文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、技術立脚の提案型企業として、時代が要請する新たな価値と優れた品質の提供により、顧客や社会から高い信頼を得られるリーディングカンパニーを目指すとともに、社員の個性と能力を十分発揮できる環境を整え、絶えず前進する積極的な姿勢とスピーディな行動で企業価値を高め、株主の期待に応えることを基本としています。
(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
①『2030 長期経営計画 日特BX』及び新中期経営計画(2021年度~2024年度)
当社グループは「良品主義」「総員参加」を基本姿勢とし、創意工夫・改善という変化を積み重ね、顧客視点に立ち「良い品質」の商品をお届けすることで、今日の日本特殊陶業グループを築き上げてまいりました。これこそが当社グループの基本であり、今後もこの姿勢を守り、さまざまな課題に取り組んでまいります。長期経営計画『日特進化論』では、2020年のありたい姿として「ものづくり企業」、「高収益率企業」、「発展的企業」、「人財企業」を掲げ、その実現のためのプロセスとして、3年ごとに現業の掘り下げと新ビジネスの種まきを目指す「深化」、新製品・新ビジネスの立ち上げを目指す「新化」、そして、現業と新ビジネスの加速度的な発展を目指す「進化」の3つのステージに分け、2020年にすべてのステークホルダーに対して、“真価(真の価値)”を提供することを目指してまいりました。
そして、『日特進化論』の最終ステージである第7次中期経営計画では、その総仕上げとなる「進化」の3年と、その先の“真価(真の価値)”を見据えた5カ年計画で、「既存事業のさらなる強化」、「新規事業の創出」、「強固な経営基盤の構築」を基本方針として各種施策を実施し、その成果は次のとおりです。
(既存事業のさらなる強化)
主力製品であるスパークプラグは圧倒的な地位を確立し、排ガス用センサも世界トップシェアを実現する等、ものづくり企業として“真価”を世界のお客さまに届けられるバリューチェーンの構築を達成いたしました。
(新規事業の創出)
医療分野では酸素濃縮装置事業を世界展開するCAIRE社の買収による事業拡大、環境・エネルギー分野では燃料電池事業における子会社設立、また新規事業の探索を推進する組織「ベンチャーラボ」の設立やベンチャーキャピタル投資等の“種まき”を進めたものの、具体的な成長ビジョンの提示までには至りませんでした。
(強固な経営基盤の構築)
「専務執行役員」及び「常務執行役員」という職位を「上席執行役員」に統合し、役員間の階層をフラットにすることで経営課題へ迅速に対応できる体制を整えるとともに、年齢や経歴を問わず有望な人財を活用するために、雇用型の「従業員執行役員制度」を導入いたしました。さらに、グローバルに拡大する事業環境に対し、より市場に近い拠点でスピーディかつ正確な経営判断を下すため、米州、EMEA、アジア地域を統括するRHQ(リージョナルヘッドクオーター)を導入する等、強固な経営基盤を構築してまいりました。
以上のとおり、『日特進化論』の総仕上げとなる第7次中期経営計画においては、スパークプラグ、排ガス用センサを中心とする自動車関連事業のさらなる強化に取り組み、安定的な収益基盤を構築してまいりました。しかし、電気自動車をはじめとした技術革新が急速に進行し、経済及び業界の構造そのものが大きく変化している今、“新たなステージ”へ向けた飛躍と革新が求められています。
このような状況を踏まえ、2020年には、セラミックスをコアとしながらもセラミックスを超えた事業を展開し、自動車関連事業を中心とした事業ポートフォリオからの転換を大きな戦略テーマに、当社グループの「2040年に目指す姿」として、「これまでの延長線上にない変化」、そのビジョンとして「Beyond ceramics, eXceeding imagination- セラミックスの先へ、想像のその先へ。」を掲げ、そのマイルストーンとなる2030年をターゲットにした新長期経営計画『2030 長期経営計画 日特BX』を策定いたしました。『2030 長期経営計画 日特BX』では、行動指針“Change with Will”のもと、「経営革新」「権限・責任の厳格化」「『志』『共生』の意識醸成」を具体的な施策として推進することで、自動車関連事業で得た収益を源泉として成長事業及び新規事業への投資を加速させ、事業ポートフォリオの転換を図ってまいります。
また、『2030 長期経営計画 日特BX』で目指す姿を見据え、2021年度から2024年度までの4年間を「変えるために、壊す。」「変わるために、創る。」として、組織を変革する期間に位置付けた新中期経営計画を策定いたしました。本中期経営計画においては、次の基本方針及び重点課題を掲げ、各種取組みを実行してまいります。
基本方針:「既存事業」と「新規事業」が独立しながら、両輪で走る
(重点課題)
■成長事業及び新規事業への投資・人財ポートフォリオ転換の促進
■ROIC経営による稼ぐ力のさらなる強化
