くステークホルダーの皆様との対話を通じて、さらに次の世代へとつなげていきます。
業績目標は、連結売上高85億円以上、連結営業利益率5%以上といたしました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、取締役会の指示のもと、業務執行の取締役と執行役員で構成するESG会議を毎月実施し、サステナビリティに関する活動の進捗と新たに発生する課題の認識と対応について議論し、方針を決定して取締役会に報告する体制を整えています。対策については、組織の活動によるものと各機能を交えた安全衛生委員会、環境省エネ委員会、人材育成会議などの会議・委員会にて具体的な活動計画を策定、実施と確認のサイクルを運営しています。
(2)戦略
(人事戦略)
当社グループの人事基本戦略として、従業員との対話を大切にし、安心・健康でやりがいのある働きやすい職場づくりに努めます。従業員が公平に評価され、働きがいやモラールの向上につながるよう、資格等級制度、評価制度、給与制度を見直し、目標を必ず達成できる企業体質の構築を目指します。
朝日ラバーが目指す人材像
1. 私たちは、一人ひとりが自立心を持って目標に挑戦します。
2. 私たちは、個性を尊重しつつ人間性の向上を育み、仕事を通じて自己実現できる環境づくりを目指します。
3. 私たちは、公平に機会を与え、公正かつ具体的に評価し処遇を決めます。
当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針は、以下となります。
朝日ラバーは、経営基本方針の骨子として「広く社会に貢献すること」「人間として成長していくこと」を掲げ、一人ひとりの自主的な成長意欲や感謝の気持ちを重んじながら、常に社会や組織に最大限貢献できる人材育成を実施しています。
また、社内環境整備に関する方針は、以下となります。
①人格と個性の尊重
朝日ラバーは、従業員一人ひとりが有している人格と個性を尊重し、ワクワクできる働きがいのある職場や自身が成長できる環境づくりを進めます。
②コンプライアンスの推進
朝日ラバーは、果たすべき社会的責任を自覚し、コンプライアンスを遵守するため継続的に推進活動を行い、風通しの良い企業風土づくりを進めます。
③環境への配慮
朝日ラバーは、地球環境にやさしいゆとりと豊かさを実現できる社会環境と、安全、安心でイキイキと働ける職場環境の整備を進めます。
上記の方針のもと、従業員個人の保有するスキルを踏まえて、年間の教育計画に反映させています。従業員の保有能力を把握した上でのキャリアアッププランの策定や管理職のスキルアップ制度の導入を進めています。更に、自己啓発の促進につとめ、通信教育などは修了を条件に費用はすべて会社負担として自主的な知識の習得を支援しています。
また、育児休暇、介護休暇、短時間勤務制度等のワーク・ライフ・バランスを考慮した施策も実施しています。当連結会計年度からは、役職ではなく名前による呼称を推奨し、職位の壁を感じることなくフラットな意見が言いやすく、ボトムアップで意見が上がってくる風通しの良い職場環境に取り組みました。また有給休暇に関するアンケートを実施し、有給休暇取得の際の上司または職場の理解度向上や有給休暇の過ごし方などをリフレッシュできる環境状況を調査して今後の取り組みに活かしていくなど、従業員のWell-being向上に向けた制度構築を進めています。
朝日ラバーでは、従業員が健康でイキイキと仕事に取り組み、能力を最大限発揮できるように「こころと身体の健康増進」に向けた活動を推進しています。毎年ストレスチェックを実施し、その結果からの集団分析結果を活用した職場環境改善の取り組みを行っています。産業医・保健師・当社管理部門が一体となった「健康支援室」は、特定保健指導を中心に食生活と運動の両面からの生活習慣病改善をサポートしています。2021年度から、希望者を対象に線虫検査によるがん検査を実施しています。
(環境活動)
当社は法令・法規・条例を遵守し、「環境にやさしいものづくり」と「確かな品質」の実現に向け、環境基本方針および品質基本方針を定め、環境・品質を一体とした考えのもとで品質・環境方針を定めています。
お客様の視点や市場のニーズに沿った品質を継続的に高めていく活動は重要であり、品質不具合はお客様の信頼を損なうとともに原料やエネルギーの無駄な消費と廃棄物の増大を招くことになります。そのためにも環境・品質問題を重要課題とし、統合マネジメントシステムを確実に運用し、社会に貢献する企業を目指します。
環境基本方針
当社は環境問題が人類共通の重要課題であることを認識し、「環境にやさしいものづくり」をスローガンとして、地球環境の保全と社会への貢献を目指して活動します。
当社で取り組んでいる主な環境活動は、以下となります。
① CO2排出量の低減
当連結会計年度において当社の総CO2排出量は607t(GHGプロトコルに基づく算定を行っています(マーケット基準)。Scope1、Scope2の合計値です。)となり前期比2.9%の減少となりました。CO2排出の約9割を占める電力起因のCO2を削減するため、2021年12月より全工場において、外部からの購入電力はすべて再生可能エネルギー起因の電力(水力発電による属性のある非化石証書付電力)を使用しています。これにより、工場部門でのエネルギー消費によるCO2の発生は、ボイラー燃焼時に発生するものだけになります。さらに、段階的に自家消費用の太陽光発電設備を設置しています。また、蒸気配管の断熱や排熱の利用、電気エネルギーとの組み合わせなどでエネルギーの効率的な使用を検討するとともに、今後も再生可能エネルギーを利用した生産活動を推進していきます。
② 電力使用量の低減
