文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の収束による経済・社会活動の回復等により、引き続き景気が持ち直していくことが期待されます。一方、燃料価格や原材料価格等の急激な変動にも注意を払う必要があります。
このような状況下、当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要事業である国内セメント事業において、都市部の再開発工事、リニア中央新幹線関連工事、国土強靭化及び防災・減災対策、老朽化した社会インフラの更新など、一定水準の需要が続くと期待されます。一方、石炭等原燃料価格の高止まりは、当社の業績に大きな影響を及ぼしており、原燃料をはじめとする各種コストの上昇に応じたセメント販売価格の適正化を引き続き実行していく必要があります。また、建設コスト上昇や技能労働者の不足が工事に与える影響に留意する必要があるほか、物流業界におけるドライバー不足に加え、時間外労働時間の上限規制に伴う諸問題にも対処する必要があります。
米国ではバイデン政権により1兆ドルを超えるインフラ投資法案が可決されており、2028年にはロサンゼルスオリンピック・パラリンピックの開催も控えているなど、今後もセメント需要が伸長していくことが期待されますが、高インフレの長期化懸念もあり、景気の動向を注視していく必要があります。
このような情勢の中で、当社グループは、2020年代半ばをイメージした「ありたい姿・目指す方向性」として「グループの総合力を発揮し、環太平洋において社会に安全・安心を提供する企業集団を目指す」ことを掲げ、その実現に向け3つのステップに分けて取り組んでおります。2021年度から2023年度までの3年間を実行期間とする「23中期経営計画」はその第3ステップと位置付けており、本中期経営計画の最終年となる2023年度は、上記の課題のほか、以下の経営課題に対し精力的に取り組んでまいります。
(1) 23中期経営計画の基本方針
23中期経営計画では、以下の基本方針に基づき、当社グループ全ての事業が総合的・複合的に機能し合う、当社にしかできない新たな事業モデルを構築する、すなわち「圧倒的なリーディングカンパニー」となることを目指してまいります。
①成長の歩みを止めない企業グループとなる。
②社会基盤産業として、安全・安心社会の構築に貢献する。
③収益基盤の強化、成長投資を着実に実行する。
(2) 経営目標
23中期経営計画では、以下のとおり経営目標を設定し、強靭な収益基盤を構築してまいります。
<2023年度目標>
売上高営業利益率 11%以上
ROE 10%以上
(3) カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
当社グループは「カーボンニュートラル戦略2050」の技術開発ロードマップ及び2030中間目標を盛り込んだ具体的方策を策定しており、世界のトップランナーとして社会実装可能な技術を早期に確立し、2050年までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現を目指してまいります。
(4) 事業戦略
①セメント(国内)
国内セメント需要の大きな伸びが期待できない市場環境において、様々な施策を実行することで当社グループの総合力を最大限に発揮し、国家的プロジェクト等への安定供給、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを積極的に進めます。
②セメント(海外)
北米事業の強化、東南アジアでの事業拡大と新たな拠点となるインドネシアを組み入れた環太平洋全域にわたる物流ネットワークの再構築、及びトレーディング事業拡大を図ります。
③資源
豊富に保有している石灰石等の資源を長期安定供給するための基盤構築を進め、グループの総合力を発揮し、既存コア事業の収益拡大を図るとともに、持続的発展を可能にする新規事業育成に注力します。
④環境事業
外部環境変化を的確に把握し、『気候変動対応』、『デジタル』、『マテリアル』、『エネルギー』をキーワードに、時代の潮流に即した新たなビジネスへの発展を図るとともに、新たな資源循環モデルを確立し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた貢献に取り組みます。
⑤建材・建築土木
市場競争力の強化により、既存事業の収益力の向上を図ります。更に、グループ内でのシナジーを創出できる新たな事業領域の開拓に積極的に取り組みます。
⑥その他(個別企業群)
個別企業の収益力強化を図るとともに、当社グループとしてのシナジーが期待できる新たなビジネスモデルの構築に取り組みます。
(5) 研究開発戦略
社会への貢献、グループの持続的成長に資する研究開発として、カーボンニュートラル実現に向けた技術開発を最大のテーマと位置付け強力に推進するとともに、基盤技術の深化、リサイクル技術の進化、革新的材料、将来を見据えた技術開発を柱として取り組んでまいります。
(6) 経営基盤の強靭化
