文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社が判断したものであります。
2030年度を見据えた経営の方向性
(1)VISION2030(2030年度のありたい姿)
「マテリアル×プロセスの独自技術で変化する社会の欠かせない推進役へ」
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ノリタケグループは、創業者が「我カ社ノ精神」に記した"事業を通じて社会に貢献する"という姿勢を経営理念の核としてきました。 今後の当社グループを取り巻く経営環境は、地政学リスクの顕在化、保護主義の台頭、カーボンニュートラルを始めとするサステナビリティに対する意識や、心身の幸福や健康に対する意識の高まり、生成AIやDXの進展など、不確実で先が予測しにくい時代が続くものと認識しています。こうした経営環境のなか、VISION2030(2030年度のありたい姿)と、その実現に向けた戦略の方向性を描き、その上で中期経営計画の3年間の位置付けを明確にして、取り組むべき具体的な戦略を定めました。 |
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当社グループは、経営基盤を強化するとともに成長領域に注力し、「マテリアル×プロセスの独自技術で変化する社会の欠かせない推進役」として社会に貢献してまいります。
(2)全社戦略(基本方針)
「選択と集中(環境/エレクトロニクス/ウェルビーイングの領域へ)」
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2030年度を見据えた経営の方向性として策定したVISION2030(2030年度のありたい姿)「マテリアル×プロセスの独自技術で変化する社会の欠かせない推進役」を実現するために、今後の成長が期待される環境・エレクトロニクス・ウェルビーイングの3分野を成長領域と定めて「選択と集中」を進め、現状の基盤領域(内燃機関、窯業等)から成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)へ事業領域の転換を図ります。 |
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また、成長領域への取り組みを通じて、当社グループは、「地球を元気に」、「社会を便利に」、「人と社会を幸福に」する企業を目指します。
第13次中期経営計画
(1)中期経営計画の位置付け
「成長基盤の確立」
VISION2030の実現に向けて、2025年度から2027年度までの3カ年を対象とする第13次中期経営計画(以下、第13次計画)は、「成長基盤の確立」の期間と位置付けます。
両利きの経営として「強固な収益基盤の構築」と「成長加速に向けた投資」を推進するとともに、事業成長を後押しする「経営基盤の高度化」に取り組みます。また、これらの戦略実行に最適な体制に事業を再編してまいります。
(2)経営数値目標
第13次計画の最終年度(2027年度)の数値目標は、連結売上高1,575億円、連結営業利益135億円、連結経常利益175億円、ROE9%以上とし、PBR1倍超の早期の実現を目指します。
(3)第13次計画の骨子
①強固な収益基盤の構築
成長領域への事業転換を図るため、積極的な投資による増産・拡販への対応と、新商品開発に取り組みます。また、合理化・収益改善のため、価格の適正化、原価低減とともに、老朽化設備の更新による効率化を推進します。さらに、外部連携も活用し、既存事業における前後工程への染み出しや、既存商品の新用途開拓によって、高付加価値・高収益な事業機会を獲得し、強固な収益基盤の構築に取り組みます。
②成長加速に向けた投資
「成長加速」と位置付けた第14次計画(2028年度から2030年度)期間中の一段の飛躍に向けて、従来の事業毎の製品起点から、新たに市場起点による、成長領域における事業横断での投資機会を探索し、戦略的企業連携(M&A・資本提携等)を進めます。
また、全従業員から広く開発テーマを募る開発テーマ提案制度とステージゲート制度により、全社一丸となって新事業を育てると同時に、これまでの自前主義から脱却し、オープンイノベーションや他社との協業により早期の新事業創出に取り組みます。
③経営基盤の高度化
持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決のため、サステナビリティ経営を推進し、カーボンニュートラルの実現、気候変動等のリスクへの対応等のサステナビリティに向けた取り組みを進めます。
人的資本経営の強化とDXの推進に注力し、経営基盤を高度化することにより事業成長を後押しし、VISION2030の実現を目指します。
[人的資本経営の強化]
事業戦略と連動して策定した人財戦略を推進します。タレントマネジメントシステムの活用により従業員のスキルや経験等のタレント情報を可視化し、目指す人材ポートフォリオの充足に向けて人材投資を強化します。また、働き方改革と社内環境整備に取り組み、多様な人材の役割・成果に基づく新人事制度の定着により、従業員のチャレンジ精神の醸成とエンゲージメントの向上を図り、組織風土改革を実現します。
[DXの推進]
市場や競争環境の変化にスピード感を持って対応できるよう、DXを推進します。社内データのデジタル化によって効率化・高度化の基盤を構築し、MI*の活用による開発の促進、業務フローの最適化、製販技連携の活性化などの取り組みとあわせて、中核となるDX人材を育成し、内部プロセスの抜本的な変革を目指します。
*MI(マテリアルズ・インフォマティクス):AIをはじめとする情報科学の技術を活用し、材料開発を迅速化する手法
(4)資本コストや株価を意識した経営
2027年度ROE9%以上、PBR1倍超の早期実現を目標に掲げ、第13次計画を着実に遂行するとともに、「資本収益性の向上」と「市場評価の改善」に取り組みます。
[資本収益性の向上]
・事業別ROICの目標設定及び実績管理により、資本収益性を高める施策を推進します。
・成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)に向けた積極的な投資を実行します。
・政策保有株式の縮減を継続します。
[市場評価の改善]
・株主還元の拡充を実施します。
配当性向:30%以上⇒35%以上 (第13次計画期間中は、1株当たり年間140円を下限とした累進配当)
機動的な自己株式取得
総還元性向:50%以上(第13次計画期間累計)
・成長戦略及び進捗状況の適時適切な情報開示、並びにIR体制の強化と個別面談の拡充を図ります。