当連結会計年度において当社で使用した電力量は約860万kWhとなり前期比8.8%増となりました。このうち、当社で自家消費した太陽光発電量は、約99万kWhで全工場で使用した総電力の11.5%となりました。特に、太陽光発電の導入を進めている白河、白河第二工場では全体使用量の22.3%となりました。省エネ活動としては、設備電源を中心とした不使用時または不必要時の停止、エア使用設備の真空エジェクタの最適化、中間期(春季・秋季)の外気導入によるエアコン電力削減、設備の断熱化推進によるヒーター電力削減と周囲温度の上昇抑制によるエアコン電力低減、加湿設備や給排気設備のメンテナンスによる効率の維持他、電力の見える化によるムダの発見と運用改善を中心とした活動を進めました。また、全員参加型の省エネ活動として、省エネ分科会の開催を始め、省エネパトロール、環境省エネ標語の募集、省エネ改善提案キャンペーン、eco検定(環境社会検定試験)の受験推奨などの意識向上活動を実施しました。
③ 廃棄物の削減
当連結会計年度において当社の廃棄物は355tとなり前期比12.0%増となりました。廃棄物重量の4割強を占めるゴム系廃棄物は、ゴム成形の性質上、生産量に対して一定割合で発生する性質があります。また、ゴムは一度、加硫反応させると元の材料に戻すことができません。そのため、生産量の増加は廃棄物の増加という関係になります。その前提の上に不良品などのロスによる廃棄物が上乗せされることから、これらのロスを減らす活動に取り組んでいます。バリの少ない金型設計による廃棄物削減に加え、バリの再資源化に対する活動にも取り組んでいます。
ポリシートに関して、従来、ポリシート(廃プラスチック類)はRPF燃料化されサーマルリサイクルされていますが、一部のポリシート(廃プラスチック類)はリサイクル業者へ資源として提供することにより、再生ペレットとなり、その後、ごみ箱や(玩具など、新たなプラスチック製品として再資源化(マテリアルリサイクル)されています。また、廃シリコーンゴムは有価物として分別されシリコーンオイルにリサイクルされています。
(3)リスク管理
当社グループのリスクマネジメント活動は、事業活動に関わるリスクを抽出、評価、特定し、会社の社訓、経営基本方針、中期経営計画などを踏まえて、当社事業のビジネスチャンスに経営資源を投入するための指針となる年度経営方針を取締役会決議により策定します。その活動の詳細は、「
リスクマネジメントサイクルのうちでリスク評価の段階で、サステナビリティに関するリスクの認識とその発生可能性と影響度について評価を行い、次年度の活動計画に組み入れていきます。なお、2024年度の重要なリスクのうち、サステナビリティに関するリスク及びその内容と前連結会計年度の活動内容、発生可能性と影響度の評価については、3「事業等のリスク」の各項目に表示していますのでご参照ください。
(4)指標及び目標
サステナビリティに関するリスクを踏まえ当社の活動内容と実績については、
当社グループのリスクマネジメント活動は、事業活動に関わるリスクを抽出、評価、特定し、会社の社訓、経営基本方針、中期経営計画などを踏まえて、当社事業のビジネスチャンスに経営資源を投入するための指針となる年度経営方針を取締役会決議により策定します。組織の内部・外部のリスクを低減する活動として、事業部門の活動方針や会議体のテーマとして重要なリスク低減活動を組み込み、その活動を経営者が半期に一度レビューします。具体的なサイクルは以下となります。
①各月の状況把握
工場会議、経営会議等の会議体、また主要テーマごとの委員会による内部・外部の課題リスクの状況変化の把握
②トップ診断(半期に一度)
会社方針および各部門、会議体、委員会の年度計画を内部・外部のリスクに照らして、その活動内容の進捗と変化の確認および今後の活動計画の修正
③リスクマネジメント会議(半年に一度)
各部門、会議体、委員会による内部・外部のリスクの発生頻度また発生時の影響度を抑える活動の評価と内部・外部の課題の変化を踏まえて、新たな課題の発生の有無、課題の発生頻度の変化、発生時の重要度合の変化を評価します。評価の内容は取締役会に報告しています。
リスクの評価は、今年度の事業活動や会社を取り巻く環境から新たに発生したリスクの項目を挙げ、取締役と本部長それぞれがリスクの発生する可能性と発生した場合の影響度を点数評価して集約し、その点数の積でリスクの重要度を算出します。また、発生可能性または影響度の点数を脅威度とし、重要度と脅威度の高いリスクを特に重要度の高いリスク(マテリアリティ)として選定し、リスクを回避または低減する活動につなげます。

上記の方法により、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、下記中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.重要度の高いリスク
(1)主要製品・新規受注製品の大幅な減少(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:高)
当社製品は、そのほとんどがゴム部品として顧客のもとで最終製品として組み込まれ、市場へと展開されます。この最終製品の販売動向については顧客に依存するものであり、顧客の販売戦略上、計画していた販売数量に変動が生じることがあります。また、当社独自技術を活かしてお客様に新しい付加価値を提案できる新製品・開発製品の市場供給を継続的に行うこと、また、既存製品でも新しいお客様に向けた製品開発による市場の開拓によって、持続的に事業を成長させていく活動を進めています。品質、価格、納期などの条件を顧客と決定し、受注した製品の量産を進めていますが、最終製品の販売動向や市場動向、顧客の販売戦略上の事情により、受注数量が計画よりも減少することがあり、売上高の減少と利益の減少につながる可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、特に日系自動車メーカーに採用されているASA COLOR LEDにおいて、当社採用車種の販売低迷により受注の低下傾向が続いたことから、WEBミーティングと直接訪問による密着活動を推進して受注を増やすとともに、取締役会への情報共有化を図り、営業部門から工場部門への情報展開と柔軟な生産体制の実現に取り組むことで工場の生産体制の平準化に努め、受注状況に応じた工場間のフレキシブルな生産要員体制を進めてまいりました。また、付加価値の向上による新規市場参入の機会の探索を進めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんが影響度も同じく同程度として依然として高い水準であると判断しています。
