第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、社是「愛業至誠:良品と均質 奉仕と信用 協力と発展」とTOTOグループ企業理念「私たちTOTOグループは、社会の発展に貢献し、世界の人々から信頼される企業を目指します。」に基づき、広く社会や地球環境にとって有益な存在であり続けることを目指して企業活動を推進しています。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2050年の持続可能な社会・カーボンニュートラルの実現に貢献し、すべての人に快適で健康な暮らしを提供することを目指します。

そのために、2030年のありたい姿として「きれいで快適・健康な暮らしの実現」「社会・地球環境への貢献」を実現すべく、10ヵ年の中・長期経営計画「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」を2021年4月末に発表しました。

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その中では、企業として取り組むべき重要課題であるマテリアリティを「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」として設定、サステナビリティ経営を推進し、地球環境に負荷をかけずに豊かで快適な社会を実現すると共に、経済的成長の実現を目指しています。

その推進フレームは、「コーポレート・ガバナンス」と時代の変化に先んじるための「デジタルイノベーション」をベースとし、「グローバル住設事業」「新領域事業」の2つの事業軸と、全社最適視点で横串を通す3つの全社横断の革新活動です。

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<グローバル住設事業について>

・日本住設事業

少子高齢化に伴い新築住宅着工戸数が減少し、ストック型社会への移行が進む中、日本住設事業においては、リモデル(住宅・パブリック)に注力しています。住宅リモデルでは「あんしんリモデル戦略」を進化させ、豊富な住宅ストックに対する需要喚起を行い、デジタルやAIを活用しながらお客様一人ひとりに合わせた提案を強化していきます。パブリックでは建築ストックのリモデル需要を喚起し、TOTOが創り出した最新の快適かつ衛生的なトイレ空間の採用拡大を図っていきます。

また、時代やお客様のニーズの変化に対応したサステナブル高付加価値商品の開発・提案を強化し、高収益な事業体質への転換を進めると共に、生産性を高めていきます。

 

・海外住設事業

米州事業

米国では温水洗浄便座市場が拡大し、普及期に差し掛かる中、「ウォシュレット」の売上が高い伸長率で推移し、市況全体が厳しい中でも事業全体を牽引しています。「ウォシュレット」の確固たる地位確立に向けて、建材店のショールームやeコマース、リテール多店舗店などの顧客接点の構築と更なる進化により、需要喚起を加速させ、「ネオレスト」「ウォシュレット」を軸としたきれいで快適、環境性能に優れた高付加価値商品で市場をリードし、それをアフターサービス体制で支えながら、市況を上回る成長の実現を目指していきます。

 

アジア・オセアニア事業

所得水準上昇による購買力の向上や下水道の普及に伴い、TOTO商品をご採用頂ける機会が拡大しています。多様な文化・生活様式を擁するアジア諸国・地域において、販売基盤を更に強化し、最も信頼され愛されるブランドを目指し事業活動を推進していきます。

特に、ベトナム、インド、タイ、中東などの成長市場において、代理店網の拡充、著名物件の獲得を強化し、質の高い節水大便器や「ウォシュレット」などの提案を推進していきます。

 

中国大陸事業

成長市場から成熟市場へと移り変わる中で、これまでの新築からリモデルへの転換を図り、リモデル需要獲得のための基盤構築を進め、お客様から選ばれ続けるブランドを目指し事業活動を推進していきます。市場環境や消費者の購買行動の変化を適切に捉え、当社の強みを活かせる領域にリソースを集中します。ショールームやeコマースといったオフライン・オンライン双方でのお客様接点の強化、元請工事業者との協業、高級市場の価値創造と中高級・中級市場対応できる商品投入、リモデル向けのプロモーション強化などを通じてリモデルへの取り組みを強化していきます。

 

欧州事業

「ネオレスト」「ウォシュレット」を中心に、デザインと機能を融合させたTOTOらしい商品の販売・サービスのネットワークを更に拡充し、きれいで快適な水回りの認知拡大を図っています。流通協働による販売網の更なる発展や著名物件への納入、継続的な新商品投入等により欧州トップブランドとしての地位実現を目指し、事業活動を推進していきます。

 

