文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、技術立脚の提案型企業として、時代が要請する新たな価値と優れた品質の提供により、顧客や社会から高い信頼を得られるリーディングカンパニーを目指すとともに、社員の個性と能力を十分発揮できる環境を整え、絶えず前進する積極的な姿勢とスピーディな行動で企業価値を高めることを基本としています。
①「2040年 ありたい姿」の再定義と「2030 長期経営計画」
当社グループは、2020年に「2040年 ありたい姿」からバックキャストし、そのマイルストーンと なる2030年をターゲットにした長期経営計画「2030 長期経営計画日特BX」を策定しました。しかしながら、前中期経営計画(2021~2024年度)以降、経営環境の変化は目まぐるしく、持続可能な成長を遂げるには、企業固有のアセットを経営課題に合わせ再構成し、自社の競争力を高めていく必要があります。当社グループが経営を通じて、過去から蓄積してきた技術・アセットを軸としながらも新たな価値創造を実現し、社会課題を解決する姿勢を明確にすべく、これまで「2040年 ありたい姿」としていた「“Beyond ceramics, eXceeding imagination”『セラミックスのその先へ、想像のその先へ』」を新たに「“特殊な”技術と発想で社会的課題を解決し、『地球を輝かせる企業』となる」へと改定しました。また、当社グループの使命として「『これまで培ってきたセラミックスを中心としたアセット』と『新たなアセット』を取り込み、異なる資源を繋ぎ、最小限の資源を徹底的に使い抜き、再生・循環ソリューションを社会に提供する」と定義し、そのスローガンを「“ceramics and Beyond, eXceeding imagination”『セラミックスとその先へ、想像のその先へ』」とし、グループ一丸となり社会課題を解決していくことを目指します。

「2030 長期経営計画」では、引き続き、事業ポートフォリオの最適化を図ってまいりますが、自動車関連事業で得た収益を源泉として、当社グループのコア・アセットやセラミックス素材技術と親和性のある隣接領域へリソースを集中し、新たな事業領域の拡大を目指します。具体的な注力領域は、「モビリティ」「半導体」「環境・エネルギー」とし、いずれもセラミックス技術を活用していく方針です。また、「2030 長期経営計画」の実現に向けた具体的な施策や経営目標を定めるため、2025年度から2029年度を対象期間とする新たな中期経営計画の策定を進めています。

②前中期経営計画(2021~2024年度)の振り返り
前中期経営計画は、「2030 長期経営計画 日特BX」における2021年度から2024年度までの4年間で「変えるために、壊す。」「変わるために、創る。」をスローガンに、組織を変革する期間との位置付けとしていました。以下の基本方針及び重点課題を掲げ、各種の取組を実行してまいりました。
<基本方針>
「既存事業」と「新規事業」が独立しながら、両輪で走る
<重点課題>
成長事業及び新規事業への投資・人材ポートフォリオ転換の促進
ROIC経営による稼ぐ力の更なる強化

前中期経営計画の総括は以下のとおりです。
(定量目標の達成状況)
初年度からの新型コロナウイルス感染の再拡大や半導体供給不足による自動車生産台数への影響、またロシア・ウクライナ情勢の長期化や原材料価格の高騰など、不透明な事業環境が続きました。しかしながら、自動車関連事業においては、補修用製品の販売が好調に推移したことやインフレに対応した価格転嫁を実行したことに加え、円安へ進行したことによる利益押上げもあり、継続して収益性を向上することができました。また、成長・新規事業領域と位置付けるセラミック事業においては、半導体関連の事業が市場での生産調整の影響を受けつつも、事業規模を拡大したことなどにより、売上収益、営業利益及び資本効率性指標について目標値を1年前倒しで達成することができました。
(重点課題の成果と課題)
■成長事業及び新規事業への投資・人材ポートフォリオ転換の促進
・成長事業及び新規事業については、売上収益の規模が2020年度より約28%向上しました。SPE事業においてはセラミック素材技術により高まる要求性能に応え、旺盛な半導体需要を着実に捉えています。また、2024年11月には、東芝マテリアル社の株式の取得(子会社化)を決定し、将来的に電気自動車向けに市場の拡大が見込まれる窒化ケイ素を利用したモーター用軸受けのセラミックボールやパワー半導体用の窒化ケイ素放熱基板等での事業成長を目指しています。一方で、不採算事業や不採算製品からの撤退も実行し、収益構造を改善しました。
・2021年4月には社内カンパニー制への移行と一部事業部門の分社化を実施しました。事業部門、事業サポート部門、コーポレート部門の各組織において権限と責任を明確にし、独立自営の体制のもと、機動的な意思決定の実現と収益性の可視化による更なる成長を推進します。
・事業ポートフォリオの転換に不可欠な人材ポートフォリオの転換を実現するため、成長事業・新規事業への人材の積極的な転換に取り組むとともに、「自律創造人材」の育成・創出を推進しました。
■ ROIC経営による稼ぐ力の更なる強化
・ROICを用いた事業別の目標管理・事業ポートフォリオマネジメントの仕組みの構築・運用に加え、グローバル戦略本部を中心に監理対象銘柄入りの決定や格付の基準を定める等、財務規律を明確化することで、経営資源の最適配分の実現に向けた取組を加速しました。
③優先的に取り組む経営課題
当社グループの理念体系であるNiterraウェイの重要な要素であるCSR・サステナビリティ憲章にも謳われているように、当社グループは持続可能な社会の実現に寄与することで、企業価値を向上していくことを目指しています。
そのために、社会的課題の解決により「地球を輝かせる」ことが最も重要な経営課題と考え、社会的課題解決・人的資本・経営基盤の3つの枠組みで具体的取組を推進します。
具体的には、Niterraグループならではの特殊な技術と発想を活かし、多様な技術の組み合わせを通じた社会的課題解決への貢献と再生可能・循環可能なソリューションの提供に取り組みます。また、それを支える人的資本への取組としては、Niterraウェイを体現する多様な人材が個を活かしていきいきと働くことができる仕組みの拡充を図ります。多様な人材は、主体的に動き未来を切り開く人材・より高度な課題に対し専門性を持って新たな価値を創造できる人材と定義し、その育成に取り組みます。
更にこれらを実現するため、迅速な意思決定を支え、外部環境の変化に対応した戦略的なリスクコントロールを可能にするグローバルな経営基盤を構築していきます。
(1) サステナビリティ共通
当社グループのCSR・サステナビリティ憲章に、持続可能な社会の実現に寄与することで、企業価値の向上を目指すとあり、社会的課題の解決と新たな価値の提供はサステナビリティの原点となっています。当社グループでは、森村グループの礎であり森村組創立時から大切にしてきた考え方を整理し直し、2017年4月に「日特ウェイ(現、Niterraウェイ)」を制定しました。Niterraウェイは、全従業員の間で共有され次の時代に継承されるべき当社グループの共有価値観を含めた理念体系であり、その体系は企業理念、CSR・サステナビリティ憲章、企業行動規範、CSR基本方針、基本姿勢などから構成しています。この理念に基づき、さまざまな社会的課題解決に資する製品、サービスを生み出していくことが、我々の使命であり、存在意義であると認識しています。
持続可能な社会の実現に向けて、推進体制を構築し、事業を通じた社会的課題の解決での貢献を基軸に、国連グローバル・コンパクト、ISO26000、SDGs、TCFDなどの国際的な規範や目標、ガイドラインに賛同する意思表明を行うとともに、長期経営計画の中で優先的に取り組む課題を特定し、さまざまな取り組みを進めています。

① ガバナンス
