第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

今後の我が国経済の見通しは、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果もあり、内需を中心に底堅い成長が続くことが期待されますが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっているほか、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れを通じて個人消費に及ぼす影響などが懸念されます。また、金融資本市場の変動等の影響にも一層注意する必要があり、企業を取り巻く環境は依然として不透明な状況にあります。

このような環境の下で当社グループは、2026年3月期を初年度とする新たな中期経営計画(2026年3月期-2028年3月期)(以下「新中計」という。)を策定しました。新中計では、次の(1)~(3)を基本方針として、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて取組んでまいります。

(1) 成長事業への注力及び既存事業の収益力向上によるリターンの強化

(2) 新たな資本政策の実施

(3) 新中計を確実に実行するコーポレート・ガバナンス体制への進化

 

① 各事業における主な課題

・コラーゲン・ケーシング事業

海外販売では、米国通商政策の動向を注視するほか、新たな市場開拓に取組んでまいります。国内販売では、多様なニーズに対応する少量多品種製造に対応可能な体制の構築を進め、顧客要望に沿った商品の提供に努めてまいります。また、引き続き一層の製造工程の見直し、改良、改善を実施し、製造コストの低減に努め、収益力の安定確保と競争力の向上に取組んでまいります。

・ゼラチン関連事業

販売価格の改定を段階的に実施したこと、原料価格が低減傾向にあることから収益性が改善しておりますが、競合他社の攻勢も強くなっていることから、今後も継続的にコスト削減に取組んでまいります。また、供給量増加に向けた海外協力工場との提携強化に取組むとともに、差別化を図るための機能性やハラル用途等の特定の素材開発などにより、引き続き顧客ニーズに対応した生産体制を構築してまいります。

・化粧品関連事業

化粧品等の通信販売市場は一層の競争激化が懸念されます。特徴のあるコンセプトや独自性の高い商品の販売に注力し新規顧客の獲得を目指してまいります。健康食品については、機能性表示やサプリメントに対する消費者の関心や意識に変化が見られる中、信頼性や安心感がより一層求められております。安心・安全な商品提供に引き続き注力するとともに、より丁寧な顧客対応を心がけながら、着実な販売促進に努めてまいります。

・皮革関連事業

車輌部門は自動車メーカーの動向に左右され、コストアップなどもあり先行き不透明な状況にありますが、生産工程の見直しや新しい加工技術の確立などに注力し、受注の回復と収益の改善を図ってまいります。靴・袋物部門は、紳士靴・婦人靴ともに売上は改善しているものの、国内の革靴市場は消費者のライフスタイルの変化と生産現場の高齢化に伴い漸減的に減少することが予測されます。当社グループは、業態間口の広さを活かして様々な角度から新規顧客の開拓に取組むとともに現商流の維持に努めてまいります。

・賃貸・不動産事業

東京都足立区の土地賃貸事業「ポンテグランデTOKYO」及び大阪市浪速区の土地賃貸事業「なんばパークス サウス」は順調に推移しております。引き続き、両地区の認知度向上を図り、資産価値の向上と事業収益の最大化に取組んでまいります。

・食品その他事業

有機穀物の貿易部門は、引き続き海外サプライヤーとの関係強化に努め、安定した供給体制の維持に取組んでまいります。イタリア食材部門は、トレーサビリティを重視したトマトビジネスの拡大に取組んでまいります。バイオ関連部門は、今後も持続的な伸長が見込まれる再生医療分野において、生産性向上や品質管理体制の強化などに取組んでまいります。

 

② サステナビリティへの取組

当社グループは、社会的責任を果たすことが企業継続の基礎であると認識し、法令・諸規程等の遵守に努め、公正かつ適切な経営の実現に取組んでおります。

当社は、サステナビリティ推進を目的に、代表取締役社長を委員長として「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は定期的に活動し、当社のサステナブルな取組や、社内への周知を進めております。今後もコンプライアンスの徹底や、コーポレートガバナンス・コードに基づく経営体制の強化、地球温暖化防止への取組、人権への配慮や多様性の確保といった活動を通じて、ステークホルダーの皆様からの信頼と共感を得られるよう努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

詳細につきましては、当社ホームページ掲載の「サステナビリティ」をご参照ください。

(アドレス https://www.nippi-inc.co.jp/sustainability/)。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、1907年に創業し、食肉の副産物である皮革に始まり、皮革産業の副産物であるゼラチン、コラーゲンの産業化など、事業そのものが副産物に価値を与える循環型社会実現の先駆けとして事業を進めてまいりました。そのため、当社グループにおきまして、持続可能な社会の実現に向けての取組は企業思想ならびに従業員意識の根源をなすものとなっております。そして、高品質なものづくりで社会に貢献するという創業の思想を実現すべく、事業活動の一層の奮励はもとより、各事業の日々の業務の中でより良い環境や社会実現の取組を進めてまいりました。

一方、昨今の企業を取り巻く環境は一層不透明さを増しており、そのなかでもこの持続可能な社会の実現に向けての取組は、企業の社会的責任であるのみならず、自然由来の原料に依存しております当社グループにおきましても、事業を継続する上での重要な課題であると認識しております。

