第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループが掲げる「NGKグループ理念」と「NGKグループビジョン Road to 2050」は以下の通りです。

 

<NGKグループ理念> https://www.ngk.co.jp/info/philosophy/

私たちの使命

「社会に新しい価値を そして、幸せを」

 

私たちが目指すもの

「人材 挑戦し高めあう」

「製品 期待を超えていく」

「経営 信頼こそが全ての礎」

 

<NGKグループビジョン Road to 2050> https://www.ngk.co.jp/info/vision/

 2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への爆発的進化という大きな流れを新たな発展機会と捉え、①ESG経営の推進、②収益力向上、③研究開発への注力、④商品開花への注力、⑤DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の5つの変革に取り組み“Surprising Ceramics.”をスローガンに当社独自のセラミック技術を活かし、「第三の創業」に向けて事業構成の転換を図ってまいります。

 

(2)主要な経営指標と資本政策

 当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。既存事業の収益力の向上とともに、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げ、研究開発とマーケティングに注力することにより売上高成長率の維持・向上を実現し、利益成長を目指します。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との透明で適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めると共に、これを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスを回してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。

 更に、当社の企業価値向上に資する管理指標として、営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を使用しております。環境負荷の低減や人権尊重への取組みなど多岐にわたる社会的責任を果たすとともに、将来の競争力の源泉である人的資本や研究開発への投資を積極的に行いつつ、着実に利益成長を実現できるよう付加価値の拡大に努めてまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

 当社グループを取り巻く環境は、各国の保護主義がグローバル経済の緊張を高めているほか、ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争に関する和平交渉も一進一退の展開が継続しており、先行きの見通しが困難な状況が続いております。一方、中長期の視点では、CO2排出量取引制度が策定されるなど脱炭素に対する社会的な要請が徐々に高まっており、カーボンニュートラルに向けた方向性に変化はありません。また、AI(人工知能)やビッグデータの活用など、情報技術の高度化に対しては、官民ともに大規模なインプットを継続しており加速度的にデジタル社会の発展が進んでおります。

 当社グループは社会に新しい価値を提供する企業となることを目指し、NGKグループビジョンにおいて「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、その実現に向けて「5つの変革」を推進しております。2025年1月には事業構成の転換を加速させるべく、当社商号から祖業の「ガイシ(INSULATORS)」の記載を外し、和文と英文の表記を「NGK」に統一することを、2025年6月26日に開催予定の第159期定時株主総会で定款の一部変更が承認されることを条件に取締役会で決議いたしました。当社グループの基幹事業である自動車関連製品についても電動化の進展により中長期的には縮小していくことが見込まれますが、2050年の未来社会に向けて、カーボンニュートラルやデジタルソサエティ関連の製品を拡大させ、事業構成の転換を着実に進めるべく、「ESG経営の推進」と「既存事業の収益力向上と新規事業の創出」を図ってまいります。

 

 当社グループの重点課題に対する取組みは以下の通りです。

 

① ESG経営の推進

 当社グループは、持続的な成長と将来のありたい姿への変容を推進すべく、ESGを経営の中心に位置づけております。NGKグループ理念「社会に新しい価値を そして、幸せを」に基づき、独自のセラミック技術で新しい価値を提供することで持続可能な社会の実現に貢献し、社会の皆さまからの期待に応え、信頼を得たいと考えています。これをNGKグループのサステナビリティに係わる基本的な考え方とし、NGKグループ理念の実現に向けて、ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置きつつ、カーボンニュートラルとデジタル社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指します。

 また、当社グループは海外18カ国で35のグループ会社(うち製造会社18社)がビジネスを展開しており、これらの目標達成と経営の透明性・自律性を高めるべく、グループで働く全員が公正な価値観や国際的な水準の判断基準に従って行動できるよう環境整備を進めております。その一環として、国の内外において、関係法令、国際ルール及びその精神を遵守しつつ、高い倫理観をもって社会的責任を果たすべく、会社の姿勢を示す「NGKグループ企業行動指針」と役員や従業員が従うべき道筋を示した「NGKグループ行動規範」を制定しグループ全体への周知を実施しております。

 社長を委員長とするサステナビリティ統括委員会のもと、全てのステークホルダーに信頼されることを目指してESG要素を始めとする当社グループのサステナビリティ課題に取組み、これを取締役会が適切に監督してまいります。

 

〔環境(E)〕

 当社グループは、2050年までにCO2排出量ネットゼロとする目標を掲げ、カーボンニュートラル、循環型社会、自然との共生への寄与を骨子とした「NGKグループ環境ビジョン」を策定し、具体的な行動計画として「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」と「第5期環境行動5カ年計画」を定め、その実現を目指しております。5カ年計画の最終年度となる2025年度には目標値であるScope1及びScope2におけるCO2排出量55万トン(2013年度比25%削減)を達成できる見通しであります。マイルストーン(中間目標)とする2030年度の同37万トンの排出量(同50%削減)についても、海外拠点を中心とした使用電力の再生可能エネルギー由来への切り替え、国内外の製造拠点への太陽光発電設備の導入などにより達成を目指します。さらに、目標達成を前倒しで実現すべく、水素やアンモニアなどカーボンニュートラル燃料によるセラミック焼成技術や、ガス分離膜や大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)の開発、CO2を再利用するメタネーションの実証試験を進めており、当社グループ内での適用を図るなどカーボンニュートラル関連製品・サービスの開発に取り組んでおります。カーボンニュートラル関連での開発資金については、2024年11月に4年連続となるグリーンボンド(無担保社債)を発行しました。また、バリューチェーンを通じた温室効果ガスの排出削減の取組みも開始しております。2050年までにScope3におけるCO2排出量を90%以上削減(2022年度比)することを目標とし、これを達成するためのステップとして2030年までに25%削減をする計画について認証機関SBT(Science Based Targets)イニシアチブの認証を受けました。

 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に関する情報を当社ウェブサイト等に開示しているとともに、自然との共生への対応については自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のアーリーアダプター(早期採用者)として賛同を表明し、関連情報の開示拡充を進めております。2025年2月には、新たに国際的な非営利団体のCDPより「CDP水セキュリティ」の最高評価であるAリスト企業にも選定されました。

 

〔社会(S)〕

 当社グループは、自社及びサプライチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「NGKグループ人権方針」を定めたほか、英国現代奴隷法に関する声明を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しております。

 当社グループは、NGKグループ理念の中で、「挑戦し高めあう人材」を私たちが目指すものの1つと位置づけ、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命の実現と、NGKグループビジョンの実現に向けた「5つの変革」に取り組んでおります。これらを成し遂げるためには、人材一人ひとりの活躍が不可欠です。「NGKグループ人的資本経営方針」、「人材育成方針」ならびに「社内環境整備方針」に基づき、採用や育成を通じて5つの変革に取り組む人材の充実を図ること、その人材が持てる力を十分に発揮できる環境を整えることを推進しております。2025年4月には管理職の人事制度を改定し、年齢や在籍年数にとらわれず職務内容に応じた処遇とするなど、多様な人材の活躍と自律的な行動を促進してまいります。また、テレワーク活用といった柔軟な働き方、長時間労働の削減を中心とする社内環境整備などの施策にも引き続き取り組んでまいります。

 女性活躍については、新卒採用に占める女性比率の数値目標を設定すると共に、配属先・異動先での職域拡大を図っています。また、育休・産休取得者のキャリア早期再開を促すための早期復職支援制度の導入、育休からの復職者研修の実施、男性育休制度の拡充などの制度面からのアプローチに加えて、仕事と家庭の両立への理解を深めることを目的とした社内講演会を開催するなど、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでおります。

 海外人材については、当社グループは従業員約20,000人のうち、約6割が海外に所在しています。グループ運営において、それぞれの地域の事情、文化、習慣に基づく素早く適切な意思決定を行うためには現地人材の活躍が不可欠と考えており、海外拠点の幹部層も現地化するなど、現地人材の積極的な登用に努めております。

 当社は、内閣府、中小企業庁が推進する「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。当社グループのサプライチェーンにおいては、サプライチェーンを構成する調達パートナーと公正・公平な取引を行い、共に繁栄を図るため、「門戸開放」「共存共栄」「社会的協調」を調達の基本軸に掲げ、地球環境の保全、人権尊重、労働環境などに配慮した「NGKグループ調達方針」を定めております。またサプライチェーン全体で持続可能な調達を実現すべく「NGKグループサプライヤー行動規範」を策定し、取引先企業への訪問や実態調査アンケート等を通して、サステナブル調達へのリスク・CSR詳細評価を行っております。

 

〔ガバナンス(G)〕

 コーポレートガバナンスについては、取締役会の更なる機能発揮の観点から、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資する独立社外取締役を選任し、その数を全取締役の3分の1以上としております。また、経営の透明性を確保し取締役会の監督・監視機能を強化するため、独立社外取締役を過半数として構成する指名・報酬諮問委員会で役員の人事及び報酬決定等に係る公正性の確保及び透明性の向上を図ると共に、社外役員を主要な構成員とし役員等が関与する不正及び法令違反等への対応を取り扱う経営倫理委員会を設置し、取締役会への答申又は報告、勧告等を行うこととしております。役員等が関与する不正・法令違反に歯止めをかける仕組みとして、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度とは別に、社外弁護士を通じて経営倫理委員会に直接報告するホットライン制度を設置し、経営陣から独立した通報体制を設けるなど、コンプライアンス体制の充実を図っております。

 また、当社グループで働く全ての人が倫理観を持って正しい事業活動を行うための道しるべとして「NGKグループ企業行動指針」及び「NGKグループ行動規範」の周知徹底に取り組んでおります。さらに様々な領域で取り組むコンプライアンス活動を国際的な水準に照らして評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。