(2)新製品立ち上げ・自社開発の遅れ(社内要因 生産・技術リスク 発生可能性:高 影響度:高)
当社グループでは、当社独自の技術を活かしてお客様のニーズに合わせた新製品の開発に取り組んでいますが、独自の技術のさらなる深掘と強化、また技術の複合化によりこれまでにない付加価値を生み出す取り組みは、短期の受注活動には結びつかないものの、新規顧客開拓や既存顧客との関係強化による中期的な事業規模の拡大につながるため、経営の重要課題として一定の経営資源を投入し継続的に取り組んでいます。新製品開発の取り組みはロードマップを作成し、計画的に進めていますが、特に難易度の高いテーマの進捗の遅れや他社の技術開発の動向を踏まえた計画の見直しなどによる新製品開発の遅れは、将来の受注減による売上高の減少と継続的な事業の成長に大きく影響する可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、開発スケジュールの明確化と遅れに対する課題解決を進めてまいりました。また、失注案件についてその要因を分析し、次期開発案件の受注率とスピードアップを図るなど、影響度の低減に取り組んでまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性と影響度は同程度として依然として高い水準であると判断しています。
(3)採用募集の未達(社外要因 労働・雇用リスク 発生可能性:高 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループでは、継続的な事業の成長と働く環境の活性化に向けて、中期的な計画のもと、毎年の定期採用と臨機応変な中途採用を行っておりますが、少子化に伴う学生数の減少や募集企業の増加により、当社グループの採用募集活動にエントリーする人材の不足や、求める人材とのアンマッチなどにより、計画した採用を実施できないことがあり、持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、大学や学校との関係づくりを継続して進め、外部の人材紹介サービスを利用して幅広い層へのアプローチを増やし、発信する情報の幅を広げる活動を進めてまいりました。また、SNSによる情報発信をスタートさせ、地域や学校との接点を増やして会社と事業の魅力をアピールしていく体制をさらに強化させています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性はやや増加、影響度は増加していると判断しています。
(4)エネルギーコストの高騰(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループでは、国内4拠点、海外1拠点でゴム製品の製造を行い、それぞれの事業に適した生産環境を整えております。国内3拠点でクリーンルームを設置し、各工程においては、油圧プレス機や自動アッセンブリ機、専用の検査機などの機械設備の稼働、そして、一部の医療用ゴム製品の製造工程では水処理工程を組み込むなど、これらの稼働に使用する電気代や水道代が上昇することで製造原価が上昇する恐れがあります。
このリスクへの対応として、太陽光パネルの設置や省エネルギーにつながる改善活動を行うことで、外部から購入する電気代を減らす取り組みを進めております。また、全員参加の品質・生産性改善活動により作業効率を改善し、エネルギー当たりの生産量を増加させる取り組みも続けております。また、毎月の月例報告会で、工場ごとの電力使用量の報告と、実施した施策がどれだけ効果を発揮して年間の電力量削減に貢献するかを図解で示し、従業員の成果の見える化とモチベーション向上につなげています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することはできませんが影響度も同じく同程度であると判断しています。
(5)原材料価格の高騰・入手困難(社外要因 市場リスク 発生可能性:中 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループの製品は、ゴム原料およびその添加物を仕入れ、加工し、販売しています。こうした原材料の価格は、グローバルな市況の変化に影響を受け変動することがあり、年度計画策定時に比べて大幅に高騰した場合、売上原価の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、グローバルな物流問題などにより、特別な材料を予定期日に予定数量を入手することが困難になる可能性もあります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、コストアップによる影響を算出し、ものづくりにおける原価改善を進めると同時に、顧客に環境変化を理解いただくよう努めて、価格上昇分を販売単価に反映していただく交渉を続け、販売単価への転嫁を妥結してまいりました。また、重要な材料の確保と代替品の調査や新たな仕入先の開拓を進め、安定して原材料を入手するための取り組みを進めています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性はやや減少、影響度は横ばいであると判断しています。
(6)従業員の高齢化(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:高 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、競争力の源泉の一つが従業員であることを認識し、従業員が能力を発揮し、働きやすい職場環境を整備することで従業員満足を実現していく活動を進めていますが、従業員の高齢化に伴い、人件費の増加だけでなく法令への対応や業務上の役割の体制が整備されない場合、従業員満足度が低下し、将来の競争力の低下につながる可能性があります。
このリスクへの対応として、専門的な業務を行っている場合でも属人化しないよう複数人での対応や共有化、また次の世代への業務の引継ぎやローテーションする体制を推進してまいりました。
