当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後の我が国経済の見通しは、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり緩やかな回復が続くことが期待されます。一方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっているほか、サプライチェーンの制約懸念(いわゆる2024年問題)、物価上昇圧力の長期化による実質所得の低下が消費マインドを抑制する懸念、人手不足の深刻化など先行きは不透明な状況にあります。このような環境下において当社グループは、中期経営計画で策定した(1)成長と健全性の両立、(2)収益基盤の改革、(3)人材育成の推進、の3つの基本方針に取組み、財務体質の改善、健康・医療関連分野の深耕、R&Dの一層の充実化、ワークライフバランスの充実に向けた職場環境整備などに注力してまいります。
① 各事業における主な課題
・コラーゲン・ケーシング事業
国内外市場ともに拡販に取組んでおりますが、特に苦戦している北米での取引拡大に注力してまいります。また、引き続き一層の製造工程の見直し、改良、改善を実施し、製造コストの低減に努め、収益力の安定確保と競争力の向上に取組んでまいります。
・ゼラチン関連事業
段階的に実施した価格改定により収益は改善できたものの、その後の円安の進行と長期化に伴う仕入価格の上昇が収益を浸食しはじめていることから、コスト削減に今後も継続的に取組んでまいります。また、供給量増加に向けた海外協力工場との提携強化に取組むとともに、差別化を図るための機能性やハラル用途等の特定の素材開発などにより、顧客ニーズに対応した生産体制を構築してまいります。
・化粧品関連事業
通信販売市場の拡大基調は変わらないものの化粧品等の通販市場は消費者の実店舗回帰により鈍化することが懸念されます。特徴のあるコンセプトや商品の販売に注力し新規顧客の獲得を目指してまいります。健康食品については、昨今発生した機能性表示食品による健康被害問題に起因する消費マインドの低下が懸念されます。安心・安全な商品提供に努めるとともに、一層丁寧な顧客対応を心がけて売上維持に取組んでまいります。
・皮革関連事業
車輌部門は、原料価格の高騰や自動車メーカーの経営戦略見直しなど先行きは不透明な状況ではありますが、塗膜原材料の見直しや新しい加工技術の確立などに注力し、受注の回復と収益の改善を図ってまいります。靴・袋物部門は、コロナ禍が明けて紳士靴・婦人靴ともに売上は改善しているものの、革靴市場は減少傾向にあります。当社グループとしては、業態間口の広さを活かして様々な角度から新規顧客の開拓に取組むとともに現商流の維持に努めてまいります。
・賃貸・不動産事業
東京都足立区の土地賃貸事業「ポンテグランデTOKYO」は順調に推移しております。大阪市浪速区の土地賃貸事業「なんばパークス サウス」は2023年7月にグランドオープンし、大阪地区の再開発事業は完了いたしました。引き続き、両地区の認知度向上を図り、資産価値の向上と事業収益の最大化に取組んでまいります。
・食品その他事業
有機穀物の貿易部門は、海外サプライヤーとの関係強化に取組み、安定供給に努めてまいります。イタリア食材部門は、外食産業がコロナ禍前の水準に回復したものの、物価上昇や長期化する円安に対応するため、引き続き販売価格の見直しを進めてまいります。バイオ関連部門は、今後も持続的な伸長が見込まれる再生医療分野に引き続き注力してまいります。
② サステナビリティへの取組み
当社グループは、社会的責任を果たすことが企業継続の基礎であると認識し、法令・諸規程等の遵守に努め、公正かつ適切な経営の実現に取組んでおります。
当社サステナビリティ委員会は、SDGsをはじめとする社会課題に対応する組織として2021年11月に設立し、重要課題の選定、各種方針類の整備、各事業の取組みや課題の棚卸などの体制整備を行ってまいりました。今後も定期的に活動し、当社におけるサステナブルな取組みを推し進めるとともに、コンプライアンスの徹底や、コーポレートガバナンス・コードに基づく経営体制の強化、地球温暖化防止への取組み、人権への配慮や多様性の確保といった活動を通じて、ステークホルダーの皆様からの信頼と共感を得られるよう努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、1907年に創業し、食肉の副産物である皮革に始まり、皮革産業の副産物であるゼラチン、コラーゲンの産業化など、事業そのものが副産物に価値を与える循環型社会実現の先駆けとして事業を進めてまいりました。そのため、当社グループにおきまして、持続可能な社会の実現に向けての取組みは企業思想ならびに従業員意識の根源をなすものとなっております。そして、高品質なものづくりで社会に貢献するという創業の思想を実現すべく、事業活動の一層の奮励はもとより、各事業の日々の業務の中でより良い環境や社会実現の取組みを進めてまいりました。
一方、昨今の企業を取り巻く環境は一層不透明さを増しており、そのなかでもこの持続可能な社会の実現に向けての取組みは、企業の社会的責任であるのみならず、自然由来の原料に依存しております当社グループにおきましても、事業を継続する上での重要な課題であると認識しております。
そのため当社グループにおきましては、各事業部門における様々なSDGsへの取組みをより実効的なものにすべく、取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を2021年11月に事業部門の横断的組織として創設しております。サステナビリティ委員会では、当社グループの各事業部門が独自に実施してきたSDGsへの取組みを確認ならび検討・検証するとともに、当社グループのサステナビリティへの取組みにおきまして結集を図ってまいります。サステナビリティ委員会を中心に全社的な統一活動に昇華することにより、社会・環境に資する取組みを推し進めるとともに、コンプライアンスの徹底、コーポレートガバナンス・コードに基づく経営体制の強化、地球温暖化防止への取組み、人権への配慮や多様性の確保といった活動を推進してまいります。