 当社は、競争法及び海外腐敗行為防止法をはじめとする国内外の法令遵守のために、経営トップによる継続的なメッセージ発信、国内外グループ会社の役員・従業員向けのコンプライアンス教育、国際的基準に則った競争法遵守プログラムの運用、及び「競争法遵守ハンドブック」の活用促進を行っております。2024年4月には「NGKグループ腐敗防止方針」を新たに策定し、全ての事業活動において腐敗防止への取り組みを一層強化しました。

 品質コンプライアンスについては、品質委員会での経営トップによる直接指導などの仕組みを備えると共に、経営層と従業員との対話の促進や教育の徹底、現場にムリ、ムダを生じさせない仕組みへの見直しなどにより、組織風土と業務の改善に取り組んでおります。また、従業員等の労働安全衛生面では、リスクアセスメントの推進による重大災害のリスク特定と未然防止対策の強化に加え、グループ全体の現場マネジメント力の強化を図り、業務災害の低減に取り組んでまいります。

 リスクマネジメントについては、経営レベルの視点から重要と考えるリスクを外部環境、戦略、オペレーションに分類し継続的に見直しを行っております。当社グループのサステナビリティ課題を含む個別のリスク事項については、各種の委員会を設置してリスク管理を行っておりますが、国内外の環境変化が加速する中、部門を横断し全社視点で取締役会につながる統合的なリスク管理の仕組みを構築するため、2023年度より社長直轄の統括委員会として「リスク統括委員会」を設置し、重点フォローリスクについて取締役会の決議を経て対応策を検討しております。

 

② 既存事業の収益力向上と新規事業の創出

 当社グループは、全社の視点から企業価値を高めるために事業ポートフォリオ方針を定め、NGK版ROICを用いた収益性と、売上高成長率を用いた成長性の二軸で精査しております。コア事業や今後の成長が期待される事業群への経営資源の投入を検討するほか、低成長・低収益に区分される事業については、今後の事業継続の判断において単年度及び中期的な経営計画に基づく計数面での評価に加えて、長期的な視点での成長可能性、収益性等を個別に社内の戦略会議等で議論し、経営に関する重要な事項として取締役会が監督いたします。また、設備投資の意思決定にあたっては、個別の投資の回収期間のほか、NGK版ROICやインターナルカーボンプライシング(ICP)を用いたESG視点での価値評価も考慮し判断してまいります。さらに持続的な利益成長と将来の企業価値の源泉となる人的資本や知的資本への投資を両立させ、同時に環境負荷の低減や人権尊重への取組みなどサステナビリティに関する取組みも総合的に評価するため、管理指標として営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を導入しております。短期の収益性や中長期の成長性、超長期の社会性をバランス良く高めていくことにより財務価値と財務諸表に表れない非財務価値の両面から企業価値向上につなげてまいります。

 各事業の収益性改善に向けて、世界的なインフレに伴う費用増を適切に価格に転嫁していくほか、収益力をさらに高めるべく「モノづくり∞(チェーン)革新」を進めております。モノづくりチェーンにおける理想と現状のギャップを埋める「生産革新活動」、工場単位のロス削減により製造原価を改善する「原価低減活動」を柱とし、デジタル技術の活用によりモノづくりシステムの高度化とグローバル連携を進め、原燃料費などの高騰や需要変動に対して、更なる原価低減とリードタイムの短縮、在庫の削減に取り組むことで、収益力強化につなげてまいります。

 DX推進については、NGKグループデジタルビジョンのもと、グループ全体で加速させてまいります。モノづくり領域に加え、開発とマーケティング領域では、新規材料の開発リードタイムを短縮するマテリアルズ・インフォマティクスや特許戦略へのIPランドスケープの活用、当社の要素技術(シーズ)と社会課題(ニーズ)を高精度に掛け合わせる独自AIによる新規用途探索の加速等による価値の創造を進めるとともに、本社や間接部門を含めた全社では、社内情報を学習した自社専用の対話型AIを構築しクラウド環境で運用する生成AIと併用することで業務効率化を後押しし、固定費の削減やデータに基づく業務履行と意思決定へと変革を推進します。

 事業構成の転換には新規事業の創出が不可欠であり、その重要指標として、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を掲げております。マーケティング機能を主体としたNV推進本部、セラミック材料技術や要素技術など当社独自の差異化技術を有する研究開発本部、生産技術・エンジニアリングなどの製造技術本部の3本部が各事業本部との連携を強め「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めてまいります。研究開発に関しては、「NGKグループビジョン」において2021年から10年間で3,000億円、うち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分し、社会課題の解決に資する将来の有望なテーマに対して重点的に経営資源を投じることとしており、2025年度は過去最高を上回る360億円を投入する計画をしております。また、開発スピードを上げつつこれまで以上の差異化技術を作るべく、早い段階から製造技術本部を巻き込んだコンカレント開発に取り組むほか、当社事業や技術とのシナジーが期待される企業のM&A、ベンチャーキャピタルやスタートアップ企業への出資など外部とのアライアンスを活用した新製品・新規事業の創出も積極的に推進し、事業構成の転換を図ってまいります。2025年2月には、ドイツDeutsche KNM GmbH社の株式取得について合意をいたしました。同社傘下のBorsig GmbHグループが持つエンジニアリングや膜装置に関する知見と当社のセラミック技術を融合し競争力を強化してまいります。

 

 セグメント別の重点課題は以下の通りです。

 

〔エンバイロメント事業〕

 米国の関税措置により自動車販売へのマイナス影響が予想されますが、各国の排ガス規制強化等を背景とする当社製品の需要増を取り込み、生産性の改善やグローバル生産体制の最適化により利益の最大化を目指します。電気自動車の伸び率は低下しておりますが、将来的には内燃機関ビジネスは漸減する予測のもと、短期的には欧州をはじめとする更なる規制強化に対応すべく、新製品のガソリンセンサーの量産準備を整えることに加え、CO2センサー等の開発を進め既存の市場の枠組みを越えた潜在的な需要獲得も目指します。中長期の需要縮小局面を見据えて価格の見直しを継続し適正な収益水準の維持、向上を進めてまいります。一方、世界的に拡大が期待されるカーボンニュートラル関連市場に対しては、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)や、CO2、窒素、水素など分子レベルで分離するサブナノセラミック膜など、社会の環境ニーズに貢献できる製品や設備の早期事業化に向けた取組みに注力いたします。広義に環境関連を包含する事業として、高付加価値品の投入、技術イノベーションで貢献してまいります。

 

〔デジタルソサエティ事業〕

 NGKグループビジョンで掲げたデジタル社会関連の事業領域に関しては、世界経済は減速感が見られるものの、AIやビッグデータの活用については着実に拡大が進んでおります。市況の減速により採算が悪化しているセラミックパッケージや絶縁放熱回路基板については、事業戦略の見直しを進め競争力と収益性を高めてまいります。一方、中長期ではIoTの進展や通信の高度化などにより、半導体関連や電子部品関連の継続的な高機能化及び市場拡大が期待されています。半導体製造装置用製品や電子部品関連については、次世代製品の開発や顧客開拓を進めるほか、中長期を見据えた設備投資を進め、拡大する需要に対応してまいります。通信分野の更なる発展に対応した次世代複合ウエハーや半導体の高機能化に貢献するハイセラムキャリアなどの新製品を軌道に乗せ、デジタル社会に貢献する製品群の拡大を目指します。

 

〔エネルギー&インダストリー事業〕

 脱炭素の流れが継続する中、中長期的に蓄電池の果たす役割が増していくことが想定されます。一方、足下では欧州における景気停滞もありクリーンエネルギーへの転換の流れが鈍化し、需要の拡大を見込んでいたエナジーストレージ事業のNAS®電池は、当面厳しい事業環境に置かれる見通しです。工場の生産工程を一部停止する対応をとっており赤字が継続する見通しですが、NAS®電池の大容量、長寿命、長時間充放電等の特性を生かした市場は将来的に需要が拡大すると予測しており、協業するBASF社との体制強化を進め収益化を図り、社会課題の解決に寄与してまいります。また、NAS®電池を活用し、エネルギーリソースをIoT技術で統合制御し電力の需給バランスを調整するVPPサービスを開始するなど、従来の「モノ売り」に加え、サービスや価値を提供する「コト売り」を新事業領域として注力してまいります。がいしは、足下ではデータセンターの増設等により国内外の電力関連設備投資が安定的に実施されており、縮小した事業体制の中で最大限のリターンを得るべく効率的に運営してまいります。

 

 当社グループは、こうした取組みを通じて経営基盤の更なる強化に努め、資本効率重視、株主重視の経営を継続すると共に、持続的な成長と企業価値の向上を通して将来のありたい姿の実現を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する基本方針は以下の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、別途記載がある場合を除き当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(基本的な考え方)

 日本ガイシ株式会社(NGK)及びそのグループ会社は、NGKグループ理念「社会に新しい価値を そして、幸せを」に基づき、独自のセラミック技術で新しい価値を提供することで持続可能な社会の実現に貢献し、社会の皆さまからの期待に応え、信頼を得たいと考えています。これをNGKグループのサステナビリティに係わる基本的な考え方とし、NGKグループ理念の実現に向けて、ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGs(持続可能な開発目標・Sustainable Development Goals)を念頭に置きつつ、カーボンニュートラルとデジタル社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指します。

 

(重要な課題(マテリアリティ)の特定と取組みの推進)

 NGKグループ理念の実現、また社会とNGKグループの持続的な発展のために、NGKグループ及びステークホルダーの双方にとって重要な課題をマテリアリティとして特定し、行動の道しるべとなるNGKグループ企業行動指針に従って取り組みます。