・投資家との対話により得られた情報を取締役会に報告し、課題解決に向けた施策を実行します。
(5)セグメントごとに取り組むべき課題と対策
(工業機材)
オーダーメイド品事業では、市場の変化に迅速に対応するため、従来の製品別から市場別(成長領域別)に事業体制を再編するとともに、徹底した収支改善(拡販・価格適正化・OEM活用・原価低減等)に継続して取り組みます。汎用品事業では、国内及びタイ国の製造体制の再編と整備により競争力を高め、収益改善を図ります。
また、エレクトロニクス分野を中心に成長領域向けの新商品の開発、販路の拡大、増産体制の確立に取り組むとともに、国内及び海外の販売拠点の整備、販売・製造システムの刷新を進めます。
(セラミック・マテリアル)
電子ペーストは、価格の適正化と製品ラインナップの拡充を進めるとともに、パワー半導体周辺材料への参入と量産化に取り組みます。電子部品材料は、主力の積層セラミックコンデンサ用材料の生産能力の増強とともに、製造基盤の整備と原価低減による競争力の強化を図ります。2025年4月に印刷技術を中核とした事業ポートフォリオの再編を行いました。新たに高収益で高効率な事業基盤を確立します。
また、成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)向け新商品の開発を進めます。
(エンジニアリング)
主力のエネルギー、エレクトロニクス分野では、開発、販売、製造、品質管理体制の整備と、アフターサービス(メンテナンス・消耗品販売等)体制の確立により、シェアの拡大を図ります。
また、新しい分野(医薬、半導体、サーキュラーエコノミー)への参入と市場の開拓、成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)での新用途・新商品の開発を進めます。
(食器)
米国の収益改善と各国の販売体制の構築を進めるほか、環境負荷を低減する素材の採用など、新商品開発に取り組むとともに、事業基盤(製造・販売・技術)の整備を推進します。
また、ブランド力向上と新分野(インテリア・ライフスタイル等)への参入を図るとともに、今後の成長が見込まれる海外 HoReCa*市場での拡販に取り組みます。
* HoReCa(ホレカ):Hotel(ホテル)、Restaurant(レストラン)、Cafe / Catering(カフェ / ケータリング)の略語
当社グループは、創立当初より"事業を通じて社会に貢献する"ことを基本理念とし、事業を展開してきました。今後も持続可能な社会の実現と、企業価値の継続的な向上を目指し事業運営を行っていきます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
サステナビリティを巡る課題への取り組みが重要な経営課題であるとの認識のもと、社長を委員長とする「サステナビリティ統括委員会」を設置し、運営しています。同委員会では、サステナビリティに関する方針・目標・計画の策定から、その取り組みのモニタリング、必要な措置の指示まで行います。サステナビリティ統括委員会のもとで、より専門的、個別的なテーマを扱う「環境委員会」「品質委員会」「人財マネジメント委員会」「コンプライアンス委員会」「調達委員会」「リスクマネジメント委員会」が連携してサステナビリティ経営を推進していきます。各委員会では、執行役員等が委員となり、全社横断で関係者を含めた取り組みを推進します。サステナビリティ統括委員会は年4回開催し、取り組みの進捗や重要事項を取締役会へ報告します。また、取締役会においては、重要事項についての決議と、取り組みの進捗状況の監督を行います。
②戦略
当社グループは、サステナビリティ経営を行う上で基幹となるサステナビリティ基本方針を制定し、6つのマテリアリティを特定しています。ビジネスモデルのレジリエンス強化と、気候変動やサプライチェーンに対する取り組みの強化を図るため、所管する委員会とともに、サステナビリティ経営を推進します。
[サステナビリティ基本方針]
ノリタケグループは、創立当初より"事業を通じて社会に貢献する"ことを経営理念の基本とし、「良品」「輸出」「共栄」を社是として掲げ、事業を展開してきました。
今後も持続可能な社会の実現と、企業価値の継続的な向上を目指します。
(1)地球環境に配慮した事業活動を行います。
(2)社会を便利に、人を幸福にするための製品・サービスを開発し、提供します。
(3)適切な情報開示と、ステークホルダーとの対話を行います。
(4)ガバナンスを強化し、より強固な経営基盤を築きます。
[マテリアリティの特定]
当社グループでは以下のプロセスにより、取り組むべきマテリアリティを評価、特定しています。
Step1 課題の抽出 :GRIスタンダードやSASB、SDGsなどの国際的なガイドラインを参照しながら環境、社会、ガバナンスの課題を抽出。
Step2 課題の重要性評価 :社内の各部門の代表からなるタスクフォースでの討議や、従業員、顧客へのアンケートを実施。
Step3 重要課題をマッピング :「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の2軸でマッピングし評価。
Step4 取り組み内容及び目標設定 :重要性が高いと判断した課題について、具体的な取り組み内容と目標を設定。
Step5 決議 :特定したマテリアリティを、取締役会において決議。
[マテリアリティ]
当社が優先して取り組むべき6つのマテリアリティを特定しました。
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マテリアリティ |
主な取り組み内容 |
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地球を 元気に |
環境負荷の低減 |
C02排出量の削減 |
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不要物の削減 |
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環境配慮製品の提供 |
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社会を 便利に |
新しい価値の継続的な提供 |
新商品の提供 |
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新事業創出の仕組みづくり |
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コア技術の開発力強化 |
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良質・安全な製品の安定供給 |
