第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が長期化する懸念や諸外国の通商問題、英国のEU離脱による影響など、世界経済の不確実性や国際政治情勢の混迷が強まる中で、予断を許さない状況が続くものと思われます。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要事業である国内セメント事業において、都市部における再開発投資や防災・減災対策に加え、今後はリニア中央新幹線関連工事が本格化する中で、一定水準の需要が続くものと期待されます。

一方で、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらす経済活動への影響度に大きく左右される懸念があり、短期的には建設工事の中断や延期による影響が、また、中長期的には民間設備投資や再開発投資が抑制される可能性も懸念され、セメント需要を押し下げるリスクがあります。

さらに、東京オリンピック・パラリンピックの延期に伴う建設業界への影響、物流コストの上昇や建設技能労働者の人手不足の深刻化や高齢化に対しても、留意が必要な状況です。

また、米国経済は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、足下で経済活動が抑制されており、今後どの程度の景気下押し要因となるのか、注視する必要があります。

このような情勢の中で、当社グループは2020年度までの3年間を実行期間とする「20中期経営計画」に取り組んでおり、2020年度は、その最終年度であるとともに、次期中期経営計画へのつなぎとなる重要な年と位置付けております。新型コロナウイルス感染症による影響を現段階で見極めることは難しい状況にありますが、状況の把握に全力を傾けるとともに、以下の「20中期経営計画」の経営課題に対し精力的に取り組んでまいります。

 

(1) 20中期経営計画の基本方針

20中期経営計画では、以下の基本方針に基づき、強固な事業基盤の構築に向けて取り組んでまいります。

①将来の事業環境の変化を先取りし、あらゆる角度からのイノベーションを図り、成長に向けて前進する企業集団を構築する。

②社会基盤産業として、国土強靭化への取り組みに向けて、高品質な製品の安定供給、ソリューションの提供及び先進的な技術開発を通じて安全・安心社会の構築に貢献する。

③徹底的なコスト削減による既存事業の収益基盤の強化と財務体質の更なる改善を進めるとともに、当社グループの持続的な成長に資する成長分野への投資を積極的に実行する。

 

(2) 経営目標

20中期経営計画では、以下のとおり経営目標を設定し、強靭な収益基盤を構築してまいります。

<2020年度目標>

売上高営業利益率  9%以上

ROA(経常利益) 8%以上

 

(3) 事業戦略

①既存事業の収益基盤強化と成長戦略の策定・実行

徹底的なコスト削減やプロセス・イノベーションの推進等を通じて収益基盤を強化するとともに、新たな価値創造と差別化により競争優位を追求してまいります。更に、収益力の創出に向けた成長投資を実行し、着実に事業戦略の実現に取り組むことで、社会課題の解決に貢献してまいります。

 

②国家的プロジェクトへの対応

今後本格化が見込まれる福島県の復旧・復興への取り組みや、相次ぐ自然災害に対する防災、減災対策、更にリニア中央新幹線関連工事やその他大型インフラプロジェクトなどの国家的プロジェクトに対し、当社グループの強みを最大限に活かし総力を結集して、高品質な製品の安定供給とソリューションの提供を着実に実行してまいります。

 

 

(4) 研究開発戦略

各事業部門を支える成長のエンジンとして、グループ全体の成長に資する研究開発に取り組んでまいります。また、社会基盤産業としての社会課題解決の一翼を担う研究開発に注力するとともに、国家的プロジェクトへの対応として、必要とされる技術を的確に開発し提供してまいります。

 

(5) 経営基盤の強靭化

「CSR目標2025」で設定した目標の実現に向け、着実に取り組んでまいります。また、グローバル人材の確保・育成に取り組むとともに、働き方改革と健康経営の推進を通じて労働生産性の向上と快適な職場環境の構築に努めてまいります。更に、グループガバナンスの強化とコーポレートガバナンスの充実、選択と集中の継続、バリューチェーンの競争力強化などに取り組むことにより、経営基盤の強靭化を図ってまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

リスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

また、下記事項は、投資家の判断に重要な影響があると考えられるものであり、当社グループにおけるリスクのすべてを網羅したものではありません。

 

(1) 国内需要の減少

建設投資が減少し、セメント、生コンクリート、建築土木等の事業で需要が大幅に減少した場合、影響を受ける可能性があります。

 

(2) 原燃料品代、船運賃等の国際価格の動向

石油・石炭等の輸入原燃料品代及び船運賃等の国際価格が上昇した場合、上昇分の製品価格への転嫁の状況によって影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。

 

(3) 為替の変動

原燃料品の輸入やセメント等の輸出、在外子会社等からの配当金をはじめとする外貨建て取引において、大幅に為替が変動した場合、影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。

また、在外子会社の財務諸表の為替換算においても、邦貨ベースで影響を受ける可能性があります。

 

(4) 金利水準の変動

市場金利が大幅に上昇した場合、支払利息が増加する等の影響を受ける可能性がありますが、当社グループは有利子負債削減等の取組みを通じて財務体質の強化を図っているほか、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。

 

(5) 株式市況の下落

株式市況が大幅に下落した場合、保有株式の評価及び退職給付信託資産等の評価に伴う退職給付数理計算上の差異の発生等により、影響を受ける可能性があります。

 

(6) アジア諸国、アメリカ等の情勢の変化

当社グループは、アジア諸国、アメリカ等の世界各地で事業展開しており、それぞれの地域における政治・経済情勢の変化により影響を受ける可能性があります。

 

(7) 事業再編

当社グループは、事業の選択と集中を推進することとしており、重点分野に経営資源を集中するとともに、他社との連携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において業績及び財政状態に影響を受ける可能性がありますが、高度な専門性などが要求される場合には、常任の法律顧問をはじめ、顧問法律事務所、経営コンサルタント等、専門家のアドバイスを受けております。

 

(8) 資金調達に関する重要事項

当社グループの借入金のうち、シンジケート・ローン等に一定水準以上の株主資本維持等を確約しているものがあります。当社又は当社グループが財務状況悪化等により、これら確約を果たせない事態になった場合、期限前弁済義務が生じる恐れがあり、その後の対応如何により、影響を受ける可能性があります。

 

(9) 公的規制、気候変動抑止を中心とした環境規制強化・社会変化

当社グループは、事業展開する各国、地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っておりますが、予期しない変更や新たな適用により、影響を受ける可能性があります。

環境規制に関しては、セメントの製造過程では相当量のCO₂が発生しますが、温室効果ガス排出抑制に向けて各種公的規制が強化された場合や社会変化により、影響を受ける可能性があります。また、セメントの原料・燃料代替として廃棄物を利用しておりますが、廃棄物処理にかかる規制等が強化された場合にも、影響を受ける可能性があります。

なお、当社は2019年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、今後はTCFDの提言に基づき、気候変動が当社グループに与える事業リスクと事業機会について評価、分析を進め、事業戦略への反映と情報開示を進めていきます。

 

(10) 極端な気象現象の頻発

温室効果ガスの大気への蓄積・地球温暖化により、豪雨による浸水・土砂崩れの頻発や、台風の強力化による被害が発生する可能性があります。この場合、生産設備等が被災し輸送機関の混乱が長期化する等、影響を受ける可能性があります。

災害等の緊急事態が発生した場合、「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に則して適切に対応します。

 

(11) 大震災・感染症・事故等の発生

大震災や新型ウイルス等感染症の急速な流行が発生した場合のほか、万が一生産設備等の重大事故や重大な労働災害が発生した場合にも影響を受ける可能性があります。

特に、新型コロナウイルス感染症に関しては、感染症の流行がもたらす経済活動への影響度に事業環境を大きく左右される懸念があり、短期的には建設工事の中断や延期による影響が、また、中長期的には民間設備投資や再開発投資が抑制される可能性も懸念され、セメント需要を押し下げる可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得の改善を背景として、緩やかな回復基調で推移したものの、製造業を中心とした企業業績に弱さが見られ、先行きは不透明な状況が続きました。