そして、当社グループにおけるサステナビリティ基本方針を作成し、2022年8月に取締役会にて承認しております。このニッピサステナビリティ基本方針は、当社の精神である「経営理念」と「その実現のために遵守すべき基本方針」及び個々の従業員の指針である「私たちの行動規準」を基礎とし、当社グループの持続的な成長とともに、持続可能な社会の実現への貢献を目的としております。
(経営理念)
当社グループは、企業価値の向上に継続的に取組み、社会的貢献と企業の利益創出の同時実現を通じて、社会の信頼を確保することを経営理念とします。
(経営理念の実現のために遵守すべき基本方針)
1.当社グループは、長年培った技術開発力をベースに、「お客様ニーズ」に合致する高品質の製品を提供し、「顧客満足度」を高めることで、中長期的成長の持続を目指します。
2.当社グループは、社会的責任を果たすことが企業継続の基礎と認識し、法令・諸規定等の遵守に努め、公正かつ適切な経営の実現を図ります。
3.当社グループは、意思決定プロセスの明確化と意思決定の迅速化に努めます。
(私たちの行動規準)
1.事業活動に関して
2.利害関係者との公正で透明な関係の維持
3.公正で自由な競争に関して
4.環境保全に関して
5.社会との共生関係
6.雇用関係に関して
7.内部情報管理に関して
8.知的財産に関して
9.定款・社内規程遵守に関して
■ニッピサステナビリティ基本方針と重要課題(マテリアリティ)
当社グループでは、サステナビリティ活動の方向性を明確化し全社をあげてこの取組みをさらに強化するため、環境への配慮(E)、社会との良好な関係(S)、企業統治(G)からなるニッピサステナビリティ基本方針と当社グループが持続可能な企業活動を進めるための5つの重要課題(マテリアリティ)を定めております。重要課題(マテリアリティ)はサステナビリティ委員会が中心となり、これら重要課題に関連する各事業部門の課題に取組むとともに、各事業部門における優先課題を深耕し実行してまいります。
(ニッピサステナビリティ基本方針)
1.環境への配慮(E:Environment)
・将来世代への住み良い環境を持続させるため、法令遵守による社会的責任の遂行を基本として、より一層の地球環境保護に貢献します。
・環境に配慮した製品の提供を通じて循環型社会の一端を担うとともに、生産活動における大気・水質・土壌等の環境汚染の予防に努めます。
・生産技術の向上を追求し、エネルギー、水、原料などの資源の効率的な利用に努めます。
2.社会との良好な関係(S:Society)
・人権の尊重とあらゆる差別的取扱いを禁止し、強制労働・児童労働などの人権侵害の防止に努めます。
・国や地域社会の文化や習慣を尊重し、社会との良好な関係の維持に努めます。
・様々なステークホルダーとの適切なコミュニケーション、健康と安全の確保に努めます。
・適時適切な情報開示を行います。
3.ガバナンス(G:Governance)
・取締役会を中心とした株主に対する受託者責任・説明責任を果たします。
・経営目標の実現に向けて、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要課題と位置付け、迅速かつ的確な意思決定及び監督機能の強化に努めます。
・中長期的な企業価値の向上と経営の健全性維持のためコーポレート・ガバナンスを追求し、その充実に継続的に取組みます。
(重要課題(マテリアリティ))
1.ものづくり
サプライチェーンマネジメントの最適化を図り、創業以来継続して取組んできた「良いものをつくる」ことにより社会へ貢献してまいります。
2.研究・開発
事業の持続と発展に寄与してきた研究開発力の維持と強化に取組みます。
3.人材・職場環境
企業文化の醸成に取組み、人材の活力や能力を発揮するための職場環境を整備することに努めます。
4.地域・環境
都市開発事業や地域環境活動を通じて環境負荷軽減に取組み、社会の信頼を得られるように努めます。
5.ガバナンス
コーポレートガバナンス・コードに基づいた経営体制とリスク管理体制の強化に取組みます。
当社は、サステナビリティ基本方針に則り、サステナビリティ活動が全社的な統一された活動となるため、サステナビリティ委員会を創設し、活動を行っております。このサステナビリティ委員会は、取締役を委員長として、各事業部門から委員を選出し、全社横断的な組織として原則毎月開催しております。
これまでのサステナビリティ委員会の活動は、体制の整備を中心に以下のものとなっております。
・重要課題(マテリアリティ)の選定
・各種方針類の整備
・各事業の取組や課題の棚卸
今後は、各事業部門のサステナビリティ活動についての計画、実施、評価、改善のサポートを行ってまいります。また、サステナビリティ委員会では、定期的に取締役会へ活動内容について報告・提言を行っており、取締役会は、サステナビリティ委員会について管理・監督を行い、統制を図っております。
当社グループは、お客様のニーズに応える事業の創出及び推進を通じて、様々な社会的課題を解決し、同時に生産性を向上させていくことにより、豊かで持続可能な世界の実現に貢献できると考えております。そのような価値を生み出す最大の原動力は人材であると認識し、従業員が活力に満ち能力を最大限に発揮できる環境づくりに取組んでおります。
1.多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
当社は、性別・年齢・国籍・宗教・障がいなどの多様性を理解、尊重し、思いやりをもって周囲と協働できる人材を育成します。また、特に女性や経験者の採用を積極的に行い、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材が事業の創出や業務の変革に貢献できる風土を醸成します。
人材育成に関する方針として、従業員が職務上必要な知見やスキル、専門知識などを習得し、個人の成長が会社の成長につながるような気づきを得るための機会を様々な局面で提供します。
