文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後のわが国経済は、景気の持ち直しの動きが続くことが期待されますが、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が開始されたものの、現在も感染拡大が継続する状況において、経済活動の本格的な回復には相当の時間を要するものと思われます。
このような状況下、当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要事業である国内セメント事業において、都市部における再開発工事や防災・減災、国土強靭化のための追加対策工事に加え、今後はリニア中央新幹線関連工事が本格化する中で、一定水準の需要が続くものと期待されます。一方で、新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せない中で、今後、設備投資や住宅投資が抑制される可能性があり、セメント需要は、下振れリスクの懸念があります。更に、東京オリンピック・パラリンピック期間中の建設業界への影響、物流コストの上昇や建設業界及び物流業界における人手不足の深刻化や高齢化に対しても、引き続き、留意が必要な状況です。
また、世界経済についても、今後、世界的なワクチン接種の進展が期待されるものの、経済活動の制限緩和と感染防止策との両立に向けて各国政府が難しい舵取りを迫られる中で、新型コロナウイルス感染症が今後の各国経済にどの程度の影響を及ぼすのか、注視していく必要があります。
このような情勢の中で、当社グループは、2020年代半ばをイメージした「ありたい姿・目指す方向性」を実現するための第2ステップとして、2018年度から2020年度までの3年間にわたり「20中期経営計画」に取り組んでまいりました。2021年度からは、第3ステップとして、2023年度までの3年間を実行期間とする「23中期経営計画」を策定し、持続的な成長と長期的に安定した事業基盤の確立に向けた取り組みを進めてまいります。
(1) ありたい姿・目指す方向性
当社グループは、太平洋セメントグループ経営理念を念頭におきながら、2020年代半ばをイメージした「ありたい姿・目指す方向性」として、「グループの総合力を発揮し、環太平洋において社会に安全・安心を提供する企業集団を目指す」ことを掲げ、その実現に至るまでを3つのステップに分けて取り組んでおります。
(2) 23中期経営計画の基本方針
23中期経営計画では、以下の基本方針に基づき、当社グループ全ての事業が総合的・複合的に機能し合う、当社にしかできない新たな事業モデルを構築する、すなわち「圧倒的なリーディングカンパニー」となることを目指してまいります。
①成長の歩みを止めない企業グループとなる。
②社会基盤産業として、安全・安心社会の構築に貢献する。
③収益基盤の強化、成長投資を着実に実行する。
(3) 経営目標
23中期経営計画では、以下のとおり経営目標を設定し、強靭な収益基盤を構築してまいります。
<2023年度目標>
売上高営業利益率 11%以上
ROE 10%以上
(4) カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
CO₂排出量の多いセメント産業において、実質CO₂排出ゼロとなるカーボンニュートラル技術の確立は、産業の将来に繋がる最重要課題の1つであり、その実現に向けた取り組み(ゼロカーボン・セメントの実現)は、当社グループの成長戦略であると考えております。
当社グループは「2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョン」を策定しております。長期ビジョン実現に向けては、既存技術の応用・発展に加え、革新的技術を開発しコストも含めて実用的なレベルにまで高めることが必須条件となります。このような革新的技術の開発推進を担う社内横断組織として「カーボンニュートラル技術開発プロジェクトチーム」を新設しておりますが、本プロジェクトチームを中核として社会実装可能な技術を早期に確立し、2050年までに実質的なカーボンニュートラルの実現を目指してまいります。
(5) 事業戦略
①セメント(国内)
国内セメント需要の大きな伸びが期待できない市場環境において、柔軟な発想と大胆な行動により国内セメント事業の再構築を目指します。工場設備の強靭化、資源・環境事業と複合的営業体制の構築、AI・自動化による物流体制の最適化により、当社グループの総合力を最大限に発揮し、国家的プロジェクト等への安定供給責任を果たします。
更に、AI・IoTによる生産物流体制効率化を追求すると同時に、新たな生産・技術開発やサプライチェーンにおける活動を通じて、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを積極的に進めます。
②セメント(海外)
アジア域での新・事業ポートフォリオ構築に取り組みます。東南アジアでの事業拡大と新たな拠点となるインドネシアを組み入れた環太平洋全域にわたる物流ネットワークの再構築及びトレーディング事業拡大を図ります。事業拡大にあたっては、セメントに加え、コアビジネスである資源、環境、建材事業を推進し、有機的、総合的、複合的ビジネスを確立します。
③資源
豊富に保有している石灰石等の資源を長期安定供給するための基盤構築を進め、グループ総合力を発揮し、既存コア事業の収益拡大を図るとともに、持続的発展を可能にする新規事業育成に注力します。
④環境事業