このリスクの発生可能性は増加、影響度はやや増加していると判断しています。
(7)人件費の上昇(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループで従業員を多く雇用している拠点は、当社と生産工場のある中国広東省東莞市にある現地法人です。国内はコロナ禍以降の景気が上向く中で、労働人口の減少や物価の上昇により賃金の上昇傾向が続いています。また、中国でも景気刺激策として最低賃金の上昇が進められているなど、人件費の上昇が利益に与える影響が高まる一方で、会社の対応が採用と雇用の維持に影響を与える可能性があります。
このリスクへの発生可能性が高まっていることから、生産性を高める改善活動やデジタル化による作業効率アップに取り組み、時間外勤務の抑制を進めています。また、採用と従業員の雇用維持およびモチベーション向上のため、毎年人事考課による基本給の賃上げを進めていきます。
(8)新市場・新事業リスクの認識不足(社内要因 企業リスク 発生可能性:高 影響度:中 )
当社グループでは、当社独自技術を活かしてお客様に新しい付加価値を提案できる新製品・開発製品の開発を継続して進めており、また、既存製品でも新しいお客様に向けた製品開発による市場の開拓を進めています。新製品・開発製品また既存製品を新しい市場に向けて提案し、その市場ならではのニーズに応えて継続して収益を上げられる事業に育てていくことが、当社グループの持続的な成長につながると考えています。新しい市場や事業を展開する際には、顧客、仕入先、競合の調査を進めることに加えて、関係する法令や知的財産の状況、市場固有の商慣習などを調査する必要があり、既存市場や既存事業にのっとった事業展開では、想定外の経済的損失や機会損失が発生する可能性があります。
このリスクの発生可能性が高まっていることから、外部機関を利用した多角的な情報収集網の構築と、リスク分析を定期的に行うなどにより、発生可能性を抑止し、発生した場合の影響度を下げる活動を進めてまいります。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は同程度、影響度は減少していると判断しています。
(9)幹部候補の育成の遅れ(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、スキル・キャリアを伸ばす人材育成計画を策定し、実施していますが、市場環境の変化や顧客要求の多様化のスピードが早まる中で、計画の実施が遅れるケースが発生します。幹部候補の育成の遅れは、経営トップや主要幹部の高齢化・退職による後継者不足、優秀な人材の流出、若手社員の成長機会の低下などにより、企業競争力の低下と中長期的な成長を阻害する可能性があります。
このリスクの発生可能性が高まっていることから、これまで実施してきている育成計画に加えて、従業員のスキル・キャリアをデータ化し、会社が期待する役割と本人の希望を互いに共有しながら、OJTだけでなく役職者研修や外部研修を取り入れて、業務を通じた経験と自身の業務以外の知識を習得して実践する機会を提供していきます。
(10)社内ルールの逸脱(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループの活動は、顧客への提案活動から設計、受注、仕入、製造、販売という事業プロセスを通じて収益を上げる活動を進めていますが、その品質や財務報告の信頼性は社内ルールの順守が前提であり、これを逸脱することで正しい事業活動を妨げ、株主をはじめとする市場関係者に正しい情報を伝えることができず、社会の一員としての企業の信頼を損ねる可能性があります。
このリスクへの対応として、品質と環境マネジメントシステムの国際規格であるISO9001とISO14001を一本化したISO統合マネジメントシステムをベースとして、全社でマネジメントシステムを尊重し、業務フローを明確にしてさらなる品質向上を目指し活動しています。内部統制システムの運用状況を監査等委員である取締役が主導してマネジメントフローをチェックし、内部監査部門が組織の活動状況を毎月確認しています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性と影響度は減少していると判断しています。
(11)顧客からの大幅コストダウン要求(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:中)
当社グループの製品は、顧客の要求仕様を踏まえて品質、価格、納期などの条件が決定し、量産していますが、最終製品の販売動向や市場動向、顧客の事情により、価格を大幅に下げるコストダウンを要求されることがあります。大幅なコストダウンは販売単価の継続的な下落が売上高の減少につながり、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、顧客からのコストダウンの要請に対し、工場での材料歩留りの向上や購入材の価格交渉など原価低減活動を行うと同時に、顧客には販売単価を維持しながら機能面をアップできるような付加価値を提案できるよう技術の進化やものづくりの効率性の向上に努めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんが影響度も同じく同程度であると判断しています。
(12)重大なクレーム(社内要因 生産・技術リスク 発生可能性:中 影響度:高)