・重点課題に基づく具体的な取り組みの一つとして、2021年4月には社内カンパニー制への移行と一部事業部門の分社化を実施いたしました。事業部門、事業サポート部門、コーポレート部門の各組織において権限と責任を明確にし、独立自営の体制のもと、機動的な意思決定の実現と収益性の可視化によるさらなる成長を推進してまいります。
・ROICを用いた事業別の目標管理及び事業ポートフォリオマネジメントの仕組みを構築・運用することで、経営資源の最適配分を実現し、投資対効果の最大化を図ります。
・事業ポートフォリオの転換に不可欠な人財ポートフォリオの転換を実現するため、成長事業・新規事業への人財の積極的な転換に取り組むとともに、「自律創造人財」の育成・創出を推進します。
(事業別の取組み)
事業ポートフォリオ転換の達成に向けて、自動車関連事業でキャッシュ創出を最大化し、成長事業・新規事業へ積極的な経営資源の再配分を図ってまいります。
(1)自動車関連事業
自動車関連事業においては、超効率化によりキャッシュ創出の最大化を図ります。具体的には、高付加価値製品におけるシェアの向上、生産性の向上による投資の抑制、在庫圧縮による資本効率の向上により、利益及びフリーキャッシュフローの最大化に取り組みます。
(2)成長事業
成長事業においては、各事業において市場成長率を超える事業成長を目指します。半導体製造装置用部品事業では、独自技術で競合との差別化を図り、顧客からの最先端のニーズに応えることで、同分野でのトップサプライヤーを目指します。また、呼吸器関連事業では、グローバルでの患者様のQOL改善に貢献するため、製品群の拡充と販売地域・販売チャネルの拡大に取り組みます。
(3)新規事業
新規事業においては、新たな事業の柱となる新規事業の実現、及び、事業創出サイクルの短縮化を目指します。新規事業の創出については、「Smart Health」「Decentralized Utility」「Smart Mobility」を注力領域として、コーポレートベンチャーキャピタルを通じたベンチャー企業との連携やM&Aの活用により、持続可能な成長に向けた新市場の獲得を目指します。燃料電池事業では、産業用燃料電池向け製品の発電性能の向上、家庭用・業務用の次世代燃料電池向け製品の開発、生産コストの低減及び量産体制の確立により、競争力の獲得及び事業規模の拡大に取り組みます。
②持続的成長に向けた取組み
企業の持続的成長を図っていく上では、重要な社会的課題に正面から向き合い、その解決に挑んでいくという基本姿勢が求められます。当社グループは、グローバル企業として持続可能な社会作りに寄与するため、ESG各分野の社会的課題のうち、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社にとっての重要性」の2軸からサステナビリティにおける重要課題を特定しました。「相互信頼を深め、未来を見つめた新たな価値を提案し、世界の人々に貢献します」という企業理念のもと、今後も「社会のよき一員」として企業活動を推進し、社会全体に貢献できるよう努めてまいります。
③コンプライアンスの徹底
当社グループはコンプライアンスを重要な経営課題と位置付けており、今後も企業の社会的責任を果たし、すべてのステークホルダーから信頼される企業であり続けるために、過去に生じた競争法違反の再発防止策の徹底と全社に対するコンプライアンス教育、啓発活動を継続して実施してまいります。
④新型コロナウイルス感染症への対応
当社では新型コロナウイルス感染症拡大の初期段階から対策本部を立ち上げ、さまざまな感染防止策を実施してまいりました。職場環境の感染リスクを低減するため、在宅勤務や時差勤務の積極的な推奨、WEB会議の活用、オフィスでの密集を避けるための分散勤務を目的としたサテライトオフィスを設置し、特に在宅勤務に関しては従業員が利用しやすい環境を整えるためにIT環境を刷新しました。また、2021年7月に小牧工場内に竣工予定の新オフィス棟においては、非在席勤務率30%以上を主な取組みのひとつとして掲げております。
これまでの新型コロナウイルス感染症への対応実績を事業継続計画(BCP)に反映し、引き続き感染の再拡大や新たな感染症に備えてまいります。
当社グループの経営成績は、今後起こり得る様々な要因に影響を受ける可能性があり、事業展開上のリスク要因と考えられる主な事項は以下のとおりですが、これらを認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。
なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 新型コロナウイルスに関するリスク