米国経済は、低水準の失業率を維持し、個人消費が拡大する中で、底堅く成長しました。中国経済は、米国との通商問題の長期化により、成長のペースに減速が見られました。ベトナム経済は、好調な個人消費や輸出に支えられ、堅調に推移しました。フィリピン経済は、統一国政・地方選挙の影響による一時的な公共投資の減少は見られたものの、引き続き拡大しました。

一方で、内外経済は、米中通商問題の長期化による中国経済の減速や英国のEU離脱問題に加えて、2020年に入ると、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による深刻な影響を受けており、今後、その影響の長期化が懸念されることからも、世界経済の不確実性が高まっております。

このような状況の中で、当連結会計年度の売上高は8,843億5千万円(対前年同期317億2千1百万円減)、営業利益は610億8百万円(同50億4百万円減)、経常利益は605億4千1百万円(同37億6千5百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は391億5千1百万円(同43億1百万円減)となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。各金額については、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

<セメント>

セメントの国内需要は、東京オリンピック・パラリンピック関連需要及び東日本大震災復興需要の終息に加え、全国的な建設現場の人手不足に伴う工期の長期化等の影響により官公需・民需ともに前年を下回り、全体では4,097万屯と前期に比べ3.8%減少しました。その内、輸入品は2万屯と前期に比べ75.3%減少しました。また、総輸出数量は1,053万屯と前期に比べ1.5%増加しました。

このような情勢の下、当社グループにおけるセメントの国内販売数量は受託販売分を含め1,447万屯と前期に比べ5.0%減少しました。輸出数量は386万屯と前期に比べ10.8%増加しました。

米国西海岸のセメント、生コンクリート事業は、主に悪天候の影響により出荷数量が伸び悩んだものの、価格は上昇傾向を示しています。中国のセメント事業は、出荷数量の回復がみられました。ベトナムのセメント事業は、引き続き他社との競合などの影響を受けました。フィリピンのセメント事業は、統一国政・地方選挙に伴う公共投資の停滞により、需要、市況とも横ばい傾向を示しています。

以上の結果、売上高は6,284億1千6百万円(対前年同期180億6千万円減)、営業利益は365億2千6百万円(同52億1千6百万円減)となりました。

 

<資源>

骨材事業は、東京オリンピック・パラリンピック関連需要及び東日本大震災復興需要の終息により、前期に比べ関東地区、東北地区で販売数量が減少しました。鉱産品事業は国内鉄鋼向け石灰石の出荷が低調に推移しました。土壌ソリューション事業は固化不溶化材が堅調に推移しました。

以上の結果、売上高は801億4千7百万円(対前年同期41億1千4百万円減)、営業利益は71億7千9百万円(同10億6千3百万円減)となりました。

 

<環境事業>

燃料、排脱タンカル及び石膏販売が減少したものの、廃プラスチック処理の拡大と大船渡発電事業の稼働開始に伴うバイオマス燃料販売の増加、さらに台風19号被害による災害廃棄物処理に取り組んだことなどにより、売上高は844億2千2百万円(対前年同期82億7千1百万円減)、営業利益は77億7百万円(同10億9千3百万円増)となりました。

 

 

<建材・建築土木>

地盤改良工事が着工遅れの影響を受けたことなどにより、売上高は813億3百万円(対前年同期8億8千1百万円減)、営業利益は45億3千7百万円(同4億6千2百万円減)となりました。

 

<その他>

エンジニアリング事業や運輸・倉庫事業が低調に推移したものの、岩手県大船渡市におけるバイオマス発電の営業運転開始に加え、不動産事業が堅調に推移したことなどにより、売上高は830億3千1百万円(対前年同期29億9千7百万円減)、営業利益は53億2千7百万円(同6億6千9百万円増)となりました。

 

財政状態は次のとおりであります。

総資産は前連結会計年度末に比べ15億5百万円減少して1兆329億2千3百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末に比べ228億4百万円減少して3,185億2百万円、固定資産は同212億9千9百万円増加して7,144億2千万円となりました。