当社グループでは、顧客に提供する製品の品質には、製品設計、工程管理、検査体制に至るまで、万全の体制を整えるべく努力しております。しかし、万一、顧客に納品した製品に不具合があった場合、返品や代納の対応による売上原価の増加だけでなく、お客様の信頼を損ない、将来の受注減による売上高の減少につながります。さらに、それが最終製品として市場に流出し、検証の結果、当社製品による不具合が認められ、製造物責任法による損害賠償責任が発生した場合、損失の計上により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、お客様の要求事項の確認と関係する社内各部門との共有を強化し、不具合発生時の速やかな情報伝達により早期に適切な対応がとれる体制を整えてきました。また製造工程のルールを守る意識付けとQCサークル活動の推進や改善提案制度による改善活動やQCパトロールによる改善により、各工程での作業環境の改善による不良原因の根絶と不良品を社外に流出させない取り組みと恒久的に不良を出さない対策を進めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は同程度であり、影響度も高い水準にあるものの同程度であると判断しています。
(13)顧客要求事項の高度化と多角化(社外要因 市場リスク 発生可能性:中 影響度:中)
当社グループは、機能性の高いゴム製品を自動車、医療・ライフサイエンス、通信、スポーツといった幅広い分野に提供しています。これらの市場はグローバルなレベルで拡大また多様化しており、市場に貢献したいと考える顧客の要求はその難易度、精度の高度化と多様化がますます広がっています。こうした顧客要求への対応の遅れは、当社の競争力を損ない、受注の減少や新規案件の受注ができないなど、業績に大きな影響を与える可能性があります。
このリスクの発生可能性が高まっていることから、進出している市場の情報収集をさらに進めると同時に、当社が提供する付加価値の満足度を把握し、さらに差別化を進めるための技術的強化を図っていきます。
(14)従業員意識の変化(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、各世代の従業員がそれぞれの職場で活躍していますが、労働や仕事、ライフスタイル、自己実現などにおいて様々な価値観を持つ従業員が働いています。時間外勤務や休日出勤、昇格・昇進や転居を伴う人事異動などに対して、柔軟に対応する制度づくりや運営が求められており、これらの対応が遅れることで、従業員のモチベーションの低下や離職につながり、中長期的な企業の成長を阻害する可能性があります。
このリスクの発生可能性が高まっていることから、Well-being向上会議を設置し、様々な部署から比較的若い人材をメンバーに登用して、人事制度や働き方に関して意見交換し、会社の経営理念に照らして柔軟に対応していくことで、働きがいのある職場づくりを進めていきます。
(15)メンタルヘルス対応(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、外部機関と契約し従業員とその家族の方がメンタルヘルスに関する相談を面談、WEBまたは電話で対応できる環境を整えています。また、管理本部内に相談窓口を設けて、気軽に日ごろの悩み事を相談できる体制を整えていますが、こうした従業員のメンタルヘルスへの対応が遅れることで、従業員の心身の健康を損ない、
Well-beingの向上を阻害し、働きがいを保てなくなることで従業員のモチベーションの低下や離職につながり、中長期的な企業の成長を阻害する可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、発生可能性がやや増加し、影響度は同程度であると判断しております。
(16)社外の革新的な技術、新製品、新製法の出現(社外要因 市場リスク 発生可能性:中 影響度:中)
当社グループでは、独自の技術を応用した製品開発と事業展開を図ることで、お客様への付加価値の提案による差別化を事業戦略の柱としておりますが、既存製品や既存事業または今後展開を検討している製品や事業に対し、同業種異業種を問わず、機能または価格等の面で決定的に顧客に選択優位性を与える革新的な技術、新製品、新製法の出現は、市場の独占や寡占状態となり当社製品や事業が排斥されることにより、将来の受注減による売上高の減少と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、WEBセミナーやWEB展示会を積極的に活用し、また外部機関と連携して技術と知財トレンドの動向について多くの情報を収集する体制を整えています。また論文などの文献情報やWEBから調査し、市場や社会のニーズから必要となる技量や技術の構築に努めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんがやや減少していると認識しており、影響度もやや減少していると判断しています。
2.脅威度の高いリスク
(1)大規模地震の発生(社外要因 環境リスク 発生可能性:低 影響度:高)
当社の国内の生産工場はすべて福島県南部に位置しており、当社グループの生産高の約9割を担っています。当社の生産工場の建屋は、震度5以下の地震に対する耐震を備えていますが、福島県南部で震度6以上の大規模地震が発生した場合、工場の生産設備の被害や従業員の被災状況によっては、継続した生産活動が損なわれる可能性があり、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、すでに策定しているBCM(事業継続マネジメント)方針に沿ってBCP(事業継続計画)を適宜見直し、被災した場合の緊急対応体制の構築と、稼働率が低下した場合でも事業を継続するための手続きを整備しています。また、従業員の被災状況を把握するために導入した安否確認システムの定期訓練を実施、システムの安定性と利用について周知を図ってまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんが横ばいと認識しており、影響度も同程度であると判断しています。
(2)工場の火災(社内要因 環境リスク 発生可能性:低 影響度:高)