コーポレートガバナンスの充実・強化の継続的な取り組みを通して、企業価値の向上を図ってまいります。また、「CSR目標2025」で設定している3つの定量目標(災害防止、温室効果ガス排出抑制、ダイバーシティ)の実現に向け、着実に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループの長期的・持続的な成長原資の強化のみならず、環境、社会のサステナビリティ向上に資する活動を追求することを目的に、2022年度まで設置の「CSR経営委員会」を発展させ2023年4月に代表取締役社長を委員長、全取締役及び全役付執行役員を委員とする「サステナビリティ経営委員会」を設置しました。その傘下の7つの専門委員会によりサステナビリティ経営推進における重点課題に取り組んでいます。このうち、環境経営委員会が気候変動を含む環境戦略に対する活動を、リスク管理・コンプライアンス委員会がリスク管理に対する活動を、人権・労働慣行委員会が人権尊重に関する活動を統括しており、それぞれが活動を推進するとともに活動計画の策定及び活動実績の自己評価を行っています。その内容はサステナビリティ経営委員会で審議し、結果を取締役会に報告します。
②戦略
当社グループでは気候変動問題への対応、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを重要な経営課題の一つと位置付けています。グループの持続的な成長には、動脈産業と静脈産業の役割を果たしつつカーボンニュートラルを実現することが必要不可欠という認識をもとに、社会実装可能なカーボンニュートラル技術を早期に確立することを重要な成長戦略と捉えています。
2022年3月に「カーボンニュートラル戦略2050」の技術開発ロードマップを公表してサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現への取り組みを展開しています。
展開にあたっては2019年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、適切に情報開示を実施するとともに、グローバルセメント・コンクリート協会(GCCA)のガイドラインによる主要業績評価指標(KPI)管理及び、2022年5月に署名した国連グローバルコンパクトの原則に整合させた取り組みを行っています。
●2030年及び2050年に向けた取り組み
1. 2030年に向けた取り組み 国内・海外グループ2030中間目標(2000年比)
サプライチェーン全体でのCO₂排出原単位(※1)を20%以上削減(国内CO₂排出総量は、40%以上削減)
①カーボンニュートラル実現に向けた技術開発・導入
• 既存技術(省エネルギー、低CO₂エネルギー/セメント(※2))の最大活用
• 革新技術開発(CO₂回収・利用)の完成
②カーボンニュートラル実現に向けた投資:1,000億円
2. 2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
①革新技術の順次展開
②サプライチェーン全体としてのカーボンニュートラルを実現する
当社グループでは、カーボンニュートラルの実現に必須となる革新技術の社会実装に向けて、解決すべき社会受容性や経済的負担のあり方、グリーンエネルギーの供給やインフラ整備といった課題に対しても、政府への働きかけ、他産業との連携などを通じて取り組んでいきます。
(※1)スコープ1(代替化石エネルギー分を除く)+スコープ2+スコープ3(カテゴリ1,3)
(※2)低CO₂セメント:低CO₂排出クリンカを使用したセメント、混合セメント、
炭酸塩化プロセスを利用するセメントなどを指します。
③リスク管理
「リスク管理基本方針」、「リスク管理規程」を定めてリスクマネジメントを展開しています。また、「行動指針」において“事業環境の変化に即応し、柔軟に行動する”ことを宣言しています。リスクマネジメントは、経営の不確実性を低減し、経営目標を達成するための基盤と考え、経営目標の達成を不確実とするリスクを、サステナビリティ経営委員会傘下に総務担当役員を委員長とする「リスク管理・コンプライアンス委員会」において、年度毎のPDCAサイクルによるリスク管理、さらには3年に1度の全社リスクの洗い出し・評価と特定を実施しています。
2022年度には全社リスクとして、「サプライチェーンの経営変動リスク」、「自然災害の激甚化と施設・設備老朽化リスク」、「人材関連リスク」を特定し、リスク管理の取り組みを推進しています。
④指標と目標
気候変動に関するマネジメントに関する、CO₂排出・エネルギー使用といった主な指標と目標は下記の通りです。これらの指標についての実績は、第三者による保証を受けています。なお、当連結会計年度(2022年度)の実績は、第三者検証後に当社WEBサイトにて公表いたします。
●指標
●目標
(2)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
①人材育成方針
②社内環境整備方針
当社グループでは上記①及び②で記載した指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、これらの指標に関する目標と実績は連結グループで主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
リスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、下記事項は、投資家の判断に重要な影響があると考えられるものであり、当社グループにおけるリスクのすべてを網羅したものではありません。
建設投資が減少し、セメント、生コンクリート、建築土木等の事業で需要が大幅に減少した場合、影響を受ける可能性があります。
石油・石炭等の輸入原燃料品代及び船運賃等の国際価格が上昇した場合、上昇分の製品価格への転嫁の状況によって影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
