第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2023年3月30日現在において判断したもの

です。

 

(1)経営の基本方針

当社グループでは、グループの全ての事業活動、社会活動を貫く企業理念としてのグループビジョンLook Beyond を定めています。このグループビジョンにおいて、当社グループが世の中に提供すべき価値、グループの存在意義を示すものとして「私たちの使命」を掲げています。

 

〔私たちの使命〕

“AGC、いつも世界の大事な一部”

 ~独自の素材・ソリューションで、いつもどこかで世界中の人々の暮らしを支えます~

 

 また、グループビジョンLook Beyond では、以下のとおり、グループ全体で共有すべき最も重要な価値観及びグループメンバーが世代を超えて受け継ぎ、実践していく基本精神(スピリット)を掲げています。

 

〔私たちの価値観〕

  「イノベーション&オペレーショナル・エクセレンス(革新と卓越)」、

  「ダイバーシティ(多様性)」、「エンバイロンメント(環境)」、「インテグリティ(誠実)」

〔私たちのスピリット〕

  “易きになじまず難きにつく”

 

(2)中期経営計画 AGC plus-2023 の進捗状況について

<当社グループのグループビジョン及び中長期の経営方針・経営戦略>

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 当社は、2021年2月に、長期経営戦略「2030年のありたい姿」及びその実現のための中期経営計画 AGC plus-2023 を策定し、ポートフォリオ経営の推進による資産効率の向上に取り組んでおり、全社ROCE(営業資産利益率)10%以上を目指しています。

 

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 AGC plus-2023 の2年目にあたる2022年度は、戦略事業、コア事業それぞれにおいて設定した主要課題に取り組みました。戦略事業では、EUV露光用フォトマスクブランクス(日本)や合成医薬品(スペイン)、遺伝子・細胞治療向けCDMO(米国)の生産能力増強を決定し、エレクトロニクスやライフサイエンスを中心として積極投資を行いました。

 またコア事業では、東南アジアクロールアルカリ事業において、インドシナ半島事業会社の統合・大規模生産能力増強(タイ)を決定し事業基盤強化に取り組むとともに、ガラス原料であるソーダ灰生産・販売子会社の売却(米国)や自動車用ガラス事業の構造改革を実施しました。一方、クロールアルカリ製品市況の下落や原燃材料価格高騰の影響を大きく受けました。

 

 AGC plus-2023 の最終年度となる2023年度も、引き続き各事業の主要課題に取り組みます。

 

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 また、事業ポートフォリオ変革による営業キャッシュ・フローの拡大に加え、政策保有株式などの資産売却により得たキャッシュを、戦略事業・成長事業への投資に重点配分します。

 なお、株主還元については、基本方針として連結配当性向40%を目安に安定的な配当を継続しつつ、自己株式取得を機動的に実施することとしています。この方針に則り、中長期的な財務健全性を維持しつつ、成長事業への投資機会を確保しながら、配当及び自己株式取得を実施する予定です。

 

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 以上の取り組みの結果、本中期経営計画で掲げた財務目標について、当初(2021年)発表時の目標数値に対してはROEを除き大幅に上回る見通しですが、2022年に上方修正した目標に対し、営業利益及びROEは未達となる見通しです。

 

<財務目標>

 

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<事業セグメント別業績イメージ>

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(3)「2030年のありたい姿」実現に向けて

<当社グループの創出したい経済的・社会的価値>

 当社は2021年に発表した「2030年のありたい姿」実現のために、「サステナビリティ経営の推進」と「事業ポートフォリオ変革」に取り組むことで、社会的・経済的価値の両立による成長を目指しています。

 

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<「2030年のありたい姿」の実現に向けた取り組み>

① 事業ポートフォリオ変革

 当社は、2016年2月に発表した前長期経営戦略「2025年のありたい姿」において、既存事業を「コア事業」、成長事業での新事業群を「戦略事業」と定義しました。以来、コア事業の深化と戦略事業の探索による「両利きの経営」の推進を通じて、市況変動に強く、資産効率・成長性・炭素効率の高い事業ポートフォリオの構築を目指しています。また、現在の長期経営戦略「2030年のありたい姿」では、事業ポートフォリオ変革の方向性を明確にし、取り組みを更に加速することを宣言しています。

 

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 市況変動に強く、資産効率・炭素効率ともに高い戦略事業(エレクトロニクス、ライフサイエンス、モビリティの各事業)については、引き続き積極拡大に取り組むことで成長を加速し、2024年度に営業利益1,000億円を目指します。

 

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 コア事業については、成長事業と位置付ける化学品でこれまでの拡大投資が奏功し、また建築ガラスで北米事業の譲渡など構造改革が進展した結果、両事業の資産効率・安定性はポートフォリオ変革の取組み前(~2016年)から大きく向上しました。一方、オートモーティブ、ディスプレイは収益性・資産効率に課題を残しています。