品質向上に向けた活動の推進 |
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サプライチェーンマネジメントの推進 |
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人と社会を 幸福に |
ウェルビーイングな 社会の追求 |
ウェルビーイング製品の提供 |
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人権の尊重 |
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地域社会への貢献 |
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従業員エンゲージメントの 向上 |
従業員の心身の健康増進 |
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いきいきと働ける職場づくり |
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多様性を尊重する風土の醸成 |
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基盤を 強固に |
ガバナンスの持続的な強化 |
ガバナンス体制の強化 |
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情報セキュリティの向上 |
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コンプライアンス遵守の徹底 |
③リスク管理
サステナビリティ統括委員会の下に設置されたリスクマネジメント委員会において、当社に重大な影響を及ぼすリスクを把握して、その対応方針を定め、未然防止を図ります。また、その進捗状況を定期的に取締役会に報告します。
④指標及び目標
当社では、マテリアリティに対する取り組みについて2024年度目標を設定し、定期的なモニタリングを行っています。
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取り組み内容 |
2024年度目標 |
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CO2排出量の削減 |
7.3万t以下 |
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不要物の削減 |
1万t以下 |
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環境配慮製品の提供 |
売上高比率10%以上 |
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新商品の提供 |
新商品売上高伸長率25%(2022年度比) |
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新事業創出の仕組みづくり |
オープンイノベーションの推進 |
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コア技術の開発力強化 |
特許保有数10%増(2022年度比) |
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品質向上に向けた活動の推進 |
製品事故件数0件 |
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クレーム件数20%削減(2022年度比) |
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品質保証体制の強化 |
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サプライチェーンマネジメントの推進 |
持続可能な調達に向けた体制の強化 |
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購買ガイドラインに対するアンケート回収率80%以上 |
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ウェルビーイング製品の提供 |
売上高比率8%以上 |
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人権の尊重 |
人権デューディリジェンスの推進 |
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地域社会への貢献 |
食空間を豊かにするイベントの開催 |
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社会科見学の場の提供 |
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従業員の心身の健康増進 |
有給休暇取得率70%以上 |
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ストレスチェック受検率90%以上 |
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いきいきと働ける職場づくり |
人事制度の見直し |
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エンゲージメントサーベイの実施と課題設定への活用 |
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多様性を尊重する風土の醸成 |
男性育児休業取得率50%以上 |
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女性役職者数20%増(2022年度比) |
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ガバナンス体制の強化 |
取締役会の実効性向上 |
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サステナビリティ経営推進体制の強化 |
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情報セキュリティの向上 |
ネットワークセキュリティの強化 |