第一に、職場において課題解決型の業務に挑戦する機会を提供し、現場経験を通じた人材育成に注力して事業や業務を変革し続ける戦略的な組織づくりを目指します。
第二に、OFF-JTでの教育・研修体制の充実を図り、各階層や職位で求められる能力や知識、考え方を学ばせるほか、研修メニューを見直して主要なビジネススキル等を重点的に習得する機会を増やします。
2.社内環境整備に関する方針
従業員が安全に、かつ安心して働き続けられるよう職場環境を整備し、心身ともに健康を維持できるサポート体制の構築を推進します。
① 労働時間の適正な管理、年次有給休暇の取得促進
労働生産性の向上を一層進めて過重労働や業務量の偏りをなくし、休暇をとりやすい環境を維持することで人材の定着率を高め、企業の持続的な発展を目指します。
② ライフイベントに配慮した働き方の制度
女性だけでなく男性も含めた産休・育休・育児支援制度の拡充や、私傷病や介護等に適用できる休暇制度の活用など、既存の福利厚生制度の改善・充実化を図りつつ、今後、より効果的で利便性のある制度を採り入れ、職場環境の向上に努めます。
③ 産業保健体制の強化
中央安全衛生委員会のもと、産業医、看護師、カウンセラー等が連携する産業保健体制を強化することにより、従業員個々の事情に応じた支援を行い、従業員が安心感を持って働くことができる体制を構築します。
④ 職場におけるハラスメントの防止への取組み
ハラスメント行為等の相談窓口を社内だけではなく、外部にも専門家による相談窓口を設けて、従業員のプライバシー保護を徹底しつつ、通報・相談しやすい体制を構築しております。また、ハラスメントに関する研修を全従業員に実施するなど、ハラスメントを未然に防ぐ取組みにより、組織内のリスク低減及び安全な職場環境の維持に努めております。
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクマネジメント委員会において行っておりますが、サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、サステナビリティ委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われます。
重要なリスクは、経営会議の協議を経て戦略、計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。
サステナビリティに関するリスクへの対応状況は、当社にて原則毎月開催しているサステナビリティ委員会においてモニタリングされ、各事業部門のサステナビリティ活動の確認や課題の抽出を行っており、今後は評価、改善に取組みます。
その取組みの中で、サステナビリティに関連するリスクを分析し未然に防ぐ取組みを行うとともに、中長期的な視点で会社に対して規模の大きなリスクの発生が予想される事象などが判明した場合には、リスクマネジメント委員会及び情報セキュリティ委員会と連携し、取締役会へ報告し、リスク回避及びリスクへの対応を実施する体制を取っております。
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(注)1 管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 開発力、技術力等で将来性が不明確であるものについて
当社グループが、コラーゲン・ケーシング、ゼラチン、ペプタイド、コラーゲン化粧品、リンカー、iPS細胞関連等医療用器材など製造販売する製品は、当社の研究所を中心とした開発に負うところが大きく、今後とも各事業における開発には従来通り注力してまいりますが、安価品や新規参入者で競争が激化している経済情勢下において、開発品が良質であっても必ずしも競合に対して優位に立てるとは限りません。
(2) 法的規制に係る影響について
当社グループの販売する製品の一部及び製造する原料の多くは輸入品であり、その多くは関税対象品目であります。また、国内外において販売する製品は、その用途による種々の規格や規制を順守したものでありますが、様々な貿易協定などによる関税率に関する法律の改廃、原料及び製品に対する新規の規則や規程を含む法的な改廃変更により、当社グループの取引が影響を受ける可能性があります。
(3) 大規模災害等の影響について
地震、津波、洪水、台風等の自然災害や火災、停電等の事故、感染症の拡大により、当社グループの事業拠点や原料調達先などが事業を正常に継続できなくなった場合、製品の生産・供給に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。特に、当社グループの主要事業であるコラーゲン・ケーシング及びゼラチン、ペプタイドの生産工場は静岡県に所在しており、富士山噴火などの大きな自然災害が発生した場合においては、当社グループの重要な生産拠点に甚大な被害を与える可能性があります。
また、大規模な感染症が発生した場合、従業員の罹患やサプライチェーンの停滞等により生産・販売活動に支障をきたす恐れがあるほか、社会全体の消費動向の変化によって当社グループ製品に対する需要が減退する可能性もあり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(4) 金利上昇のリスクについて
当社グループは、低金利が続く金融情勢を勘案し、主に固定金利での資金調達を行っているほか、変動金利での借入については金利スワップ等でヘッジし、金利の上昇リスクを一定の割合まで低減させております。ただし、急激な金利上昇があった場合においては、当社グループの経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
(5) 為替による価格変動リスクについて
当社グループには、原料及び製品の輸入と製品の輸出があり、外国為替相場の変動による影響を受けます。これらの取引においては、為替予約等のヘッジ手段を利用してリスクの軽減を図っておりますが、外国為替相場の急激な変動が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(6) 原料価格の変動リスクについて