<新領域事業について>

セラミック事業

DXによる社会の変革をTOTOのセラミック技術で支えることを目指す姿とし、今後更に高度化する半導体に対して技術開発を強化し、伸長する半導体市場への商品供給のため生産性を高めていきます。商品・販売面では、次世代半導体製造装置・半導体露光装置へのオンリーワン商品の価値提案、新たな用途への採用を目指し、新技術に挑戦していきます。生産面ではDX化やAIの導入、サプライヤーから顧客までバリューチェーン全体におけるデータ連携などによりスマートファクトリーを更に進化させ、オンデマンド生産を実現する高効率な生産体制を構築して、競争・変化の激しい半導体市場に対応していきます。

 

<全社横断革新活動について>

・マーケティング革新

日本発のコアテクノロジーをグローバルでも共通基盤技術として活かしながら、エリアごとの市場や特性に応じた商品企画・開発を推進し、世界に通用する美しく快適な商品を展開しています。デザインとテクノロジーの融合を世界に向けて統一したプロモーションで発信しています。

 

・デマンドチェーン革新

「デマンドチェーン革新」では、「サプライチェーン革新」と「もの創り革新」それぞれの活動を推進し、これまで日本で培ってきた、商品企画から、研究開発、購買、生産、物流、販売、アフターサービスまで一体となった活動をグローバルで展開し、お客様のご要望に素早く効率的に応える体制を構築しています。

 

「サプライチェーン革新」では、地政学・経済的リスクを踏まえたBCP※体制強化、棚卸資産の最適化による収益性、資本効率向上の取り組みを、地域固有の状況に合わせて生産・販売部門一体となって推進しています。

(※)BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)

 

「もの創り革新」では、開発プロセスにおける設計のプラットフォーム化を推進することで、開発効率の向上とあわせて、生産プロセスの自動化の促進を図っています。また、もの創りの上流から下流までシームレスにデジタル連携を行い、効率化とデータ分析による改善を進めることで、タイムリーな商品創出と市場変化に対応できる生産体制の構築を推進しています。

 

・マネジメントリソース革新

多様な人財が集まり、安心してイキイキとチャレンジし、社員が誇りに思い働き続けたいと思える会社を目指して活動を推進しています。

「DXの実践」では、学習支援による個と組織のスキル強化と合わせて、部門ごとのさまざまなチャレンジを積極支援する体制を強化し、価値創出・効率化につながるDXをTOTOグループ全体で実践していきます。

「ダイバーシティの更なる進化」では、ライフイベントや国籍・ジェンダーを問わず「多様な人財」が、「多様な働き方」で安心してチャレンジできる、働きがいのある職場を目指しています。

「強固な事業基盤整備」では、当社グループの成長を支えるため、安心して安全に働ける職場づくりの実現を目指しています。財務においては、投下資本効率の最大化による企業価値の向上に向け、現場での『ROIC改善に向けた実践活動』を深化させていきます。

 

<サステナビリティの推進について>

当社グループでは、2050年の持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現に貢献し、すべての人に健康で快適な暮らしを提供することを目指しています。これらの取り組みにより、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」についても貢献していきます。

「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」では、マテリアリティを企業理念の実現に当たり取り組むべき重要課題と位置付け、サステナビリティの推進に取り組んでいます。

 

「きれいと快適・健康」

目指す姿として、「きれい・快適を世界で実現する」「すべての人の使いやすさを追求する」を設定し、「きれいで快適なトイレのグローバル展開」に取り組んでいます。

「除菌」「防汚」「清掃」の技術(「きれい除菌水」「セフィオンテクト」「フチなし形状/トルネード洗浄」)や「タッチレス」などの非接触技術の提案、「ウォシュレット」に代表される「快適なトイレ」の提供を通じて、「すべての人の使いやすさ」を実現し、清潔で健康的な生活環境を世界中に提供しています。

これらの取り組みにより、SDGsの目標「3:すべての人に健康と福祉を」などに貢献しています。

 

「環境」

目指す姿として、「限りある水資源を守り、未来へつなぐ」「地球との共生へ、温暖化対策に取り組む」を設定し、「節水商品の普及」や「CO2排出量削減」に取り組んでいます。