当社製品はゴムのベース材料に薬品など様々な添加物を配合することで、ゴムの機能を特化した独自の付加価値を提供していますが、そのほとんどは引火性の低い材料であるものの、何らかの理由で火災が発生する可能性はゼロではありません。火災が発生した場合、従業員の被災や生産設備や環境の損害により、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、安全衛生委員会による安全パトロールによる危険箇所の特定とチェックを工場ごとに相互に行い、火災の発生を未然に防ぐ活動を進めています。また、地域の消防署の協力を得て、工場ごとに消防訓練を行い、火災の際の避難経路や手順の確認、消火活動の実施および消火器の増設など被災した場合の被害を最小限に抑える活動に取り組んでまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性はやや増加していると認識しており、影響度は同程度であると判断しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、連結売上高は工業用ゴム事業、医療衛生用ゴム事業とも販売が増加したことから連結売上高は76億3千9百万円(前年同期比6.4%増)となりました。一方、利益面においては上期までの開発製品の立上げに係る労務費・経費、生産性合理化につながる設備投資に係るコストの計上等により、連結営業利益は2百万円(前年同期比98.5%減)、連結経常利益は3千1百万円(前年同期比84.0%減)、工業用ゴム事業において、光学事業の内装照明用のASA COLOR LEDの事業環境や今後の業績等を勘案し、将来の回収可能性を精査した結果、減損処理が適当であると判断し減損損失を特別損失に計上、法人税等調整額(益)7千万円計上がありましたが、親会社株主に帰属する当期純損失は2億3千6百万円(前年同期は当期純利益1億3千3百万円)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
工業用ゴム事業
工業用ゴム事業では、自動車向け製品の受注は、当社採用車種の販売低迷により内装照明用のASA COLOR LEDの受注は減少しましたが、機能事業の精密用ゴム製品は新規受注の拡大により売上高が増加しました。また、卓球ラケット用ラバーも前連結会計年度から受注増加傾向が続き売上高は増加しました。一方、RFIDタグ用ゴム製品は、経済環境や生産調整影響により売上高が減少しました。
この結果、工業用ゴム事業の連結売上高は58億7千4百万円(前年同期比4.1%増)となりました。セグメント利益は上期までの機能性ゴム製品の開発製品の立上げに関するコスト、生産性合理化につながる設備投資に係るコストの計上等により、1億1千4百万円(前年同期比62.3%減)となりました。
医療・衛生用ゴム事業
医療・衛生用ゴム事業では、引き続き診断・治療向けの採血用・薬液混注用ゴム栓や医療用逆止弁、医療シミュレータなどの受注が増加しました。
この結果、医療・衛生用ゴム事業の連結売上高は17億6千4百万円(前年同期比15.0%増)となりました。セグメント利益は1億7千4百万円(前年同期比45.2%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産の状況)
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べて1億1千5百万円減少し、92億9千9百万円となりました。この主な減少要因は、流動資産のその他、機械装置及び運搬具、繰延税金資産が増加したものの、現金及び預金、電子記録債権が減少したものであります。
(負債の状況)
当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べて4千6百万円増加し、44億1千8百万円となりました。この主な増加要因は、電子記録債務、一年内返済予定の長期借入金、長期借入金が減少したものの、支払手形及び買掛金、短期借入金、流動負債のその他が増加したものであります。
(純資産の状況)
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べて1億6千1百万円減少し、48億8千万円となりました。この主な減少要因は、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額が増加したものの、当連結会計年度の損失計上に伴う利益剰余金が減少したものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ1億8千1百万円減少の12億5百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、4億8千2百万円の収入(前期は6億4千1百万円の収入)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純損失2億7千2百万円(前期は1億6千2百万円の利益)、仕入債務の減少額1億1千万円(前期は9百万円の減少)等があったものの、減価償却費5億1千3百万円(前期は4億3千3百万円)、棚卸資産の減少8千4百万円(前期は5千5百万円の減少)、減損損失2億8千8百万円(前期は3千8百万円)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、7億4千6百万円の支出(前期は7千1百万円の収入)となりました。
これは主に、定期預金の払戻による収入10億3千1百万円(前期は12億2千7百万円の収入)があったものの、定期預金の預入による支出8億8千7百万円(前期は10億2千5百万円の支出)、有形固定資産の取得による支出9億
2千8百万円(前期は4億3千7百万円の支出)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、3千7百万円の収入(前期は2億3千9百万円の支出)となりました。
これは主に、短期借入金の返済による支出16億円(前期は12億円の支出)、長期借入金の返済による支出7億6千6百万円(前期は8億4千7百万円の支出)、配当金の支払額9千1百万円(前期は9千万円の支払)があったものの、短期借入れによる収入21億円(前期は15億円の収入)、長期借入れによる収入4億円(前期は4億円の収入)によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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工業用ゴム事業(千円) |
