文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、1902 (明治35) 年の創立以来、一貫して靴の企画・製造・販売に従事しております。靴を履物であると同時に文化・生活の創造の原動力のひとつととらえ、新しい価値の提案をし、提供することで事業の発展を図ってまいりました。
将来にわたって変化に対応し、業績を向上させ、従業員が活力を持って働いていくためには、企業構造の変革と従業員一人ひとりの自己変革が必要であり、その確固とした軸となる「ミッション・ビジョン・バリュー」を以下のとおり制定しております。
〈ミッション〉“「ずっといい」を創造する”
時間が経つほど大事にされ、価値が生まれるような「ずっといい」暮らしや生き方を皆さまとともに創造していくことを目指します。
〈ビジョン〉 “人生に物語を、社会に豊かさを。”
一人ひとりの良質な毎日が積み重なり、未来には新しい文化が生まれ、社会は豊かになっていきます。私たちは人生に物語を、社会に豊かさをつくっていく会社を目指します。
〈バリュー〉 ・ 一人ひとりを想像する
・ 共に歩み、共に創る
・ 長く愛される品質を
・ 枠を超え、創造的に
・ 挑戦をやり遂げる
今後も、さらにお客さまのご支持をいただけるような商品開発、店舗づくり、販売体制などあらゆる分野で総力を結集し、新たな成長の基盤を創造することによって、お客さまのご信頼にお応えしていくとともに、財務体質の強化及びキャッシュ・フロー重視の事業活動を推進し、企業価値の最大化を目指してまいります。
当社グループを取り巻く事業環境は、企業収益や雇用環境の改善により、緩やかな回復傾向となっておりますが、原材料・エネルギー価格の高騰等や消費者物価の上昇により、依然として先行きの不透明な状況が続いており、加えて2025年4月からの米国による新たな経済政策等により、当社事業への影響が懸念されております。
当社グループにおける中期経営計画 (2023年度から2025年度) 2年目の実績は、消費者のワークスタイルの変化や購買行動の多様化、猛暑等気候変動への十分な対応ができず、目標数値を大幅に下回る結果となりました。このような状況下、市場ニーズの変化に迅速に対応するため、商品開発力と販売戦略の強化が急務であり、中期経営計画3年目を迎えるにあたりその一部を見直し、抜本的な構造改革による収益性の改善とデジタルデータの利活用によるビジネスモデルの構築を重要課題に掲げ、以下の事項に取り組んでまいります。
ブランドごとのコンセプトやペルソナを明確にし、ブランド価値の向上を図ってまいります。主力である「リーガル」は、新たなタグライン「Always feel good (ずっと心地いい)」を設定し、当社の企業ミッションである“「ずっといい」を創造する”を具現化する基幹ブランドとして製品・機能・サービスを繋ぐ一貫体制により、お客さまへ新たな顧客経験や提供価値を高めてまいります。
② デジタルデータ利活用によるビジネスモデルの構築
企画・開発、製造、調達、販売までを一元管理する調達販売連携システムを基盤とし、顧客・販売データ、市場動向などのデジタルデータを高度に分析・活用することで、顧客ニーズやライフスタイルの変化をリアルタイムに把握し、迅速な商品・サービスの開発・提供を実現します。実店舗とEコマースをシームレスに連携させ、お客さま一人ひとりに最適化された購買体験を提供することで、顧客経験価値の高いビジネスモデルを構築します。更に、現行の会員システムを統合し、顧客基盤を再構築することによって、お客さまの利便性や満足度を高め、顧客生涯価値の向上を図ってまいります。
ブランドポートフォリオと商品ラインナップの最適化を推進し、商品ごとの完成度を追求することで在庫効率を改善し、収益性の向上を図ります。また、国内自社生産の強みを最大限に活かし、市場の変化に迅速に対応する「高品質・小ロット・短納期」の生産体制を確立するとともに、サプライチェーン全体の可視化と最適化、物流プロセスの効率化によりコスト削減にも取り組んでまいります。
④ サステナビリティの推進
全ての企業活動が豊かな自然環境と人々の生活の上に成り立っていることを深く認識し、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能な成長・共創を目指してまいります。品質の維持・向上を基本とし、原材料調達から生産、販売、廃棄に至るプロセスを見直し、持続可能なサプライチェーンの構築を推進します。また、3R (リデュース、リユース、リサイクル) を推進するため、製品のロングライフ化、リサイクルしやすい素材の選定、回収・リサイクルシステムの構築に取り組んでまいります。