 化学品・建築ガラスにおいてこれまでの取り組みを継続するとともに、オートモーティブにおいて価格政策変更や欧州生産拠点・生産ラインの統廃合を行います。またディスプレイにおいては、低収益のサイズのガラス基板から撤退し大型パネル用ガラス基板に集中するなど、生産ラインの統廃合を含めた抜本的事業構造改革を進めます。これらの取組みにより、コア事業全体のさらなる収益向上と安定化を目指します。

 

 以上の戦略事業・コア事業の取り組みにより、2030年度に全社営業利益3,000億円を達成し、炭素効率・資産効率の高い戦略事業の割合を50%超とすることを目指します。

 

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② サステナビリティ経営の推進 ~人財と企業文化の継続的な進化~

 当社は、創業者である岩崎俊彌が創業の精神として「易きに馴染まず難きにつく」「人を信じる心が人を動かす」を掲げたように、115年にわたり「人財」を大切にしています。創業以来培ってきた「チャレンジ」を奨励する企業文化のもと、従業員1人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、その総和により強い組織を作り出し、事業目標や組織目標が実現された結果、競争優位性を築き、会社と個々人の成長を生み出してきました。

 現在もチャレンジを奨励する文化のさらなる追求を経営の最優先事項に位置づけ、CEOによる国内外の従業員との対話など経営陣が様々な活動にコミットすることで、この企業文化の継続的な進化を目指します。

 

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 とりわけ日本の社会課題となっているジェンダー関連では、女性活躍にかかわる目標として2030年の女性役員(取締役及び監査役)比率30%、女性執行役員比率20%などの数値目標を掲げ、その達成に向け個別育成計画に基づく育成プログラムの実施など様々な施策を推進しています。

 また、多様な人財が個々人の能力を最大限に活かす環境を整備するため、2022年にCEOを議長とするダイバーシティ・カウンシルを設置しました。目標達成に向け、ダイバーシティ推進施策を加速します。

 

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 当社は、競争優位性の維持・発展に従業員エンゲージメントは不可欠という考えのもと、従業員エンゲージメント向上活動を行っています。2022年にグループ全従業員を対象として実施した調査では、前回調査(2019年)に続き、全ての項目でエンゲージメントスコアが改善しました。2030年までにグローバル好業績企業平均と同等のエンゲージメントスコア達成を目指し、今後も様々な活動に取り組みます。

 

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 当社グループは、ポートフォリオ変革とサステナビリティ経営の追求により「2030年のありたい姿」を実現し、社会的価値・経済的価値の創出を通じて、世の中、お客様・取引先様、従業員、投資家の皆様、将来世代など全てのステークホルダーに様々な価値をプラスします。

 

2【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

①短期~中期のリスク

短期~中期のリスクに関しては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④内部統制システムの整備の状況」に記載の「リスク管理体制」に基づき、当社グループのリスク管理体制に関する基本方針である「AGCグループ統合リスクマネジメント基本方針」を定め、リスク管理及び危機対応の体制を整備しています。

<リスク管理>

社内規程に基づき、当社グループにおける重要なリスク要因を定め、リスク管理状況を定期的に当社経営会議、取締役会で審議し、監視することとしています。また、当社グループの事業運営上の個別のリスクについては、コーポレート職能部門、社内カンパニー、SBU(戦略事業単位)が、事業・案件ごとにリスクの分析や対策を検討し、必要に応じ経営会議、取締役会で審議しています。当社グループのコンプライアンス、環境、災害、品質等に関するリスクについては、当社の各所管部門が、ガイドライン等の制定・周知、研修、監査等を適宜実施しています。なお、重要なリスク要因については、リスク発現時のグループ経営への影響度と発現の可能性を加味して、定期的に見直しています。

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<発現したリスクへの対応>

社内規程に基づき、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性のある不測の事態の発生に備え、「Bad News First」の考え方の下、社長執行役員に迅速かつ確実に情報を報告し、共有するための危機管理レポートラインを設定しています。加えて、社長執行役員の判断により、直ちにグループ対策本部を設置し、迅速かつ適切な初期対応が取れる体制を整備しています。

 

②長期のリスク

中期経営計画では、グローバルの社会課題・リスクの将来動向やお客様が解決に取り組む社会課題等を踏まえ、当社経営の長期的な方向性や企業価値に影響を及ぼしうる重要機会、重要リスクを、当社グループのマテリアリティとして特定しています。その上で、機会を活かし、リスクに対処することを狙いとしたサステナビリティ目標を設定しています。サステナビリティに関わる取組みの意思決定機関として、CEOを委員長とし、CTO、CFO及び各部門の長を構成員とするサステナビリティ委員会を設置しています。重要リスクについても、取締役会による監督のもと、同委員会が対処方針の決定、目標の進捗状況を踏まえた今後の施策の審議等を実施することとしています。

 

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(2)事業等のリスク

以下において、当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。但し、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2023年3月30日現在において判断したものです。