 

(取締役会の責任)

 取締役会は、ESG要素を始めとするNGKグループのサステナビリティ課題を正しく認識し、サステナビリティ課題への取組みを適切に監督し対応を進めることで中長期的な企業価値の向上に結びつけることを目指します。また取締役会は、適切に情報を開示し、様々なステークホルダーとの対話を重視してその意見をもとに、経営の改善に努め、社会からの信頼と期待に応えます。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

 当社グループのESG要素を含むサステナビリティ課題に関するリスクと機会はESG統括委員会(注)において集約、確認しています。ESG統括委員会の活動内容は年1回以上取締役会に報告されるとともに、必要な事項は経営会議及び取締役会で審議または報告された上で施策として執行されます。またリスク統括委員会においては、リスクマネジメントに係る方針策定、体制構築、執行状況のモニタリング等を行うとともに、個別のリスク事項については各種の委員会等においてリスク管理を行うものとしており、ESG統括委員会及びリスク統括委員会の委員長は取締役社長が務め、本社部門、事業部門などを担当する執行役員及び部門長をその構成員としています。

 リスクマネジメントに関わる体制については、「第2 事業の状況 3〔事業等のリスク〕」及び「NGKグループサステナビリティウェブサイトデータ2024」のP204、リスクマネジメントのページをご覧ください。

https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2024/ngk2024data.pdf

 

(注)「ESG統括委員会」は2025年4月1日より「サステナビリティ統括委員会」に名称を変更しております

(以下同様)。

 

 

サステナビリティ推進体制

 

0102010_001.png

 

② リスク管理

 当社グループのサステナビリティ課題に関するリスクと機会については、経営会議及び取締役会で重要な項目をマテリアリティとして特定した上で対応しています。

 マテリアリティの特定に際しては、マテリアリティ候補となる環境・社会に関する各種の課題について、事業への影響度及びステークホルダーの要請・期待の2軸で評価してマテリアリティ・マップの作成を行いました。これを基にESG統括委員会においてマテリアリティ候補を抽出し、それらに対するリスクと機会、主な取組みの検討を行った上で、経営会議及び取締役会においてマテリアリティ項目として決定しました。

 

0102010_002.png

 

 このマテリアリティ項目のうち、事業への影響度(財務マテリアリティ)及びステークホルダーの要請・期待(インパクトマテリアリティ)のいずれかにおいて最も高い影響を有するとされたESG課題に関わる項目を特に重要視し、以下の4項目を抽出しました。これらの項目は各々に関係する委員会で取り扱われ、ESG統括委員会に集約されるとともに、経営会議または取締役会への報告等を通じてリスクと機会の監視・管理(ガバナンス)、識別・評価(リスク管理)を行っています。

イ.気候変動への対応

 気候変動対応は、地球の持続可能性において最重要課題の1つであると認識し、NGKグループビジョンを踏まえ併せて策定した「NGKグループ環境ビジョン」及び「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づき、事業活動を通じての2050年までのCO排出ネットゼロを目指しています。具体的な活動として「環境行動5カ年計画」によって管理指標と年度ごとの達成目標を定めています。これらは、社長を委員長とするESG統括委員会で審議され、年1回以上、取締役会に報告されます。

 

ロ.品質と製品の安全性の追求

 お客様視点に立った信頼される品質を追求し、期待を超えた安心・信頼のある製品・サービスを安定的に供給することで、より良い社会づくりに貢献します。

 このために、品質委員会において品質方針及び品質目標の決定改廃、市場における重大な品質不良の発生防止と万が一発生した場合の技術的対応等を取り扱い、委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の品質実績については、年1回以上取締役会に報告されます。

 

ハ.人権の尊重

 自社及びバリューチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。

 このために、HR委員会において人権に関する基本方針の決定改廃、グループ会社を含めた人権に対する啓発活動や人権デューディリジェンスの実施、苦情処理と救済対応等を取り扱い、委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の実績については、年1回以上取締役会に報告されます。

 

ニ.人材価値の向上

 多様な経験・価値観を持った人材が活躍する豊かで活気ある職場環境を整備し、従業員一人ひとりが自律的に挑戦し高めあうことで、社会に新しい価値を提供していきます。

 このために、HR委員会においてNGKグループ人的資本経営方針を策定し、これに基づく各種の人事施策を展開するとともに、長時間労働等の労働に関わる問題の把握を行います。委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の実績については、年1回以上取締役会に報告されます。

 

 その他の当社がリスクと認識する項目全般については、「第2 事業の状況 3〔事業等のリスク〕」をご覧ください。

 マテリアリティについては、当社ウェブサイトをご覧ください。

https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/materiality_r0.pdf

 

(2)戦略並びに指標及び目標

 マテリアリティのうち特に重要なものとして抽出された項目については、各々以下の取組みを行っています。

① 気候変動への対応

 バリューチェーン全体にカーボンニュートラルを働きかけ、CO排出ネットゼロの事業活動を目指します。

 データとデジタル技術の活用を通じてカーボンニュートラル関連製品の開発スピードを加速し、独自のセラミック技術を中核とした製品・サービスの開発・提供により、2050年までのカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

 NGKグループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しており、その枠組みに基づく開示のうち、戦略、並びに指標及び目標に関する部分は以下の通りです。

 

〔戦略〕

イ.気候変動のリスクと機会

 NGKグループの事業に関連する気候変動のリスクと機会及びその影響の大きさについて、時間軸とシナリオを設定して分析をしています。シナリオ分析は、複数の将来シナリオを想定した上で、各シナリオ下で気候関連のリスクと機会がNGKグループに与えうる影響を把握し、今後の戦略や対応の検討に活かすことを目的とした手法です。

 

 

(イ)前提条件

(a)時間軸 リスクと機会を検討するための時間軸として、短期・中期・長期を設定しました。

 

時間軸

設定理由

短期

2025年度

第5期環境行動5カ年計画の最終年度であるため

中期

2030年度

NGKグループ環境ビジョンの中間目標年であるため

長期

2050年度

NGKグループビジョン及びNGKグループ環境ビジョンの目標年であるため

 

(b)シナリオ

 カーボンニュートラルへの移行によるリスクと機会、物理的なリスクと機会がそれぞれ最大化すると考えられるシナリオとして、1.5℃シナリオと4℃シナリオを設定しました。

シナリオ

概要

参照した主な外部シナリオ

1.5℃

シナリオ

2050年カーボンニュートラルに向けて、政策・規制導入や市場変化が急速に進行することで、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ1.5℃に抑えられる。

・IEA(国際エネルギー機関)Net Zero by 2050シナリオ

・SSP1-2.6シナリオ など

4℃

シナリオ

CO排出量削減に向けた政策・規制や社会の取組みが進まず、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ4℃となる。災害などの気候変動による影響が甚大化する。

・SSP5-8.5シナリオ など

 

(ロ)特に重要度の高いリスクと機会

 各時間軸とシナリオにおいて、TCFDの分類に沿ってリスクと機会を特定しました。リスクと機会各々の財務影響の大きさは、全社のリスク評価基準を参考に定性的に評価を行った上で、一定の影響があると考えられ、シナリオに基づく定量的な検討が可能な一部の項目については、財務影響の定量化を実施しました。

 なお、本シナリオ分析はNGKグループの業績の将来見通しではなく、各シナリオ下で気候変動によるリスクと機会がNGKグループに将来与えうる影響を分析し、今後の戦略や対応の検討に活かすためのものです。また、財務影響の試算において使用している情報は検討時点のものであり、不確実な要素や仮定を含んでいます。

 

(a)カーボンニュートラル社会への移行リスクと機会(1.5℃シナリオ)(主な項目のみ)

分類

事業におけるリスク・機会

リスク・機会の内容

時間軸

対応戦略

(抜粋)

財務影響

政策

法規制

温室効果ガス排出削減強化による対応コストの増加

リスク

省エネ、再生可能エネルギーの調達、エネルギー源の電化、焼成用燃料の天然ガスから水素・アンモニアなどへのエネルギー転換に向けた設備入替・導入などの対応コストが発生

短期

長期

・各国の規制や炭素価格制度の動向や予測のモニタリング

・NGKグループ環境ビジョン、カーボンニュートラル戦略ロードマップに沿った省エネ強化、技術イノベーション推進、再生可能エネルギー利用拡大の取組み

・CSR調達ガイドラインによる温室効果ガス排出削減の推進

エネルギー転換/炭素価格の財務影響額(経費増) ※1

2025年:   △20億円

2030年:   △58億円

2050年:   △123億円

(参考:削減しない場合の炭素価格影響:△59~△177億円)

炭素価格の導入によるコスト増加

リスク

自社での排出、及びサプライチェーン上流での排出への炭素価格の導入によりコストが増加

 

 

 

分類

事業におけるリスク・機会

リスク・機会の内容

時間軸

対応戦略

(抜粋)