⑤ 人的資本経営とダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
多様な人材が成長・活躍する自律的な組織への変革を目指し、「創造・挑戦・多様性」を重視した人事制度への転換と「組織の持続的成長」を担う人材の育成に取り組み、中長期的な経営戦略に不可欠な人材の確保と人的資本への積極的な投資を行ってまいります。個々の多様性を尊重し、従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境を整えるため、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、柔軟な働き方支援、研修制度の充実を図り誰もが貢献できる企業環境を創造してまいります。
当社グループは全体に対する経営指標として、売上高対営業利益率 2.0%、投下資本利益率 1.9%を目標として取り組んでおります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは“「ずっといい」を創造する” というミッションのもと、様々な事業活動を推進しております。持続可能な社会実現への貢献と中長期的な企業価値の向上が重要な経営課題であるとの認識から「サステナビリティ方針」を制定し、重要課題 (マテリアリティ) に対する取り組みを管理、推進するために代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」、及び各事業本部から選出された社員が参加する「サステナビリティ推進会議」を設置しております。
① サステナビリティ方針
「当社および当社グループ各社は、全ての企業活動が、豊かな自然の環境と人々の生活の上に成り立っていることを認識し、ステークホルダーと共に成長・共創することにより、豊かで持続可能な社会の実現を目指します」
② 推進体制
(a) 取締役会
取締役会は、サステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。
取締役会は、サステナビリティ委員会で協議・審議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティ全般に関するリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての監督を行います。
(b) サステナビリティ委員会
当社グループ全体のサステナビリティ方針に基づき、重要課題 (マテリアリティ) の特定、推進方針、進捗管理、情報開示に関する事項などの審議を行います。当社グループの事業内容、事業環境の変化に応じて、重要課題等は適宜見直しを行います。当委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、常勤取締役で構成され、社外取締役、監査役はオブザーバーとして参加します。
(c) サステナビリティ推進会議
取締役・執行役員が重要課題 (マテリアリティ) ごとの部会を担当し、各事業本部から選出された社員が活動の中心となり、実務レベルのサステナビリティ推進について自律的に課題解決に取り組みます。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
当社グループは“「創造・挑戦・多様性」を重視した人事制度への転換と「組織の持続的成長」を担う人材の育成”を人事戦略として、多様な人材が成長・活躍する、グループの総合力を生かした自律的な組織を目指し、以下の3つをテーマとして様々な取り組みを行っております。
① 労働力の確保・定着
採用においては新卒採用強化とともに、中途採用にも注力することで採用活動を通年化し、更にその定着化への取り組みも強化し長期雇用を実現する制度設計を構築することで、従業員が長く活躍できる環境づくりも行ってまいります。
また、多様性を取り入れて組織を活性化するため、グループ人材のキャリアマップを柔軟にし、グループ内の人材交流を活発にして、従業員が活躍できる場の拡大に努めています。
② 多様な社員が活躍できる環境整備
多様な人材が活躍するための施策として、テレワーク制度の拡充、時間単位有休休暇制度、副業制度を導入し、働く場所や時間の柔軟性確保など、多様な働き方に取り組んでいます。