 

<短期~中期のリスク>

①市場の経済状況

 当社グループの製品に対する需要は、建築・建材業界、自動車業界、電子・ディスプレイ業界、及び化学品業界等の市場動向の影響を受けます。また、当社グループの製品販売地域は、日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパをはじめ、多岐にわたっており、各国・地域の経済状況は当社グループの製品の販売に影響を与えます。当社グループは、生産性の向上を図るとともに、固定費・変動費の削減を推進し、事業環境の変化に影響されにくい収益体質づくりを目指していますが、これらの関連業界の需要減少や販売地域での景気減退が、販売数量の減少や価格の下落を通じて当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

セグメントごとの状況は、以下のとおりです。

(ⅰ)建築ガラス

 建築ガラスセグメントでは、日本・アジア、欧州のそれぞれに開発・生産拠点を構築し、グローバルに製品を提供しています。製品の需要は、地域ごと、国ごとの景気により変動する建設投資に連動しており、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。

(ⅱ)オートモーティブ

 オートモーティブセグメントでは、日本・アジア、欧州、米州のそれぞれに開発・生産拠点を構築し、グローバルに製品を提供しています。自動車用ガラスの需要は、地域ごと、国ごとの景気変動等に連動する自動車生産台数の影響を受け、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。

(ⅲ)電子

 ディスプレイ事業の製品は液晶TV、スマートフォン、タブレット端末等に使用されています。同ビジネスについては、市場動向の変化、顧客のマーケットシェアの変動等が起きることが想定されます。当社グループは顧客ポートフォリオも考慮し拡販に努めていますが、市場や顧客の動向が同事業の収益に影響を与える可能性があります。電子部材事業については、半導体業界、オプトエレクトロニクス業界等に関連する企業が主な顧客です。これらの顧客の業績は、半導体、スマートフォン、通信インフラ、産業機器等の市場動向に依存するため、同事業の収益もこれらの市場動向の影響を受ける可能性があります。

(ⅳ)化学品

 エッセンシャルケミカルズ事業については、日本及びインフラ整備が進展する東南アジアを中心に生産拠点を構築し、事業を展開しています。製品の需要は、主に地域ごと、国ごとの経済成長率や基幹産業の稼働状況に連動しており、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。パフォーマンスケミカルズ事業においては、輸送用機器業界や半導体業界、建設業界に関連する企業が主な顧客であり、同事業の収益もこれら業界の市場動向の影響を受ける可能性があります。

(ⅴ)ライフサイエンス

 ライフサイエンスセグメントにおいては、医薬・農薬業界の経済状況及び新薬等の開発状況の影響を強く受け、同セグメントの収益もこれらの動向の影響を受ける可能性があります。

 

②グローバルな事業展開
 当社グループでは、日本における事業活動に加え、製品の輸出入及び海外における現地生産等、海外においても事業活動を展開しています。これらグローバルな事業展開に関するリスクとして、事業を展開している国及び地域における政治経済情勢の悪化、輸出入・外資の規制、予期せぬ法令の改変、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生その他の要因による社会的混乱等が考えられます。当社グループとしては、当該政治経済情勢や各国・地域の規制の動向等について注視し、状況に応じた対応がとれるよう努めていますが、これらの事象の発生により、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

③競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク
 当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在します。当社グループでは、競争優位性を維持できるよう、顧客ニーズの把握、新技術・新製品の開発・事業化に努めていますが、技術や顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や、新技術・新製品の開発・事業化期間が長期化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