当社グループが販売する製品に係る原料としては牛皮・豚皮・魚皮・鱗が多く使用されております。調達先の複数化などの安定的な原料調達によって販売価格の維持に努めておりますが、当該原料市場の需給動向により原料価格が高騰し、この価格の変動が経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの製品は、原料は同じでも多岐にわたる製品を製造して複数の異なる市場や業界に販売することから、原料の価格変動リスクを必ずしも転嫁できない場合があり、原料価格の上昇局面では製造コストのみ増加して当社グループの経営成績に影響を与える場合があります。
(7) 設備投資に係るリスクについて
当社グループは、事業の競争力強化のために生産設備をはじめとする様々な設備投資を行っております。設備投資の実行にあたっては、市場環境の調査などフィージビリティスタディを行って、採算性や投資回収期間の妥当性を慎重に検討し可否を判断しておりますが、市場規模が当初の前提条件から大きく縮小し生産能力が過大となった場合は、事業の収益が悪化して投資額の回収が困難となり、設備等の減損や除却損を計上するなど経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 原料、製品等の在庫に係るリスクについて
当社グループは、各製品の需要動向の予測に基づいて生産計画を立案し、原料等の調達及び生産管理を行っております。しかしながら、需要が縮小し在庫が長期滞留する場合や製品販売価格が大きく下落する場合は、棚卸資産の評価損や廃棄損を計上するなど当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 不動産開発に係るリスクについて
当社グループは、東京と大阪の皮革製造工場の跡地の再開発を進めております。いずれも土地整備等は完了し、暫定利用も含めほぼ順調に運用されている状況であります。今後も再開発計画の達成又は完了を目指し、鋭意この開発事業を推進してまいりますが、不動産開発事業であることから想定外の多額の特別損失や特別利益を計上するなど当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 製品品質に係るリスクについて
当社グループは、製品製造に関してはそれぞれの製造における法令・規制を順守することはもちろん、製造に使用される原料をはじめ副資材、設備また工程等の厳しい管理を行う一方、出荷前には製品の品質検査、並びに不良品や規格外品の選別を行い当社グループの製品への顧客満足度を最重要視しております。
これらの品質管理に加え、万一に備えて生産物賠償責任保険(PL保険)他に加入しておりますが、場合によってはPL保険他で賠償すべき金額すべてをカバーできる保証はなく、当社グループの信用を喪失する恐れ並びに経営成績へ影響を及ぼす可能性があります。
(11) 特許・知的財産権に係るリスクについて
当社グループで開発した独自技術及び知識は特許権を取得する等厳格な管理により、外部への漏洩また外部からの侵害に備えている一方で、第三者の知的財産権を侵害しないよう留意しております。しかし、場合によっては双方が知的財産権を争う事態となり、結果として知的財産侵害とされて賠償の責を負わされる可能性も必ずしも否定はできず、結果として当社グループの経営成績に影響を及ぼすことがないとは限りません。
(12) 海外事業に係るリスクについて
当社グループは、アジア、欧州、北米など幅広い地域において販売及び生産活動を展開しておりますが、現地における予期できない法令等の変更や、政治又は経済的な混乱などによって当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(13) 取引先の信用リスクについて
当社グループは事業を展開するに当たり、国内外の多数の販売先に対して信用供与を行っております。信用供与にあたっては、販売先の財務状況を定期的にチェックし、必要に応じて担保・保証の取得や保険の付保などによって信用リスクの最小化に努めておりますが、それらの債権保全策を講じていない販売先の倒産などにより売掛債権を回収できなくなる可能性があります。また、仕入先の信用不安などにより原材料や商品などを安定的に調達できなくなる場合も想定され、当社グループの経営成績に影響を及ぼすことも考えられます。
(14) 情報セキュリティに係るリスクについて
当社グループは、様々な事業活動を通じて、顧客や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがあるほか、営業や技術、人事など事業上の重要情報を保有しております。そのため、情報管理体制を構築しセキュリティ強化のための対策を講じております。しかしながら、サイバー攻撃等による不正アクセスやデータの破壊、改ざん、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い社会経済活動が一層の正常化に向かい、また、インバウンド需要が回復したこともあり景気は緩やかな回復基調が続きました。一方、長期化する地政学的リスク、物価の上昇による消費マインドの悪化懸念、為替相場の急激な変動、人手不足の深刻化など、国内外の景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような経営環境のもと当社グループは、中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を策定し「タンパク質研究のエキスパートとして人々の生活の質の向上に貢献する」ことを目標に、生産性の向上、製造費・販管費のコスト見直し、高付加価値商品の開発などに取組んでまいりました。当連結会計年度は、原材料費、動力費、運賃、輸入為替などのコスト上昇分の一部を価格に転嫁できたことにより、全体の売上高、営業利益率が改善され増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、49,046百万円(前期比9.5%増)、営業利益は、3,612百万円(同145.5%増)、経常利益は、3,740百万円(同140.8%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、2,548百万円(同117.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、営業利益は、セグメント間の内部取引による損益を振替消去した後の金額であり、セグメント利益(セグメント情報)は、これを振替消去する前の金額であります。