当社グループは、社会とともに持続的に成長していくため、取締役会の諮問機関としてCSR・サステナビリティ委員会を設置し、委員長は社外取締役に委嘱して外部視点を重視し、ESGの各分野で優先的に取り組む課題を特定して、その課題解決に向けた活動を推進しています。また、経営側のCSR・サステナビリティ委員会の他に、業務執行側にも6つの専門委員会を設置し、CSR基本方針の実現に向けて、ESGの各分野での活動を実践・推進する体制を執っています。必要に応じて外部有識者を招いて知見・視座を高めながら、長期を見据えたサステナビリティ経営の推進を図るべくさまざまなESGテーマに関して多角的に議論をして答申していきます。
また、重要なESGテーマに関しては、分科会をCSR・サステナビリティ委員会に設置して注視していきます。現時点では人権分科会を立ち上げて人権デュー・ディリジェンスの有効性を監督しています。
優先的に取り組む経営課題の主な取り組み内容である「気候変動への対応」や「リスクマネジメント」などの進捗に関わる重要な情報は、各専門委員会で報告され、業務執行における重要事項を審議・決定・監督する経営会議を通じて取締役会に報告されています。

② 戦略
当社グループは、Niterraウェイ(CSR・サステナビリティ憲章)にも謳われているように、持続可能な社会の実現に寄与することで、企業価値の向上を目指しています。
そのためには、社会的課題の解決が最重要経営課題と考え、Niterraならではの想いも込めて「技術と発想で地球を輝かせる」こと、そして「地球を輝かせる」ための人材創出を行い「多様で主体的な人材がNiterraウェイを体現する」こと、また「地球を輝かせる」ための基盤整理を行い「変革を促す新たなグローバル経営基盤を作る」ことをあわせて推進していきます。
具体的には、多様な技術の組み合わせを通じた社会的課題解決への貢献、再生可能・循環可能なソリューションの提供を行っていきます。またそれを支える人的資本投資としては、多様な人材が個を活かしていきいきと働くことができる仕組みの拡充、変革中で主体的に動き、未来を切り開く人材の育成、より高度な課題に対し、専門性を持って、新たな価値を創造できる人材の育成などを実現できるように行います。さらにこれらを支える経営基盤整理として、迅速な意思決定を支え、戦略的なリスクコントロールを可能にする組織プラットフォームの構築を実現していきます。
そしてこれらの項目を実現するために、「社会的課題解決」、「人的資本」、「経営基盤」のそれぞれの分野で中長期的な視点でより具体的な取り組み内容とその目標を設定して取り組んでいくことが重要だと考えています。

③ リスク管理
当社グループは、サステナビリティ戦略、ESGテーマを含めて、事業の目標達成や存続を阻害する可能性を低減もしくは回避するため、リスクマネジメントの最高責任者が任命した執行役員を委員長とするリスクマネジメント委員会を専門委員会の一つとして設置し、全社的なリスクマネジメントの実践、維持、改善を推進しています。
リスクマネジメント委員会では、リスクについて、全社的見地で事業存続や目標達成に大きな影響を及ぼすか否かを、影響度と発生可能性、及びその対策状況を分析して評価しています。重点的な対応が必要と評価されたリスクは「優先リスク」として主管部門を定め、リスクマネジメント委員会で低減活動の状況を確認しています。気候変動や人権をはじめとするESGに関するリスクについても併せて評価しています。一方、重要な機会については、CSR・サステナビリティ委員会で確認し、必要に応じて経営戦略や優先的に取り組む経営課題に反映しています。
なお、当社グループはグローバルかつ多くの分野で事業を展開しており、事業毎にさまざまなリスクと機会があることから、事業毎にリスクと機会を把握して、それぞれに対応しています。気候変動に関するリスクと機会についても、規制動向等を注視して事業への影響をそれぞれに評価し、対応しています。
④ 指標と目標
当社グループは、2030年長期経営計画の実現に向け、優先的に取り組む経営課題に紐づいた主な取り組み内容においてそれぞれ具体的な指標・目標を設定しています。

(2) 気候変動:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
気候変動の緩和のため温室効果ガスの排出量を削減することは、地球規模で緊急かつ重要であり、当社グループにとっても優先的な課題です。特に、ものづくり企業である当社グループにとって、CO2排出量を削減することは、当社グループが果たすべき責任と考えています。
当社グループは、『エコビジョン2030』において、2050年カーボンニュートラルを目指すことを前提として、CO2排出量の削減目標「2030年度:2018年度比30%削減」「2035年度:2018年度比71.4%削減」(スコープ1・2)を掲げています。また、サプライチェーンや製品ライフサイクルにおいてもCO2排出量削減を推進し、「2030年度:2018年度比30%削減」(スコープ3)を目指します。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」を参照ください。
② 戦略
気候関連のリスク・機会について、川上から川下までのサプライチェーン全体を見渡して、短期・中期・長期における社会動向や規制動向などを予測し、TCFD提言の例示を参考にしながら、幅広くリスク・機会の項目を選定しています。
選定したリスク項目について、主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関するリスク」と、世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動による物理的変化に関するリスク」を想定し、TCFDの分類に沿って整理した上で事業インパクトを評価しました。
<検討に用いた主なシナリオや予測>
2℃シナリオ:IPCC RCP2.6、IEA ETP 2DS 等
4℃シナリオ:IPCC RCP8.5、S&P Globalの“Mobility and Energy Future” サービスデータ 等
なお、ここでいう評価(影響度)、リスク/機会が現れる時期は、次の通りです。
小:数億円程度の影響
中:50億円程度の影響
大:100億円以上の影響
短期:中期経営計画の目標年度に合わせた2025年頃まで
中期:長期経営計画の目標年度に合わせた2030年頃まで
長期:長期経営計画の目指す姿に合わせた2040年頃まで
<気候関連のリスク>
また、主要な事業拠点を対象に、現状の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査を行い、想定される被害の程度や頻度を勘案した結果、深刻な被害が発生する可能性は低いことが分かりました。
一方、将来の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査も行い、降水量の増加が見込まれる地域があることが分かりました。しかし、洪水や土砂崩れなどのリスク増に直結するか否かは、各事業拠点の立地(地盤、標高、河川との距離など)や治水対策の状況によるため、引き続き調査を行います。
<気候関連の機会>
気候変動のリスクと機会をより具体的にするため、各事業について、2℃及び4℃シナリオ下における事業環境とその対応について検討した結果、物理的リスクについての致命的な影響は見受けられませんでした。
事業については、現在、売上収益の8割を占める内燃機関に関連する事業が大きな変革を迫られており、一方で、脱炭素社会の実現に向けて、水素関連をはじめとして新たなニーズや市場が期待されることから、「2030 長期経営計画 日特BX」において、今後注力する事業分野の一つに「環境・エネルギー」を掲げ、2040年に向けて事業ポートフォリオ転換(売上収益構成比率:内燃機関事業40%、非内燃機関事業60%)を推進しています。2025年3月期において事業ポートフォリオ転換進捗は(売上収益構成比率:内燃機関事業84%、非内燃機関事業16%)です。