新型コロナウイルス感染再拡大により、世界経済の回復が鈍化しており、地域によっては防疫強化のための経済活動抑制が続いています。その影響を受け、当社グループの主要な顧客である自動車メーカーにおいて生産調整を余儀なくされる場合は、当社グループもその影響を受ける可能性があります。また、人々の外出自粛が続く状況では自動車の走行距離が減少し補修需要が落ち込むことも予想され、さらに人々の移動や消費等に対する志向が変化して電気自動車への転換が進み、内燃機関部品のニーズがより低下することも考えられます。この様に当社グループの主要な事業基盤である自動車産業の変化が進む大きな契機となる可能性があり、当社グループとしては、短期的のみならず中長期的な視点で、自動車産業に関わる情報の収集・分析に努め、事業計画に反映してまいります。加えて、自動車以外の医療分野、エネルギー分野等の新規事業の収益貢献に向けて注力します。
また、当社グループのサプライヤーである原材料・部品の仕入先や加工委託先等において、経営環境の悪化にともない事業継続が困難となり、当社グループへの供給に影響が生じる可能性が考えられます。当社グループとしては、サプライヤーとの連携を密にして原材料・部品の安定調達を行ってまいります。
さらに、社内感染予防策としては、テレワークやWEB会議の推進、ソーシャルディスタンスの確保等を継続し、対応実績も検証して事業継続計画(BCP)に反映させており、断続的な感染拡大あるいは新たな感染症の発生に備えています。
(2) 世界情勢・為替変動に関するリスク
当社グループは、売上の約80%が海外市場であり、海外生産の展開も合わせて国際的な事業運営を行っているため、経営成績は世界的な政治・経済情勢の変化の影響を大きく受けます。新型コロナウイルス以外にも、米中貿易摩擦の影響や、中東をはじめとした地政学リスク、世界各国の法令・規制の変更、労働環境の変化等、予想外の環境変化が当社グループ又はその顧客の需給に影響を与える可能性があります。
さらに、米ドル、ユーロ等主要通貨に対する日本円の変動は、当社グループの製品の価格面での競争力に影響を及ぼす他、連結海外子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。当社グループでは、短期的な為替変動に対して機動的な為替予約等によりリスクヘッジを図る一方、主要通貨の変動及び事業への影響については、執行役員会でモニタリングを行い、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています。
(3) 事業環境に関するリスク
自動車関連事業の新車組付用製品の販売量は、自動車メーカーの生産計画による影響を受けます。また、補修用スパークプラグの販売に関しては、潜在的成長性を有する発展途上の国々における需要が期待できる反面、先進国では長寿命プラグの採用を指向する傾向にあり、販売量の拡大が継続しない可能性があります。また、世界各国のエネルギー政策や環境配慮型規制の進展により、設計・試験・製造バランスの変化に対応するための費用が営業成績に影響を与える可能性があります。特に昨今では、各国の自動車メーカーにおいて電気自動車への移行が進み、次世代製品の開発が急速に求められています。
セラミック事業における半導体部品や半導体製造装置用製品は、移動体通信機器や半導体製造装置をはじめとする情報通信産業・機械等設備産業の事業環境により影響を受けます。当社グループは、事業活動の進捗状況を執行役員会でモニタリングし、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています。
(4) 製品品質に関するリスク
当社グループは調達先を含めて各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造していますが、全ての製品について欠陥が無く、将来においてリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。特定の製品に直接的・間接的に起因する市場クレームが発生した場合、当該製品を回収し、顧客とともに当該製品に変更を施し、又は対策費用の支出による場合も含め、財政的な負担を負わなければならないだけでなく、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、品質問題の予防に向け、製品品質のみならず、すべての業務において品質の向上を意識した取り組みを進めてまいります。
(5) 技術開発に関するリスク
当社グループが提供する製品市場は、技術の急速な進展及びニーズの変化や新興勢力との差別化をその特徴とし、新技術及び新製品の開発においては、短期間での開発、安定した量産に対応する製法の構築のために、市場への導入に先立って設備投資を行うことが必要とされます。このような新製品は、開発資源の増大や競合他社による新技術の開発の結果、想定していた新規性やコスト面での優位性を有しなくなったり、既存の製品の市場性を低下させたりすることで、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、開発速度を上げるようオープンイノベーションを推進し、外部技術との連携を図る仕組みも整備しています。
(6) 知的財産に関するリスク