(コラーゲン・ケーシング事業)
コラーゲン・ケーシング事業は、経済活動正常化により全国的にイベント等が増加したことを追い風に、国内販売のフランクサイズや着色素材が好調に推移しました。一方、輸出販売については、東南アジア向けが好調に推移したものの、北米向けは厳しい市場競争に苦戦しました。利益面については、電力、動力費などに対する政府の補助があったこと、生産が順調であったこと、輸出運賃が大きく減少したことなどによりコストダウンとなり、大幅な増益となりました。
この結果、コラーゲン・ケーシング事業の売上高は、9,497百万円(前期比1.7%増)、営業利益及びセグメント利益は、969百万円(同155.5%増)となりました。
(ゼラチン関連事業)
ゼラチン部門は、経済活動の正常化と継続する高い健康志向を背景に、ソフトカプセル用途、食品用途、グミキャンディ用途などが好調に推移しました。ペプタイド部門は、輸出向けが価格競争による影響で減少したものの、国内向けは好調なインバウンド需要を背景に健康食品用途を中心に好調に推移しました。利益面については、製造コスト上昇に伴う収益性の悪化に課題を抱えておりましたが、段階的に取組んできた価格改定の効果もあり営業利益率がコロナ禍前の水準まで回復しました。
この結果、ゼラチン関連事業の売上高は、13,923百万円(同13.5%増)、営業利益は、1,597百万円(同130.5%増)、セグメント利益は、1,612百万円(同126.2%増)となりました。
(化粧品関連事業)
化粧品関連事業は、化粧品部門においては、コロナ禍が明けて消費行動が実店舗へ回帰傾向にあり化粧品の通信販売市場に企業間格差が生じる中で、2023年秋に新商品を発売しブランド認知度の向上と新規顧客の獲得に努め順調に推移しました。健康食品部門は、引き続き高い健康志向を背景に好調に推移しました。
この結果、化粧品関連事業の売上高は、7,588百万円(同16.0%増)、営業利益及びセグメント利益は、1,042百万円(同19.5%増)となりました。
(皮革関連事業)
靴・袋物部門は、経済活動の正常化が追い風となって需要回復傾向が続いております。また、価格改定により収益性が改善され増益となりました。車輌部門は、自動車業界の景気回復に伴い販売が好調に推移しました。
この結果、皮革関連事業の売上高は、7,593百万円(同3.8%増)、営業利益及びセグメント利益は、359百万円(同215.6%増)となりました。
(賃貸・不動産事業)
東京都足立区の土地賃貸事業は、大規模商業施設、保育所、フットサルコート、駐車場用地として有効活用を図っております。大阪府大阪市の土地賃貸事業は、中央区心斎橋において商業施設用地として有効活用を図るほか、浪速区なんばにおいては、新街区「なんばパークス サウス」が計画どおりオープンし順調に推移しております。
この結果、賃貸・不動産事業の売上高は、1,061百万円(同23.4%増)、営業利益は、848百万円(同29.4%増)、セグメント利益は、849百万円(同29.4%増)となりました。
(食品その他事業)
バイオ関連製品は、iMatrixシリーズの販売が好調に推移しました。有機穀物は、自然食市場が拡大する中で、サプライヤーとの関係強化に注力し順調に推移しました。イタリア輸入食材は、外食産業がほぼコロナ禍前の状況に戻っていることもあり、需要の回復が進みました。
この結果、食品その他事業の売上高は、9,382百万円(同10.5%増)、営業利益は、439百万円(同35.8%増)、セグメント利益は、424百万円(同39.7%増)となりました。
当連結会計年度末における総資産は72,394百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,830百万円増加しました。これは主に、有形固定資産が888百万円減少した一方で、現金及び預金が1,766百万円、受取手形及び売掛金が1,219百万円、投資有価証券が867百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末における負債は、34,090百万円となり、前連結会計年度末と比べ396百万円減少しました。これは主に、未払法人税等が568百万円、その他流動負債が371百万円増加した一方で、短期借入金が358百万円、1年内返済予定の長期借入金が204百万円、長期借入金が719百万円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末における純資産は、38,304百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,226百万円増加し、自己資本比率は、52.0%となりました。これは主に、利益剰余金が2,266百万円、有価証券評価差額金が582百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ1,766百万円増加し、8,605百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ税金等調整前当期純利益が1,882百万円増加し、売上高の増加により売上債権も増加しましたが、棚卸資産や仕入債務が減少し、法人税等の支出も増えた結果、収入は1,502百万円増加し、4,169百万円の収入(前期比56.3%増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度では投資有価証券の売却による収入などがありましたが、当連結会計年度では、設備投資が減少したことなどにより支出が240百万円減少し、580百万円の支出(同29.3%減)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ有利子負債の返済などにより、支出が211百万円増加し、1,876百万円の支出(同12.7%増)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、仕入価格によっております。