④製造に係るリスク

 当社グループでは、全ての工場設備の予防保全に努め、設備の安全審査、保安管理体制等の強化を図るとともに、外部に製造を委託した場合には、事業継続の観点から複数の委託先の確保に努めています。しかしながら、当社グループ又は当社グループの製造委託先において重大な生産トラブル等が発生し、一時的又は長期にわたる生産の中断等があった場合、製品によっては代替生産できないものもあり、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤資材等の調達
 当社グループの生産活動で使用している電力、燃料ガス、重油並びに原材料の価格変動等が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、一部原燃材料については商品デリバティブ取引等により価格変動リスクをヘッジしていますが、原燃材料価格の上昇による影響を完全に排除できない可能性があります。また、当社グループの生産活動では、一部調達先が限られる特殊な原料、資材等も使用しており、代替原材料の検討並びに当該原料・資材等の複数購買の推進に努めていますが、これらについての供給の逼迫や遅延、価格変動等が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥公的規制
 当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けています。当社グループでは、関係法令の改変動向を注視し、情報収集に努めていますが、関係法令の改変は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦環境規制・気候変動対応
 当社グループでは、グループビジョンである「私たちの価値観」の一つとして「環境」を定めています。環境に関するあらゆる適用法規制を遵守するとともに、法規制値より厳しい自社管理基準を設けて運用するなど、事業活動に伴う環境負荷を抑制し地球環境保全に努めています。
 しかしながら、環境規制リスクとして、当社グループの製造工程で排出、又は製品に含有した化学物質等により非意図的な環境汚染等が発生した場合に、社会的信用の低下、事業活動の制限や費用の発生などにより当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。また、各国又は地域での各種法規制の改正や強化により追加的費用や設備投資が必要になった場合、あるいは製品開発、生産、販売・サービス活動等に支障をきたした場合、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。
 サステナビリティ対応として、気候変動対応、資源の有効利用、自然資本保全に関する目標を設定して積極的な活動をバリューチェーン全体で実施していますが、物理的、制度上への適応リスク・移行リスクを認識しています。
 具体的には、気候変動に起因する物理的リスクとして台風や洪水等の自然災害が深刻化した場合や、渇水等による水資源量リスクが深刻化した場合に、当社グループの生産活動が影響を受ける可能性があります。さらには、低炭素社会への移行リスクとして、一部地域で導入され始めている炭素税等のカーボンプライシングが本格的に導入された場合、これらの規制等に対応するために必要な費用負担が当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。また、温室効果ガス排出規制等の気候変動対応に係る各国・地域における規制の強化に対応できない場合、パリ協定に整合する温室効果ガス排出削減目標が達成できない場合、ステークホルダーからの脱炭素化への事業による貢献への要請の高まりに対応ができない場合に、レピュテーション及び社会的信用の低下による機会損失が発生する可能性があります。循環経済システム、カーボンフットプリントの標準化・法制化の動きなど関連サステナビリティ課題への対応不十分の場合にも、市場での機会損失につながる可能性があります。

 

⑧製造物責任
 当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて取り組んでいますが、予期せぬ事情により大規模なリコール等に発展する品質問題が発生する可能性が皆無とはいえず、この場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨知的財産権
 当社グループでは、現在の事業活動及び将来の事業展開に有用な知的財産権の取得に努める一方、第三者の知的財産権や事業状況の調査を行い問題の発生の防止を図っています。しかし、第三者から知的財産に関する訴訟等を提起されたり、第三者が当社グループの知的財産権を侵害したりする可能性は皆無とはいえず、この場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩訴訟・法的手続

 当社グループは、国内及び海外事業に関連して、訴訟等の対象となるリスクがあり、現在、当事者となっている訴訟等もあります。これらの訴訟等において、当社グループにとって不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪事故災害、自然災害・感染症等の影響

 当社グループは、組織的な環境・保安防災・労働安全衛生管理体制の構築と運用及び設備の安全化や点検・保守管理により、労働災害及び生産設備等の事故防止に取り組んでいます。しかしながら、重篤な労働災害や重大な火災・爆発・漏洩事故等の不測の事態が発生するリスクが考えられます。

 また、当社グループは、自然災害・感染症等が発生した場合に備えて、グループ内の主要拠点においては、地震・強風・洪水・感染症等に関するリスクを評価し、ハザードの高い拠点では事業継続計画を策定しています。しかしながら、事業継続計画の想定を超えた大規模な地震・台風・洪水等の自然災害や未知の感染症により、事業活動の中断、生産設備への被害、交通遮断による製品輸送停止など、不測の事態が発生するリスクが考えられます。

 当社グループ又は当社グループの構築するサプライチェーンにおいてこれらの不測の事態が発生したことにより、一時的又は長期にわたる生産の中断があった場合、製品によっては代替生産できないものもあり、お客様への供給に支障が生じる可能性や、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫為替レートの変動
 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
 また、当社グループは、日本をはじめとする世界各国の生産拠点で生産活動を行っており、その製品を複数の国に輸出しています。各国における生産及び販売では、外貨建で購入する原材料や販売する製品があります。したがって、為替レートの変動は、購入する原材料の価格や販売価格の設定に影響します。当社グループでは、短期的な為替レートの変動に対応するためヘッジ取引等の対策を講じるとともに、グローバルに生産拠点を配置して生産を行うなどリスクの軽減に努めていますが、大幅な為替レートの変動の結果、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬退職給付債務
 当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて計算されています。年金資産の運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合等は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭非金融資産の減損

 当社グループの連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産、のれん及び無形資産等の非金融資産の減損について、今後、収益性の低下及び公正価値の変動等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 特に、電子セグメントに属するディスプレイ事業においては、主にテレビ・PC等販売の伸び悩み、円安・原燃材料高騰によるコスト増の影響により営業損益が悪化しており、有形固定資産等が属する資金生成単位に減損の兆候が認められ、減損テストを実施した結果、73,673百万円の減損損失を認識しております。また、電子セグメントに属するスーパーハイエンドCCL事業及び産業用フィルム事業(プリント基板材料事業等)にかかるのれん及び無形資産等について、米中貿易摩擦及び中国における新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた需要減を踏まえ、収益性の著しい低下などの減損の兆候が認められ、減損テストを実施した結果、32,223百万円の減損損失を認識しております。さらに、ガラスセグメントに属する欧州自動車用ガラス事業(西中欧)においては、前連結会計年度以前より営業損失が継続していることに加え、主にロシア・ウクライナ情勢を契機とした自動車需要低迷により事業環境がより悪化しているため、有形固定資産等が属する資金生成単位に減損の兆候が認められ、減損テストを実施した結果、6,700百万円の減損損失を認識しております。加えて、ロシアにおける建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業においては、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴う経済環境の悪化により、有形固定資産等が属する資金生成単位に減損の兆候が認められ、減損テストを実施した結果、建築用ガラス事業で9,922百万円、自動車用ガラス事業で3,664百万円の減損損失を認識しております。