外部環境変化を的確に把握し、『気候変動対応』、『デジタル』、『マテリアル』、『エネルギー』をキーワードに、時代の潮流に即した新たなビジネスへの発展を図ります。新たな資源循環モデルを確立し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた貢献に取り組みます。
⑤建材・建築土木
市場競争力の強化により、既存事業の収益力の向上を図ります。更に、グループ内でのシナジーを創出できる新たな事業領域の開拓に積極的に取り組みます。
⑥その他(個別企業群)
個別企業の収益力強化を図るとともに、当社グループとしてのシナジーが期待できる新たなビジネスモデルの構築に取り組みます。
(6) 研究開発戦略
社会への貢献、グループの持続的成長に資する研究開発として、カーボンニュートラル実現に向けた技術開発を最大のテーマと位置付け強力に推進するとともに、基盤技術の深化、リサイクル技術の進化、革新的材料、将来を見据えた技術開発を柱として取り組んでまいります。
(7) 経営基盤の強靭化
コーポレートガバナンスの充実・強化の継続的な取り組みを通して、企業価値の向上を図ってまいります。また、20中期経営計画に引き続き、「CSR目標2025」で設定した3つの定量目標(災害防止、温室効果ガス排出抑制、ダイバーシティ)の実現に向け、着実に取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
リスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、下記事項は、投資家の判断に重要な影響があると考えられるものであり、当社グループにおけるリスクのすべてを網羅したものではありません。
建設投資が減少し、セメント、生コンクリート、建築土木等の事業で需要が大幅に減少した場合、影響を受ける可能性があります。
石油・石炭等の輸入原燃料品代及び船運賃等の国際価格が上昇した場合、上昇分の製品価格への転嫁の状況によって影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
原燃料品の輸入やセメント等の輸出、在外子会社等からの配当金をはじめとする外貨建て取引において、大幅に為替が変動した場合、影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
また、在外子会社の財務諸表の為替換算においても、邦貨ベースで影響を受ける可能性があります。
市場金利が大幅に上昇した場合、支払利息が増加する等の影響を受ける可能性がありますが、当社グループは有利子負債削減等の取組みを通じて財務体質の強化を図っているほか、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
株式市況が大幅に下落した場合、保有株式の評価及び退職給付信託資産等の評価に伴う退職給付数理計算上の差異の発生等により、影響を受ける可能性があります。
当社グループは、アジア諸国、アメリカ等の世界各地で事業展開しており、それぞれの地域における政治・経済情勢の変化により影響を受ける可能性があります。
当社グループは、事業の選択と集中を推進することとしており、重点分野に経営資源を集中するとともに、他社との連携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において業績及び財政状態に影響を受ける可能性がありますが、高度な専門性などが要求される場合には、常任の法律顧問をはじめ、顧問法律事務所、経営コンサルタント等、専門家のアドバイスを受けております。
当社グループの借入金のうち、シンジケート・ローン等に一定水準以上の株主資本維持等を確約しているものがあります。当社又は当社グループが財務状況悪化等により、これら確約を果たせない事態になった場合、期限前弁済義務が生じる恐れがあり、その後の対応如何により、影響を受ける可能性があります。
当社グループは、事業展開する各国、地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っておりますが、予期しない変更や新たな適用により、影響を受ける可能性があります。
環境規制に関しては、セメントの製造過程では相当量のCO₂が発生しますが、温室効果ガス排出抑制に向けて各種公的規制が強化された場合や社会変化により、影響を受ける可能性があります。また、セメントの原料・燃料代替として廃棄物を利用しておりますが、廃棄物処理にかかる規制等が強化された場合にも、影響を受ける可能性があります。
なお、当社は2019年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、TCFDの提言に基づき、気候変動が当社グループに与える事業リスクと事業機会について評価、分析を進め、事業戦略への反映と情報開示を進めていきます。
温室効果ガスの大気への蓄積・地球温暖化により、豪雨による浸水・土砂崩れの頻発や、台風の強力化による被害が発生する可能性があります。この場合、生産設備等が被災し輸送機関の混乱が長期化する等、影響を受ける可能性があります。
災害等の緊急事態が発生した場合、「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に則して適切に対応します。
大震災や新型ウイルス等感染症の急速な流行が発生した場合のほか、生産設備等の重大事故や重大な労働災害が発生した場合にも影響を受ける可能性があります。