製品の性質上受注生産は行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10以上の相手先の該当がないので記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び会計上の見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」の「会計方針に関する事項」に記載のとおり重要な資産の評価方法、重要な引当金の計上基準等においての継続性、網羅性、厳格性を重視して処理計上しております。また、繰延税金資産においては将来の回収可能性を十分に検討した上で計上しております。
国内外情勢に起因する物価動向、消費動向が不透明さを増すなか、国内景気は少しずつ軌道修正しながら維持、回復していくものと想定し、当社における会計上の見積もり(繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金の計上、固定資産の減損等)を行っております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度は、コラーゲン・ケーシング事業をはじめ、ゼラチン関連、化粧品関連、皮革関連などの全報告セグメントにおいて、増収増益となりました。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ4,235百万円増加し、49,046百万円(前期比9.5%増)となりました。
主な内容は、コラーゲン・ケーシング事業は、北米向けは価格改定の影響もあり、販売が減少いたしましたが、国内はコロナ明けによるイベントなどの増加でフランクサイズ、また、赤ウインナーの着色ケーシングなどが好調に推移しました。
ゼラチン関連事業は、福島処理水に関連した風評による買い控えでコラーゲンペプチドが輸出販売で苦戦いたしましたが、前連結会計年度より実施してきた価格改定が一定程度の進捗をみた結果、ゼラチン、コラーゲンペプチドの国内販売でともに増収となりました。
化粧品関連事業は、主力商品「ニッピコラーゲン100」の販売は、好調に推移し続伸となりました。当連結会計年度よりタレントの高橋尚子さんを起用してブランディング強化を図り、また、健康志向ブームも後押しとなりました。
皮革関連事業は、車輛用革においても半導体や部品不足などにより自動車関連メーカーの断続的な減産などもあり減少となりました。一方で、生活様式の変容により革靴に関連した素材、商品、加工などは影響が残るものの徐々に回復してきており、アパレル衣料用やライダーブーツ用の素材も好調に推移しました。
食品その他事業は、人出が戻り外食の機会も増えレストラン向けイタリア食材、有機穀物など価格転嫁も含め好調に推移し、また、iPS細胞関連の培養基材iMatrixシリーズも増収となりました。
当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度に比べ2,141百万円増加し、3,612百万円(同145.5%増)となり、当連結会計年度における経常利益は前連結会計年度に比べ2,187百万円増加し、3,740百万円(同140.8%増)となり、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,378百万円増加し、2,548百万円(同117.8%増)となりました。
主な内容は、コラーゲン・ケーシング事業は、生産性の向上に注力した結果、製造コストを大きく押し下げることができました。また、国内販売は価格転嫁が全く進捗しなかったものの、販売数量は伸びました。一方で、輸出販売は価格改定により苦戦いたしましたものの、輸出為替の影響で利益率は改善いたしました。また、コンテナ代が一時の狂乱的な上昇から落ち着きを取戻したことから物流費の減少も増益に影響いたしました。
ゼラチン関連事業は、2年に亘る価格改定交渉が一定程度認められたことにより利益率が改善いたしました。利益率の改善は、皮革関連事業、食品その他事業においても需要回復とともに価格転嫁が一定程度実施できたことによるものであります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの各事業は、国内外市場で製品の販売を行う一方、製品原料や関連資材の買い付けも国内外の市場より調達しております。このため、それぞれの市場動向や規制、さらに海外の場合は、特に為替相場等の大きく急激な変動も各事業の業績に大きな影響を与える場合があり、諸物価の高騰、インフレなどによる個人の消費活動の停滞なども各事業の業績に大きな影響を及ぼしております。
また、東アジアや世界情勢の悪化、地政学リスクの顕在化などに伴い、様々な影響が出ることが予測されております。これらは、エネルギー、原材料、薬品、物流など多岐にわたっての価格高騰に見舞われ、当社グループにおきましては、コラーゲン・ケーシング事業、ゼラチン関連事業における製造コスト及び全報告セグメントにおいて仕入価格の急上昇を引き起こしております。ある一定程度の価格転嫁ができなければ、経営成績に重要な影響を与える要因になります。
そのほか当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 戦略的現状と見通し