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コンプライアンス遵守の徹底 |
法令や規程に対するリテラシー教育の実施 |
(2)気候変動
当社グループは、マテリアリティの一つとして「環境負荷の低減」を掲げ、事業活動を通じて「持続可能な社会」の実現を目指しています。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。
①ガバナンス
気候変動に関する当社グループの取り組みを主導するため、社長を委員長とするサステナビリティ統括委員会のもと、環境委員会において活動結果に基づいて活動計画を審議し、環境保護推進活動の統一的な指針を策定します。
②戦略
2030年において、2℃または1.5℃シナリオでは政策移行の影響が大きい社会像が、対して4℃シナリオでは気象などの物理的影響が大きくなる社会像が想定されます。そのなかで、当社グループとしては、2℃または1.5℃シナリオの途上に起こる「低炭素社会への移行に関連したリスク」と、世界の気候変動対策未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動に伴う物理的影響に関連したリスク」の2つのシナリオに基づき、リスク・機会を検討しました。
③リスク管理
サステナビリティ統括委員会にて、気候変動を含めた当社グループを取り巻くリスクの分析、評価及び重大リスクの特定を行い、取締役会へ報告しています。
④指標及び目標
当社グループは、低炭素社会への移行・2050年のCO2排出量ネットゼロに向け、自社におけるCO2排出量(Scope1・2)の目標を2024年度に7.3万t(2018年度比25%削減)、2030年度に4.9万t(同50%削減)と設定しています。自社以外のサプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)については算出方法を確立し、目標設定とその達成手段の検討を進めていきます。
(3)人的資本
①戦略
[人材育成、環境整備についての考え方]
当社グループは、働く人の人権と多様性を尊重します。全従業員の基本的人権を尊重し、あらゆる雇用の場面(採用、雇用、昇進、報酬、解雇、定年退職、業務付与、懲罰等)において、年齢、性別、出身、国籍、人種、障がいの有無、宗教、支持政党、信条、社会的身分、性的指向、性自認等を理由とした不当な差別を行わないことを守るべき企業倫理として定め、多様な人材の活躍を推進しています。
当社は、VISION2030(ありたい姿)の実現に向けて新たな人財戦略を策定しました。これは、①目指すべき人材ポートフォリオに向けた人材投資の強化、②タレントマネジメントの実践、③新人事制度の導入、④従業員エンゲージメントを高める社内環境の整備から成り立っています。
中でも「従業員の心」の面からのアプローチは特に重要と考え、働く環境の改善や、多様性の尊重・確保などを通して、従業員エンゲージメントが継続的に向上する体制とその取り組みを強化します。
②指標及び目標
人材の育成、多様性の確保、働く環境の整備においては、当社は以下の指標・目標を掲げ、取り組みを進めています。一方、当社グループ各社においては、それぞれ人員規模・人員構成に差があり、一律の指標による評価が困難であるため、以下の2024年度実績は、当社グループにおける主要な事業を営む会社のものを記載しております。
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2024年度実績 |
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当社 |
当社 |
主要グループ会社(注) |
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75.0% |
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女性役職者数 |
2022年度比20%増 |
2022年度比30%増 |
2022年度比100%増 |
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74.8% |
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ストレスチェック 受検率 |
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91.9% |
(注)主要グループ会社:日本レヂボン株式会社と共立マテリアル株式会社の2社
当社グループのリスク管理につきましては、以下の体制をとり対応しております。
1.法令違反に基づく不祥事又は事故、災害等の発生により企業価値を損なうような危機に直面した時に、可能な限り損失を低減し重大な影響を受けることなく事業を継続することができるよう危機管理規程を制定し、危機発生時には直ちに対策本部を設置し対応します。
2.大規模地震や火災等への防災対策に係る規程を定め、防災教育・訓練を実施するとともに、災害発生時の従業員の行動基準を明確にし、従業員の安全と被害の軽減を図ります。
3.事業運営上のリスクについては、事業計画や予算、設備投資計画等、重要な事項の決裁の過程において、総合的に検討・分析を行って、これを回避・予防します。
4.サステナビリティ統括委員会の下に設置されたリスクマネジメント委員会において、当社に重大な影響を及ぼすリスクを把握して、その対応方針を定め、未然防止を図ります。また、その進捗状況を定期的に取締役会に報告します。
当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主なリスクについて以下に記載しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済状況の変動に関するリスク
当社グループは、工業機材事業(研削砥石・ダイヤモンド工具等)、セラミック・マテリアル事業(電子ペースト・電子部品材料等)、エンジニアリング事業(焼成炉・乾燥炉等)、食器事業(陶磁器食器等)を展開し、自動車、鉄鋼、ベアリング、電子・半導体、エネルギー、ホテル・レストラン等、幅広い分野に製品とサービスを提供しております。そのため特定分野の需要変動による大きな影響を受け難い事業構成ではありますが、各業界の需要動向は、国内外の景気、設備投資、個人消費、市況等の経済状況の影響を受けるため、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合他社との競争に関するリスク