特に、新型コロナウイルス感染症に関しては、収束時期が見通せない中で、今後、設備投資や住宅投資が抑制される可能性も懸念され、セメント需要を押し下げる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大と緊急事態宣言の発出に伴う経済活動の停滞等の影響により、大変厳しい状況で推移しましたが、各種経済対策の効果に加え、米国や中国経済の回復の影響もあり、企業収益や設備投資には持ち直しの兆しが見られました。
また、世界経済については、各国でワクチンの接種が開始されているものの、経済活動の制限緩和や経済対策による景気回復の状況には地域差があり、依然として新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せない中で、先行きは不透明な状態が続いております。
このような状況の中で、当期の連結売上高は8,639億3百万円(対前年同期204億4千6百万円減)、連結営業利益は636億1千万円(同26億2百万円増)、連結経常利益は657億4千4百万円(同52億2百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は468億円(同76億4千9百万円増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。各金額については、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
セメントの国内需要は、新型コロナウイルス感染症拡大による工事中断等の影響が6月以降減少したものの、建設労働者不足による工程遅延や工期の長期化等の影響もあり、官公需・民需ともに低調に推移した結果、全体では3,867万屯と前期に比べ5.6%減少しました。その内、輸入品は2万屯と前期に比べ9.9%減少しました。また、総輸出数量は1,111万屯と前期に比べ5.5%増加しました。
このような情勢の下、当社グループにおけるセメントの国内販売数量は受託販売分を含め1,378万屯と前期に比べ4.8%減少しました。輸出数量は377万屯と前期に比べ2.2%減少しました。
米国西海岸のセメント、生コンクリート事業は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響があったものの、多くの州で建設業は必要不可欠なものとして事業の継続が認められ、また住宅需要も堅調であったことから、販売数量は増加し、価格も上昇しました。中国のセメント事業は、販売数量が減少しました。ベトナムのセメント事業は、他社との競合等の影響を受けたものの、販売数量は増加しました。フィリピンのセメント事業は、新型コロナウイルス感染症対策の移動制限の影響を受け一部建設工事が停滞し、販売数量が減少しました。
以上の結果、売上高は6,210億4千5百万円(対前年同期73億7千1百万円減)、営業利益は413億2千6百万円(同48億円増)となりました。
骨材事業は前期に比べ関東地区で販売数量が減少したことに加え、鉱産品事業も鉄鋼向け石灰石の出荷が低調に推移した結果、売上高は757億7千7百万円(対前年同期43億6千9百万円減)、営業利益は60億7千1百万円(同11億7百万円減)となりました。
岩手県における電力供給事業開始に伴うバイオマス燃料販売の増加に加え、一昨年の台風19号及び昨年の九州豪雨被害による災害廃棄物処理に取り組んだものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による電力需要の減少や石炭火力発電の稼働率低下に伴って、石炭灰処理、石膏、燃料及び排脱タンカル販売が減少した結果、売上高は780億4千2百万円(対前年同期63億7千9百万円減)、営業利益は64億4千7百万円(同12億5千9百万円減)となりました。
地盤改良工事とALC(軽量気泡コンクリート)等が低調に推移した結果、売上高は730億3百万円(対前年同期83億円減)、営業利益は35億6千4百万円(同9億7千2百万円減)となりました。
2020年に岩手県において電力供給事業を開始したことに加え、運輸・倉庫事業が堅調に推移したことなどにより、売上高は914億4百万円(対前年同期83億7千3百万円増)、営業利益は61億3千5百万円(同8億8百万円増)となりました。
財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ113億3百万円増加して1兆442億2千7百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末に比べ88億3千万円増加して3,273億3千3百万円、固定資産は同24億7千2百万円増加して7,168億9千3百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は現金及び預金が増加したことによるものであります。固定資産増加の主な要因は退職給付に係る資産が増加したことによるものであります。
負債は前連結会計年度末に比べ222億7千6百万円減少して5,374億5百万円となりました。流動負債は前連結会計年度末に比べ89億3千9百万円減少して3,048億3千1百万円、固定負債は同133億3千6百万円減少して2,325億7千4百万円となりました。
流動負債減少の主な要因は短期借入金が減少したことによるものであります。固定負債減少の主な要因は長期借入金が減少したことによるものであります。