就業時間管理の徹底、効率化の推進等により長時間労働の削減に努めております。育児・介護の両立支援については、短時間正社員制度、時差出勤、育児休業中の従業員への社内情報の定期配信によるフォロー、短時間勤務制度の拡充、育児・介護、配偶者の転勤等やむを得ない事情で退職された社員の復帰を認めるカムバック制度の導入等、長く働き続けられる社内環境整備に積極的に取り組んでおります。
③ 社員の成長を促進する育成基盤構築
就労環境の変化により、従業員一人ひとりが従来以上に自身のキャリアや成長を自律的に捉え、自らの意思で選択し役割を果たしていくことが求められます。会社は個々のキャリア開発に対し公平性と透明性をもって支援し、組織の活性化に努めると共に、自ら成長する意欲と学び合う風土の醸成を通じて持続的な成長につなげていきます。
多様な人材が自律的にキャリアを築き成長するための支援として、「キャリア研修」の実施やリスキリングを促す「資格取得奨励制度」、「e-Learningシステム」を導人しています。
また、ビジネスパーソンとして持つべきスキル・マインドの習得、IT・データリテラシーの向上、製造の現場から店舗までの業務理解の促進、提供サービス価値の向上およびお客様対応力強化のための研修プログラムの整備・実施等様々な取り組みを行い、個人と組織の成長を促しています。
更に、優秀な人材の早期昇格・管理職登用、または社内プロジェクトへの参画機会の提供や研修の実施等により、将来にわたって活躍できる人材のマネジメント力や全体視点の醸成を行っています。
サステナビリティ推進会議を設置し、実務レベルでのサステナビリティ推進について自律的に取り組みます。「循環型社会の実現」、「持続可能なサプライチェーンの構築」、「気候変動への対応」、「一人ひとりが活躍できる環境整備と人材育成」、「地域社会への貢献」の5つの重要課題 (マテリアリティ) からなる部会を取締役・執行役員が担当し、各事業本部から選出された社員が活動の中心となり、実務レベルのサステナビリティ推進について自律的に問題解決に取り組みます。
取締役会で審議のうえ決議されたマテリアリティに、サステナビリティ委員会がリスク管理を行い、取締役会へ報告します。
当社グループでは、当社および当社の主要な連結子会社であります株式会社リーガル販売ならびに株式会社リーガルリテールにおいて、女性管理職比率を2026年3月期までに20%に引き上げること及び男性の育児休業取得率 100%を目標として掲げております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は商品及び原材料の一定割合を輸入調達しており、為替相場変動による価格変動リスクを有しております。当社では、為替相場変動リスクを軽減するため、適切なタイミングで為替レートをもとに原価を見積り、また、為替予約取引を行っておりますが、為替相場変動による影響を全て回避するものではなく、著しい為替の変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの使用する原材料には、皮革をはじめ、その価格が変動するものがあります。それら原材料の価格が高騰することにより、調達及び製造コストが上昇し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企画から販売までを一貫して行うため、各分野の専門スキルを持った人材の確保が重要な課題となっています。各職種における人材の不足は製靴技術の継承、顧客満足度の低下、販売機会の喪失等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、これらの人材不足に対応するため、採用活動の強化、生産工程の自動化、人材育成プログラムの拡充、人事制度の改善など、様々な対策を講じています。
当社グループの取扱商品は、ファッショントレンドの変化や消費者の短期的な嗜好の変化により、商品に対する需要が低下した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの取扱商品は、気候変動の影響を受けやすい商品であるため、暖冬・冷夏等の天候不順や震災・風水害等の大規模な自然災害の発生により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、直営店舗等の顧客に関する個人情報を保管・管理しております。かかる個人情報の取り扱いについては、個人情報管理規程に基づくルールの運用を徹底しておりますが、何らかの事情により個人情報が流出した場合には、社会的信用や損害賠償責任の問題等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