そのため当社グループにおきましては、各事業部門における様々なSDGsへの取組をより実効的なものにすべく、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を2021年11月に事業部門の横断的組織として創設しております。サステナビリティ委員会では、当社グループの各事業部門が独自に実施してきたSDGsへの取組を確認ならび検討・検証するとともに、当社グループのサステナビリティへの取組におきまして結集を図ってまいります。サステナビリティ委員会を中心に全社的な統一活動に昇華することにより、社会・環境に資する取組を推し進めるとともに、コンプライアンスの徹底、コーポレートガバナンス・コードに基づく経営体制の強化、地球温暖化防止への取組、人権への配慮や多様性の確保といった活動を推進してまいります。

そして、当社グループにおけるサステナビリティ基本方針を作成し、2022年8月に取締役会にて承認しております。このニッピサステナビリティ基本方針は、当社の精神である「経営理念」と「その実現のために遵守すべき基本方針」及び個々の従業員の指針である「私たちの行動規準」を基礎とし、当社グループの持続的な成長とともに、持続可能な社会の実現への貢献を目的としております。

 

(経営理念)

当社グループは、優れた製品・サービスによって社会に貢献し、人々のより良い暮らしを創造することを経営理念とします。

 

(経営理念の実現のために遵守すべき基本方針)

1.当社グループは、長年培った技術開発力をベースに、「お客様ニーズ」に合致する高品質の製品を提供し、「顧客満足度」を高めることで、中長期的成長の持続を目指します。

2.当社グループは、社会的責任を果たすことが企業継続の基礎と認識し、法令・諸規定等の遵守に努め、公正かつ適切な経営の実現を図ります。

3.当社グループは、意思決定プロセスの明確化と意思決定の迅速化に努めます。

 

(私たちの行動規準)

1.事業活動に関して

2.利害関係者との公正で透明な関係の維持

3.公正で自由な競争に関して

4.環境保全に関して

5.社会との共生関係

6.雇用関係に関して

7.内部情報管理に関して

8.知的財産に関して

9.定款・社内規程遵守に関して

 

■ニッピサステナビリティ基本方針と重要課題(マテリアリティ)

当社グループでは、サステナビリティ活動の方向性を明確化し全社をあげてこの取組をさらに強化するため、環境への配慮(E)、社会との良好な関係(S)、企業統治(G)からなるニッピサステナビリティ基本方針と当社グループが持続可能な企業活動を進めるための5つの重要課題(マテリアリティ)を定めております。重要課題(マテリアリティ)はサステナビリティ委員会が中心となり、これら重要課題に関連する各事業部門の課題に取組むとともに、各事業部門における優先課題を深耕し実行してまいります。

 

(ニッピサステナビリティ基本方針)

1.環境への配慮(E:Environment)

・将来世代への住み良い環境を持続させるため、法令遵守による社会的責任の遂行を基本として、より一層の地球環境保護に貢献します。

・環境に配慮した製品の提供を通じて循環型社会の一端を担うとともに、生産活動における大気・水質・土壌等の環境汚染の予防に努めます。

・生産技術の向上を追求し、エネルギー、水、原料などの資源の効率的な利用に努めます。

2.社会との良好な関係(S:Society)

・人権の尊重とあらゆる差別的取扱いを禁止し、強制労働・児童労働などの人権侵害の防止に努めます。

・国や地域社会の文化や習慣を尊重し、社会との良好な関係の維持に努めます。

・様々なステークホルダーとの適切なコミュニケーション、健康と安全の確保に努めます。

・適時適切な情報開示を行います。

3.企業統治(G:Governance)

・株主の権利を尊重し、経営の公平性・透明性を確保に努めます。

・取締役会を中心とし、株主に対する受託者責任・説明責任を果たします。

・経営目標の実現に向けて、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要課題と位置付け、迅速かつ的確な意思決定及び監督機能の強化に努めます。

・中長期的な企業価値の向上と経営の健全性維持のためコーポレート・ガバナンスを追求し、その充実に継続的に取組みます。

 

(重要課題(マテリアリティ))

1.ものづくり

サプライチェーンマネジメントの最適化を図り、創業以来継続して取組んできた「良いものをつくる」ことにより社会へ貢献してまいります。

2.研究・開発

事業の持続と発展に寄与してきた研究開発力の維持と強化に取組みます。

3.人材・職場環境

企業文化の醸成に取組み、人財の活力や能力を発揮するための職場環境を整備することに努めます。

4.地域・環境

都市開発事業や地域環境活動を通じて環境負荷軽減に取組み、社会の信頼を得られるように努めます。

5.ガバナンス

コーポレートガバナンス・コードに基づいた経営体制とリスク管理体制の強化に取組みます。

 

当社は、サステナビリティ基本方針に則り、サステナビリティ活動が全社的な統一された活動となるため、サステナビリティ委員会を創設し、活動を行っております。このサステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長として、各事業部門から委員を選出し、全社横断的な組織として原則毎月開催しております。