自動車関連事業では2℃シナリオ下において、規制強化により将来的に売上減少が見込まれるため、事業ポートフォリオ転換が必要です。その他の事業については、2℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し、柔軟かつ戦略的に事業を展開しており、中・長期の観点からも高いレジリエンス性を有しています。
※1 内燃機関事業の財務面の影響額について
S&P Globalの分析に基づく当社予測では、各国の気候変動対策によって内燃機関への規制が進むことで、内燃機関を有する自動車は2030年代半ば以降減少すると見込んでいます。
一方、当社の内燃機関事業の中核であるスパークプラグは、新車用だけでなく補修用の需要もあり、当社予測では、引き続き内燃機関を有する自動車が保有されていると考えられることから、2040年以降に売上がピークを迎え、徐々に下降していくことを見込んでいます。こうした状況を踏まえて、内燃機関事業の売上収益が2040年度以降に2024年度から5%減少すると仮定して試算すると、売上収益の減少額は270億円、営業利益の減少額は70億円程度になります。
③ リスク管理
気候変動に関する主なリスクは、サステナビリティ戦略に含めて管理しています。詳細については「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」を参照ください。
④ 指標と目標
当社グループは、2020年5月に発表した長期経営計画「2030 長期経営計画 日特BX」において、「CO2排出量:30%削減 [2018年度比](2030年度)」という目標を掲げています。また、長期的な視野で環境保全活動を進めるため、2021年4月に「エコビジョン2030」を策定し、その中で2050年に向けてカーボンニュートラルを目指すという長期目標を掲げました。2050年に向けたマイルストーンとして、2035年には71.4%削減[2018年度比]を新たに設定しました。
エコビジョン2030では、重要4課題として、気候変動への対応、環境配慮製品の拡充、水資源の保全、廃棄物管理を挙げています。環境配慮製品の拡充は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)やカーボンニュートラル・アズ・ア・サービスなど、気候変動対応やCO2削減をはじめとする環境配慮製品・サービスの提供を目指すものです。また、水資源の保全のために節水することや、資源投入量や廃棄物排出量を削減することは、CO2排出量の削減に繋がります。そのため、これらを重要4課題と設定し、個別の課題として取り組むのではなく、相互に関係する課題として取り組んでいくことで、よりシナジーのある対応を目指しています。
目標の達成に向けて取り組みをより一層推進するため、取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)及び執行役員(雇用型執行役員を除く)を対象とする業績連動型株式報酬制度の中で、評価指標の一つに「CO2排出量削減率」を設けていました。(2024年度まで)また、グループが一丸となってCO2削減の取り組みを進めていくため、ICP(インターナルカーボンプライシング)を導入しています。CO2排出量1トンあたり10,000円を排出部門から徴収し、徴収した金額は、社内環境ファンドとして脱炭素のための投資支援やインフラ整備に充当しています。
同時に、サプライチェーンも含めたスコープ3の削減も推進しています。スコープ3においては、まずはカテゴリ1「購入した製品・サービス」、カテゴリ4「輸送、配送(上流)」の一部、カテゴリ11「販売した製品の使用」の各カテゴリで2030年度 30%削減(2018年度比)を目指します。また、取引先(サプライヤー)に対してはCO2の削減目標を設定して取り組むよう求めており、適宜支援を行っています。
(3) 人的資本に関する考え方
当社グループは、人材方針で定めるように、従業員は最大の経営資源であると認識し、従業員の多様性・個性を尊重することで、自律的に行動し最適解を考え実践する「自律創造人材」を活かし、当社グループの発展を目指すことを人材方針に掲げ、志を持ち、自らの価値を高めると同時に、社会に価値を提供できる人材の育成と活躍を促し、従業員と会社がともに成長しつづけられる関係を築いていきます。また、多様な個性を有する人材が、一人ひとりの力を合わせ、ポテンシャルを最大限発揮できる環境を整えていきます。
この方針の下、2040年の目指す姿である「これまでの延長線上にない変化」の実現に向け、従業員の多様性と個性を尊重することで、自律創造人材を活かし、持続的な発展を目指すことを人材方針の基本としています。「セラミックスで何ができるか」にこだわらず、セラミックスの領域を越え、世の中や私たちの想像を超えた挑戦のため、自律した人材の獲得と育成、多様な知と知の組み合わせ、エンゲージメントの向上を通じ、人的資本を最大化することで、企業価値向上を実現します。
そのために、長期経営計画においては「Change with Will」を行動指針として掲げ、「志を持ち、変わる・変えるための行動ができる人材」を育成することを目指しています。
2024年度までの中期経営計画では、この「自律創造人材」の育成を重点施策としています。「自律創造人材」の育成は、変化の激しい現代社会において、企業が持続的に成長するために不可欠であり、その創出に向けて、「人材の一層の活躍」「経営人材の育成・管理」「外部専門人材の獲得」を施策の柱に取り組みを進めてまいりました。

① 戦略
◆2025年度以降の取り組み
2025年度以降は、Niterraで働く一人ひとりが仕事を通じて成長し、社会で輝き続ける。そして、その成長がNiterraグループの永続的発展の原動力になることで、企業価値の向上を目指してまいります。この考えを、2025年度から始まる中期経営計画に入れていきます。
<戦略> Niterraタレントマネジメントの推進
① 事業ポートフォリオの最適化に向け、その実現を適時適切、適所適材で支える人材ポートフォリオの構築にグローバルで取り組む
② 本社、各地域での人材会議を行い、人材ポートフォリオについて討議し、これを踏まえて採用、育成、
登用施策を実現する。特に、環境変化に対応した多様な人材プールの強化を図る。
③ 社内のジョブを明確化し、キャリアパスを示すことで、「個の志を尊重した人材登用」、
「フェアな機会提供」、「公平なジョブアサイメント」を実現し、自律的なキャリア形成支援を通じて、強い意志と行動力を兼備した人材を育成する。
<風土改革>
現在の「安定的であるが故に個の成長に結びにくい職場風土」を「強い意志と行動力を兼備した人材を育む職場風土」へ改革すべく、グループの共有価値観であるNiterraウェイを軸とした風土改革に取り組みます。
多様な個を結び付け、知と知を組みあわせていく際に、常にこのNiterraウェイが行動指針として意識されるように人事制度・人材育成・採用活動・表彰制度など、様々な施策の判断基準を統一するなどし、浸透活動を推進いたします。そして、当社で働く一人ひとりがNiterraウェイに基づく行動をすることで、仕事を通じ成長し、エンゲージメントが高まっている状態を目指してまいります。
<ガバナンス>
上記をグローバルで推進していくために、経営会議(人材)やグローバルHR会議、その他人材開発会議等を通じ、各人事機能と連携しながら推進いたします。
また、人材戦略及び経営上重要な人事施策、及び、経営戦略上重要なグループ全体のコアポジションの人事については、人的資本管理責任者であるウェルビーイング戦略グループ管掌役員のもと、人事戦略室にて立案、経営会議に諮り、必要な内容に関しては取締役会にて報告します。
②具体的な施策
(i)求める人材の育成と輩出

▲人材戦略の概要図
<人材の一層の活躍 -従業員の主体的なキャリア開発支援>
◆従業員の主体的なキャリア開発