有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金の合計額)は、前連結会計年度末に比べ180億1千3百万円減少して2,481億2百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ335億7千9百万円増加して5,068億2千1百万円となりました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末から2.8ポイント増加して45.1%となりました。1株当たり純資産額は、前連結会計年度末から403.70円増加して3,971.34円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動によって1,104億3百万円増加し、投資活動によって478億9百万円減少し、また、財務活動によって439億5千2百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比較して180億7千1百万円増加し、当連結会計年度末には638億1千9百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は1,104億3百万円(対前年同期195億1百万円増)となりました。これは、法人税等の支払額が105億7千9百万円となった一方で、税金等調整前当期純利益が651億5百万円、減価償却費が526億8千3百万円となったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は478億9百万円(対前年同期177億2千5百万円減)となりました。これは、固定資産の取得による支出が586億5千6百万円となったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は439億5千2百万円(対前年同期145億1千6百万円増)となりました。これは、社債の発行による収入が300億円となった一方で、長期借入金の返済による支出が365億7千3百万円、短期借入金の純減少額が195億9千6百万円となったこと等によるものであります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
※ 営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。
2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。
2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「20中期経営計画」の経営目標として、2020年度において売上高営業利益率9%以上、総資産経常利益率8%以上を掲げ、その実現に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、2020年度実績は売上高営業利益率7.4%、総資産経常利益率6.3%と目標を下回る結果となりました。これは、国内セメント需要が想定よりも大幅に下振れするなど当社グループにとって厳しい事業環境となったことなどによるものであります。収益力の創出・向上については当社グループが引き続き取り組んでいくべき重要な経営課題であると認識しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますが、当連結会計年度の業績への影響は軽微であります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
当社グループは、営業活動によって得られた資金により、成長投資を重視し、資本効率を意識した積極的な設備投資・投融資を実行しております。また、株主還元につきましても、重要な経営課題の一つとして位置付けており、安定的かつ継続的な配当を基本としております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金または借入及び社債の発行により資金調達することとしております。このうち、長期借入金及び社債は主に設備投資に係る資金調達であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的に判断し見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。このうち次の見積り及び見積りに用いた仮定が当社グループにおいて重要であると認識しております。
イ 固定資産の減損処理
経営環境の著しい悪化、土地の時価の著しい下落等により収益性が低下した事業用資産、賃貸用資産及び将来の使用が見込まれない遊休資産について、それぞれ帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い額により測定しているため、経営環境が著しく悪化した場合等に、減損損失が計上される可能性があります。
ロ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の計上に際しては、将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性を判断しております。将来の課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。
ハ 退職給付に係る会計処理
年金資産が退職給付債務の額を超過する場合には、投資その他の資産の「退職給付に係る資産」に計上しております。株式市況が大幅に下落した場合、退職給付信託資産等の評価に伴う退職給付数理計算上の差異の発生等により、退職給付費用が計上される可能性があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響を加味した見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