これまでのサステナビリティ委員会の活動は、体制整備をはじめ、各事業部門における具体的な取組の推進などを中心に以下のものとなっております。

 ・重要課題(マテリアリティ)の選定

 ・各種方針類の整備

 ・各事業部門の取組課題の棚卸

 ・各事業部門の具体的な取組事例の取りまとめ

 ・当社Webサイトでのサスティナビリティに関する情報発信

今後は、各事業部門のサステナビリティ活動についての計画、実施、評価、改善のサポート及び社内での啓蒙活動を行ってまいります。また、サステナビリティ委員会では、定期的に取締役会へ活動内容について報告・提言を行っており、取締役会は、サステナビリティ委員会について管理・監督を行い、統制を図っております。

 

(2) 戦略

当社グループは、お客様のニーズに応える事業の創出及び推進を通じて、様々な社会的課題を解決し、同時に生産性を向上させていくことにより、豊かで持続可能な世界の実現に貢献できると考えております。そのような価値を生み出す最大の原動力は人材であると認識し、従業員が活力に満ち能力を最大限に発揮できる環境づくりに取組んでおります。

 

1.人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

当社は、性別・年齢・国籍・宗教・障がいなどの多様性を理解、尊重し、思いやりをもって周囲と協働できる人材を育成します。また、特に女性や経験者の採用を積極的に行い、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材が事業の創出や業務の変革に貢献できる風土を醸成します

人材育成に関する方針として、従業員が職務上必要な知見やスキル、専門知識などを習得し、個人の成長が会社の成長につながるような気づきを得るための機会を様々な局面で提供します。

第一に、職場において課題解決型の業務に挑戦する機会を提供し、現場経験を通じた人材育成に注力して事業や業務を変革し続ける戦略的な組織づくりを目指します。

第二に、OFF-JTでの教育・研修体制の充実を図り、各階層や職位で求められる能力や知識、考え方を学ばせるほか、研修メニューを見直して主要なビジネススキル等を重点的に習得する機会を増やします。

 

2.社内環境整備に関する方針

従業員が安全に、かつ安心して働き続けられるよう職場環境を整備し、心身ともに健康を維持できるサポート体制の構築を推進します。

① 労働時間の適正な管理、年次有給休暇の取得促進

労働生産性の向上を一層進めて過重労働や業務量の偏りをなくし、休暇をとりやすい環境を維持することで人材の定着率を高め、企業の持続的な発展を目指します。

② ライフイベントに配慮した働き方の制度

女性だけでなく男性も含めた産休・育休・育児支援制度の拡充や、私傷病や介護等に適用できる休暇制度の活用など、既存の福利厚生制度の改善・充実化を図りつつ、今後、より効果的で利便性のある制度を採り入れ、職場環境の向上に努めます。

③ 産業保健体制の強化

中央安全衛生委員会のもと、産業医、看護師、カウンセラー等が連携する産業保健体制を強化することにより、従業員個々の事情に応じた支援を行い、従業員が安心感を持って働くことができる体制を構築します。

④ 職場におけるハラスメントの防止への取組

ハラスメント行為等の相談窓口を社内だけではなく、外部にも専門家による相談窓口を設けて、従業員のプライバシー保護を徹底しつつ、通報・相談しやすい体制を構築しております。また、ハラスメントに関する研修を全従業員に実施するなど、ハラスメントを未然に防ぐ取組により、組織内のリスク低減及び安全な職場環境の維持に努めております。

 

(3) リスク管理

当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクマネジメント委員会において行っておりますが、サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、サステナビリティ委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われます。

重要なリスクは、経営会議の協議を経て戦略、計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。

サステナビリティに関するリスクへの対応状況は、当社にて原則毎月開催しているサステナビリティ委員会においてモニタリングされ、各事業部門のサステナビリティ活動の確認や課題の抽出を行っており、今後は評価、改善に取組みます。

その取組の中で、サステナビリティに関連するリスクを分析し未然に防ぐ取組を行うとともに、中長期的な視点で会社に対して規模の大きなリスクの発生が予想される事象などが判明した場合には、リスクマネジメント委員会及び情報セキュリティ委員会と連携し、取締役会へ報告し、リスク回避及びリスクへの対応を実施する体制を取っております。

 

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2027年3月まで15

6.8

研修開催回数と参加人数

2026年3月までに年7回、延べ90人

年8回・延べ139人

年次有給休暇取得率

2026年3月まで毎年88.0

82.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 開発力、技術力等で将来性が不明確であるものについて

当社グループが、コラーゲン・ケーシング、ゼラチン、ペプタイド、コラーゲン化粧品、リンカー、iPS細胞関連等医療用器材など製造販売する製品は、当社の研究所を中心とした開発に負うところが大きく、今後とも各事業における開発には従来通り注力してまいりますが、安価品や新規参入者で競争が激化している経済情勢下において、開発品が良質であっても必ずしも競合に対して優位に立てるとは限りません。