財務影響

技術

バッテリーの技術革新/新技術の登場・普及によるリスク・機会

機会

・自社の技術開発が進む場合、競争力の強化

・蓄電池ニーズが増加

中期

長期

・技術革新の動向に関するモニタリング

・研究開発の推進

定量化のための指標が不足しているため現時点では定性的に検討

リスク

競合製品の技術革新が進む場合、自社技術の競争力低下

CCU/CCS

(COの回収・利用・貯留)の普及による市場拡大

機会

CCU/CCS市場拡大により当社のセラミック製品(サブナノセラミック膜など)の事業機会の増加

中期

長期

CCU/CCS市場における事業拡大、新製品開発の推進マーケティング、ビジネススキーム、新製品開発を加速するNew Value 1000の推進

CCUS関連製品での財務影響額 ※2

2025年:    +0億円

2030年:   +140億円

2050年:  +2,700億円

市場

自動車関連製品の需要増減

機会

・短期的には排ガス規制強化により、自動車排ガス浄化用部品、NOxセンサーの需要が増加

・中長期的には、EV向けに窒化ガリウム(GaN)ウエハー「FGAN®」や絶縁放熱回路基板、ベリリウム銅部材等の需要が増加

短期

長期

・排ガス規制の強化に伴う新製品や高機能品の増加で内燃機関自動車向け需要低下をカバー

・窒化ガリウムウエハーやベリリウム銅、絶縁放熱回路基板の、EV・プラグインハイブリッド自動車向け採用拡大

・EV用熱マネジメント向け製品、合成燃料向け新製品等の開発・提供

自動車関連製品での財務影響額 ※2

2025年:   +650億円

2030年:   △500億円

2050年:  △2,440億円

リスク

中長期的には内燃機関自動車向け製品の需要が減少

蓄電池需要の拡大

機会

・「NAS®電池」や亜鉛二次電池「ZNB®」の需要増加

・リチウムイオン二次電池向け加熱・耐火物事業のビジネス機会拡大

短期

長期

・ソリューションサービスを通じての新しい価値の提供

・亜鉛二次電池「ZNB®」の事業化

蓄電池関連製品での財務影響額 ※2

2025年:   +230億円

2030年:   +330億円

2050年:   +680億円

半導体関連製品の需要拡大

機会

半導体製造装置用部品や、エレクトロニクス事業における電子部品・金属関連の需要が増加

短期

長期

半導体製造装置メーカーと連携し、設備能力や人員・設備体制等の都度増強

定量化のための指標が不足しているため現時点では定性的に検討

※1:IEA(国際エネルギー機関)のNet Zero by 2050(2021年版)シナリオ等のパラメーター(炭素価格、エネルギー単価、電源構成など)に基づき、将来の事業拡大等について一定の前提や仮定を置いた上で、エネルギー転換や省エネにかかるコストと、温室効果ガスに対する炭素価格を合わせて利益に対する影響額を概算し、財務影響としています。

※2:IEAのNet Zero by 2050(2021年版)シナリオ等に基づく、自動車市場、CCU/CCS市場、電力向け蓄電池市場の変化に基づき、当社シェア等について一定の前提や仮定を置いた上で、一部の製品を対象に現在と比較した売上高への影響額を概算し、財務影響としています。

 

 

(b)気候変動の顕在化に伴う物理的リスクと機会(主に4℃シナリオ)

分類

シナリオの

概要

事業における

リスク・機会

リスク・機会の内容

時間軸

対応戦略

財務影響

急性

・日本やアジア等の地域で洪水頻度が増大する

・猛烈な台風の頻度が増大する

風水害による工場・サプライチェーンへの影響

リスク

・風水災により、施設、機械などのプロパティ損害、事業停止による利益損害、従業員の出社困難などの影響が増加

・風水害の増加によりサプライチェーンが途絶

短期

長期

・主要拠点における将来気候も含めた水災リスクの評価

・サプライチェーンも含むBCP(事業継続計画)の構築・推進

・拠点の分散により、グローバルに代替可能な体制の構築

・サプライチェーン途絶に備え、災害リスクの高い産地を中心に、予め代替の調達方法の検討

・主要サプライヤーにおける水災リスク評価の検討

当社工場及びサプライヤーにおける洪水・高潮による当社損失額(期待値)の変化 ※3

 

2025年: △0.7億円

2030年: △1.0億円

2050年: △5.4億円

慢性

海面上昇が進行する

沿岸部工場における高潮等の影響

リスク

・高潮リスクが高まり、浸水被害によるプロパティ損害、利益損害が増加

・かさ上げ、防壁等の対策や移転費用の発生

中期

長期

※3:米国Jupiter Intelligence社が開発したClimate Score Global(CSG)モデルでのシミュレーションにより、工場及び主要サプライヤーの位置情報に基づき、90mの解像度で河川洪水・高潮による浸水深の評価を行いました。評価から当社工場における資産の損失額・操業停止による損失額と主要サプライヤーの操業停止による当社の損失額を集計し、利益に与える影響額の期待値を算出しました。期待値は、水災による損失額と年当たりの水災発生確率から算出した指標です。

 なお、損失額は浸水深に応じた一律の被害率に基づき概算したものであり、各拠点がある地域の防災対策等の詳細状況は反映しておりません。

 

ロ.気候変動のリスクと機会を踏まえた戦略

 シナリオ分析を通じて特定したリスクと機会に対して各々の影響度を認識した上で、社会や市場の動向を注視しながら、各項目について設定した対応戦略に沿って行動していきます。

 

 移行リスクのうち、CO排出に伴うリスクについては、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づきCO排出量ネットゼロに向けた取組みを推進することでリスクを低減していきます。

 水災害リスクについては、比較的発生頻度の高い降雨に対してBCP(事業継続計画)の観点から土地の嵩上げ等の対応策をすでに講じています。それ以上の災害についても、人命を守ることを第一優先として壊滅的な被害が発生しないように対応策を取っています。今後も気候変動によるリスク低減のために、4℃シナリオのような最悪の事態の可能性も認識した上でリスク評価を継続するとともに、BCP等の対応策の強化に取り組んでいきます。

 

 NGKグループはNGKグループビジョンにおいて、「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、2050年にこれらの分野における関連製品が売上高の80%を占めることを目指しています。

 カーボンニュートラル社会の実現による事業機会について、今回のシナリオ分析では現在想定しうる一部の事業に対する定量的な財務影響を算定しました。NGKグループビジョンの実現に向けて今後もカーボンニュートラル及びデジタル社会関連の新製品の開発に努め、新たな価値を社会に提供し持続的な成長を目指します。

 

 シナリオ分析については、参照した外部シナリオや各種のパラメーター等の追加や更新、新製品の開発状況に応じて適宜充実、深化させ、気候変動のリスクと機会が経営にもたらす影響を継続的に分析し、対応を検討していきます。

 

〔指標及び目標〕

 「NGKグループ環境ビジョン」の達成に向けて、目標実現のための「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定しました。2050年の目標をグループ全体のCO排出量ネットゼロとし、そこに至るまでのマイルストーンとして、2025年度に排出量55万トン(基準年2013年度比25%削減)、2030年度に同37万トン(同50%削減)を設定しています。

 

 

0102010_003.png

 

 また「NGKグループ環境ビジョン」の実現に向け、2021~2025年度における環境活動の目標として、「第5期環境行動5カ年計画」を策定しました。2050年ネットゼロ、及びマイルストーンである2030年度の2013年度比50%削減の達成への進捗をわかりやすくすることが狙いです。また、再生可能エネルギーの利用拡大への取組みとして、グループ全体の電力使用量に対し、再生可能エネルギー利用率の目標を新たに設定したほか、カーボンニュートラル関連製品での登録数を増やす目標も定めました。

 

 以下につきましては、当社ウェブサイトで開示しております。

 GHG排出量及びCO排出量(Scope1、Scope2及びScope3)

 「環境データ集」P3 温室効果ガス(GHG)排出量

 https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2024/environment-date2024.pdf

 

 環境行動5カ年計画

 「NGKグループサステナビリティウェブサイトデータ2024」P23

 https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2024/ngk2024data.pdf

 

 

 

 なお、(2)戦略並びに指標及び目標 ① 気候変動への対応に記載された将来情報は、気候変動によるリスク及び機会への当社グループの戦略のレジリエンスを担保するため、信頼できる外部機関が策定したシナリオ及び将来予測数値を用いて想定値として算出し、ESG統括委員会の審議を経て経営会議・取締役会で報告されたものです。あくまでもシナリオに基づく想定値であり、実際の企業業績とは一致しません。

 

② 品質と製品の安全性の追求

〔戦略〕

 当社グループは、エネルギー・エコロジー・エレクトロニクスの分野でグローバルにセラミックス製品を生産・販売しており、リスクとして、品質と製品の安全性に関わる重大な市場クレームや契約違反等、業務の不備によるブランド・レピュテーションの毀損、訴訟の提起等、一方で機会として、品質と製品の安全性を追求することによるブランド・レピュテーションや競争力の向上、及びビジネス機会の拡大と認識しております。そのため、経営トップの直接指導の下、

 品質方針「品質を大切にし、お客さまと世の中に信頼され役立つ製品とサービスを提供する」

 品質目標「マネジメントからフロントラインまで業務のムリ・ムダ・ムラを徹底議論し改善する」

を掲げて、品質経営部が各事業本部の品質活動をモニタリングするとともに、重要課題については品質会議を開催して迅速な解決を図るなど、品質と製品の安全性に関わるリスク低減を図っております。

 品質活動は「お客様の信頼を高める活動」を軸とし、業務品質(お客様との約束を遵守するための仕事の品質)の改善と品質リスクの低減に注力して取り組んでおります。

 業務品質の改善については、全社品質コンプライアンスプログラムとして、経営層による意思表明、規程・ルールの整備、教育の実施、監査及びモニタリング、防止活動、等の取り組みを継続しております。2024年度は、マネジメントからフロントラインまでが品質コンプライアンスを自分事として理解し、業務のムリ・ムダ・ムラを改善する活動を行った結果、意識の向上が見られております。

 品質リスクの低減では、4つの品質活動をルール化するとともに守るべき6つの品質を定め、効果的に品質リスクを排除するための考え方・やり方を示したQRE-P(Quality Risk Elimination – Process)の思想を全社展開する活動を継続しております。その中で2024年度は、以下の取り組みを進めております。