「節水商品の普及」では、限りある水資源を守ることで、SDGsの目標「6:安全な水とトイレを世界中に」などに貢献しています。

2050年の持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現に向けて、パリ協定と整合した科学的根拠に基づく2030年までの温室効果ガスの削減目標を策定し、削減活動を推進しています。

事業所からの CO2 排出量(スコープ1、スコープ2)削減については、省エネ改善や大型設備の更新と共に、再生可能エネルギーの導入を拡大し、使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指しています。

商品使用時の CO2 排出量(スコープ3 カテゴリ11)削減については、サステナブルプロダクツの普及や商品の環境性能の進化により、地球環境に配慮した豊かで快適な社会の実現に貢献していきます。

これらの取り組みにより、SDGsの目標「13:気候変動に具体的な対策を」などに貢献しています。

 

「人とのつながり」

目指す姿として、「お客様と長く深い信頼を築く」「次世代のために、文化支援や社会貢献を行う」「働く喜びを、ともにつくりわかち合う」を設定し、「お客様満足の向上」「地域に根差した社会貢献活動の推進」「働きやすい会社の実現」に取り組んでいます。

ショールームでの提案活動や「早く、確実、親切な」アフターサービスの提供によるお客様満足の向上、植樹活動や地域清掃等の幅広い社会貢献活動への社員の参加促進などにより、人とのつながりを大切にしています。

また、「多様な人財の個性を尊重するダイバーシティ活動の推進」や「働き方改革」により、当社グループ社員が「働きがいのある人間らしい仕事」をして、イキイキと働けるよう活動を推進しています。

これらの取り組みにより、SDGsの目標「8:働きがいも経済成長も」などに貢献しています。

 

WILL2030 社会的価値・環境価値指標

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)環境(気候変動)

 

①「ガバナンス」

当社グループは、気候変動が及ぼす影響を重要な事業リスクと認識しています。代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を年3回開催し、気候変動を含むサステナビリティに関する課題について審議・執行すると共に、取締役会においてその状況を監督しています。

 

②「戦略」

当社グループは、2050年に持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現を見据え、「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」を策定し、地球環境に負荷をかけずに豊かで快適な未来社会を実現すると共に、経済的成長の実現を目指しています。重要課題であるマテリアリティを「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」として、サステナビリティ経営に取り組んでいます。また「きれいと快適・健康」「環境」を両立する当社らしい水まわり商品群「サステナブルプロダクツ」の普及拡大に向け取り組んでいます。

 

<気候変動が事業に及ぼすリスクと機会の分析>

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の定義する分類(移行リスク、物理的リスク、機会)に基づき、気候変動が事業に及ぼす可能性のある長期的なリスクと機会を特定し、シナリオ分析を行っています。

 

(ⅰ)シナリオ分析の概要

分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測を参照し、産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃あるいは4℃未満にするためのシナリオに基づき、2050年カーボンニュートラルに向けた2030年の社会状況を想定し、リスクと機会が事業に及ぼす影響を試算しました。この分析の結果、どちらのシナリオにおいても、コストの増加や自然災害の影響を受けるリスクがある一方で、環境商品による機会拡大が見込まれることを確認しました。

 

(ii)2030年の社会状況の想定

(イ)1.5℃シナリオの社会状況

・環境政策、規制が大幅に強化され、炭素税の導入などによる炭素価格の高騰や、再生可能エネルギーの導入が進むと共に、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)などの環境配慮建築が拡大する。

・気温上昇の影響が抑制されるため、自然災害の規模や頻度は現在と大きく変わらない。

 

(ロ)4℃シナリオの社会状況

・温室効果ガス削減のための環境規制の大幅な強化はない。

・自然災害の影響が増大する一方で、水需要は拡大する。

 

(iii)財務への影響度とその対応について

2050年カーボンニュートラルに向けた2030年の社会状況が自社に与えるリスクと機会について分析し、中・長期におけるその対応を検討しました。

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③「リスク管理」

当社グループは、「TOTOグループリスクマネジメント方針」を策定し、リスクマネジメントに取り組んでいます。気候変動を含む事業に関わるリスクを「リスク管理委員会」で評価し、事業や社会に大きな影響を及ぼす恐れのあるリスクを「重大リスク」として抽出、管理し、取締役会へ報告しています。

また、各事業部門・事業所では、環境に関わるリスクについて、環境マネジメントシステムのもとで管理しています。

 