コラーゲン・ケーシング、ゼラチン関連、化粧品関連、皮革関連などの各報告セグメントにおきましては、顧客や市場ニーズを取り入れた新商品の開発により一層の高付加価値化を目指すとともに、宣伝広告等により商品や企業の認知度の向上を図っております。生産面では、工程の見直しなど、さまざまなコスト低減方法を常に模索し、販売面では、拡販及び価格の適正化を図りながら、収益体制の改善、強化に努めております。
原材料価格、エネルギーコストなどの高止まりと期初よりの円安幅の拡大化、長期化の影響で、期初より仕入価格、原料価格の上昇に歯止めがかからない状況が続き、在庫単価も上昇していることから今後の収益の圧迫要因となるため、更に生産性を向上させ、吸収できないものは価格の見直しを実施すべきか検討してまいります。製造工程の短縮や見直し、不良率の低下、経費の削減など様々な施策を講じてコスト低減を図り、収益性の確保に努めてまいります。
化粧品関連事業においては、仙道敦子さんに加え、高橋尚子さんを活用し、好調な健康食品分野での拡販、基礎化粧品分野での巻き返しを図り、また、それぞれの新規商品開発に取組んでまいります。
なお、賃貸・不動産事業におきましては、所有土地の事業化計画の実現と効率的運用を推進してまいります。大阪市浪速区のなんば地区では、2023年7月に計画した事業が開業し、残った東京都足立区の所有地においても早期の本格的な事業化を目指し、収益性を十分考慮した運用を行い、当社グループの安定的な収益基盤の礎としてまいります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料・商品などの仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動資金であります。それ以外の投資などを目的とした資金需要は、生産設備をはじめ事業拡大及び賃貸事業に伴う投資等に限っております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、資金の流動性に関する対応としては、現在未使用の状況にあるコミットメントライン枠の活用があります。短期的には手許現預金は、アフターコロナの与信リスクなどにも備えて高水準の状態にあります。今後は、国内外の経済情勢が不確実性の高いことを認識したうえで、設備投資も進めながら有利子負債の圧縮にも努めてまいります。
なお、資金調達に影響を及ぼす財務制限条項等への抵触リスクは、現状においてはグループ会社ともに低いと判断しております。また、今後の有利子負債の約定弁済につきましても手許現預金及び営業キャッシュ・フローなどで履行できると判断しております。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、100年間に亘り、皮革事業において我が国のリーディングカンパニーとして製造・販売を行ってまいりました。その間、皮革事業で培った技術・知識・経験を礎に研究開発を重ね、新たにゼラチン、コラーゲンペプチドの事業を国内トップクラスに、また、コラーゲン・ケーシング事業を国内で唯一、世界の四大メーカーの一角を担うまでに、さらには、コラーゲン基礎化粧品「スキンケアジェル」と健康食品「ニッピコラーゲン100」の事業を当社主力事業のひとつに育成してまいりました。また、バイオマトリックス研究所で長年培った生体工学技術を生かし、再生医療分野への進出を果たしました。今後は、同分野を主力事業の一角にするべく注力してまいります。これらの事業を更に充実拡大させ、以って当社の理念である高品質なものづくりを通して人々に貢献し、より豊かな社会の実現を目指してまいります。そのためには、事業環境の変化を捉え、既存の知財に加え事業で得た新たな技術・経験を活かし、顧客や社会の要望に応えられる高付加価値商品を世に送り出して行かねばなりません。また、アフターコロナに移行して、経済活動が正常化になりつつあるものの、世界各地で紛争が勃発、長期化し、資源価格高騰を主要因とした世界的なインフレ、それに伴う金利上昇による為替の急激かつ大きな変動などで国内景気は、今後も不透明な環境が続くものと思われます。
次期の見通しにつきましては、産油国の減産や世界各地での紛争の長期化に伴い、諸物価の上昇は今後も続くものと想定しておりますが、国内の景気は、歴史的な円安の影響でインバウンド需要が旺盛であることからサービス業を中心に回復していくと見込んでおります。一方で、諸物価の上昇に賃金の上昇が追い付かず、消費マインドの低下が危惧されております。
このような状況のもと、当社は、引き続き生産コスト低減の施策を講じて競争力のある商品づくりに取組んでいくとともに、社会全体の変容に対応しながら市場ニーズを的確に捉えた高付加価値商品を投入し、収益基盤の拡充を図ってまいります。
コラーゲン・ケーシング事業に関しまして、国内外ともに市場は、堅調に推移すると見込まれるものの、引き続き原材料、燃料、電力費の高止まりにより、製造コストの低減は厳しい状況であり、販売価格に転嫁せざるを得ない環境に変化はないと見込んでおります。国内外での価格調整も慎重に検討しながら拡販を模索してまいります。一方で、国際的な価格競争に対応していくためにも製造工程の簡素化、生産能力向上のための技術改良、ユーザーニーズに呼応した製品開発、また、引き続き加工費の低減を推し進め、収益力の確保と向上に注力してまいります。
ゼラチン関連事業に関しては、ゼラチン市場は堅調に推移し、コラーゲンペプチド市場は国内外ともに成長していくものと見込んでおります。国内のインバウンド需要はほぼコロナ禍前までに回復してまいりました。前連結会計年度に実施した価格改定により収益は改善できたものの、その後の円安の進行と長期化に伴い、仕入価格の上昇が収益を侵食しはじめてきている状況のなか、由来原料の見直しや安価な調達先の選定などコスト削減を引き続き実行してまいります。また、差別化を図るための機能性やハラル用途など特定の素材開発などにより一層の高付加価値商品やユーザーへの新規提案などに注力し、収益基盤を確保、改善をしてまいります。