(注)1.PT Semen Indonesia(Persero)Tbk グループとの業務提携に関する契約書締結
当社は、2020年12月8日に、PT Semen Indonesia(Persero)Tbk(以下、SI社という。)並びにSI社の子会社であるPT Solusi Bangun Indonesia Tbk(以下、SBI社という。)との3社間で業務提携契約書の締結を決定し、契約しております。
(提携内容)
業務提携は、SI社グループとのセメント、資源、環境、建材等の事業協働、研究開発の推進、セメント及びクリンカのトレーディングに関する協議を含む包括的なパートナーシップの構築を目指すものです。
<業務提携の分野>
エネルギー効率推進、温室効果ガス排出対策、工場副原料等の調達と活用
廃棄物処理事業、石灰・石灰石事業、建材事業、生コン・骨材事業
セメント・クリンカのトレーディング事業
2.PT Semen Indonesia(Persero)Tbkグループとの資本提携に関する契約書締結
当社は、2021年1月26日開催の取締役会において、SBI社並びにSI社のグループ会社でSBI社の株主であるPT Semen Indonesia Industri Bangunanとの3社間で資本提携契約書の締結を決定し、契約しております。
(提携内容)
当社は、SBI社が実施するライツイシュー(日本の新株予約権無償割当に相当するインドネシア法上の手続き)を通じて発行されたライツを行使することで、SBI社の株式の15%以上を取得するとともに、取締役1名と監査役1名の派遣を通じて、SBI社を当社の持分法適用会社とするものです。
さらに、SBI社においてトゥバン工場(クリンカ生産能力:年間約300万トン)の出荷能力増強に向けた大型設備投資(桟橋及びサイロ増設など)を実施した後、当社米国子会社向けに同工場から年間最低50万トンのセメントを輸出することを定めています。
米国におけるセメント需要は今後も伸長が見込まれていますので、年間50万トンのセメントを米国向けに安定的に供給できる方策を講じることにより、米国のセメント市場における当社の競争力を高められるものと考えています。
研究開発部門は、収益の源泉となる既存事業分野において最大の利益を獲得するために技術面での支援を確実に進めるとともに、資源・環境・海外・建材を成長事業分野と位置付け、17中期経営計画で基礎を築き、20中期経営計画での成果を今後拡大して、さらに23中期経営計画以降に新しい利益を創出するための研究開発を推進しております。
さらに、2050年までに実質的なカーボンニュートラルの実現に向け、既存の技術の応用・発展に加え、CO₂回収技術、セメント原料や建設資材として再利用するカーボンリサイクル技術など、革新的技術の開発を強力に推し進めております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
1.セメント
トップブランドとしての最高品質の維持、セメント・コンクリートの需要拡大に寄与する技術開発に取り組むとともに、セメント製造に関わるコスト低減と環境対策との両立を図るための研究開発を、セメント事業本部及び生産・設備部門等と連携して、推進しております。さらに、セメントキルン排ガスからの最適なCO₂回収技術の開発にも注力しております。また、海外事業本部等と連携し、海外市場ニーズに即した混合セメント・コンクリートの材料設計や関連技術の開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
2.資源
骨材資源や特殊骨材の価値極大化及び重金属不溶化材を中心とした汚染土壌対策技術の開発等を、資源事業部等と連携して、推進しております。また、当社が保有する石灰石及び珪石資源と、グループ会社を含めたノウハウ、さらにこれまでに蓄積した水熱反応や粒子構造制御などの技術を活用した研究開発により、中空粒子や電極材料などの機能性マテリアルの事業化及び研究開発にも鋭意取り組んでおります。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
3.環境事業
セメント製造プロセスの特長を活用した各種廃棄物の再資源化技術の高度化や廃プラスチック等の処理困難廃棄物の代替エネルギー化等によるCO₂削減、及びバイオマス発電に資する技術開発に注力し、環境事業部や生産・設備部門と連携して、着実に国内のセメント工場等へ展開しております。また、各種排水の処理・浄化及び藻場再生等の水環境事業、廃棄物からの金属資源回収技術等の新規技術開発にも積極的に取り組んでおります。これらの国内で実績のある環境関連技術を成長著しいアジア諸国等へ導出すべく、海外事業本部等と連携し、対象国・地域に見合う開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
4.建材・建築土木
建設資材分野における新たな商材や技術開発を、セメント事業本部及び建材事業部等と連携して、推進しております。このような中、コンクリート製品を中心としたセメント・コンクリート関連商材の需要拡大に向けた材料及び周辺技術開発と、インフラの維持管理に対応するコンクリートの診断、補修・補強材料及び工法等の技術開発・市場展開に取り組んでおります。また、当社グループの企業とも連携しながら、グループ全体の技術力や収益の向上に寄与しています。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、