リモートワークやクラウド利用拡大に伴い、企業の重要情報を狙ったサイバー攻撃やシステムへの不正アクセスなどが世界的に増加しており、攻撃手口も巧妙化してきています。当社グループは、システムインフラの整備・高度化や情報システムの安全稼働と堅牢性の高いセキュリティの実現等を目的としてハード・ソフト両面で取り組んでおりますが、万一、サイバー攻撃や不正アクセスを受けた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル戦争、中台関係の緊張等、物流の混乱やエネルギー価格高騰に起因して、当社グループの製造販売に係る資材・革靴等の価格の高騰やその調達の遅れなどが生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの金融機関からのコミットメントライン契約には財務制限条項が付されており、財政状況の著しい悪化によりその財務制限条項に抵触し、当該契約の解約および当該借入金の返還請求を受け期限の利益を失った場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。
また、消費環境の悪化及び競争の激化などによって当社グループの信用力の低下等の要因により、当社が望む条件で適時に資金調達できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、対応策として、十分な手元流動性の確保に努めております。今後も金利水準や市場環境等を踏まえた資金調達を行うとともに、取引先金融機関との良好な関係の維持を図ってまいります。
当社グループは、多様な商品を国内外の多数のサプライヤーと連携して提供しています。
これらのサプライヤーは、原材料の調達、部材加工、製造、物流など当社のサプライチェーン全体は重要なパートナーに支えられています。
サプライチェーンが多岐にわたるため、サプライヤーの経営状況、自然災害・感染症、地政学リスク、人権・労働問題、品質管理など様々なリスクが存在し、発生した場合には当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ (当社、連結子会社及び持分法適用会社) の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下、「経営成績等」という。) の状況の概要は次のとおりであります。
a.経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用環境が改善し、景気は緩やかな回復傾向にあります。一方で、原材料・エネルギー価格の高騰等や円安による消費者物価の上昇は続いており、更に、中国経済の先行き懸念、米国による新たな経済政策等今後の金融市場や経済への影響懸念も存在するなど、先行きは不透明な状況が続いております。
靴業界におきましても、円安に伴うインバウンド需要は伸長したものの、消費者物価上昇に伴う生活防衛意識の高まりによる節約志向の継続、原材料価格、商品仕入原価の高騰等により厳しい経営環境が続いております。
このような環境のなか、当社グループは中期経営計画(2023年度から2025年度)の2年目にあたり、「顧客経験価値の創造」を全社戦略のテーマとして掲げ、「顧客戦略」、「ブランド戦略」、「リアル・EC店舗戦略」、「新規事業戦略」の4つの成長戦略を軸に取り組んでまいりました。
「顧客戦略」につきましては、DXの取組みの一環として、データ統合基盤の整備を進め、より利便性の高いサービスや販促提案により、オンラインショップを含めた小売店舗の会員数増加を図っております。当第4四半期では、顧客層の拡大・離反防止やLTV(ライフタイムバリュー)の向上を目的とし、新規アプリ・メルマガ会員獲得施策を積極的に実施するとともに、将来の顧客層へのコミュニケーション強化を目的とした「YouTubeチャンネル」の配信や既存会員のファンの皆さまを対象にした「ファンミーティング」を適宜実施するなど様々な情報提供・共有を行っております。
当連結会計年度末における2年以内に購買履歴のある会員数は96.2万人(2024年3月末比9.5万人増)、うちメルマガ登録会員数は27.2万人(2024年3月末比4.2万人増)となりました。
「ブランド戦略」につきましては、主力である「リーガル」は、本年2月に新たなタグライン「Always feel good」を設定し、23年ぶりにブランドロゴを刷新、当社の企業ミッションである“「ずっといい」を創造する”を具現化する基幹ブランドとして製品・機能・サービスを繋ぐ一貫体制により、お客さまへの提供価値を高めてまいります。当第4四半期では、春の需要期に合わせた会員向けプレゼントキャンペーンやパーソナル需要に対応したオーダーフェア等を随時開催いたしました。