従業員の主体的なキャリア開発を支援するため、「キャリアデザインサイクル」を回していく仕組みを整備しています。具体的には、以下の3つのステップで構成されます。
1. WILL(なりたい自分を描く): 毎年実施される「マイキャリア」面談を通じて、上司と将来のキャリアについて話し合い、実現したいことや理想の自分を明確化します。
2. CAN(できることを把握する): スキルマップを活用し、自身のスキルを客観的に把握し、成長すべき領域を特定します。
3. MUST(求められる役割を知る): 定期的な面談や日常的な1on1を通じて、上司と期待される役割について認識を共有し、自身のWILL、CANとの整合性を確認します。
このサイクルを継続的に回すことで、従業員が自身のキャリアプランを具体化し、実現に向けて主体的に行動することを目指しています。
◆全社共通スキルマップの導入
従業員一人ひとりがコアスキルの向上に取り組める環境整備を進めています。これまで各職場で個別に作成・運用してきた専門スキル(テクニカルスキル)についても、全社で運用できる粒度で作成し、全社共通スキルマップとして展開しました。
また、従業員個人が保有する専門スキルの点検と並行して、事業ポートフォリオ最適化のため、事業戦略に則した優先度の高い専門スキルの特定を進めています。優先度の高いスキルを保有する従業員が不足している場合には、充足に向けた取り組みも並行して検討していきます。
<経営人材の育成・管理 -将来を担う人材の育成>
◆次世代経営人材の育成
次世代の経営を担う人材を発掘・育成するため、グローバル次世代経営人材育成プログラム「HAGI」、次世代リーダー育成プログラム「日特ビジネススクール」などのプログラムを実施しています。HAGI及び日特ビジネススクールの卒業生は、当社グループのコアポジションで活躍しています。各国・各地域においても、域内選抜による人材育成プログラムを策定・開催し、経営に資するリーダーシップの育成に取り組んでいます。
グローバルにビジネスが拡大する中で、すべてのグループ会社から次世代経営を担う人材を発掘・育成するため、2016年から「グローバル次世代経営人材育成プログラム」を開講しています。国籍を問わず、Niterraグループ内の部長クラスの次期経営候補人材に対し、経営者に求められる軸の考察などを探求するプログラムを実施しています。
このプログラムは、幕末期に多彩な人材を輩出した松下村塾の発祥地(山口県萩市)にちなんで「HAGI」と名付け、会長の尾堂が塾長を務めています。HAGIは、全社視点の実践を重視した相互に学び合う場として継続的に開講しており、将来の当社グループを担う志と使命感を持った人材を育成し、輩出しています。
<外部専門人材の獲得 -戦略的採用>
◆採用戦略
事業環境の変化に迅速に対応し、人材ポートフォリオの最適化を図るため、管理職クラスを含め、本社部門や新規事業部門、IT部門を中心にキャリア採用を積極的に進めています。
また、急速に進展するグローバル化に対応し、多様な人材の活躍を促進するため、外国籍従業員の採用を行っています。新卒採用においては、外国籍従業員を継続的に採用しており、近年は、日本の大学への留学生のみならず、海外の大学でより専門性を身につけた外国籍従業員の採用にも力を入れています。
さらに、多様な人材が活躍できるよう、女性や障がい者の雇用機会拡大にも積極的に取り組んでいます。キャリア採用者や外国籍従業員を含め、様々なバックグラウンドを持つ人材がそれぞれの能力を発揮できる環境を整備することで、グループ全体のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進しています。
(ii)企業風土文化の醸成、環境整備
当社は、従業員一人ひとりが持つ多様な個性を尊重し、その能力を最大限に引き出すことができる組織風土・文化の醸成に努めています。
従業員一人ひとりがそれぞれの個性と能力を活かし、最大限に活躍できるよう、最適なサポート体制を構築し、公平な機会を提供することで、従業員のエンゲージメント向上と、組織全体の活性化を目指しています。
<DE&I -多様な人材が個性と能力を発揮できる環境>
◆多様な人材が働きやすい環境の整備
男性の育児休業が取得しやすい環境整備の一環として、上司や子育て世代それぞれに向けた育児・介護休業法改正セミナーや育児と仕事の両立戦略セミナーなどを開催しました。その結果、2024年度の男性の育児休業及び育児目的休暇の取得率は、グループ全体で69.68%となっています。
また、従業員が自身のキャリアと向き合う施策として、キャリア相談窓口の設置に加え、45歳や55歳など対象者を絞ったキャリア研修を開催しています。
加えて、従業員一人ひとりが年齢に関わらず能力を最大限に発揮できるよう、2025年4月より雇用継続制度を改定しました。役割・成果に応じた処遇体系を構築し、従業員がこれまで培ってきたスキル・知見を活かして当社グループでの更なる活躍を促進することで、エンゲージメントの向上を図ります。
◆社内におけるDE&Iの推進
「誰もが自分らしく活躍し続けられる環境」を職場で実現できるよう、DE&Iの更なる推進に取り組んでいます。
具体的には、従業員と一緒にDE&Iについて考え、推進していく期間として「DE&I WEEK」を毎年開催しています。2025年は、外部の有識者を招き、DE&Iの要素の一つである「インクルージョン」について、その重要性と、組織内で実現するためのコミュニケーションについてお話しいただきました。その他にも、リーダー・上司向けのワークショップ、経営層からのDE&I推進に関するメッセージ発信、従業員同士のコミュニティサイト開設などを行い、「DE&I WEEK」を通じて、従業員がDE&Iを自分事として捉え、アクションを起こす機会を創出しました。
また、管理職を対象にダイバーシティをはじめ、Niterraウェイやコンプライアンスなどをテーマに、「耳にタコ(MT)」ができるまで繰り返し受講するMT研修もおこなっています。
これらの活動やDE&Iに関する様々な情報は、全社へ向けて、毎月「ダイバーシティフォーラム」を発行しており、定期的な周知・理解浸透に努めています。
さらに、従業員一人ひとりの人権を尊重し、多様性や個性を大切にする取り組みの一環として、2024年12月より、同性パートナーシップに関する制度を拡充しました。具体的には、同性パートナーシップを宣誓している従業員も、異性婚の従業員と同様に、慶弔金や結婚時特別休暇などの福利厚生制度を利用できるようになりました。今後も、すべての従業員が安心して働ける環境づくりを目指して、制度の拡充を進めてまいります。
<働き方改革 -働きやすさの醸成>
◆働き方改革
「2030 長期経営計画 日特BX」で掲げた働き方改革の目指す姿を実現するため、従業員一人ひとりが多様な働き方を選択できる環境の整備に継続的に取り組んでいます。従業員が、自身の状況や希望に合った働き方を多様な選択肢の中から選択することで、「価値を創造し続けられる、自律した人材」を育成し、従業員のパフォーマンス最大化とエンゲージメント向上を目指します。
具体的には、2023年度より、短時間勤務者のフレックスタイム勤務制度を導入しております。これにより、短時間勤務者も勤務時間を柔軟に選択し、仕事とプライベートの調和を図りながら効率的に働くことが可能になりました。
加えて2024年度には、遠隔地勤務制度を導入し、従業員が場所に制約されることなく柔軟に働くことを可能にするとともに、遠隔地に住む優秀な人材の確保や離職の防止を図っています。また、国外にある家族居住地からのリモートワークも導入し、従業員が最適な働き方を選択できる環境を整備しています。
このように、柔軟な働き方の拡充によって、従業員一人ひとりがライフステージに応じた働き方を選択し、自分らしいキャリアを実現することを後押ししていきます。
◆健康経営の取り組み
持続的な成長を実現するため、従業員の健康を重要な経営資源の一つとして捉え、従業員一人ひとりの健康増進を図り、「健康経営」を推進しています。2017年12月には当社グループの「健康経営宣言」を策定し、「生活習慣病対策」「メンタルヘルス対策」「受動喫煙対策」の3つの観点から各種施策を推進しています。