 

⑮情報セキュリティ
 当社グループの事業活動における情報システムの重要性は非常に高まっており、システムやデータ等の情報資産の保護に努め、またセキュリティインシデント予防対策及び発生時には影響を最小限に抑える対策を講じていますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセスその他不測の事態により、重要な業務の中断や機密データの漏洩等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

<長期のリスク>

①気候変動問題への対応について

2015年のパリ協定合意以降、脱炭素化の流れが加速しており、エネルギー関連政策・法規制の厳格化が想定されるとともに、企業に対する温室効果ガス排出の実質ゼロ実現への社会的要請が強まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、2050年目標として「自社の事業活動に伴う排出量ネットゼロを目指すとともに、製品・技術を活かして世界のカーボンネットゼロ実現に貢献」することを定めています。当社グループは、2050年目標の達成に向け、温室効果ガス排出量の少ない製造技術・設備の開発など、温室効果ガスの排出源に応じた削減策の実施に努めるとともに、本項目を重要機会とも捉え、製品ライフサイクルにおける省エネ・創エネ効果を有する製品の拡販、再生可能エネルギー普及に寄与する事業モデルの構築などに努めてまいります。

 

②資源の有効利用について

 レアアース等の枯渇性資源に関する利用規制の厳格化や都市化の進展に伴う水資源需要の増加による生産活動への影響が想定されるとともに、循環型経済の加速に伴う廃棄物削減・リサイクルの社会的要請が強まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、再生原材料や再生資材の活用、埋立て処分の削減に努めるとともに、本項目を重要機会とも捉え、水不足地域における地下水・雨水浄化に寄与する製品の拡販、枯渇性資源使用量の少ない製品・生産プロセスの開発、リサイクル・リユース性に優れた製品の拡販などに努めてまいります。

 

③社会・環境に配慮したサプライチェーンについて

 サプライチェーンのグローバル化・複雑化に伴い、サプライヤーや外部委託先における強制労働・児童労働等の違法雇用問題の発生や、環境規制強化等による操業停止、規制違反等の発生が想定されます。当社グループとしても、当該リスクを見据え、環境負荷低減などの取組みを推進するなどサステナブルな調達等を定めた「AGCグループ購買取引基本方針」に加え、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組み、既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により取引先との共存共栄の構築を目指す「パートナーシップ宣言」を表明し、人権尊重・環境保護を重視したサプライヤー管理に努めてまいります。

 

④公正・平等な雇用と職場の安全確保について

雇用におけるコンプライアンスや労働者の人権尊重の動きや、未熟練者や高齢者の増加に伴う製造拠点の安全対策の必要性が高まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、従業員エンゲージメントの向上、重篤災害・休業災害の発生防止に努めてまいります。

 

⑤地域社会との関係・環境配慮について

世界各地での都市化進展による生活圏拡大や周辺の生物多様性維持への関心、新興国での生活水準向上に伴うQOL(生活の質)向上への意識が高まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、水使用量の削減や生物多様性の保全、環境事故の撲滅に努めるとともに、拠点設置地域との良好な関係構築を進めてまいります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度期間(2022年1月1日から2022年12月31日まで)における当社グループを取り巻く世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による移動制限等が多くの国で緩和され、経済活動の再開が進みました。しかしながら、ロシア・ウクライナ情勢を背景としたエネルギー価格の上昇、インフレの抑制に向けた世界的な金融引き締め、中国での新型コロナウイルス感染の再拡大による経済活動抑制の影響により、世界経済の成長率は鈍化しました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(ⅰ) 財政状態

イ. 資産

 当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末比1,480億円増の28,140億円となりました。これは主に、棚卸資産が増加したことによるものであります。

ロ. 負債

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末比438億円増の12,284億円となりました。これは主に、有利子負債が増加したことによるものであります。

ハ. 資本

 当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末比1,042億円増の15,856億円となりました。これは主に、前期末比で円安になったことにより在外営業活動体の換算差額が増加したことによるものであります。

 