④「指標と目標」

当社グループは、2050年の持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現を目指し、2050年のマイルストーンとして、SBT(Science Based Targets)に基づいた指標と目標を策定しています ※1。

 

・事業所からのCO2排出量(Scope1、2 ※2):2030年度までに2021年度比で47.5%削減

・商品使用時のCO2排出量(Scope3カテゴリ11 ※3):2030年度までに2021年度比で25%削減

 

※1「SBT(Science Based Targets)イニシアチブ」産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標達成を推進することを目的として、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が2015年に共同で設立した国際的な環境イニシアチブ

 

※2 Scope1:自社における燃料使用に伴う直接排出

Scope2:外部から購入した電力や熱の使用に伴う間接排出

 

※3 Scope3:Scope1、2を除くバリューチェーン全体からの間接排出(当社のSBT目標では、カテゴリ11「販売した製品の使用」のうち、エネルギーを直接消費する商品群が対象)

 

(2)人的資本

① 全世代チャレンジに向けた人財育成と環境整備に向けた方針・取組み

(ⅰ)人財育成方針

(イ)成果に繋がるDXの実践

DX人財の育成を強化し、学び・チャレンジ・成果のサイクルを加速していくことで、業務効率化の最大化を目指します。

 

a.DX人財育成の強化

全グループ員がDXを自分ごととして捉えるため、自らの業務において「どこからDXに取り組むか」を各職場で議論する対話型研修を強化しています。

今後は対話を通して得られた課題について、類似課題を解決した部門のDX推進者から推進ノウハウやポイントの共有により、活動を加速していきます。

 

b.成果最大化に向けた「学び・チャレンジ・成果のサイクル」の強化

業務効率化を加速させる為、身近な業務課題の相談から、ワークフロー開発ツールやRPA、生成AIの活用をサポートする体制を構築し、現場と一体となりDX推進を加速します。

事例や成果の可視化と共有を行うことで、より大きな課題へのチャレンジにつなげ、各部門のDXを後押しします。

 

(ロ)更なるダイバーシティの進化

「多様な人財」の活躍

年齢や国籍、障がいの有無、性のあり方(性的指向、性自認、性表現等)など、多様な人財の個性を尊重し、そこから生まれる新しい発想によって、豊かで快適な生活文化の創造を目指します。

 

a.ダイバーシティの推進

多様な視点が集まると創造的なアイデアが生まれ、的確に顧客のニーズを捉えることができます。

女性活躍は個々の強みを活かしたリーダー像を考える研修や、管理職登用後の悩み共有等、横の繋がりも大切に進めています。

多様な人財が尊重し合い、能力を最大限に発揮できる職場づくりを進めています。

 

b.海外グループ会社の幹部育成・登用

海外事業の持続的成長のため、“国・地域を超えたグローバル連携”と“現地社員の力”が重要です。海外グループ会社の合同研修を実施し、企業理念を軸に経営リテラシーを高めた経営幹部候補を育成し登用することで、海外事業の伸長・拡大による世界中のTOTOファンの創出を目指します。

 

「多様な働き方」の実現

場所と時間を柔軟に活用できる多様な働き方でチャレンジを促す職場づくりを推進します。

 

キャリアとライフイベントの両立支援

すべての社員が、仕事とライフイベントとのバランスをとり、キャリア継続ができるよう、結婚・出産・育児・介護を事由に一時的に希望勤務地での就業を選択できる勤務地限定制度や、仕事と育児・介護・自身の病気治療との両立を含め、業務特性に応じた在宅勤務等、働き方の選択肢を充実させます。

 

(ii)社内環境方針

(イ)健康で安心して働ける環境づくり

良き品物を作る前に良き人を作ること及び会社そして社会の持続的な発展を目指し、健康経営を推進します。

 

(ロ)ワークライフバランスの充実

長時間労働の削減と、自身が立てた有給休暇取得計画に対する取得率100%を推進し、On/Offの充実による一人一人のWell-Beingの実現を目指します。

 

 

② 各取組みに関わる指標や実績・目標

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※文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

※当社グループで働く全ての人々は、「次世代を築く貴重な財産である」という考えから、「人材」ではなく「人財」と表記しています。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。これらのリスクは、当社のリスク管理プロセスを通じて特定・評価されたものであり、残余リスクの影響度と発生頻度を以下に示しています。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)リスクマネジメント体制