当社グループは新商品を保護するために知的財産権の取得等の方策を講じていますが、不正利用の防止・類似技術の取得の抑制に対して完全とは言い切れない可能性があり、特許侵害で係争となることやライセンス費用又は和解費用を負担することで、経営成績に影響を与える可能性があります。それらのリスクを抑えるため、開発段階から量産段階における第三者の知的財産権調査と、各種契約の知財条項の適否確認に注力します。合わせて、知的財産の社員教育も推進し、「ものづくり企業」として知的財産の管理を強化していきます。一方で、当社製品の模倣品が新興国を中心に出回っています。こうした模倣品は購入された方の安全を脅かす可能性もありますので、世界各国の税関・行政機関等とも連携して摘発・排除活動を実施しています。
(7) 原材料調達に関するリスク
当社グループは、適時・適量の原材料等の確保を前提とした生産体制をとっていますが、主要原材料・重要な工程委託の中には代替品あるいは代替ルートの確保が困難なものが存在しており、仕入先における事故、廃業、あるいは海外調達品の場合は当事国間の規制変更等により、安定調達に関わるリスクがあります。当社グループでは、複数購買を推進し、サプライヤーとの連携を密にしながら、リスク低減に努めています。
また、主要製品に使用する貴金属が世界的な需給逼迫により価格高騰が続く場合、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、原価低減や価格転嫁等の施策を行い、その影響を軽減する対策を都度検討しています。
(8) 自然災害に関するリスク
当社グループは、日本における生産拠点及び研究開発拠点を東海地方に集中して配置しており、大地震や風水害等の自然災害が東海地方に発生した場合は、操業停止やサプライチェーン寸断等が発生し、生産や出荷活動の低下を招き、当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自然災害を想定した設備対応と定期訓練を実施して緊急事態に備えるとともに、災害発生時には社長を本部長とする緊急対策本部を立上げ、初動対応と復旧対応を行う事業継続計画(BCP)を実行できる体制の整備を推進しています。
(9) 気候変動に関するリスク
当社グループは、気候変動への対応に世界的な関心が高まる中、気候変動を含む環境問題を重要な経営課題であると認識しています。気候変動リスクには、自然災害の深刻化や慢性化等の物理的リスクのほか、炭素税導入や環境規制強化等の移行リスクがあり、いずれも当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、こうしたリスク認識を踏まえて、2030年を見据えた「エコビジョン2030」を策定しました。その中で「気候変動への対応」を需要課題とし、2050年に向けてカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、2030年度までに「CO₂排出量30%削減(2018年度比)」という目標を掲げ、取り組みを進めています。
(10) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業の円滑かつ効率的な遂行のため、ITシステムを利用していますが、システムの高度化・複雑化によって利便性が向上する一方で、ITインフラのシステムダウン、不正アクセス、コンピュータウイルス感染等により、生産や販売等の基幹システムの不具合、故障・停止が発生した場合には、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、こうしたリスクに対し、ITシステムのセキュリティ水準を向上させるとともに、コンピュータセキュリティに関する事故対応チーム(CSIRT)や全社横断的な情報セキュリティ委員会を運営し、万が一の発生時の早期収拾、未然防止に向けた活動を推進しています。
(11) 人財確保に関するリスク
当社グループは、持続的な成長を担う人財の確保・育成に努めていますが、各分野で必要とする専門性を持つ人財や組織を先導する人財を適切に配置できない場合は事業活動が停滞し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、キャリア採用により専門性を持つ人財の確保を進めるとともに、リーダー育成・配置にあたり、経営層をメンバーとする人財委員会で育成プログラムや人財配置を計画的に進めています。
(12) 法令・規制・訴訟に関するリスク
当社グループは、事業を遂行するうえで各種の法令・規制等の適用を受けていますが、これらが変更された場合や見解の相違があった場合、また予見できない新たな法令・規制等が設けられた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは継続的なコンプライアンスの実践に努めていますが、独占禁止法違反、環境その他に関する諸外国を含めた法令違反の可能性に関連して、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、役員、従業員に対して教育プログラムを設定し、コンプライアンス意識の醸成に努めるとともに、コンプライアンス違反の通報や相談の窓口として社内外に内部通報窓口を設置し、早期対応、未然防止に向けた活動を推進しています。