(ⅱ) 経営成績

 当社グループは、2021年2月に長期経営戦略「2030年のありたい姿」を策定しました。この戦略では、長期安定的な収益基盤となる「コア事業」と高成長分野である「戦略事業」を両輪として、最適な事業ポートフォリオへの転換を図り、継続的に経済的・社会的価値を創出することを目指します。この長期経営戦略「2030年のありたい姿」を確実に実現するため、2021年1月1日から2023年12月31日までを期間とする中期経営計画 AGC plus-2023 を策定しました。当計画においては、コア事業の深化と戦略事業の探索を実現する“両利きの経営”を更に追求するとともに、サステナビリティ経営の推進とDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による競争力の強化を主要な戦略として設定しました。

 当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)においては、戦略事業では、日本でのEUV露光用フォトマスクブランクスの生産能力増強を決定したほか、スペイン拠点での合成医薬品CDMOと米国拠点での遺伝子・細胞治療CDMOの製造能力増強を決定しました。コア事業では、東南アジアのクロールアルカリ事業基盤強化を目的としたインドシナ半島のクロールアルカリ事業3社の統合再編を進め、タイにおける生産能力増強を決定しました。一方、米国のソーダ灰製造販売会社 Solvay Soda Ash Joint VentureとSolvay Soda Ash Extension Joint Ventureの株式を譲渡し、北米建築用ガラス事業からの撤退を完了しました。また、中国の子会社である艾杰旭特種玻璃(大連)有限公司の当社持分譲渡を決定するなど、最適な事業ポートフォリオへの転換を着実に実行しています。

 このような事業環境の下、当連結会計年度の業績においては、戦略事業では、ライフサイエンス製品やエレクトロニクス製品の業績が順調に拡大しました。コア事業では、クロールアルカリ・ウレタンで、苛性ソーダなどの市況が期前半に堅調に推移しました。建築用ガラスは、欧州を中心に販売価格が上昇しました。自動車用ガラスは、半導体を中心とした部品供給不足の緩和による自動車生産台数の緩やかな回復を受け、当社グループの出荷も増加し、また欧州を中心に販売価格が上昇しました。フッ素・スペシャリティは、半導体関連向けを中心にフッ素関連製品の出荷が増加しました。一方で、ディスプレイ用ガラスの出荷は減少しましたが、コア事業全体では増収となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は、為替の影響もあり前連結会計年度比3,385億円(19.9%)増の20,359億円となりました。営業利益は、全ての事業において原燃材料及び電力の価格が上昇したこと、また液晶用ガラス基板において大幅な需要減少などの影響を受けたことから同222億円(10.8%)減の1,839億円となりました。税引前利益は、ディスプレイ事業、プリント基板材料事業、ロシアにおける建築用・自動車用ガラス事業、欧州自動車用ガラス事業(ロシアを除く)に係る減損損失が発生したことから同1,515億円(72.1%)減の585億円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、同1,270億円減の32億円の損失(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期純利益1,238億円)となりました。

 

<当連結会計年度の業績>

(億円:千万単位四捨五入)

売上高

2兆359億円

(前連結会計年度比 19.9%増)

営業利益

1,839億円

(前連結会計年度比 10.8%減)

税引前利益

585億円

(前連結会計年度比 72.1%減)

親会社の所有者に帰属する当期純利益

△32億円

(-)

 

 なお、営業利益(前連結会計年度比△222億円)の主な増減要因は以下のとおりです。

販売数量・品種構成

+105億円

販売価格

+1,875億円

原燃材料価格

△1,598億円

コストその他

△604億円

 

<報告セグメント別の概況>

 

(億円:千万単位四捨五入)

 

 

売上高

営業利益

第98期

第97期

第98期

第97期

ガラス

9,015

7,343

229

273

電子

3,072

3,050

147

368

化学品

7,952

6,308

1,429

1,388

セラミックス・その他

866

794

37

35

消去又は全社

△547

△520

△3

△2

合計

20,359

16,974

1,839

2,062

 

 報告セグメント別の経営成績は次のとおりです。

イ. ガラス

 建築用ガラスは、需要回復に伴い日本・アジアで出荷が増加したものの、景気減速の影響を受けた欧州、南米で出荷が減少しました。販売価格は原燃材料高などを背景に欧州を中心とした全ての地域で上昇しました。なお、2021年8月に北米建築用ガラス事業を譲渡しましたが、上記の増収要因に加え為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。自動車用ガラスは、半導体を中心とした部品供給不足の緩和により自動車生産台数が緩やかに回復し、当社グループの出荷も増加しました。また、販売価格が欧州を中心に上昇したことや為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。
 以上の結果から、当連結会計年度のガラスの売上高は、前連結会計年度比1,673億円(22.8%)増の9,015億円となりました。営業利益は、欧州における天然ガス価格などの上昇の影響を受けたことから同44億円(16.2%)減の229億円となりました。