「リアル・EC店舗戦略」につきましては、EC店舗の意義・役割は、顧客接点の拡大・拡張・多様化などのマーケットを広げることにあり、リアル店舗との融合を主眼としております。リアル店舗と自社ECサイトが連動した販促提案やコーディネート・商品提案を継続的に実施、更に、当社ブランドの認知度向上と販売チャネルおよび顧客層の拡大と増加を目的とし、外部ECモールへの取組みを強化しております。当連結会計年度の外部EC全体の売上高は、前年同期比で61.2%の増収となりました。
「新規事業戦略」につきましては、デジタルを基盤とした事業再編で最適な事業バランスを実現し、新たな事業創出を目指しております。現在、異業種との共創・コラボレーション、ニッチ市場への参入やサステナビリティの一環として靴の製造過程で生じる残革を利用したルームシューズや革小物ブランド「CYQUEL」の販売を開始いたしました。
以上の取組みの結果、当連結会計年度の業績は、売上面につきましては、自社・外部ECを含めたネット通販は伸長したものの、ワークスタイルや購買行動の多様化、温暖化による急激な気候変動への十分な対応ができず、季節商材やビジネスシューズが苦戦したこともあり、売上高は 23,558百万円(前年同期比0.7%減)となりました。
利益面につきましては、在庫効率改善施策等の効果もあり、売上総利益額は前年同期比で 1.6%の増益となりましたが、靴小売事業における業務委託料を含めた人件費や販売促進のため広告宣伝を強化したことによる販売費及び一般管理費の増加により、営業利益、経常利益は前年実績を下回りました。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益の計上により前年実績を上回りました。
以上の結果、営業利益は 397百万円 (前年同期比23.4%減) 、経常利益は 497百万円 (前年同期比7.3%減) 、親会社株主に帰属する当期純利益は 700百万円 (前年同期比 63.8%増) の計上となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
靴小売事業
靴小売事業では、WEBコンテンツを介した店頭販売員によるコーディネート・商品提案や需要期の販促提案、SNSを活用したお客さまとの情報共有等、OMOの推進による顧客接点の拡大と顧客経験価値の向上に注力いたしました。
国内直営小売店の売上高は、主力の「リーガルシューズ店」では、婦人靴につきましては急激な気候変動によりサンダルやブーツ等季節商材に過不足が生じ苦戦いたしましたが、インバウンド需要の増加や付加価値の高い防水性・通気性などの機能を備えたカジュアル志向のスニーカーや履き心地を重視した「リーガルウォーカー」に加え、全天候型のソールを搭載したビジネスシューズ等が堅調に推移したことから、売上高は前年同期比で3.5%の増収となりました。
また、ECサイトである「リーガルオンラインショップ」につきましては、リアル店舗と連動した販促施策やWEBコンテンツを介した店頭販売員によるスタッフスタイリング経由の受注、WEB注文によるリアル店舗受取りサービス等シームレスな顧客サービスに注力いたしました。スタッフスタイリング経由の受注額構成比は44.7%を占めており、特に婦人靴の「リーガル」、「リーガルウォーカー」や「ケンフォード」は好調に推移し、売上高は前年同期比で19.2%の増収となりました。
しかしながら「アウトレット店」につきましては、気候変動に対応した季節商材等の品揃えが十分にできず、カジュアル化傾向もあり紳士・婦人靴ともに「リーガルウォーカー」やカジュアルシューズは堅調に推移したものの、主力のビジネスシューズが全般的に苦戦し、売上高は前年同期比で2.8%の減収となりました。靴小売事業全体の業績につきましては、売上高、売上総利益額につきましては前年並みに推移したものの、営業利益につきましては、店頭販売に係る人件費等の増加により大幅に下回りました。
当連結会計年度の店舗展開につきましては、5店舗を出店し、不採算店舗3店舗を閉店いたしました。(直営小売店の店舗数119店舗、前連結会計年度末比2店舗増)
この結果、当連結会計年度の売上高は 14,573百万円 (前年同期比 0.8%増) 、営業利益は 141百万円 (前年同期比65.2%減) となりました。
靴卸売事業
靴卸売事業では、既存取引先の減少・売場縮小等が進むなか、収益性の改善に向けた取引先への販売方法の見直しや新たな顧客創造としての新規取引先開拓に取り組んでまいりました。