(13) 事業投資に関するリスク
当社グループは、事業戦略の一環として、既存事業の拡大や新たな事業への進出等を目的として他社との事業提携・資本提携及び企業買収等を行うことがあります。これらの意思決定に際しては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な調査及び検討を行っていますが、期待した収益や成果を充分に得られず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。重要な投資に対しては、経営会議でモニタリングを行い、必要に応じて投資計画改善の対策を検討しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国及び欧州では、年度前半において新型コロナウイルス感染拡大の影響により、消費活動や経済活動が大きく停滞しました。その後、年度後半にかけては各国による経済対策やワクチン接種の広がりもあり持ち直しの動きが見られます。中国においては早期に感染拡大の抑え込みに成功し、経済活動再開によるインフラ投資等、内需の回復が見られるものの、感染再拡大を回避するための活動制限による個人消費の低迷が景気回復の重石となっています。わが国経済においては世界的な経済活動の再開により輸出の持ち直しが見られるものの、年度後半にかけて感染者数が拡大しており、世界経済の先行きは依然として不透明な状況が続いています。
当社グループの主要な事業基盤である自動車業界における新車販売は、米国及び欧州においては新型コロナウイルス感染拡大による外出規制等により、年度前半においては前年に比べ大幅に減少する結果となりました。経済活動の再開以降においては徐々に回復の動きを見せているものの、車載向け半導体の供給不足等のマイナス要因が影響を与え始めています。中国においては経済活動の再開以降、各地での持続的な自動車購入を促進する政策により前年同期比で上回る結果となっています。
また、半導体製造装置業界においては、新型コロナウイルスの感染拡大によりスマートフォンの販売減速や自動車販売市場の低迷といったマイナス要因があったものの、テレワーク等の拡大によりデータセンター向けの設備投資は回復傾向にあり、半導体製造装置市場全体としては前年度に比べ拡大基調となっています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は4,275億46百万円(前連結会計年度比0.3%増)、営業利益473億89百万円(前連結会計年度比2.2%減)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は383億67百万円(前連結会計年度比13.9%増)となりました
売上収益営業利益率(営業利益/売上収益)は前連結会計年度11.4%に対して0.3ポイント低下し11.1%となりました。親会社所有者帰属持分利益率(親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分)は前連結会計年度末の8.4%から9.1%と0.7ポイント上昇し、基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の163円06銭から188円59銭と25円53銭増加しました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
<自動車関連>
当事業は、世界各国による段階的な経済活動の再開以降、米国及び中国市場を中心とした補修用製品の販売が好調に推移しました。しかしながら、第1四半期での新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う売上減少により、通期では前年を下回る結果となりました。
この結果、当事業の売上収益は3,386億12百万円(前連結会計年度比1.7%減)、営業利益は566億33百万円(前連結会計年度比1.7%増)となりました。
<セラミック関連>
当事業は、自動車関連向け機械工具の出荷は回復基調であるものの、航空機関連向けの出荷は市場環境等の悪化により落ち込みが見られます。半導体製造装置用部品については市場環境の拡大基調を受けて、当社販売も堅調に推移しました。
この結果、当事業の売上収益は389億15百万円(前連結会計年度比7.2%増)、営業利益は18億49百万円(前連結会計年度は11億6百万円の営業損失)となりました。
<メディカル関連>
当事業は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い手術件数が減少したことにより、人工骨等のインプラント製品の販売は減少したものの、感染症の治療及び医療機関の病床確保を目的とした在宅療養の増加により酸素濃縮装置の需要が拡大し、販売増加に寄与しました。