しかしながら、石炭等原燃料価格に関しては、ウクライナ情勢等の影響により高止まりしており、各種コストの上昇に応じた製品価格の適正化を引き続き実行していく必要があります。
原燃料品の輸入やセメント等の輸出、在外子会社等からの配当金をはじめとする外貨建て取引において、大幅に為替が変動した場合、影響を受ける可能性がありますが、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
また、在外子会社の財務諸表の為替換算においても、邦貨ベースで影響を受ける可能性があります。
市場金利が大幅に上昇した場合、支払利息が増加する等の影響を受ける可能性がありますが、当社グループは有利子負債削減等の取組みを通じて財務体質の強化を図っているほか、必要に応じて一部の取引にデリバティブ取引を利用する等によりリスクを抑制しております。
株式市況が大幅に下落した場合、保有株式の評価及び退職給付信託資産等の評価に伴う退職給付数理計算上の差異の発生等により、影響を受ける可能性があります。
当社グループは、アジア諸国、アメリカ等の世界各地で事業展開しており、それぞれの地域における政治・経済情勢の変化により影響を受ける可能性があります。
当社グループは、事業の選択と集中を推進することとしており、重点分野に経営資源を集中するとともに、他社との連携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において業績及び財政状態に影響を受ける可能性がありますが、高度な専門性などが要求される場合には、常任の法律顧問をはじめ、顧問法律事務所、経営コンサルタント等、専門家のアドバイスを受けております。
当社グループは、事業展開する各国、地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っておりますが、予期しない変更や新たな適用により、影響を受ける可能性があります。
環境規制に関しては、セメントの製造過程では相当量のCO₂が発生しますが、温室効果ガス排出抑制に向けて各種公的規制が強化された場合や社会変化により、影響を受ける可能性があります。また、セメントの原料・燃料代替として廃棄物を利用しておりますが、廃棄物処理にかかる規制等が強化された場合にも、影響を受ける可能性があります。
なお、当社は2019年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、TCFDの提言に基づき、気候変動が当社グループに与える事業リスクと事業機会について評価、分析を行い、その結果を開示しております。気候関連シナリオの拡大とともに評価、分析の更新を進め、事業戦略への反映と情報開示を進めていきます。
温室効果ガスの大気への蓄積・地球温暖化により、豪雨による浸水・土砂崩れの頻発や、台風の強力化による被害が発生する可能性があります。この場合、生産設備等が被災し輸送機関の混乱が長期化する等、影響を受ける可能性があります。
災害等の緊急事態が発生した場合、「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に則して適切に対応します。
大震災や新型ウイルス等感染症の急速な流行が発生した場合のほか、生産設備等の重大事故や重大な労働災害が発生した場合にも影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症影響下における行動制限が緩和されるとともに、個人消費や企業の設備投資を中心に経済活動の回復が進み、景気は緩やかに持ち直しました。しかしながら、長引くウクライナ情勢や、急激な為替の変動などにより、燃料価格や原材料価格は不安定な状況で推移し、企業収益に大きな影響を及ぼしました。
また、世界経済については、米国経済が高インフレと政策金利の引き上げ等の影響で景気の減速感があり、中国経済は、新型コロナウイルス感染症急拡大により経済活動が抑制され、景気が減速しました。
このような状況の中で、当連結会計年度の売上高は8,095億4千2百万円(対前年同期1,013億4千万円増)、営業利益は44億5千6百万円(同422億4千5百万円減)、経常利益は10億1千5百万円(同491億7千7百万円減)、親会社株主に帰属する当期純損失は332億6百万円(前年同期は289億7千1百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。各金額については、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
セメント国内需要は、民需については都市部再開発工事や物流関連施設新増設の活発化により一定の需要がある一方、建設コストの増加や住宅ローン金利の上昇に対する懸念により住宅需要が減少したことから前期並となりました。また、官公需については労務費や建設資材コストの上昇によるセメント原単位の減少や、建設現場の慢性的な人手不足による工程遅延で低調に推移した結果、全体では3,728万屯と前期に比べ1.5%減少しました。その内、輸入品は1万屯と前年に比べ51.3%増加しました。また、総輸出数量は813万屯と前期に比べ29.1%減少しました。
このような情勢の下、当社グループにおけるセメントの国内販売数量は、受託販売分を含め1,312万屯と前期に比べ1.7%減少しました。輸出数量は243万屯と前期に比べ41.2%減少しました。また、セメント製造用石炭価格の高止まり等により、厳しいコスト状況が続いており、セメント販売価格の改定を行っております。