当社グループのリスクマネジメント体制は、リスク管理の包括的な責任を負う取締役会と、取締役会によって示された戦略的方向性を方針や手順に落とし込み、これらの方針を実行に移す「リスク管理委員会」(原則、年4回開催)によって構成されています。公平性・客観性・透明性を担保するために、最終的な決定権は非業務執行取締役である独立社外取締役を含む取締役会に置き、リスク管理委員会はその管理下で定期的な報告とリスク監視を行っています。代表取締役社長執行役員のもと、取締役専務執行役員を委員長としたリスク管理委員会は、執行役員・部門長で構成されています。

また、監査等委員会監査、会計監査人監査に加え、より高い内部監査システムを確立するため、業務執行部門から独立した内部監査室を設置し、内部監査の充実を図っています。監査等委員会、会計監査人及び内部監査室による監査(三様監査)を実施し、リスクマネジメントのプロセスの有効性の評価や改善を行い、リスクの未然防止、最小化を図っています。

 

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(2)リスクマネジメントの活動サイクル

重大リスクに対しては、リスク管理統括部門長を任命しており、各リスク管理統括部門長が中心となってリスクの未然防止活動とリスク対応力の向上に努めています。リスク管理統括部門は、リスクマネジメント規定に基づき、各種委員会や会議などを通じて、全部門並びにグループ会社と連携して、活動のPDCAを回しています。

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 (3)各リスクと対応策

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4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

①当連結会計年度の状況

 当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)におけるわが国の経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復しています。しかしながら、米中貿易摩擦の激化や足元では米国新政権による関税の引き上げ、海外景気の一段の減速が、わが国の経済を下押しするリスクとなっています。

 このような事業環境の中、当社グループは2021年度より推進している10ヵ年の中・長期経営計画「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」で定めた目指す姿の実現に向けて、中期経営課題であるWILL2030 STAGE2(2024年度~2026年度)に基づき、「グローバル住設事業」と「新領域事業」の2つの事業軸で活動を推進しました。

 「グローバル住設事業」では、「きれいと快適・健康」「環境」を両立するTOTOらしい商品を「サステナブルプロダクツ」と位置付け、これらの商品をグローバルで普及させることにより、地球環境に配慮した、豊かで快適な社会の実現に貢献しています。

 また「新領域事業」では、TOTOオンリーワンのセラミック商品の開発・価値提案などで半導体市場の進化に貢献し、DXによる社会変革を支えます。

 その結果、当連結会計年度の業績は、売上高が7,244億5千4百万円(前期比3.2%増)、営業利益が484億7千9百万円(前期比13.4%増)、経常利益が503億6千9百万円(前期比2.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、中国大陸事業において減損損失を計上したことにより121億6千8百万円(前期比67.3%減)となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりです。なお、セグメントごとの売上高については、外部顧客への売上高を記載しています。

 

②セグメントの状況

■グローバル住設事業

 「日本住設事業」「海外住設事業」の2つの事業で構成しています。

 当連結会計年度の業績は、売上高は6,738億5千2百万円(前期比1.3%増)、営業利益は309億2千2百万円(前期比9.7%減)となりました。

 

a.日本住設事業

 当連結会計年度の業績は、売上高は新商品や価格改定効果により住宅・パブリック用途ともにリモデルの売上高が伸長し、4,813億4千6百万円(前期比1.7%増)、営業利益は価格改定、コストリダクション効果はあったものの、外部調達コストの高騰、人財投資の増加等の影響により、219億円(前期比1.8%減)となりました。

 

 2018年度に開始した「あんしんリモデル戦略」は年々進化を遂げ、ショールームだけでなくオンライン(WEB)上においてもお客様一人ひとりに寄り添ったサービスでお客様により良い生活価値を提案することでリモデルの需要喚起を図っています。

 また、これまで創り出してきた清潔なトイレ文化を日本から世界へ発信していくことに加え、より衛生的で環境性能に優れた高付加価値商品の開発・提案を強化しています。

 

b.海外住設事業

<米州事業>

 当連結会計年度の業績は、不動産市況の低迷、金利高止まり基調の厳しい市場環境の中でも「ウォシュレット」の積極的な拡販を進めることで、売上高は704億7千8百万円(前期比19.7%増)、営業利益は51億5千3百万円(前期比85.7%増)となりました。