5,863,733 |
6.6 |
|
医療・衛生用ゴム事業(千円) |
1,755,704 |
13.2 |
|
合計(千円) |
7,619,438 |
8.1 |
(注)金額は販売価格によっております。
b 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
工業用ゴム事業 |
5,754,177 |
1.61 |
780,631 |
△13.37 |
|
医療・衛生用ゴム事業 |
1,813,699 |
18.13 |
189,991 |
34.48 |
|
合計 |
7,567,877 |
5.13 |
970,623 |
△6.88 |
(注)金額は販売価格によっております。
c 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
工業用ゴム事業(千円) |
5,874,611 |
4.06 |
|
医療・衛生用ゴム事業(千円) |
1,764,985 |
14.95 |
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合計(千円) |
7,639,596 |
6.39 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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日亜化学工業株式会社 |
1,048,784 |
14.6 |
951,417 |
12.5 |
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アルプスアルパイン株式会社 |
686,428 |
9.6 |
943,023 |
12.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを目指し、2030年を見据えた「AR-2030VISION」を掲げています。当連結会計年度は、「AR-2030VISION」の実現に向けて2023年4月からスタートした第14次三ヵ年中期経営計画の2年目となり、「魅力を高め、新たな価値を提供する」を経営方針に、重点事業である光学事業、医療・ライフサイエンス事業、機能事業、通信事業のさらなる成長に注力しました。
当連結会計年度における事業環境は、世界的なインフレや円安による資源価格や物価上昇、米中関係の緊張継続や中国経済の減速など、先行き不透明感が残る厳しい事業環境が続きました。こうした状況下においても企業価値の向上を求めて、医療・ライフサイエンス事業では第二の柱への成長を促す商社機能を持った新たな販売子会社を設立しました。機能事業、通信事業においても大学や関係各社との連携により、ゴムの柔軟性や防塵・防水性などを生かしたデバイスを販売するなど、お客様一人ひとりに寄り添った販売活動を展開することで新たな市場を開拓しました。国内工場では将来の事業体制を見据え、内外作政策、合理化投資、新たな生産体制の構築を進め、お客様へのより良い製品・サービス提供のための施策を積極的に展開しました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
工業用ゴム事業
世界的なインフレや円安による資源価格や物価上昇、米中関係の緊張継続や中国経済の減速など、先行き不透明感が残る厳しい事業環境が続きました。当社グループは、それら課題を解決しながら第14次三ヵ年中期経営計画で掲げる重点目標を達成させるため、「魅力を高め、新たな価値を提供する」を経営方針にさらなる成長に注力しました。
自動車分野は、世界的に電気自動車の普及が進み、地域ごとにサプライチェーンの変革が起きています。お客様が求める付加価値も高まっており、機能面や価格面などで競争力のある製品開発を求められております。このような状況に対応し、事業製品の総合力を高めて継続的に質の高い製品・サービスの提供を行うための施策として、光学事業の自動車内装照明用ASA COLOR LEDの資産の減損を行い、事業の最適化を図りました。併せて、国内工場の将来の事業体制を見据え、内外作政策の見直し、合理化投資、および新たな生産体制の構築を進めました。これらの取り組みによる競争力の強化と朝日ラバーグループ各社との連携により地域に根ざした開発や安定供給体制をもって、お客様への提案力を高めてまいります。
スポーツ分野は、オリンピック後も受注増加傾向は変わらず通期で過去最高の売上を更新しました。市場の様子は活況を呈しており、さらなる拡大が見込まれております。これからも要求機能を満足する製品開発、需要にお応えできる生産体制の強化を図り、お客様に密着しながら質的成長に向けた活動を展開してまいります。
通信分野は、第14次三ヵ年中期経営計画において「基礎基盤を固める」をテーマに、新たな市場への参入を目指して新製品の開発・投入、実証実験の実施、パートナーシップの強化などを推進してまいりました。従来製品については、北米市場におけるお客様の事業状況が不透明なため受注は低水準で推移しておりますが、長年にわたり製品をご利用いただいているお客様からの安定したご評価は、新たなお客様との信頼関係構築につながっています。人手不足対策や現場改善といったニーズは高まり続けており、弊社だから解決できる付加価値のある製品を開発して市場参入拡大を目指してまいります。
医療・衛生用ゴム事業