(2) 法的規制に係る影響について

当社グループの販売する製品の一部及び製造する原料の多くは輸入品であり、その多くは関税対象品目であります。また、国内外において販売する製品は、その用途による種々の規格や規制を順守したものでありますが、様々な貿易協定などによる関税率に関する法律の改廃、原料及び製品に対する新規の規則や規程を含む法的な改廃変更により、当社グループの取引が影響を受ける可能性があります。

(3) 大規模災害等の影響について

地震、津波、洪水、台風等の自然災害や火災、停電等の事故、感染症の拡大により、当社グループの事業拠点や原料調達先などが事業を正常に継続できなくなった場合、製品の生産・供給に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。特に、当社グループの主要事業であるコラーゲン・ケーシング及びゼラチン、ペプタイドの生産工場は静岡県に所在しており、富士山噴火などの大きな自然災害が発生した場合においては、当社グループの重要な生産拠点に甚大な被害を与える可能性があります。

また、大規模な感染症が発生した場合、従業員の罹患やサプライチェーンの停滞等により生産・販売活動に支障をきたす恐れがあるほか、社会全体の消費動向の変化によって当社グループ製品に対する需要が減退する可能性もあり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 金利上昇のリスクについて

当社グループは、低金利が続く金融情勢を勘案し、主に固定金利での資金調達を行っているほか、変動金利での借入については金利スワップ等でヘッジし、金利の上昇リスクを一定の割合まで低減させております。ただし、急激な金利上昇があった場合においては、当社グループの経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。

(5) 為替による価格変動リスクについて

当社グループには、原料及び製品の輸入と製品の輸出があり、外国為替相場の変動による影響を受けます。これらの取引においては、為替予約等のヘッジ手段を利用してリスクの軽減を図っておりますが、外国為替相場の急激な変動が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(6) 原料価格の変動リスクについて

当社グループが販売する製品に係る原料としては牛皮・豚皮・魚皮・鱗が多く使用されております。調達先の複数化などの安定的な原料調達によって販売価格の維持に努めておりますが、当該原料市場の需給動向により原料価格が高騰し、この価格の変動が経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの製品は、原料は同じでも多岐にわたる製品を製造して複数の異なる市場や業界に販売することから、原料の価格変動リスクを必ずしも転嫁できない場合があり、原料価格の上昇局面では製造コストのみ増加して当社グループの経営成績に影響を与える場合があります。

(7) 設備投資に係るリスクについて

当社グループは、事業の競争力強化のために生産設備をはじめとする様々な設備投資を行っております。設備投資の実行にあたっては、市場環境の調査などフィージビリティスタディを行って、採算性や投資回収期間の妥当性を慎重に検討し可否を判断しておりますが、市場規模が当初の前提条件から大きく縮小し生産能力が過大となった場合は、事業の収益が悪化して投資額の回収が困難となり、設備等の減損や除却損を計上するなど経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 原料、製品等の在庫に係るリスクについて

当社グループは、各製品の需要動向の予測に基づいて生産計画を立案し、原料等の調達及び生産管理を行っております。しかしながら、需要が縮小し在庫が長期滞留する場合や製品販売価格が大きく下落する場合は、棚卸資産の評価損や廃棄損を計上するなど当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 不動産開発に係るリスクについて

当社グループは、東京と大阪の皮革製造工場の跡地の再開発を進めております。いずれも土地整備等は完了し、暫定利用も含めほぼ順調に運用されている状況であります。今後も再開発計画の達成又は完了を目指し、鋭意この開発事業を推進してまいりますが、不動産開発事業であることから想定外の多額の特別損失や特別利益を計上するなど当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 製品品質に係るリスクについて

当社グループは、製品製造に関してはそれぞれの製造における法令・規制を順守することはもちろん、製造に使用される原料をはじめ副資材、設備また工程等の厳しい管理を行う一方、出荷前には製品の品質検査、並びに不良品や規格外品の選別を行い当社グループの製品への顧客満足度を最重要視しております。

これらの品質管理に加え、万一に備えて生産物賠償責任保険(PL保険)他に加入しておりますが、場合によってはPL保険他で賠償すべき金額すべてをカバーできる保証はなく、当社グループの信用を喪失する恐れ並びに経営成績へ影響を及ぼす可能性があります。

(11) 特許・知的財産権に係るリスクについて

当社グループで開発した独自技術及び知識は特許権を取得する等厳格な管理により、外部への漏洩また外部からの侵害に備えている一方で、第三者の知的財産権を侵害しないよう留意しております。しかし、場合によっては双方が知的財産権を争う事態となり、結果として知的財産侵害とされて賠償の責を負わされる可能性も必ずしも否定はできず、結果として当社グループの経営成績に影響を及ぼすことがないとは限りません。

(12) 海外事業に係るリスクについて

当社グループは、アジア、欧州、北米など幅広い地域において販売及び生産活動を展開しておりますが、現地における予期できない法令等の変更や、政治又は経済的な混乱などによって当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(13) 取引先の信用リスクについて

当社グループは事業を展開するに当たり、国内外の多数の販売先に対して信用供与を行っております。信用供与にあたっては、販売先の財務状況を定期的にチェックし、必要に応じて担保・保証の取得や保険の付保などによって信用リスクの最小化に努めておりますが、それらの債権保全策を講じていない販売先の倒産などにより売掛債権を回収できなくなる可能性があります。また、仕入先の信用不安などにより原材料や商品などを安定的に調達できなくなる場合も想定され、当社グループの経営成績に影響を及ぼすことも考えられます。