米国西海岸のセメント事業は、レディング工場他資産買収等により、販売数量は前期を上回りました。中国のセメント事業は、ゼロコロナ政策に伴うロックダウンの影響等により、販売数量が前期を下回りました。ベトナムのセメント事業は、中国の需要低迷に伴う輸出減少及び国内需要の伸び悩み等により、販売数量は前期を下回りました。フィリピンのセメント事業は、ベトナムからの輸入品に対するアンチダンピング課税による輸入セメントの販売減少等の影響により、販売数量が前期を下回りました。
以上の結果、売上高は5,530億4千1百万円(対前年同期898億2千7百万円増)、営業損失は148億9千8百万円(前年同期は241億8千8百万円の営業利益)となりました。
骨材事業は関東・中部地区を中心に販売が堅調に推移しました。鉱産品事業は鉄鋼向け石灰石の販売数量が減少しました。土壌ソリューション事業は建設発生土受入数量が前期を下回りました。また、事業全体において、販売価格への転嫁に努めているものの、各種コストアップの影響を受けました。
以上の結果、売上高は827億6百万円(対前年同期55億2千3百万円増)、営業利益は55億5千6百万円(同4億7千8百万円減)となりました。
排脱タンカル、石膏及び燃料販売は堅調に推移したものの、石炭灰処理は伸び悩みました。また、バイオマス燃料は国際的な為替変動の影響を受けました。
以上の結果、売上高は779億1千1百万円(対前年同期55億9千5百万円増)、営業利益は58億7千1百万円(同7億7千6百万円減)となりました。
ALC(軽量気泡コンクリート)と建築材料の販売は堅調に推移したものの、原材料価格の急激な高騰の影響を受けました。また、地盤改良工事は低調に推移しました。
以上の結果、売上高は682億7千万円(対前年同期31億7千3百万円増)、営業利益は23億5千1百万円(同11億4千1百万円減)となりました。
化学製品事業は持ち直したものの、電力供給事業、エンジニアリング事業及び運輸・倉庫事業は低調に推移しました。
以上の結果、売上高は869億2千6百万円(対前年同期20億9千9百万円減)、営業利益は51億8百万円(同18億1千1百万円減)となりました。
財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ1,658億5千4百万円増加して1兆2,688億6千2百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末に比べ898億5千7百万円増加して4,304億8百万円、固定資産は同759億9千7百万円増加して8,384億5千4百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は原材料及び貯蔵品が増加したことによるものであります。固定資産増加の主な要因はその他有形固定資産が増加したことによるものであります。
負債は前連結会計年度末に比べ1,817億9千6百万円増加して7,400億5百万円となりました。流動負債は前連結会計年度末に比べ760億1千6百万円増加して3,857億8千4百万円、固定負債は同1,057億8千万円増加して3,542億2千1百万円となりました。
流動負債増加の主な要因は短期借入金が増加したことによるものであります。固定負債増加の主な要因は長期借入金が増加したことによるものであります。
有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金の合計額)は、前連結会計年度末に比べ1,328億9千8百万円増加して4,034億8千5百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ159億4千1百万円減少して5,288億5千7百万円となりました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が減少したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末から7.3ポイント減少して39.0%となりました。1株当たり純資産額は、前連結会計年度末から133.75円減少して4,228.48円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動によって2億6千8百万円減少し、投資活動によって933億4千4百万円減少し、また、財務活動によって1,120億8千万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比較して206億1千4百万円増加し、当連結会計年度末には708億2千8百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は2億6千8百万円(前年同期は711億9千1百万円の獲得)となりました。これは、減価償却費が644億1千9百万円となった一方で、棚卸資産の増加額が371億6千5百万円、売上債権の増加額が182億1千7百万円となったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は933億4千4百万円(対前年同期94億2千4百万円増)となりました。これは、固定資産の取得による支出が634億1百万円、事業譲受による支出が309億3千万円となったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は1,120億8千万円(前年同期は37億4千2百万円の使用)となりました。これは、長期借入金の返済による支出が418億2千6百万円となった一方で、長期借入れによる収入が1,442億6千4百万円、短期借入金の純増加額が232億3千7百万円となったこと等によるものであります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