特に、従業員の健康管理の基礎となる健康診断の受診率向上に注力しており、100%を達成しています。また、婦人科検診やピロリ菌検査など任意検診の受診促進にも取り組んでいます。さらに、生活習慣病対策を目的とした「健康チャレンジキャンペーン」を展開し、目標達成者にカフェテリアポイントを進呈しています。
受動喫煙対策では、2023年4月より敷地内全面禁煙とし、それに伴い社内禁煙外来を開設しました。
これらの健康経営施策を、当社のみならずグループ会社にも順次展開し、グループ全体で従業員の健康増進に取り組んでいます。
<エンゲージメントの向上 -働きがいの醸成>
当社グループでは、従業員の多様性・個性を尊重し、自律した人材を育成するため、エンゲージメント向上を重要課題と認識し、改善活動に取り組んでいます。
従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みとして、組織課題を可視化し、組織改善に繋げるため、従業員意識調査を実施しています。調査結果については、役員へのフィードバックを行い、対話を通して取り組むべき課題を検討し、改善活動へと繋げています。
活動の具体例としては、人事部門が中心となり、若手社員や課長へのヒアリング、ワークショップなどを実施し、各組織の改善活動を支援しています。また、各部門での改善活動事例の共有会を実施し、好事例を水平展開することで、組織全体の改善を促進しています。
さらに、エンゲージメント向上の意義やサーベイの目的を上長から各部門の従業員へ共有するとともに、2022年度より従業員意識調査の結果を役員賞与算定に用いる指標の一つとして採用し、エンゲージメント向上に向けた取り組みを加速させています。これらの結果、現在の中期経営計画期間においては、従業員意識調査への回答率が96%台を維持しており、総合満足度も年々向上しています。
今後は、組織改善の取組に留まらず、各職場で一人ひとりのキャリア自律を支援することで、グループ全体のエンゲージメント向上に取り組んでまいります。具体的な目標値として、2025年以降は、エンゲージメントサーベイにおける動機付け要因項目の平均点を、2025年3月期時点の3.37から、2030年3月期に3.56へ向上させることを掲げています。
③リスク管理
当社グループは、持続的な成長を担う多様な人材の確保・育成を最重要課題と考えています。このため、専門性を持つ多様な外部人材の獲得を進めるとともに、グループ全体のコアポジションの人事については、経営会議での議論を経て戦略的に育成・配置しています。さらに今後は、グローバルを視野に取り組みを進め、人材の質と量の充足に努めてまいります。
④指標と目標
当社は、多様な人材の確保を重要な経営戦略の一つとして位置付けており、数値目標として2030年までに、取締役の女性・外国籍比率を30%以上、管理職の女性・外国籍・キャリア採用比率を25%と定めています。これらの指標は、性別や国籍のみにとらわれる意図で設定されたものではなく、多様な個性と特性を受け入れ、活かす組織づくりを目指したものです。当社グループは、この目標達成にコミットし、積極的に取り組んでまいります。
取締役の女性・外国籍比率については、経営の意思決定に大きな影響力を持つことから先行して推進し、2023年度末時点で目標を達成しており、2024年度末時点で取締役全体に占める女性比率は、36%(4/11名)です。
管理職の女性・外国籍・キャリア採用比率については、2024年度末時点で26.9%となり、目標値の25%を達成しました(*)。
管理職クラスの女性比率が低いことが、男女の賃金格差を生む主要因の一つであるため、新たに女性管理職比率についても、2030年までに10%とすることを目標に掲げ、各種人事施策を推進しています。
(*)管理職の女性・外国籍・キャリア採用比率は、2025年3月末日時点における、管理職全体に占める女性、外国籍、及びキャリア入社者の割合です。なお、管理職とは、職務の内容及び責任の程度が「課長級」以上に相当する者を指します。当社には、管理職級の専門職がいますが、上記には含めていません。
当社グループの経営成績は、今後起こり得る様々な要因に影響を受ける可能性があり、事業展開上のリスク要因と考えられる主な事項は以下のとおりですが、これらを認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。
なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 世界情勢・為替変動に関するリスク
当社グループは、売上の約80%が海外市場であり、海外生産の展開も合わせて国際的な事業運営を行っているため、経営成績は世界的な政治・経済情勢の変化の影響を大きく受けます。米中対立の激化、ロシア・ウクライナ情勢及び中東情勢の長期化等の地政学リスクの高まりに加え、中国等の諸外国の景気減速懸念、物流の混乱や燃料価格の高止まり、法令・規制の変更等、事業環境変化が当社グループ又はその顧客の需給に影響を与える可能性があります。米国における関税政策への対応に関しては、状況と市場動向を注視し、生産地の変更や価格転嫁等を含めた各事業への影響を軽減する対策を検討しています。また、当社グループでは、国際情勢や重要な法規制の改正等の動向をモニタリングし、当社グループへの影響を把握しています。
さらに、米ドル、ユーロ等主要通貨に対する日本円の変動は、当社グループの製品の価格面での競争力に影響を及ぼす他、連結海外子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。当社グループでは、短期的な為替変動に対して機動的な為替予約等によりリスクヘッジを図る一方、主要通貨の変動及び事業への影響についてはモニタリングを行い、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています。
(2) 事業環境に関するリスク
自動車関連事業の新車組付用製品の販売量は、自動車メーカーの生産計画による影響を受けます。また、補修用スパークプラグの販売に関しては、潜在的成長性を有する発展途上の国々における需要が期待できる反面、先進国では長寿命プラグの採用を指向する傾向にあり、販売量の拡大が継続しない可能性があります。また、世界各国のエネルギー政策や環境規制の進展は、自動車産業の電動化を加速させる可能性があり、内燃機関車の減少につながる変化が当社グループの想定を超えて進捗した場合には、経営成績に影響を与えることがあります。
セラミック事業における半導体部品や半導体製造装置用製品は、移動体通信機器や半導体製造装置をはじめとする情報通信産業・機械等設備産業の事業環境により影響を受けます。また、半導体市場の需要の変動、景気減速等は、セラミック事業の成長を抑制する可能性があります。
当社グループは、事業活動の進捗状況を執行役員・カンパニープレジデント会でモニタリングし、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています。
(3) 製品品質に関するリスク
当社グループは調達先を含めて各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造していますが、全ての製品について欠陥が無く、将来においてリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。特定の製品に直接的・間接的に起因する市場クレームが発生した場合、当該製品を回収し、顧客とともに当該製品に変更を施し、又は対策費用の支出による場合も含め、財政的な負担を負わなければならないだけでなく、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、品質保証体制の強化に常に取り組むとともに、品質問題の予防に向け、製品品質のみならず、すべての業務において品質の向上を意識した取り組みを進めてまいります。