当社グループは、セラミックスの要素技術をもとに、顧客や市場のニーズに対応した新商品・新技術の開発に取り組んでおります。しかしながら、各製品において、国内外の競合各社と激しい競争状態にあり、その状況次第では業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)原材料の調達について
当社グループは、高品質で優れた製品を安定して製造・販売するため、原材料を適時、安定的に入手することが不可欠となります。購入元の品質不良、倒産、災害、事故、あるいは世界的な感染症の流行や物流の混乱等の理由で原材料の供給が停止した場合、在庫の確保や代替品への切替え等により、一定期間は製品の製造を維持できる体制を確立しておりますが、それが長期化した場合は、製品が製造できず業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)原材料、燃料の高騰について
窯業を中心とした事業を展開する当社グループでは、原材料又は燃料の高騰が製造コストの上昇要因となります。ものづくり強化活動による生産性の向上や経費の削減等コストの低減には常に努力していますが、コストの上昇分を吸収できない範囲につきましては、価格への転嫁をお願いいたしております。しかしながら、原材料やエネルギーの需要変動や供給国の社会情勢等により、過度の急激な価格の上昇で、いずれの方法でも解決できない場合は業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)為替の変動について
セラミック・マテリアル事業及び食器事業では輸出比率が高く、また、全事業にわたり原材料の一部を輸入しております。短期的な為替変動に対しては、為替予約等によりリスクの回避を図っておりますが、急激な為替変動は製品・原材料の輸出入価格に大きな影響を与え、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各地域における現地通貨建ての損益及び資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算しているため、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動が無かったとしても、円換算後の価値が業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)海外情勢の変化によるリスク
当社グループは、売上の約47%が海外市場であり、海外生産の展開も合せて、グローバルな事業活動を行っております。しかしながら、各国のテロや治安状態の悪化等の政治情勢不安、経済情勢の不確実性、予期せぬ法規制や関税等の税制変更、宗教・文化や商習慣の相違に起因するトラブル等により、事業活動が制約されることが考えられます。日頃から情報を収集して情勢の把握に努めておりますが、特に戦争や内乱、テロ等が発生した場合には、事業活動を停止せざるを得ない事態も想定され、こうした場合には業績や財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)パンデミックに関するリスク
新興あるいは再興の感染症等の蔓延に関しては、その影響や状況を鑑みて適宜、適切な対応を行っております。しかしながら、それらが世界的な流行に発展した場合には、顧客の生産調整及び設備投資の抑制等による販売の減少や、当社の国内外の生産拠点の安定的な操業に支障が生じる等、販売面、生産面ともに影響を受ける可能性があります。
(8)技術・知的財産に関するリスク
当社グループは、全社戦略「選択と集中(環境/エレクトロニクス/ウェルビーイングの領域へ)」に基づき、電子・半導体及びエネルギー業界等の成長産業への経営資源の集中を図っております。これらの業界では技術革新のスピードが速いことや需要動向の変動が大きいことから、開発した技術や商品が早期に陳腐化する傾向にあります。業界の動向や技術の進展の状況について日頃から情報を収集して対応をしておりますが、主力の商品が陳腐化した場合や新商品の投入時機を逸したときには、業績や財政状況に影響を受ける可能性があります。
また、事業の優位性の確保や技術の保護のため、知的財産権の取得等の対策をしておりますが、特許侵害に対する係争や、それによるライセンス費用、和解費用の負担等が発生した場合、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)品質に関するリスク
当社グループは、各事業において所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じております。また、品質委員会において当社グループ全体の品質保証体制の強化に取り組んでおりますが、すべての製品において、予想し得ない品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。製品に欠陥が生じた場合、欠陥に起因する直接的、間接的損害に対して、製造物賠償責任保険等では十分に補償しきれない損害賠償等の損失が発生する可能性があります。また、当社グループの社会的評価の低下により、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)災害・気候変動によるリスク
当社グループには、国内及び海外に活動拠点があり、防災管理規程を整備する等防災管理体制づくりを進めております。また、工業機材事業においては、需要地生産の観点からグローバルな生産体制を展開しており、セラミック・マテリアル事業においては、電子・半導体分野向けの製品について、国内生産拠点を増加してリスクの分散を図っております。しかしながら、これらの拠点、特に製造拠点では、地震や火災等の災害、台風や豪雨等の気候変動に伴う異常気象により重大な被害が発生した場合には、相当期間にわたって生産活動が停止し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)法的規制等に関するリスク
当社グループは、国内外で事業展開をするにあたり、コンプライアンス体制の構築とグループガバナンスの強化によって、日本及び諸外国・地域の各種法令・規制等の遵守に努めております。しかしながら、重大な法令違反を起こしたり、現行の法規制等が従来よりも厳格化されたり、新たな法規制等が設けられた場合は、事業活動の制限を受ける、法規制等に適合させるための費用が発生する等の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)環境に関するリスク