この結果、当事業の売上収益は248億5百万円(前連結会計年度比20.0%増)、営業損失は11億84百万円(前連結会計年度は4億27百万円の営業損失)となりました。
<新規事業関連>
新規事業関連については、売上収益は199億5百万円(前連結会計年度比3.5%減)となり、情報通信分野における5G等の次世代製品の開発費用の増加や燃料電池分野における量産工程の立上げ費用、その他新規事業分野の探索及び開発費用の増加により、営業損失は104億34百万円(前連結会計年度は51億58百万円の営業損失)となりました。
<その他>
その他の事業については、売上収益は53億7百万円(前連結会計年度比30.7%増)となり、営業利益は5億26百万円(前連結会計年度は5億49百万円の営業損失)となりました。
② 財政状態
資産合計は、7,712億93百万円であり、前連結会計年度末比1,079億19百万円(16.3%)増加しました。これは主に現金及び現金同等物並びに営業債権及びその他の債権が増加したことによるものです。
負債合計は、3,196億66百万円であり、前連結会計年度末比560億30百万円(21.3%)増加しました。これは主に社債の償還により減少した一方で長期借入により借入金が増加したことによるものです。
資本合計は、4,516億26百万円であり、前連結会計年度末比518億88百万円(13.0%)増加しました。これは主に配当金の支払により減少した一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替換算調整の影響によりその他の資本の構成要素が増加したことによるものです。
これらにより1株当たり親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末の1,946円10銭から2,206円18銭となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して為替相場の変動による換算差額43億88百万円を加算した純額で534億27百万円増加し、1,395億20百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から36億10百万円増加の633億97百万円となりました。これは、主に営業債権及びその他の債権が増加した一方で、税引前利益の増加並びに法人所得税の支払額が減少したことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローにより支出した資金は、前連結会計年度から104億2百万円減少の425億23百万円となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出が前年同期に比べ減少し、政策保有株式の一部を売却したことによる収入が増加したことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から207億33百万円増加の281億66百万円となりました。これは、主に社債の償還による支出があった一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が長期化するリスクに備え、資金確保を目的とした借入を行ったことにより増加しました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は売価換算により計算されています。
2 生産高には委託生産高を含んでいます。
自動車関連の製品のうち、新車組付用は自動車メーカーの生産計画を基準とし、また、補修用は自動車の稼動台数、その他市場の動向、過去の販売実績、代理店の意向等を勘案してそれぞれほぼ確実な見込み生産を行っています。
セラミック関連の製品の大部分並びにメディカル関連の製品の一部及び新規事業関連の製品は注文生産品であり、その受注状況は次のとおりです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は外部顧客への売上収益を示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。
この連結財務諸表の作成に当たり、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。当社グループは、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。当社グループが採用した重要な会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (6) 見積り及び判断の利用」に記載しています。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析、検討内容