・市場不具合の原因分析により、不具合発生部門の仕事の進め方を改善する取り組み

・製品実現(※)や上市後も、事業部門が製品・サービスの安全性を確保するための取り組み

・サービスやソリューションを扱うコトビジネスにおいて、お客さまへ提供すべき価値を明確化し、想定される品質リスクを分析する取り組み

・お客様からの要求仕様、保証内容の確認を強化する取り組み

・品質と製品の安全性のリスクを認知した場合に、速やかにお客様へ通知する仕組みを強化する取り組み

 

 なお、2025年度の品質目標は、2024年度の目標を継続することを定めております。

 

※ISO用語。製品が要求事項を満たすよう、計画的に設計・開発・製造・検査・納入・サービスなどの工程を経て実現すること

 

〔指標及び目標〕

 品質と製品の安全性の追求に関する実施目標は以下の通りです。

・製品・サービスの重大事故件数:0件

 

③ 人権の尊重

〔戦略〕

 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、同原則)に基づき、グループの事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのないように「NGKグループ人権方針」を定めたほか、「英国現代奴隷法に関する声明」を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しています。

 この「NGKグループ人権方針」に基づき、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、事業活動が人権に対して及ぼす負の影響を特定し防止・軽減する取組みを進めること、また事業活動が人権に対して負の影響を及ぼしたことが明らかになった場合や、及ぼしたことが疑われる場合は、関係者と誠実に対話し、適切かつ効果的な救済に取り組むこととしております。

 また、同原則等に基づき、事業に関連する人権課題の洗い出しを行いました。OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスにて定められた考え方に沿って、『深刻度』と『発生可能性』の2軸から重要度評価を行い、関係者との協議、HR委員会での報告を経て、優先的に取り組むべき人権課題を特定しました。これらの人権課題に優先的に対応し、人権課題の防止・是正に取り組んでいます。また、事業活動における人権の尊重への理解向上を目的とした研修を実施するとともに、ステークホルダーエンゲージメントを通じて、現場の状況や従業員視点での人権リスク、各種施策に対する改善点等を確認しています。

 

人権尊重の取り組みの全体像

0102010_004.png

 

人権リスクマップ

0102010_005.png

 

〔指標及び目標〕

 人権の尊重に向けた取組みについての指標及び目標は以下の通りです。

 2022年度より、国内グループ会社に加え、海外グループ会社も対象としたセルフチェックを実施しています。現時点で、各国の法令に違反する事象は確認されていないものの、RBA(※)行動規範に合致しない事象が複数確認されています。これらの結果を踏まえ、2024年度、日本ガイシは就業規則の改定により、懲戒の種類から「減給」を削除、国内グループ会社においても同様の対応を進めています。今後も、各国の法令・慣習・慣行を考慮しながら改善を進めるとともに、セルフチェックを通じた継続的なモニタリングを実施し、適切な対応を図っていきます。

(※)Responsible Business Alliance:製造業のサプライチェーンにおいて、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷等に対する責任を促進するための基準を示し、その監査を実施する枠組み。

 

0102010_006.png

 

④ 人材価値の向上

 人材価値の向上に関わる戦略並びに指標及び目標については、次項(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標をご覧ください。

 

(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

① 人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

(NGKグループ人的資本経営方針)

 当社グループは、NGKグループ理念の中で、挑戦し高めあう人材を私たちが目指すものの1つと位置付け、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命の実現に取り組んでいます。また当社グループは、NGKグループビジョンの実現に向けて、「5つの変革」に取り組んでいます。5つの変革を成し遂げるためには、人材一人ひとりの活躍が不可欠です。採用や育成を通じて5つの変革に取り組む人材の充実を図ること、その人材が持てる力を十分に発揮できる環境を整えることを、当社グループの人的資本経営の基本とし、次の通り「人材育成方針」ならびに「社内環境整備方針」を定めます。

 

(イ)人材育成方針

 NGKグループは、5つの変革を実現するため、以下のような能力、マインドを持つ人材を育成していきます。

・高度な知識、技術、能力を身につけ、主体的に問題に取り組む人材

・チームワークを発揮し、粘り強く成果につなげる人材

・自律的に成長し、自身と会社を変革し続ける人材

 

(ロ)社内環境整備方針

 NGKグループは、人材が持てる力を十分に発揮できる舞台として、以下のような職場環境をつくり上げていきます。

・多様性を尊重し、さまざまな人が活躍できる職場

-人種、国籍、性別、年齢や信念、経験、価値観などにかかわらず、誰もが認められ、尊重される職場。

・豊かで活気あふれる職場

-多様な人材が、やりがいをもって、尊敬できる仲間と楽しく働くことができ、こころと体の健康、仕事と生活の調和が保てる職場。

・挑戦を後押しするオープンな職場

-果敢な挑戦を後押しする、風通しよく心理的安全性が守られた職場。

 

② 方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

 当社では、当社グループが求める人材を育成し、その人材が持てる力を発揮できるように、人材育成及び社内環境整備の達成状況を把握するための指標及び目標を設定しております。

・組織活性度調査スコア

従業員がはたらきやすく、やりがいを感じられる環境を整備するために、組織活性度調査を毎年実施しています。職場ごとの従業員の意見や要望を把握し、問題点や改善の必要性を特定します。

・データ活用人材数

「NGKグループデジタルビジョン」に基づいて、全従業員へのDX啓発と、DX人材育成に取り組んでおります。従業員のスキルや知識の向上を図り、データ活用人材を育成しています。

・階層別メンタルケア教育受講率

「NGKグループ健康宣言」を定め、従業員の健康増進に力を入れています。新入社員や若手はセルフケアを中心に、新任の主任や基幹職にはラインケアの内容を織り交ぜながら、メンタルヘルスに関する理解を深めるようにしています。

 

 組織活性度調査では、全項目において前年を上回る改善が見られました。特に「仕事のやりがい」については、職場での活性化に向けたワークショップの実施など組織活性化に関する取り組みが奏功し、初めて目標値を達成することができました。一方で、「多様性の活用」と「挑戦」に関しては目標に到達しておりません。これを受け、今後は関連施策や制度のさらなる充実を図り、挑戦を後押しし、多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備をさらに進めていくことにより、人的資本の強化に引き続き取り組んでまいります。

 

 なお、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、これらの指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 また、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金差異についての実績は、「第1 企業の概況 5〔従業員の状況〕(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

組織活性度調査スコア

 

0102010_007.png

 

(注)当社は、組織や所属社員の活性度状態を「仕事」「職場」「上司」など様々な要素から可視化しているサーベイである組織活性度調査を現在は年次で実施しております。設問ごとにスコアが1点~5点で示され、5点に近づくほど、その設問に対する社員の満足度が高いことを意味しております。目標の3.5以上とは所属社員の過半数が満足度4点以上である状態であります。

 

その他の指標スコア

0102010_008.png

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、「NGKグループビジョン Road to 2050(以下、グループビジョン)」( https://www.ngk.co.jp/info/vision/ )の実現に影響を与える不確実性をリスクと捉え、グループのリスク課題を包括的に取り扱うためリスク統括委員会を設置しております。リスク統括委員は担当領域におけるリスク対応について各本部・部門へ指示・支援を行うなどのマネジメントをしております。各本部・部門はそれぞれの業務に関するリスク対応策を策定し、その実行及びリスクの顕在化状況のモニタリングを継続的に行うとともに、その状況をリスク統括委員会に報告しております。当委員会は年3回開催されその活動内容を年1回以上取締役会に報告しており、取締役会はその活動を監督しております。

0102010_009.png

 リスク統括委員会では、内外環境の変化を踏まえた定期的なリスク分析・評価、管理すべき重要なリスクを特定・見直しし、リスクを主管する委員会・部門によるリスク顕在化状況のモニタリングやリスク対応策の策定・実施等のリスク管理体制及び手法を整備しており、経営全体の持続性を強化しております。

0102010_010.png

 上記プロセスを通じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを以下のように認識しております。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日現在)において当社グループが判断したものであります。

(1)事業運営におけるリスク

 当社グループは、海外18ヵ国に35のグループ会社を展開し、うち18社において製造を行っております。各国・地域の政治や対日感情の安定、法律、規制、税制、インフラの整備、関税を含むインセンティブ等が各事業の前提条件となっております。当社は様々な観点から拠点を分散し、グローバルに代替可能な体制構築に取り組んでおりますが、デモ、テロ、戦争、感染症、自然災害等による社会的混乱などを含め、これらの諸条件に予期せぬ事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

 

 当社グループの主要な製品の需要動向、競争や収益環境に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

 

① エンバイロメント事業

 当事業の主力製品である自動車排ガス浄化用セラミックス製品(ハニセラム®、センサ製品群)について、2030年段階において内燃機関車の市場はピークアウトしているものの、各国の排ガス規制の強化もあり、当社製品需要は引き続き一定の規模で推移すると予想しております。当事業に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・当社製品を搭載する内燃機関自動車がEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)等の非内燃機関車に置き換わることや、消費者の価値観やビジネスモデルの変化によって、当社の自動車排ガス浄化用セラミックス製品の需要が変動するリスクがあります。

・中国においては、競合が台頭するリスクや、競合が当社の想定を上回る競争力を得た場合、市場シェアの一部を喪失するリスクがあります。

対応策

・新製品や高機能品の開発、市場投入を行い、需要の変動に伴う収益への影響に対応いたします。また、需要動向を継続的にモニタリングし、柔軟な生産対応を行うことで変化に適応してまいります。