(14) 情報セキュリティに係るリスクについて

当社グループは、様々な事業活動を通じて、顧客や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがあるほか、営業や技術、人事など事業上の重要情報を保有しております。そのため、情報管理体制を構築しセキュリティ強化のための対策を講じております。しかしながら、サイバー攻撃等による不正アクセスやデータの破壊、改ざん、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、引き続き、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に緩やかな回復基調で推移しました。一方、長期化する地政学的リスク、金融・資本市場の大幅な変動、継続する物価上昇圧力、労働力不足の深刻化など、国内外の景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような経営環境の下で当社グループは、中期経営計画(2024年3月期-2026年3月期)で策定した基本方針である「成長と健全性の両立」、「収益基盤の改革」及び「人材育成の推進」に基づいて諸施策を講じてまいりました。当連結会計年度は、円安の進行と長期化の影響、燃料及び人件費等のコストアップなどにより収益は大幅に減少することを見込んでおりましたが、製造部門における生産性向上やゼラチン原料価格の低減傾向、食品その他事業の伸長もあり、営業利益は微増、経常利益は前期比3.4%減で着地しました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、49,141百万円(前期比0.2%増)、営業利益は、3,627百万円(同0.4%増)、経常利益は、3,615百万円(同3.4%減)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,457百万円(同3.6%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、営業利益は、セグメント間の内部取引による損益を振替消去した後の金額であり、セグメント利益(セグメント情報)は、これを振替消去する前の金額であります。

 

(コラーゲン・ケーシング事業)

国内販売は、着色ケーシングが順調に推移したものの、フランクサイズが行楽シーズンの天候不順によるイベント中止などにより苦戦しました。また、原料価格高騰に対応したハム・ソーセージメーカーにおける価格改定により小売販売量が縮小したこともあり売上は減少しました。一方、輸出販売は、北米向けが順調に推移した結果、増収となりました。利益面では、原料の値上がりや人件費の上昇はあったものの、歩留まり向上や輸出為替などにより増益となりました。

この結果、コラーゲン・ケーシング事業の売上高は、9,328百万円(前期比1.8%減)、営業利益及びセグメント利益は、1,165百万円(同20.2%増)となりました。

(ゼラチン関連事業)

ゼラチン部門は、惣菜用途が好調に推移したものの、グミキャンディ用途、健康食品向けカプセル用途は競争激化により苦戦しました。ペプタイド部門の国内販売は、価格競争激化と昨年3月に発生した健康食品サプリメントによる健康被害問題の影響を受けて減少しました。海外販売も中国製安価品の攻勢や処理水問題などの影響を受けて減収となりました。利益面では、円安の進行とその長期化に伴う仕入価格の上昇により収益性が低下したものの、下期には原料価格の上昇が落ち着いたことにより前期並みで着地しました。

この結果、ゼラチン関連事業の売上高は、13,242百万円(同4.9%減)、営業利益は、1,589百万円(同0.5%減)、セグメント利益は、1,592百万円(同1.2%減)となりました。

(化粧品関連事業)

化粧品の販売は、競争の激化により苦戦したものの、2024年10月に「ラミニン」を配合した独自性の高い新商品を発売するなど、新たな顧客層の開拓に注力しました。健康食品の販売は、健康食品サプリメントの健康被害報道の影響が一部見られましたが、「ニッピコラーゲン100」の販売が引き続き伸長した結果増収となりました。利益面では、物価上昇に伴うコストアップの影響もあり足踏み状態で推移しました。

この結果、化粧品関連事業の売上高は、7,704百万円(同1.5%増)、営業利益及びセグメント利益は、1,015百万円(同2.7%減)となりました。

(皮革関連事業)

靴用革の販売は、紳士用、婦人用ともに需要の回復により堅調に推移しました。一方、ハンドル用革の販売は、生産工程等の改善などによりコストを削減できたものの、中国経済の減速や自動車メーカーの認証不正問題に伴う生産販売の一時停止などの影響もあり苦戦しました。また、利益面では、輸入為替を含めた原材料、資材、運賃及び人件費等のコストアップが影響して大きく減少しました。

この結果、皮革関連事業の売上高は、7,227百万円(同4.8%減)、営業利益及びセグメント利益は、210百万円(同41.5%減)となりました。

 

(賃貸・不動産事業)

東京都足立区の土地賃貸事業は、大規模商業施設、保育所、フットサルコート、駐車場用地として、大阪府大阪市の土地賃貸事業は、中央区心斎橋における商業施設用地及び浪速区なんばにおける「なんばパークス サウス」(タイの高級ホテル、ライフスタイル型ホテル及びオフィスビル用地)としてそれぞれ有効活用を図っております。

この結果、賃貸・不動産事業の売上高は、1,061百万円(同0.0%減)、営業利益は、836百万円(同1.4%減)、セグメント利益は、837百万円(同1.4%減)となりました。