 

 米国では、中高級市場において清潔機能を中心に価値伝達を強化し、「ネオレスト」及び「ウォシュレット」並びに節水大便器などの快適性、デザイン性がお客様に評価されています。

 また、ショールーム展示の拡充やホームページの充実、eコマースやリテール多店舗店の販売体制整備、アフターサービス体制の整備など、お客様接点の強化や効率的な供給体制づくりを推進しています。

 

 

<アジア・オセアニア事業>

 当連結会計年度の業績は、台湾地域における販売伸長などにより、売上高は502億2千万円(前期比11.7%増)、営業利益は82億3千6百万円(前期比34.3%増)となりました。

 

 アジア地域では、高級ブランドとしての認知度を活かした事業活動を推進しています。そのうち、台湾地域では「ウォシュレット」を中心とした顧客接点強化や、ショールームにおける販売員の教育、展示内容の拡充を行い、リモデルの取り込みを進めています。ベトナム、インド、タイは中期的な成長を目指す「成長3市場」と位置付けており、販売力強化及びお客様接点の量と質の向上やアフターサービス体制の整備などに取り組んでいます。

 また、各国・地域において「ネオレスト」や「ウォシュレット」の積極的なプロモーションを展開し、5スターホテルなどの著名物件の受注強化を推進しています。

 あわせて、世界の供給基地としてベトナム、タイを中心とした生産体制を充実させ、各国・地域に根差した企業としての活動を推進しています。

 

<中国大陸事業>

 当連結会計年度の業績は、売上高は不動産市況低迷に加え、お客様の購買行動変化や競争激化の影響を受け669億2千4百万円(前期比20.4%減)、また、営業損失は販売減と在庫調整に伴う減産影響等により35億5千4百万円(前連結会計年度は営業利益43億6千6百万円)となりました。

 

 今後、他社との差別化や独自技術・新たな付加価値提案とあわせて、拡大市場に対応できる商品やコスト競争力のある商品投入など事業戦略の見直しを推し進めます。急速な市況環境変化の中においても、培ってきたTOTOブランドへの信頼を軸に、リモデルにおいて強みが活きる領域へリソースを集中し、お客様へのきめ細かい提案を実践していきます。

 

<欧州事業>

 当連結会計年度の業績は、販売網の拡充や著名物件への採用推進等による「ウォシュレット」の販売伸長により、売上高は48億8千2百万円(前期比8.2%増)、営業損失は8億1千2百万円(前連結会計年度は営業損失13億4千9百万円)となりました。

 

 欧州では、グローバルにおけるTOTOブランドの発信と、欧州のお客様の嗜好に合ったデザイン性の高い商品の販売やショールーム展示を通じて価値訴求の取り組みを強化しています。

 重点的に活動を推進しているドイツでは、販売代理店との協業及び施工店の開拓・拡大に注力しています。

 イギリス、フランスでは、5スターホテルなどの高級現場での「ネオレスト」や「ウォシュレット」を中心としたきれいで快適な高付加価値商品の認知度が向上し、採用が進んでいます。

 

■新領域事業

<セラミック事業>

 当連結会計年度の業績は、半導体市況の回復に伴う半導体デバイスメーカーの稼働率向上や半導体製造装置の新設需要回復による静電チャック販売増等によって、売上高は503億2千5百万円(前期比38.0%増)、営業利益は204億1千9百万円(前期比86.2%増)となりました。

 

 今後も市場の成長を見据えながら、これまで培ってきたファインセラミックス技術の進化と開発力の向上や、高効率な生産を実現するスマートファクトリーの更なる進化など、競争・変動の激しい半導体市場へ着実に対応していきます。

 

 

■その他

<社外からの評価について>

(サステナビリティ関連)

 世界の代表的なESG投資指標である「Dow Jones Sustainability Indices(以下、DJSI)」 の「World Index」の構成銘柄に選定されました。同銘柄への選定は13回目となります。また、アジア・太平洋地域版の「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄にも16年連続で選定されています。