化粧品関連事業に関しましては、物流2024年問題の懸念、また、原材料価格の高騰懸念はあるものの、アフターコロナでも通信販売市場の拡大基調は変わらないと推測しております。ソーシャルメディア等を駆使し、また、広告媒体の多様化を図り、ニーズに呼応した新商品の開発、発売、継続率の向上、新規顧客の獲得を目指し、さらなる成長路線を模索してまいります。まだブランド力が弱く、認知度が低いことに対する対策として、著名人や地上波×インフルエンサーのメディアMIXを図り、化粧品におけるブランドの育成と健康食品における既存の主力商品以外の開発育成に努めてまいります。
皮革関連事業に関しては、紳士靴及び婦人靴用革は、回復傾向が見られるものの、革靴に対する消費者意識の変容により、一定の厳しい環境は続くものと予想しております。このような市場環境のなか、甲革、製甲、靴、底材加工、衣料などの革靴関連のサプライチェーン囲い込み強化のため、業界の情報収集、協力企業体制の一層の強化、市場環境に順応した事業体制の工夫、在庫管理体制の見直し、経費削減などに取組み、収益性の改善に努めてまいります。また、車両用革は、自動車業界での生産停止やサプライチェーン停滞の影響などにより不安定な生産環境にあるなか、コスト軽減を実現するため塗膜原材料の見直しや新しい加工技術の確立などに注力し、受注の回復とさらなる収益性の改善を図ってまいります。
食品その他の事業に関しては、イタリア輸入食材と輸入有機穀物は、国際情勢などにより船舶での輸送リスクやコスト上昇の影響はあるものの、アフターコロナによる需要は、引き続き回復していくと見込んでおります。また、天候不順や世界情勢の変化に伴う相場の乱高下、輸入為替の変動などのリスクは注視しながら、引き続き適切に対応してまいります。また、オンラインショップの強化など個人消費の掘り起こしに努め、拡販も図ってまいります。再生医療関連については、今後も市場が拡大していくものと見込んでおり、当社製品も拡販、続伸すべく注力してまいります。細胞外マトリックス関連商品の新規開発のほか、医療用ゼラチン、コラーゲン試薬などの開発、国内外への拡販を引き続き推進してまいります。
賃貸・不動産関連事業に関しましては、引き続き当社所有土地を中心に事業化及び効率的運用を進め、当社収益基盤の強化に繋げるよう努めてまいります。また、大阪市浪速区の土地賃貸事業も順調に進捗し、「なんばパークスサウス」は、2023年7月1日にグランドオープンを迎えました。
また、昨今の企業を取り巻く環境は一層不透明さを増しており、そのなかで持続可能な社会の実現に向けての取組みは、企業の社会的責任であるのみならず、自然由来の原料に依存しております当社グループにおきましても事業を継続する上での重要な課題であると認識しております。高品質なものづくりで社会に貢献するという創業の思想を実現すべく、事業活動の一層の奮励はもとより、各事業の日々の業務の中でより良い環境や社会の実現に取組んでまいりました。各事業の取組みをより実効的なものにすべく代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を創設いたしました。今後はこのサステナビリティ委員会を中心に社会・環境に資する取組みを推し進めるとともに、コンプライアンスの徹底、コーポレートガバナンス・コードに基づく経営体制の強化、地球温暖化防止への取組み、人権への配慮や多様性の確保といった活動を推進してまいります。
そのほか当社グループとしての問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動は、細胞外マトリックスタンパク質、3次元細胞培養関連製品の開発、コラーゲンの経口摂取の栄養生理学的研究、大学・研究機関や企業と連携したがんや免疫分野などへの応用を目指した新規組換えタンパク質の開発、国内外のアカデミアとのコラーゲンやそれ以外の幅広い基礎研究など、基礎科学から製品化を目指した応用技術開発・製品開発まで幅広く行いました。
具体的な研究開発項目につきまして、以下にいくつか例を挙げます。
(1) 医療用途に適用可能なコラーゲンとゼラチンに関して、医療機器原料としての供給や自社製品の開発に取組んでおります。同時に、各種の研究試薬用コラーゲンの開発も行っております。
(2) 組換えタンパク質の効率良い製造法spERtテクノロジーの技術開発を進め、様々なタンパク質のCHO細胞株取得及びタンパク質の効率的な精製技術開発を進めております。この技術を積極的に活用して、付加価値の高いタンパク質の低コスト製造によって利益向上を図りたいと考えております。
(3) コラーゲン経口摂取の効果については、魚由来コラーゲンペプチドを用いた紅斑、肌弾力、肌の潤いに関する3種類の機能性表示食品届出が受理されました。また、コラーゲンタンパク質に特有のジペプチドPro-Hypや、血液中で長期間安定に存在するGly-3Hyp-4Hypトリペプチドの生理的作用のメカニズム、また、ヒトへ及ぼす効果の研究もしております。
(4) 3次元細胞培養は、医薬品の開発や毒性検査、生物学医学研究に必須のものとなりつつあり、培養基材用のMatriMixシリーズを開発しております。各種コラーゲンや糖鎖、基底膜タンパク質を含む細胞外マトリックス成分を組合わせて、薬剤スクリーニングやがんなどの病態機能解明、安全性試験などの幅広いニーズに応える細胞培養関連製品群を開発中であります。手軽に使用者が使える標準的な製品から、各種の臓器組織の細胞に適するようにカスタマイズ可能な3次元基材製品群を開発しております。
(5) ヒトラミニン-511のE8部分である組換えタンパク質 iMatrix-511 を製造販売しております。上述の当社のspERtテクノロジー技術の導入を進めて、収量の増大を達成した細胞株を用いた製造に切替えました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
また、事業のセグメント別の研究開発費は、バイオマトリックス研究所において各セグメントの総合的、横断的研究開発活動を行っていること、また、経営資源の配分の決定及び業績を評価するための検討対象としていないことから区分しておりません。