※ 営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
※ 2023年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオを記載しておりません。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「23中期経営計画」の経営目標として、2023年度において売上高営業利益率11%以上、ROE10%以上を掲げ、その実現に向けて取り組んでおります。しかしながら、2022年度実績は売上高営業利益率0.6%、ROE△6.6%と目標を下回る結果となりました。これは、国内セメント事業において石炭価格が想定よりも大幅に高騰するなど当社グループにとって厳しい事業環境となったことなどによるものであります。収益力の創出・向上については当社グループが引き続き取り組んでいくべき重要な経営課題であると認識しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
当社グループは、営業活動によって得られた資金により、成長投資を重視し、資本効率を意識した積極的な設備投資・投融資を実行しております。また、株主還元につきましても、重要な経営課題の一つとして位置付けており、安定的かつ継続的な配当を基本としております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金または借入及び社債の発行により資金調達することとしております。このうち、長期借入金及び社債は主に設備投資に係る資金調達であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的に判断し見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
研究開発部門は、収益の源泉となる既存事業分野において最大の利益を獲得するために技術面での支援を確実に進めるとともに、海外・資源・環境・建材を成長事業分野と位置付け、17中期経営計画で基礎を築き、20中期経営計画での成果を今後拡大して、さらに23中期経営計画において、新しい利益を創出するための研究開発を推進しております。
さらに、カーボンニュートラル戦略2050の技術開発ロードマップ及び2030中間目標を盛り込んだ具体的方策を策定しました。この戦略に基づき、2050年におけるサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現に向けて、既存技術の最大活用と革新技術開発の完成を強力に推し進めております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
1.セメント
トップブランドとしての最高品質の維持、セメント・コンクリートの需要拡大に寄与する技術開発に取り組むとともに、セメント製造に関わるコスト低減と環境対策との両立を図るための研究開発を、セメント事業本部及び生産・設備部門等と連携して推進しております。さらに、セメントキルン排ガスからの最適なCO₂回収技術、及びCO₂有効利用技術の開発にも注力しております。また、海外事業本部等と連携し、海外市場ニーズに即した混合セメント・コンクリートの材料設計や関連技術の開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
2.資源
骨材資源や特殊骨材の価値極大化及び重金属不溶化材を中心とした汚染土壌対策技術の開発等を、資源事業部等と連携して推進しております。また、当社が保有する石灰石及び珪石資源と、グループ会社を含めたノウハウ、さらにこれまでに蓄積した水熱反応や粒子構造制御などの技術を活用した研究開発により、電極材料や中空粒子などの機能性マテリアルの事業化に鋭意取り組んでおります。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
3.環境事業
セメント製造プロセスの特長を活用した各種廃棄物の再資源化技術の高度化や廃プラスチック等の処理困難廃棄物の代替エネルギー化等によるCO₂削減に資する技術開発に注力し、環境事業部や生産・設備部門と連携して、着実に国内のセメント工場等へ展開しております。また、各種排水の処理・浄化及び藻場再生等の水環境事業、廃棄物からの金属資源回収技術等の新規技術開発にも積極的に取り組んでおります。これらの国内で実績のある環境関連技術を成長著しいアジア諸国等へ導出すべく、海外事業本部等と連携し、対象国・地域に見合う開発を行っております。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、
4.建材・建築土木
建設資材分野における新たな商材や技術開発を、セメント事業本部及び建材事業部等と連携して推進しております。このような中、コンクリート製品を中心としたセメント・コンクリート関連商材の需要拡大に向けた材料及び周辺技術開発と、インフラの維持管理に対応するコンクリートの診断、補修・補強材料及び工法等の技術開発・市場展開に取り組んでおります。また、当社グループ企業と連携しながら、グループ全体の技術力や収益の向上に寄与しています。なお、当事業に係る研究開発費の金額は、