(4) 技術開発に関するリスク
当社グループが提供する製品市場は、技術の急速な進展及びニーズの変化や新興勢力との差別化をその特徴とし、新技術及び新製品の開発においては、短期間での開発、安定した量産に対応する製法の構築のために、市場への導入に先立って設備投資を行うことが必要とされます。このような新製品は、開発資源の増大や競合他社による新技術の開発の結果、想定していた新規性やコスト面での優位性を有しなくなったり、既存の製品の市場性を低下させたりすることで、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、開発速度を上げるようオープンイノベーションを推進し、外部技術との連携を図る仕組みも整備しています。
(5) 知的財産に関するリスク
当社グループは、事業活動を進めていくに際して、第三者の知的財産権の侵害により係争となることやライセンス費用又は和解費用を負担することが生じると、経営成績に影響を与える可能性があります。それらのリスクを抑えるため、開発段階から量産段階における第三者の知的財産権調査と、各種契約の知財条項の適否確認に注力しています。合わせて、知的財産の社員教育も推進し、「ものづくり企業」として知的財産権の取得・管理を強化しています。一方で、当社製品の模倣品が新興国を中心に出回っています。こうした模倣品は購入された方の安全を脅かす可能性もありますので、世界各国の税関・行政機関等とも連携して摘発・排除活動を実施しています。
(6) 原材料・部品の調達に関するリスク
当社グループは、適時・適量の原材料・部品の確保を前提とした生産体制をとっていますが、主要原材料・重要な工程委託の中には代替品あるいは代替ルートの確保が困難なものが存在しており、仕入先における事故、廃業、あるいは海外調達品の場合は当事国間の規制変更や各国の輸出規制の強化等により、安定調達に支障をきたすリスクがあります。当社グループでは、複数購買を推進し、サプライヤーとの連携を密にしながら、リスク低減に努めています。
また、主要製品に使用する貴金属が世界的な需給逼迫により価格高騰が続く場合、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、原価低減や価格転嫁等の施策を行い、その影響を軽減する対策を都度検討しています。
(7) 自然災害に関するリスク
当社グループは、日本における生産拠点及び研究開発拠点を東海地方に集中して配置しており、大地震や風水害等の自然災害が東海地方に発生した場合は、操業停止やサプライチェーン寸断等が発生し、生産や出荷活動の低下を招き、当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自然災害を想定した設備対応と定期訓練を実施して緊急事態に備えるとともに、災害発生時には社長を本部長とする緊急対策本部を立上げ、初動対応と復旧対応を行う事業継続計画(BCP)を実行できる体制の整備を推進しています。
(8) 環境に関するリスク
当社グループは、環境リスクの中でも特に気候変動への対応に世界的な関心が高まる中、気候変動リスクへの対応を重要な経営課題であると認識しています。気候変動リスクには、自然災害の深刻化や慢性化等の物理的リスクのほか、炭素税導入や環境規制強化等の移行リスクがあり、いずれも当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、こうしたリスク認識を踏まえて、2030年を見据えた「エコビジョン2030」を策定しました。その中で「気候変動への対応」を重要課題とし、2050年に向けてカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、社内炭素税と社内環境ファンドの導入等によりCO2削減の取り組みを強化しています。
(9) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業の円滑かつ効率的な遂行のため、ITシステムを利用していますが、システムの高度化・複雑化によって利便性が向上する一方で、ITインフラのシステムダウン、不正アクセス、コンピュータウイルス感染等により、生産や販売等の基幹システムの不具合、故障・停止が発生した場合、または経営及び事業に関する重要情報及び個人データ等の機密情報が漏えいした場合には、経済被害だけでなく、企業価値の失墜につながり、企業経営に大きな損害を与える可能性があります。
当社グループでは、こうしたリスクに対し、ITシステムのセキュリティ水準を向上させるとともに、コンピュータセキュリティに関する事故対応チーム(CSIRT)や全社横断的なITセキュリティ委員会を運営し、事故発生時の早期収拾、未然防止に向けた活動を推進しています。また、機密管理を含めた情報セキュリティの社員教育も推進しています。
(10) 人材確保に関するリスク
当社グループは、持続的な成長を担う人材の確保・育成に努めていますが、各分野で必要とする専門性を持つ人材や組織を先導する人材を適切に配置できない場合や人材の獲得競争の激化や従業員の退職等によって十分な人材の確保ができなかった場合は事業活動が停滞し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、キャリア採用により専門性を持つ人材の確保を進めるとともに、スキルマップを活用した従業員の保有スキルの可視化や社内公募による社内人材の流動性確保、またリーダー育成・配置にあたっては、経営層をメンバーとする経営会議で育成プログラムやコアポジションの人材配置を計画的に進めています。
(11) コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、事業を遂行する上で各種の法令・規制等の適用を受けていますが、これらが変更された場合や見解の相違があった場合、また予見できない新たな法令・規制等が設けられた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社グループは継続的なコンプライアンスの実践に努めていますが、独占禁止法違反、その他に関する諸外国を含めた法令・規制違反の可能性に関連して、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続の当事者となる可能性があります。
当社グループでは、役員、従業員に対して教育プログラムを設定し、コンプライアンス意識の醸成に努めるとともに、コンプライアンス違反行為またはそのおそれのある行為の通報や相談の窓口として社内外に内部通報窓口を設置し、早期対応、未然防止に向けた活動を推進しています。
また、当社グループは、税務コンプライアンスを遵守するため、各国・地域の税務に関する法令・規則に従い、適時かつ適切な税務申告と納税を行っています。
(12) 事業投資に関するリスク
当社グループは、事業戦略の一環として、既存事業の拡大や新たな事業への進出等を目的として他社との事業提携・資本提携及び企業買収等を行うことがあります。これらの意思決定に際しては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な調査及び検討を行っていますが、期待した収益や成果を充分に得られず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、重要な投資に対してはモニタリングを行い、必要に応じて投資計画改善の対策を検討しています。
(13) 感染症に関するリスク
感染症の大流行により、世界的な移動制限や地域によっては防疫強化のための経済活動抑制が行われ、主要な顧客において生産調整を余儀なくされる場合は、当社グループもその影響を受ける可能性があります。また、サプライヤーが所在する国・地域において、感染症が大流行することにより、当社グループへの原材料・部品の供給に影響を受ける可能性があります。