主力の百貨店業態につきましては、防水・透湿性に優れた付加価値の高いカジュアル志向のスニーカーや「リーガルウォーカー」は堅調に推移したものの、ビジネスシューズ全般は苦戦いたしました。また、地方のショッピングモールや靴専門店、大型チェーン店等につきましても消費者物価上昇の影響による低価格志向が見られ、値ごろ感のある紳士靴の「ケンフォード」や婦人靴の「アールドット」、「ビューフィット」は堅調に推移しているものの、全般的に苦戦が続いております。一方で、外部ECモールにつきましては、「リーガルウォーカー」や「リーガルカジュアル」、「ケンフォード」を中心に好調に推移しており、加えて、革靴の新たな価値観を構築することを目的とした「The Kenford Fineshoes」は新規のセレクトショップや公式オンラインストアにて着実に売上を伸ばしております。靴卸売事業全体の業績につきましては、既存取引先の売上減少を補うには至らず、売上高は前年実績を下回りましたが、利益面では在庫効率改善施策の効果から、流通値引額が減少するなど回復傾向にあります。
この結果、当連結会計年度の売上高は 8,968百万円 (前年同期比 3.2%減) 、営業利益は 255百万円 (前年同期比 187.6%増) となりました。
その他
報告セグメントに含まれない不動産賃貸料の収入など、その他事業の当連結会計年度の売上高は 150百万円 (前年同期比 8.1%増)、 営業利益は12百万円 (前年同期比 87.3%増) となりました。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ 1,538百万円減少し、26,258百万円となりました。
このうち、流動資産の残高は14,958百万円と、前連結会計年度末に比べ 1,520百万円減少しております。
これは、商品及び製品が 596百万円増加したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が 451百万円、借入金の返済等により現金及び預金が 1,427百万円減少したことなどが主な要因であります。
固定資産の残高は11,300百万円と、前連結会計年度末に比べ17百万円減少しております。
これは、ソフトウェア仮勘定が29百万円減少したことなどが主な要因であります。
当連結会計年度末における負債の部の合計は、前連結会計年度末に比べ 1,833百万円減少し、13,512百万円となりました。
このうち、流動負債の残高は 9,329百万円と、前連結会計年度末に比べ 3,519百万円減少しております。
これは、2017年3月及び2021年3月に締結したシンジケートローンの返済などにより、短期借入金が 3,128百万円減少したことなどが主な要因であります。
固定負債の残高は 4,182百万円と、前連結会計年度末に比べ 1,685百万円増加しております。
これは、退職給付に係る負債が 148百万円減少したものの、2024年3月に締結したシンジケートローンの契約に基づき、タームローン契約による 2,000百万円の借入を実行したことなどにより、長期借入金が 1,892百万円増加したことなどが主な要因であります。
当連結会計年度末における純資産の部の合計は、12,746百万円と、前連結会計年度末に比べ 295百万円増加しております。
これは、配当金の支払いが 217百万円あったものの、親会社株主に帰属する当期純利益 700百万円を計上したことなどにより、利益剰余金が 483百万円増加したことなどが主な要因であります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は 3,729百万円と前連結会計年度末と比べ 1,411百万円の支出 (前連結会計年度は 1,456百万円の支出) となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、226百万円の収入 (前連結会計年度は 1,049百万円の支出) となりました。
主な要因としては、税金等調整前当期純利益 793百万円、減価償却費 416百万円などの増加要因と、投資有価証券売却益 291百万円、棚卸資産の増加 577百万円などの減少要因によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、183百万円の収入 (前連結会計年度は 296百万円の支出) となりました。