当社グループは、地球環境の保全を重要な経営課題の一つと位置づけ、環境方針を策定し、環境に配慮した製品の開発・販売、CO2排出量の抑制、省資源・廃棄物の削減とリサイクルの推進等に取り組んでおります。また、事業を遂行するにあたり、環境に関連する各種法令・規制等の遵守に努めておりますが、予期せぬ事故や災害等により環境汚染が生じたり、環境に関する法規制等が強化されたり、新たな法規制等が設けられた場合は、事業活動の制限や法規制等に適合させるための費用の増加等により、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、気候変動に関する個別リスクについては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」をご参照ください。
(13)情報システムに関するリスク
情報システムは年々、複雑化・高度化しており、当社グループも事業の効率化のため、様々な情報システムを導入しております。情報セキュリティ対策等、事業活動が継続できる体制を整備していますが、不正アクセス、コンピューターウイルス感染等の人為的脅威や災害等の環境的脅威によって、情報システムの不具合、故障が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の中断や信用の低下等により、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)人材流出に関するリスク
当社グループは、業績と能力に基づく公正な人事考課と処遇を行っておりますが、最近の転職市場は活発となっており、人材流出を完全に防止することは困難です。製造や業務に関するノウハウは、ものづくり強化活動を通じた多能工化でカバーする仕組みはありますが、有能な人材の継続的な確保・育成ができない場合は、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)金融資産について
当社グループは投資有価証券として株式を保有しておりますが、投資先の業績不振や証券市場の市況の悪化等で当該株式の時価が帳簿価額を著しく下回った場合、評価損の計上が必要となります。また、支払利息、受取利息等の金融資産及び負債は、金利の影響を受け、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)固定資産の減損に関するリスク
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、定期的に保有する固定資産の減損損失の認識・測定を行っております。経営環境の著しい悪化等により収益性が低下した場合は、固定資産の減損損失が発生し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の経済状況は、国内では、個人消費は一部に足踏みが残るものの持ち直しの動きがみられ、企業収益が総じて改善する中で設備投資も堅調を維持するなど、景気は緩やかに回復しました。海外では、米国は個人消費を中心に景気が拡大し、欧州は持ち直しの動きがみられましたが、中国は不動産不況を背景に足踏み状態が続きました。引き続き、国内は緩やかな回復が期待されますが、物価上昇の継続による影響が懸念されるほか、米国の保護主義的な通商政策が世界経済に与える影響は計り知れず、先行きは不安視されています。
こうした情勢の下、当社グループは2022年度からスタートした第12次中期経営計画(以下、第12次計画)の3年目として「収益基盤の強化」と「成長領域への仕込み」に引き続き取り組みました。
その結果、当連結会計年度の売上高は1,381億82百万円(前期比0.2%増加)、営業利益は102億13百万円(前期比4.6%減少)、経常利益は140億28百万円(前期比4.2%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は129億39百万円(前期比12.7%増加)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。
(工業機材)
オーダーメイド品は、国内では、主要顧客である自動車、鉄鋼、ベアリング業界の生産が減少したことから、売上は減少しました。海外では、北米は新政権による関税政策への警戒感から、自動車、軸受向けの売上が減少しましたが、中国は鉄鋼向けの受注が増加し、東南アジアも電子部品関連業界向けが堅調に推移したことから、海外全体では売上は増加しました。汎用品は、オフセット砥石などの汎用砥石が、国内及びアジア向けが伸び悩んだものの、アジア以外の海外向けが堅調であったことから、売上は増加しました。研磨布紙は、タイ国関連会社を連結子会社化した影響により、売上は増加しました。その結果、工業機材事業の売上高は、564億37百万円(前期比1.3%増加)、営業利益は16億67百万円(前期比32.8%減少)となりました。
(セラミック・マテリアル)
電子ペースト及び電子部品材料は、積層セラミックコンデンサ用材料において、サーバー向けが堅調に推移したことに加え、通信分野向けも回復が見られ、売上は増加しました。厚膜回路基板は、米国向けの医療センサー用が堅調で、売上は増加しました。石膏は、海外の建材が増加したため、売上は増加しました。セラミックコアは交換需要、新規需要共に回復したことから、売上は増加しました。蛍光表示管は、在庫調整の影響を受け、売上は減少しました。セラミック原料は耐熱ガラス用が大きく減少しました。その結果、セラミック・マテリアル事業の売上高は、454億78百万円(前期比2.5%減少)、営業利益は66億14百万円(前期比7.0%増加)となりました。
(エンジニアリング)
主力の焼成炉及び乾燥炉は、リチウムイオン電池用が堅調に推移したことにより、売上は増加しました。攪拌装置は、主要分野の化学向けが海外向けは増加したものの、国内向けが低調であったことから、売上は減少しました。濾過装置は、自動車・エレクトロニクス向けが回復し、売上は増加しました。超硬丸鋸切断機は自動車部品向けが振るわず、ロードカッターは公共工事が低調なことから、売上は減少しました。その結果、エンジニアリング事業の売上高は、290億67百万円(前期比1.8%増加)、営業利益は19億19百万円(前期比12.5%減少)となりました。
(食器)