ロ. 電子

 ディスプレイは、液晶用ガラス基板の需要が期後半から想定以上に減少しました。また、ディスプレイ用特殊ガラスの出荷も減少したことから、前連結会計年度に比べ大幅に減収となりました。電子部材は、オプトエレクトロニクス用部材及び半導体関連製品の出荷が堅調に推移したことに加え、為替の影響などにより、前連結会計年度に比べ増収となりました。
 以上の結果から、当連結会計年度の電子の売上高は、前連結会計年度比22億円(0.7%)増の3,072億円となりました。営業利益は、前述の増収要因があったものの、液晶用ガラス基板における大幅な需要減少、新規設備立ち上げ等に伴う減価償却費増加、原燃材料高などの影響により、同221億円(60.1%)減の147億円となりました。

ハ. 化学品

 クロールアルカリ・ウレタンは、苛性ソーダ等の市況が堅調に推移したことに加え、為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。フッ素・スペシャリティは、半導体関連向けを中心にフッ素関連製品の出荷が大きく増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。ライフサイエンスは、合成医農薬及びバイオ医薬品の受託が増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。
 以上の結果から、当連結会計年度の化学品の売上高は、前連結会計年度比1,644億円(26.1%)増の7,952億円となりました。営業利益は、同42億円(3.0%)増の1,429億円となりました。

 

 各報告セグメントに属する主要な製品の種類は以下のとおりです。

報告セグメント

主要製品

ガラス

フロート板ガラス、型板ガラス、網入り磨板ガラス、Low-E(低放射)ガラス、装飾ガラス、建築用加工ガラス(断熱・遮熱複層ガラス、防災・防犯ガラス、防・耐火ガラス等)、自動車用ガラス、車載ディスプレイ用カバーガラス等

電子

液晶用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、ディスプレイ用特殊ガラス、

ディスプレイ用周辺部材、ソーラー用ガラス、産業用加工ガラス、半導体プロセス用部材、オプトエレクトロニクス用部材、プリント基板材料、照明用製品、理化学用製品等

化学品

塩化ビニル、塩化ビニル原料、苛性ソーダ、ウレタン原料、フッ素樹脂、撥水撥油剤、

ガス、溶剤、医農薬中間体・原体、バイオテクノロジー関連製品、ヨウ素製品等

 上記製品の他、当社グループは、セラミックス製品、物流・金融サービス等も扱っています。

 従来「ガラス」及び「電子」に含めていた車載ディスプレイ用カバーガラスについて、会社組織の変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントを「ガラス」に統合しております。前連結会計年度のセグメント情報は、当連結会計年度の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、税引前利益やその他の金融資産の売却等により、718億円の収入(前連結会計年度は2,029億円の収入)となりました。一方で、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて、有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より139億円(7.1%)増加し、2,097億円となりました。

(ⅰ) 営業活動によるキャッシュ・フロー

   当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、前連結会計年度比1,096億円(33.5%)減の2,171億円となりました。

(ⅱ) 投資活動によるキャッシュ・フロー

   当連結会計年度における投資活動により使用された資金は、前連結会計年度比215億円(17.4%)増の1,453億円となりました。当該支出は、有形固定資産の取得による支出等があったことによるものであります。

(ⅲ) 財務活動によるキャッシュ・フロー

   当連結会計年度における財務活動により使用された資金は、前連結会計年度比1,741億円(69.0%)減の782億円となりました。当該支出は、有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの設備に使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとの生産規模や受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 (ⅱ) 経営成績」における各セグメント業績に関連付けして示しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 及び 3 重要な会計方針」に記載しております。

また、ガラスセグメントに属する欧州自動車用ガラス事業(西中欧)及びロシアにおける建築用・自動車用ガラス事業、電子セグメントに属するディスプレイ事業、スーパーハイエンドCCL事業及び産業フィルム事業(プリント基板材料事業等)の非金融資産の減損テストに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 非金融資産の減損」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、中期経営計画に則り、持続的な業績成長のための成長基盤の構築や事業体質・競争力の強化に取り組み、資産効率を高めながら株主価値の継続的な向上に努めております。また、今後の成長のために必要な設備及び研究開発活動に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としており、D/Eについては0.5以下を目標値として定めております。
 資金調達活動については、当社グループを取り巻く金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債発行、コマーシャル・ペーパー発行等、多様な手段により、より安定的で低コストの資金調達を目指しております。また、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで、借り換えリスクの低減を図っております。
 資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、現在必要とされる資金水準を充分満たす流動性を保持していると考えております。

 

④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

(新会社の設立)

 当社は、インドシナ半島におけるクロールアルカリ事業子会社3社(AGC Chemicals (Thailand) Co., Ltd.、Vinythai Public Company Limited及びAGC Chemicals Vietnam Co., Ltd.)を統合再編し、子会社としてAGC Vinythai Public Company Limitedを2022年7月1日付で設立しました。これにより、東南アジアでのクロールアルカリ事業の基盤強化と更なる成長を目指します。

 

(他の会社の株式等の譲渡)