流動資産減少の主な要因は受取手形及び売掛金が減少したことによるものであります。固定資産増加の主な要因は機械装置及び運搬具が増加したことによるものであります。

負債は前連結会計年度末に比べ241億1百万円減少して5,596億8千2百万円となりました。流動負債は前連結会計年度末に比べ356億1千9百万円減少して3,137億7千1百万円、固定負債は同115億1千8百万円増加して2,459億1千万円となりました。

流動負債減少の主な要因は短期借入金が減少したことによるものであります。固定負債増加の主な要因は長期借入金が増加したことによるものであります。

有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金の合計額)は、前連結会計年度末に比べ134億9千9百万円減少して2,661億1千5百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べ225億9千6百万円増加して4,732億4千1百万円となりました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末から2.2ポイント増加して42.3%となりました。1株当たり純資産額は、前連結会計年度末から179.22円増加して3,567.63円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によって909億2百万円増加し、また、投資活動によって655億3千4百万円減少し、財務活動によって294億3千6百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比較して43億3千6百万円減少し、当連結会計年度末には457億4千8百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は909億2百万円(対前年同期63億8千万円減)となりました。これは、法人税等の支払額が135億9千7百万円となった一方で、税金等調整前当期純利益が517億7千7百万円、減価償却費が488億6千3百万円となったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は655億3千4百万円(対前年同期75億9百万円増)となりました。これは、固定資産の取得による支出が663億7千8百万円となったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は294億3千6百万円(対前年同期43億1千7百万円減)となりました。これは、長期借入れによる収入が446億6千3百万円となった一方で、長期借入金の返済による支出が560億7千7百万円、社債の償還による支出が100億円となったこと等によるものであります。

 

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

自己資本比率(%)

31.4

35.6

38.7

40.1

42.3

時価ベースの自己資本比率(%)

31.4

45.2

46.9

43.7

21.9

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

5.2

3.6

2.7

2.9

2.9

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

11.5

18.9

23.3

24.2

23.4

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 

※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

※ 営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

金額(百万円)

 

前期比(%)

セメント

271,905

0.9

資源

49,052

△4.8

環境事業

60,504

△12.0

建材・建築土木

51,699

2.4

その他

20,735

△17.3

合計

453,897

△2.5

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

金額(百万円)

 

前期比(%)

セメント

376

△24.1

資源

1,064

11.6

環境事業

建材・建築土木

38,995

△9.0

その他

8,314

2.1

合計

48,750

△7.0

 

(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

金額(百万円)

 

前期比(%)

セメント

617,838

△2.9

資源

55,965

△5.8

環境事業

76,281

△10.3

建材・建築土木

77,035

△1.2

その他

57,228

△0.1

合計

884,350

△3.5

 

(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、「20中期経営計画」の経営目標として、2020年度において売上高営業利益率9%以上、総資産経常利益率8%以上を掲げ、その実現に向けて取り組んでおります。2019年度実績は売上高営業利益率6.9%、総資産経常利益率5.9%となりました。これは、「成長投資」として位置付ける岩手県大船渡市におけるバイオマス発電が営業開始したことなどの一方、東京オリンピック・パラリンピック関連需要や東日本大震災復興需要が終息したこと等によりセメントの国内販売数量が減少したことなどによるものであります。収益力の創出・向上については当社グループが引き続き取り組んでいくべき重要な経営課題であると認識しております。

当社グループの当連結会計年度の経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますが、当連結会計年度の業績への影響は軽微であります。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、営業活動によって得られた資金により、成長投資を重視し、資本効率を意識した積極的な設備投資・投融資を実行しております。また、株主還元につきましても、重要な経営課題の一つとして位置付けており、安定的かつ継続的な配当を基本としております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金または借入及び社債の発行により資金調達することとしております。このうち、長期借入金及び社債は主に設備投資に係る資金調達であります。

 

 

③ 重要な会計方針、見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的に判断し見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。このうち次の見積り及び見積りに用いた仮定が当社グループにおいて重要であると認識しております。