国内は、エアライン向けの受注が増加し、またインバウンドの下支えもあり直営店の売上も増加しましたが、ホテル向けが微減となったことから、国内全体での売上は前年並みとなりました。海外は、米州は米国での百貨店向けは横ばいでしたが、オンライン販売が堅調に推移したことに加え、南米向けの大型案件を受注したため、売上は増加しました。アジアは中国・インド向けの販売が低調でしたが、他の地域では堅調に推移し海外全体での売上は増加しました。その結果、食器事業の売上高は、71億98百万円(前期比3.3%増加)、営業利益は12百万円(前期は1億47百万円の営業損失)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べ37億57百万円(1.9%)減少し1,983億12百万円、負債合計は、前連結会計年度末に比べ66億48百万円(12.3%)減少し474億50百万円、純資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億91百万円(2.0%)増加し1,508億62百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ61億40百万円減少し、118億51百万円となりました。また、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは32億47百万円の支出となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から200億21百万円減少の20億15百万円となりました。これは主に仕入債務の減少および法人税等の支払額の増加により資金が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローにおいて支出した資金は、前連結会計年度から20億23百万円増加の52億63百万円の支出となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入が増加した一方、有形及び無形固定資産の取得による支出、並びに定期預金の預入による支出が増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローにより支出した資金は、前連結会計年度から104億63百万円減少の30億30百万円となりました。これは主に短期借入金が増加したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
工業機材 |
44,837 |
96.6 |
|
セラミック・マテリアル |
37,485 |
111.3 |
|
エンジニアリング |
5,967 |
100.3 |
|
食器 |
4,762 |
117.7 |
|
合計 |
93,052 |
103.3 |
(注)金額は、販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
工業機材 |
56,674 |
102.4 |
7,811 |
103.1 |
|
セラミック・マテリアル |
45,413 |
96.9 |
4,649 |
98.6 |
|
エンジニアリング |
31,053 |
94.0 |
32,041 |
106.6 |
|
食器 |
7,215 |
103.4 |
664 |
102.5 |
|
合計 |
140,356 |
98.6 |
45,166 |
105.1 |
(注)金額は、販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
売上高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
内、海外売上高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
海外売上割合 (%) |
|
工業機材 |
56,437 |
101.3 |
21,486 |
108.6 |
38.1 |
|
セラミック・マテリアル |
45,478 |
97.5 |
25,573 |
108.5 |
56.2 |
|
エンジニアリング |
29,067 |
101.8 |
13,870 |
93.8 |
47.7 |
|
食器 |
7,198 |
103.3 |
4,125 |
105.6 |
57.3 |
|
合計 |
138,182 |
100.2 |
65,056 |
104.8 |
47.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
ⅰ)総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ37億57百万円(1.9%)減少し、1,983億12百万円となりました。うち、流動資産が61億70百万円減少の904億6百万円、固定資産が24億12百万円増加の1,079億6百万円であります。これは主に現金及び預金並びに投資有価証券が減少したことによるものです。
ⅱ)負債
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ66億48百万円(12.3%)減少し、474億50百万円となりました。これは主に短期借入金が増加したものの、電子記録債務及び繰延税金負債が減少したことによるものです。
ⅲ)純資産
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億91百万円(2.0%)増加し、1,508億62百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金が減少したものの、利益剰余金が増加したことによるものです。
この結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度に比べ211円61銭増加して5,286円10銭となり、自己資本比率は前連結会計年度末の72.8%から75.6%に増加しました。
(経営成績)
ⅰ)売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2億69百万円(0.2%)増加の1,381億82百万円となりました。なお、販売活動の概況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
ⅱ)経常利益
当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ6億14百万円(4.2%)減少の140億28百万円となりました。主な要因としては、販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。
ⅲ)特別利益・特別損失
当連結会計年度の特別利益は40億0百万円であり、主なものは投資有価証券売却益34億89百万円であります。また、当連結会計年度の特別損失は7億33百万円であり、主なものは固定資産処分損4億48百万円であります。
ⅳ)親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、172億95百万円の税金等調整前当期純利益となり、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は129億39百万円となりました。