・中国においては、環境規制を先取りした技術対応力や安定した供給力により競争力を強化してまいります。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、内燃機関車の減少につながる変化が当社の想定を超えて進捗した場合の他、強化された排ガス規制などの環境規制に対する取組みが十分でない場合や対応の遅延がある場合には、期待する業績を達成できないリスクがあります。

・中国においては、上記の対応策を講じてもなお、競合が当社グループの想定を上回る競争力を得た場合には、市場シェアの一部を喪失するリスクがあります。

 

 また、産業機器関連製品については、リチウムイオン電池正極材及び電子部品向け焼成炉の成長が見込まれます。当製品群に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・競合が当社グループの想定を上回る競争力を得た場合には、市場シェアを喪失するリスクがあります。

対応策

・競争力の維持、向上に努め、競合他社の状況等を十分にモニタリングします。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、景況の悪化等、短期間で需要見通しが下方修正される場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

② デジタルソサエティ事業

 当事業は、半導体製造装置メーカー向けの部材、スマートフォン向け高性能SAWフィルター用複合ウエハー、データセンターに用いられる大容量HDDヘッド用のアクチュエーター、モーターの駆動制御や発電機などの電力変換を行うパワー半導体モジュール向け絶縁放熱回路基板、基地局で使用される高周波デバイス用セラミックパッケージ、自動車部品・家電・情報通信機器等のスイッチやコネクターに用いられるベリリウム銅展伸材を供給しております。社会のデジタルシフトと共に半導体の物量は増大し、当該事業も中長期に成長すると見込んでおります。当事業に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・主力の半導体製造装置用製品の需要は半導体の需給状況や各国の規制、技術革新により大きく左右されるリスクがあります。

・顧客ニーズへの対応遅れなどにより市場シェアを喪失するリスクがあります。

・なお、革新的な発明により半導体製造プロセスが大幅に変更された場合などにおいて、期待する成長水準を達成できないリスクがあります。

・半導体に関する各国の輸出規制はより複雑化しており、当局への確認、対応の遅延などによる業績へのリスクがあります。

対応策

・各国の輸出規制並びに直接の顧客である半導体製造装置メーカーからの需要情報や半導体市場及び大手半導体メーカーの設備投資動向を踏まえて、都度、設備能力や人員・生産体制等を見直しております。また、当社独自の技術対応力や製品供給力を高めることで業界トップのポジションを維持してまいります。

・法規制の動向については、各事業本部への情報共有、必要な規程・マニュアルの整備により対応しております。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、想定を上回る規模で需要が減少した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 その他の製品群においては、以下の通りリスク認識をしております。

リスク概要

・最終消費財の販売動向や基地局・データセンターへの投資の動向等に大きく左右されるリスクがあります。

対応策

・客先動向を注視した上で需要の変動に素早く対応できるよう適宜人員体制、生産体制等を見直しております。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、当社グループの想定を超えて大きく需要が減少する場合や、需要低迷が長期化する場合には、販売の急激な減少や過剰在庫の発生により業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

 

 当事業が属する半導体・電子部品業界は、技術革新やモデルチェンジのペースが速く、主要顧客のニーズに応じてタイムリーに新技術開発、製品投入が出来ない、もしくは競合メーカーが当社グループの想定を上回って伸長した場合には受注を失い、収益が大幅に減少するリスクがあります。

 

③ エネルギー&インダストリー事業

 当事業は、電力貯蔵用NAS®電池(ナトリウム/硫黄電池)、電力絶縁用がいし及び機器類を供給しております。NAS®電池については、脱炭素に向けた世界的な潮流を受けて、再生可能エネルギー普及に伴う大容量・長時間用途の蓄電池のニーズが主に海外では顕在化しつつあり、将来需要が拡大することが予想されます。当事業に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

 

 

 

リスク概要

・系統用蓄電池市場の現在の主流は短時間用途であり、リチウムイオン電池がシェアを拡大しています。NAS®電池が適した長時間用途市場の立ち上がりが想定よりも遅れる場合は、安定した需要の確保に影響を及ぼすリスクがあります。

対応策

・NAS®電池の持つ技術優位性(大容量・長時間)をアピールすると共に、欧州などの有力企業とのパートナーシップ強化や政府の支援策等を活用し、世界市場での安定したニーズの喚起及び取り込みと、コスト削減を図ります。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、長時間用途の市場拡大のさらなる遅れや安価なリチウムイオン電池の適用拡大が生じた場合には、有効需要の低迷や市場価格の下落により当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 がいしや機器類については、各国のエネルギー政策や電力会社の設備投資の動向に大きく左右されます。当事業に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・国内では、磁器製に比べ長期性能に懸念があるものの、比較的安価で軽量なポリマー製がいしが採用されるリスクが一部であります。

・海外では競合企業の動向や各国の電力政策が影響し、収益が減少するリスクがあります。

対応策

・当社製がいしの使用実績に基づく長期信頼性を顧客にアピールすることで継続採用を促していきます。

・高い品質を維持しつつ、生産性改善とサプライチェーン強化をもってコスト競争力向上を図ることにより安定的な需要確保につなげます。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、想定を上回る規模で需要が減少した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 このような事業環境を踏まえ、グループビジョンにおいてカーボンニュートラルとデジタル社会を当社グループが取り組むべき社会課題と設定し、事業構成の転換に向けた取組みを進めております。

 

(2)研究開発に関するリスク

 当社グループは、創業以来強みとして培ってきたセラミックスの材料及びプロセス技術を核として、既存製品の高性能化のみならず有望テーマの探索にもインプットを継続しており、事業規模の拡大に応じて連結売上高の5%程度を目安に研究開発費を増加させております。

 また、グループビジョンでは、2030年までの10年間で総額3,000億円の研究開発費を確保し、その80%をカーボンニュートラル、デジタルソサエティ分野に配分、2030年時点での新製品・新規事業の売上高1,000億円を実現する「New Value 1000」を掲げました。研究開発に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・市場/顧客価値の追求や要求時期への対応といったマーケットフィットが実現できないことで、新商品創出や事業化が予定通りに進捗せず、New Value 1000を達成することができないリスクがあります。

対応策

・NV推進本部、研究開発本部、製造技術本部と連携し、加えて外部からの技術やリソースを積極的に獲得することで新製品創出や事業化を推進していきます。なお、開発・事業化委員会にて研究開発にかけるリソース配分を適宜見直しております。

残存リスク

・上記の対応策を講じたとしても、技術開発、製品開発には不確実要素が多く、また技術間競争も複雑化していることから、インプットが十分な成果に結びつかず業績に影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

(3)人材におけるリスク

① 人材確保・人材管理

 当社グループは、NGKグループ理念の中で、挑戦し高めあう人材を私たちが目指すものの一つと位置づけており、NGKグループ人的資本経営方針の下で目指すべき人材の継続的な確保・育成に向けて様々な施策を講じております。人材確保・人材管理に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・人材の流動化や雇用環境の変化等の社会変動において、優秀人材の獲得競争は激化しており、変革を推し進める原動力となるDX人材やグローバル人材を含め、事業戦略に即した人材が獲得できないリスクがあります。

・とくに研究開発・新規事業創出領域において、失敗を恐れず挑戦するマインドを持つ人材の確保・育成ができず、機会損失や重要な意思決定に悪影響がでるリスクがあります。

対応策

・事業戦略に即した人材の獲得のために、求める人材像や採用活動の在り方について議論と検討を行い、新卒・キャリアともに採用方式の多様化・最適化を図っています。

・DX人材とグローバル人材の確保・育成に注力し、デジタル技術を集中的に学ぶ社内DX留学制度や資格取得推奨、語学研修、異文化理解を基礎としたコミュニケーション・マネジメント研修、各国エリアスタディなどのセミナーを実施しております。

・積極的な事業機会の創出、変革への挑戦を継続できるよう、基幹職(管理職)の人事制度刷新や、人材育成の仕組み・制度の充実を図り、従業員が適切なリスクテイクを行いながら挑戦できるように会社が従業員をサポートできるような社内環境整備の取組みを進めています。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、求める人材の確保・育成が計画通りに進まなかった場合は、事業の遂行能力が向上しないために、グループビジョンやNew Value 1000といった事業目標を達成できず、業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

 

② ダイバーシティ&インクルージョンへの対応

 当社グループは、NGKグループ人的資本経営方針に示した求める人材像に合わせ、多様性確保に向けた人材育成方針や社内環境整備方針を定め、ダイバーシティ&インクルージョンを積極的に推進し、多様な人材が各々の能力を発揮して挑戦し、活躍できるよう努めております。ダイバーシティ&インクルージョンに関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・人材の多様化が進まない場合は、過去からの人材の同質性が継続し既存の価値観から脱却できず、イノベーションが生まれないリスクがあります。

・ダイバーシティ&インクルージョンに消極的な企業と認識されることで、採用競争力低下や業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

対応策

・国内外のすべてのグループ会社と人的資本経営方針(人材育成方針・社内環境整備方針)にもとづいた人事施策を実施できているか確認し、グループ一丸となってビジョン達成ができるような体制の構築を進めています。

・階層別教育やキャリア自律サポート、部門を超えたジョブローテーション制度等の人事施策を進め、新卒・キャリア採用を問わず幅広い人材の採用を実施し、個の多様性を育む取組みに注力してまいります。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が期待通りに進まない場合、イノベーションや新規事業の創出が滞り、グループビジョンやNew Value 1000といった事業目標を達成できず、業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