 当社は、北米建築用ガラス事業の譲渡に伴い、米国でガラスの原料であるソーダ灰の製造・販売を行うSolvay Soda Ash Joint Venture及びSolvay Soda Ash Extension Joint Ventureの株式の全ての持分をAmerican Soda LLC.に2022年5月4日付で譲渡しました。

 

5【研究開発活動】

 AGCグループは長期経営戦略「2030年のありたい姿」として、「独自の素材・ソリューションの提供を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するとともに継続的に成長・進化する」を目標として掲げました。また、この確実な達成に向けて策定した中期経営計画 AGC plus-2023 では、「両利きの経営によるコア事業の強化と戦略事業の推進」と、「サステナビリティ経営の推進」「DXの加速による競争力の強化」という戦略を示しました。これを受けて技術開発においては、「両利きの開発」「オープンイノベーション」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の三本柱による戦略のもと、「コア事業の強化と戦略事業の推進」と「サステナブルな社会の実現」という主要な課題解決に挑んでいます。

 近年は社会の変化が加速し、社会課題は複雑さを増しており、またお客様のニーズも高度化・多様化しているため、当社単独での開発ではそれらの課題解決が難しくなりつつあることから、外部パートナーとのオープンイノベーションによる協創活動が重要となっています。

 当社では、2軸でのオープンイノベーションを進めています。1つは大学をはじめとするアカデミアやスタートアップ企業などとの協創で、革新的な技術やAGCに無い技術を開発することです。東京大学や東京工業大学、名古屋大学などと共同研究を進め、難しい課題に挑んでいます。

 こうして得られた新規技術やソリューションを活用して、お客様であるリーディングカンパニーと新たな商品を開発するのが2つ目のオープンイノベーションです。近年の事例では、大手通信会社である株式会社NTTドコモとの共同開発が挙げられます。都市部では移動通信アンテナを設置する場所の確保が課題となっていますが、既存の窓ガラスの室内側から取り付け可能なガラスアンテナ「WAVEATTOCH®(ウェーブアトッチ)」を開発し、都心のビルの窓をアンテナ化しました。

 また2020年には、AGC横浜テクニカルセンター(神奈川県横浜市)内に新研究棟を新設し、従来2拠点に分かれていた開発機能を統合して、材料開発、プロセス開発から設備技術開発までをシームレスにつなぐ体制を構築しました。さらに、新研究棟にはオープンイノベーションを加速する場として、協創空間「AO(アオ/AGC OPEN SQUARE)」を設けました。AOは「つなぐ」「発想する」「ためす」をコンセプトに、社外のパートナーとの協創の場を用意しています。

 加えて、北米、欧州、中国及び東南アジアに駐在員を配置し、海外大学や研究機関等への積極的な情報収集活動を行うとともに、当社グループとのシナジーが期待できる技術を保有するベンチャー企業の探索を行っています。

 

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は52,252百万円でした。当連結会計年度における各事業部門別の研究開発課題と研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

 

(1) コーポレート

 コーポレートが担当している研究開発には、技術プラットフォームの強化拡大を目指した長期的・基礎的な研究開発と、新規事業の創出を目指した研究開発があります。また上記の戦略に基づいた全社的研究開発体制の構築もコーポレートが策定・調整しています。コーポレートが担当しているテーマとしては、高度な解析技術などの共通基盤技術の開発、既存事業及び新事業に資する材料技術の開発等があります。

 当連結会計年度における、コーポレートの研究開発費は19,116百万円でした。

 

(2) ガラス

 当事業の研究開発部門では、建築用ガラスや自動車用ガラスに関する商品設計や新技術開発、生産技術開発を行っています。また、事業活動におけるGHG排出量削減に向けて、環境に配慮したガラス溶解プロセスに関する技術開発も行っています。

 当連結会計年度における、当事業部門に係る研究開発費は9,697百万円でした。

 

(3) 電子

 当事業の研究開発部門では、全ての薄型ディスプレイ商品に対応する表示デバイス用ガラスを提供しているガラスメーカーとして、ガラス溶解・成形・研磨・検査などの生産技術開発に注力しています。その他にも多岐にわたる研究開発テーマがあり、主に半導体製造装置用部材、ディスプレイ関連部材、光電子部材等に関する新商品・新技術・生産技術の開発を行っています。

 当連結会計年度における、当事業部門に係る研究開発費は10,615百万円でした。

 

(4) 化学品

 当事業の研究開発部門では、AGC plus 2.0 が掲げる“世の中に「安心・安全・快適」をプラスする”素材・ソリューションを提供すべく、フッ素化学、高分子化学、無機化学、電気化学などの基盤技術を生かした新商品・新技術の開発を行っています。特に、環境に配慮した製品やプロセスの開発に注力している他、医農薬中間体・原体やバイオ分野の開発も進めています。

 当連結会計年度における、当事業部門に係る研究開発費は10,202百万円でした。

 

(5) セラミックス・その他

 上記以外の事業部門における当連結会計年度の研究開発費は2,619百万円でした。