(食品その他事業)

有機穀物は、安定した需要に支えられ好調に推移しました。外食産業向けのイタリア輸入食材についても、輸入為替の影響はあったものの需要の回復が進み好調に推移しました。バイオ関連製品は、国内外製薬会社や民間研究機関を中心に好調に推移した結果、増収増益となりました。

この結果、食品その他事業の売上高は、10,577百万円(同12.7%増)、営業利益は、595百万円(同35.4%増)、セグメント利益は、591百万円(同39.2%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は70,172百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,221百万円減少しました。これは主に、投資有価証券が471百万円増加した一方で、受取手形及び売掛金が1,340百万円、原材料及び貯蔵品が449百万円、有形固定資産が770百万円減少したことなどによるものです。

当連結会計年度末における負債は、29,603百万円となり、前連結会計年度末と比べ4,487百万円減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が1,276百万円、短期借入金が583百万円、1年内返済予定の長期借入金が777百万円、長期借入金が1,531百万円減少したことなどによるものです。

当連結会計年度末における純資産は、40,569百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,265百万円増加し、自己資本比率は、56.8%となりました。これは主に、利益剰余金が1,824百万円、有価証券評価差額金が252百万円増加したことなどによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ154百万円増加し、8,760百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ税金等調整前当期純利益が31百万円の増加となり、法人税等の支出も増えましたが、売上債権、棚卸資産、仕入債務などが減少した結果、収入は482百万円増加し、4,652百万円の収入(前期比11.6%増)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ設備投資などにより支出が235百万円増加し、815百万円の支出(同40.6%増)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ有利子負債の返済などにより、支出が1,874百万円増加し、3,750百万円の支出(同99.9%増)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

コラーゲン・ケーシング事業

8,378

2.1

ゼラチン関連事業

8,704

△12.6

化粧品関連事業

205

0.6

皮革関連事業

280

△0.9

食品その他事業

386

26.6

合計

17,954

△5.3

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、製造原価によっております。

 

b. 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

コラーゲン・ケーシング事業

△100.0

ゼラチン関連事業

3,815

△10.1

化粧品関連事業

2,201

0.6

皮革関連事業

6,374

△3.6

食品その他事業

8,052

11.6

合計

20,444

0.9

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、仕入価格によっております。

 

c. 受注実績

製品の性質上受注生産は行っておりません。

 

d. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

コラーゲン・ケーシング事業

9,328

△1.8

ゼラチン関連事業

13,242

△4.9

化粧品関連事業

7,704

1.5

皮革関連事業

7,227

△4.8

賃貸・不動産事業

1,061

△0.0

食品その他事業

10,577

12.7

合計

49,141

0.2

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10以上の相手先の該当がないので記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び会計上の見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」の「会計方針に関する事項」に記載のとおり重要な資産の評価方法、重要な引当金の計上基準等においての継続性、網羅性、厳格性を重視して処理計上しております。また、繰延税金資産においては将来の回収可能性を十分に検討した上で計上しております。

国内外情勢に起因する物価動向、消費動向が不透明さを増すなか、国内景気は少しずつ軌道修正しながら維持、回復していくものと想定し、当社における会計上の見積もり(繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金の計上、固定資産の減損等)を行っております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度は、円安の長期化の影響、燃料及び人件費等のコストアップなどにより収益は減少することを見込んでいたものの、製造部門における生産が順調で立ったこと、また、アフリカ豚熱により高騰していた原料価格が落ち着いてきたこともあり、その他のコストアップを軽減できました。

特に食品その他事業では欧米からの輸入が中心ですが、相場の上昇、円安の影響を売価に一定の転嫁ができたことにより、営業利益は微増いたしました。経常利益は前期比3.4%減で着地しましたが、外貨建て債権債務、為替予約の時価評価によるものです。

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。

当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ95百万円増加し、49,141百万円(前期比0.2%増)となり、営業利益は、前連結会計年度に比べ14百万円増加し、3,627百万円(同0.4%増)となりました。

主な内容は、コラーゲン・ケーシング事業は、国内向けフランクサイズが行楽シーズン中の猛暑の影響により販売が減少しました。一方で海外、特に北米向けは安定した需要と輸出為替の影響もあり、増収となりました。また、燃料や人件費等のコストアップがあったものの、生産は計画値を上回り順調に推移したことから増益となりました

ゼラチン関連事業は、ゼラチンは惣菜用途が好調に推移したものの、グミキャンディ用途、健康食品向けカプセル用途は競争激化により苦戦しました。コラーゲンペプチドの国内販売は、価格競争激化と昨年3月に発生した健康食品サプリメントによる健康被害問題の影響を受けて減少、海外販売も中国製安価品の攻勢や処理水問題などの影響を受けて減収となりました。利益面では、円安の進行とその長期化に伴う仕入価格の上昇により収益性が低下したものの、下期には原料価格の上昇が落ち着いたことにより前期並みの着地となりました。