 また、グローバルな環境情報開示システムを運営する国際的な非営利団体であるCDPより、気候変動、水セキュリティへの取り組みにおいて、それぞれ最高評価の「Aリスト」に選定されました。気候変動については2年連続、水セキュリティについては初の「Aリスト」選定となります。

 

(デザインへの評価)

 国際的に権威のある「iFデザイン賞2025」をシステムバスルーム「SYNLA(シンラ)」、海外向け便器・ビデ「RPシリーズ」、次期「エコリモコン」の3点が受賞しました。これにより、当社グループでは12年連続の「iFデザイン賞」受賞となります。

 当社グループでは、引き続きデザインとテクノロジーの融合を追求し、TOTOらしい商品をグローバルに普及させることで、「持続可能な社会」、「きれいで快適・健康な暮らし」の実現に貢献していきます。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は1,207億2百万円となり、前連結会計年度末の1,026億3千6百万円に比べ、180億6千5百万円の資金増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により713億8千1百万円の収入となりました。これは、税金等調整前当期純利益243億3千1百万円、減価償却費350億1千8百万円、減損損失340億9千2百万円、棚卸資産の減少額52億5百万円等の収入と、未払金の減少額44億7千6百万円、法人税等の支払額115億9千2百万円等の支出によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により383億8千3百万円の支出となりました。これは、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入133億6千1百万円等の収入と、有形固定資産の取得による支出445億5千3百万円、無形固定資産の取得による支出61億4千5百万円等の支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により190億7百万円の支出となりました。これは、配当金の支払額169億6千4百万円等の支出によるものです。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要は、運転資金と設備投資があります。

運転資金としては、製品製造にかかる原材料等の購入費や管理費等があります。

設備投資としては、生産設備への投資、生産工場への投資や、ショールーム投資、情報化投資等があります。

配当性向につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の40%以上、1株当たり配当につきましては、減配せず増配又は維持とし、安定的な配当の維持に努めてまいります。

当社グループの資金調達は、設備投資に必要な資金及びその他の所要資金には手元資金を充当することを基本方針とし、その他ではグループ内ファイナンスを有効に活用することにより、効率的な資金調達をしています。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たり用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本住設事業

398,252

2.3

米州事業

68,681

22.8

アジア・オセアニア事業

116,803

18.4

中国大陸事業

68,469

△20.6

欧州事業

△100.0

グローバル住設事業計

652,207

3.2

セラミック事業

35,791

62.3

新領域事業計

35,791

62.3

報告セグメント計

687,998

5.2

その他

合計

687,998

5.2

(注)金額は、売価換算値で表示しています。

 

(2)受注実績

当社グループは概ね見込生産方式を採っていますので、受注の実績については記載を省略しています。

 

(3)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本住設事業

498,454

1.6

米州事業

70,487

19.6

アジア・オセアニア事業

98,721

13.6

中国大陸事業

85,599

△16.0

欧州事業

4,887

8.0

グローバル住設事業計

758,150

2.0

セラミック事業

50,325

38.0

新領域事業計

50,325

38.0

報告セグメント計

808,475

3.7

その他

328

△0.3

内部売上消去等

△84,349

合計

724,454

3.2

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

前連結会計年度、当連結会計年度共に販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先がないため、記載を省略しています。

 

5【重要な契約等】

技術許諾契約

契約会社名

契約相手先名称

国名

契約内容

対価の受取

契約期間

TOTO㈱

(当社)

厦門和利多衛浴科
技有限公司

中国

便座・便蓋・排水弁等の製造技術等の提供

一定料率の

ロイヤルティ

2019年12月31日から

2029年12月31日まで

TOTO㈱

(当社)

P.T. Surya TOTO Indonesia Tbk.