経営成績等の状況に関する分析、検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは円滑な事業運営を支える運転資金を確保することと、将来の機動的な設備投資を可能にするための中長期的資金への計画的準備を図ることにより、安定的経営と変化への対応に備えることを財務方針としています。そのため、資金計画に基づく当座資金の維持管理をはじめ、債権債務・棚卸資産の効率性を上げるための継続的取り組みを行うとともに、投資リスク軽減のための決裁規程等の整備、投資委員会等の各種組織運営に注力しています。
資金調達の方法としては、短期資金需要に対しては内部留保資金の他、間接金融により調達を行っており、また中長期的資金需要に対しては社債の発行等を通じて直接資本市場からの調達も行っています。
(1) 資本及び業務提携契約
(2) 合弁会社設立等に関する契約
当社グループにおける研究開発活動は、企業理念に立脚し、最善の技術と蓄積した経験を活かした新たな価値の創造に向けて行われています。その活動の主体は、本社機構である研究開発本部及び各事業部技術部門で行っており、国内外の学会・協会への積極的な参画、大学・公的研究機関との共同研究等により最新技術を入手・導入することでレベルアップを図っています。
なお、当連結会計年度における研究開発に係る費用は総額
<自動車関連>
自動車エンジンの開発は、環境への配慮とそれに伴う低燃費・低エミッションの規制に対応すべく加速的に進化しており、自動車メーカー各社は、エンジンの小排気量化・直噴化・過給化・希薄燃焼化・バイオエタノール等の多種燃料対応化等燃費向上に向けた技術開発を積極的に進めています。当社はそれに応えるべく、スパークプラグの分野では耐熱性・耐電圧性・着火性を高めるとともに、より一層の小径・長尺化を推し進め、材料開発から製品設計、製造方法まで一貫して開発を行っています。当連結会計年度においては、エンジンの燃焼速度を高速化し燃費向上に貢献することを目的としたプレチャンバープラグの開発を進めています。
センサの分野では、環境保全の見地から益々厳しくなる排気ガス規制に対応すべく、高温、熱衝撃、振動、被水等の環境耐久性を向上するとともに、環境に配慮した省資源タイプのセンサ開発を行っています。当連結会計年度においては、今後の環境規制を見据えた4輪向け酸素センサ・NOxセンサの性能改善及び最新製品の開発を進めました。また、新規センサの分野では、自動車業界で培ったコア技術を応用し、非自動車への事業領域の拡大を進めています。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、
<セラミック関連>
機械工具の分野では、自動車部品、航空機や発電機のエンジン、電子機器、医療用ネジ等に用いられる切削工具の開発を行っています。当連結会計年度においては、ギヤやシャフト等の焼入鋼や高硬度鋼を高速、高能率に加工できる工具の新材種の発売、及び炭素鋼、合金鋼の高速加工を実現する工具材種の開発を行いました。産業用セラミックの分野では、半導体製造装置用部品や、超音波振動子等の開発・製品化を行っています。当連結会計年度においては、半導体製造装置用部品における製品の性能向上に取り組んだほか、超音波振動子等において、環境・エネルギー分野、医療分野への新しい用途での製品化を進めています。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、
<メディカル関連>
医療分野では人工骨・手術用機器、在宅医療用酸素濃縮装置の開発を行っています。当連結会計年度においては、人工骨に関してポリエチレン製のカスタムメイド頭蓋骨を開発、上市しました。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、
<新規事業関連>
新規事業関連では、エネルギークリーン化への対応として期待の大きなテーマである燃料電池関連の開発に取り組んでいます。現在、独自の機能性セラミックスの材料技術とプロセス技術を活かし、高効率でクリーンな発電システムとして期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発を進めております。当連結会計年度においては、森村グループ4社による合弁会社「森村SОFCテクノロジー株式会社」にて、4社協業によるシナジー効果として、従来他社より小型・軽量・高効率のホットモジュールの開発に成功し、今後、システムメーカーに紹介を行い、新規採用につなげていきます。また、業務・産業用のSOFCセルスタックの量産を開始し、業務用にて市場に参入しました。現在、システムメーカーと協力して、販売拡大に向けた活動をしております。円筒セルスタックは三菱パワー株式会社(三菱日立パワーシステムズ株式会社より社名変更)との合弁会社「CECYLLS株式会社」にて設備搬入が完了し量産体制が整いました。また、車載や通信関連、LED用セラミックパッケージ、半導体検査装置に使用される大型プローブカード用基板等、幅広い製品の開発を行っています。当連結会計年度においては、セラミックの特徴を生かした大型のセラミックパッケージ、5Gアンテナモジュールの開発を行いました。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、