化粧品関連事業は、化粧品の販売は競争の激化により苦戦したものの、2024年10月に「ラミニン」を配合した独自性の高い新商品を発売するなど、新たな顧客層の開拓に注力しました。健康食品の販売は、健康食品サプリメントの健康被害報道の影響が一部見られましたが、「ニッピコラーゲン100」の販売が引き続き伸長した結果増収となりました。利益面では、物価上昇に伴うコストアップの影響もあり足踏み状態で推移しました。

皮革関連事業は、靴用革の販売は、紳士用、婦人用ともに需要の回復により堅調に推移しました。また、アパレル衣料用やライダーブーツ用の素材も好調に推移しました。一方、ハンドル用革の販売は、生産工程等の改善などによりコストを削減できたものの、中国経済の減速や自動車メーカーの認証不正問題に伴う生産販売の一時停止などの影響もあり苦戦しました。また、利益面では、輸入為替を含めた原材料、資材、運賃及び人件費等のコストアップが影響して大きく減少しました。

食品その他事業は、外食産業向けのイタリア輸入食材及び有機穀物は、安定した需要に支えられ好調に推移しました。輸入為替の影響はあったものの、一定程度の価格転嫁ができたことで好調に推移しました。バイオ関連製品は、国内外製薬会社や民間研究機関を中心に順調に推移した結果、増収増益となりました。

当連結会計年度における経常利益は、外貨建て債権債務、為替予約の時価評価により前連結会計年度に比べ125百万円減少し、3,615百万円(同3.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ90百万円減少し、2,457百万円(同3.6%減)となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの各事業は、国内外市場で製品の販売を行う一方、製品原料や関連資材の買い付けも国内外の市場より調達しております。このため、それぞれの市場動向や規制、さらに海外の場合は、特に為替相場等の大きく急激な変動も各事業の業績に大きな影響を与える場合があります。諸物価の高騰、インフレなどによる個人の消費活動の停滞なども各事業の業績に大きな影響を及ぼしております。

また、東アジアや世界情勢の悪化、地政学リスクの顕在化などに伴い、様々な影響が出ることが予測されております。これらは、エネルギー、原材料、薬品、物流など多岐にわたっての価格高騰に見舞われ、当社グループにおきましては、コラーゲン・ケーシング事業、ゼラチン関連事業における製造コスト及び全報告セグメントにおいて仕入価格の急上昇を引き起こしております。ある一定程度の価格転嫁ができなければ、経営成績に重要な影響を与える要因になります。

そのほか当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 戦略的現状と見通し

コラーゲン・ケーシング、ゼラチン関連、化粧品関連、皮革関連などの各報告セグメントにおきましては、顧客や市場ニーズを取り入れた新商品の開発により一層の高付加価値化を目指すとともに、宣伝広告等により商品や企業の認知度の向上を図っております。生産面では、工程の見直しなど、さまざまなコスト低減方法を常に模索し、販売面では、拡販及び価格の適正化を図りながら、収益体制の改善、強化に努めております。

原材料価格、エネルギーコストなどの高止まりと円安幅の拡大、長期化の影響は、仕入価格に大きな影響を及ぼします。当連結会計年度においては、高騰し続けていた一部の原料価格が安定してきていることから生産性の向上をさらに図るべく注力してまいります。製造工程の短縮、生産速度の向上、不良率の低下、経費の削減など様々な施策を講じてコスト低減を図り、収益性の確保に努めてまいります。

化粧品関連事業においては、好調な健康食品分野での拡販、基礎化粧品分野での巻き返しを図り、また、それぞれの新規商品開発に取組んでまいります。

なお、賃貸・不動産事業におきましては、所有土地の事業化計画の実現と効率的運用を推進してまいります。今後の課題は、東京都足立区の所有地においても早期の本格的な事業化を目指し、収益性を十分考慮した運用を行い、当社グループの安定的な収益基盤の礎としてまいります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料・商品などの仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動資金であります。それ以外の投資などを目的とした資金需要は、生産設備をはじめ事業拡大及び賃貸事業に伴う投資を行っております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、資金の流動性に関する対応としては、現在未使用の状況にあるコミットメントライン枠の活用があります。また、短期的には手許現預金は、高水準の状態にあります。今後は、国内外の経済情勢が不確実性の高いことを認識したうえで、設備投資も進めながら手許現預金及び有利子負債を活用してまいります。

なお、資金調達に影響を及ぼす財務制限条項等への抵触リスクは、現状においてはグループ会社ともに低いと判断しております。また、今後の有利子負債の約定弁済につきましても手許現預金及び営業キャッシュ・フローなどで履行できると判断しております。