診断・治療向けの採血用・薬液混注用ゴム栓の受注が拡大するとともに、自社開発製品である医療用逆止弁の採用も増加しました。さらに、医療手技シミュレータ分野への参入も果たし、通期で過去最高の売上を更新しました。医療現場に関わる方々との接点を増やし、市場の課題とニーズに触れて、弊社が事業オーナーとして参画できる分野を見出す活動は着実に実を結んでおります。そして新たに、35年にわたる実績を基盤に、医療分野の最前線でメーカー機能とネットワークを活かした提案・サービスの提供を強化していくため、商社機能を持つ販売子会社を設立しました。これにより、これまで以上に幅広い顧客ニーズに応えることができるようになります。第二福島工場の増築計画は、複数の取引先と複数の開発案件に関する直近までの開発スケジュールを精査したところ、要求品質に応じた建物設計が現時点で確定できないことから延期になりましたが、OEM製品の製造・販売に他社部材との仕入・組立・販売などを加えることで、さらに付加価値の高い製品を提案する活動を進めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは各事業の受注状況に基づき、生産能力を検討し設備投資を実施、また新たな事業分野への研究開発投資を積極的に実施しております。その必要資金については財政状態の良化を考慮し、主に売上代金及び金融機関からの長期借入金による調達を基本としております。金融機関からの借入金は主として固定金利で調達しております。また、資金調達の機動性確保及び資金効率の改善等を目的に、主要取引金融機関と10億円のコミットメントライン契約を締結しております。これらの契約に基づく当連結会計年度末の借入未実行残高は10億円であります。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は19億1千8百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、第14次三ヵ年中期経営方針として「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」を掲げております。研究開発活動はコア技術価値を高めて未来を支える行動を実践し、「常に社会の課題を解決するコア技術に磨き鍛えて継続的に事業価値を高め続ける源泉になる」ことを目的として、重点事業である光学事業、医療・ライフサイエンス事業、機能事業、通信事業のさらなる成長に向けて新たな価値を創造しております。
研究開発活動は、当社工場の技術グループ・事業推進部および子会社である株式会社朝日FR研究所(ASAHI FR R&D Co., Ltd.)により行われ、独自の競争力の源泉となる3つのコア技術「色と光のコントロール技術」「素材変性技術」「表面改質およびマイクロ加工技術」に、それぞれの事業分野に成長のキーワードとなる視点を加えて、ゴムが有する無限の可能性をさらに進化をさせる活動を進めてまいりました。
子会社である株式会社朝日FR研究所の研究員は4名、これは全従業員の0.8%であります。当連結会計年度におけるセグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
1.工業用ゴム事業
当連結会計年度において、光学事業、機能事業、通信事業の主要製品に対する主な研究成果並びに開発状況は次のとおりです。
(1)ASA COLOR LED
新エネルギー自動車の世界的な普及に伴い自動車インテリア照明に求められる機能性やデザインなどが変化するなか、グローバル品質に応える製造方法の確立や発光色を狭小に管理する技術開発を行い適用力の向上を図りました。また、埼玉大学と共同で進めている「色と光の感性認知支援研究」を深化させ、ASA COLOR LED EMMOを用いた室内照明並びに検査用照明器具の実証実験を開始しました。これからも、ヒューマン・セントリック・ライティング(HCL)照明市場への参入を目指してエビデンスの取得を進めてまいります。
(2)白色シリコーンインキ
主にLED照明器具用の電子基板に塗布して光を高反射する白色インキの開発を進めております。当社の白色シリコーンインキの特長である高反射性や長寿命性が認められ新規採用が拡大しました。将来を見据えた低炭素技術の加速に伴い、照明器具の省エネルギー化に寄与する製品の開発を続け、さらに用途拡大を展開してまいります。
(3)ASA COLOR LENS
シリコーン素材技術に光学設計技術を応用したASA COLOR LENSは、自動車、一般照明、産業機器などへの参入拡大が継続しております。表面実装を可能とする開発製品も専門展示会への出展など訴求活動が始まりました。今後もガラスレンズや樹脂レンズでは対応が困難な用途に向けた開発を進めてまいります。
(4)再生可能エネルギー分野製品
再生可能エネルギー分野は、脱炭素社会の実現に向けた風力発電機の設置拡大に伴い、補助事業の採択を受けながら風力発電の維持管理等の技術開発、各製品の実証実験、人材育成などを行いました。今後も産学官連携支援のもと、風力発電機の性能向上や保守・保全への貢献を目指して取組みを強化してまいります。
(5)RFIDタグ用ゴム製品
屋外の過酷な環境下で使用可能とする「やわらか保護カバーRFIDタグ」やIoTの様々なシーンでお役に立つ「やわらか保護カバーEnOcean搭載デバイス」の製品ラインナップを拡充するとともに、新たに農業分野への参入を目指して実証実験を開始するなど、それぞれの分野で関係各社と共創を進めております。今後も人口減少や少子高齢化などの社会課題に向き合い、目的に応じた製品開発を続け、さらに用途拡大を展開してまいります。
2.医療・衛生用ゴム事業
当連結会計年度において、重点事業である医療・ライフサイエンス事業の主要製品に対する主な研究成果並びに開発状況は次のとおりです。
(1)診断・治療向け医療製品
薬剤投与システムに使用されるプレフィルドシリンジガスケットの新たな市場領域への参入機会を高めるため、独自の表面改質技術による低摺動コーティング技術の開発を行いました。また、JIS規格に準拠した逆止弁(チェックバルブ)のバリエーションが増えたことで、各種透析回路における採用が拡大しております。
(2)超親水性処理技術
大学との共同研究で、新たな親水化材料の有効性を示すエビデンスを取得するなど、市場参入に向けて大きく前進しました。今後も医療機器や理化学機器への展開を目指し、着実に研究活動を進めてまいります。
(3)医療用シミュレータ
効果的な内視鏡医療の普及の実現を目指して、新たに「上部内視鏡シミュレータ」の開発を行いました。また、心臓を見る方向を立体的に示して心臓がどのように見えるかを的確に表した学習用シミュレータ 「3D心電図Ⅻ-lead」の販売を開始するなど、医療現場の安心・安全を高める活動が拡大しました。