主な要因としては、投資有価証券の売却による収入 370百万円などの増加要因と、有形固定資産の取得による支出 175百万円などの減少要因によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,745百万円の支出 (前連結会計年度は 186百万円の支出) となりました。
主な要因としては、長期借入による収入 2,750百万円などの増加要因と、長期借入金の返済による支出 4,246百万円などの減少要因によるものであります。
当社グループでは、生産実績及び商品仕入実績については、セグメント別に把握することが困難であるため、扱い品目の合計額を記載しております。
(注)1.金額は、卸売価格によっております。
2.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度まで当社の連結子会社でありました蘇州麗格皮革制品有限公司が当連結会計年度から持分法適用の非連結子会社となったことによるものであります。
(注) 金額は、仕入金額によっております。
当社グループは、見込生産を主としており、受注高及び受注残高に重要性がないため、記載しておりません。
(注) 「その他」の販売高は、セグメント間の内部売上高又は振替高を除いております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の売上高は 23,558百万円 (前年同期比 0.7%減) を計上しております。
当期におきましては、自社・外部ECを含めたネット通販は伸長したものの、ワークスタイルや購買行動の多様化、温暖化による急激な気候変動への十分な対応ができず、季節商材やビジネスシューズが苦戦したこともあり、売上高は前年同期に比べ減少いたしました。また、消費者物価上昇に伴う生活防衛意識の高まりによる節約志向の継続、原材料価格、商品仕入原価の高騰等により厳しい経営環境が続いていると認識しております。
利益面につきましては、在庫効率改善施策等の効果もあり、売上総利益額は前年同期比で 1.6%の増益となりましたが、靴小売事業における業務委託料を含めた人件費や販売促進のため広告宣伝を強化したことによる販売費及び一般管理費の増加により、当連結会計年度の営業利益は 397百万円 (前年同期比 23.4%減) 、経常利益は 497百万円 (前年同期比 7.3%減) を計上しております。
当社グループは、中長期にわたる持続的な成長と安定的な収益基盤の実現を目指し、2023年度から3ヵ年の中期経営計画と新たにミッション・ビジョン・バリューを策定し、抜本的な構造改革による収益性の改善とデジタルデータの利活用によるビジネスモデルの構築に取り組んでまいりました。
しかしながら、2026年3月期も引き続き顧客動向の回復は見込めず、厳しい状況と判断したため、中期経営計画の戦略および数値目標について一部見直しを行い、現状を踏まえ、2025年度の目標値を売上高24,300百万円、営業利益率 2.0% ROIC 1.9%としております。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
靴小売事業
靴小売事業におきましては、付加価値の高い防水性・通気性などの機能を備えたカジュアル志向のスニーカーや、全天候型のソールを搭載したビジネスシューズ等が堅調に推移いたしました。また、ECサイトにおいて、リアル店舗と連動した販促施策やWEBコンテンツを介した店頭販売員によるスタッフスタイリング経由の受注、WEB注文によるリアル店舗受取りサービス等シームレスな顧客サービスに注力したことなどにより、ネット通販は伸長いたしました。しかしながら、主力の「リーガルシューズ店」や「アウトレット店」において、気候変動に対応した季節商材等の品揃えが十分にできず、主力のビジネスシューズも全般的に苦戦したことなどにより、売上高は 14,573百万円 (前年同期比 0.8%増)と微増となりました。さらに、店頭販売に係る人件費等の増加により、営業利益は 141百万円 (前年同期比65.2%減) となりました。
今後も引き続き、お客さまのニーズやライフスタイルの変化に適切かつ迅速に対応した商品・サービス等を提供することで、実店舗とEコマースのどちらでもお客さまとの価値共創やお買い物ができる環境を整備し、顧客経験価値の高いビジネスモデルの構築をを目指します。
靴卸売事業
靴卸売事業につきましては、外部ECモールが好調に推移したものの、既存取引先の減少・売場縮小等や、地方のショッピングモール、靴専門店、大型チェーン店等において消費者物価上昇の影響による低価格志向などにより、売上高は 8,968百万円 (前年同期比 3.2%減)となりました。