当社グループは、顧客・サプライヤーとの連携を密にして製品の安定供給及び原材料・部品の安定調達を行ってまいります。さらに、社内感染予防策及び感染症に対する事業継続計画(BCP)を策定し、感染症の発生段階に応じた対応体制、事業継続方針等を定め、感染症の発生に備えています。
(14) 人権侵害に関するリスク
当社グループ又はサプライチェーン上の人権侵害又はその兆候・課題に対して、適切な対応が取られていない場合、顧客との取引停止や行政罰等のペナルティ、またブランドに対する社会的信頼の喪失につながる可能性があります。
当社グループは、強制労働・児童労働、差別・ハラスメント等、あらゆる形態の非人道的・搾取的労働慣行や行為を当社の事業及びサプライチェーンから排除するため、人権方針を従業員に周知し、人権尊重の取り組みを推進しています。また、当社グループ及び取引先に対する人権デュー・ディリジェンスの実施、役員・従業員に対する人権教育、取引先への人権啓発などの取り組みを進めています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国及び欧州では、年度前半においては、サービス業を中心に景気を押し上げ緩やかな回復基調を見せたものの、年度後半においては生産コストの増加や外需の低迷が企業収益回復への重石となりました。また、米国政府の関税政策により、景気の先行きに不透明感が増しています。
中国においては、年度前半より内外需要ならびに不動産市場の低迷が続き景気は停滞しています。年度後半においても、外需低迷などを背景に景況感は依然として低迷していることに加え、米国の関税引き上げの影響が大きなリスク要因となっています。
わが国経済においては、年度前半ではインバウンド需要の拡大を背景に、企業収益は高水準で推移しました。年度後半においては、半導体需要の回復に加え、為替相場の円安圏での推移が下支えとなり、企業収益は好調に推移しています。
当社グループの主要な事業基盤である自動車業界における新車生産は、一部地域において持ち直しの動きを見せたものの、前年比で減少する結果となりました。中国においては、電気自動車の伸長による増加は見られましたが、内燃機関搭載車の生産は引き続き軟調です。
半導体製造装置業界では、生成AIを中心とする半導体需要が高まりを見せる一方で、依然として米中対立を起点とする地政学的リスクなどが懸念されています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は6,529億93百万円(前連結会計年度比6.3%増)、営業利益は1,296億60百万円(前連結会計年度比20.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は926億25百万円(前連結会計年度比12.1%増)となりました。
売上収益営業利益率(営業利益/売上収益)は前連結会計年度17.5%に対して2.3ポイント上昇し19.9%となりました。親会社所有者帰属持分利益率(親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分)は前連結会計年度末の13.8%から14.1%と0.4ポイント上昇し、基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の409円47銭から466円34銭と56円88銭増加しました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
当連結会計年度より報告セグメントの管理区分を変更しており、前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
<自動車関連>
当事業は、新車組付け用製品の販売は中国市場での内燃機関搭載車両の生産台数減少に加え、欧米においても顧客での生産調整が続いたことによる落ち込みを見せたものの、補修用製品の販売は引き続き好調であったことから前年比で増加しました。また、インフレに対応した価格転嫁の実施と円安への進行がさらに売上収益を押し上げ、営業利益についても増益となりました。
この結果、当事業の売上収益は5,388億94百万円(前連結会計年度比6.6%増)、営業利益は1,408億56百万円(前連結会計年度比16.2%増)となりました。
<セラミック>
当事業は、SPE事業での販売については生成AI関連の需要増を背景に緩やかに回復しました。セラミック事業全体では、収益性の改善に時間を要していますが、前年比で売上収益は増加する結果となりました。
この結果、当事業の売上収益は1,009億28百万円(前連結会計年度比6.2%増)、営業利益は39百万円(前連結会計年度比94.2%減)となりました。
<新規事業>
新規事業については、売上収益は60億52百万円(前連結会計年度比9.2%減)、営業損失は129億87百万円(前連結会計年度は145億17百万円の営業損失)となりました。
<その他>
その他の事業については、売上収益は79億4百万円(前連結会計年度比3.3%減)、固定資産の売却等により営業利益は17億51百万円(前連結会計年度比851.3%増)となりました。
② 財政状態
資産合計は、9,909億66百万円であり、前連結会計年度末比152億46百万円(1.6%)増加しました。これは、主にのれん及び無形資産並びに棚卸資産、有形固定資産が減少した一方、現金及び現金同等物並びに営業債権及びその他の債権が増加したことによるものです。
負債合計は、3,162億43百万円であり、前連結会計年度末比211億75百万円(6.3%)減少しました。これは、主に社債及び借入金が減少したことによるものです。
資本合計は、6,747億22百万円であり、前連結会計年度末比364億22百万円(5.7%)増加しました。これは、主に当期利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものです。
これらにより1株当たり親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末の3,181円33銭から3,399円43銭となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して為替相場の変動による換算差額2億23百万円を加算し、売却目的で保有する資産への振替に伴う現金及び現金同等物の増減額3億95百万円を控除した純額で275億7百万円増加し、2,081億92百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から147億42百万円増加の1,329億21百万円となりました。これは、主に棚卸資産の増減により収入が減少した一方、税引前利益が増加したことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローにより支出した資金は、前連結会計年度から579億10百万円減少の342億46百万円となりました。これは、主に投資有価証券の取得による支出の減少並びに定期預金の純減による収入が増加したことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローにより支出した資金は、前連結会計年度から135億45百万円増加の709億95百万円となりました。これは、主に長期借入れによる収入が増加した一方、短期借入金の純減による支出並びに社債の償還による支出が増加したことによるものです。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は売価換算により計算されています。
2 生産高には委託生産高を含んでいます。