当連結会計年度末の現預金は、前連結会計年度末と比べ154百万円増加しておりますが、増加した配当原資及び法人税等の納付を予定していることが主な要因であります。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループは、100年間に亘り、皮革事業において我が国のリーディングカンパニーとして製造・販売を行ってまいりました。その間、皮革事業で培った技術・知識・経験を礎に研究開発を重ね、新たにゼラチン、コラーゲンペプチドの事業を国内トップクラスに、また、コラーゲン・ケーシング事業を国内で唯一、世界の四大メーカーの一角を担うまでに、さらには、コラーゲン基礎化粧品「スキンケアジェル」と健康食品「ニッピコラーゲン100」の事業を当社主力事業のひとつに育成してまいりました。また、バイオマトリックス研究所で長年培った生体工学技術を生かし、再生医療分野への進出を果たしました。今後は、同分野を主力事業の一角にするべく注力してまいります。これらの事業を更に充実拡大させ、以って当社の理念である高品質なものづくりを通して人々に貢献し、より豊かな社会の実現を目指してまいります。そのためには、事業環境の変化を捉え、既存の知財に加え事業で得た新たな技術・経験を活かし、顧客や社会の要望に応えられる高付加価値商品を世に送り出して行かねばなりません。また、世界各地で紛争と長期化による資源価格高騰やアメリカ政府による関税政策などによる世界経済の混乱やインフレなど、また、それに伴う為替の急激かつ大きな変動などで国内景気は、今後も不透明な環境が続くものと思われます。

 

次期の見通しにつきましては、内需を中心に景気は緩やかな回復基調が続くと期待される一方、米国関税政策の動向、為替や金利の変動幅の増加、不安定な世界情勢による資源価格の高騰、また、海外経済の減速による影響が、国内景気下押しの圧力となる可能性もあり、先行きは不透明な状況であります。

このような環境の下で当社グループは、引き続き、生産性の向上を最大限に図り、競争力のある商品づくりに取組んでいくとともに、社会全体の変容に対応しながら市場ニーズを的確に捉えた高付加価値商品を投入し、コストの大幅な変動に対しては価格の改定などの対応も行いながら、収益基盤の拡充に注力してまいります。

当社は2023年9月に、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画(2024年3月期-2026年3月期)を策定いたしましたが、2025年3月期の時点で、営業利益、ROE及びROIC目標を前倒しで達成したため、今般、2026年3月期を1年目とする新中期経営計画(2026年3月期-2028年3月期)を策定し、2025年5月23日に公表しております。新中期経営計画では、引き続き、健康・医療関連分野の深耕に注力するとともに、既存事業の収益力強化に取組んでまいります。

詳細につきましては、当社ホームページ掲載の「中期経営計画(2026.3-2028.3)」をご参照ください。

(アドレス https://www.nippi-inc.co.jp/ir/policy/mid_tern.html)。

 

そのほか当社グループとしての問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

 

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 

当連結会計年度の研究開発活動は、基礎科学から製品化を目指す応用技術開発まで幅広く実施しました。

主な内容としましては、細胞外マトリックスタンパク質や3次元細胞培養関連製品の開発、コラーゲン経口摂取の栄養生理学的研究、大学・企業等と連携した新規組換えタンパク質(特にがん・免疫分野向け)の開発、そして国内外アカデミアとのコラーゲン等ライフサイエンス分野の基礎研究があります。

具体的な研究開発項目につきまして、以下のとおりであります。

 

(1) 医療用途に適したコラーゲン・ゼラチンについて、医療機器の原材料供給や自社製品開発、さらに各種研究試薬用コラーゲンの開発に取組んでおります。

(2) 組換えタンパク質の効率的な製造法「spERtテクノロジー」の技術開発を推進しております。この技術は、従来法では生産が難しいタンパク質(難発現タンパク質)の産生にも適しており、これを活用して多様なタンパク質の産生細胞株樹立と効率的な精製技術開発を進めております。本技術により付加価値の高いタンパク質を低コストで生産し、利益向上を目指してまいります。特に細胞外マトリックスやがん・免疫分野に注力しております。

(3) コラーゲン経口摂取の効果について、ヒト試験による疲労感軽減及び活力感向上作用を国際学術誌で報告しました。コラーゲンタンパク質に特有のジペプチドPro-Hypや、血液中で長期間安定に存在するGly-3Hyp-4Hypトリペプチドの生理的作用のメカニズムの研究や吸収性評価もしております。当社が作成した肌に関する機能性表示食品制度のシステマティックレビューとそれに紐づけられたコラーゲンペプチドが、複数の他社商品に採用され届出受理されております。

(4) 3次元細胞培養分野では、動物実験代替法の重要性の高まりを受け、培養基材「MatriMixシリーズ」を開発・販売しております。ECM成分を組み合わせ、薬剤スクリーニング、病態解明、安全性試験など広範なニーズに応える製品群(汎用品からカスタマイズ品まで)を継続して開発中であります。

(5) コラーゲンを原材料とする医療機器への応用を目指し、高精細な造形性を持つ高濃度コラーゲンの応用開発を、主にアカデミアとの共同研究で進めております。

(6) ヒトラミニン-511のE8部分である組換えタンパク質に関して、iMatrix-511を製造販売しておりますが、511以外のラミニンアイソフォームに関しても、上述の「spERtテクノロジー」の導入を進めて、収量増大を図る細胞株を開発しております。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は、595百万円であります。
 また、事業のセグメント別の研究開発費は、バイオマトリックス研究所において各セグメントの総合的、横断的研究開発活動を行っていること、また、経営資源の配分の決定及び業績を評価するための検討対象としていないことから区分しておりません。