しかしながら、収益性の改善に向けた取引先への販売方法の見直しによる流通値引額の減少や新たな顧客創造としての新規取引先開拓に取り組んだことにより、営業利益は 255百万円 (前年同期比 187.6%増) となりました。
今後も引き続き、百貨店業態など既存取引先における新たな商流の検討や同業他社、異業種との協業の可能性を検討するなど、新たな顧客創造としての新規取引先開拓に注力してまいります。
前連結会計年度末に比べ、現金及び預金が 1,427百万円減少し、商品及び製品が 596百万円増加しております。
現金及び預金は、借入金の返済や仕入債務の支払いなどにより減少しておりますが、経営の安定化を図るべく手元資金を厚めに維持し手元流動性は十分と認識しております。
商品及び製品は、取扱いブランド、展開アイテムの適正化及び在庫効率改善施策等を継続しておりますが、商品ごとの完成度を高めるとともに、更なる在庫効率の改善に向けた取り組みが必要と認識しております。
前連結会計年度末に比べ、有形固定資産が44百万円減少、無形固定資産が 133百万円減少し、投資その他の資産が 160百万円増加しております。
有形固定資産の減少は、閉店及び改装した直営店舗の固定資産除却や、直営店舗の減損などによるものであります。
無形固定資産の減少は、ソフトウェアなどの減価償却などによるものであります。
投資その他の資産の増加は、連結の範囲から除外した子会社への出資金などによるものであります。
今後も適切な投資への取り組みが必要と認識しております。
前連結会計年度末に比べ、流動負債が 3,519百万円減少し、固定負債が 1,685百万円増加しております。
流動負債の減少は、短期借入金の返済などによるものであります。
固定負債の増加は、2024年3月に契約したシンジケートローン契約によるタームローン契約による長期借入の実行などによるものであります。
資金調達に関しましては、今後も金利水準や市場環境等を踏まえた資金調達を行うとともに、取引先金融機関との良好な関係維持を図り手元流動性の確保が必要と認識しております。
純資産は、取締役会決議による自己株式の取得があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加などにより、12,746百万円となり、前連結会計年度末に比べ 295百万円増加しております。また、自己資本比率も48.5%と前連結会計年度末に比べ 4.0ポイント増加しており、経営基盤の安定性は引き続き確保しているものと認識しております。
当連結会計年度における借入金及びリース債務等を含む有利子負債残高は、9,299百万円 (前年同期は10,591百万円) となっております。また、当連結会計年度における現金同等物の残高は 3,729百万円 (前年同期は 5,140百万円) となっております。
当連結会計年度につきましては、長期借入金の返済により、財務活動によるキャッシュ・フローの支出が大幅に増加しており、現金及び現金同等物は減少しておりますが、手元流動性は十分と認識しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載しております。
当社は、金融機関との間でシンジケートローン契約を締結しており、その内容は次のとおりであります。
(注) シンジケートローン契約については、財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合は、期限の利益を喪失する可能性があります。財務制限条項の内容については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 [注記事項] (追加情報) 」をご参照ください。
当連結会計年度の研究開発活動は、提出会社の製造部において、靴関連技術及び材料等の研究をする一方、新製品を円滑に立ち上げ、市場における不具合を発生させないため、また量産品が安定した品質を保つために連結子会社である株式会社日本靴科学研究所に委託し、靴及びその材料の研究開発を行っております。
当連結会計年度は革の試験 201件、底材の物性試験 136件、加工部品の剥離試験88件、布等の試験69件、底付け強度試験58件及びその他の試験を71件、合計 623件の試験を委託して実施、評価いたしました。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
なお、当社グループでは、研究開発活動については、セグメント別に把握することが困難であるため、セグメントごとの記載をしておりません。