(4)法令遵守、人権・安全、品質に関するリスク

① 法令などの遵守に関するリスク

 当社グループは、他社との技術差別化により高い市場シェアを占める製品をグローバルに供給しており、国内外で競争法、輸出入関連法規、労働関連法規、腐敗行為防止に係る法令等を遵守して事業活動を行っております。法令などの遵守に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・各種法令・規制への違反や、人権の尊重、契約遵守等の社会的規範に反した行動があった場合には、処罰や訴訟の提起、社会的な制裁を受け、レピュテーションが低下し、更に事業収益にまで影響が及ぶリスクがあります。

対応策

・NGKグループ企業行動指針及びNGKグループ行動規範に基づいた誠実な事業活動を行うことを最重要課題の一つとして位置付け、従業員への各種教育の実施やハンドブックなどによる関連法規制の周知徹底とコンプライアンス意識の一層の向上に取り組んでおります。

・コンプライアンス活動を国際的な水準に照らし評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。

・重大な不正事案や法令違反については、社外役員とコンプライアンスを担当する社内取締役から構成される経営倫理委員会で予防と監視に当たってまいります。

・国内外で内部通報制度に関する規程を整備し、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度や、経営倫理委員会に直結する内部通報制度「ホットライン」を設置することにより、当社役員や従業員が関与する法令違反や社会的規範に反する行為等の発生可能性の低減を図っております。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、当社グループの予想し得ない問題が発生した場合には、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

② 人権・安全に関するリスク

 当社は従業員の健康増進に力を入れており、2025年3月に経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人」の認定を7年連続で受けました。従業員の労働災害や疾病・身体・メンタルヘルス問題については以下の通りリスク認識をしております。

リスク概要

・ルールの不履行やリスク認識の欠如により業務災害が発生した場合、従業員の生命が脅かされるとともに、一時的な製造停止や当社及び当社グループのレピュテーションの低下が生じるリスクがあります。

・従業員のメンタルヘルス悪化に伴う休職・退職が続き、部門単位で人材不足となり、日々の業務運営が滞るリスクがあります。

・グループの事業活動にともない、グループ従業員のみならず、サプライチェーンや当社製品を通じて、当社の事業活動に関わる全ての人々の人権を侵害するリスクがあります。

対応策

・安全衛生基本方針に基づき重大災害リスクの特定とリスクアセスメントによる未然防止対策強化を図ると共に、長時間労働者へのフォローや階層別メンタルケア教育にも力を入れております。

・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする人権に関する国際規範を遵守し、「NGKグループ人権方針」を定めています。日本ガイシ及び国内外のグループ会社を対象にRBA行動規範(注)を参考としたセルフチェックを定期的に実施しています。主要取引先に対しては、新規取引開始、及び取引継続にあたり定期的に「NGKグループサプライヤー行動規範」遵守の同意をお願いしています。また、従業員の理解を向上させるために、e-ラーニングや各種研修を通じて、人権侵害リスクの防止、軽減に努めております。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、当社グループの予想し得ない問題が発生した場合には、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(注) Responsible Business Alliance:製造業のサプライチェーンにおいて、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷等に対する責任を促進するための基準を示し、その監査を実施する枠組み。

 

 

③ 品質と製品の安全性に関するリスク

 当社グループは、エネルギー・エコロジー・エレクトロニクスの分野でグローバルにセラミックス製品を生産・販売しており、お客様の信頼を高めるため、業務品質の改善と品質の向上に注力して取り組んでおります。品質と製品の安全性に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・重大な市場クレームや契約違反等、業務の不備によるブランド・レピュテーションの毀損、訴訟の提起等の品質と製品の安全性に関わるリスクがあります。

対応策

・「NGKグループ企業行動指針」に基づく品質方針の下、品質経営部が各事業本部の品質活動をモニタリングし、重要課題については品質会議を開催して迅速な解決を図ってまいります。

・業務品質(お客様との約束を遵守するための仕事の品質)の改善については、2018年度から全社品質コンプライアンスプログラムとして、経営層による意思表明、規程・ルールの整備、教育の実施、監査及びモニタリング、防止活動の各項目について取り組みを進めております。2024年度は、マネジメントからフロントラインまでが品質コンプライアンスを自分事として理解し、業務のムリ・ムダ・ムラを改善する活動に注力しております。

・品質の向上については、品質活動のルール化及び守るべき品質を定めて、効果的に品質リスクを排除するための考え方・やり方をQRE-P(Quality Risk Elimination – Process)として示し、その思想を全社展開する活動を継続しております。2024年度は、市場不具合の原因となった仕事の進め方を改善する取り組み、製品・サービスの安全性を確保するための取り組み、及びコトビジネスにおいて想定される品質リスクを分析する取り組み、に注力しております。また、お客様からの要求仕様、保証内容の確認強化や、品質と製品の安全性のリスクを認知した場合に速やかにお客様に通知する仕組みの強化を進めております。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、当社グループが製造・販売する製品とサービスにおいて、予想し得ない品質問題が生じた場合には、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

 

(5)情報システムのリスク

 当社グループは、受注・販売、生産管理、会計、研究開発等の業務に広くITシステムを活用しております。また、働き方改革の実現に向けてグループ共通の情報通信システム(ICT)やデータプラットフォームを構築し、活用を促進しております。情報システムに関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、システム不具合やセキュリティ上の問題によりデータ処理の停止、データの盗難・破壊・改ざん・喪失等が発生するリスクがあります。

対応策

・NGKグループ情報セキュリティ方針に基づき当社グループのITセキュリティ対策を統制し、定期的にグループ各社の取り組みをグループ全体で共有することで全体的な対策レベルの向上を図っております。

・社内の情報資産及び外部のクラウドサービスを適正に管理・運用し、セキュリティ事故の防止に努めております。

・従業員に対する定期的な情報セキュリティ教育を実施し、情報の漏えい事故防止及びソフトウェアの適正利用に努めております。

・セキュリティインシデント発生時に迅速かつ的確に対応できるよう、社内体制と対応マニュアルの整備に着手しております。また、経営層による対応訓練を定期的に実施することでインシデント対応能力の向上に努めております。

残存リスク

・上記の対応策を講じたとしても、サイバー攻撃は年々激化、高度化しているため、不具合等が発生した場合には、当社グループの社会的信用や業務の継続、経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

(6)為替、資金及び資材調達のリスク

 当社グループは、グローバルに製品の生産・販売を行っており、海外売上高比率は7割を超える水準にあります。為替、資金及び資材調達に関するリスク認識につきましては以下の通りです。

リスク概要

・円高は売上高・利益の減少要因となって業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

・設備投資などの資金調達を行う場合には、地域により大きな金融危機などで資金調達が困難となり、当社グループの事業運営や業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

・資材調達については、各地域における素材価格やエネルギーコスト、物流費の上昇によって製造・販売コストが増加し業績に悪影響を及ぼすほか、サプライチェーンの混乱や、本国・調達元の法規制の変化への対応が遅れることによる資材調達の遅延や顧客への出荷滞留等、当社グループの事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

・特定の素材・設備の流通が滞り、過度の価格の上昇やサプライチェーンの混乱が起こる場合や、法令・規制に違反しレピュテーションが低下した場合には、当社グループの事業運営や業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

対応策

・需要地生産、現地通貨での資金調達、為替状況に応じた最適購買等の対策を実施し、短期的な変動に対しては先物為替予約などによりリスクヘッジをしております。

・素材価格やエネルギーコスト等の上昇に対しては適正な売価への反映、競争購買、設計見直しによるコストダウンなどに取り組みます。また、サプライチェーンについては、海外拠点先からも情報を入手して状態監視を行い、在庫管理や調達先の多様化を図る等リスク低減に努めてまいります。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、当社の想定を大きく超えて為替が変動した場合や、想定外の事態により資金調達と資材調達が困難となった場合は、当社グループの事業運営や業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

(7)気候変動と災害のリスク

① 気候変動に関するリスク

 当社グループは、金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動に関するリスク認識について「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4項目に沿った形で、財務影響も含めて公表しています。具体的には、2〔サステナビリティに関する考え方及び取組〕の該当箇所、及び「NGKグループサステナビリティウェブサイトデータ2024」P33の「TCFD提言に基づく情報開示」をご覧ください。

 https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2024/ngk2024data.pdf

 

 一方、TCFDで想定したシナリオ以外の事象が発生した場合には、追加的費用が生じて業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、気候変動対応目標の未達により、顧客などのステークホルダーの評価が下がり、更にはブランド価値の毀損やビジネス機会の損失が生じるリスクがあります。

 

 

② 大規模災害及び感染症に関するリスク

 当社グループは人命尊重と地域協力を旨とし、事業継続計画の維持管理を行う組織として、社長を責任者とするBCP(事業継続計画)対策本部を設置し、グループ全体でBCPを推進しております。大規模災害及び感染症に関するリスク認識については以下の通りです。

リスク概要

・大規模な地震や火災、風水害等の災害により操業困難な拠点が発生する可能性があります。

・重大な感染症が発生・蔓延し、社員、サプライヤーや顧客に罹患者が出た場合や、顧客の操業が著しく低下した場合には、当社グループの製品の生産・販売に悪影響を及ぼすリスクがあります。

対応策

・関連規程類の策定や訓練等を通じ、災害発生時の事業継続や早期復旧のため、主力事業の製造拠点の分散化や購買先の複数化、建物・設備の減災、従業員の安全確保等の各種対策に取り組んでおります。

残存リスク

・上記の対応策を講じてもなお、想定を超える事象によって主要製造拠点の生産設備に深刻な被害が発生した場合や、工場が立地する地域のインフラ側に長期の供給支障が生じた場合などには相当期間、生産活動が停止し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、堅調な企業業績が個人所得を改善し消費を喚起する好循環が続きました。米国経済は雇用情勢が底堅く、安定した推移となりました。一方、中国では不動産不況の長期化や厳しい雇用情勢を背景として景気の停滞が継続しました。欧州経済については持ち直し基調にあるものの、製造業では中国景気低迷の影響を受け回復に遅れが生じております。先行きにつきましては、各国の保護主義がグローバル経済の緊張を高めているほか、ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争に関する和平交渉も一進一退の展開が継続しており、先行きの見通しは不透明な状況が続いております。