インドネシア

水栓金具の製造技術等の提供

一定料率の

ロイヤルティ

2019年3月 1日から

2026年2月28日まで

 

 

6【研究開発活動】

研究開発部門では、きれいで快適・健康な暮らしと、社会・地球環境への貢献を実現するために、当社グループにしかできない「魅力的品質」を創出し、当社グループならではの価値をお客様に提供しています。

創立以来、さまざまな商品やサービスの研究開発を通じて、たくさんのものづくりの技術を培ってきました。人間工学、感性工学といった、人の動きや感覚を数値化し、論理的に使いやすさや快適性を実現する「人を見る」技術。流体制御、電子制御、水の改質といった、水の流れ方・性質を変えることで、環境に配慮し、且つ、より快適で清潔な機能を実現する「水の力を最大に活かす」技術。表面制御、素材・プロセス、分析といった、素材そのものの性質や素材表面の特性を変えることで防汚性、耐久性、意匠性などを向上させる「素材を深く知る」技術。これらを有機的に結合させたうえで、「きれいで快適」「環境配慮」「ユニバーサルデザイン」「デザイン」といったお客様価値を創出し、魅力ある商品・技術を創出してきました。

今後も、水まわりにIoTなどのデジタル技術などを取り入れながら、きれいと快適・健康な暮らしと環境への配慮を両立した水まわり商品「サステナブルプロダクツ」を世界中のお客様へご提供できるよう、研究開発に取り組んでまいります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は25,054百万円です。

 

当連結会計年度におけるセグメント別の活動内容、及び研究開発費は次のとおりです。

なお、各セグメントに配賦できない研究開発費が2,797百万円あります。

 

①グローバル住設事業

a.日本住設事業

日本市場においては、水まわり商品を進化させると共に、さまざまなライフスタイルにあわせた生活価値提案を行える商品の研究開発を進めています。

当連結会計年度において、浴室商品ではシステムバスルーム「SYNLA(シンラ)」を6年ぶりにフルモデルチェンジしました。水の出し止めや流量・温度の調整などをタッチ式のリモコンに集約した操作性の高い「スマートタッチ水栓」、浴槽に入りながら楽湯や照明などを操作できる「スマートタッチリモコン」が特徴です。また、人間工学を応用した「カームベンチ」は、L字型の背もたれと広い座面で体を支えるので、腰掛けながら体を洗ったり、ボディケアをしたり、バスタイムの楽しみが広がります。

さらに、シャワー水栓「コンフォートウエーブシャワー 3モード(ミスト)」は、お肌のケアにこだわるニーズの高まりに応え、水まわりメーカーならではの技術を活かして、ウルトラファインバブルを含むミスト吐水「ナチュラルケアミスト」を新機能として搭載しました。

生成するミストの粒径・流速などを最適化検討してやさしい肌当たりときめ細かい洗浄力を実現した「ナチュラルケアミスト」は、顔に当てても心地いい、きめ細かいウルトラファインバブルを含むミストの粒が、肌表面の汚れをやさしく洗い流します。お湯に包まれるような新感覚のシャワー吐水「ウォームピラー」、量感と節水を両立した「コンフォートウエーブ」を含む選べる3つの吐水モードで、お好みのシャワーシーンに応えられる商品を開発しました。

 

当セグメントに係る研究開発費は18,410百万円です。

 

b.海外住設事業

海外住設事業においては、日本で開発したコアテクノロジーをもとに、高機能・高品質を維持しながら、各国の規制や基準を満たした環境配慮商品の開発を行い、それぞれの地域に合ったデザイン設計を進めています。

レストルーム商品では、ドイツ・フランクフルトで開催される世界最大規模の国際見本市「ISH2025」で「トイレから始まる新たな健康習慣」の提案をめざして開発中のトイレを参考出展しました。このトイレは、使うだけでもっと健康な日々を目指せるよう、センサーにより便をスキャンし、便の性状を計測。スマートフォンのアプリに計測結果と健康習慣に関するレコメンドを伝えます。

今後も、健康的なライフスタイルを見守るパートナーになれるような商品の研究開発に取り組んでいきます。

 

海外住設事業に係る研究開発費は、合計で1,937百万円であり、各セグメントに係る研究開発費は、それぞれ米州事業が1,409百万円、アジア・オセアニア事業が261百万円、中国大陸事業が172百万円、欧州事業が93百万円です。

 

②新領域事業

セラミック事業においては、半導体の製造装置の分野で、静電チャック、構造部材などといった高品質・高精度セラミック製品の研究開発を進めています。

また、エアロゾルディポジション(AD)法を用いた緻密で密着力の高い「AD膜」の商材を増やし、提案しています。オンリーワン技術を活かした新領域事業の創出に向けて、さまざまな研究開発を行っています。

 

当セグメントに係る研究開発費は1,908百万円です。