 

イ 固定資産の減損処理

経営環境の著しい悪化、土地の時価の著しい下落等により収益性が低下した事業用資産、賃貸用資産及び将来の使用が見込まれない遊休資産について、それぞれ帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い額により測定しているため、経営環境が著しく悪化した場合等に、減損損失が計上される可能性があります。

 

ロ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の計上に際しては、将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性を判断しております。将来の課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。

 

ハ 退職給付に係る会計処理

年金資産が退職給付債務の額を超過する場合には、投資その他の資産の「退職給付に係る資産」に計上しております。株式市況が大幅に下落した場合、保有株式の評価及び退職給付信託資産等の評価に伴う退職給付数理計算上の差異の発生等により、退職給付費用が計上される可能性があります。

 

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。

また、新型コロナウイルス感染症の影響を加味した見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 受託販売契約

東ソー株式会社の製造するセメントを当社が受託販売する契約を締結しております。

(2) 業務提携に関する基本協定書

日立セメント株式会社とセメント・クリンカ生産受委託等の業務提携に関する基本協定書を締結しております。

 

 

5 【研究開発活動】

研究開発部門は、収益の源泉となる既存事業分野において最大の利益を獲得するために技術面での支援を確実に進めるとともに、資源・環境・海外・建材を成長事業分野と位置付け、17中期経営計画で基礎を築き、20中期経営計画以降において新しい利益を創出させるための研究開発を推進しております。さらに、CO₂削減やリサイクル資源活用などの地球環境負荷低減に向けた研究開発に重点を置いて取り組み、インフラ老朽化などの喫緊の社会的課題や東京オリンピック・パラリンピックなど国家的プロジェクトへの対応にも精力的に取り組んでおります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は4,431百万円であり、事業の種類別セグメントの主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。

 

1.セメント

トップブランドとしての最高品質の維持、セメント・コンクリートの需要拡大に寄与する技術開発に取り組むとともに、セメント製造に関わるコスト低減と環境対策との両立を図るための研究開発を、セメント事業本部及び生産・設備部門等と連携して、推進しております。さらに、CO₂排出量を削減する技術開発にも注力しております。また、海外事業本部等と連携し、海外市場ニーズに即した混合セメント・コンクリートの材料設計や関連技術の開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、2,500百万円であります。

 

2.資源

骨材資源や特殊骨材の価値極大化及び重金属不溶化材を中心とした汚染土壌対策技術の開発等を、資源事業部等と連携して、推進しております。また、当社が保有する石灰石及び珪石資源と、グループ会社を含めたノウハウ、さらにこれまでに蓄積した水熱反応や粒子構造制御などの技術を活用した研究開発により、各種の機能性マテリアルの事業化に向けた研究開発にも鋭意取り組んでおります。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、481百万円であります。

 

3.環境事業

セメント製造プロセスの特長を活用した各種廃棄物の再資源化技術の高度化や廃プラスチック等の処理困難廃棄物の代替エネルギー化等によるCO₂削減、及びバイオマス発電に資する技術開発に注力し、環境事業部や生産・設備部門と連携して、着実に国内のセメント工場等へ展開しております。また、各種排水の処理・浄化及び藻場再生等の水環境事業、廃棄物からの金属資源回収技術等の新規技術開発にも積極的に取り組んでおります。これらの国内で実績のある環境関連技術を成長著しいアジア諸国等へ導出すべく、海外事業本部等と連携し、対象国・地域に見合う開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、1,001百万円であります。

 

4.建材・建築土木

建設資材分野における新たな商材や技術開発を、セメント事業本部及び建材事業部等と連携して、推進しております。このような中、コンクリート製品を中心としたセメント・コンクリート関連商材の需要拡大に向けた材料及び周辺技術開発と、インフラ保全に対応するコンクリートの診断、補修・補強材料及び工法等の技術開発・市場展開に取り組んでおります。また、当社グループの企業とも連携しながら、グループ全体の技術力や収益の向上に寄与しています。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、448百万円であります。