 このような状況のもと、当社グループにおきましては、エンバイロメント事業では、グローバルの電気自動車(EV)化がやや鈍化したものの、中国市場や東南アジア市場、欧州市場で自動車需要が弱含んだことから、自動車関連製品の出荷も減少しました。デジタルソサエティ事業では、AI(人工知能)用途の半導体需要増加や旺盛なデータセンター投資を背景に半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が増加しました。エネルギー&インダストリー事業では、国内外の送配電投資が活況でがいしの出荷が増加しました。

 これらの結果、当連結会計年度における売上高は、自動車関連製品などの物量が減少したものの、半導体製造装置用製品などの物量増加や為替円安によるプラス効果から前期比7.0%増の6,195億13百万円となりました。利益面では、営業利益は売上増や円安等により同22.4%増の812億41百万円となりました。経常利益は同24.1%増の782億49百万円、親会社株主に帰属する当期純利益については、同35.4%増の549億33百万円となりました。

 当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。

 当連結会計年度におけるROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が増加したこと等から7.8%(前年同期比1.7ポイント改善)となり、目標である10%以上の水準を下回りましたが、今後は資本効率の向上等を通して、ROEの改善・向上に努めてまいります。

 

 セグメントの業績は次の通りであります。

〔エンバイロメント事業〕

 当事業の売上高は、3,907億98百万円と前期とほぼ同水準で推移いたしました。

 為替円安のプラス効果があったものの、中国や東南アジア、欧州における自動車販売が減速し、需要が弱含んだことから微減収となりました。

 営業利益は、コストダウンや売価改善の効果も加わり前期比5.7%増の682億54百万円となりました。

 

〔デジタルソサエティ事業〕

 当事業の売上高は、1,715億91百万円と前期に比して24.2%増加いたしました。

 市況の弱含みにより水晶デバイス向けセラミックパッケージやパワー半導体モジュール向け絶縁放熱回路基板では需要が想定を下回ったものの、AI用途の半導体需要増加や旺盛なデータセンター投資等に伴い、半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が増加したと共に、為替円安のプラス影響も加わり増収となりました。

 営業利益は、出荷物量の増加に加え、為替円安のプラス効果が加わり前期比652.5%増の171億91百万円となりました。

 

〔エネルギー&インダストリー事業〕

 当事業の売上高は、583億68百万円と前期に比して14.9%増加いたしました。

 国内外の送配電網強化に伴いがいしの需要が増加したことに加え、電力貯蔵用NAS®電池(ナトリウム/硫黄電池)も海外案件の出荷により売上が増加し、全体でも増収となりました。

 営業損益は、がいしの需要増の一方でNAS®電池は見込んでいた海外案件の消失により工場の一部工程を停止し、保有する棚卸資産で評価減を計上したことから損失が拡大し、41億96百万円の営業損失となりました。

 なお、当連結会計年度より、「エネルギー&インダストリー事業」に含まれていた産業機器関連製品を、「エンバイロメント事業」へ報告セグメントの変更をしており、各セグメントの前期比につきましては、前期の数値を変更後のセグメントに組み替えた上で算出しております。

 

 生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

エンバイロメント事業(百万円)

385,569

95.8

デジタルソサエティ事業(百万円)

178,043

125.4

エネルギー&インダストリー事業(百万円)

62,582

111.2

合計(百万円)

626,194

104.2

(注)1.購入品仕入実績については区分して記載することが困難なため、生産実績に含めて記載しております。

2.上記は、販売価格をもって表示しております。

3.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

②受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

エンバイロメント事業

383,766

93.7

29,635

81.5

デジタルソサエティ事業

189,557

232.7

128,035

137.4

エネルギー&インダストリー事業

54,709

110.1

40,804

109.4

合計

628,033

116.2

198,475

119.0

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

エンバイロメント事業(百万円)

390,371

99.9

デジタルソサエティ事業(百万円)

171,587

124.2

エネルギー&インダストリー事業(百万円)

57,553

115.1

合計(百万円)

619,513

107.0

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比し1.4%増加し1兆1,429億86百万円となりました。

 流動資産は、有価証券や現金及び預金などが増加したことから、前期比4.2%増の6,688億74百万円となりました。固定資産は、前期比2.3%減の4,741億12百万円となりました。

 流動負債は、1年内返済予定の長期借入金などが減少した一方で、短期借入金などが増加したことなどから、前期比1.8%増の1,789億12百万円となりました。固定負債は、社債が増加した一方、長期借入金などが減少したことにより、4.8%減の2,365億67百万円となりました。

 純資産は、自己株式が減少したほか、利益剰余金などが増加したことなどから、前期比3.5%増の7,275億6百万円となりました。

 これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は63.0%(前連結会計年度末61.7%)となり、1株当たり純資産は2,455.87円と、前期を121.66円上回りました。

 

 セグメントごとの資産は、次の通りであります。

〔エンバイロメント事業〕

 当事業の総資産は、売上債権や有形固定資産が減少したことなどにより前期比4.1%減少の5,159億7百万円となりました。

 

〔デジタルソサエティ事業〕

 当事業の総資産は、売上債権や棚卸資産が増加したことなどにより前期比3.3%増加の2,163億66百万円となりました。

 

〔エネルギー&インダストリー事業〕

 当事業の総資産は、棚卸資産や売上債権が増加したことなどにより前期比19.3%増加の838億60百万円となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による966億58百万円の収入、投資活動による550億81百万円の支出、及び財務活動による342億19百万円の支出などにより、前期末に比し62億76百万円増加し、当期末残高は1,777億8百万円となりました。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権が増加しましたが、税金等調整前当期純利益724億56百万円に減価償却費を加え、合計では966億58百万円の収入となりました。前期との比較では、25億1百万円の収入減となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、自動車関連製品や半導体製造装置用製品を中心とした設備投資に加え、有価証券の取得による支出もあり、合計で550億81百万円の支出となりました。前期との比較では、135億12百万円の支出減となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、将来の設備投資やカーボンニュートラルへの取組みなどへ充当するため長期借入れ及び社債の発行を実施した一方、長期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得などによる支出から、合計で342億19百万円の支出となりました。前期との比較では、19億3百万円の支出減となりました。

 

 資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの運転資金需要のうち主なものは原材料の購入費用、労務費等の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の調達について、調達手段の多様化を図ることで、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めております。また、グループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、国内外でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

 当社は2025年2月27日、KNM Process Systems Sdn Bhdとの間で、同社の完全子会社で熱交換器、膜装置等の製造及び販売を行うDeutsche KNM GmbH社の全株式を取得する契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](追加情報)」をご覧ください。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、研究開発を重要な経営課題のひとつとし、ファインセラミックスを中心とした材料技術とプロセス技術とをベースに、高付加価値、高機能な新製品の提供を目指し、研究開発に積極的に資源投入しております。

 推進体制としては、本社部門では、マーケティングを主体とした「NV推進本部」、差異化技術を強みとする「研究開発本部」、モノづくりを強みとする「製造技術本部」の3本部が連携して、「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めていく体制を取っています。また、事業本部や子会社では、本社部門とも連携しながら、商品化・事業化に近い研究開発を中心に進めています。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は29,590百万円であり、この中にはグループ外部からの受託研究にかかわる費用815百万円が含まれております。各事業別の主要な研究開発テーマ、成果及び研究開発費は次の通りであります。

 

〔エンバイロメント事業〕

 エンバイロメント事業では、エンジン排ガス用NOxセンサーやガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)の商品開発、及び自動車排ガス浄化用部品、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)の生産技術改善、DAC(Direct Air Capture)などカーボンニュートラル(CN)関連事業の研究開発に加え、一般産業用セラミックス製品及び機器装置の商品開発や性能向上に取り組んでおります。

 なお、当事業に係る研究開発費は7,569百万円であります。

 

〔デジタルソサエティ事業〕

 デジタルソサエティ事業では、半導体の高機能化に対応する製造装置用セラミック部品、データセンター向けハードディスクドライブ用圧電素子、情報通信用の複合ウエハーおよびセラミックパッケージ、EV他向けのパワーモジュール用絶縁放熱回路基板、EV・産業機器用コネクタ、ソケットなどのベリリウム銅製品等の研究に取り組んでおります。

 なお、当事業に係る研究開発費は4,143百万円であります。

 

〔エネルギー&インダストリー事業〕

 エネルギー&インダストリー事業では、電力貯蔵用NAS®電池に加え、がいし製品及び配電用機器の商品開発や性能向上に取り組んでおります。

 なお、当事業に係る研究開発費は976百万円であります。

 

〔本社部門〕

 本社部門では、NV推進本部、研究開発本部、製造技術本部の3本部が連携して、商品化・事業化へのスピードを高めていく体制を取っています。

 NV推進本部は、潜在顧客の開拓や市場や顧客のニーズを研究開発にフィードバックすること、研究開発本部は、中・長期にわたるセラミックス基礎技術の創出・育成と新商品の種を生み出すこと、製造技術本部は、試作・量産技術などを用いてモノづくりの面から研究開発を支援することを役割としています。

 また、当連結会計年度における研究開発テーマとして、各種サブナノセラミック膜、次世代複合ウエハー、ハイセラムキャリア等があります。

 なお、本社部門に係る研究開発費は16,900百万円であります。