1株当たり当期純利益は450円25銭となり、自己資本利益率は前連結会計年度の8.3%から8.7%となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、現在、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金、金融機関からの借入れ又は社債の発行により資金調達することとしております。
運転資金につきましては、期限が一年以内の短期借入金で資金調達を行っております。国内におきましては、キャッシュ・マネジメント・システムにより当社が一括して資金を調達して各連結子会社に必要資金を分配し、海外におきましては、各々の連結子会社が運転資金として使用する現地通貨にて調達することを基本としております。2025年3月31日現在の短期借入金の残高は60億89百万円であります。
設備投資等の長期資金につきましては、自己資金を原則とし、一部を長期借入金により調達することとしております。
2025年3月31日現在の現預金残高は166億9百万円で、当社グループとして十分な水準の手元資金を確保していると考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況に基づく仮定により、様々な見積りを行っており、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
ⅰ)繰延税金資産
繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、回収が不確実と考えられる部分は、評価性引当額としています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
なお、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い、繰延税金資産の修正を行うため、当期純利益額が変動する可能性があります。
ⅱ)退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の期待運用収益率に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い債券の利回りを基礎として決定し、また、年金資産の期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
ⅲ)固定資産の減損
固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、損益を悪化させる可能性があります。
該当事項はありません。
(1)研究開発活動
当社グループの研究開発活動では、各事業部・グループ会社が推進する既存商品を中心とした研究開発活動と、研究開発センターが各事業部と連携した商品開発を進めております。また、将来のノリタケのコア技術となる基盤技術の研究開発にも取り組んでいます。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(工業機材)
成長領域における事業拡大に向けて、新技術や新商品の開発を行っております。環境分野ではEV車、ロボット向けで、エネルギー伝達効率及び、静粛性に優れる歯車、軸受などの加工工具の開発を進めています。エレクトロニクス分野では、次世代パワー半導体向けの研削・研磨工具の開発に注力し、商品化を行っております。
なお、当事業における研究開発費の金額は
(セラミック・マテリアル)
電子ペーストでは、エレクトロニクス分野における電子部品用各種電極ペーストの開発を進めております。新商品は導電性樹脂銀ペーストを研究開発センターと開発を進めて、事業化に取り組んでおります。セラミックスでは、耐熱性に優れた精密鋳造用セラミックコア「シーモナーク」を開発し商品展開中です。電子部品材料では、エレクトロニクス分野における電子部品用微粒子原料、ウェルビーイング分野におけるジルコニア原料、及び環境分野における電池用原料等の開発を進めております。電子表示では、液晶モジュールのラインナップ増強として、小型産業機器用途向けに、より小型で使いやすさを向上させた新たな液晶モジュールの開発を進めております。また、これまで培ってきた技術を活かし、主に製造企業向けのデジタルサイネージ、IoTシステム商品開発にも注力しております。
なお、当事業における研究開発費の金額は
(エンジニアリング)
エネルギー、エレクトロニクス向けを中心に今後の成長分野に対応した製品・装置の開発を行っております。
なお、当事業における研究開発費の金額は
(食器)
食器に関する新材料の開発及び加飾技法の開発を進めております。
なお、当事業における研究開発費の金額は
(研究開発)
研究開発センターでは、今後の成長が期待される「環境」「エレクトロニクス」「ウェルビーイング」の各成長領域において新商品開発に取り組んでいます。具体的には、半導体向けの研磨工具、ナノ粒子ペースト、カーボンニュートラル関連部材などの開発を行っています。また、開発スピードの向上を図るため、大学や外部研究機関、協業メーカーとの連携を積極的に推進し、先進的な基盤技術の開発に挑戦しています。さらに、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)や高度解析技術の導入・活用を通じて、新規事業の創出に加え、既存事業や既存商品の拡大にも貢献できるよう努めています。
なお、当該研究開発費の金額は838百万円となりました。
(2)知的財産活動
当社は、知的財産活動を新事業創出と企業価値向上を加速させる重要な手段と位置付けています。
新事業創出では、全社横断で行う新事業の探索に知財メンバーが参画し、自他社の知財財産および市場情報の分析による提言活動を積極的に行っています。
企業価値向上では、事業・開発部門と知財部門のメンバーからなる会議を定期的に開催して知財状況の共有を図ると共に、各事業部や研究開発センターに入り込んで事業環境・開発環境に最適化した知財活動を行っています。戦略的に知的財産の創出・取得・活用を進めることで企業価値向上に努めています。
2024年度からは、知財部門と企画部門を統合し、知財企画部として、上記活動をさらに深化・進化させる体制で臨んでいます。また、知的財産権の侵害に対して、適切な措置を講じることにより、当社ブランドおよび事業を保護すると共に、他社の知的財産を当社と同じく重要な資産として尊重し、侵害しないよう十分に注意を払って活動します。
全社において知財活動が活発になってきており、特許保有件数の目標値735件を大きく上回り824件となりました。