自動車関連の製品のうち、新車組付用は自動車メーカーの生産計画を基準とし、また、補修用は自動車の稼動台数、その他市場の動向、過去の販売実績、代理店の意向等を勘案してそれぞれほぼ確実な見込み生産を行っています。セラミックの製品の大部分及び新規事業の製品は注文生産品であり、その受注状況は次のとおりです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は外部顧客への売上収益を示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第312条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。
この連結財務諸表の作成に当たり、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。当社グループは、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。当社グループが採用した重要な会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (7) 見積り及び判断の利用」に記載しています。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析、検討内容
経営成績等の状況に関する分析、検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは円滑な事業運営を支えるための運転資金の確保、及び持続的な成長の実現を目的とした他社との連携やM&A、設備投資等、将来の機動的な投資活動を可能にするための中長期的資金への計画的準備を図ることにより、安定的経営と変化への対応に備えることを財務方針としています。そのため、資金計画に基づく当座資金の維持管理をはじめ、債権債務・棚卸資産の効率性を上げるための継続的取り組みを行うとともに、投資リスク軽減のための決裁規程等の整備、経営会議等の各種組織運営に注力しています。
資金調達の方法としては、内部留保資金の他、短期資金需要に対しては銀行借入、コマーシャルペーパー発行等による調達を行っています。また中長期的資金需要に対しては銀行借入やシンジケート・ローン等を通じた間接金融及び社債発行等の直接金融による調達に加え、必要に応じてエクイティファイナンスも検討します。
当社グループにおける研究開発活動は、企業理念に立脚し、最善の技術と蓄積した経験を活かした新たな価値の創造に向けて行われています。その活動の主体は、本社機構である科学研究所及び各事業の技術部門で行っており、国内外の学会・協会への積極的な参画、大学・公的研究機関との共同研究等により最新技術を入手・導入することでレベルアップを図っています。
なお、当連結会計年度における研究開発に係る費用は総額
<自動車関連>
自動車エンジンの開発は、環境への配慮とそれに伴う低燃費・低エミッションの規制に対応すべく加速的に進化しており、自動車メーカー各社は、エンジンの小排気量化・直噴化・過給化・希薄燃焼化・バイオエタノールやe-fuel等の多種燃料対応化等燃費向上に向けた技術開発を積極的に進めています。当社はそれに応えるべく、スパークプラグの分野では耐熱性・耐電圧性・着火性を高めるとともに、より一層の小径・長尺化を推し進め、材料開発から製品設計、製造方法まで一貫して開発を行っています。当連結会計年度においては、エンジンの燃焼速度を高速化し燃費向上に貢献することを目的としたプレチャンバープラグについて、様々な運転条件での有効性検証を進めています。また、カーボンニュートラル社会に貢献するために、内燃機関から排出される温室効果ガスを実質ゼロにする水素エンジンやe-fuel用のスパークプラグの開発を進めています。また、製造工程でのCO2排出削減に向け、排熱利用や加熱方法の変更など、効率的にエネルギーを利用する工程開発を進めています。
センサの分野では、環境保全の見地から益々厳しくなる排気ガス規制に対応すべく、検知精度の向上、及び、高温、熱衝撃、振動、被水等の環境耐久性を向上するとともに、環境に配慮した省資源タイプのセンサ開発を行っています。当連結会計年度においては、今後の環境規制の厳格化を見据え、4輪向け酸素センサとNOxセンサの最新製品の開発を進めています。また、新規センサの分野では、自動車業界で培ったコア技術を応用し、非自動車への事業領域の拡大を進めています。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、
<セラミック>
産業用セラミックの分野では、超音波振動子等の開発・製品化を行っています。当連結会計年度においては、環境に配慮した無鉛圧電セラミック製品の超音波振動子やアクチュエーターの開発と製品化を進めており、一部量産対応中です。
半導体分野では、半導体製造装置用部品の開発・製品化を行っています。当連結会計年度においては、半導体製造装置用部品の要求仕様の高度化に対し、製品の性能向上や新規製品の開発に取り組みました。また、半導体パッケージの分野では、産業用デバイス向けや通信関連、LED,LD用セラミックパッケージ、半導体検査装置に使用される大型プローブカード用基板等、幅広い製品の開発を行っています。当連結会計年度においては、セラミックの特徴を生かした放熱性、高剛性に加え、低抵抗化など要求仕様にあった材料及び製品開発、量産化を進めています。
医療分野では、酸素濃縮装置や心肺機能診断装置を製造し複数のプロバイダーや病院に販売しています。当連結会計年度においては、CAIRE社では、小型化や軽量化と言った次世代の携帯型の酸素濃縮装置やテレメトリーによるサポートの拡充などユーザー視点でのニーズに合わせた酸素濃縮装置の開発を進めています。MGC社では、より医療従事者のニーズに寄り添った次世代の心肺機能診断装置やソフトウエアの開発を進めています。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、
<新規事業>
新規事業関連では、エネルギークリーン化への対応として期待の大きなテーマである燃料電池、水素製造、及びCO2回収関連の開発に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、森村グループ各社による合弁会社「森村SOFCテクノロジー株式会社」にて、従来他社より小型・軽量・高効率のスタックを展開し、高効率分散電源への適用や脱炭素社会に向けた新規用途への採用に向け活動を進めています。また、業務・産業用のSOFCセルスタックの今後の量産拡大や家庭用の採用を視野にいれ、生産体制の整備ならびに最適化を進めています。円筒形セルスタックは三菱重工業株式会社との合弁会社「CECYLLS株式会社」にて製造を行っております。2025年より、SOFCセルスタックの製造から固体酸化物形電解セル(SOEC)セルスタックへの製造に切り替え、水素製造で脱炭素社会に貢献していきます。また、多用途にわたる水素製造技術とその事業化を目指して、平板形固体酸化物形電解セル(SOEC)の事業化も推進しています。こうした持続可能な社会への価値提供については、水素のみならず、セラミックスのガス吸着機能を応用したCO2回収装置と、回収したCO2の利活用事業についても社会実証を進めており、事業化に向けた技術開発、実証試験を推進しております。また、バナメイエビ陸上養殖システム事業開発を加速させるべく「株式会社Niterra AQUA」を設立しました。閉鎖循環型陸上養殖での生産性向上に欠かせない水質管理を、センサ技術を応用し実現したものであり、Niterraが目指す持続可能な社会の実現に貢献します。さらに、EVパワートレインの高い動力性能・効率と熱ロスの課題を両立するアイテムとして、窒化珪素セラミック基板、次世代ベアリングボール、液体リチウムイオン電池向けの電極添加材として高いリチウムイオン伝導性を有する酸化物系固体電解質材料 LLZO(ランタンジルコン酸リチウム)の開発を進めています。その他にも環境・エネルギー・モビリティ・メディカル分野を中心に様々な新規事業の開発に国内外で取り組んでいます。
なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、